説明

図書保管管理システム

【課題】タグリーダが発する電磁波の通信距離を確保しつつ、広範囲に電磁波を照射して、コンテナの収容空間内に収容される殆どの図書の無線タグを読み取ることができる図書保管管理システムを提供すること。
【解決手段】第1側壁26と第2側壁27とで囲まれた内部が図書4を収容するための上方に向けて開口する収容空間21に形成されているコンテナ6を備えるとともに、第2側壁27よりも上方位置から収容空間21内に電磁波を照射する向きに配置されて電磁波を用いて無線タグの識別情報を読取可能なタグリーダ15をさらに備え、タグリーダ15における電磁波を送受信するアンテナ面37は、コンテナ6の左右寸法M1の半分以上の長さ寸法L1を有するとともに、電磁波が収容空間21の奥側に到達可能な上下寸法L2を有する、左右に長寸な略長方形状をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書庫に収容されている複数のコンテナの中から、目的の図書が含まれているコンテナを取り出してステーションに搬送するとともに、図書の貸し出しまたは返却作業後にステーションより書庫にコンテナを搬送する図書保管管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の図書保管管理システムにおいては、各図書に図書コード(識別情報)が記憶された無線タグが取り付けられているとともに、各図書は、搬送方向である左右方向に向けて搬送されるコンテナ内で、互いに背表紙を外側に向けるようにして、厚み方向(前後方向)に2列に並んで収容されるようになっている。更に、コンテナをステーションまで搬送する搬送コンベアの片側には、無線タグと無線通信を行うためのタグリーダ/ライタ(タグリーダ)が搬送方向に沿って並設されており、これらタグリーダ/ライタによってコンテナ内の各図書の無線タグから図書コードを読み取っているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、薄板状の導体板を基にして形成された左右対称配置の1対の平面導体部を有し、近接されるタグとの間で無指向性の無線通信を行うことができる平面アンテナがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3990173号公報(第16頁、第24図)
【特許文献2】特開2007−181173号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の平面アンテナにあっては、無指向性であるため広範囲の領域に電磁波を照射させることが可能であり便利であるが、この平面アンテナを特許文献1に記載の図書保管管理システムに適用しようとすると、電波法等の規制によりアンテナの送信出力が所定値以下に限定されてしまい、その限定された所定値の送信出力で広範囲の領域に電磁波を照射しようとすると、交信距離が短くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、タグリーダが発する電磁波の通信距離を確保しつつ、広範囲に電磁波を照射して、コンテナの収容空間内に収容される殆どの図書の無線タグを読み取ることができる図書保管管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の図書保管管理システムは、
複数の図書が複数のコンテナ内に収容された状態で書庫に収容され、該複数の図書には、各図書を識別可能な識別情報が記憶されている無線タグが取り付けられ、管理装置の指令に基づき、書庫に収容されている複数の前記コンテナの中から、目的の図書が含まれているコンテナを取り出してステーションに搬送するとともに、図書の貸し出しまたは返却作業後にステーションより前記書庫に前記コンテナを搬送する図書保管管理システムであって、
平面視矩形状の底板と、該底板の左右端部から上方に向けて延設されている第1側壁と、前記底板の前後端部から上方に向けて延設されている第2側壁と、から構成され、前記第1側壁と前記第2側壁とで囲まれた内部が図書を収容するための上方に向けて開口する収容空間に形成されているコンテナを備えるとともに、前記第2側壁よりも上方位置から前記収容空間内に電磁波を照射する向きに配置されて該電磁波を用いて前記無線タグの識別情報を読取可能なタグリーダをさらに備え、該タグリーダにおける前記電磁波を送受信するアンテナ面は、前記コンテナの左右寸法の半分以上の長さ寸法を有するとともに、前記電磁波が前記収容空間の奥側に到達可能な上下寸法を有する、左右に長寸な略長方形状をなすことを特徴としている。
この特徴によれば、第2側壁がタグリーダの障壁とならず、第2側壁の上方位置からタグリーダを収容空間内の図書に近接させて配置でき、かつタグリーダから上下方向に電磁波が広がらないため、電磁波の照射に用いる出力値が所定値以下に制限されても、タグリーダが発する電磁波の通信距離を確保しつつ、コンテナの収容空間の左右方向の広範囲に渡って効率的に電磁波が広がるようになっており、コンテナの収容空間内に収容される殆どの図書の無線タグを読み取ることができる。
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の図書保管管理システムは、
前記コンテナと前記タグリーダとを互いに左右方向に相対移動させることで、前記タグリーダによって前記識別情報を順次読み取ることを特徴としている。
この特徴によれば、コンテナとタグリーダとの相対位置が変化してタグリーダが収容空間の他の領域に電磁波を照射した際に、電磁波が照射される範囲の少なくとも一部を、直前の電磁波の照射範囲と重複させることができ、タグリーダによる無線タグの読み取り漏れが防止される。
【0009】
本発明の図書保管管理システムは、
前記タグリーダの上端よりも高く形成されて、前記コンテナを前側と後側とに仕切る磁性部材で構成された仕切部が設けられ、該仕切部を介して前記複数の図書が前後2列に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、タグリーダから発信される電磁波が磁性部材の仕切部によって遮断されるようになり、例えば、前側にタグリーダを設置した場合には、この前側のタグリーダは、仕切部によってコンテナの後側に収容されている図書の無線タグから識別情報を読み取れなくなり、コンテナの前側に収容されている図書の無線タグのみから識別情報を読み取るようになり、タグリーダの読取動作の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明の図書保管管理システムは、
前記タグリーダは、前記アンテナ面が前記コンテナの底板に向く方向に傾斜されて配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、タグリーダのアンテナ面がコンテナの第2側壁の上端よりも上方位置から底板に向かって収容空間の上下全域に電磁波を照射できるようになり、無線タグが図書の上部側または下部側のいずれの位置に取り付けられていても、タグリーダにより読み取ることができ、無線タグの読み取り漏れが防止される。
【0011】
本発明の図書保管管理システムは、
前記コンテナの第2側壁には、各コンテナを識別可能なバーコード部が設けられるとともに、該バーコード部を読み取るバーコードリーダが、前記タグリーダの下方位置に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、タグリーダによる電磁波の照射範囲とバーコードリーダの走査範囲とが上下に分かれて、タグリーダとバーコードリーダとを近接して配置することができ、タグリーダによる無線タグの読取動作とバーコードリーダによるバーコード部の走査動作との時間差を無くして、タグリーダにより識別情報が読み取られた無線タグの図書が、バーコードリーダにより走査されたバーコード部に対応したコンテナに収容されているものとして、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナと図書との紐付けを容易に行うことができる。
【0012】
本発明の図書保管管理システムは、
前記バーコード部は、前記コンテナの第2側壁の左右方向の略中央部に設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、コンテナの収容空間の左側及び右側の位置に図書が収容されていても、これらの図書の無線タグをタグリーダが読み取った読取時とコンテナのバーコード部をバーコードリーダが読み取った読取時との時間差を、コンテナの左側及び右側で均等にすることができ、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナと図書との紐付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における自動書庫及びステーションを示す平面図である。
【図2】ステーションを示す斜視図である。
【図3】ステーションを示す横断平面図である。
【図4】図書を示す斜視図である。
【図5】(a)は、タグリーダを示す正面図であり、(b)は、タグリーダから発生される電磁波を示す平面図である。
【図6】ステーションの中空部内を示す平面拡大図である。
【図7】タグリーダ及びコンテナを示す正面図である。
【図8】タグリーダ及びコンテナを示す縦断側面図である。
【図9】(a)は、実施例2におけるタグリーダを示す正面図であり、(b)は、タグリーダから発生される電磁波を示す平面図である。
【図10】実施例3におけるステーションの中空部内を示す平面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る図書保管管理システムを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る図書保管管理システムにつき、図1から図8を参照して説明する。以下、図3及び図6の紙面下側をステーションの正面側(前方側)とし、図8の紙面左側をコンテナの正面側(前方側)として説明する。
【0016】
図1の符号1は、本発明の適用された図書保管管理システムである。この図書保管管理システム1は、図1に示すように、例えば、図書館にて書棚が利用者に公開されている利用者室2と、書棚が利用者に公開されていない閉架書庫3と、の間に亘って設置されており、閉架書庫3に収容されている図書4(図4参照)を利用者の要求に応じて利用者室2まで搬送するシステムである。
【0017】
閉架書庫3には、図書4を収容するための複数の書棚5が配置されている。これら書棚5には、複数の図書4が立てた状態で収容された複数のコンテナ6が収容されている。尚、本発明における図書保管管理システム1は、コンテナ6毎に図書4を文学、スポーツ、評論等の分野毎に収容する固定ロケーション方式を採用している。
【0018】
図4に示すように、図書4の表紙4aまたは裏表紙4bにおける背表紙4c寄りで且つ下端部寄りの箇所には、各図書4毎に固有の識別情報が記憶されているRFIDタグ7(無線タグ)が貼り付けられている。本実施例では、RFIDタグ7は、全ての図書4の裏表紙4bにおける背表紙4cに貼り付けられているものとして説明する。尚、RFIDタグ7の貼付箇所は、図書4の表紙4aまたは裏表紙4bにおける上端部寄りの箇所に取り付けられていてもよい。
【0019】
このRFIDタグ7の識別情報は、後述するタグリーダ15と貸出用タグリーダ20とによって読み取り可能となっている。尚、この識別情報には、各図書4を識別できる固有のIDが含まれている。この固有のID以外にも、各図書4の属性情報である各図書4のタイトル、著者、出版社、ページ数等も識別情報に含まれる。尚、この識別情報が、後述するステーション11に内蔵された所定の制御コンピュータ(図示略)の図書管理用のデータベースに登録されており、このデータベースに基づいて各図書4の管理が行えるようになっている。
【0020】
また、本実施例におけるRFIDタグ7は、内蔵したICチップを非接触方式(無線方式)にて、タグリーダ15と貸出用タグリーダ20とで読み取らせる公知のパッシブ型のRFIDタグである。
【0021】
図1に示すように、図書保管管理システム1は、閉架書庫3にて書棚から図書4が収容されたコンテナ6を取り出すための複数基のスタッカクレーン8と、スタッカクレーン8によって書棚5から取り出されたコンテナ6を搬送するコンベア9と、を備えている。
【0022】
また、利用者室2には、閉架書庫3からコンテナ6を搬送可能であって、利用者が目的の図書4の貸し出し、若しくは返却を行うことができるステーション11が設けられている。ステーション11にて設定された指令に基づき、スタッカクレーン8は、各書棚5におけるコンテナ6の収容位置まで前後並びに上下方向に自動走行して、コンテナ6の出し入れを行うようになっている。
【0023】
図2に示すように、ステーション11の上部には、その内部が中空である中空部12が形成されている。この中空部12内には、書棚5から連続したコンベア9が延設されている(図1参照)。このコンベア9は、平行に延設される前後2本のフレーム24,24と、このフレーム24,24間に並設される複数のローラ25と、から構成されている(図8参照)。
【0024】
コンベア9における隣り合うローラ25同士の間には所定の間隔が設けられており、各ローラ25は、任意の駆動手段によって同一方向に回転可能になっている。このコンベア9によって、コンテナ6は、その左右方向をコンベア9の搬送方向に向けた状態で中空部12内の中央まで水平に搬送されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、ステーション11の中空部12内の中央には、コンベア9に連続して設けられたターンテーブル13が配設されている。ステーション11に搬送されたコンテナ6は、このターンテーブル13上に載置されるようになっている。
【0026】
ステーション11の利用者は、ステーション11の外面に設けられているコンテナ回転ボタン11aを押圧操作することで、ターンテーブル13を回転させてコンテナ6を水平回転させることができる(図2参照)。そのため、コンテナ6は、その正面側及び背面側のいずれの側も利用者側に向けることができるようになり、コンテナ6の正面側及び背面側の両側に図書4を収容しておくことができ、コンテナ6内のスペースを有効利用できる。
【0027】
また、図2に示すように、ステーション11の上部における正面側は、左右方向に中空部12を開閉自在なスライド扉14が取り付けられており、利用者は、このスライド扉14を開放することによって中空部12に搬送されてきたコンテナ6から図書4を取り出せるようになっている。
【0028】
図3に示すように、ステーション11の中空部12内の右部には、コンベア9の正面側と背面側の両側に、コンテナ6に収容されている図書4のRFIDタグ7から識別情報を読み取るためのタグリーダ15が設けられている。このタグリーダ15は、コンベア9のフレーム24にブラケット16を介して移動不能に固定配置されている(図8参照)。
【0029】
図2に示すように、ステーション11の正面側には、利用者がコンテナ6から取り出した図書4を載置するための天板17が設けられている。この天板17上には、ステーション11を利用する利用者に対して、図書4の貸し出し及び返却作業の指示を行うための表示装置18が設けられている。この表示装置18は、利用者が直接指等を接触させて操作可能なタッチパネル19を備えている。
【0030】
また、天板17には、図書4の裏表紙4bに貼り付けられているRFIDタグ7から識別情報を読み取るための貸出用タグリーダ20が埋設されている。尚、ステーション11内には、特に図示しないが、これら表示装置18とタッチパネル19と貸出用タグリーダ20とタグリーダ15とコンベア9とスタッカクレーン8とに接続されている制御コンピュータ(図示略)が内蔵されている。
【0031】
この制御コンピュータ(図示略)は、利用者がタッチパネル19から図書4の貸し出し、または返却作業の操作を行うことに伴い、表示装置18と貸出用タグリーダ20とタグリーダ15とコンベア9とスタッカクレーン8とを適宜制御可能となっている。
【0032】
次に、図書4が収容されるコンテナ6について図6から図8を参照して説明する。このコンテナ6は、ポリプロピレン等の樹脂材によって構成されている。図6から図8に示すように、コンテナ6は、平面視矩形状をなす底板28と、底板28の左右端部から上方に向かって延設されている第1側壁26と、底板28の前後端部から上方に向かって延設されている第2側壁27と、によって構成されており、上方に向かって開口する略箱体に形成されている。
【0033】
また、第1側壁26は、第2側壁27よりも上下方向に長くなるように形成されている。これら第1側壁26と第2側壁27、及び底板28とによって囲まれたコンテナ6の内部は、複数の図書4を収容するための上方に向けて開口する収容空間21に形成されている。
【0034】
図8に示すように、コンテナ6の底板28が有する収容空間21の底面は、底板28の前後に設けられている第2側壁27から中央方向に向かって上方に角度θ1の上り傾斜をなす傾斜面29に形成されている。また、第2側壁27は、その内側面30が下端部から上方に向けてコンテナ6の前後方向の外側方に向けて傾斜面29と同一傾斜角である角度θ1の傾斜をなして形成されている。
【0035】
そのため、第2側壁27の内側面30と底板28の傾斜面29とのなす角が直角となり、図書4の角部を保持することができるとともに、図書4の背が正面側及び背面側の端部に揃い、コンテナ6がタグリーダ15の設置位置を通過する際に、図書4の裏表紙4bにおける背表紙4c寄りに貼り付けられたRFIDタグ7をタグリーダ15に近接させることができる。
【0036】
尚、本実施例では、これら傾斜面29と内側面30の角度θ1は、約5度に形成されているが、コンテナ6内に収容されている図書4が収容空間21から脱落する角度でなければ角度θ1は特に限定されない。更に、コンテナ6内には、第2側壁27間で底板28の左右方向の略中央から上方に向かって隔壁31が立設されており、この隔壁31によって収容空間21は、左右に仕切られている(図6参照)。
【0037】
また、コンテナ6内には、スチール材や鉄材等の金属製材料等の磁性部材からなる磁性板22(仕切部)が2枚設けられている。この磁性板22は、第1側壁26同士の間に設けられた左右方向に延びる板状をなしている。尚、磁性板22の上端は、第1側壁26の上端と同じ高さとなっている。
【0038】
コンテナ6内の収容空間21は、磁性板22によって、コンテナ6の正面側(前側)と背面側(後側)とに分割され、複数の図書4は、背表紙4cをコンテナ6の前後方向の外側に向けた状態で、かつ各図書4をコンテナ6の搬送方向に並べた状態で、この磁性板22を介してコンテナ6の正面側(前側)と背面側(後側)とに前後2列に配置されている。
【0039】
尚、この磁性板22に、フェライトシート等の磁性シート(図示略)を貼り付けるようにしてもよく、フェライトシートが貼り付けられていれば、磁性板22にRFIDタグ7が接触している状態であっても、RFIDタグ7の識別情報をタグリーダ15によって読み取ることができる。
【0040】
図2及び図8に示すように、コンテナ6の第2側壁27における正面側と背面側の外面には、左右方向の略中央部に各コンテナ6を識別可能なバーコード部41が設けられている。尚、このバーコード部41には、各コンテナ6を識別できる固有のIDが含まれた識別情報が書き込まれている。
【0041】
また、正面側と背面側に設置されたタグリーダ15の下方位置には、バーコード部41を読取可能なバーコードリーダ42がそれぞれ固定配置されている(図7、図8参照)。バーコード部41は、コンテナ6の正面側と背面側とに設けられるとともに、バーコードリーダ42は、ステーション11の中空部12内の正面側と背面側に設けられているため、コンテナ6が左部及び右部のいずれが前方向となって搬送されても、バーコードリーダ42がバーコード部41を確実に読み取ることができる。
【0042】
コンテナ6の搬送に伴い、コンテナ6のバーコード部41がバーコードリーダ42によって読み取られるとともに、図書4のRFIDタグ7がタグリーダ15によって読み取られる。バーコード部41の識別情報とRFIDタグ7の識別情報とによって、コンテナ6とコンテナ6内に収容された図書4とが紐付けされ、図書管理用のデータベースに登録されるようになっている。
【0043】
このように構成されて図書4を収容するコンテナ6は、利用者が図書4の貸し出しや返却処理を行う際にタッチパネル19を操作することに伴い、ステーション11の指令に基づいて閉架書庫3の書棚5からスタッカクレーン8とコンベア9を介してステーション11内の中空部12の中央まで搬送される(図1参照)。
【0044】
具体的には、先ず、利用者はタッチパネル19を操作することで、目的とする図書4のタイトルや著者等の識別情報を入力し、目的とする図書4が収容されているコンテナ6を搬送するように操作指示を行う。
【0045】
ステーション11の制御コンピュータ(図示略)は、この搬送指示に基づいて図書管理用のデータベースを検索し、スタッカクレーン8とコンベア9とに対して、利用者の目的とする図書4が収容されているコンテナ6を、閉架書庫3の書棚5からステーション11内の中空部12の中央まで搬送させる制御を行う。
【0046】
そして、コンテナ6がステーション11内の中空部12の中央に向けて搬送される際に、コンベア9の正面側と背面側とに設けられたバーコードリーダ42によって、コンテナ6の第2側壁27に設けられているバーコード部41が読み取られるとともに、タグリーダ15によってコンテナ6の正面側と背面側とに収容空間21内に収容されている図書4のRFIDタグ7の識別情報が順次読み取られる。
【0047】
ステーション11は、順次読み取ったRFIDタグ7及びバーコード部41の識別情報に基づいて、表示装置18にコンテナ6内に収容されている図書4のタイトル等を表示させる。これにより、利用者はコンテナ6の収容空間21内における目的とする図書4の収容位置を把握することができるようになっている。
【0048】
尚、利用者が目的とする図書4がコンテナ6の収容空間21の背面側に収容されている場合には、利用者がコンテナ回転ボタン11aを押圧操作することでターンテーブル13を回転させて、コンテナ6の向きを回転変更させることで、目的とする図書4を容易にコンテナ6から取り出すことができる。そして、コンテナ6の収容空間21から取り出した図書4は、貸出用タグリーダ20によってRFIDタグ7から識別情報を読み取らせることによって貸出処理を行うことができる。
【0049】
利用者は、図書4の貸し出しが終了した後、再びタッチパネル19を操作することで、ステーション11内から閉架書庫3の書棚5にコンテナ6を返却する操作指示を行う。ステーション11の制御コンピュータ(図示略)は、この操作指示に基づいてスタッカクレーン8とコンベア9とに対して、コンテナ6を書棚5に返却させる制御を行うことで、図書4の貸し出しから返却までの操作が完了する。
【0050】
次に、図書4のRFIDタグ7を読み取るためのタグリーダ15について、図5から図8を参照して説明する。図5(a)に示すように、タグリーダ15は、正面視で略四角形状をなす絶縁性の平面基板32を有し、この平面基板32には、この平面基板32よりも小の略四角形かつ平面薄板状をなす導体板(例えば銅箔)が貼り付けられており、この導体板は、その左右方向の略中央部が下方から上方に向かって切り欠かれて切欠部33が形成され、導体板の左右に第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35とが形成されている。また、第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35は、その上部の接続部36で接続されている。
【0051】
図5(a)に示すように、第1アンテナ素子34の下端部における切欠部33の近傍と、第2アンテナ素子35の下端部における切欠部33の近傍には、給電点38が設けられている。また、このタグリーダ15には、電力を供給するための2本の給電用ケーブル39が設けられ、一方の給電用ケーブル39は第1アンテナ素子34側の給電点38に接続されているとともに、他方の給電用ケーブル39は第2アンテナ素子35側の給電点38に接続されている。
【0052】
第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35は、接続部36を介して擬似的に直列に接続された状態となっており、第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35に電流が流れてアンテナ面37から電磁波40を発生させるようになっている(図5(b)参照)。
【0053】
タグリーダ15は、第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35からなるアンテナ面37から電磁波40を送受信することで、図書4に貼り付けられたRFIDタグ7の識別情報を識別できるようになっている。尚、加えられる電流値が同じである場合に、面積の小さいアンテナ面では、面積の大きなアンテナ面よりも、電磁波40の分布範囲が狭くなるが、放射強度が強まって通信距離が長くなる。そして、2つのアンテナ素子34,35の面積を合わせた総面積が、タグリーダ15、すなわちアンテナ面37の面積となっており、このアンテナ面37の面積を所定の面積とすることにより通信距離を確保することができる。
【0054】
図7に示すように、タグリーダ15におけるアンテナ面37の左右寸法L1は、コンテナ6の左右寸法M1の半分以上の長さ寸法を有するとともに、アンテナ面37の上下寸法L2は、アンテナ面37から発信される電磁波40が収容空間21の奥側に到達可能な程度の上下寸法に形成されている。そして、タグリーダ15のアンテナ面37は、正面視または背面視において左右に長寸な略長方形状をなしている。
【0055】
図7及び図8に示すように、タグリーダ15は、コンテナ6の第2側壁27の上下寸法M2よりも上方位置から収容空間21内に電磁波40を照射する向きに配置されるとともに、アンテナ面37がコンテナ6の底板28に向く方向に所定の角度θ2の傾斜をなして配置されている。
【0056】
これにより、第2側壁27がタグリーダ15の障壁とならず、タグリーダ15を収容空間21内の図書4に近接させることができ、かつタグリーダ15から上下方向に電磁波40が広がらないため、電磁波40の照射に用いる出力値が所定値以下に制限されても、タグリーダ15が発する電磁波40の通信距離を確保できる。
【0057】
更に、タグリーダ15のアンテナ面37がコンテナ6の第2側壁27の上端よりも上方位置から底板28に向かって収容空間21の上下左右全域の広範囲に渡って効率的に電磁波40が広がるため、RFIDタグ7が、図書4の裏表紙4bにおける上部側または下部側のいずれの位置に取り付けられていても、タグリーダ15によりRFIDタグ7の識別情報を読み取ることができ、RFIDタグ7の読み取り漏れが防止され、コンテナ6の収容空間21内に収容される殆どの図書4のRFIDタグ7を読み取ることができる。
【0058】
また、コンテナ6の底板28から磁性板22の上端までの上下寸法M3は、磁性板22の上端がタグリーダ15の上端よりも高くなるように形成されている。コンテナ6の収容空間21は、磁性板22によって正面側と背面側とに分割されており、タグリーダ15から発信される電磁波40は、磁性板22によって遮断されるようになる。
【0059】
例えば、コンベア9の正面側に設けられたタグリーダ15は、磁性板22によってコンテナ6の背面側に収容されている図書4のRFIDタグ7から識別情報を読み取れなくなり、収容空間21の正面側に収容されている図書4のRFIDタグ7のみから識別情報を読み取るようになる。同様に、コンベア9の背面側に設けられたタグリーダ15は、コンテナ6の背面側に収容されている図書4のRFIDタグ7のみから識別情報を読み取るようになり、タグリーダ15の読取動作の信頼性を向上させることができる。
【0060】
更に、コンテナ6がステーション11に搬送される際に、コンテナ6とタグリーダ15とが左右方向に相対移動されてタグリーダ15によってRFIDタグ7の識別情報が順次読み取られることで、コンテナ6とタグリーダ15との相対位置が変化してタグリーダ15が収容空間21の他の領域に電磁波40を照射した際に、電磁波40が照射される範囲の少なくとも一部を、直前の電磁波40の照射範囲と重複させることができ、タグリーダ15がRFIDタグ7を複数回読むことによりタグリーダ15によるRFIDタグ7の読み取り漏れが防止できるようになっている。
【0061】
尚、本実施例ではタグリーダ15を固定配置させてコンテナ6の移動とともにRFIDタグ7を読み取らせているが、コンテナ6の搬送を停止し、タグリーダ15を左右方向に移動させることでコンテナ6とタグリーダ15とを互いに左右方向に相対移動させ、RFIDタグ7を読み取らせるようにしてもよい。
【0062】
従来技術では、タグリーダ15とバーコードリーダ42とを、コンテナ6の搬送方向に沿って離間した状態で配置しなければならず、バーコードリーダ42が所定のコンテナ6からバーコード部41を読み取っている際に、タグリーダ15が後続のコンテナ6内の図書4のRFIDタグ7から識別情報を誤って読み取ってしまう場合がある。
【0063】
このような場合には、タグリーダ15がRFIDタグ7を読み取るためにはコンベア9の搬送速度を遅くするなどの制御を行う必要があり、コンテナ6の通常の搬送速度を維持した状態や搬送速度を速めた状態では、タグリーダ15が図書4のRFIDタグ7から識別情報を読み取ることができず、図書管理用のデータベースに登録するときのコンテナ6と図書4との紐付けを正しく行うことができなくなってしまう虞がある。
【0064】
本発明の図書保管管理システム1では、バーコードリーダ42をタグリーダ15の下方位置に配置することで、タグリーダ15による電磁波40の照射範囲とバーコードリーダ42の走査範囲とが上下に分かれるため、タグリーダ15とバーコードリーダ42とを近接して配置することができる。
【0065】
このように、タグリーダ15によるRFIDタグ7の読取動作と、バーコードリーダ42によるバーコード部41の走査動作との時間差をなくして、タグリーダ15により識別情報が読み取られたRFIDタグ7を有する図書4が、バーコードリーダ42により走査されたバーコード部41に対応したコンテナ6に収容されているものとして、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナ6と図書4との紐付けを容易に行うことができる。
【0066】
尚、図6に示すように、コンテナ6の正面側に収容された図書4は、隔壁31によって左右に仕切られた収容空間21内で正面視で左側に寄せて収容され、背面側の図書4は、収容空間21内で正面視で右側に寄せて収容されている。
【0067】
コンテナ6の収容空間21の左側及び右側の位置に複数の図書4が離間して収容されていても、タグリーダ15におけるアンテナ面37の左右寸法L1がコンテナ6の左右寸法M1の半分以上の長さ寸法に形成されているため、タグリーダ15は、左右に離間された複数の図書4のRFIDタグ7を同時に読み取ることができる。
【0068】
更に、バーコード部41がコンテナ6の第2側壁27の左右方向の略中央部に設けられていることで、これらの図書4のRFIDタグ7をタグリーダ15が読み取った読取時とバーコード部41をバーコードリーダ42が読み取った読取時との時間差を、コンテナ6の左側及び右側で均等にすることができ、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナ6と図書4との紐付けを容易に行うことができる。
【0069】
また、前述したように、コンテナ6の第2側壁27に設けられたバーコード部41を読み取るバーコードリーダ42と、図書4のRFIDタグ7の識別情報を読み取るタグリーダ15は、コンテナ6の搬送方向における同一箇所に配置されている。タグリーダ15の配置箇所と同一箇所にバーコードリーダ42を配置することで、図書4のRFIDタグ7とコンテナ6のバーコード部41を同時に読むことが可能な配置となり、図書4とコンテナ6の識別情報の紐付けが容易となる。
【0070】
以上、本実施例における図書保管管理システム1にあっては、平面視矩形状の底板28と、底板28の左右端部から上方に向けて延設されている第1側壁26と、底板28の前後端部から上方に向けて延設されている第2側壁27と、から構成され、第1側壁26と第2側壁27とで囲まれた内部が図書4を収容するための上方に向けて開口する収容空間21に形成されているコンテナ6を備えるとともに、第2側壁27よりも上方位置から収容空間21内に電磁波40を照射する向きに配置されて電磁波40を用いてRFIDタグ7の識別情報を読取可能なタグリーダ15をさらに備え、タグリーダ15における電磁波40を送受信するアンテナ面37は、コンテナ6の左右寸法M1の半分以上の長さ寸法L1を有するとともに、電磁波40が収容空間21の奥側に到達可能な上下寸法L2を有する、左右に長寸な略長方形状をなすことで、第2側壁27がタグリーダ15の障壁とならず、第2側壁27の上方位置からタグリーダ15を収容空間21内の図書4に近接させて配置でき、かつタグリーダ15から上下方向に電磁波40が広がらないため、電磁波40の照射に用いる出力値が所定値以下に制限されても、タグリーダ15が発する電磁波40の通信距離を確保しつつ、コンテナ6の収容空間21の左右方向の広範囲に渡って効率的に電磁波40が広がるようになっており、コンテナ6の収容空間21内に収容される殆どの図書4のRFIDタグ7を読み取ることができる。
【0071】
また、コンテナ6とタグリーダ15とを互いに左右方向に相対移動させることで、タグリーダ15によって識別情報を順次読み取ることで、コンテナ6とタグリーダ15との相対位置が変化してタグリーダ15が収容空間21の他の領域に電磁波40を照射した際に、電磁波40が照射される範囲の少なくとも一部を、直前の電磁波40の照射範囲と重複させることができ、タグリーダ15によるRFIDタグ7の読み取り漏れが防止される。
【0072】
また、タグリーダ15の上端よりも高く形成されて、コンテナ6を前側と後側とに仕切る磁性部材で構成された磁性板22が設けられ、磁性板22を介して複数の図書4が前後2列に配置されることで、タグリーダ15から発信される電磁波40が磁性部材の磁性板22によって遮断されるようになり、例えば、正面側(前側)にタグリーダ15を設置した場合には、この正面側のタグリーダ15は、磁性板22によってコンテナ6の背面側(後側)に収容されている図書4のRFIDタグ7から識別情報を読み取れなくなり、コンテナ6の正面側に収容されている図書4のRFIDタグ7のみから識別情報を読み取るようになり、タグリーダ15の読取動作の信頼性を向上させることができる。
【0073】
また、タグリーダ15は、アンテナ面37がコンテナ6の底板28に向く方向に傾斜されて配置されることで、タグリーダ15のアンテナ面37がコンテナ6の第2側壁27の上端よりも上方位置から底板28に向かって収容空間21の上下全域に電磁波40を照射できるようになり、RFIDタグ7が図書4の上部側または下部側のいずれの位置に取り付けられていても、タグリーダ15により読み取ることができ、RFIDタグ7の読み取り漏れが防止される。
【0074】
また、コンテナ6の第2側壁27には、各コンテナ6を識別可能なバーコード部41が設けられるとともに、バーコード部41を読み取るバーコードリーダ42が、タグリーダ15の下方位置に配置されることで、タグリーダ15による電磁波40の照射範囲とバーコードリーダ42の走査範囲とが上下に分かれて、タグリーダ15とバーコードリーダ42とを近接して配置することができ、タグリーダ15によるRFIDタグ7の読取動作とバーコードリーダ42によるバーコード部41の走査動作との時間差を無くして、タグリーダ15により識別情報が読み取られたRFIDタグ7の図書4が、バーコードリーダ42により走査されたバーコード部41に対応したコンテナ6に収容されているものとして、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナ6と図書4との紐付けを容易に行うことができる。
【0075】
また、バーコード部41は、コンテナ6の第2側壁27の左右方向の略中央部に設けられることで、コンテナ6の収容空間21の左側及び右側の位置に図書4が収容されていても、これらの図書4のRFIDタグ7をタグリーダ15が読み取った読取時とコンテナ6のバーコード部41をバーコードリーダ42が読み取った読取時との時間差を、コンテナ6の左側及び右側で均等にすることができ、図書管理用のデータベースに登録する際に、コンテナ6と図書4との紐付けを容易に行うことができる。
【実施例2】
【0076】
次に、実施例2に係る図書保管管理システムにつき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0077】
図9(a)に示すように、本実施例におけるタグリーダ15’は、平面基板32に第1アンテナ素子34が形成された第1アンテナユニット43と、平面基板32に第2アンテナ素子35が形成された第2アンテナユニット44とが左右方向に並設されている。
【0078】
第1アンテナ素子34の下端部における第2アンテナユニット44寄りの角部近傍と、第2アンテナ素子35の下端部における第1アンテナユニット43寄りの角部近傍と、には、給電点38が設けられており、この給電点38には電力を供給するための給電用ケーブル39がそれぞれ接続されている。
【0079】
また、第1アンテナ素子34の左右幅Y1は、第2アンテナ素子35の左右幅Y2よりも小さく形成されており、各アンテナ素子34,35の上下幅は略同一であるため、第1アンテナ素子34の面積は、第2アンテナ素子35の面積よりも小さくなる。
【0080】
面積が互いに異なる第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35とを並設することで、給電用ケーブル39からタグリーダ15’に同じ電流値が加えられた場合には、性質が互いに異なる電磁波40,40’を発生させる(図9(b)参照)。このような2つのアンテナ素子34,35を並設して左右寸法の長いタグリーダ15’を構成してもよい。
【0081】
尚、コンテナ6の収容空間21には、前側と後側にそれぞれ図書4が30冊程度収容可能であり、最大60冊程度の多数の図書4が収容されている。従来技術では、タグリーダから電磁波を所定間隔置きに発生させ、タグリーダは、電磁波の発生により読取可能となったRFIDタグの識別情報をその都度全て読み取り、管理コンピュータのデータベースと照合することで既に読取済のRFIDタグと新規に読み取ったRFIDタグとを分別する処理を行っている。しかしながら、収容された図書4の冊数が多いと、図書4のRFIDタグ7から読み取った識別情報をデータベースと照合する処理に時間がかかり、読取速度が遅くなってしまうという問題がある。
【0082】
そこで、本実施例では、タグリーダ15’における各アンテナ素子34,35のいずれか一方から電磁波40,40’を一定時間継続して発生させる制御を行うことができる。例えば、第1アンテナ素子34から発生する電磁波40によってRFIDタグ7の識別情報が読み取られているときには、そのRFIDタグ7の識別情報は、そのとき停止されている第2アンテナ素子35よって読み取られないように制御することができる。
【0083】
このようにすることで、第1アンテナ素子34と第2アンテナ素子35のいずれか一方のアンテナ素子によってRFIDタグ7の識別情報が読み取られ、重複して読み取られることがなくなるため、タグリーダ15’がRFIDタグ7の識別情報を読み取ったデータを処理する時間が短縮されるようになり、タグリーダ15’によるRFIDタグ7の読取速度を向上させることができる。
【0084】
更に尚、本実施例では、タグリーダ15’における各アンテナ素子34,35の両方から同時に電磁波40,40’を一定時間継続して発生させる制御を行うことができる。そして、この電磁波40,40’を発生させる制御を、各アンテナ素子34,35の読取可能領域にコンテナ6が進入してから通過が完了するまでの間、一定時間継続させるようにする。更に、タグリーダ15’はRFIDタグ7に対するライト機能を有しており、このライト機能を用いることで、通信可能状態のRFIDタグ7を一時停止させて通信不能状態とする制御を行うことができる。
【0085】
例えば、各アンテナ素子34,35の両方から同時に電磁波40,40’を一定時間継続して発生させ、このアンテナ素子34,35の読取可能領域をコンテナ6が通過する際に、アンテナ素子34,35と一度通信を行ったRFIDタグ7を通信不能状態とすることで、RFIDタグ7の識別情報が重複して読み取られることがなくなる。そのため、タグリーダ15’がRFIDタグ7の識別情報を読み取ったデータを処理する時間が短縮されるようになり、タグリーダ15’によるRFIDタグ7の読取速度を向上させることができる。尚、コンテナ6がアンテナ素子34,35の読取可能領域を通過した後は、電磁波40,40’がRFIDタグ7に届かなくなるため、RFIDタグ7内の電力も無くなり、RFIDタグ7の通信不能状態が自動的に解除される。
【0086】
更に、このようにすることで、タグリーダ15’にて2枚のアンテナ素子34,35が同時に制御され、データベースと照合する処理も同時に行えるため、各アンテナ素子34,35を切り換えながら制御して、アンテナ素子34,35毎にデータベースと照合する場合よりも、切換時間等のタイムロスが生じないようになり、タグリーダ15’の処理速度を向上させることができる。
【実施例3】
【0087】
次に、実施例3に係る図書保管管理システムにつき、図10を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0088】
図10に示すように、コンテナ6の正面側のタグリーダ15は、第1アンテナ素子34が紙面右側となるように形成されるとともに、コンテナ6の背面側のタグリーダ15は、第1アンテナ素子34が紙面左側となるように形成されている。即ち、面積がより大きい第1アンテナ素子34と面積がより小さい第2アンテナ素子35とが、正面側と背面側のタグリーダ15,15で左右逆に配置されるように形成されている。そして、正面側と背面側のタグリーダ15,15はそれぞれ対面する位置を互いにずらして配置されている。
【0089】
これにより、正面側のタグリーダ15と背面側のタグリーダ15は、電磁波40と電磁波40’の発生部位が左右方向で逆になるとともに、電磁波40,40’の分布範囲を正面側と背面側とで左右方向にずらすことができる。そのため、コンテナ6内の磁性板22等の金属に、タグリーダ15から発生する電磁波40,40’を打ち消す渦電流が生じることを防止できるとともに、正面側と背面側とに対面するタグリーダ15,15から発生する電磁波40,40’が互いに干渉することにより通信距離が短くなって読取精度が低下してしまうことが防止される。
【0090】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0091】
例えば、前記実施例では、図書保管管理システム1を、コンテナ6毎に図書4を分野毎に収容する固定ロケーション方式として説明したが、コンテナ6内に図書4を分野を問わずに収容し、図書4の保管効率を向上させたフリーロケーション方式としてもよい。
【0092】
また、前記実施例では、コンテナ6の収容空間21内に図書4を背表紙4dをコンテナ6の外側である正面側と背面側とに向けて立てた状態で収容したが、タグリーダ15によってRFIDタグ7から識別情報が読取可能であるならば、背表紙4dを上方や収容空間21の前後方向の中央に向けて立てた状態で収容してもよいし、複数の図書4を収容空間21内で平積みして収容するようにしてもよい。
【0093】
また、前記実施例では、タグリーダ15の配置箇所と同一箇所にバーコードリーダ42を配置しているが、タグリーダ15とバーコードリーダ42とをコンテナ6の搬送方向に多少ずらして設置してもよく、図書保管管理システム1の納入先の要望に応じて自在に対応することができる。
【0094】
また、前記実施例では、アンテナ素子の面積を変化させたタグリーダを用いてそれぞれ異なる性質の電磁波を発生させる電磁波発生手段を構成しているが、放射電極と、電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極と、が交互に繰り返し配列された構造を有し、所望の広さの交信エリアを形成するアンテナパターンを形成した公知のアンテナ装置を本発明のタグリーダとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 図書保管管理システム
4 図書
6 コンテナ
7 RFIDタグ(無線タグ)
11 ステーション(管理装置)
15 タグリーダ
15’ タグリーダ
21 収容空間
22 磁性板(仕切部)
26 第1側壁
27 第2側壁
28 底板
37 アンテナ面
40 電磁波
40’ 電磁波
41 バーコード部
42 バーコードリーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図書が複数のコンテナ内に収容された状態で書庫に収容され、該複数の図書には、各図書を識別可能な識別情報が記憶されている無線タグが取り付けられ、管理装置の指令に基づき、書庫に収容されている複数の前記コンテナの中から、目的の図書が含まれているコンテナを取り出してステーションに搬送するとともに、図書の貸し出しまたは返却作業後にステーションより前記書庫に前記コンテナを搬送する図書保管管理システムであって、
平面視矩形状の底板と、該底板の左右端部から上方に向けて延設されている第1側壁と、前記底板の前後端部から上方に向けて延設されている第2側壁と、から構成され、前記第1側壁と前記第2側壁とで囲まれた内部が図書を収容するための上方に向けて開口する収容空間に形成されているコンテナを備えるとともに、前記第2側壁よりも上方位置から前記収容空間内に電磁波を照射する向きに配置されて該電磁波を用いて前記無線タグの識別情報を読取可能なタグリーダをさらに備え、該タグリーダにおける前記電磁波を送受信するアンテナ面は、前記コンテナの左右寸法の半分以上の長さ寸法を有するとともに、前記電磁波が前記収容空間の奥側に到達可能な上下寸法を有する、左右に長寸な略長方形状をなすことを特徴とする図書保管管理システム。
【請求項2】
前記コンテナと前記タグリーダとを互いに左右方向に相対移動させることで、前記タグリーダによって前記識別情報を順次読み取ることを特徴とする請求項1に記載の図書保管管理システム。
【請求項3】
前記タグリーダの上端よりも高く形成されて、前記コンテナを前側と後側とに仕切る磁性部材で構成された仕切部が設けられ、該仕切部を介して前記複数の図書が前後2列に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の図書保管管理システム。
【請求項4】
前記タグリーダは、前記アンテナ面が前記コンテナの底板に向く方向に傾斜されて配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の図書保管管理システム。
【請求項5】
前記コンテナの第2側壁には、各コンテナを識別可能なバーコード部が設けられるとともに、該バーコード部を読み取るバーコードリーダが、前記タグリーダの下方位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の図書保管管理システム。
【請求項6】
前記バーコード部は、前記コンテナの第2側壁の左右方向の略中央部に設けられることを特徴とする請求項5に記載の図書保管管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20807(P2012−20807A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158050(P2010−158050)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】