説明

回転電機

【課題】磁石型発電機のような回転電機において、アウターロータの回転検知を精度よく実施でき、しかも、コンパクト化を損なわないような検知手段を構成する。
【解決手段】アウターロータ3の回転を、アウターロータ3内周面の界磁6を被検知体として第一〜第四ホールIC10、11、12、13を用いて検知する構成とする一方、これら第一〜第四ホールIC10、11、12、13をケース体14に収容された検知センサユニット9とし、該検知センサユニット9を、ステータコア4のエンジン2側の側面に沿って配設し、ステータコア4とエンジン2とにそれぞれ支持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のエンジン等に設けられる回転電機の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種回転電機のなかには、自動二輪車のエンジンに設けられる磁石型発電機のように、内周面に複数の界磁が設けられた有底筒状のアウターロータと、アウターロータに内装され、外周に複数のティースが形成されたコア材にコイルを巻装してなるステータコアとを備えて構成し、前記アウターロータをフライホイールとして兼用するようにしたものが提唱されている。そして、このものにおいて、磁石型発電機をエンジン始動装置(スタータモータ)として機能させることが提唱されており、この場合では、磁石型発電機をブラシレスモータとして駆動させるためモータドライバを設け、該モータドライバからの制御信号に基づいてステータコアの各コイルに電源供給し、これによってアウターロータを回転するように構成されている。そして、モータドライバは、アウターロータの回転位置を検知する回転位置検知手段から出力されるモータ駆動用信号の入力に基づいて対応する制御信号を出力するように構成されており、このような回転位置検知手段としては、ロータ側の部材にセンサマグネットを設ける一方、ステータ側の部材にホールIC等のセンサ素子(検知センサ)を設けて、アウターロータの回転に伴うセンサマグネットの磁気変化を検知する構成が提唱されている。
【0003】
この具体例として、アウターロータと一体回転するボス筒部にリング状のセンサマグネットを設ける一方、センサケースにセンサ素子を収納し、該センサケースをステータコアの内径側に取付ける構成としたものが提唱されている。
【特許文献1】特開2003−148317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものにおいて、センサマグネットとセンサケースとの両者をステータコアの内径側に設けることになるが、これらがステータコアに干渉しないように構成するためには、ボス筒部を軸方向に長くしたり、ステータコアの内周とボス筒部の外周との間を広く確保しなければならず、磁石型発電機のコンパクト化が損なわれるという問題がある。さらには、センサケースをステータコアの内径側に設ける構成であるが故に、ステータコアに巻装されるコイルが励磁した場合に、コイルの磁界がセンサ素子に影響してしまうという問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンの躯体から突出する回転軸に遊嵌状に外嵌し、躯体に固定されるステータコアと、内周面に複数の界磁が設けられ、ステータコアに遊嵌状に外嵌、前記駆動軸と一体回転するよう連結される有底筒状のアウターロータとを備えてなる回転電機において、アウターロータの回転を、アウターロータ内周面の界磁を被検知体として検知センサを用いて検知する構成とし、前記検知センサをセンサケースに収容された検知センサユニットとし、該検知センサユニットを、ステータコアの前記躯体側の側面に沿って配設し、ステータコアと前記躯体とにそれぞれ支持する構成とした回転電機である。
請求項2の発明は、センサケースは、扇型の外形を有して形成され、内径側にステータコアとの支持部が、外径側に躯体との支持部が形成されている請求項1に記載の回転電機である。
請求項3の発明は、センサケースは、ステータコアを構成するコア外周のティース隣接部に嵌入する複数の先端先細状のセンサ保持部が形成され、これらセンサ保持部の先端部にそれぞれ検知センサが配設されている請求項1または2に記載の回転電機である。
請求項4の発明は、検知センサは、予めセンサホルダに支持されてセンサケースのセンサ保持部に内装される構成とし、センサ保持部の基端部には、検知センサが接続する基板が収容される基板収容部が形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転電機である。
請求項5の発明は、ステータコアは、ティースに切欠き部が形成され、該切欠き部にセンサケースのセンサ保持部が嵌入保持されるように構成されている請求項3または4に記載の回転電機である。
請求項6の発明は、センサケースは、樹脂材で一体型成形されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転電機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、センサケースを、エンジン近傍の振動の影響が大きい箇所に設けられるものでありながら、安定性よく支持することができて、アウターロータの回転を精度よく検知できる。
請求項2の発明とすることにより、センサケースの振動に基づく軸方向の位置ズレを防止できる。
請求項3の発明とすることにより、回転電機のコンパクト化を損なうことなく精度の高い検知を実現できる。
請求項4の発明とすることにより、組込みが容易で、高い検知精度を維持することができる。
請求項5の発明とすることにより、コンパクト化を損なうことが防止される。
請求項6の発明とすることにより、センサケースを簡単、かつ、容易に形成できるうえ、取付け作業も容易になってコスト低下に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図面において、1は磁石型発電機であって、該磁石型発電機1は、自動二輪のエンジン2から突出する駆動軸2aに連動連結されるように構成されており、エンジン2の始動時においてはスタータモータとして機能し、エンジン2の始動後においては発電機として機能するように構成されている。
そして、磁石型発電機1は、エンジンケース2bに設けられた支持片部2cから外方に突出する駆動軸2aに連動連結されるアウターロータ3と、該アウターロータ3の筒内に相対回転自在に収容されるステータコア4とを備えたブラシレス型の回転電機として構成されている。
【0008】
前記アウターロータ3は、強磁性部材からなる金属製プレート体を適宜成形加工することにより有底筒状に形成されたヨーク5と、ヨーク5の内周面に周回り方向に複数固定されるN極、S極複数対の永久磁石(界磁)6とを備えて構成されている。前記ヨーク5は、底片部5aと、該底片部5aからエンジン躯体2a側である軸方向一端側に延出する筒片部5bと、前記底片部5aの軸芯部から筒片部5bに沿って筒開口側に向けて延出するボス筒部5cとを備えて構成されている。
尚、前記複数対の界磁6は、ヨーク筒片部5bの内周面に固定されるリング状の磁石ホルダ6aを介して抜け止め状に固定されている。
【0009】
一方、前記ステータコア4は、複数枚のコア材7を積層して構成されているが、前記各コア材7は、貫通孔7aが開設されたリング状の本体部7bの外周縁部から、所定間隙を存して放射方向に突出する周回り方向複数のティース7cを備えて構成されている。これら各ティース7cは、本体部7bの外周縁部から突出する脚片7dと、該脚片7dの突出先端部に周回り方向両側に突出する状態で形成される爪片7eとにより構成されている。そして、ステータコア4は、各ティース7cの脚片7dに巻線を巻装して、外周に周回り方向複数のコイル(図示せず)が形成されたものに構成されている。
尚、8は、積層されたコア材7の軸方向両側部に沿って設けられるインシュレータであって、これらインシュレータ8には、積層された各脚片7dの周回り方向両側縁部を覆う覆い部8aと、コア材の本体部7b外周縁相当部位に位置して軸方向に突出するリング状の突片8bがそれぞれ形成されている。
【0010】
そして、磁石型発電機1のステータコア4は、コア材本体部7bの貫通孔7aを、エンジン2の駆動軸2aに対して同芯となるよう位置合わせして遊嵌状に外嵌させ、コア材本体部7bを貫通するスルーボルト7fをエンジンケース2bの支持片部2cに固定することによりエンジン2に固定されるように構成されている。また、アウターロータ3は、ヨーク5にステータコア4が内嵌される状態とし、支持片部2cから突出する駆動軸2aにヨークボス筒部5cを回り止め状に外嵌させることによりエンジン2に取付けられ、エンジン駆動軸2aとアウターロータ3とが一体回転するようように構成されている。
【0011】
このように構成された磁石型発電機1は、図示しないモータドライバ機能を備えた制御部からの制御信号に基づいて、各コイルに対して電源を供給することによりブラシレスモータとして機能し、アウターロータ3を回転せしめてエンジン2を始動するスタータを構成するように設定されている。そして、エンジン2の始動後は、エンジン駆動軸2aとともに界磁(永久磁石)6が配設されたアウターロータ3がステータコア4の外周を回転することにより、ステータコア4の各コイルに起電力が誘導され、これによって、発電機として機能するように構成されている。
【0012】
そして、前記制御部に回転位置検知手段が接続され、アウターロータ3の回転位置を検知してモータ駆動用信号をモータドライバに入力するように設定されている。
前記回転位置検知手段は、被検知体としてアウターロータ3内周面の界磁6をそのまま用い、アウターロータ3の回転に伴う界磁6の磁気変化を、検知センサとしてホールIC(センサ素子)を用いて検知するように構成されている。そして、本実施の形態では、後述するように、ホールICが検知センサユニット9に組込まれており、該検知センサユニット9を、界磁6の近傍に位置する状態で配設するように構成されている。尚、磁石型発電機1は三相交流式に構成されており、このため、U、V、Wの各相に対応する三つの第一、第二、第三ホールIC(検知センサ、センサ素子)10、11、12が必要となるが、これら第一、第二、第三ホールIC10、11、12は検知センサユニット9に組込まれてユニット化されており、該検知センサユニット9を後述する状態でステータコア4に固定することにより、第一〜第三ホールIC10、11、12がそれぞれ界磁6に近接対向した状態で配設されるように構成されている。
【0013】
ここで、磁石型発電機1は、エンジン始動装置として機能するため、点火タイミングを判断する点火タイミング検知手段が別途必要となるが、本実施の形態では、図9(A)に示すように、アウターロータ3に周回り方向複数対配設されるN極とS極とからなる界磁6のうち、周回り方向任意の箇所の一つのS極6bは、二段着磁することによりアウターロータ3(ヨーク5)の開口側、即ち、エンジン8配設側の端部となる軸方向一端部にN極が形成されている。これによって、軸方向一端部における周回り方向一箇所にはN極が三個連続して配設される箇所が形成されることになり、界磁6の配設状況が軸方向他端部側とは異なり、該軸方向一端部の界磁6の磁気変化を検知することでアウターロータ3の回転位置を検知し、該回転位置から点火タイミング用信号を得るように構成されている。そして、本実施の形態では、界磁6の軸方向一端部に第四ホールIC(検知センサ、センサ素子)13を対向させることによりアウターロータ3の回転位置を検知するように構成され、この場合に、第四ホールIC13は、前記検知センサユニット9に第一〜第三ホールIC10、11、12とともに組込まれ、第一、第二、第三ホールIC10、11、12は界磁6の二段着磁されない部位であって、反エンジン2配設側である軸方向他端側の部位に対向してモータ駆動用信号を出力するように構成され、第四ホールIC13は界磁6の二段着磁されて配設状況の異なる軸方向一端部に対向してアウターロータ3の回転位置を検知して点火タイミング用信号を出力するように構成されている。
そして、前記制御部は、エンジン始動のための信号が入力されることに伴い、第一〜第三ホールIC10、11、12からのモータ駆動用信号に基づいてアウターロータ4を回転駆動させるべくステータコア4のコイルに制御信号を出力するとともに、第四ホールIC13からの点火タイミング用信号に基づいて点火制御をするが、該点火制御では、点火信号を、第一〜第三ホールIC10、11、12からのモータ駆動用信号と、アウターロータ3の回転数と第四ホールIC13から出力される点火タイミング用信号との関係に基づいて出力するように構成されている。尚、制御部における制御構成は、ホールICを用いて点火タイミングを制御する汎用の構成を用いることができる。
【0014】
つぎに、第一〜第四ホールIC10、11、12、13が組込まれる検知センサユニット9を説明するが、該説明にあたり、検知センサユニット9は、図1に示すように、ステータコア4の軸方向一端側であって、エンジンケース2bの支持片部2c側(躯体側)の側面に沿って組込まれた姿勢を基準として説明する。
前記検知センサユニット9を構成するケース体(センサケースに相当する)14は樹脂材により一体型成形されたものとなっており、ステータコア4を構成する周回り方向に隣接する任意の五つのコイル形成部位に対向するべく円弧形状に形成され、ティース7cの外径と略同様の外径側片14aと、ティース脚片7dの径方向中間部位に対向する内径側片14bと、これら内外側片14a、14bとを連結する周回り方向に対向する一対の側片14cと、ステータコア4の軸方向一端部に沿う溝底片14dとにより、軸方向一端側が開口する円弧状の凹溝状体に形成されている。そして、溝底片14dの外径側部位には、軸方向他端側に向けて四つのホルダ片(センサ保持部に相当する)14eが突出形成されるが、これら各ホルダ片14eは、後述するように、周回り方向に隣接するコイル同士の外径縁部に形成される隙間にそれぞれ嵌入可能な形状に形成されている。そして、各ホルダ片14eには、溝底片14dを貫通する状態で支持溝14fが軸方向他端側に向けてそれぞれ形成されており、各支持溝14fの溝側面は、先端側(軸方向他端側)ほど細い先端先細状の溝形状となるよう傾斜状に形成されている。
【0015】
そして、支持溝14f(ホルダ片14e)には、ケース体14の溝開口側から第一〜第四ホールIC10、11、12、13がそれぞれ組込まれるが、これら各第一〜第四ホールIC10、11、12、13は、予めセンサホルダ15に支持された状態で組込まれるように構成されている。前記センサホルダ15は、ケース体14の外径側片14aに沿う円弧状の平板部15aを備えて構成されており、該平板部15aの軸方向他端側の板面には、前記支持溝14fに対向する状態で軸方向他端側に向けて突出する四つの支持片15bが形成されている。前記各支持片15bのうち、周回り方向一方の端部に位置する支持片15cは、他の支持片15bよりも突出長さが短く形成されており、突出長さの長い支持片15bに第一〜第三ホールIC10、11、12が、突出長さの短い支持片15cに第四ホールIC13が支持されるように設定されている。ここで、各第一〜第四ホールIC10、11、12、13は、それぞれ本体部10a、11a、12a、13aと端子部10b、11b、12b、13bとを備えて構成されている。一方、センサホルダ平板部15aには、各支持片15b、15cの基端部に位置して貫通孔15dが開設されている。そして、各第一〜第四ホールIC10、11、12、13は、各支持片15b、15cの先端部に本体部10a、11a、12a、13aを支持させ、端子部10b、11b、12b、13bを貫通孔15dから軸方向一端部側に引き出された状態でセンサホルダ15に組込まれ、該引き出された端子部10b、11b、12b、13bは、平板部15aの軸方向一端側面に固定された基板16に接続されるように設定されている。前記基板16は、センサホルダ平板部15aとともに、凹溝状態となっているケース体14の溝底片14dおよび外径側片14a、内径側片14bと、一対の側片14cとにより囲繞される基板収容部Rに内装されるように構成されている。
【0016】
そして、センサホルダ15に支持され、基板16に接続された状態の第一〜第四ホールIC10、11、12、13を、ケース体14に組込むことで検知センサユニット9が構成されるが、各第一〜第四ホールIC10、11、12、13は、本体部10a、11a、12a、13aを支持片15b、15cとともにケース体支持溝14fの溝奥側に挿し込むことにより、第一〜第三ホールIC本体部10a、11a、12aは、支持溝14fの外径側に位置するよう誘導され、かつ、先細状の支持溝14fにそれぞれガタつきのない保持状態で支持されるように設定されている。そして、端子部10b、11b、12b、13bが接続された基板16は、ケース体溝底片14dに積層状に配設されて、ケース体14の溝開口を塞ぐように構成されている。尚、基板16から引き出されるリード線16aはケース体14の内径側片14bに形成された複数の案内溝14gに案内される状態で磁石型発電機1の外部に設けられる制御部側に引き出されるように設定されている。
そして、前記検知センサユニット9において、突出長さの長い支持片15bに支持された第一〜第三ホールIC本体部10a、11a、12aは、ケース体支持溝14fの溝奥側に位置し、突出長さの短い支持片15cに支持された第四ホールIC本体部13aは、支持溝14fの溝奥よりも開口側であって軸方向一端側に偏寄して位置するように設定されている。
【0017】
このように構成された検知センサユニット9は、ホルダ片14eをステータコア4の隣接するコイルの外径側とティース爪片7eの内径側との間に形成される隙間に差し込むようにして組込まれるが、検知センサユニット9が組込まれる部位のステータコア4のコア材7には、軸方向一端側部位においてティース爪片7eの脚片7dから周回り方向に突出する部位を切欠くことで切欠き部7gが形成され、周回り方向に隣接する切欠き部7g同士のあいだに、周回り方向に隣接するコイルの間に形成される隙間と略同様の隙間が形成されるように構成されている。
これに対し、各ホルダ片14eは、軸方向に二段の第一、第二段差部14h、14iが形成されており、第一、第二段差部14hにおける周回り方向の長さは、前記ステータコア4の周回り方向に隣接する切欠き部7g同士の間に形成される隙間と略同寸法となるように構成されている。さらに、各ホルダ片14eの第二段差部14iの先端側は、周回り方向両端部を内径側に切欠くことにより構成されており、周回り方向中央部には膨出部14jが形成され、該膨出部14jの周回り方向の長さは、周回り方向に隣接するティース爪片7eの間に形成される隙間に相当するように設定されている。
【0018】
そして、検知センサユニット9は、各ホルダ片14eの外径側面14kを、ステータコア4のコア材爪片7eの外径側部とを位置合わせし、ホルダ片14eの先端部を切欠き部7g形成部に挿し込み、ホルダ片14eの第二段差部14iが切欠き部7gの形成されていない爪片7eに突き当たるまで嵌入させるようにして組込まれ、この状態において、前述したように、第一〜第三ホールIC10、11、12は界磁6の二段着磁されない軸方向他端側の部位に対向し、第四ホールIC13は界磁6の二段着磁された軸方向一端部に対向するように構成されている。
このように組込むことにより、各ホルダ片14eがステータコア4に対して軸方向の位置決め、周回り方向の位置決めがなされた状態となっており、各第一〜第四ホールIC本体部10a、11a、12a、13aは、ステータコア4のティース7cのあいだに位置し、しかも、ティース爪片7e外径位置よりも内径側のティース7cの間に位置して配設されている。これによって、磁石型発電機1が軸方向に長くなってしまう不具合を防止できるとともに、各ティース7cに巻装されたコイルが励磁されたときに形成される磁界が、各第一〜第四ホールIC本体部10a、11a、12a、13aに与える影響を小さくすることができるように構成されている。さらに、また、ホルダ片14eの膨出部14jは、切欠き部7fの軸方向他端側に位置し、切欠き部7gが形成されない状態の爪片7eの隣接部に挟持される状態となることで、ホルダ片14eがガタつくことなく支持されるように構成されている。
【0019】
さらにこの組込み状態において、検知センサユニット9は、エンジン2とステータコア4との両者に固定されるように構成されており、このように固定することにより、振動の激しいエンジンケース2bに検知センサユニット9が設けられるものでありながら、検知センサユニット9がガタつくような不具合が防止された強固な固定状態となって、精度よく回転位置検知がなされるように構成されている。
つまり、検知センサユニット9のケース体14は、外径側片14aの外周縁部周回り方向中間部に位置し、エンジン2との支持部を構成するエンジン側支持片14mが一体形成されており、該エンジン側支持片14mには、ボルト固定用貫通孔14nが軸方向に貫通状に形成され、該ボルト固定用貫通孔14nに固定ボルト17が貫通するカラー17aがインサート成形されている。
さらに、ケース体14の内径側片14bには、周回り方向両側部の軸方向他端側から内径側に延出する一対の延出片部14pが一体形成されており、これら延出片部14pの延出先端部には、これら延出片部14pを一体的に連結する円弧状のステータコア側支持片14rが軸方向他端側に偏寄する状態で一体形成されており、該ステータ側支持片14rがステータコア4との支持部を構成するように設定されている。そして、ステータコア側支持片14rには、螺子固定用貫通孔14sが軸方向に貫通状に開設されており、該螺子固定用貫通孔14sに固定螺子18が螺合するための螺子孔が形成されたナット18aがインサート成形されている。
因みに、ケース体14のボルト固定用貫通孔14nにカラー17aを、螺子固定用貫通孔14sにナット18aをそれぞれインサートすることにより、固定ボルト17、固定螺子18の締結による応力がエンジン側支持片14m、ステータコア側支持片14rに影響しないように配慮されている。
【0020】
そして検知センサユニット9は、各ホルダ片14eを、前述したように、ステータコア4のティース7c間に挿し込むことにより位置決めされた状態でステータコア4に仮保持状に組込むことができるようになっており、この状態において、ステータコア側支持片14rの軸方向他端側の面がステータコア4の本体部4aの軸方向一端側の面に突き当てられる(当接する)ように設定されている。一方、ステータコア4を構成するコア材本体部7aには、ステータコア側支持片14rのナット18aの螺子孔に連通する貫通孔7hが形成されており、該貫通孔7hの軸方向他端側から固定螺子18を挿入し、該固定螺子18の先端をナット18aに螺合することにより、ケース体14とステータコア4との固定がなされ、ステータコア4に検知センサユニット9が支持された状態となるように構成されている。
【0021】
続いて、検知センサユニット9が設けられたステータコア4を、エンジン側の支持片部2cに固定するが、この場合では、ケース体14のエンジン側支持片14mを、ボルト固定用貫通孔14nとエンジン側2の支持片部2cに形成された螺子孔2dとを位置合わせした状態で支持片部2cに突き当て、ステータコア4の本体部4bを貫通するスルーボルト7fをエンジンケース2bの支持片部2cに支持させることにより、ステータコア4をエンジン2側に固定する。続いて、エンジン側支持片14mのカラー17aに対し、エンジン2側に向けて固定ボルト17を挿通し、該固定ボルト17の挿通先端を支持片部2cに形成された螺子孔2dに螺合することにより、ケース体14をエンジン2側に固定するように設定されている。
そして、このように固定することにより、検知センサユニット9のケース体14は、内径側と外径側との両者において、エンジン4側とステータコア4側との両者に対する支持部が形成されることになり、検知センサユニット9は、軸方向におけるガタつき、周回り方向におけるガタつきが防止された強固な固定が実現されるように構成されている。
また、ケース体14の外径側片14cの周回り方向一方の端部には、ピン受け体14tが外径方向に突出形成されており、検知センサユニット9を前記固定状態とする場合に、ピン受け体14tをエンジンケース2bの支持片部2cに設けられるピン(図示せず)に係止させることにより、検知センサユニット9のエンジンケース2bに対する位置決めができるように構成されている。
【0022】
叙述の如く構成された本形態において、磁石型発電機1をスタータモータとして機能させる場合に、アウターロータ3の回転を検知する検知手段を構成する被検知体としてアウターロータ3の内周面に設けられる界磁6を用いる構成としたので、強い磁束の界磁6に基づいて磁気変化を検知することができて検知精度よく回転を検知できる。しかも、従来のように、アウターロータを構成するヨークボス筒部に界磁とは別途センサマグネットを設ける必要がなくなって、センサマグネットを設けることに基づく不具合を解消することができるうえ、構造の簡略化を図ることができ、しかも、正確な回転位置検知をすることが可能となる。そのうえ、このものでは、界磁6の磁気変化を検知する検知センサユニット9を、ステータコア4のエンジン2側の側面に沿って固定する構成としたので、コイルの磁界が第一〜第四ホールIC10、11、12、13に影響することがない。さらに、検知センサユニット9は、ケース体14をステータコア4とエンジン2との両者に支持する構成としたので、エンジン2近傍の振動の影響が大きい箇所に設けられるものでありながら、安定性よく支持されて、検知精度の高い回転位置検知を行うことが可能となる。
【0023】
さらに、このものでは、ケース体1を扇形状とし、内径側をステータコア4側に支持させ、外径側をエンジン2側に支持させる構成としたので、振動に基づく軸方向の位置ズレを防止できる。
【0024】
さらに、本発明が実施されたものにあっては、界磁6を検知する第一〜第四ホールIC10、11、12、13をケース体14に収納して検知センサユニット9とし、該ケース体14の第一〜第四ホールIC本体部10a、11a、12a、13aが収納されるホルダ片14e(支持溝14f)を、ステータコア4を構成するコア材7のティース7cのあいだに挿し込んで、第一〜第四ホールIC本体部10a、11a、12a、13aを界磁6に近接対向させて検知するようにしたので、ステータコア4に簡単に取付けることができるうえ、磁石型発電機1のコンパクト化が損なわれるのを防止できる。しかも、ステータコア4のコイルに通電されたときに発生する磁界が、第一〜第四ホールIC本体部10a、11a、12a、13aに与える影響が一層小さくすることができて、精度の高い検知を実現できる。
【0025】
また、このものでは、第一〜第四ホールIC10、11、12、13を予めセンサホルダ15の支持部15bに支持した状態とし、このものをケース体14に内装する構成としたので、ケース体14への第一〜第四ホールIC10、11、12、13の組込みが容易になるばかりでなく、ガタつきや位置ズレのない状態で各ホルダ片14eに内装することができて、高い検知精度を維持することができる。
【0026】
そのうえ、ステータコア4を構成するティース7cの一部を切欠いて検知センサユニット9をステータコア4に対して軸方向に差し込むようにして設ける構成としたので、検知センサユニット9を設けることで磁石型発電機1が軸方向に長くなるような不具合がなく、コンパクト化を損なうことが防止される。
【0027】
しかも、このものにおいて、ケース体を樹脂材により一体型成形することにより構成したので、ケース体14を簡単、かつ、容易に形成することができるうえ、取付け作業も容易になってコスト低下に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】磁石型発電機の側面断面図である。
【図2】図2(A)、(B)はそれぞれステータコアに検知センサユニットのケース体を組込んだ状態を示す斜視図、側面図である。
【図3】エンジンケースの支持片部にステータコアを組込んだ状態を示す背面図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)はそれぞれケース体の正面図、背面図、図4(B)のX−X断面図である。
【図5】図5(A)、(B)はそれぞれケース体の斜視図である。
【図6】図6(A)、(B)、(C)はそれぞれセンサホルダの正面図、側面図、斜視図である。
【図7】検知センサユニットの断面図である。
【図8】検知センサユニットのコア材への組込み状態を説明する分解側面図である。
【図9】図9(A)、(B)はそれぞれ界磁に対するホールICの対向状態を説明するパターン図、検知センサユニットをコア材に組込んだ状態を説明する一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 磁石型発電機
2 エンジン
2a エンジン駆動軸
3 アウターロータ
4 ステータコア
5 ヨーク
6 界磁
7 コア材
7c ティース
8 コイル
9 検知センサユニット
10 第一ホールIC
14 ケース体
14m エンジン側支持片
14r ステータコア側支持片
15 センサホルダ
16 基板
17 固定ボルト
18 タッピングビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの躯体から突出する回転軸に遊嵌状に外嵌し、躯体に固定されるステータコアと、内周面に複数の界磁が設けられ、ステータコアに遊嵌状に外嵌、前記駆動軸と一体回転するよう連結される有底筒状のアウターロータとを備えてなる回転電機において、アウターロータの回転を、アウターロータ内周面の界磁を被検知体として検知センサを用いて検知する構成とし、前記検知センサをセンサケースに収容された検知センサユニットとし、該検知センサユニットを、ステータコアの前記躯体側の側面に沿って配設し、ステータコアと前記躯体とにそれぞれ支持する構成とした回転電機。
【請求項2】
センサケースは、扇型の外形を有して形成され、内径側にステータコアとの支持部が、外径側に躯体との支持部が形成されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
センサケースは、ステータコアを構成するコア外周のティース隣接部に嵌入する複数の先端先細状のセンサ保持部が形成され、これらセンサ保持部の先端部にそれぞれ検知センサが配設されている請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
検知センサは、予めセンサホルダに支持されてセンサケースのセンサ保持部に内装される構成とし、センサ保持部の基端部には、検知センサが接続する基板が収容される基板収容部が形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
ステータコアは、ティースに切欠き部が形成され、該切欠き部にセンサケースのセンサ保持部が嵌入保持されるように構成されている請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
センサケースは、樹脂材で一体型成形されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−240071(P2009−240071A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83088(P2008−83088)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】