説明

回転電機

【課題】回転電機の体格を大きくすることなく、永久磁石を大きくすることができるようにする。
【解決手段】回転電機1は、固定子2と回転子3とを有しており、回転子3は、シャフト9を囲む筒状の連結部12、及び、連結部12の半径方向外側に極数に応じて設けられた10個の磁極部13を一体に備えた積層鉄心10と、磁極部13相互間に配置された永久磁石11とを有している。磁極部13は、永久磁石11の半径方向外側の表面の少なくとも一部が露出するように当該表面の一部を覆う鍔部18を有しており、永久磁石11は、半径方向に垂直な方向の寸法が半径方向内側に向けて小さくなるテーパ部19を少なくとも一部に有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸を囲む環状の連結部及び連結部の外側に極数に応じた数の扇形の磁極部を一体に形成した積層鉄心と、磁極部相互間に配置された角形の永久磁石と、鉄心の磁極部と連結部とにまたがり両端に拡大部を有する打抜孔とを備え、この打抜孔に充填挿入した非磁性の補強部材を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−36459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機の回転子に設ける永久磁石として、ネオジム磁石等のレアアース磁石が広く用いられている。レアアース磁石は磁束密度が高いため、回転子の永久磁石を小さく抑えることが可能であるが、コストが高いという欠点がある。そこで、フェライト磁石等のコストの低い磁石を用いることが考えられるが、その場合にはレアアース磁石に比べて磁束密度が低いため、永久磁石の体積を大きくする必要がある。
【0005】
上記従来技術の回転子では、永久磁石の相互間に漏洩磁束を減少するための打抜孔が設けられている。このため、永久磁石の半径方向寸法及び半径方向に垂直な方向の寸法が制限され、回転子の直径を大きくすることなく、永久磁石の体積を大きくすることは困難であるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、回転電機の体格を大きくすることなく、永久磁石の体積を大きくすることができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、固定子と回転子を有する回転電機であって、前記回転子は、回転軸を囲む筒状の連結部及び前記連結部の半径方向外側に極数に応じて設けられた複数の磁極部を一体に備えた鉄心と、前記磁極部相互間に配置された永久磁石と、を有し、前記磁極部は、前記永久磁石の半径方向外側の表面の少なくとも一部が露出するように当該表面の一部を覆う鍔部を有し、前記永久磁石は、半径方向に垂直な方向の寸法が半径方向内側に向けて小さくなるテーパ部を少なくとも一部に有する回転電機が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転電機によれば、回転電機の体格を大きくすることなく、永久磁石を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施の形態の回転電機の全体構成を表す縦断面図である。
【図2】図1中II−II断面に相当する断面図である。
【図3】図2中A部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の回転電機1は、径方向に対向して配置された固定子2及び回転子3を有し、回転子3を固定子2の内側に備えたインナーロータ型の電動機である。具体的に言えば、回転電機1は、回転子3の内部に永久磁石を備えたIPM(Interior Permanent Magnet)モータである。この回転電機1は、電機子である上記固定子2と、界磁である上記回転子3と、固定子2の外周側に設けられたフレーム4と、フレーム4の負荷側(図1中右側)端部に設けられた負荷側ブラケット5と、負荷側ブラケット5に外輪が嵌合された負荷側軸受6と、フレーム4の反負荷側(図1中左側)端部に設けられた反負荷側ブラケット7と、反負荷側ブラケット7に外輪が嵌合された反負荷側軸受8と、負荷側軸受6及び反負荷側軸受8により回転自在に支持されたシャフト9(回転軸)とを有している。
【0012】
回転子3は、シャフト9の外周側に設けられている。この回転子3は、図2及び図3に示すように、積層鉄心10(鉄心)と、複数(この例では10個)の永久磁石11とを有している。
【0013】
積層鉄心10は、シャフト9を囲む筒状の連結部12と、この連結部12の半径方向外側に極数に応じて放射線状に設けられた複数(この例では10個)の磁極部13とを一体に備えている。すなわち、積層鉄心10は、筒状の連結部12から放射線状に10個の磁極部13が半径方向外側に向けて突出した構造となっている。また、積層鉄心10は、連結部12の半径方向外側における磁極部13相互間(言い換えれば、隣接する磁極部13同士の間)に、軸方向(図2及び図3中紙面手前−奥行き方向)に貫通した磁石用空隙14をそれぞれ有している。各磁石用空隙14には、上記永久磁石11がそれぞれ設置されている(詳細は後述)。
【0014】
連結部12は、その外周面(半径方向外側の表面)が磁極部13との接続部位C相互間(言い換えれば、隣接する接続部位C同士の間)においてそれぞれ平坦面となっており、円周方向における各接続部位C近傍に、当該接続部位C以外の円周方向位置よりも半径方向の厚みが大きい肉厚部15をそれぞれ有している。すなわち、連結部12の半径方向の厚みは、円周方向全体で均一とはなっておらず、接続部位C近傍での半径方向の厚み(言い換えれば、肉厚部15の半径方向の厚み)が、接続部位C以外の円周方向位置での半径方向の厚みよりも大きくなっている。例えば、連結部12の接続部位Cでの半径方向の厚みT1は、連結部12の接続部位C以外の円周方向位置の1つである接続部位C相互間(言い換えれば、隣接する接続位置C同士の間)の中間位置aでの半径方向の厚みT2よりも大きくなっている。
【0015】
各磁極部13は、半径方向に垂直な方向の寸法L1が半径方向内側に向けて小さくなる、断面視において略扇形状の本体部16と、この本体部16と上記連結部12とを接続し、半径方向に垂直な方向の寸法L2が略一定である、板状の接続部17とをそれぞれ有している。本体部16は、半径方向外側端部における円周方向両側に、鍔部18を有している。鍔部18は、上記磁石用空隙14に設置された永久磁石11の外面(半径方向外側の表面)の一部が露出するように当該外面の一部を覆うように、構成されている。接続部17は、上記磁石用空隙14に設置された後述の永久磁石11のテーパ部19相互間(言い換えれば、隣接する永久磁石11のテーパ部19同士の間)に位置するように、構成されている。
【0016】
各永久磁石11は、フェライト磁石でそれぞれ構成されており、その半径方向内側に、半径方向に垂直な方向の寸法L3が半径方向内側に向けて小さくなるテーパ部19をそれぞれ有すると共に、その内面(半径方向内側の表面)がそれぞれ平坦面となっている。そして、これら各永久磁石11は、その内面が上記連結部12の外周面に密着し、その外面と上記鍔部18との間に所定の隙間20を有するように、上記磁石用空隙14において半径方向内側に寄せてそれぞれ設置されている。
【0017】
本実施形態では、永久磁石11は、磁石用空隙14に軸方向に挿入されて、磁石用空隙14において半径方向内側に寄せて接着により固定されるようになっており、磁石用空隙14は、永久磁石11の挿入を容易とするために、永久磁石11の寸法よりも大きめに形成されている。すなわち、永久磁石11を磁石用空隙14に設置する際は、永久磁石11を磁石用空隙14に軸方向に挿入し、永久磁石11の露出した外面を半径方向内側に向けて押して、永久磁石11の内面を連結部12の外周面に突き当て、接着により固定するようになっている。
【0018】
ここで、本実施形態の回転電機1は、積層鉄心10による磁束と永久磁石11による磁束とが直軸方向に合成された磁束φd(図2参照)により発生するマグネットトルクを、回転子3のトルクとして利用するようになっている。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の回転電機1においては、回転子3が、連結部12及び10個の磁極部13を一体に備えた積層鉄心10と、積層鉄心10の磁極部13相互間に配置された10個の永久磁石11とを有している。
【0020】
ここで、永久磁石の体積を大きくしようとした場合、永久磁石相互間に配置された積層鉄心の磁極部の外周面が回転電機の特性上円周方向に一定の寸法を有する必要があることから、永久磁石の半径方向に垂直な方向の寸法は当該磁極部により制限される。そこで本実施形態においては、積層鉄心10の磁極部13が、永久磁石11の外面の一部を覆う鍔部18を有する構成とする。この鍔部18により、磁極部13の外周面の円周方向に必要な寸法を確保することができるので、上記制限に関わらず永久磁石11の半径方向に垂直な方向の寸法L3を大きくすることが可能となる。
【0021】
一方で、永久磁石の半径方向寸法及び半径方向に垂直な方向の寸法を所定寸法より大きくすると、隣接する永久磁石同士が半径方向内側の両端部において接触するため、永久磁石の半径方向寸法及び半径方向に垂直な方向の寸法は永久磁石の円周方向における間隔(極ピッチ)により制限される。そこで本実施形態においては、永久磁石11が、半径方向内側に、半径方向に垂直な方向の寸法L3が半径方向内側に向けて小さくなるテーパ部19を有する構成とする。テーパ部19を永久磁石11の半径方向内側に設けることにより、隣接する永久磁石11同士が半径方向内側の両端部において接触するのを防止することができるので、上記制限に関わらず永久磁石11の半径方向寸法及び半径方向に垂直な方向の寸法L3を大きくすることが可能となる。
【0022】
以上により、本実施形態によれば、回転子3の直径、すなわち回転電機1の体格を大きくすることなく、永久磁石11を大きくすることができる。その結果、回転電機1の性能を維持しつつ、永久磁石11として、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石等のレアアース磁石(希土類磁石)の代わりに、コストの低いフェライト磁石を用いることが可能となり、コストを大幅に削減した回転電機1を実現することができる。
【0023】
また、本実施形態では特に、永久磁石11が、その内面が連結部12に密着し、その外面と鍔部18との間に所定の隙間20を有するように、磁石用空隙14に設置されている。すなわち、永久磁石11は、磁石用空隙14内において内側に寄せて設置されている。このように永久磁石11を内側寄せの配置とすることにより、永久磁石11を固定する際に永久磁石11の露出した外面を内側に向けて押すだけでよいので、作業性を向上できる。また、永久磁石11の外面を鍔部18に密着させ、内面と連結部12との間に所定の隙間を設けるように、永久磁石11を外側寄せの配置とする場合に比べて、永久磁石11と積層鉄心10との間の接着面積を増大でき、永久磁石11を堅固に固定できる効果もある。
【0024】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。すなわち、積層鉄心10は、上述したように筒状の連結部12から10個の磁極部13が半径方向外側に向けて突出した構造となっているため、連結部12と磁極部13との接続部位Cに応力が集中し易い。本実施形態においては、連結部12が、円周方向における磁極部13との接続部位C近傍に、当該接続部位C以外の円周方向位置よりも半径方向の厚みが大きい肉厚部15を有する構成とする。これにより、応力が集中し易い連結部12と磁極部13との接続部位Cの強度を向上することができるので、積層鉄心10を強度的に安定した構造とすることができる。
【0025】
また、本実施形態では特に、連結部12の外周面が、磁極部13との接続部位C相互間において平坦面となっている。これにより、連結部12の磁極部13との接続部位C近傍が肉厚となるため、応力が集中し易い連結部12と磁極部13との接続部位Cの強度を向上できると共に、永久磁石11と積層鉄心10(平坦面)との間の密着性を向上し、永久磁石11と積層鉄心10との接着力を増大することができる。また、連結部12の外周面を曲面とし、連結部12の半径方向の厚みを円周方向全体で均一にする場合に比べ、連結部12の外周面と磁極部13の接続部17とがなす角度θ(図3参照)を大きくすることができるので、連結部12と磁極部13との接続部位Cにおける応力集中を緩和できる効果もある。
【0026】
また、本実施形態では特に、磁極部13が、半径方向外側端部における円周方向両側に鍔部18を有し、半径方向に垂直な方向の寸法L1が半径方向内側に向けて小さくなる本体部16と、本体部16と連結部12とを接続し、半径方向に垂直な方向の寸法L2が略一定である接続部17とを有している。接続部17は、永久磁石11のテーパ部19相互間に位置するので、接続部17の半径方向に垂直な方向の寸法L2を極力薄く構成することによって、永久磁石11の体積を大きくすると共に、漏洩磁束φ(図2参照)を減少することが可能となる。これにより、磁束φdを多くすることができ、マグネットトルクを大きくすることができるので、回転子3のトルクを大きくすることが可能となる。
【0027】
なお、実施の形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回転電機1が回転子3を固定子2の内側に備えたインナーロータ型である場合を一例として説明したが、これに限られず、回転電機が回転子を固定子の外側に備えたアウターロータ型である場合にも適用可能である。
【0028】
また、上記実施形態では、回転電機1が電動機である場合を一例として説明したが、これに限られず、回転電機が発電機である場合にも適用することができる。
【0029】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0030】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 回転電機
2 固定子
3 回転子
9 シャフト(回転軸)
10 積層鉄心(鉄心)
11 永久磁石
12 連結部
13 磁極部
14 磁石用空隙
15 肉厚部
16 本体部
17 接続部
18 鍔部
19 テーパ部
20 所定の隙間
C 接続部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子を有する回転電機であって、
前記回転子は、
回転軸を囲む筒状の連結部及び前記連結部の半径方向外側に極数に応じて設けられた複数の磁極部を一体に備えた鉄心と、
前記磁極部相互間に配置された永久磁石と、を有し、
前記磁極部は、
前記永久磁石の半径方向外側の表面の少なくとも一部が露出するように当該表面の一部を覆う鍔部を有し、
前記永久磁石は、
半径方向に垂直な方向の寸法が半径方向内側に向けて小さくなるテーパ部を少なくとも一部に有する
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記鉄心は、
前記連結部の半径方向外側における前記磁極部相互間に、軸方向に貫通した磁石用空隙を有しており、
前記永久磁石は、
半径方向内側の表面が前記連結部に密着し、前記半径方向外側の表面と前記鍔部との間に所定の隙間を有するように、前記磁石用空隙に設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記連結部は、
円周方向における前記磁極部との接続部位近傍に、当該接続部位以外の円周方向位置よりも半径方向の厚みが大きい肉厚部を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記連結部の半径方向外側の表面は、
前記磁極部との接続部位相互間において平坦面となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記磁極部は、
半径方向外側端部における円周方向両側に前記鍔部を有し、半径方向に垂直な方向の寸法が半径方向内側に向けて小さくなる本体部と、
前記本体部と前記連結部とを接続し、半径方向に垂直な方向の寸法が略一定である板状の接続部と、を有している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21775(P2013−21775A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151636(P2011−151636)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】