説明

回転霧化塗装機

【課題】色替え時の洗浄工程において容易に付着塗料を洗い流すことが可能なフィードチューブを備えた回転霧化塗装機を提供すること。
【解決手段】フィードチューブ2は、複数の塗料供給管21、22と第1外管23と第2外管24とを有する。第1外管23の開口端231は、塗料供給管21、22の開口端211、221よりも基端側に後退した位置に配置され、第2外管24の開口端241は、第1外管23の開口端231よりも基端側に後退した位置に配置されている。塗料供給管21、22の外周面と第1外管23の内周面との間には第1洗浄通路31が形成され、第1外管23の外周面と第2外管24の内周面との間には第2洗浄通路32が形成されている。塗料替え時の洗浄を行う際には、塗料供給管21、22内、第1洗浄通路31及び第2洗浄通路32に洗浄剤が流通するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の塗料を切り替えて塗布するための回転霧化塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装機として、フィードチューブを流通させた塗料を回転する回転霧化頭に供給し、遠心力により塗料を霧化する回転霧化塗装機がある。かかる回転霧化塗装機においては、フィードチューブから回転霧化頭に向けて塗料を供給する際に、フィードチューブの先端部に供給塗料の一部が付着して付着塗料として残る。そのため、塗装に用いる塗料の切り替え(以下、色替と称す)を行う際には、塗料が流通したフィードチューブ内及び回転霧化頭を洗浄液によって洗浄する工程が必要である。
【0003】
しかし、洗浄工程において上記付着塗料が完全に洗浄除去されていないと、次の塗装工程において上記付着塗料はフィードチューブの先端部から脱落することがある。これにより、上記付着塗料は回転霧化頭に供給される塗料と共に回転霧化頭から噴霧され、被塗物の表面に塗着する。一方、上記付着塗料は、フィードチューブの先端部に滞留している間に、塗料中の蒸発成分が蒸発しているために、塗料中の顔料成分が凝集して小塊(ブツ)となるから、この小塊は被塗物表面に塗着すると塗膜表面に現れて、その塗装の仕上がり外観を大きく損なう原因となる。
【0004】
また、有機溶剤系の溶剤塗料や水系の水性塗料等のように、溶媒などが異なる異種塗料を供給するフィードチューブを有する回転霧化塗装機の場合には、フィードチューブの先端部に異種塗料が付着して混じり合うと、ゲル状の付着塗料となる。このゲル状の付着塗料が塗装中の噴霧塗料と共に噴霧され被塗物に塗着すると、塗膜表面の仕上がり外観品質を大きく損なう原因となる。
【0005】
なお、回転霧化塗装機に適用されるフィードチューブの従来の態様としては、たとえば特許文献1、2に示されている。特許文献1においては、7本のフィードチューブを用い、1本を中央、6本をその周りに配置して、中央を水性塗料用、周囲を溶剤塗料用として用いることが示されている。また、特許文献2においては、外管の中に4本の塗料ノズル(チューブ)が配設された構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3123442号公報
【特許文献2】特許第2988318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、自動車のボディを被塗物として塗装する際には、下地である中塗りを行った後、ベース塗料を塗り、その後クリアー塗装をするという3段階で塗装する場合が多い。また、少なくとも中塗りに関しては、自動車の種類によって、溶剤塗料を塗装する場合と水性塗料を塗装する場合とがある。そのため、特に上記中塗りに関しては、上述したゲル状の付着塗料による問題を解消しなければ、回転霧化塗装機の採用が困難となる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、回転霧化頭に塗料を供給するフィードチューブの先端部に付着塗料が付着しても、色替え時の洗浄工程において容易に付着塗料を洗い流すことが可能なフィードチューブを備えた回転霧化塗装機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、塗料を霧化するための回転霧化頭と、該回転霧化頭を高速回転するための回転モータと、該回転モータの回転軸に設けられた中空部に挿通され上記回転霧化頭に塗料および洗浄剤を供給するためのフィードチューブとを備えた回転霧化塗装機において、
上記フィードチューブは、塗料を供給する複数の塗料供給管と、
上記塗料供給管の外周面に離間して囲繞する筒体である第1外管と、
該第1外管の外周面に離間して囲繞する筒体である第2外管とを有してなり、
上記第1外管の開口端は、上記塗料供給管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、上記第2外管の開口端は、上記第1外管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、
上記塗料供給管の外周面と上記第1外管の内周面との間には、環状の隙間よりなる第1洗浄通路が形成され、
上記第1外管の外周面と上記第2外管の内周面との間には、環状の隙間よりなる第2洗浄通路が形成され、
塗料替え時の洗浄を行う際には、上記塗料供給管内、上記第1洗浄通路及び上記第2洗浄通路に洗浄剤が流通するよう構成されていることを特徴とする回転霧化塗装機にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回転霧化塗装機は、上述のごとく、複数の上記塗料供給管と、上記第1外管と、上記第2外管とを有してなり、これらが上述のごとく3重管構造を呈している。さらに、各管の開口端の位置を上述のごとくずらしている。すなわち、上記第1外管の開口端は、上記塗料供給管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、上記第2外管の開口端は、上記第1外管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、言い換えれば、3重管の中心部分に位置する複数の上記塗料供給管を先頭にして、これよりも外周側に位置する各管が漸次後退して配置されている。
【0011】
このような構造を必須とした上で、塗料替え洗浄を行う際には、上記塗料供給管内、上記第1洗浄通路及び第2洗浄通路に洗浄剤を流通させる。また、適宜、空気を流通させて、洗浄剤を除去することも行う。
上記塗料供給管の内周側を流通する洗浄剤によって塗料供給管の内周面が洗浄され、上記第1洗浄通路を流通する洗浄剤によって塗料供給管の外周面と第1外管の内周面が洗浄され、さらに、上記第2洗浄通路を流通する洗浄剤によって第1外管の外周面と第2外管の内周面とが洗浄される。これにより、本発明のフィードチューブは、従来よりも容易に付着塗料を洗い流すことができ、付着塗料に起因する塗膜表面の外観不良を防止することができる。
【0012】
これに対し、後述する比較例にあるように、上記第2外管を設けずに、上記塗料供給管と上記第1外管とよりなる2重管構造の場合には、本発明のような外観不良防止効果が十分には得られなかった。第2外管を備えていない場合でも、塗料供給管の内周面及び外周面、並びに第1外管の内周面の洗浄が可能であることから考察すれば、第1外管の外周面に付着した塗料が外観不良の原因の一つになっていたと考えられる。そして、本発明では、積極的に上記の三重管構造を採用すると共に各管の突出状態を上述のごとく限定することによって、塗料供給管の内周面及び外周面、並びに第1外管の内周面及び外周面の洗浄が可能となり、これにより、従来よりも付着塗料に起因する塗膜表面の外観不良を抑制できる。
【0013】
このように、本発明によれば、回転霧化頭に塗料を供給するフィードチューブの先端部に付着塗料が付着しても、色替え時の洗浄工程において容易に付着塗料を洗い流すことが可能なフィードチューブを備えた回転霧化塗装機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、回転霧化頭とフィードチューブとの位置関係を示す説明図。
【図2】実施例1における、フィードチューブの構成を示す縦断面説明図。
【図3】実施例1における、フィードチューブの構成を示す横断面説明図。
【図4】実施例1における、フィードチューブに連通するマルチバルブの主構成を示す説明図。
【図5】比較例1における、フィードチューブの構成を示す縦断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の回転霧化塗装機においては、上記第1外管内には、遮蔽板が設けられており、該遮蔽板には、上記各塗料供給管の外径よりも大径の貫通穴が複数形成されており、上記各塗料供給管は、それぞれ上記貫通穴に挿通され、上記塗料供給管の外周面と上記貫通穴の内周面とにより形成された隙間が上記洗浄剤の流通経路として機能するよう構成されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記塗料供給管の外周面に沿って流通させる上記洗浄剤の流速を高めることができ、塗料供給管の外周面の洗浄効果をより高めることができる。
【0016】
また、上記塗料供給管は2本備えられており、一方が水性塗料を供給する水性塗料供給管であり、他方が溶剤塗料を供給する溶剤塗料供給管であることが好ましい(請求項3)。まず、塗料供給管を2本だけにすることによって、それ以上ある場合に比べて上記第1外管及び第2外管の径を小さくすることができる。これにより、各管の間の上記第1洗浄通路及び第2洗浄通路の流通路の断面積を小さくすることができ、流通させる洗浄剤の流量を少量としてコスト低減できると共に、流速を高めてより洗浄効果を高めることができる。さらに、水性塗料と溶剤塗料とが混じった場合の前述したゲル状の付着塗料の洗浄を行うことに関して、本発明の上述した3重管構造のフィードチューブを採用することが非常に有効である。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる回転霧化塗装機につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例の回転霧化塗装機1は、図1に示すごとく、塗料を霧化するための回転霧化頭10と、回転霧化頭10を高速回転するための回転モータ(図示略)と、該回転モータの回転軸15に設けられた中空部150に挿通され回転霧化頭10に塗料および洗浄剤を供給するためのフィードチューブ2とを備えてなる。
【0018】
フィードチューブ2は、図1〜図3に示すごとく、塗料を供給する2本の塗料供給管21、22と、塗料供給管21、22の外周面に離間して囲繞する筒体である第1外管23と、第1外管23の外周面に離間して囲繞する筒体である第2外管24とを有してなる。
図1、図2に示すごとく、第1外管23の開口端231は、塗料供給管21、22の開口端211、221よりも基端側に後退した位置に配置され、第2外管24の開口端241は、第1外管23の開口端231よりも基端側に後退した位置に配置されている。
【0019】
また、塗料供給管21、22の外周面と第1外管23の内周面との間には、環状の隙間よりなる第1洗浄通路31が形成され、第1外管23の外周面と第2外管24の内周面との間には、環状の隙間よりなる第2洗浄通路32が形成されている。塗料替え時の洗浄を行う際には、塗料供給管21、22内、第1洗浄通路23及び第2洗浄通路24に洗浄剤が流通するよう構成されている。
以下、さらに詳説する。
【0020】
図1に示すごとく、回転霧化頭10は、先端に行くほど拡径するテーパ部11とその基端側に延設された筒状部12とを備えている。テーパ部11は、中央に配設されたハブ18を境にして、その先方側に位置する大径部111とその後方側に位置する小径部112とを備えている。小径部112の中央には、上記フィードチューブ2の先端部分を配置するための中央穴114が設けられている。中央穴114の周壁先端部113は先方に突出する形状を呈している。
【0021】
回転霧化頭10の基端側の筒状部12は、回転モータの回転軸15に固定される。そして、回転霧化頭10は、回転モータによって回転軸15を回転させることにより高速回転可能に配設される。回転軸15は中空部150を有し、フィードチューブ2はその中空部150を通って回転霧化頭10の中央穴114まで到達するように配設される。
【0022】
図2、図3に示すごとく、フィードチューブ2は、2本の塗料供給管21、22と、これらを収容する二重管構造の第1外管23及び第2外管24とを合わせて三重管構造を呈している。2本の塗料供給管21、22のうち一方の塗料供給管21は水性塗料専用の水性塗料供給管であり、他方の塗料供給管22は溶剤塗料専用の溶剤塗料供給管である。本例では、これら塗料供給管21、22として、外径φ2.5mmのチューブを用いた。また、塗料供給管21、22の周囲に配置した第1外管23としては外径φ6.7mmのチューブを用い、第2外管24としては外径φ7.6mmのチューブを用いた。
【0023】
また、図2に示すごとく、第1外管23の先端の開口端231は第2外管24の先端の開口端241よりも長さL1(2.0mm)だけ軸方向前方に突出している。また、2本の塗料供給管21、22の先端の開口端211、221は、いずれも、第1外管23の先端の開口端231よりも長さL2(2.0mm)だけ軸方向前方に突出している。
【0024】
そして、各管の先端の位置と回転霧化頭10の中央穴114との軸方向位置の関係は次のようになっている。塗料供給管21、22の先端の開口端211、221は、いずれも、中央穴114の先端の上記周壁先端部113よりも前方に突き出した状態にある。第1外管23の先端の開口端231は、中央穴114の内部の軸方向ほぼ中間位置にある。第2外管24の先端の開口端241は、中央穴114内の後端近傍の位置にある。
【0025】
また、図2、図3に示すごとく、第1外管23内には、遮蔽板25が設けられている。遮蔽板25には、各塗料供給管21、22の外径よりも大径の2つの貫通穴251、252が形成されており、各塗料供給管21、22は、それぞれ貫通穴251、252に挿通され、塗料供給管21、22の外周面と貫通穴251、252の内周面とにより形成された隙間が洗浄剤の流通経路(第1洗浄通路31)として機能するよう構成されている。
【0026】
また、図1、図2に示すごとく、第2外管24の後端は、2本の塗料供給管21、22の接続口212、222を突出させた状態で閉塞してあり、側壁側に接続口243を設けてある。また、図2に示すごとく、第1外管23の後端の開口部232は、第1外管24内に開口しており、両者が連通した状態となっている。
【0027】
このような構成のフィードチューブ2は、図4に示すごとく、各塗料や洗浄剤(洗浄溶剤、洗浄エア)の供給源61〜68に対してマルチバルブ5を介して接続されている。
そして各供給源61、62、63に接続される各配管511、512、513の途中には、各々流体を断接する開閉弁511a、512a、513aが設けられて、各開閉弁を介して配管519に接続されている。配管519は、図2、図4に示すごとく、水性塗料専用の塗料供給管21の接続口212に連結されている(矢印A参照)。
【0028】
また、図4に示すごとく、各供給源64、65、66に接続される各配管521、522、523の途中には、各々流体を断接する開閉弁521a、522a、523aが設けられて、各開閉弁を介して配管529に接続されている。配管529は、図2、図4に示すごとく、溶剤塗料専用の塗料供給管22の接続口222に連結されている(矢印B参照)。
【0029】
また、図4に示すごとく、各供給源67、68に接続される各配管531、532の途中には、各々流体を断接する開閉弁531a、532aが設けられて、各開閉弁を介して配管539に接続されている。配管539は、図2、図4に示すごとく、第2外管24の接続口243に連結されている(矢印C参照)。
そして、上記各開閉弁は、洗浄工程や塗装工程のときに、必要に応じて開閉操作される。
【0030】
上記フィードチューブ2及び回転霧化頭10を備えた回転霧化塗装機1は、図示しないロボットによって、所望の経路を移動しながら塗装できるように構成されている。塗装時には、フィードチューブ2内は、塗装中の塗料のみが2本の塗料供給管21、22の一方のみに流通している状態となるよう上記マルチバルブ5が制御される。
【0031】
ここで、本例の回転霧化塗装機1が溶剤塗料を用いて塗装した後に水性塗料を用いて塗装するために、溶剤塗料から水性塗料に切り替える洗浄工程に係る一連の作業手順について説明する。
まず、溶剤塗料による塗装工程が終了すると、閉弁した状態にあるマルチバルブ5の各開閉弁の中、開閉弁522aを開弁して、配管529を介して配管522と燃料供給管22とを連通して、洗浄溶剤を回転霧化頭10に向けて流出する。次に、開閉弁522aを閉弁すると共に開閉弁523aを開弁して、配管529を介して配管523と塗料供給管22とを連通して、洗浄溶剤を回転霧化頭10に向けて流出する。
【0032】
このように開閉弁522aと開閉弁523aとを複数回交互に開閉し、最後に洗浄エアを流出した後開閉弁523aを閉弁して溶剤塗料の洗浄作業を終了する。これにより、塗料供給管22内及び回転霧化頭10の塗料流出面に残留する溶剤塗料を洗い流すと共に、洗浄溶剤の残留も除去する。
【0033】
また、洗浄工程においては、主として塗料供給管21、22の先端に付着した塗料を除去するために、洗浄溶剤と洗浄エアとを、各配管531、532から配管539およびフィードチューブ1の第1洗浄通路31(矢印C1参照)および第2洗浄通路32(矢印C2参照)を介して回転霧化頭10に向けて流出させる洗浄作業がある。この洗浄作業では、前述の塗装工程が終了すると、開閉弁531aを開弁し、洗浄溶剤を配管531から配管539および第2洗浄通路31と第2洗浄通路32を介して回転霧化頭10に流出させる。次に、開閉弁531aを開弁すると開閉弁532aを開弁して、洗浄エアを配管532から配管539および第1洗浄通路31と第2洗浄通路32を介して回転霧化頭10に流出させる。
【0034】
このようにして、開閉弁531aと開閉弁532aとを複数回交互に開閉し、最後に洗浄エアを流出して、第1洗浄通路31と第2洗浄通路32から回転霧化頭10の塗料流出面に残留している洗浄溶剤を全て除去する。これにより、塗料供給管21、22の先端部に付着している塗料を洗い流すと共に回転霧化頭の塗料流出面を完全に洗浄することができる。この洗浄作業は、前記溶剤塗料の洗浄作業中に行ってもよく、また洗浄作業の後に行ってもよい。
【0035】
このようにして、溶剤塗料の洗浄作業が終了したら、開閉弁511aを開弁して、配管511から配管512を介して塗料供給管21に水性塗料を供給して、回転霧化塗装機1は次の水性塗料による塗装のために待機する。
【0036】
そして、上記回転霧化塗装機1を用いた場合には、塗装する塗料を溶剤塗料と水性塗料との間で変更しても、特に付着塗料が原因となるような塗装面の外観不良はなく、健全な塗装を実施することができた。
【0037】
(比較例1)
実施例1と比較するため、実施例1のフィードチューブ2における第2外管24を取り除き、二重管構造としたフィードチューブ9を準備した(図5参照)。
フィードチューブ9は、塗料を供給する2本の塗料供給管21、22と、2本の塗料供給管21、22を収容する第1外管93とを有している。塗料供給管21、22の開口端211、221は第1外管93の開口端931よりも軸方向前方に突出している。また、第1外管93の後端は、2本の塗料供給管21、22の接続口212、222を突出させた状態で閉塞してあり、側壁側に接続口933を設けてある。
【0038】
そして、2本の塗料供給管21、22の接続口212、222及び側壁側に接続口933には、実施例1と同様にマルチバルブ5を接続し、塗料等の供給状態を切り替え制御できるようにしてある。
このような構成のフィードチューブ9を備えた回転霧化塗装機を用いて、溶剤塗料の塗装を行った後、実施例1と同様の洗浄を行い、その後、さらに水性塗料の塗装を行って、塗装品質を確認した。その結果、水性塗料による塗膜には付着塗料が原因となる外観不良が生じていた。
【0039】
以上の結果から次のように考察することができる。
すなわち、比較例1の場合には、塗料供給管21、22の内周面及び外周面、並びに第1外管93の内周面の洗浄が可能であるにもかかわらず付着塗料による外観不良の発生を防止できなかった。このことは、塗装時には第1外管93の外周面にも付着塗料が付着し、比較例1の場合には第1外管93の外周面を洗浄できないために、付着塗料が落下して外観不良になってしまうと考えられる。
【0040】
これに対し、実施例1の場合には、上述のごとく積極的に三重管構造を採用し、かつ、第2外管24の開口部241の位置を第1外管23の開口端231よりも後退させた構造を採用することが、は第1外管93の外周面に付着した付着塗料を容易に洗い流すことができ、色替え後における塗装面の外観不良防止に非常に有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0041】
1 回転霧化塗装機
10 回転霧化頭
2 フィードチューブ
21、22 塗料供給管
23 第1外管
24 第2外管
5 マルチバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を霧化するための回転霧化頭と、該回転霧化頭を高速回転するための回転モータと、該回転モータの回転軸に設けられた中空部に挿通され上記回転霧化頭に塗料および洗浄剤を供給するためのフィードチューブとを備えた回転霧化塗装機において、
上記フィードチューブは、溶剤塗料を供給する複数の塗料供給管と、
上記塗料供給管の外周面に離間して囲繞する筒体である第1外管と、
該第1外管の外周面に離間して囲繞する筒体である第2外管とを有してなり、
上記第1外管の開口端は、上記塗料供給管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、上記第2外管の開口端は、上記第1外管の開口端よりも基端側に後退した位置に配置され、
上記塗料供給管の外周面と上記第1外管の内周面との間には、環状の隙間よりなる第1洗浄通路が形成され、
上記第1外管の外周面と上記第2外管の内周面との間には、環状の隙間よりなる第2洗浄通路が形成され、
塗料替え時の洗浄を行う際には、上記塗料供給管内、上記第1洗浄通路及び上記第2洗浄通路に洗浄剤が流通するよう構成されていることを特徴とする回転霧化塗装機。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記第1外管内には、遮蔽板が設けられており、該遮蔽板には、上記各塗料供給管の外径よりも大径の貫通穴が複数形成されており、上記各塗料供給管は、それぞれ上記貫通穴に挿通され、上記塗料供給管の外周面と上記貫通穴の内周面とにより形成された隙間が上記洗浄剤の流通経路として機能するよう構成されていることを特徴とする回転霧化塗装機。
【請求項3】
請求項1又は2の記載において、上記塗料供給管は2本備えられており、一方が水性塗料を供給する水性塗料供給管であり、他方が溶剤塗料を供給する溶剤塗料供給管であることを特徴とする回転霧化塗装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206640(P2011−206640A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74831(P2010−74831)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(399055432)ABB株式会社 (18)
【Fターム(参考)】