説明

回転電機

【課題】マグネットトルクとリラクタンストルクとの両方を有効に利用すること。
【解決手段】電機子と、回転軸18a方向で電機子と対向する界磁子20とを備え、界磁子20は、界磁用磁石22とこの磁極面に設けられた第1磁性体24とをそれぞれ有する複数の磁極発生部26と、各磁極発生部26間に配設された複数の第2磁性体28とを備え、各第2磁性体28は、断面積を大きくする拡幅部28aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転軸に略垂直な面に沿って広がるギャップを介して電機子と界磁子とが対向する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型回転電機は、電機子と界磁子とが回転軸に沿ってギャップを隔てて設けられた構成とされている。
【0003】
電機子は、ヨークとヨークに設けられたティースと、当該ティースに巻回される巻線とを有している。界磁子は、電機子で発生する回転磁界によって回転されるようになっている。
【0004】
界磁子として、回転軸周りに複数の永久磁石を配設し、各永久磁石のギャップ側に第1磁性体を設け、さらに、隣設する各永久磁石間に、リラクタンストルクを発生させるための第2磁性体を設けたものがある。これにより、q軸インダクタンスをd軸インダクタンスよりも大きくすることができ、電機子電流の位相を適当に進めることにより、マグネットトルクに併せてリラクタンストルクをも有効利用して界磁子を回転させることができるようになっている。
【0005】
本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1〜3に記載のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−136721号公報
【特許文献2】特開2005−094955号公報
【特許文献3】特開2005−341696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなアキシャルギャップ型回転電機において、マグネットトルクを大きくするために、永久磁石の磁極面積を大きくしようとすると、第2磁性体の幅を小さくせざるを得ない。そうすると、リラクタンストルクが小さくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、マグネットトルクとリラクタンストルクとの両方を有効に利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る回転電機は、電機子(30、40)と、前記電機子に対して回転軸(18a)周りに相対的に回転可能で、前記回転軸方向で前記電機子と対向する界磁子(20,620,720,820,920)と、を備え、前記界磁子は、前記電機子に対向する側で磁極面を呈する界磁用磁石(22,222)と前記磁極面に設けられた第1磁性体(24,124,624,724,924)とをそれぞれ有し、前記電機子に対向する側で前記回転軸周りに複数の磁極を呈すると共に、極性の異なる相互間で磁気的に分離された態様で、前記回転軸周りに配設された複数の磁極発生部(26,726,826,926)と、前記各磁極発生部間に、前記各磁極発生部を相互に磁気的に分離しつつ配設された複数の第2磁性体(28,128,228,628,728,828)と、を備え、前記各第2磁性体は、前記各界磁用磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸に対して略直交する方向での断面積を大きくする拡幅部(28a,128a,228a,928a)を有するものである。
【0010】
第2の態様のように、前記各第1磁性体(24,124,624,724,924)のうち前記各第2磁性体(28,128,228,628,728,828)に対向する面は、前記各界磁用磁石(22,222)のうち前記各第2磁性体に近接する辺部分(22p,122p,222p)よりも磁極中心側に凹む凹面(24p,124p)に形成されていてもよい。
【0011】
また、第3の態様のように、前記各凹面(24p,124p)は、前記拡幅部(28a,128a,228a,928a)と前記凹面との間隔寸法を所定距離に保つように凹んでいてもよい。
【0012】
第4の態様のように、請求項2又は請求項3記載の回転電機であって、前記各凹面(122p)は、前記電機子に近接するに従って、前記各界磁用磁石のうち前記各第2磁性体に近接する辺部分(122p)よりも磁極中心側に向けて傾斜する傾斜凹面であり、前記各拡幅部(128a)は、対向する前記傾斜凹面に対して略平行な傾斜面(128p)を有していてもよい。
【0013】
第5の態様のように、前記各第1磁性体(22)のうち前記各第2磁性体に対向する面の全体が、前記各界磁用磁石のうち前記各第2磁性体に近接する辺(22p)部分よりも磁極中心側に凹む凹面(24p)に形成されており、前記各拡幅部(28a)は、前記第1磁性体(24)よりも薄くかつ前記凹面の凹み量に応じた分、前記凹面側に突出していてもよい。
【0014】
また、第6の態様のように、前記各界磁用磁石(222)のうち前記拡幅部(228a)の付け根部分(228p)に対向する辺(222p)部分が面取り又は丸め処理され、これに応じた形状で、前記各拡幅部の付け根部分が面取り又は丸め処理されていてもよい。
【0015】
第7の態様のように、前記電機子を1つ備え、前記回転子は、前記各磁極発生部のうち前記電機子とは反対側の部分で前記各磁極発生部同士を磁気的に短絡しつつ前記各磁極発生部を支持するするバックヨーク(329)を有していてもよい。
【0016】
第8の態様のように、前記回転軸方向において前記界磁子の両側に前記電機子(30、40)を2つ備え、前記界磁子(20,620,720,820,920)は、前記2つの電機子のそれぞれに対する前記各第1磁性体(24,124,624,724,924)と前記各拡幅部(28a,128a,228a,928a)とを有していてもよい。
【0017】
第9の態様のように、前記第2磁性体(28)は、前記回転軸方向において2分割されていてもよい。
【0018】
第10の態様のように、前記各第2磁性体(628)は、隣設する前記各第1磁性体(624)に磁気飽和容易な連結部(629)で一体化されていてもよい。
【0019】
第11の態様のように、前記第2磁性体(828)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に沿って積層された積層鋼板によって形成されていてもよい。
【0020】
第12の態様のように、前記各第2磁性体(728)は、前記各第2磁性体の内周部に配設され、前記各磁極発生部とは磁気的に分離する略環状の第3磁性体(729)により保持されていてもよい。
【0021】
第13の態様のように、前記各第1磁性体(728)は、前記各第2磁性体(728)及び前記第3磁性体(729)の少なくとも1つと、磁気飽和容易な連結部で一体化されていてもよい。
【0022】
第14の態様のように、前記各第2磁性体(728)及び前記第3磁性体(729)は、回転軸方向において2分割されていてもよい。
【0023】
第15の態様のように、前記各磁極発生部(26,926)及び前記各第2磁性体(28,928)とが、非磁性体ホルダ(450,550,950)に固定されていてもよい。
【0024】
第16の態様のように、前記非磁性体ホルダ(550,950)は、前記各磁極発生部を前記回転軸方向における両側から挟込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ(552,951)を有していてもよい。
【0025】
第17の態様のように、前記非磁性体ホルダ(950)に、前記各磁極発生部間に位置して、前記第2磁性体(928)をその外周側から挿入可能な嵌合孔(954)が形成され、前記各第2磁性体が前記各嵌合孔にその外周側から挿入されて保持されていてもよい。
【0026】
第18の態様のように、前記非磁性体ホルダの外周側に、非磁性体のリング部材(956)が嵌められるものであってもよい。
【0027】
第19の態様のように、前記リング部材のうち前記回転軸方向における両端部に前記界磁子の中心側に延出する縁部(956a)が形成され、前記界磁子のうち前記縁部を除く部分が前記電機子のティースに対向していてもよい。
【0028】
第20の態様のように、前記第1磁性体(24,124,624,724,924)は圧粉磁心で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
第1の態様に係る回転電機によると、前記各第2磁性体は、前記各界磁用磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸に対して略直交する方向での断面積を大きくする拡幅部を有するため、磁極発生部の磁極面積を大きくしても、電機子に対する第2磁性体の対向面積を広げることができる。これにより、q軸インダクタンスを大きくして、リラクタンストルクを増大させることができ、マグネットトルクとリラクタンストルクとの両方を有効に利用することができる。
【0030】
第2の態様によると、前記各界磁用磁石のうち前記各第2磁性体に近接する辺部分が第1磁性体で覆われないようになるため、界磁用磁石の端部からの磁束の漏れを防止できるとともに、磁束を磁極中央付近に集中させることができる。
【0031】
第3の態様によると、磁極発生部と第2磁性体との間で磁束漏れを有効に防止できる。これにより、q軸インダクタンスの増加によるリラクタンストルクの増大と、界磁用磁石からの磁束漏れの低減とを両立することができる。
【0032】
第4の態様によると、第1磁性体の傾斜凹面と、第2磁性体の拡幅部の傾斜面との間を所定距離に保つことによって、磁極発生部と第2磁性体との間で磁束漏れを有効に防止できる。これにより、q軸インダクタンスの増加によるリラクタンストルクの増大と、界磁用磁石からの磁束漏れの低減とを両立することができる。また、前記拡幅部は、対向する前記傾斜凹面に対して略平行な傾斜面を有する形状であるので、強度的に優れる上に、磁束の急激な屈曲を防止して鉄損を低減できる。
【0033】
第5の態様によると、凹面と拡幅部との間隔寸法を一定距離確保することができ、磁極発生部と第2磁性体との間で磁束漏れを有効に防止できる。これにより、q軸インダクタンスの増加によるリラクタンストルクの増大と、界磁用磁石からの磁束漏れの低減とを両立することができる。
【0034】
第6の態様によると、界磁用磁石及び拡幅部の強度向上を図ると共に、磁束の流れを滑らかにすることができる。
【0035】
第7の態様によると、回転子の一方面側に磁極を呈しつつ、各磁極発生部をバックヨークで固定支持することができる。
【0036】
第8の態様によると、2つの電機子によって回転させることができる。
【0037】
第9の態様によると、拡幅部と界磁用磁石との干渉を避けつつ、第2磁性体を容易に組込むことができる。
【0038】
第10の態様によると、第1磁性体と第2磁性体との位置決め精度を向上させることができ、また、界磁子の電機子に対向する面の平面度を増し、エアギャップ精度を向上させることができる。
【0039】
第11の態様によると、磁気抵抗が低く透磁率が高い磁路を形成することができる。
【0040】
第12の態様によると、各第2磁性体を所定位置に保持することができるとともに、第第2磁性体から3磁性体への磁路を形成するため、リラクタンストルクの発生に起因する磁路の磁気抵抗を低減する。
【0041】
第13の態様によると、各第1磁性体を容易に保持できる。
【0042】
第14の態様によると、第2磁性体の拡幅部と界磁用磁石との干渉を防止しつつ、界磁子を容易に組立てることができる。
【0043】
第15の態様によると、前記各磁極発生部及び前記各第2磁性体とを、非磁性体ホルダで固定することができる。
【0044】
第16の態様によると、前記各磁極発生部を容易に保持することができる。
【0045】
第17の態様によると、前記各第2磁性体を前記各嵌合孔にその外周側から挿入することで、界磁子の各部品を容易に保持できる。
【0046】
第18の態様によると、非磁性体のリング部材によって各第2磁性体の脱落を防止できる。
【0047】
第19の態様によると、前記リング部材の縁部が、界磁子と電機子のティースとの間に存在しないようにして、ギャップをなるべく小さくすることができる。
【0048】
第20の態様によると、所定の形状に加工することが容易であり、また、周方向成分及び径方向成分を有する磁束を低い磁気抵抗で通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機について説明する。図1は、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機を示す分解斜視図であり、図2は同回転電機の界磁子を示す斜視図であり、図3は同回転電機の界磁子の周方向における断面を概念的に示す図である。
【0050】
このアキシャルギャップ型回転電機10は、1つの界磁子20を備えると共に、2つの電機子30、40を備えている。界磁子20は略円盤状に形成されており、2つの電機子30,40も略円盤状に形成されている。2つの電機子30、40は、界磁子20の両面側に配設されており、当該界磁子20を回転させるべく磁界を発生させる。
【0051】
各部についてより詳細に説明する。
【0052】
電機子30、40は、回転軸18aの方向において、界磁子20の両側に、当該界磁子20に対してギャップ(ここでは僅かなギャップ)を隔てて対向するように配設されている。これらの電機子30、40は、図示省略のケーシング等に固定されており、本回転電機10において、固定子として機能する。
【0053】
電機子30は、バックヨークコア32と、複数(ここでは9個)のティース34と、各ティース34に巻回された巻線36とを備えている。
【0054】
バックヨークコア32は、略円盤状であり、図示省略のケーシング等に固定されている。複数のティース34は、バックヨークコア32のうち界磁子20側の面に、回転軸18aを中心として略環状に間隔をあけて配設されている。また、各ティース34のそれぞれに1つの巻線36が装着されている。つまり、この電機子30は、いわゆる集中巻の形態で巻線36が設けられている。また、ここでは、U相、V相、W相の3相の巻線36が、回転軸18a周りにその順で、3組設けられており、6極の界磁子20に対して回転磁界を発生するようになっている。
【0055】
電機子40も、上記電機子30と同様構成で、バックヨークコア42と、複数のティース44と、各ティース44に巻回された巻線46とを備えている。
【0056】
なお、上記電機子30、40の構成は一例であり、上記に限定されるものではない。例えば、巻線36,46が分布巻又は波巻等されていてもよい。
【0057】
界磁子20は、軸受によって回転自在に支持されたシャフト(共に図示省略)を介して所定の回転軸18a周りに回転自在に配設されており、回転軸18a方向で上記両電機子30、40とギャップを隔てて対向している。つまり、この界磁子20は、本回転電機10において回転子として機能する。
【0058】
この界磁子20は、界磁用磁石(永久磁石)22と第1磁性体24とを有する複数の磁極発生部26と、各磁極発生部26間に設けられた複数の第2磁性体28とを有している。
【0059】
各界磁用磁石22は、回転軸18a周りに間隔をあけて配設されている。より具体的には、各界磁用磁石22は、回転軸18aを中心とする円の周方向に沿って延びる弧状かつ帯状の板形状に形成されており、それぞれの間に間隔をあけて回転軸18aを中心とする環状に配設されている。各界磁用磁石22は、回転軸18aに沿った方向、即ち、界磁用磁石22の厚み方向に着磁されており、その両面にN極又はS極の磁極を呈する。これらの界磁用磁石22は、回転軸18aの周りで環状かつ交互の磁極を呈するように配設されている。つまり、本界磁子20は、上記両電機子30、40のそれぞれに対して、周方向に交互の磁極を持つ磁極面を呈している。ここでは、界磁用磁石22の数は6つであり、界磁子20は、6極の磁極を呈している。
【0060】
また、各界磁用磁石22のうち各両電機子30、40に対向する磁極面(即ち、回転軸18a方向における両面)に、それぞれ第1磁性体24が設けられている。各第1磁性体24は、軟磁性材料によって構成されている。この第1磁性体24は、励磁された電機子30、40の外部磁界によって界磁用磁石22に減磁界が作用した場合に、各界磁用磁石22に作用する減磁界の影響を緩和し、もって、各界磁用磁石22が減磁するのを防止している。また、第1磁性体24は、界磁用磁石22内部の高調波磁束による渦電流を低減する働きをも有している。また、各第1磁性体24は、弧状かつ帯状の平面視形状を有する板状部材に形成されており、回転軸18aを中心とする円において、径方向では上記界磁用磁石22と略同じ長さであり、その円の周方向では界磁用磁石22よりも短く形成されている。そして、第1磁性体24のうち第2磁性体28に対向する面24pが、界磁用磁石22のうち第2磁性体28に対向する辺22pよりも磁極中心側に凹む凹面24pとなるように形成されている(図3参照)。この凹面24pにより、後述する拡幅部28aが形成された部分で、拡幅部28aと磁極発生部26との間に磁気的に分離するのに十分な間隔を得ることができる。また、界磁用磁石22のうち第2磁性体28に対向する辺22pが第1磁性体24によって覆われないようにすることで、界磁用磁石22両端部間で両面側の第1磁性体24を経由した磁束漏れすることを低減することができる。
【0061】
上記した1つの界磁用磁石22とその両面に設けられた第1磁性体24とで磁極発生部26が構成されており、このように構成された磁極発生部26が複数、相互間で磁気的に分離されつつ回転軸18a周りに間隔をあけて配設されている。
【0062】
各第2磁性体28は、軟磁性材料によって形成されており、上記複数の磁極発生部26の各間に、当該各磁極発生部26とは磁気的に分離された態様で配設されている。
【0063】
回転軸18a方向における第2磁性体28の厚み寸法は、磁極発生部26の厚み寸法と略同一で、磁極発生部26の各第1磁性体24が各電機子30、40に近接するのと同程度まで、第2磁性体28が各電機子30、40に近接している。もっとも、第2磁性体28と電機子30、40との間のギャップ長は、第1磁性体24と電機子30、40とのギャップ長と同一であってもよいし、若干異なっていてもよい。
【0064】
この第2磁性体28は、基本的には、界磁用磁石22の中心を示すd軸のインダクタンスLdよりも、極間を示すq軸のインダクタンスLqを大きくすることで、逆突極性を呈し、いわゆるリラクタンストルクを更に加えて界磁子20を回転させる役割を有している。
【0065】
また、各第2磁性体28は、上記界磁用磁石22間に位置する部分よりも電機子30、40に近接して対向する部分で、回転軸18aに対して略直交する方向で他の本体部分28bよりも断面積を大きくする拡幅部28aを有している。より具体的には、各第2磁性体28のうち界磁用磁石22間に位置する部分よりも電機子30、40に近接して対向する部分を、その周方向に沿って外方に延出させることで、拡幅部28aを形成している。この拡幅部28aによって、第2磁性体28が電機子30、40に対向する面積を増やすことができ、電機子30、40から第2磁性体28に流れる磁束量を増大させて、q軸インダクタンスを大きくすることができる。すなわち、電機子30、40から第2磁性体28に磁束がわたる機会を増大させることで、安定してリラクタンストルクを発生させることを可能としている。
【0066】
なお、ここでは、第2磁性体28を、回転軸18a方向において2分割している。つまり、上記のように拡幅部28aを設けると、第2磁性体28の周方向の幅寸法は、各磁極発生部26間の間隔寸法よりも大きくなり得る。そこで、第2磁性体28を回転軸18a方向において2分割することで、拡幅部28aと界磁用磁石22との干渉を避けつつ、回転軸18a方向において両側から、各磁極発生部26間に2分割した第2磁性体28を組込むことができるため、組立性に優れた構成とすることができる。
【0067】
このアキシャルギャップ型回転電機10では、各巻線36、46に3相交流を流すと、各巻線36、46が巻回された各ティース34、44では、当該巻線36、46に流れる電流に応じた回転磁界が発生し、これらの2つの電機子30、40で発生した回転磁界によって、界磁子20を回転させることができる。
【0068】
この際、第2磁性体28は、断面積を大きくする拡幅部28aを有しているため、磁極発生部26の磁極面積を大きくして、電機子30、40に対する対向面積を広げることができる。これにより、q軸インダクタンスを大きくしてリラクタンストルクを増大させることができ、マグネットトルクとリラクタンストルクとの両方を有効に利用することができる。
【0069】
上記実施形態に基づいて、より好ましい具体的構成及び変形例について説明する。なお、以下の説明では、既に説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
まず、上記凹面24pは、当該凹面24pと拡幅部28aとの間隔寸法を所定距離に保つように凹む形状に形成されていることが好ましい。これは各磁極発生部26と第2磁性体28との間で磁束漏れを有効に防止しつつ、拡幅部28aの大きさをなるべく大きくしてq軸インダクタンスの増加によるリラクタンストルクの増大を図るためである。
【0071】
そのための具体的構成として、図3に示す例では、各第1磁性体24のうち拡幅部28aに対向する側面全体が、界磁用磁石22のうち第2磁性体28に近接する辺22p部分よりも磁極中心側に凹む凹面24pに形成されている。また、各拡幅部28aは、第1磁性体24よりも薄く、かつ、凹面24pの凹み量に応じた分、前記凹面24p側に突出している。より具体的には、第2磁性体28の本体部分28bと界磁用磁石22との間隔寸法が、これらの間での磁束漏洩を有効に防止できる程度の寸法Wbに設定されている。また、拡幅部28aの厚み寸法Wdは、第1磁性体24の厚み寸法よりも上記間隔寸法Wb分小さく、拡幅部28aの内向き面と界磁用磁石22の外向き面との間隔寸法が、上記寸法Wbと略同じ寸法Wcに設定されている。さらに、磁極発生部26に対する拡幅部28aの突出寸法は、上記凹面24pの凹み量と略同じであり、拡幅部28aと第1磁性体24との間隔寸法も、上記間隔寸法Wbと略同じである寸法Waに設定されている。これにより、磁極発生部26と第2磁性体28との間で磁束の漏れを防止し得る最小限の隙間を確保でき、q軸インダクタンスの増加によるリラクタンストルクの増大と、界磁用磁石22からの磁束漏洩の低減とを両立することができる。なお、Wb及びWcは、電機子鉄心と、エアギャップを2回通る磁路の磁気抵抗より大きい必要があるため、できるだけ、エアギャップ長の2倍を超える寸法であることが望ましい。
【0072】
図4に示す変形例では、上記第1磁性体24及び第2磁性体28にそれぞれ対応する第1磁性体124及び第2磁性体128を備えている。第1磁性体124のうち第2磁性体128に対向する凹面124pは、電機子30、40に近接するに従って、界磁用磁石22のうち拡幅部128aに近接する辺122p部分よりも磁極中心側に向けて傾斜する傾斜凹面124pに形成されている。また、上記第2磁性体128の拡幅部128aは、対向する傾斜凹面124pに対して略平行な傾斜面128pを有する形状に形成されている。そして、第1磁性体124と第2磁性体128との間隔寸法Wdと、界磁用磁石22と第2磁性体28との間隔寸法Weとが略同一の寸法に設定されている。
【0073】
この変形例によると、図3に示す例と同様の効果を得ることができる。加えて、拡幅部128aは、基端側で厚く先端側に向けて徐々に薄くなる形状なので強度的にも優れ、かつ、第2磁性体128の本体部128bから拡幅部128aに進む部分で磁束の急激な屈曲を防止して鉄損を低下させることができる。
【0074】
図5及び図6は、図3に示す例の変形例を示す図である。この変形例では、界磁用磁石22及び第2磁性体28にそれぞれ対応する界磁用磁石222及び第2磁性体228とを有している。そして、界磁用磁石222のうち第2磁性体228の拡幅部228aの付け根に対向する辺222p部分が面取り又は丸め処理されている。また、拡幅部228aの付け根部分228pは、界磁用磁石222の前記辺222p部分の加工処理形状に応じた形状で、面取り又は丸め処理されている。
【0075】
これにより、界磁用磁石222及び第2磁性体228の強度向上を図ることができる。また、第2磁性体228の本体部分228bから拡幅部228aに至る経路を滑らかにすることで磁束の急激な屈曲を防止し鉄損を低減することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、基本的には、電機子30、40が2つある場合を中心に説明するが、必ずしもその必要はなく、電機子30、40が1つだけであってもよい。
【0077】
この場合の界磁子20の例を図7及び図8に示す。図7及び図8は、図3と同様断面における界磁子を概念的に示す図である。
【0078】
図7に示す例では、図3における一方側の拡幅部28a及び第1磁性体24を残すと共に、他方側の拡幅部28a及び第1磁性体24を省略して、代りにバックヨーク磁性体329を設けた例である。換言すれば、1つの電機子に対向する側に第1磁性体24及び第2磁性体28の拡幅部28aが設けられ、反対側には全ての界磁用磁石22及び第2磁性体28を磁気的に短絡する略円盤状のバックヨーク磁性体329が設けられている。この際、バックヨーク磁性体329は、各界磁用磁石22(磁極発生部)及び第2磁性体28を固定保持することが可能である。また、バックヨーク磁性体329の中央部に回転シャフトを挿通保持させるようにしてもよい。
【0079】
図8に示す例では、図4における一方側(電機子側)の拡幅部128a及び第1磁性体124を残すと共に、他方側(電機子の反対側)の拡幅部128a及び第1磁性体124を省略して、代りにバックヨーク磁性体329を設けた例である。その他の構成は、図7を参照して説明したのと同じである。
【0080】
これらの例のように、本実施形態は、界磁子の両側に電機子が設けられる構成だけではなく、界磁子の一方側だけに電機子が1つ設けられる構成にも適用できる。
【0081】
図9及び図10は上記磁極発生部及び第2磁性体を非磁性体ホルダで固定保持した例を示しており、図9は外周側のリング部材を一部切り欠いた状態を示している。
【0082】
すなわち、界磁子20の両側に電機子30、40がある場合、各磁極発生部26と各第2磁性体28とはそれぞれ磁気的に独立した状態で設けられる必要がある。そこで、ここでは、内周側非磁性体ボス部52(図10参照)と外周側非磁性体リング部材54とを有する非磁性体ホルダ50で、各磁極発生部26と各第2磁性体28とを固定保持している。
【0083】
内周側非磁性体ボス部52は、シャフト外周に回り止状態で固定された環状の非磁性体部材に形成されており、この周りに上記各磁極発生部26と各第2磁性体28とがそれぞれ上記した態様で配設される。外周側非磁性体リング部材54は、上記したように略環状に配設される各磁極発生部26と各第2磁性体28との外周に嵌め込み可能なリング状部材であり、非磁性体で形成されている。そして、内周側非磁性体ボス部52周りに各磁極発生部26と各第2磁性体28とを上記した態様で配設した状態で、その外周周りに外周側非磁性体リング部材54を外嵌めすることで、各磁極発生部26と各第2磁性体28とが所定の配設形態で、脱落防止状態でシャフトに固定される。
【0084】
非磁性体リング部材54は、例えば、熱して径を拡大するか、又は、弾性変形させて径を広げた状態で、各磁極発生部26と各第2磁性体28との外周に外嵌めして固定するとよい。
【0085】
また、外周側非磁性体リング部材54としては、例えば、SUS製のリングを用い、回転軸18a方向の両端縁部で界磁子20の中心側に延出するように丸める又は屈曲するようにして縁部54aを形成し、各磁極発生部26と各第2磁性体28とを回転軸18a方向で位置決めするようにするとよい。この際、外周側非磁性体リング部材54のうち内周側に丸める又は屈曲した縁部54aは、各ティース34、44とは対向しないようにして、界磁子20のうち前記縁部54aを除く部分が電機子30、40のティース34、44と対向するようにするとよい。これにより、前記縁部54aが界磁子20と電機子30、40のティース34、44間に存在しないようにして、界磁子20と電機子30、40とのギャップをなるべく小さくすることができる。
【0086】
図11は磁極発生部及び第2磁性体をモールド成形された樹脂製の非磁性体ホルダで固定保持した例を示している。なお、図11は図3と同様断面における界磁子を概念的に示している。
【0087】
すなわち、各磁極発生部26及び各第2磁性体28とが金型内に固定された状態で、樹脂を金型成形することで、非磁性体ホルダ450が形成されている。そして、この非磁性体ホルダ450によって各磁極発生部26及び各第2磁性体28を所定の配設形態で保持している。なお、この非磁性体ホルダ450をシャフトに固定保持するようにしてもよい。
【0088】
図12は第2磁性体を2分割された非磁性体ホルダで挟持するように固定した例を示している。なお、図12は図3と同様断面における界磁子を概念的に示している。
【0089】
すなわち、上記非磁性体ホルダ450を回転軸18a方向において2分割したような形状の分割ホルダ552が形成されている。そして、この分割ホルダ552が重ね合されることで、各磁極発生部26を挟持状に保持すると共に、各第2磁性体28を一定位置に保持する非磁性体ホルダ550が構成されている。この非磁性体ホルダ550は、シャフトに固定保持されていてもよい。
【0090】
上記分割ホルダ552を重ね合せ状態に保持する構成としては、例えば、両分割ホルダ552自体をボルト等の締結部材で重ね合せ状態に固定する構成を採用してもよい。また、両分割ホルダ552を重ね合せた状態で、その両側から第2磁性体28の分割体を嵌め込んで、当該分割体をボルト等の締結具554で合体状態に保持するようにしてもよい。第2磁性体28の両端部分は拡幅部28aが形成されているため、第2磁性体28の分割体を合体状態で保持すれば、両分割ホルダ552を重ね合せ状態で保持することができる。
【0091】
図13は第1磁性体と第2磁性体とを一体化した例に係る界磁子を示す図であり、図14は図13におけるXIII−XIII線における断面を概念的に示す図である。
【0092】
すなわち、この界磁子620では、一方の電機子30に対向する各第2磁性体628(第2磁性体28に対応する)は、隣設する各第1磁性体624(第1磁性体24に対応する)に連結部629を介して連結されて一体化さされている。つまり、一方の電機子30に対向する各第2磁性体628と各第1磁性体624とが連結部629を介して連結一体化されて略円盤状の一体化部材として構成されている。また、このように一体形成する際、電機子30に対向する面を基準にして第1磁性体624と第2磁性体628との各対向面が同一面上に位置するように形成し、第2磁性体28の内向き部分が第1磁性体24の内面よりも突出するように形成されている。他方の電機子40に対向する各第2磁性体628と各第1磁性体624とについても連結部629を介して連結一体化されて略円盤状の一体化部材として構成されている。なお、連結部629は、各第2磁性体628と各第1磁性体624との内周部と外周部でそれらを連結しており、容易に磁気飽和する程度に十分に小さい断面積に形成されている。このような各第2磁性体628と各第1磁性体624との一体化物は例えば圧粉磁心、特に圧粉鉄心にて形成することができる。そして、各第1磁性体624間に界磁用磁石22を挟込んだ状態で、上記第1磁性体624と第2磁性体628との一体化物を重ねると界磁子620を得ることができる。
【0093】
これにより、第1磁性体624と第2磁性体628との位置決め精度を向上させることができる。特に、第1磁性体624と第2磁性体628とのそれぞれの電機子30への対向面を基準にしてそれらが同一面上に位置するように形成することで、界磁子620と電機子30、40間でのギャップ長の精度を向上させることができる。
【0094】
なお、上記界磁子620をシャフトに固定する場合、シャフトが非磁性体であれば、第1磁性体624と第2磁性体628とを一体化したものの内部にシャフトを挿通して固定することができる。シャフトが磁性体であれば、当該シャフトSに対して磁気的に分離するため、非磁性体のボス等を介して固定すればよい。この際、ボス部650を回転軸18a方向において2分割してボス分割体651、651とし、ボス分割体651のうち回転軸18a方向の外側端部部分の外径を上記一体化物の内径よりも大きくするとよい。そして、上記第1磁性体624と第2磁性体628との一体化物を重ねた状態で、回転軸18a方向両側から両ボス分割体651を挿入して両ボス分割体651をシャフトSに固定することで、前記一体化物を重ね合せ状態で保持することができる(図14参照)。
【0095】
図15は第2磁性体を第3磁性体で一体化した例に係る界磁子を示す斜視図である。
【0096】
すなわち、この界磁子720では、上記界磁子20における第2磁性体28に対応する第2磁性体728として、界磁子720の略径方向に沿って略等幅、即ち、回転軸18aに略直交する平面において径方向に長い略長方形状を有するものを備えている。また、磁極発生部26に対応する磁極発生部726は、回転軸18aに略直交する平面において、前記第2磁性体728との間隔を界磁子720の略径方向に沿って等幅にするように略扇形状に形成されている。さらに、各第2磁性体728の内周部に、各磁極発生部726とは磁気的に分離する略環状の第3磁性体729が配設されている。そして、上記各第2磁性体728の内周部が第3磁性体729に連結保持されて、各磁極発生部726間の所定位置に保持されている。このような第2磁性体728と第3磁性体729との一体化物も、例えば、圧粉磁心等で形成することができる。なお、本実施形態では、第2磁性体728と第3磁性体729との一体化物は、回転軸18a方向において2分割されており、これらは、各第2磁性体728間に磁極発生部726を配設した状態で、重ね合せ状に組立てられる。もちろん、必ずしも第2磁性体728と第3磁性体729との一体化物は、回転軸18a方向において2分割されている必要はない。
【0097】
かかる構成により、各第2磁性体728を一定位置に保持することができる。もちろん、第2磁性体728は、上記第2磁性体28と同様形状であってもよい。
【0098】
なお、第2磁性体728は、リラクタンストルクを発生させるコア、つまり、いわゆるq軸を短絡するコアであり、界磁用磁石22による磁束が通過するものではないため、上記のように各第2磁性体728が第3磁性体729を介して磁気的に短絡されていても問題はない。
【0099】
また、第2磁性体728と第3磁性体729との一体化物は、回転軸18a方向において2分割されているため、第2磁性体28と界磁子720との干渉を防止しつつ、界磁子720を容易に組立てることができる。
【0100】
また、上記構成においては、シャフトが磁性体又は非磁性体で形成されているに拘らず、第3磁性体729をシャフトに直接固定するようにしてもよい。この場合、磁極発生部726については、上記したいずれの保持構成を採用してもよい。例えば、別途準備したホルダで磁極発生部726を保持してもよいし、また、図15に示す構成を適用し、第1磁性体724を第2磁性体728及び第3磁性体のうちの少なくとも一方に、磁気飽和容易な連結部で連結して一体化してもよい。後者の場合、他の保持用の部材を用いることなく、容易に第1磁性体724を保持できる。
【0101】
図16は第2磁性体を積層鋼板で形成した例に係る界磁子を示す斜視図である。
【0102】
この界磁子820では、上記界磁子20における第2磁性体28に対応する第2磁性体828として、界磁子720の略径方向に沿って略等幅、即ち、回転軸18aに略直交する平面において径方向に長い略長方形状を有するものを備えている。また、この第2磁性体828は、鋼板を、回転軸18aを中心とする円の径方向に沿って積層した積層鋼板によって形成されている。なお、第2磁性体828は、回転軸18a方向において分割された構成であっても、一体化された構成であってもよい。また、磁極発生部826は、上記磁極発生部726と同じである。
【0103】
界磁子820の両側に電機子30、40を配設したタイプにおいては、第2磁性体828を通る磁束は、ギャップ付近で周方向に流れる他は、主として軸方向に流れ、積層方向へ流れる磁束はほとんどない。このため、磁気抵抗の低い磁路を形成することができる。
【0104】
図17は一対の分割ホルダを用いた界磁子を示す斜視図であり、図18〜図21は同界磁子の製造工程を示す説明図である。
【0105】
この界磁子920は、上記磁極発生部26に対応する磁極発生部926を回転軸18a方向における両側から挟込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ951を含む非磁性体ホルダ950を有している。各非磁性体分割ホルダ951は、回転軸18aに略直交する面において、上記各磁極発生部926の周囲を囲む複数の固定枠部952を有している。各固定枠部952は、その内側に設けられた環状部953を介して連結固定されている。各固定枠部952のうちその周方向両端部の内面には、電機子30、40側に向けて内向き傾斜する傾斜面952aが形成されている。また、磁極発生部926は、上記第1磁性体24に対応する第1磁性体924を有しており、その第1磁性体924のうちその周方向両端部は、電機子30、40側に向けて内向き傾斜する傾斜面924aを有している。そして、一対の非磁性体分割ホルダ951を重ね合せるようにして、それぞれの固定枠部952間に各磁極発生部26を配設すると、第1磁性体924の両傾斜面924aを各固定枠部952の傾斜面952aに当接させるようにして、各第1磁性体924が両固定枠部952間の所定位置に保持されるようになっている(図18〜図20参照)。
【0106】
また、各固定枠部952のうちその周方向両端部の外面には、第2磁性体28に対応する第2磁性体928の拡幅部928aをその径方向に沿って挿入可能な溝部952bが形成されており、これにより、各固定枠部952間、即ち、各磁極発生部926間に位置して、第2磁性体928をその外周側から挿入可能な嵌合孔954が形成されている。なお、第2磁性体928は、界磁子920の略径方向に沿って略同断面形状を有し、かつ、拡幅部928aが先端側に向けて徐々に薄肉になる形状とされている。そして、各嵌合孔954にその外周側から第2磁性体928を挿入すると、第2磁性体928のうち両電機子30、40側の各拡幅部928aが一対の非磁性体分割ホルダ951のそれぞれの溝部952bに嵌り込み、一対の非磁性体分割ホルダ951が重ね合せ状態に保持されるようになっている(図20及び図21参照)。
【0107】
また、上記のように第2磁性体928が挿入された状態で、一対の非磁性体分割ホルダ951の外周囲に非磁性体で形成されたリング部材956が外嵌めされる。このリング部材956により、第2磁性体928が挿入状態で固定保持されている。
【0108】
これにより、各磁極発生部926及び各第2磁性体928を、接着やボルト等を用いずに、容易に保持して、界磁子920を容易に製造することができる。
【0109】
なお、上記外周側非磁性体リング部材54と同様に、リング部材956を、回転軸18a方向の両端縁部で中心側に延出するように丸める又は屈曲するようにして縁部56aを形成し、この縁部56aを一対の非磁性体分割ホルダ951の縁部に係合させて回転軸18a方向で位置決めするようにするとよい。この際、縁部56aは、各ティース34、44とは対向しないようにして、界磁子920のうち前記縁部56aを除く部分が電機子30、40のティース34、44と対向するようにするとよい。これにより、界磁子920と電機子30、40とのギャップをなるべく小さくすることができる。
【0110】
{変形例}
なお、上記したいずれの構成も互いに相反しない限りにおいて適宜組合わせて構成することができる。
【0111】
また、上記したいずれの構成においても、第1磁性体を圧粉磁心、特に、圧粉鉄心で形成することが好ましい。第1磁性体における磁束の流れは、回転軸18a方向に加えて、周方向成分をも有するため、周方向成分及び径方向成分を有する磁束を低い磁気抵抗で通過させることができるからである。これに対して、軸方向に積層した鋼板を用いると磁気抵抗が増し、また、回転軸方向の長さが比較的短いため、径方向に積層した鋼板では、積層間を固着することが困難となる。
【0112】
また、上記説明では、界磁子が回転子であり、電機子が固定子である場合で説明したが、界磁子が固定子であり、電機子が固定子であってもよい。つまり、界磁子が電機子に対して相対的に回転すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機を示す分解斜視図である。
【図2】同上の回転電機の界磁子を示す斜視図である。
【図3】同上野回転電機の界磁子の周方向における断面を概念的に示す図である。
【図4】拡幅部の変形例を示す説明図である。
【図5】拡幅部の他の変形例を示す説明図である。
【図6】拡幅部の他の変形例を示す説明図である。
【図7】電機子を1つにした場合の変形例を示す説明図である。
【図8】電機子を1つにした場合の他の変形例を示す説明図である。
【図9】磁極発生部及び第2磁性体を非磁性体ホルダで固定保持した例を示す図である。
【図10】磁極発生部及び第2磁性体を非磁性体ホルダで固定保持した例を示す図である。
【図11】磁極発生部及び第2磁性体をモールド成形された樹脂製の非磁性体ホルダで固定保持した例を示す説明図である。
【図12】磁極発生部を2分割された非磁性体ホルダで保持する例を示す説明図である。
【図13】第1磁性体と第2磁性体とを一体化した変形例を示す図である。
【図14】図13におけるXIII−XIII線における断面を概念的に示す図である。
【図15】第2磁性体を第3磁性体で一体化した界磁子を示す斜視図である。
【図16】第2磁性体を積層鋼板で形成した界磁子を示す斜視図である。
【図17】一対の分割ホルダを用いた界磁子を示す斜視図である。
【図18】同上の同界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図19】同上の同界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図20】同上の同界磁子の製造工程を示す説明図である。
【図21】同上の同界磁子の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0114】
10 アキシャルギャップ型回転電機
18a 回転軸
20,620,720,820,920 界磁子
22,222 界磁用磁石
22p,122p,222p 辺
24,124,624,724,924 第1磁性体
24p 凹面
26,726,826,926 磁極発生部
28,128,228,628,728,828 第2磁性体
28a,128a,228a,928a 拡幅部
30,40 電機子
34,44 ティース
50 非磁性体ホルダ
54a 縁部
124p 傾斜凹面
128p 傾斜面
228p 付け根部分
329 バックヨーク磁性体
450,550 非磁性体ホルダ
552 分割ホルダ
629 連結部
729 第3磁性体
924a 傾斜面
950 非磁性体ホルダ
951 非磁性体分割ホルダ
954 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子(30、40)と、
前記電機子に対して回転軸(18a)周りに相対的に回転可能で、前記回転軸方向で前記電機子と対向する界磁子(20,620,720,820,920)と、
を備え、
前記界磁子は、
前記電機子に対向する側で磁極面を呈する界磁用磁石(22,222)と前記磁極面に設けられた第1磁性体(24,124,624,724,924)とをそれぞれ有し、前記電機子に対向する側で前記回転軸周りに複数の磁極を呈すると共に、極性の異なる相互間で磁気的に分離された態様で、前記回転軸周りに配設された複数の磁極発生部(26,726,826,926)と、
前記各磁極発生部間に、前記各磁極発生部を相互に磁気的に分離しつつ配設された複数の第2磁性体(28,128,228,628,728,828)と、
を備え、
前記各第2磁性体は、前記各界磁用磁石間に位置する部分よりも前記電機子に近接して対向する部分で、前記回転軸に対して略直交する方向での断面積を大きくする拡幅部(28a,128a,228a,928a)を有する、回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機であって、
前記各第1磁性体(24,124,624,724,924)のうち前記各第2磁性体(28,128,228,628,728,828)に対向する面は、前記各界磁用磁石(22,222)のうち前記各第2磁性体に近接する辺部分(22p,122p,222p)よりも磁極中心側に凹む凹面(24p,124p)に形成されている、回転電機。
【請求項3】
請求項2記載の回転電機であって、
前記各凹面(24p,124p)は、前記拡幅部(28a,128a,228a,928a)と前記凹面との間隔寸法を所定距離に保つように凹んでいる、回転電機。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の回転電機であって、
前記各凹面(122p)は、前記電機子に近接するに従って、前記各界磁用磁石のうち前記各第2磁性体に近接する辺部分(122p)よりも磁極中心側に向けて傾斜する傾斜凹面であり、
前記各拡幅部(128a)は、対向する前記傾斜凹面に対して略平行な傾斜面(128p)を有する、回転電機。
【請求項5】
請求項2又は請求項3記載の回転電機であって、
前記各第1磁性体(22)のうち前記各第2磁性体に対向する面の全体が、前記各界磁用磁石のうち前記各第2磁性体に近接する辺(22p)部分よりも磁極中心側に凹む凹面(24p)に形成されており、
前記各拡幅部(28a)は、前記第1磁性体(24)よりも薄くかつ前記凹面の凹み量に応じた分、前記凹面側に突出している、回転電機。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれかに記載の回転電機であって、
前記各界磁用磁石(222)のうち前記拡幅部(228a)の付け根部分(228p)に対向する辺(222p)部分が面取り又は丸め処理され、これに応じた形状で、前記各拡幅部の付け根部分が面取り又は丸め処理されている、回転電機。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の回転電機であって、
前記電機子を1つ備え、
前記回転子は、前記各磁極発生部のうち前記電機子とは反対側の部分で前記各磁極発生部同士を磁気的に短絡しつつ前記各磁極発生部を支持するするバックヨーク(329)を有する、回転電機。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の回転電機であって、
前記回転軸方向において前記界磁子の両側に前記電機子(30、40)を2つ備え、
前記界磁子(20,620,720,820,920)は、前記2つの電機子のそれぞれに対する前記各第1磁性体(24,124,624,724,924)と前記各拡幅部(28a,128a,228a,928a)とを有する、回転電機。
【請求項9】
請求項8記載の回転電機であって、
前記第2磁性体(28)は、前記回転軸方向において2分割されている、回転電機。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の回転電機であって、
前記各第2磁性体(628)は、隣設する前記各第1磁性体(624)に磁気飽和容易な連結部(629)で一体化されている、回転電機。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の回転電機であって、
前記第2磁性体(828)は、前記回転軸を中心とする円の径方向に沿って積層された積層鋼板によって形成された、回転電機。
【請求項12】
請求項8記載の回転電機であって、
前記各第2磁性体(728)は、前記各第2磁性体の内周部に配設され、前記各磁極発生部とは磁気的に分離する略環状の第3磁性体(729)により保持された回転電機。
【請求項13】
請求項12記載の回転電機であって、
前記各第1磁性体(728)は、前記各第2磁性体(728)及び前記第3磁性体(729)の少なくとも1つと、磁気飽和容易な連結部で一体化されている、回転電機。
【請求項14】
請求項12又は請求項13記載の回転電機であって、
前記各第2磁性体(728)及び前記第3磁性体(729)は、回転軸方向において2分割されている、回転電機。
【請求項15】
請求項8記載の回転電機であって、
前記各磁極発生部(26,926)及び前記各第2磁性体(28,928)とが、非磁性体ホルダ(450,550,950)に固定された、回転電機。
【請求項16】
請求項15記載の回転電機であって、
前記非磁性体ホルダ(550,950)は、前記各磁極発生部を前記回転軸方向における両側から挟込むようにして固定する一対の非磁性体分割ホルダ(552,951)を有する、回転電機。
【請求項17】
請求項15又は請求項16記載の回転電機であって、
前記非磁性体ホルダ(950)に、前記各磁極発生部間に位置して、前記第2磁性体(928)をその外周側から挿入可能な嵌合孔(954)が形成され、前記各第2磁性体が前記各嵌合孔にその外周側から挿入されて保持された、回転電機。
【請求項18】
請求項17記載の回転電機であって、
前記非磁性体ホルダの外周側に、非磁性体のリング部材(956)が嵌められる、回転電機。
【請求項19】
請求項18記載の回転電機であって、
前記リング部材のうち前記回転軸方向における両端部に前記界磁子の中心側に延出する縁部(956a)が形成され、前記界磁子のうち前記縁部を除く部分が前記電機子のティースに対向する、回転電機。
【請求項20】
請求項1〜請求項19のいずれかに記載の回転電機であって、
前記第1磁性体(24,124,624,724,924)は圧粉磁心で形成された、回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−278590(P2008−278590A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117198(P2007−117198)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】