説明

図面回転表示方法、図面回転表示装置及び図面回転表示プログラム

【課題】文字列データが分離不可能な画像で構成された図面について、文字列の可読性を損ねることなく回転表示する。
【解決手段】文字列領域抽出部11が図面データから文字列が書かれている文字列領域を抽出し、変換処理部13が図面データから文字列領域内の画像データを文字列画像として切り出し、図面データを回転変換した後、文字列画像を回転変換後の図面データに上書きする。これにより、文字列は回転変換されないので、文字列データが分離不可能な画像で構成された図面データについても、可読性を損ねることなく、回転表示による理解しやすい図面を表示することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データからなる図面を回転表示させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地図やフロア図など、位置関係を示すために使用される図面は、古くから広く使われている。特に近年においては、このような図面を、電子的なデータとして蓄積したり、これらのデータをインターネットに代表される通信システムを通じて配信したりすることにより、ディスプレイ等の電子デバイスを通じて表示することは一般化している。
【0003】
また、現在のコンピュータシステムにおいて、図面を構成する図形(画像や文字列を含む)データをディスプレイに表示するために広く利用されている既知の処理モジュール(一例を挙げると、OpenCV(http://opencv.jp/)など)には、図形データを拡大・縮小・移動・回転といった変換(これらの操作を一般化した変換行列式による変換を含む)を適用する機能を持っている。
【0004】
これらの技術を背景として、例えば、特許文献1に記載されているように、ディスプレイの向きなどにあわせて図面を回転表示することによって、利用者がより理解しやすい図面表示とする効果をもたらすが可能となっている。
【0005】
ただし、すべての図面上のデータを回転して表示することは、必ずしもよい効果をもたらさないこともある。例えば、図面上の文字列を、図面の回転にあわせて回転してしまうと、文字が読みにくくなってしまうことがある。図6にフロアマップを示す図面データを回転表示した例を示す。図6(a)は図面データを反時計回りに90度回転させた例であり、図6(b)は180度回転させた例である。図6(a)(b)に示すように、図面データを回転表示すると文字も回転されるので可読性が低くなってしまうという問題がある。
【0006】
このような課題を解決するために、例えば特許文献2には、文字列以外が記載されている回転済みの基準画像上に、文字列を回転させないようにした文字列を上書きして表示することによって、文字の可読性をあげる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−070044号公報
【特許文献2】特開2009−122916号公報
【特許文献3】特許第3467195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のような技術が適用可能となるためには、文字列データが、その背景となる図面を構成する画像データと、独立していることが前提条件となっている。すなわち、例えば紙面に出力したフロア図をスキャナやデジタルカメラ等によって画像データ化した場合や、フロア図を作成したツールによる出力形式としてPNG形式等の画像データしかサポートされていない場合、そのフロア図の図面を構成するデータとして、文字列データを分離して独立に処理できないため、特許文献2のような技術を適用することはできない。つまり、回転表示による理解しやすい図面表示と、高い文字の可読性を両立させることができないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、文字列データが分離不可能な画像で構成された図面について、文字列の可読性を損ねることなく回転表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明に係る図面回転表示方法は、図面データ中の文字列が存在する文字列領域を抽出し、文字列領域記憶手段に記憶させるステップと、前記文字列領域記憶手段から前記文字列領域を読み出し、前記図面データから前記文字列領域に対応する文字列画像を切り出すステップと、前記文字列画像を切り出すステップの後、前記図面データを指定された回転角度で回転変換するとともに、前記図面データ上の前記文字列領域の位置を回転変換するステップと、回転変換後の前記文字列領域の位置に前記文字列画像を上書きするステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明に係る図面回転表示装置は、図面データ中の文字列が存在する文字列領域を抽出する文字列領域抽出手段と、抽出した前記文字列領域を蓄積する文字列領域記憶手段と、前記文字列領域記憶手段から前記文字列領域を読み出し、前記図面データから前記文字列領域に対応する文字列画像を切り出した後、前記図面データを指定された回転角度で回転変換するとともに、前記図面データ上の前記文字列領域の位置を回転変換し、回転変換後の前記文字列領域の位置に前記文字列画像を上書きする変換処理手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
第3の本発明に係る図面回転表示プログラムは、上記図面回転表示方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、文字列データが分離不可能な画像で構成された図面について、文字列の可読性を損ねることなく回転表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における図面回転表示装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態における図面回転表示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】回転変換する前の図面データの例を示す図である。
【図4】文字列領域内を背景色で上書きした図面データの例を示す図である。
【図5】本実施の形態における図面回転表示装置により出力された図面データの例を示す図である。
【図6】従来技術により回転変換した図面データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における図面回転表示装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す図面回転表示装置1は、文字列領域抽出部11、文字列領域記憶部12、および変換処理部13を備える。図面回転表示装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは図面回転表示装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部について説明する。
【0017】
文字列領域抽出部11は、図面データを入力して文字列が書かれている可能性が高い矩形領域を文字列領域として抽出する。文字列領域の抽出は、特許文献3などの既存技術を用いることで実現することが可能である。文字列領域は、例えば、矩形領域の左上および右下の画像におけるピクセル単位の座標値のリストとして表現する。
【0018】
文字列領域記憶部12は、文字列領域抽出部11により抽出された文字列領域を蓄積する。蓄積に当たっては、図面データのファイル名やID値など、元の図面データを特定するキーとともに蓄積する。具体的な蓄積方法としては、ハードディスク上のファイルや、既存のデータベース管理システムを利用したテーブルなどに蓄積すればよい。
【0019】
変換処理部13は、回転対象の図面データと回転角度θを入力し、回転対象の図面データに対応する文字列領域を文字列領域記憶部12から読み出し、図面データから文字列領域内の画像データ(文字列画像)を切り出して背景色で埋めて、図面データを回転角度θで回転変換するとともに、文字列領域の回転変換後の位置を求め、文字列画像を回転後の図面データの求めた位置に上書きして図面データを出力する。出力された図面データは、接続されたディスプレイ2などの表示デバイスで表示される。
【0020】
次に、本実施の形態における図面回転表示装置の処理について説明する。
【0021】
図2は、本実施の形態における図面回転表示装置の処理の流れを示すフローチャートである。図3に示す図面データを回転表示する例を用いて説明する。図3に示す図面データは、ある場所のフロアマップを示す、文字列が分離不可能な画像データである。
【0022】
まず、文字列領域抽出部11が図面データから文字列領域を抽出する(ステップS101)。この処理により、図3に示す図面データ中の「アンシャンテ」「受付」「ゲート」「健康管理室」「中央管理室」「正面玄関」「展示ルーム」の各文字列を囲う矩形領域(文字列領域)の座標値が文字列領域記憶部12に蓄積される。
【0023】
続いて、変換処理部13が、抽出された各文字列領域について、ステップS201〜S202の処理を繰り返し、図面データから文字列領域内の文字列画像を切り出す(ステップS102)。具体的には、文字列領域記憶部12に蓄積された各文字列領域について、文字列領域内の文字列画像を切り出してメモリ等の記憶手段に保存し(ステップS201)、元の図面データの切り出した文字列領域内を背景色で上書きする(ステップS202)。本実施の形態では、文字列領域内を背景色で塗りつぶすため、たまたま文字列領域に重なってしまっている線なども消去されてしまう。そこで、文字列領域内を背景色で上書きする代わりに、予め決められた透明度αで上書きすることで、若干、元のデータを残しておく方法もある。あるいは、文字列領域内を背景色で上書きする処理を省略することもできる。図4に、文字列領域内を背景色で上書きした図面データの例を示す。
【0024】
そして、変換処理部13が、文字列領域を背景色で上書きした図面データを指定された回転角度θで回転変換する(ステップS103)。図面データの回転変換には、例えばOpenCVと呼ばれるライブラリの2DRotationMatrixという関数を用いる。中心座標と回転角度をパラメータで指定すると、指定された中心座標を中心に指定された回転角度の回転を行う変換行列を生成することができ、生成された変換行列に基づいて適宜必要な補完処理をかけながら図面データを回転変換することができる。
【0025】
そして、変換処理部13が、切り出した各文字列画像について、ステップS301〜S302の処理を繰り返し、回転変換した図面データに切り出した文字列画像を貼り付ける(ステップS104)。具体的には、図面データを回転変換した際の文字列領域の中心点の移動先座標値を計算し(ステップS301)、移動先座標値が切り出した文字列画像の中心となるように文字列画像を上書きする(ステップS302)。ここで、単に文字列画像を上書きするだけでなく、抽出した文字列領域を分かりやすくするために、文字列画像に枠線等で囲いをつけてもよい。
【0026】
図5に、本実施の形態における図面回転表示装置により出力された図面データの例を示す。図5(a)は、図3に示す図面データを反時計回りに90度回転させた例であり、図5(b)は、180度回転させた例である。同図に示すように、図面データを回転させても文字列領域は回転されないので、図6で示した従来方法で図面データを回転させた例よりも文字列の可読性が向上している。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、文字列領域抽出部11が図面データから文字列が書かれている文字列領域を抽出し、変換処理部13が図面データから文字列領域内の画像データを文字列画像として切り出し、図面データを回転変換した後、文字列画像を回転変換後の図面データに上書きすることにより、文字列は回転変換されないので、文字列データが分離不可能な画像で構成された図面データについても、可読性を損ねることなく、回転表示による理解しやすい図面を表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1…図面回転表示装置
11…文字列領域抽出部
12…文字列領域記憶部
13…変換処理部
2…ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面データ中の文字列が存在する文字列領域を抽出し、文字列領域記憶手段に記憶させるステップと、
前記文字列領域記憶手段から前記文字列領域を読み出し、前記図面データから前記文字列領域に対応する文字列画像を切り出すステップと、
前記文字列画像を切り出すステップの後、前記図面データを指定された回転角度で回転変換するとともに、前記図面データ上の前記文字列領域の位置を回転変換するステップと、
回転変換後の前記文字列領域の位置に前記文字列画像を上書きするステップと、
を有することを特徴とする図面回転表示方法。
【請求項2】
図面データ中の文字列が存在する文字列領域を抽出する文字列領域抽出手段と、
抽出した前記文字列領域を蓄積する文字列領域記憶手段と、
前記文字列領域記憶手段から前記文字列領域を読み出し、前記図面データから前記文字列領域に対応する文字列画像を切り出した後、前記図面データを指定された回転角度で回転変換するとともに、前記図面データ上の前記文字列領域の位置を回転変換し、回転変換後の前記文字列領域の位置に前記文字列画像を上書きする変換処理手段と、
を有することを特徴とする図面回転表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の図面回転表示方法をコンピュータに実行させることを特徴とする図面回転表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80363(P2013−80363A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219842(P2011−219842)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】