回転霧化頭の洗浄装置及びその方法
【課題】回転霧化頭の外面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配のない洗浄技術を提供することを課題とする。
【解決手段】回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20は、洗浄液が供給される液体供給管26が回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。この液体供給管26に洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する吐出孔(詳細後述)が設けられ、この吐出孔の中心線43は、後面25に掛かっている。
【効果】洗浄液の吐出孔が回転霧化頭の後面近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭の後面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配がない。
【解決手段】回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20は、洗浄液が供給される液体供給管26が回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。この液体供給管26に洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する吐出孔(詳細後述)が設けられ、この吐出孔の中心線43は、後面25に掛かっている。
【効果】洗浄液の吐出孔が回転霧化頭の後面近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭の後面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ガンの回転霧化頭を洗浄対象とする回転霧化頭の洗浄技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、塗装対象の製品に応じて、1つの塗装ガンで複数種類の塗料を吐出することがある。塗料の種類を切り換える際、塗装ガンに残った塗料を取り除くため、塗装ガンの先端に設けられた回転霧化頭を洗浄する技術が提案されている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
この特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図15に示されるように、回転霧化頭の洗浄装置100では、塗装機本体101の先端に円錐形の回転霧化頭102が回転可能に設けられている。回転霧化頭102に供給された塗料は、回転霧化頭102の前面から遠心力によって外周側に飛散して霧化され、被塗装物に吹き付けられる。このとき、塗料の一部が回転霧化頭102の後面103に付着することがある。
【0004】
回転霧化頭102の後面103を洗浄する際、洗浄液を吐出する洗浄ノズル104を、回転霧化頭102の後面103に対して離間させて斜め下向きに配置する。洗浄ノズル104から吐出された洗浄液が、回転する回転霧化頭102の後面103に当たることで、回転霧化頭102の後面103が洗浄される。
【0005】
しかし、洗浄ノズル104は後面103に対して離間しているため、回転霧化頭102の後面103に勢いよく吐出された洗浄液の一部は飛散して、塗装機本体101等を汚すことがある。汚れが蓄積されると、塗装作業中に被塗装物に汚れが落下してしまう虞がある。そこで、回転霧化頭の外面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配のない洗浄技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転霧化頭の外面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配のない洗浄技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置において、この洗浄装置は、前記回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ前記洗浄液を前記回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管に送られることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、回転霧化頭を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、洗浄液を送る液体供給管を後面まで延ばして配置する工程と、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ溶剤を吐出する工程と、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ水を吐出する工程を、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、洗浄装置は、回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ洗浄液を回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有する。洗浄液の吐出孔が回転霧化頭の後面近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭の後面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配がない。
【0014】
請求項2に係る発明では、液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなる。仮に、回転霧化頭の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管からの水で回転霧化頭を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管に送られる。溶剤用と水用の液体供給管を共有するので、液体供給管の本数を半減させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、洗浄液を送る液体供給管を後面まで延ばして配置する工程と、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ溶剤を吐出する工程と、からなる。回転霧化頭の近傍から洗浄液を吐出するので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、塗装機本体への洗浄液の飛散を防止しつつ回転霧化頭の外面を洗浄することができる。
さらに、回転霧化頭の近傍から吐出された洗浄液は、そのほとんどが回転霧化頭の後面に当たるので、無駄に吐出される洗浄液を低減でき、効率良く洗浄することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ水を吐出する工程を、有する。仮に、回転霧化頭の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管からの水で回転霧化頭を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。結果、回転霧化頭の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る回転霧化頭の洗浄装置の使用例を説明する図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】実施例1に係る洗浄装置の要部を説明する図である。
【図4】洗浄装置の要部拡大図である。
【図5】図3の5−5矢視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図6の別形態を説明する図である。
【図8】図7の別形態を説明する図である。
【図9】図8の別形態を説明する図である。
【図10】塗装装置の作用説明図である。
【図11】回転霧化頭の洗浄装置の作用説明図である。
【図12】水による洗浄を説明する図である。
【図13】実施例2を説明する図である。
【図14】実施例3を説明する図である。
【図15】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0020】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、塗装機設備10は、塗装機11と、回転霧化頭の洗浄装置20とからなる。
塗装機11は、ベース部12と、このベース部12の上部に設けられている産業用ロボット13と、この産業用ロボット13のアーム部14の先端に設けられている塗装機本体としての塗装ガン15とからなる。
【0021】
回転霧化頭の洗浄装置20は、ベース部12の側壁16にステー17を介して取付けられている。また、回転霧化頭の洗浄装置20の下部には、洗浄後の洗浄液を受ける洗浄液パン18が配置されている。
【0022】
次に回転霧化頭の洗浄装置20を説明する。
図2に示されるように、塗装ガン15の先端に回転霧化頭19が備えられている。
回転霧化頭の洗浄装置20は、ステー17の前面供給管保持部21に取付けられ回転霧化頭19の前面22へ洗浄液を噴射する前面液体供給管23と、ステー17の後面供給管保持部24に取付けられ回転霧化頭19の後面25へ洗浄液を供給する液体供給管26と、液体供給管26の下方に設けられ洗浄後の洗浄液を受ける洗浄液パン18と、からなる。前面液体供給管23から洗浄液を噴射することで、塗装ガン15の先端に回転可能に設けられている回転霧化頭19の前面22を洗浄することができる。
【0023】
次に回転霧化頭19の形状及び液体供給管26の配置について説明する。
図3に示されるように、回転霧化頭19は、塗装ガン15の先端に回転可能に設けられている。回転霧化頭19の回転軸31の近傍に塗料を吐出する中心部塗料吐出孔32が設けられると共に、回転軸31に対して円錐形を呈するように傾斜させて塗料を吐出する外側塗料吐出孔33を有する。
【0024】
回転霧化頭19は、アウター部材34と、このアウター部材34との間に回転霧化頭19の裏側としての塗料溜まり35を構成するインナー部材36と、塗料溜まり35に塗料を導く塗料フィードチューブ37とからなる。
塗料溜まり35は、釣り鐘形状を呈しており、塗料溜まりの内壁38は外側塗料吐出孔33に滑らかに繋がっている。これにより、塗料を円滑に吐出することができる。
【0025】
塗装ガン15は、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する。また、塗装ガン15の先端部にシェーピングエアリング41が設けられ、このシェーピングエアリング41にエアーを吹き出すエアー穴42が設けられている。
なお、エアー穴42の代わりに、スリット型のエアー吹き出し口にしても差し支えない。
【0026】
回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20は、洗浄液が供給される液体供給管26が回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。この液体供給管26に洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する吐出孔(詳細後述)が設けられ、この吐出孔の中心線45は、後面25に掛かっている。
【0027】
次に吐出孔の位置について説明する。
図4に示されるように、液体供給管26の内部に洗浄液を通す液体通路43が設けられ、この液体通路43に洗浄液を吐出する吐出孔44が繋がっている。吐出孔44から洗浄液を吐出することで、回転霧化頭19の後面25を洗浄することができる。洗浄後の洗浄液は流れ落ち、洗浄液パン(図2、符号18)に回収される。
【0028】
ここで、吐出孔44から回転霧化頭19の後面25までの距離をLとし、液体供給管26の先端部の直径をDとする。距離Lを直径Dとほぼ等しく設定することが望まれる。
吐出孔44の直径をdとし、吐出される洗浄液の流速をVとすると、流量Q=π(d/2)2×Vとなる。なお、実施例では吐出孔44の数は1個であるが、複数個設けても差し支えない。
【0029】
吐出孔44の直径d、吐出孔44の個数n、洗浄液の跳ね返りが起きない流量Q、としてこれら直径d、個数n、流量Qの組み合せ例を次表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1中、パターン1は後述する図6、図7に示す形態であり、パターン2は図8に示す形態であり、パターン3は図9に示す形態である。
また、回転霧化頭19の回転数は、30000rpm以下とした。
なお、表1のパターン1において、流量Qは300cm3/分以下であるが、200cm3/分以下であればより一層好ましい。また、流量は、回転霧化頭19の形状や大きさに応じて、適宜変更しても差し支えない。
【0032】
次に溶剤供給管と水供給管の配置について説明する。
図5に示されるように、平面視における回転霧化頭19の中心線45近傍に、溶剤を送る液体供給管としての溶剤供給管46と、水を送る液体供給管としての水供給管47が配置されている。
【0033】
次に吐出孔44について説明する。
図6(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に吐出孔44が開けられている。
図6(b)は図6(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており1個設けられている。吐出孔44は、直径d=1mmである。
【0034】
次に別形態の吐出孔44について説明する。
図7(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に吐出孔44が開けられている。
図7(b)は図7(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、長穴を呈しており1個のみ設けられている。長穴の長手方向は長さL1=1.4mmであり、幅L2=0.6mmである。
【0035】
次に別形態の吐出孔44について説明する。
図8(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に2個の吐出孔44が開けられている。
図8(b)は図8(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており2個設けられている。吐出孔44は、それぞれ直径d=0.7mmである。
【0036】
次にさらなる別形態の吐出孔44について説明する。
図9(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に3個の吐出孔44が開けられている。
図9(b)は図9(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており3個設けられている。吐出孔44は、それぞれ直径d=0.7mmである。
なお、吐出孔44の形状、個数は、適切な流量を確保できれば適宜変更しても差し支えない。
【0037】
以上に述べた塗装ガン15の作用を次に述べる。
図10(a)は、エアーの吹き出しを説明する図であり、シェーピングエアリング41の端部に設けられたエアー穴42から、エアーは矢印(1)のように、吹き出している。回転霧化頭19に供給された塗料は、回転霧化頭19の回転の遠心力により外側方向に拡がるように噴霧されるが、矢印(1)のエアーによって、噴霧方向が制限される。
【0038】
図10(b)はエアーの流れを説明する図であり、エアーの大部分は、矢印(1)のように流れる。しかし、エアーの一部は、矢印(2)のように渦をまくようにして流れる。このとき、噴霧された塗料の一部は、矢印(2)のエアーの流れによって、回転霧化頭19の後面25の領域Bに付着する。ただし、後面25の領域Aは、シェーピングエアリング41の陰になり塗料が付着しない。
【0039】
次に回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20の作用を次に述べる。
図11に示されるように、回転霧化頭19の後面25まで溶剤供給管46が延びるような位置に塗装ガン15を移動させる(液体供給管を配置する工程)。洗浄液としての溶剤を矢印(3)のように流し、後面25に吐出する(溶剤を吐出する工程)。
なお、溶剤はシンナーが好適であるが、シンナー以外であっても回転霧化頭19を洗浄できれば他の洗浄液であっても差し支えない。
【0040】
例えば、溶剤は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系有機溶剤、または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、または、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、または、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系有機溶剤、または、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系有機溶剤、または、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系有機溶剤等を挙げることができ、これらは単独で、または2種以上組み合せて使用することができる。
また、場合によっては水を混合して使用することもできる。
【0041】
図12に示されるように、溶剤の吐出に続いて、洗浄液としての水を矢印(4)のように流し、後面25に吐出する(水を吐出する工程)。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、図11に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図13に示されるように、塗装ガン15は、先端部に回転霧化頭19を備えている。回転霧化頭19の後面25上部には、首部51が接続されている。回転霧化頭19の後面25は、シェーピングエアリング41の陰にならず、後面25全体が露出している。
液体供給管26は、回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。
【0043】
後面25が露出しているので、塗装時、後面25全体に噴霧された塗料の一部が付着する。付着した塗料を洗浄する際は、液体供給管26の吐出孔44が後面25の上端から下端まで矢印(5)のように沿って洗浄できるよう、塗装ガン15を液体供給管26に対して相対的に移動させる。
なお、その他の作用については、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0044】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。なお、図12に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図14に示されるように、液体供給管26に、溶剤を流す溶剤通路52及び水を流す水通路53が接続されている。溶剤通路52の途中に溶剤を流す溶剤用バルブ54が設けられ、水通路53の途中に水の流れを制御する水用バルブ55が設けられている。
【0045】
作用について説明すると、回転霧化頭19の後面25まで液体供給管26が延びるような位置に塗装ガン15を移動させる(液体供給管を配置する工程)。先ず溶剤用バルブ54を開き、矢印(6)のように溶剤を流して回転霧化頭19の後面25を洗浄し(溶剤を吐出する工程)、溶剤用バルブ54を閉じる。続いて、水用バルブ55を開き、矢印(7)のように水を流して後面25を洗浄する(水を吐出する工程)。
また、溶剤通路52と溶剤用バルブ54とで溶剤フィード手段56が構成され、水通路53と水用バルブ55とで水フィード手段57が構成される。
【0046】
以上に述べた内容をまとめて以下に記載する。
上記の図3に示したように、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガン15を対象とし、回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20において、この洗浄装置20は、回転霧化頭19の後面25まで延び洗浄液が供給される液体供給管26と、この液体供給管26に開けられ洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する図4に示す吐出孔44と、を有する。
【0047】
この構成により、洗浄液の吐出孔44が回転霧化頭19の後面25近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭19の後面25を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体15へ飛散する心配がない。
【0048】
上記の図5に示したように、液体供給管26は、溶剤を送る溶剤供給管46と、水を送る水供給管47と、からなる。
この構成により、仮に、回転霧化頭19の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管47からの水で回転霧化頭19を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。
【0049】
上記の図14に示したように、液体供給管26に、溶剤を送る溶剤フィード手段56と、水を送る水フィード手段57とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管26に送られる。
この構成により、溶剤用と水用の液体供給管26を共有するので、液体供給管26の本数を半減させることができる。
【0050】
上記の図11に示したように、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガン15を対象とし、回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、洗浄液を送る液体供給管26を後面25まで延ばして配置する工程と、液体供給管26に開けられた吐出孔44から後面25へ溶剤を吐出する工程と、からなる。
【0051】
この構成により、回転霧化頭26の近傍から洗浄液を吐出するので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、塗装機本体15への洗浄液の飛散を防止しつつ回転霧化頭19の外面25を洗浄することができる。
さらに、回転霧化頭19の近傍から吐出された洗浄液は、そのほとんどが回転霧化頭19の後25面に当たるので、無駄に吐出される洗浄液を低減でき、効率良く洗浄することができる。
【0052】
上記の図12に示したように、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管26に開けられた吐出孔44から後面25へ水を吐出する工程を、有する。
この構成により、仮に、回転霧化頭19の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管47からの水で回転霧化頭19を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。結果、回転霧化頭19の寿命を長くすることができる。
【0053】
尚、本発明に係る回転霧化頭の洗浄技術は、産業用ロボットに取付けた塗装ガンに適用したが、これに限定されず、塗装ガンの回転霧化頭を洗浄するのであれば、他の塗装ガンに適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の回転霧化頭の洗浄装置は、回転霧化頭の後面の洗浄に好適である。
【符号の説明】
【0055】
15…塗装ガン(塗装機本体)、19…回転霧化頭、20…回転霧化頭の洗浄装置、22…回転霧化頭の前面、25…回転霧化頭の後面、26…液体供給管、44…吐出孔、46…液体供給管(溶剤供給管)、47…液体供給管(水供給管)、56…溶剤フィード手段、57…水フィード手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ガンの回転霧化頭を洗浄対象とする回転霧化頭の洗浄技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、塗装対象の製品に応じて、1つの塗装ガンで複数種類の塗料を吐出することがある。塗料の種類を切り換える際、塗装ガンに残った塗料を取り除くため、塗装ガンの先端に設けられた回転霧化頭を洗浄する技術が提案されている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
この特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図15に示されるように、回転霧化頭の洗浄装置100では、塗装機本体101の先端に円錐形の回転霧化頭102が回転可能に設けられている。回転霧化頭102に供給された塗料は、回転霧化頭102の前面から遠心力によって外周側に飛散して霧化され、被塗装物に吹き付けられる。このとき、塗料の一部が回転霧化頭102の後面103に付着することがある。
【0004】
回転霧化頭102の後面103を洗浄する際、洗浄液を吐出する洗浄ノズル104を、回転霧化頭102の後面103に対して離間させて斜め下向きに配置する。洗浄ノズル104から吐出された洗浄液が、回転する回転霧化頭102の後面103に当たることで、回転霧化頭102の後面103が洗浄される。
【0005】
しかし、洗浄ノズル104は後面103に対して離間しているため、回転霧化頭102の後面103に勢いよく吐出された洗浄液の一部は飛散して、塗装機本体101等を汚すことがある。汚れが蓄積されると、塗装作業中に被塗装物に汚れが落下してしまう虞がある。そこで、回転霧化頭の外面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配のない洗浄技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転霧化頭の外面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配のない洗浄技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置において、この洗浄装置は、前記回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ前記洗浄液を前記回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管に送られることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、回転霧化頭を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、洗浄液を送る液体供給管を後面まで延ばして配置する工程と、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ溶剤を吐出する工程と、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ水を吐出する工程を、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、洗浄装置は、回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ洗浄液を回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有する。洗浄液の吐出孔が回転霧化頭の後面近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭の後面を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体へ飛散する心配がない。
【0014】
請求項2に係る発明では、液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなる。仮に、回転霧化頭の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管からの水で回転霧化頭を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管に送られる。溶剤用と水用の液体供給管を共有するので、液体供給管の本数を半減させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、洗浄液を送る液体供給管を後面まで延ばして配置する工程と、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ溶剤を吐出する工程と、からなる。回転霧化頭の近傍から洗浄液を吐出するので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、塗装機本体への洗浄液の飛散を防止しつつ回転霧化頭の外面を洗浄することができる。
さらに、回転霧化頭の近傍から吐出された洗浄液は、そのほとんどが回転霧化頭の後面に当たるので、無駄に吐出される洗浄液を低減でき、効率良く洗浄することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管に開けられた吐出孔から後面へ水を吐出する工程を、有する。仮に、回転霧化頭の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管からの水で回転霧化頭を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。結果、回転霧化頭の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る回転霧化頭の洗浄装置の使用例を説明する図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】実施例1に係る洗浄装置の要部を説明する図である。
【図4】洗浄装置の要部拡大図である。
【図5】図3の5−5矢視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図6の別形態を説明する図である。
【図8】図7の別形態を説明する図である。
【図9】図8の別形態を説明する図である。
【図10】塗装装置の作用説明図である。
【図11】回転霧化頭の洗浄装置の作用説明図である。
【図12】水による洗浄を説明する図である。
【図13】実施例2を説明する図である。
【図14】実施例3を説明する図である。
【図15】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0020】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、塗装機設備10は、塗装機11と、回転霧化頭の洗浄装置20とからなる。
塗装機11は、ベース部12と、このベース部12の上部に設けられている産業用ロボット13と、この産業用ロボット13のアーム部14の先端に設けられている塗装機本体としての塗装ガン15とからなる。
【0021】
回転霧化頭の洗浄装置20は、ベース部12の側壁16にステー17を介して取付けられている。また、回転霧化頭の洗浄装置20の下部には、洗浄後の洗浄液を受ける洗浄液パン18が配置されている。
【0022】
次に回転霧化頭の洗浄装置20を説明する。
図2に示されるように、塗装ガン15の先端に回転霧化頭19が備えられている。
回転霧化頭の洗浄装置20は、ステー17の前面供給管保持部21に取付けられ回転霧化頭19の前面22へ洗浄液を噴射する前面液体供給管23と、ステー17の後面供給管保持部24に取付けられ回転霧化頭19の後面25へ洗浄液を供給する液体供給管26と、液体供給管26の下方に設けられ洗浄後の洗浄液を受ける洗浄液パン18と、からなる。前面液体供給管23から洗浄液を噴射することで、塗装ガン15の先端に回転可能に設けられている回転霧化頭19の前面22を洗浄することができる。
【0023】
次に回転霧化頭19の形状及び液体供給管26の配置について説明する。
図3に示されるように、回転霧化頭19は、塗装ガン15の先端に回転可能に設けられている。回転霧化頭19の回転軸31の近傍に塗料を吐出する中心部塗料吐出孔32が設けられると共に、回転軸31に対して円錐形を呈するように傾斜させて塗料を吐出する外側塗料吐出孔33を有する。
【0024】
回転霧化頭19は、アウター部材34と、このアウター部材34との間に回転霧化頭19の裏側としての塗料溜まり35を構成するインナー部材36と、塗料溜まり35に塗料を導く塗料フィードチューブ37とからなる。
塗料溜まり35は、釣り鐘形状を呈しており、塗料溜まりの内壁38は外側塗料吐出孔33に滑らかに繋がっている。これにより、塗料を円滑に吐出することができる。
【0025】
塗装ガン15は、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する。また、塗装ガン15の先端部にシェーピングエアリング41が設けられ、このシェーピングエアリング41にエアーを吹き出すエアー穴42が設けられている。
なお、エアー穴42の代わりに、スリット型のエアー吹き出し口にしても差し支えない。
【0026】
回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20は、洗浄液が供給される液体供給管26が回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。この液体供給管26に洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する吐出孔(詳細後述)が設けられ、この吐出孔の中心線45は、後面25に掛かっている。
【0027】
次に吐出孔の位置について説明する。
図4に示されるように、液体供給管26の内部に洗浄液を通す液体通路43が設けられ、この液体通路43に洗浄液を吐出する吐出孔44が繋がっている。吐出孔44から洗浄液を吐出することで、回転霧化頭19の後面25を洗浄することができる。洗浄後の洗浄液は流れ落ち、洗浄液パン(図2、符号18)に回収される。
【0028】
ここで、吐出孔44から回転霧化頭19の後面25までの距離をLとし、液体供給管26の先端部の直径をDとする。距離Lを直径Dとほぼ等しく設定することが望まれる。
吐出孔44の直径をdとし、吐出される洗浄液の流速をVとすると、流量Q=π(d/2)2×Vとなる。なお、実施例では吐出孔44の数は1個であるが、複数個設けても差し支えない。
【0029】
吐出孔44の直径d、吐出孔44の個数n、洗浄液の跳ね返りが起きない流量Q、としてこれら直径d、個数n、流量Qの組み合せ例を次表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1中、パターン1は後述する図6、図7に示す形態であり、パターン2は図8に示す形態であり、パターン3は図9に示す形態である。
また、回転霧化頭19の回転数は、30000rpm以下とした。
なお、表1のパターン1において、流量Qは300cm3/分以下であるが、200cm3/分以下であればより一層好ましい。また、流量は、回転霧化頭19の形状や大きさに応じて、適宜変更しても差し支えない。
【0032】
次に溶剤供給管と水供給管の配置について説明する。
図5に示されるように、平面視における回転霧化頭19の中心線45近傍に、溶剤を送る液体供給管としての溶剤供給管46と、水を送る液体供給管としての水供給管47が配置されている。
【0033】
次に吐出孔44について説明する。
図6(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に吐出孔44が開けられている。
図6(b)は図6(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており1個設けられている。吐出孔44は、直径d=1mmである。
【0034】
次に別形態の吐出孔44について説明する。
図7(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に吐出孔44が開けられている。
図7(b)は図7(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、長穴を呈しており1個のみ設けられている。長穴の長手方向は長さL1=1.4mmであり、幅L2=0.6mmである。
【0035】
次に別形態の吐出孔44について説明する。
図8(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に2個の吐出孔44が開けられている。
図8(b)は図8(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており2個設けられている。吐出孔44は、それぞれ直径d=0.7mmである。
【0036】
次にさらなる別形態の吐出孔44について説明する。
図9(a)に示されるように、液体供給管26の液体通路43の先端部に3個の吐出孔44が開けられている。
図9(b)は図9(a)のb矢視図であり、吐出孔44は、円形を呈しており3個設けられている。吐出孔44は、それぞれ直径d=0.7mmである。
なお、吐出孔44の形状、個数は、適切な流量を確保できれば適宜変更しても差し支えない。
【0037】
以上に述べた塗装ガン15の作用を次に述べる。
図10(a)は、エアーの吹き出しを説明する図であり、シェーピングエアリング41の端部に設けられたエアー穴42から、エアーは矢印(1)のように、吹き出している。回転霧化頭19に供給された塗料は、回転霧化頭19の回転の遠心力により外側方向に拡がるように噴霧されるが、矢印(1)のエアーによって、噴霧方向が制限される。
【0038】
図10(b)はエアーの流れを説明する図であり、エアーの大部分は、矢印(1)のように流れる。しかし、エアーの一部は、矢印(2)のように渦をまくようにして流れる。このとき、噴霧された塗料の一部は、矢印(2)のエアーの流れによって、回転霧化頭19の後面25の領域Bに付着する。ただし、後面25の領域Aは、シェーピングエアリング41の陰になり塗料が付着しない。
【0039】
次に回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20の作用を次に述べる。
図11に示されるように、回転霧化頭19の後面25まで溶剤供給管46が延びるような位置に塗装ガン15を移動させる(液体供給管を配置する工程)。洗浄液としての溶剤を矢印(3)のように流し、後面25に吐出する(溶剤を吐出する工程)。
なお、溶剤はシンナーが好適であるが、シンナー以外であっても回転霧化頭19を洗浄できれば他の洗浄液であっても差し支えない。
【0040】
例えば、溶剤は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系有機溶剤、または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、または、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、または、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系有機溶剤、または、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系有機溶剤、または、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系有機溶剤等を挙げることができ、これらは単独で、または2種以上組み合せて使用することができる。
また、場合によっては水を混合して使用することもできる。
【0041】
図12に示されるように、溶剤の吐出に続いて、洗浄液としての水を矢印(4)のように流し、後面25に吐出する(水を吐出する工程)。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、図11に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図13に示されるように、塗装ガン15は、先端部に回転霧化頭19を備えている。回転霧化頭19の後面25上部には、首部51が接続されている。回転霧化頭19の後面25は、シェーピングエアリング41の陰にならず、後面25全体が露出している。
液体供給管26は、回転霧化頭19の後面25まで延ばされている。
【0043】
後面25が露出しているので、塗装時、後面25全体に噴霧された塗料の一部が付着する。付着した塗料を洗浄する際は、液体供給管26の吐出孔44が後面25の上端から下端まで矢印(5)のように沿って洗浄できるよう、塗装ガン15を液体供給管26に対して相対的に移動させる。
なお、その他の作用については、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0044】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。なお、図12に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図14に示されるように、液体供給管26に、溶剤を流す溶剤通路52及び水を流す水通路53が接続されている。溶剤通路52の途中に溶剤を流す溶剤用バルブ54が設けられ、水通路53の途中に水の流れを制御する水用バルブ55が設けられている。
【0045】
作用について説明すると、回転霧化頭19の後面25まで液体供給管26が延びるような位置に塗装ガン15を移動させる(液体供給管を配置する工程)。先ず溶剤用バルブ54を開き、矢印(6)のように溶剤を流して回転霧化頭19の後面25を洗浄し(溶剤を吐出する工程)、溶剤用バルブ54を閉じる。続いて、水用バルブ55を開き、矢印(7)のように水を流して後面25を洗浄する(水を吐出する工程)。
また、溶剤通路52と溶剤用バルブ54とで溶剤フィード手段56が構成され、水通路53と水用バルブ55とで水フィード手段57が構成される。
【0046】
以上に述べた内容をまとめて以下に記載する。
上記の図3に示したように、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガン15を対象とし、回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置20において、この洗浄装置20は、回転霧化頭19の後面25まで延び洗浄液が供給される液体供給管26と、この液体供給管26に開けられ洗浄液を回転霧化頭19の後面25へ吐出する図4に示す吐出孔44と、を有する。
【0047】
この構成により、洗浄液の吐出孔44が回転霧化頭19の後面25近傍にあるので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、回転霧化頭19の後面25を洗浄するときに、洗浄液が塗装機本体15へ飛散する心配がない。
【0048】
上記の図5に示したように、液体供給管26は、溶剤を送る溶剤供給管46と、水を送る水供給管47と、からなる。
この構成により、仮に、回転霧化頭19の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管47からの水で回転霧化頭19を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。
【0049】
上記の図14に示したように、液体供給管26に、溶剤を送る溶剤フィード手段56と、水を送る水フィード手段57とが接続され、溶剤と水との一方が液体供給管26に送られる。
この構成により、溶剤用と水用の液体供給管26を共有するので、液体供給管26の本数を半減させることができる。
【0050】
上記の図11に示したように、円錐形の回転霧化頭19の前面22へ塗料を供給し、回転霧化頭19を回転させることで、塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガン15を対象とし、回転霧化頭19の後面25を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、洗浄液を送る液体供給管26を後面25まで延ばして配置する工程と、液体供給管26に開けられた吐出孔44から後面25へ溶剤を吐出する工程と、からなる。
【0051】
この構成により、回転霧化頭26の近傍から洗浄液を吐出するので、洗浄液が飛散しないように吐出することができ、塗装機本体15への洗浄液の飛散を防止しつつ回転霧化頭19の外面25を洗浄することができる。
さらに、回転霧化頭19の近傍から吐出された洗浄液は、そのほとんどが回転霧化頭19の後25面に当たるので、無駄に吐出される洗浄液を低減でき、効率良く洗浄することができる。
【0052】
上記の図12に示したように、溶剤を吐出する工程に続いて、液体供給管26に開けられた吐出孔44から後面25へ水を吐出する工程を、有する。
この構成により、仮に、回転霧化頭19の材質がアルミニウムであれば、溶剤のみの洗浄では腐食する虞もあるが、水供給管47からの水で回転霧化頭19を洗浄し、溶剤を流すことで腐食防止を図ることができる。結果、回転霧化頭19の寿命を長くすることができる。
【0053】
尚、本発明に係る回転霧化頭の洗浄技術は、産業用ロボットに取付けた塗装ガンに適用したが、これに限定されず、塗装ガンの回転霧化頭を洗浄するのであれば、他の塗装ガンに適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の回転霧化頭の洗浄装置は、回転霧化頭の後面の洗浄に好適である。
【符号の説明】
【0055】
15…塗装ガン(塗装機本体)、19…回転霧化頭、20…回転霧化頭の洗浄装置、22…回転霧化頭の前面、25…回転霧化頭の後面、26…液体供給管、44…吐出孔、46…液体供給管(溶剤供給管)、47…液体供給管(水供給管)、56…溶剤フィード手段、57…水フィード手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置において、
この洗浄装置は、前記回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ前記洗浄液を前記回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有することを特徴とする回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項2】
前記液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項3】
前記液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、前記溶剤と前記水との一方が前記液体供給管に送られることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項4】
円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、
洗浄液を送る液体供給管を前記後面まで延ばして配置する工程と、
前記液体供給管に開けられた吐出孔から前記後面へ溶剤を吐出する工程と、からなることを特徴とする回転霧化頭の洗浄方法。
【請求項5】
前記溶剤を吐出する工程に続いて、
前記液体供給管に開けられた吐出孔から前記後面へ水を吐出する工程を、有することを特徴とする請求項4記載の回転霧化頭の洗浄方法。
【請求項1】
円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄装置において、
この洗浄装置は、前記回転霧化頭の後面まで延び洗浄液が供給される液体供給管と、この液体供給管に開けられ前記洗浄液を前記回転霧化頭の後面へ吐出する吐出孔と、を有することを特徴とする回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項2】
前記液体供給管は、溶剤を送る溶剤供給管と、水を送る水供給管と、からなることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項3】
前記液体供給管に、溶剤を送る溶剤フィード手段と、水を送る水フィード手段とが接続され、前記溶剤と前記水との一方が前記液体供給管に送られることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭の洗浄装置。
【請求項4】
円錐形の回転霧化頭の前面へ塗料を供給し、前記回転霧化頭を回転させることで、前記塗料を霧化しつつ前方へ噴射する塗装ガンを対象とし、前記回転霧化頭の後面を洗浄する回転霧化頭の洗浄方法において、
洗浄液を送る液体供給管を前記後面まで延ばして配置する工程と、
前記液体供給管に開けられた吐出孔から前記後面へ溶剤を吐出する工程と、からなることを特徴とする回転霧化頭の洗浄方法。
【請求項5】
前記溶剤を吐出する工程に続いて、
前記液体供給管に開けられた吐出孔から前記後面へ水を吐出する工程を、有することを特徴とする請求項4記載の回転霧化頭の洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−230034(P2011−230034A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101295(P2010−101295)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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