説明

固体キャパシタのためのアノード体を形成する方法

本発明は、固体キャパシタの分野に関し、より詳細には、タンタル、ニオブ、または1酸化ニオブ等の多孔質バルブ・アクション材料で形成されたアノード体を有するキャパシタに関する。本発明の一態様によると、バルブ・アクション材料でキャパシタアノード体形成する方法であって、バルブ・アクション材料のキャパシタ品質のパウダを設けるステップと、パウダを鋳型成形手段に投入するステップと、鋳型成形手段内のパウダを圧縮して、パウダをアノード体形状に成形するステップと、アノード体形状を、例えば材料を焼結することにより、安定化して、相互結合された多孔質体を形成するステップとを含み、鋳型成形プロセスは、潤滑剤を局所的に塗布して、アノード体の外表面と鋳型成形手段の鋳型成形表面との間の界面を潤滑にするように適合された潤滑手段の使用を伴うことを特徴とする方法が提供される。最も潤滑剤を要する鋳型およびアノードグリーンの部分に直接的に潤滑剤を塗布することにより、バルブ・アクションパウダに加えられるべきバインダ/潤滑剤の量を大幅に低減することができる。事実、タンタルの場合では、混合された(admixed)バインダ/潤滑剤の必要性を完全に避けることが可能であることが意外なことに見出された。これは、外部潤滑剤の存在下でのタンタルパウダの圧縮が、崩壊することなく操作し、かつ焼結位置(station)まで移送するために十分な構造的完全性をグリーンに与えるためであると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体キャパシタの分野に関し、より詳細には、タンタル、ニオブ、または一酸化ニオブ等の多孔質バルブ・アクション材料(porous valve action material)で形成されたアノード体を有するキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
次のステップを実行することにより固体キャパシタを製造することが知られている。それは、1)タンタル等の多孔質アノード体をバルブ・アクション材料から形成するステップと、2)アノード体の露出した表面の上に誘電体層を形成するステップと、3)誘電体層の上にカソード層を形成するステップと、4)カソード層と導電的に接触した状態のカソード端子およびアノード体と導電的に接触した状態のアノード端子を形成するステップである。アノード端子は、アノード内に埋め込まれ、キャパシタから突出した自由端を有するタンタルワイヤを備えてもよい。
【0003】
多孔質アノード体を使用することで、キャパシタの単位体積当たりの表面積を極めて高くし、また極めて小型で高電気容量のキャパシタを生産することが可能になる。典型的な従来技術の方法では、アノード体は、粉末状のタンタルパウダを脂肪酸等のバインダ/潤滑剤と混合した(admixed)「グリーン(green)」混合物を供給することにより形成される。この混合物が、鋳型内で成形される。アノードは、特定の実施形態では、(タンタルワイヤなどの適合性のある材料で形成された)導電性リードワイヤの周囲に鋳型成形され、導電性リードワイヤは後にキャパシタのアノード端子として機能する。グリーンアノード体はついで、融点未満であるがパウダ内の接触するアスペリティ(touching asperities)が溶解して相互結合した多孔質マトリクスを形成する温度に加熱することにより焼結される。バインダ/潤滑剤は、焼結の間に焼き払われる(burnt off)。または、水酸化ナトリウム等の苛性溶液で浸出させることにより燃焼(firing)の前にグリーン体から溶解される必要がある場合がある。
【0004】
バーン・オフの間に形成される残留炭素の存在が有用なキャパシタの形成を妨げる可能性があるため、この浸出方法はバーン・オフの代替方法よりも好まれる。そのような浸出方法は、特許文献1に記載されている。しかしながら、バインダ/潤滑剤の材料からの残留炭素コンタミナントが最終的なキャパシタに性能上の問題や欠陥を引き起こす可能性がある。
【0005】
特許文献2は、ウエハ基板上に複数の固体キャパシタを製造する方法を開示する。個別のアノード体は、基板上に焼結されたバルブ・アクション材料の多孔質層に一連のチャネルを加工することにより形成される。この方法の変形形態として、特許文献3に開示される基板上にアノード体を形成する方法は、複数のダイ及び対応するパンチを使用して、鋳型成形されたアノード体を基板上に成形および配置し、それにより加工ステップの必要性を取り除く。
【0006】
近年、キャパシタのアノード材料として、ニオブがタンタルに対する有用な代替物となってきている。この使用は、5酸化ニオブの元素状態(酸化数=0)への還元により、十分な純度のニオブ材料が安価に入手可能であることに起因している。ニオブパウダ及びニオブパウダから作製されたキャパシタが、特許文献4に開示されている。
【0007】
より近年では、亜酸化ニオブ、特に1酸化ニオブが、キャパシタのアノード材料として提案されている。NbOは、金属ニオブ及び水素などの還元剤の存在下で5酸化物を還元することで形成される。金属は1酸化物状態に酸化され、5酸化物は還元される。この方法および1酸化物から形成されたキャパシタは、特許文献5に開示されている。1酸化物は金属的な特性およびバルブ・アクション能力を有し、それには、5酸化物の誘電体層を1酸化物の上に形成して、固体キャパシタに使用するための誘電体層の即時の成長を可能にする能力が含まれる。
【0008】
本明細書で使用されるとき、キャパシタ品質(grade)のニオブ亜酸化物とは、ストイキオメトリックなNb(1)(1)1酸化物の形にのみ言及するのではなく、NbO(0.7<x<1.3)の組成を有する酸化物を一般的に含む。有利なことに、ニオブ酸化物のパウダまたはアノード体は、500から20000ppm、好ましくは1000から8000ppmのバルク窒素含有量を有する。窒素は、バルク材料中にNbN結晶として存在することができる。
【0009】
タンタルパウダは、より大きな表面積(CV/g)及びより大きな破壊電圧(BDV)を要求するより高性能のキャパシタでの使用のために開発されていく。より大きな表面積の開発において、主要なパウダ粒子のサイズが減少する。このことは、流れの容易さ、スコット(Scott)(バルク)密度、ならびにグリーン(未加工(raw))強度および凝集体間(inter−agglomerate)強度を含む、物理的加工特性に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、焼結された破砕強度(sintered crush strength)とともに、バインダ除去中のポスト・グリーン形成強度(post green forming strength)(ブラウン(brown)強度)も影響を受ける。
【0010】
【特許文献1】国際公開第WO98/30348号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5357399号明細書
【特許文献3】国際公開第WO01/11638号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第0946323号明細書
【特許文献5】欧州特許第1115658号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの物理特性の悪影響を低減するために、焼結および電解化成の前の多孔質アノード体の作製の援助となる新技術が望まれている。
【0012】
アノード材料パウダの鋳型成形によりアノード体を形成するに当たり、バインダの使用は、後の加工中の良好かつ完全なバインダの除去に関する問題を生じさせる。従来の鋳型成形プロセスは、構造的完全性を有するグリーンアノード体ペレットを設けるために、かつ鋳型成形および鋳型からの解放を潤滑にするために、バインダ/潤滑剤の使用を必要とした。バインダ/潤滑剤の完全な不在は、成形プレスによるグリーンな形成の後に、アノード体の亀裂(cracking)または崩壊(collapsing)を引き起こす可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、鋳型成形装置の過度の損耗や潤滑剤の欠如に起因するアノード体の破損を引き起こすことなく、バインダ/潤滑剤の使用の低減を可能にするアノード体の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によると、バルブ・アクション材料からキャパシタアノード体を形成する方法であって、
バルブ・アクション材料のキャパシタ品質のパウダを設けるステップと、
前記パウダを鋳型成形手段に投入するステップと、
前記鋳型成形手段内の前記パウダを圧縮して、前記パウダをアノード体形状に成形するステップと、
前記アノード体形状を、たとえば前記物質を焼結して相互結合した多孔質体を形成することにより、安定化するステップと
を含み、鋳型成形プロセスは、前記アノード体の外表面と前記鋳型成形手段の外表面との間の界面を潤滑にするために潤滑剤を局所的に塗布するように適合された潤滑手段の使用を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0015】
最も潤滑剤を要する鋳型およびアノードグリーンの部分に直接的に潤滑剤を塗布することにより、バルブ・アクションパウダに加えられるべきバインダ/潤滑剤の量を大幅に低減することができる。事実、タンタルの場合では、混合された(admixed)バインダ/潤滑剤の必要性を完全に避けることが可能であることが意外なことに見出された。これは、外部潤滑剤の存在下でのタンタルパウダの圧縮が、崩壊することなく操作し、かつ焼結位置(station)まで移送するために十分な構造的完全性をグリーンに与えるためであると考えられる。
【0016】
構造的完全性を依然として欠く材料に関しては、少量のバインダ/潤滑剤を使用してもよい。これは除去するのがより容易であり、そのため後の加工、特に焼結の間にアノードを汚染する可能性がより低い。
【0017】
この方法はまた、他の方法であれば経時的に鋳型成形装置を損傷する傾向にあるパウダ用(powder−grades)の材料等の研磨材の加工を可能にする。
【0018】
一酸化ニオブは、摩耗性の高い材料の一例であり、これに対して外部的に塗布された潤滑剤の使用は、鋳型成形装置の加速された損耗を防止する。
【0019】
潤滑剤は、好ましくは、オイルなどの液体である。好ましい潤滑剤は、PEG400(ポリエチレン・グリコール400)である。あるいは潤滑剤は、ワックスなどの、動作圧力または動作温度の下で液体を形成することのできる材料としてもよい。
【0020】
前記潤滑手段は、キャピラリーフィード(capillary feed)若しくは重力フィード又は好ましくはこれらの組み合わせにより前記鋳型成形手段に潤滑剤を塗布するように適合してもよい。
【0021】
前記液体潤滑手段は、前記鋳型成形手段のための潤滑剤の源である潤滑剤接触表面(lubricant contact surface)を提供する接触貯蔵部(contact depot)を備えてもよい。一実施形態では、前記潤滑剤は液体であり、前記貯蔵部は、例えばフェルト若しくは織布(woven textile)等の繊維状材料またはスポンジ等の多孔質気泡材料(porous cellular material)のような、吸収された潤滑剤を保持する材料により占められている。
【0022】
好ましい構成では、前記潤滑剤接触表面は、前記鋳型成形手段の移動部(travelling member)により接触され、前記移動部は、前記潤滑剤接触表面に対して相対的に移動して鋳型成形キャビティの中に入り、それにより潤滑剤を鋳型成形キャビティの表面に移送する。
【0023】
前記鋳型成形手段は、ダイとパンチとの組み合わせを備えることができ、前記ダイは、前記アノード体の断面構成を画定し、前記パンチは、前記ダイ内の材料を圧縮するように作用する。最適な構成では、前記パンチはさらに、別個の動作において、圧縮されて形成されたアノード体を前記ダイから取り出すように作用する。
【0024】
本発明の別の態様では、前記移動部は前記パンチである。このようにして、前記パンチは、オイルを持ち上げて前記鋳型の中に供給する。前記アノード体は、潤滑剤で湿った鋳型表面との接触により潤滑にされる。
【0025】
圧縮された前記アノード体は、いったん形成されると製造プロセスにおいて、鋳型からの前記アノード体の取り出しと前記アノード体の焼結位置への移送の後に、焼結により安定化される。
【0026】
本発明の別の態様において、前記鋳型成形手段において圧縮された前記バルブ・アクションパウダには、混合された潤滑剤が供給されておらず、したがって、鋳型成形中の実質的にすべての潤滑は、局所的に塗布された潤滑手段により与えられる。
【0027】
本発明のさらに別の態様では、前記バルブ・アクションパウダには混合された追加の潤滑剤を供給することができ、したがって、鋳型成形中の潤滑は、局所的に塗布する潤滑手段と追加の混合された潤滑剤により与えられる。
【0028】
前記バルブ・アクション材料は、タンタル金属、ニオブ金属、または1酸化ニオブ等の導電性亜酸化ニオブを含む。
【0029】
好ましい構成では、前記鋳型成形手段は、複数のダイとパンチとの対を備え、それにより、同一の装置の上に複数のアノード体を並列に形成することができる。
【0030】
本発明の方法は、次のステップを含む、バルブ・アクション材料材料から固体キャパシタを製造する方法に組み込まれることが意図されている。そのステップは、本明細書において以下に説明される方法により多孔質体アノード体を形成するステップと、前記アノード体の露出された表面上に誘電体層を形成するステップと、前記誘電体層の上のカソード層を形成するステップと、前記カソード層と導電的に接触したカソード端子および前記アノード体と導電的に接触したアノード端子を形成するステップである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1に、キャパシタ成形プレス機(moulding press)を一般的に10として示す。プレス機は、工具鋼(tool steel)で形成された一般的な円筒状ピースである上部鋳型ピース11を備える。ピースは、平坦な鋳型成形面14を有し、円筒状鋳型上部差し込み口(cylindrical mould upper spigot)13を画定するつり下がった(depending)環状段部(annular shoulder)12で形成されている。
【0032】
中心鋳型ダイ15はまた、円筒状の形状であり、中心孔16ならびに上部表面17および下部表面19により形成されている。鋳型ダイの下部表面19は、潤滑剤容器ピース(reservoir piece)20に隣接する。
【0033】
容器は、環状の形状であり、中心孔21と、一段高い環状周縁ピース22とを有する。内部環状周縁ピース23は、容器ピースの上部表面25の外方端部領域(outer edge region)の周囲に延在する環状チャネル24を画定する。チャネルは、潤滑剤供給部30から重力により供給される潤滑剤の容器として機能し、潤滑剤供給部30はフィード孔(feed bore)31を通じて容器ピースに入る。第1の環状発泡体(foam)キャピラリー層33は、容器ピースの周縁内に収容され、内部環状周縁ピース23の上側に隣接する。第2の環状キャピラリー発泡体層34は、第1の環状層33の最上面に隣接し且つ覆うように配置される。第1の層は、比較的微細に孔を空けられたオープンセル発泡体(open cell foam)であり、第2の層34は、比較的粗く孔を空けられたオープンセル発泡体である。各層は、孔35、36で形成され、これらの孔は、鋳型雄型パンチピース40の外方円筒状表面37とスライドする形で密接に接触している。
【0034】
雄型パンチピースは、円筒状の基部ピース41を備え、このピースは直立した環状の第1の段部42で形成されている。第1の段部42は、容器ピース20の基部領域39に形成された孔21内に収容することができる。第2の直立した環状段部44は、細長い円筒状パンチ48の上端47を画定し、外方円筒状表面37を提供する。雄型パンチピースは、中心の直立した軸方向の孔45で形成されている。孔は、その中にアノードリードワイヤ46が通されている。アノードワイヤは、スライドする形で密接に接触し、移動の許容範囲が狭い。リードワイヤは、リテイナ・スプール50から供給される。
【0035】
ギロチン・シャトル51が、中心鋳型ダイ15の上部表面17にわたり選択的にスライドするように構成されている。シャトルは、ギロチンポイント52を画定するくさび形の前面プロファイルで形成されている。シャトルは、駆動ロッド53に備え付けられ、駆動ロッド53は、図中の移動矢印により示されているように、鋳型ダイ表面にわたりシャトルを押したり引いたりするように駆動することができる。
【0036】
アノード体60は、アノードリードワイヤ46の上端領域61が埋め込まれた円筒状ペレットとして示されている。
【0037】
ここで、成形プレス機の動作シーケンスを説明する。図2に示されているように、一定量のキャパシタ品質のタンタルパウダ70が鋳型ダイ孔16の中に供給される。一定量のキャパシタ品質のタンタルパウダ70は、直立したリードワイヤ自由端61を覆う。リードワイヤを伴いながら、雄型パンチピース48が孔16の中に押し上げられる。上部のつり下がった鋳型差し込み口13が、孔の上端領域の中に向かって下に移動する。
【0038】
図3に示されているように、鋳型孔、上部の差し込み口、およびパンチが、投入されたタンタルパウダを締め付けて圧縮し、それによりグリーン(未焼結)円筒状アノード体60を鋳型成形する。
【0039】
上方の差し込み口はついで、図4に示されているように、鋳型の上端領域から後退する。パンチは、パンチの上端が鋳型ダイの上部表面17と並ぶまで、鋳型の中をさらに上に移動する。リードワイヤのさらなるフィードFが作動されてグリーンアノード体60が持ち上げられる。この際、パンチの上部表面の上にアノードワイヤの茎(stalk)71が露出する。
【0040】
図5において、シャトル51がついでアノードワイヤ茎71をその基部でせん断するように表面にわたって駆動され、そして離されたアノード体を鋳型の片側に運んで(回収パスケット(図示せず)により)回収する。
【0041】
パンチはついで、図2に示した構成を採るように引き下げられ、したがって、孔はタンタルパウダのさらなる充填およびサイクルの繰り返しの準備ができる。
【0042】
雄型パンチ48の引き下げおよびパンチングにおいて、潤滑剤は表面36、37との接触により上部発泡体層34および下部発泡体層33から引き出され、キャピラリー作用により容器から補充されることが理解されるだろう。潤滑剤は、ダイ孔16の内部円筒状表面37の上に運び上げられて堆積される。それゆえ、潤滑剤の層が塗布されて、鋳型成形サイクルの間連続的に補充される。
【0043】
潤滑剤は、形成されたアノード体の外方表面領域とのみ接触するため、アノード体の汚染の程度は、表面に限定されている。この潤滑剤の表面コーティングを、焼結のみ、またはまず洗浄してついで焼結することのいずれかで完全に容易に除去して、最終的な統合されたアノード体を形成することができる。
【0044】
本発明は、投入されたパウダ内のバインダ潤滑剤の量が低減されたアノード体を焼結することを可能にする。実際、ある場合では、完全にバインダ潤滑剤を用いることなく行うことが可能である。これは、潤滑剤からの残留炭素が焼結後に残りにくいので、改善された特性のアノードの生産を可能にする。
【0045】
多孔質アノードの圧縮の間に外部潤滑剤を使用することは、圧縮されたアノードと成形プレス機(たとえば、圧縮ツールダイ壁(pressing tool die wall))との間の摩擦を低減する。与えられる利点は、3つの主なカテゴリーに分類することができ、それらは、アノード品質、電気的特性、および改善されたコストでの製造である。
【0046】
アノード品質は、電気的特性および歩留まりの両方に影響を与える。完全なアノードは、欠陥がなく、寸法が正しく、そして良好な再現性で大量に生産される。最良のアノード品質を達成するためのキーパラメータの1つは、グリーン、ブラウン(バインダ/潤滑剤の除去後)、および焼結されたアノードの破砕強度(crush strength)が高いことである。パウダ混合物に少量のバインダ及び/又は潤滑剤を追加することの主な利点は、混合されたパウダの流れ(flow)を増加させることである。しかしながら、これは通常、個々のパウダ粒子をコーティングすること及び圧縮中のマイクロスコピックな冷間圧接(cold welding)を防止することに起因して、混合されたパウダの破砕強度を低減する。バインダ及び/又は潤滑剤を除去することにより、アノードが破損したりパウダを落としたりしないようにグリーン及びブラウン破砕強度が改善されて、このことは代わりに生じる他の様々な押圧欠陥(pressing defect)を防止する。
【0047】
バインダ及び潤滑剤の使用はまた、混合されたパウダが鋳型成形ツール(例えばパンチ)表面に接着する別の成形プレス欠陥を引き起こす可能性がある。混合されたパウダは、蓄積してパンチ上にドームを形成する可能性があり、これは、プレスされたアノードのいずれかの端部におけるくぼみの形成につながる。これらのくぼみは、密度および次元の変動につながり、これは最終的なキャパシタの総合的な電気容量に影響を与える。
【0048】
ダイ壁の潤滑それ自体または潤滑剤/バインダが混合された混合パウダと共に使用されるダイ壁の潤滑は、極めて高いアスペクト比のアノードをプレスするためのパウダのプレス能力を拡張することができる。高アスペクト比のアノードは、「低プロファイル」キャパシタを作製するために使用され、これは従来のキャパシタと同様の特性を提供するが、全体的な高さを低減する。低プロファイルキャパシタは、ラップトップコンピュータ、携帯電話等のポータブル用途において必要である。高アスペクト比のアノードは、体積に対する表面積の比が大きいが、表面積が増大するにつれてアノード/ダイ壁の摩擦も増大する。ダイ壁の潤滑は、この摩擦を低減してより高いアスペクト比のアノードをプレスする能力を高める。これは従来の技術水準では可能でない。
【0049】
ダイ壁潤滑剤の使用によるアノード品質の全体的な改善は、最終的なキャパシタの電気的特性に対して直接的に及び/又は間接的に影響を与える。ダイ壁の潤滑は、多孔質アノードをプレスする必要があるときにどんなバインダ及び/又は潤滑剤も削除することにより、炭素のコンタミネーションを大幅に低減することができる。炭素が、キャパシタ製造中の既知のコンタミネーションの最大の源の1つであるバインダ及び潤滑剤の除去から残留する。これらの残留炭素は、もしアノード上に残されると、焼結ステップの間にアノード体の中に拡散し、ついでキャパシタ形成の間に誘電体の中に組み込まれる。多くの残留炭素は、高リーク電流の周知の源と確認され、リーク電流は、性能および長期の信頼性に影響を与える。
【0050】
水溶性であるPEG400等の好適なダイ壁潤滑剤を慎重に選択することにより、例えば、焼結の前に約80℃の清浄水の中で洗浄することにより、アノード表面から容易に取り除くことができる。これは、炭素フリーの表面をもたらす。
【0051】
ダイ壁の潤滑はまた、低い破砕強度および/または凝集体強度を有するプレスされたアノードの表面ラフネス(roughness)やテクスチャ(texture)を改変するために使用することができる。パウダはプレス中に容易に変形して滑らかなアノード表面をもたらす。滑らかなアノード表面は、これは外方カソード(MnO)層のアノード体からの剥離を促進してキャパシタを使用に適合しなくするので、良質のキャパシタ製造にとっては極めて有害である。そのようなパウダにダイ壁の潤滑を用いることは、表面のパウダが変形する傾向を低減してオープンアノード表面を維持する。このことは、外方MnOコーティングのアノード表面への結合を助ける。
【0052】
キャパシタ製造業者にとって重要な開発領域は、高周波電気設計用途での使用のための低ESR(Equivalent Series Resistance)キャパシタの生産である。複雑な(溝付きの(fluted))形状をしたアノードは、外部表面積を増加させ、ESRを最大30%低減することを助ける。増加した表面積はまた、プレス中のアノード/鋳型壁表面摩擦を増加させ、良好にプレスすることのできるアノードの長さを限定する。外部から塗布された潤滑は、より長い溝付きアノードをプレスして、最終的な製品のESRの低減または電気容量値の増加を可能にする。
【0053】
ダイ壁の潤滑の使用、ならびにプレスされたアノードの品質および寸法制御の改善の直接の影響として、全体的なアノードの歩留まりが増加する。それゆえ、より少ないアノード体が排除されて、高価なキャパシタパウダが節約され、また製造のための単位当たりの労働および諸経費が低減される。材料の他の節約は、ダイの損耗が遅くなり、より長く寸法の許容範囲内に留まるので、ダイの長くなった寿命に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を実行するための装置の片側からの断面図である。
【図2】一定量のタンタルパウダが詰められた図1の装置を示す図である。
【図3】鋳型成形ストローク中の図1の装置を示す図である。
【図4】ワイヤ・フィード・ストローク中の図1の装置を示す図である。
【図5】ギロチン・カッティング・ストローク中の図1の装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体キャパシタの製造において、バルブ・アクション材料からアノード体を形成する方法であって、
前記バルブ・アクション材料のパウダを設けるステップと、
前記パウダを鋳型成形手段に投入するステップと、
前記鋳型成形手段内の前記パウダを圧縮して、前記パウダをアノード体形状に成形するステップと、
前記アノード体形状を、例えば前記材料を焼結することにより、安定化して、相互結合された多孔質体を形成するステップと
を含み、
鋳型成形プロセスは、潤滑剤を局所的に塗布して、前記アノード体の外表面と前記鋳型成形手段の表面との間の界面を潤滑にするように適合された潤滑手段の使用を伴うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記潤滑剤は、液体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑手段は、キャピラリーフィードにより、前記鋳型成形手段に潤滑剤を塗布することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体潤滑手段は、重力フィードにより、前記鋳型成形手段に潤滑剤を塗布することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体潤滑手段は、前記鋳型成形手段のための潤滑剤の源である潤滑剤接触表面を提供する接触貯蔵部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記潤滑剤は、液体であり、前記接触貯蔵部は、吸収した潤滑剤を保持する材料により占められていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
吸収力のある前記材料は、たとえばフェルト又は織布等の繊維状材料、またはたとえばスポンジなどの多孔質気泡材料であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記潤滑剤接触表面は、前記鋳型成形手段の移動部により接触され、
前記移動部は、前記潤滑剤接触表面に対して相対的に移動して、鋳型成形キャビティの中に入り、それにより潤滑剤を鋳型成形キャビティ表面に移送することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記鋳型成形手段は、ダイとパンチとの組み合わせを備え、
前記ダイは、前記アノード体の断面構成を画定し、前記パンチは、前記ダイの中の材料を圧縮する作用をすることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記パンチは、圧縮されて形成されたアノード体を前記ダイから取り出す作用をさらにすることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移動部は、前記パンチであることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
圧縮された前記アノード体は、鋳型体からの取り出しの後に焼結により安定化されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記鋳型成形手段の中で圧縮されたバルブ・アクションパウダには、混合された潤滑剤が供給されておらず、したがって鋳型成形中の実質的にすべて潤滑は、局所的に塗布する前記潤滑手段により供給されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記バルブ・アクションパウダには混合された潤滑剤が供給されておらず、したがって鋳型成形中の実質的にすべて潤滑は、局所的に塗布する前記潤滑手段により与えられることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記バルブ・アクションパウダには混同された追加の潤滑剤が供給されており、したがって、鋳型成形中の潤滑は、局所的に塗布する前記潤滑手段と前記混合された追加の潤滑剤により与えられることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記バルブ・アクション材料には、タンタル金属、ニオブ金属、または導電性亜酸化ニオブが含まれることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
圧縮の後であって焼結の前に、前記アノード体は、潤滑剤を除去するために浸出媒体と接触することにより洗浄されることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記浸出媒体は、室温を超えた温度、好ましくは約80℃の水であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記鋳型成形手段は、共に動作するように構成された、複数のダイとパンチとの対を備え、それにより、同一の装置の上で複数のアノード体を並列に形成することができることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
バルブ・アクション材料から固体キャパシタを製造する方法であって、
請求項1から19のいずれかに記載の方法により、多孔質アノード体を形成するステップと、
前記アノード体の露出した表面の上に誘電体層を形成するステップと、
前記誘電体層の上にカソード層を形成するステップと、
前記カソード層と導電的に接触したカソード端子および前記アノード体を導電的に接触したアノード端子を形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−507368(P2009−507368A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528580(P2008−528580)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003250
【国際公開番号】WO2007/026165
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(501180997)エイブイエックス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】