説明

固体二次電池

【課題】 活物質と固体電解質との界面抵抗が改善された固体二次電池を提供する。
【解決手段】 固体二次電池(100)は、固体電解質層(40)の一面に正極活物質層(30)と正極集電板(10)とが設けられ、他面に負極活物質層(50)と負極集電板(60)とが設けられた積層体と、正極集電板(10)と正極活物質層(30)との間、正極活物質層(30)内、負極集電板(60)と負極活物質層(50)との間、負極活物質層(50)内の少なくともいずれかに配置された導電性弾性体(20)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を含む固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器等の急速な普及に伴い、電源として二次電池の開発が進められている。また、通信機器以外にも、低公害車としての電気自動車、ハイブリッド自動車等の電源として二次電池の開発が進められている。しかしながら、現在市販されている二次電池には、可燃性の有機溶剤を溶媒とする有機電解液を使用するものがある。有機電解液を用いる二次電池には、短絡時の温度上昇を抑えるための安全装置、短絡防止のための構造、材料等の面での改善が求められている。
【0003】
これに対して、固体電解質を用いた固体二次電池では、安全装置の簡素化等を図ることができる。したがって、固体電解質を用いた固体二次電池は、安全面、コスト面で有利な点を有している。特許文献1は、弾性変形する集電体を用いることにより、集電体と正極焼結体または負極焼結体とを密着させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−108751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、集電体が弾性変形性を有するため、活物質が膨張または収縮した際に、活物質と固体電解質とを十分に接触させることができない箇所が生じるおそれがある。この場合、活物質と固体電解質との界面抵抗が増加するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、活物質と固体電解質との界面抵抗が改善された固体二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体二次電池は、固体電解質層の一面に正極活物質層と正極集電板とが設けられ他面に負極活物質層と負極集電板とが設けられた積層体と、正極集電板と正極活物質層との間、正極活物質層内、負極集電板と負極活物質との間、負極活物質層内の少なくともいずれかに配置された導電性弾性体と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る固体二次電池においては、固体二次電池の充電時に固体電解質にかかる圧縮変形が導電性弾性体に分散する。それにより、固体電解質の圧縮変形が抑制される。また、固体二次電池の放電時に導電性弾性体の復元力が働く。それにより、固体電解質と活物質との密着性が確保される。以上のことから、導電性弾性体は、固体電解質と活物質との密着状態の変化を緩和する。その結果、固体電解質と活物質との界面抵抗の低下が抑制される。
【0008】
導電性弾性体は、カーボン繊維とすることができる。この場合、カーボン繊維毛羽が活物質層内に混入する。それにより、電子伝導性が向上する。導電性弾性体は、正極集電板と正極活物質層との間および/または負極集電板と負極活物質層との間に設けられた層を構成し、導電性弾性体の層におけるカーボン繊維密度は、集電板側に比較して活物質層側において高くてもよい。この場合、活物質層の活物質がカーボン繊維内に入り込み、導電性弾性体の弾性力低下が抑制される。
【0009】
導電性弾性体は、多孔状金属とすることができる。導電性弾性体は、正極集電板および/または負極集電板の固体電解質層側表面を、多孔状に加工したものであってもよい。固体電解質は、リチウムイオン伝導性固体電解質とすることができる。導電性弾性体は、正極集電板と正極活物質層との間または負極集電板と負極活物質層との間に配置されたカーボンペーパまたはカーボンクロスであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、活物質と固体電解質との界面抵抗が改善された固体二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る固体二次電池の構成を説明するための模式的断面図である。
【図2】エキスパンドメタルを説明するための図である。
【図3】固体二次電池の充放電時における負極活物質の変形の様子を示すイメージ図である。
【図4】変形例を説明するための図である。
【図5】実施例2に係る固体二次電池の構成を説明するための模式的断面図である。
【図6】実施例3に係る固体二次電池の全体構成を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
(固体二次電池の構成)
図1は、実施例1に係る固体二次電池100の構成を説明するための模式的断面図である。実施例1において、固体二次電池100としてリチウムイオン電池について説明する。図1を参照して、固体二次電池100は、正極集電板10上に、導電性弾性体層20、正極活物質層30、固体電解質層40、負極活物質層50、および負極集電板60が積層された構造を有する。すなわち、固体二次電池100は、固体電解質層40の一面に正極活物質層30と正極集電板10とが設けられ他面に負極活物質層50と負極集電板60とが設けられた積層体を備えるとともに、正極集電板10と正極活物質層30との間に導電性弾性体を備える構造を有する。正極集電板10、導電性弾性体層20および正極活物質層30は、正極電極体として機能する。負極活物質層50および負極集電板60は、負極電極体として機能する。
【0013】
正極集電板10および負極集電板60は、特に限定されるものではないが、銅、ステンレス、ニッケルアルミニウム、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン等の金属板からなる。また、正極集電板10および負極集電板60は、緻密集電板であってもよく、多孔質集電板であってもよい。正極活物質層30は、主として正極活物質、リチウムイオン伝導性固体電解質等を含む。固体電解質層40は、主としてリチウムイオン伝導性固体電解質を含む。負極活物質層50は、主として負極活物質、リチウムイオン伝導性固体電解質等を含む。
【0014】
正極活物質層30に用いる正極活物質は、正極活物質としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。正極活物質として、一般的な固体リチウム二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMn2−xNi、LiMn2−xCo、LiMn2−x−yNiCo、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiM1−x−y等を用いることができる。ここで、一般式LiM1−x−y中の「M」は、Co,Ni,Mn等からなる群から選ばれる少なくとも1種である。「B」は、「M」もしくは「A」である。上記の中で、LiCoOおよびLiNiOが好ましく、LiCoOが特に好ましい。一般的に、LiCoOは正極用の活物質として良好な特性を有し、汎用されているからである。
【0015】
負極活物質層50に用いる負極活物質は、負極活物質としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。負極活物質として、一般的な固体リチウム二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば、金属In、金属Li、Si−Li合金、Sn−Li合金、SnO−Li系材料、黒鉛等を用いることができる。
【0016】
固体電解質層40に用いる固体電解質は、固体電解質としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。固体電解質として、一般的な固体リチウム二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば、硫化物系固体電解質、チオリシコン、酸化物系固体電解質等を用いることができる。上記の中で、硫化物系固体電解質およびチオリシコンを用いることが好ましく、硫化物系固体電解質材料を用いることが好ましい。硫化物系固体電解質は、高いイオン伝導性を有するため、固体二次電池100を高出力化することができるからである。正極活物質層30および負極活物質層50にも、同様の固体電解質が含まれる。また、正極活物質層30および負極活物質層50に含まれる電解質は、高分子固体電解質、ゲル状固体電解質などであってもよい。
【0017】
導電性弾性体層20は、導電性を有する弾性体からなる。導電性弾性体層20として、例えば、カーボン繊維、多孔状金属等を用いることができる。カーボン繊維として、カーボンクロス、カーボンペーパ、カーボンフェルト等を用いることができる。カーボンクロスは、カーボンの長繊維を用いた織布であり、カーボン繊維を織物状にしたものである。カーボンペーパは、カーボンの短繊維であり、カーボン繊維をランダム配向させたものである。カーボンペーパは、例えば紙すきで作製される。カーボンフェルトは、機械的な力等を加えてカーボンの短繊維をカーボンペーパよりもさらに絡めたものである。
【0018】
多孔状金属として、金属メッシュ等を用いてもよく、エキスパンドメタル、ラスメタル等のように金属にバネ性を持たせるための加工を施したものを用いてもよい。エキスパンドメタルは、図2に示すように、金属を網目状に加工してバネ性を持たせたものである。また、正極集電板10を構成する金属の正極活物質層30側の表面を多孔状に加工したものを、導電性弾性体層20として用いてもよい。
【0019】
なお、導電性弾性体層20と正極活物質層30との境界は、重複していてもよい。すなわち、導電性弾性体層20を構成する弾性体は、正極活物質層30内まで延在していてもよい。
【0020】
(活物質の変形)
負極活物質層50に用いる負極活物質51は、固体二次電池100の充放電時に変形する。図3(a)は、固体二次電池100の充電時における負極活物質51の変形の様子を示すイメージ図である。図3(b)は、固体二次電池100の放電時における負極活物質51の変形の様子を示すイメージ図である。
【0021】
図3(a)を参照して、固体二次電池100の充電時には、負極活物質51は膨張する。それにより、負極活物質層50に含まれる固体電解質52に圧縮応力がかかる。この圧縮応力は、固体電解質層40の固体電解質、および正極活物質層30に含まれる固体電解質にもかかる。図3(b)を参照して、固体二次電池100の放電時には、負極活物質51は、収縮する。それにより、圧縮していた固体電解質52は、自身の弾性力を利用して復元変形する。同様に、固体電解質層40の固体電解質、および正極活物質層30に含まれる固体電解質も復元変形する。固体二次電池100は充電および放電を繰り返すため、固体二次電池100に含まれる固体電解質は圧縮変形と復元変形とを繰り返す。この場合、固体電解質と活物質との密着状態が変化を繰り返す。その結果、固体電解質と活物質との界面抵抗が低下するおそれがある。
【0022】
しかしながら、本実施例においては、導電性弾性体層20が設けられている。この構成によれば、固体二次電池100の充電時に固体電解質に集中していた圧縮変形が、導電性弾性体層20にも分散する。それにより、固体電解質の圧縮変形が抑制される。さらに、固体二次電池100の放電時に導電性弾性体層20の復元力が働く。それにより、固体電解質と活物質との密着性が確保される。以上のことから、導電性弾性体層20は、固体電解質と活物質との密着状態の変化を緩和する。その結果、固体電解質と活物質との界面抵抗の低下が抑制される。
【0023】
特に、導電性弾性体層20としてカーボン繊維を用いた場合には、カーボン繊維毛羽が正極活物質層30内に混入する。それにより、正極集電板10から正極活物質層30内への電子伝導性が向上する。それにより、固体二次電池100の電子伝導性が向上する。カーボン繊維の密度は、正極集電板10側に比較して正極活物質層30側において高いことが好ましい。正極活物質層30の正極活物質がカーボン繊維内に入り込み、導電性弾性体層20の弾性力低下が抑制されるからである。
【0024】
なお、導電性弾性体層20は、負極活物質51の膨張変形量を可能な限り吸収できることが好ましい。例えば、負極活物質51の変形量をΔTcとすると、導電性弾性体層20の厚みTeは、Te≧ΔTcの関係を有していることが好ましい。
【0025】
一例として、負極活物質51として黒鉛を用いた場合、負極活物質51は充電時に10%程度膨張する。したがって、負極活物質51の厚みをTcとすると、変形量ΔTcは、ΔTc=Tc×0.1の関係を満たす。さらに一例として、負極活物質51としてシリコンを用いた場合、負極活物質51は充電時に300%程度膨張する。この場合、変形量ΔTcは、ΔTc=Tc×3.0の関係を満たす。負極活物質51に用いることができる活物質で、黒鉛の膨張係数は比較的低く、シリコンの膨張係数は比較的高い。したがって、0.1≦ΔTc/Tc≦3.0の関係が成立することが好ましい。さらに、導電性弾性体層20の厚みを考慮すると、0.05≦Te/Tc≦4の関係を成立することが好ましい。
【0026】
なお、導電性弾性体層20のヤング率は、特に限定されるものではない。ただし、Ee/Ec≦1とすると、導電性弾性体層20は、充電時の膨張変形に対して高い吸収性を有する。一方、Ee/Ec>1とすると、導電性弾性体層20は、放電時に高い復元力を有する。なお、「Ee」は導電性弾性体層20のヤング率を表し、「Ec」は負極活物質層50のヤング率を表す。
【0027】
一例として、導電性弾性体層20として厚み110μmのカーボンペーパを用いた場合、導電性弾性体層20のヤング率は20MPa程度である。また、導電性弾性体層20として厚み140μmのカーボンフェルトを用いた場合、導電性弾性体層20のヤング率は20MPa程度である。この場合、負極活物質層50は、50μm程度の厚みを有していることが好ましい。
【0028】
(変形例1)
図4(a)を参照して、導電性弾性体層20は、負極活物質層50と負極集電板60との間に配置されていてもよい。また、図4(b)を参照して、導電性弾性体層20は、正極集電板10と正極活物質層30との間、および、負極活物質層50と負極集電板60との間の両方に配置されていてもよい。
【0029】
この場合、負極集電板60を構成する金属の負極活物質層50側の表面を多孔状に加工したものを、導電性弾性体層20として用いてもよい。また、導電性弾性体層20と負極活物質層50との境界は、重複していてもよい。また、負極側の導電性弾性体層20にカーボン繊維を用いた場合には、カーボン繊維の密度は、負極集電板60側に比較して負極活物質層50側において高いことが好ましい。
【実施例2】
【0030】
図5は、実施例2に係る固体二次電池100aの構成を説明するための模式的断面図である。固体二次電池100aが図1の固体二次電池100と異なる点は、導電性弾性体層20が設けられておらず、正極活物質層30の代わりに正極活物質層30aが設けられている点である。
【0031】
正極活物質層30aには、導電性弾性体31が分散している。例えば、導電性弾性体31として、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル等のカーボンコイルを用いてもよい。この場合、固体二次電池100の充電時に固体電解質に集中していた圧縮変形が、導電性弾性体31にも分散する。それにより、固体電解質の圧縮変形が抑制される。さらに、固体二次電池100の放電時に導電性弾性体の復元力が働く。それにより、固体電解質と活物質との密着性が確保される。以上のことから、固体電解質と活物質との界面抵抗の低下が抑制される。図5においては、正極活物質層30aのハッチングを省略している。なお、負極活物質層50に導電性弾性体を混入させてもよい。
【実施例3】
【0032】
図6は、実施例3に係る固体二次電池100bの全体構成を説明するための模式的断面図である。固体二次電池100bが図1の固体二次電池100と異なる点は、各機能性層の積層方向において定寸構造を有する点である。具体的には、固体二次電池100bは、積層方向において一定の寸法を維持するように、絶縁性のケース70で締結されている。
【0033】
定寸構造においては、導電性弾性体層20は、各機能性層の積層方向において、所定の圧力を付与・維持することができる。また、導電性弾性体層20は、負極活物質51が膨張・収縮する際に、固体二次電池100の内部圧力を一定に維持することができる。それにより、固体電解質と活物質との界面抵抗の変化を抑制することができる。
【0034】
上記各実施例においては、固体二次電池の一例として固体リチウム二次電池について説明したが、それに限られない。充放電時に負極活物質が膨張・収縮するものであれば上記各実施例を適用することができる。例えば、ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池、カルシウム二次電池、カリウム二次電池等に上記各実施例を適用することができる。
【0035】
また、上記各実施例においては、1単位の固体二次電池について説明したが、それに限られない。複数の固体二次電池を積層させて使用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 正極集電板
20 導電性弾性体層
30 正極活物質層
31 導電性弾性体
40 固体電解質層
50 負極活物質層
51 負極活物質
52 固体電解質
60 負極集電板
70 ケース
100 固体二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層の一面に正極活物質層と正極集電板とが設けられ、他面に負極活物質層と負極集電板とが設けられた積層体と、
前記正極集電板と前記正極活物質層との間、前記正極活物質層内、前記負極集電板と前記負極活物質層との間、および前記負極活物質層内、の少なくともいずれかに配置された導電性弾性体と、を備えることを特徴とする固体二次電池。
【請求項2】
前記導電性弾性体は、カーボン繊維であることを特徴とする請求項1記載の固体二次電池。
【請求項3】
前記導電性弾性体は、前記正極集電板と前記正極活物質層との間および/または前記負極集電板と前記負極活物質層との間に設けられた層を構成し、
前記導電性弾性体の層におけるカーボン繊維密度は、集電板側に比較して活物質層側において高いことを特徴とする請求項2記載の固体二次電池。
【請求項4】
前記導電性弾性体は、多孔状金属であることを特徴とする請求項1記載の固体二次電池。
【請求項5】
前記導電性弾性体は、前記正極集電板および/または前記負極集電板の前記固体電解質層側表面を、多孔状に加工したものであることを特徴とする請求項4記載の固体二次電池。
【請求項6】
前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性固体電解質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体二次電池。
【請求項7】
前記導電性弾性体は、前記正極集電板と前記正極活物質層との間または前記負極集電板と前記負極活物質層との間に配置されたカーボンペーパまたはカーボンクロスであることを特徴とする請求項2記載の固体二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−64460(P2012−64460A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208258(P2010−208258)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】