説明

固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料及びその製造方法

【課題】再生セルロースと合成高分子とをナノメートルオーダーで複合化し、セルロースと異種高分子との長所を併せ持つ複合材料、及びその製造方法の提供。
【解決手段】固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料であって、再生セルロースはその各々の微細繊維により連続領域が形成され、該微細繊維の周囲に合成高分子が配置され、再生セルロースの各々の微細繊維の平均径が1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である、上記複合材料により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料及びその製造方法に関する。特に、本発明は、ミクロ状で、特にナノメートルオーダーで再生セルロース及び合成高分子が複合化された複合材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然高分子であって再生可能なエネルギー及び材料原料であるセルロースは、その結晶性および繊維形成特性に基づき、天然形態及び人為的に改変された形態の両方の形態で広く利用されている。後者の再生セルロースの繊維及びフィルムの製造においては、溶液から凝固・再生させられたセルロースは、ただちに延伸/固化/乾燥の処理を受けて、密実な固体(繊維又はフィルム形態)とされるのが通例である。
そのような工程で用いられるセルロース溶媒として、1)ビスコース、2)銅アンモニア液、3)N-メチルモルホリンオキシド、4)非プロトン極性溶媒(例えばN,N-ジメチルアセトアミドなど)にハロゲン化アルカリ(LiClなど)を加えた溶液、5)苛性アルカリと尿素もしくはチオ尿素を含む水溶液、が知られている。これらの溶液に用いる再生セルロース製造工程において、セルロース溶液を適当な形態、通例、繊維又はフィルム状に成形してから、セルロースを不溶化する凝固浴(再生浴)に導き、これを洗浄・乾燥して緊密な繊維又はフィルムを得る。これらセルロース材料は、事実上、純粋なセルロースであり、セルロースの物性に基づく長所、例えば強度、親水性、非熱軟化性などを発現する反面、短所、例えば吸水性、耐酸・耐アルカリ性の不足などをも有する。
【0003】
実用材料として、セルロースの上記長所を維持しつつ短所を補う手法として、合成高分子との複合化が考えられる。例えば、マクロなレベルでの複合化として、繊維の混紡、各々のフィルムの貼り合わせ、樹脂へのセルロース短繊維(ステープル)の充填(FRP化)などが行われている(例えば、特許文献1及び2、並びに非特許文献1〜3を参照のこと)。
他方、再生セルロースと合成高分子とをナノメートルオーダーで複合化できれば、マクロなレベルでは均一な構造を有しつつ、セルロースと異種樹脂との長所を併せ持つナノ複合材料が得られる可能性がある。
【特許文献1】特開2007−238812。
【特許文献2】特表平9−509694。
【非特許文献1】W.G. Glasser et al., “Fiber-Reinforced Cellulosic Thermoplastic Composites”, Journal of Applied Polymer Science, Vol. 73, 1329-1340 (1999)。
【非特許文献2】K.C. Seavey et al., “Continuous cellulose fiber-reinforced cellulose ester composites”, Cellulose 8: 149-159, 2001。
【非特許文献3】J.M. Felix et al., “The Nature of Adhesion in Composites of Modified Cellulose Fibers and Polypropylene”, Journal of Applied Polymer Science, Vol. 42,609-620 (1991)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、再生セルロースと合成高分子とをナノメートルオーダーで複合化し、セルロースと異種樹脂との長所を併せ持つナノ複合材料は得られていなかった。
そこで、本発明の目的は、再生セルロースと合成高分子とをナノメートルオーダーで複合化し、セルロースと異種樹脂との長所を併せ持つ複合材料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、次の発明を見出した。
<1> 固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料であって、再生セルロースは、その各々の微細繊維により連続領域が形成され、該微細繊維の周囲に合成高分子が配置され、再生セルロースの各々の微細繊維の平均径が1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である、上記複合材料。
【0006】
<2> 上記<1>において、合成高分子が、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエステル、ジエン重合樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、アセタール樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、複合材料が固気複合材料であるのがよい。特に、固気複合材料の空隙率が30〜95%であるのがよい。
【0007】
<4> 上記<1>又は<2>において、複合材料が固体複合材料であるのがよい。
<5> 上記<1>又は<2>において、複合材料が固液複合材料であるのがよい。
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、複合材料は、再生セルロースと合成高分子との合計重量を100とした場合、再生セルロースが10〜90、好ましくは30〜80であり、合成高分子が90〜10、好ましくは70〜20であるのがよい。
【0008】
<7> 固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料の製造方法であって、
a)再生セルロースのゲルであって且つ該ゲルの構成要素である微細繊維の各々の平均径が1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である再生セルロースのゲルを準備する工程;
b)微細繊維の周囲に、合成高分子及び/又は合成高分子の前駆体を配置させる工程;及び
c)上記b)工程において前駆体を用いた場合、該前駆体を合成高分子に形成する工程;
を有する、上記方法。
【0009】
<8> 上記<7>において、b)工程は、
b)−1)ゲルを、ゲルが溶解しない溶媒であって合成高分子及び/又はその前駆体を溶解する溶媒に浸漬し、ゲルの孔内に合成高分子及び/又はその前駆体を配置する工程;及び
b)−2)得られたゲルを、合成高分子を溶解しない合成高分子非溶媒に浸漬する工程;
を有し、
c)工程は、b)−2)工程前に行うのがよい。
<9> 上記<7>又は<8>において、再生ゲルは、ウェットゲルであってもエアロゲルであってもよい。
【0010】
<10> 上記<7>〜<9>のいずれかにおいて、合成高分子が、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエステル、ジエン重合樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、アセタール樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
<11> 上記<7>〜<10>のいずれかにおいて、複合材料が固気複合材料であるのがよい。特に、固気複合材料の空隙率が30〜95%であるのがよい。
【0011】
<12> 上記<7>〜<10>のいずれかにおいて、複合材料が固体複合材料であるのがよい。
<13> 上記<7>〜<10>のいずれかにおいて、複合材料が固液複合材料であるのがよい。
<14> 上記<7>〜<13>のいずれかにおいて、複合材料は、再生セルロースと合成高分子との合計重量を100とした場合、再生セルロースが10〜90、好ましくは30〜80であり、合成高分子が90〜10、好ましくは70〜20であるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、再生セルロースと合成高分子とをナノメートルオーダーで複合化し、セルロースと異種樹脂との長所を併せ持つ複合材料、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本願において、「再生セルロース」とは、天然セルロースを溶解又は結晶膨潤(マーセル化)処理し再生して得られる物質であって、粒子線回折によって格子面間隔0.73nm、0.44nm及び0.40nmに相当する回折角を頂点とする結晶回折パターンを与えるような分子配列を有するβ-1,4結合グルカン(グルコース重合体)をいう。
また、本願において、「合成高分子」とは、有機、無機を問わず、巨大分子をいう。また、「有機合成高分子」とは、天然に存在しない有機物であって、炭素を含む共有結合で構成される巨大分子をいう。
【0014】
本発明は、固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料と、その製造方法を提供する。以下、複合材料に関して述べ、次いでその製造方法について述べる。
<複合材料>
本発明の複合材料は、固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する。
再生セルロースは、その各々の微細繊維により連続領域、いわゆるネットワーク構造が形成される。また、合成高分子は、微細繊維の周囲に配置される。
再生セルロースは、上述のように、連続領域を形成する。該連続領域は、再生セルロースの微細繊維からなり、微細繊維の平均径は、1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下であるのがよい。
【0015】
本発明の複合材料中、合成高分子は、再生セルロースの微細繊維の周囲に配置される。本発明の複合材料において、合成高分子の配置の状態は、再生セルロースの微細繊維の周囲に配置されるのであれば、再生セルロースに化学的及び/又は物理的に付着されている場合、連続領域の周囲に単にトラップされている場合など、いずれの状態であってもよい。好ましくは、合成高分子が容易には遊離しない状態で配置されるのがよい。
【0016】
合成高分子は、再生セルロースの短所を補完するか及び/又は長所を秀でさせるものであって、上記のように複合材料中に配置されるものであれば、特に限定されない。
例えば、合成高分子として、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエステル、ジエン重合樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、アセタール樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、及びエポキシ樹脂を挙げることができるが、これに限定されない。
【0017】
本発明の複合材料において、再生セルロースと合成高分子との合計重量を100とした場合、再生セルロースが10〜90、好ましくは30〜80であり、合成高分子が90〜10、好ましくは70〜20であるのがよい。
【0018】
本発明の複合材料は、1)固気複合材料であっても、2)固体複合材料であっても、3)固液複合材料であってもよい。
本発明の複合材料が1)固気複合材料である場合、固気複合材料の空隙率が30〜95%、好ましくは50〜95%、より好ましくは70〜95%であるのがよい。
【0019】
<複合材料の製造方法>
上記の複合材料は、次の製法により得ることができる。
即ち、a)再生セルロースのゲルであって且つ該再生セルロースの構成要素である微細繊維の各々の平均径が1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である再生セルロースのゲルを準備する工程;
b)微細繊維の周囲に、合成高分子及び/又は合成高分子の前駆体を配置させる工程;及び
c)上記b)工程において前駆体を用いた場合、該前駆体を合成高分子に形成する工程;
を有することにより、上記複合材料を得ることができる。
なお、ここで、「再生セルロース」、「合成高分子」、「複合材料」については、上述と同じ定義を有する。
【0020】
上記a)工程は、再生セルロースのゲルを準備する工程である。
再生セルロースのゲルは、ウェットゲルであってもエアロゲルであってもよい。これらのゲルは、従来公知の手法により得られるゲル、本発明者らが他の出願(特願2007−073104、この出願の内容は全て、参照により本願に含まれる)で開示しているゲルを用いることができる。
具体的には、従来公知の手法により得られるゲルとして、いわゆるビスコース法により得られるゲル;いわゆる銅アンモニア法により得られるゲル;チオシアン酸カルシウムの濃厚水溶液によるセルロース溶液を再生して得られるセルロースゲル(特開昭55-44312;H. Jin H, S. Kuga, "Nanofibrillar Cellulose Aerogels", Colloids and Surfaces A, 240、63-67 (2004)を参照のこと。なお、これらの内容は全て参照として本願に含まれる);などを挙げることができるが、これらに限定されない。
また、本発明者らが他の出願(特願2007−073104)で開示しているゲルは、i)苛性アルカリを2〜20重量%、好ましくは4〜10重量%;及びii)尿素又はチオ尿素を4〜20重量%、好ましくは6〜15重量%;を有する水溶液に、セルロース量が重量比で0.2〜20%、好ましくは0.3〜10%となるようにセルロースを溶解しセルロース溶液を調製し、該セルロース溶液をセルロース非溶媒に浸漬して得ることができる。または、ハロゲン化アルカリを5〜12重量%、好ましくは6〜10重量%含む有機溶媒溶液に、セルロース量が重量比で0.2〜20%、好ましくは0.5〜10%となるようにセルロースを溶解しセルロース溶液を調製し、該セルロース溶液をセルロース非溶媒に浸漬して、セルロースゲルを得ることができる。なお、セルロース非溶媒は、水、低級アルキルアルコール(メタノール、エタノールなど)及びその水溶液;低級ケトン(アセトンなど);低級脂肪酸エステル(酢酸エチルなど);酸性水溶液(希硫酸、希塩酸など);及び塩類(硫酸ナトリウムなど)の希薄水溶液;並びにこれらの混合物からなる群、好ましくは純水、メタノール、エタノール、20%以下の希硫酸及び20%以下の硫酸ナトリウム水溶液並びにこれらの混合物からなる群からなる群から選ばれるのがよい。
【0021】
b)工程は、ゲルを構成する微細繊維の周囲に、合成高分子及び/又はその前駆体を配置させる工程である。
より具体的には、b)工程は、
b)−1)ゲルを、ゲルが溶解しない溶媒であって合成高分子及び/又はその前駆体を溶解する溶媒に浸漬し、ゲルの孔内に合成高分子及び/又はその前駆体を配置する工程;及び
b)−2)得られたゲルを、合成高分子を溶解しない合成高分子非溶媒に浸漬する工程;
を有する。また、c)工程、即ち合成高分子の前駆体を合成高分子へと形成させる工程は、b)−2)工程前に行うのがよい。
【0022】
c)工程は、合成高分子の前駆体から合成高分子を得る工程である。合成高分子の前駆体として、所望の合成高分子のモノマー、及びダイマー、トリマーなどのオリゴマーなどを挙げることができる。前駆体から合成高分子を得る手法は、用いる前駆体に依存して選択することができる。
【0023】
上記製法のa)工程前又はc)工程後に、さらに工程を有してもよい。例えば、上記製法のc)工程後に、複合材料を、固体複合材料、固液複合材料、又は固気複合材料とする工程を設けてもよい。
さらに、各工程間に、さらなる工程を有してもよい。
【0024】
このように得られた複合材料は、例えば、合成高分子としてポリスチレンを用いた場合、熱可塑性且つ疎水性の構造材料、例えば熱成形できる容器材料などとして応用することができる。
また、例えば合成高分子としてポリイミドを用いて得られた複合材料は、耐熱性の構造材料又は断熱材料、例えば断熱容器の壁材などとして応用することができる。なお、これらの応用例は単に例示したに過ぎず、本発明の複合材料は、用いる合成高分子により、種々の応用が考えられる。
【0025】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
<セルロースゲルの調製>
水酸化ナトリウム7%と尿素12%とを含む水溶液96gを−12℃に冷却し、これにろ紙パルプ(純粋なセルロース。アドバンテック東洋製)4gを加えて攪拌するとセルロースは速やかに溶解し透明な溶液を与えた。
該セルロース溶液をガラス板上に流延し、直径0.5mmの針金を両端に巻いたガラス棒で塗り拡げることにより厚さ0.5mmの溶液層を形成し、ただちにエタノール100mLに浸漬した。10分間放置すると溶液はゲル化し、ガラス板から剥がすことができ、シート状のセルロースゲルを得た。該セルロースゲルをエタノールで十分に洗浄した後、トルエンに浸漬して溶媒置換した。
【0027】
<セルロースゲルのポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>
該トルエン含有セルロースゲル10gを、 5gのポリスチレン(和光純薬)を溶かしたトルエン溶液100g(ポリスチレン濃度:5%)に浸漬し、1時間攪拌してポリスチレンをセルロースゲル内に浸透させた。該ゲルを溶液から取り出し、付着液をふき取ってただちにエタノールに浸漬すると、ゲル内でポリスチレンが析出してゲルが白濁した。該ゲルをフッ素系炭化水素溶媒「ゼオローラH」(日本ゼオン製)で十分に洗浄してから凍結乾燥して、セルロース−ポリスチレン複合化エアロゲルA−1を得た。
エアロゲルA−1の吸着特性を、Quantachrome-Nova4000型窒素吸着装置により測定し、BET法による窒素吸着比表面積281 m/g を得た。エアロゲルの寸法と重量から求めた密度は 0.249g/cmであった。
【0028】
(比較例1)
実施例1とは別に、実施例1と同じ大きさのセルロースのみのエアロゲルA−0を調製した。即ち、実施例1の<ポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>を行わない以外は、実施例1と同様に調製を行うことにより、セルロースのみのエアロゲルA−0を得た。
エアロゲルA−0は、窒素吸着比表面積420 m/g 、密度 0.15g/cm(空隙率90%)であった。
【0029】
比較例1のA−0と実施例1のA−1の重量の比較から、A−1について、セルロースを100%とした場合のポリスチレンの割合が32%(セルロース:ポリスチレンの重量比=100:32)であることがわかった。
また、走査型電子顕微鏡観察(図1)によれば、実施例1のA−1のゲルの内部は、セルロースのみのもの(比較例1のA−0)と同様の幅20〜40nm程度の微細繊維からなる網目構造を有しており、ポリスチレンはセルロースの微細繊維に付着してナノ多孔構造を形成していた。
これらのデータから、実施例1のA−1においては、比較例1のA−0の空隙構造が維持されていることがわかる。また、密度から算出されるA−0(比較例1)の空隙率は、81.4%である。さらに、A−1(実施例1)の空隙率は、82.2%である。
【実施例2】
【0030】
実施例1の<セルロースゲルのポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>において、用いるポリスチレン/トルエン溶液のポリスチレン濃度を10%とした以外、実施例1と同様の方法により、セルロース−ポリスチレン複合化エアロゲルA−2を得た。
エアロゲルA−2は、セルロースを100%とした場合のポリスチレンの割合が66%であり、密度が0.264g/cmであった。
【実施例3】
【0031】
実施例1の<セルロースゲルのポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>において、用いるポリスチレン/トルエン溶液のポリスチレン濃度を15%とした以外、実施例1と同様の方法により、セルロース−ポリスチレン複合化エアロゲルA−3を得た。
エアロゲルA−3は、セルロースを100%とした場合のポリスチレンの割合が87%であり、密度が0.273g/cmであり、窒素吸着比表面積が196m/g であった。
【実施例4】
【0032】
実施例1の<セルロースゲルのポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>において、セルロースゲルを浸漬するポリマー溶液をネオプレンの2%トルエン溶液(応研商事製)とした以外、実施例1と同様の方法により、セルロース−ネオプレン複合化エアロゲルB−1を得た。
エアロゲルB−1の密度は 0.273g/cmであった。
【実施例5】
【0033】
実施例1の<セルロースゲルの調製>において、トルエンの代わりにテトラヒドロフランとし、且つ実施例1の<セルロースゲルのポリスチレン含有トルエン溶液への浸漬>における、セルロースゲルを浸漬するポリマー溶液をポリ塩化ビニル(和光純薬)が1.0%となるテトラヒドロフラン溶液とした以外、実施例1と同様の方法により、セルロース−ポリ塩化ビニル複合化エアロゲルC−1を得た。
エアロゲルC−1は、セルロースを100%とした場合のポリ塩化ビニルの割合が14%であり、密度が0.210g/cmであり、窒素吸着比表面積が343m/gであった。
【実施例6】
【0034】
実施例5において、ポリ塩化ビニルの濃度を5%とした以外、実施例5と同様の方法により、セルロース−ポリ塩化ビニル複合化エアロゲルC−2を得た。
エアロゲルC−2は、セルロースを100%とした場合のポリ塩化ビニルの割合が63%であり、密度が0.192 g/cmであった。
【実施例7】
【0035】
実施例1〜7において、セルロースゲルに合成ポリマー溶液を含浸させた後に、ゲル外部の付着液を拭いとり、ゲルをガラス板に貼り付けて直接乾燥することにより、セルロース−合成ポリマー複合フィルムを得た。
これらはいずれも透明で密実なフィルムであり、電子顕微鏡によっても空隙は認められなかった。
【実施例8】
【0036】
比較例1のセルロースエアロゲルA−0を、5%ポリスチレン−トルエン溶液に浸漬すると、溶液がただちにエアロゲルに吸収された。これをエタノールに浸漬してポリスチレンを析出させ、実施例1と同様にゼオローラHから凍結乾燥することにより、実施例1と同様のセルロース−ポリスチレン複合化エアロゲルを得た。
また、実施例7と同様に、トルエンから直接乾燥することにより、実施例7と同様の密実フィルムを得た。
【実施例9】
【0037】
実施例8において、「5%ポリスチレン−トルエン溶液」の代わりに2%〜10%のポリアミド酸のジメチルアセトアミド(DMAc)溶液とした以外、実施例8と同様の方法により、セルロースエアロゲルまたは密実フィルムを調製した。なお、ポリアミド酸の調製は常法により、以下のように行った。絶乾した4-,4’-ジアミノジフェニルエーテルを脱水DMAcに溶解させておき、当モル量の無水ピロメリット酸の粉末を投入してすばやく攪拌した。この反応系は濃度が15重量%となるように調製した。
このセルロースエアロゲルまたは密実フィルムについて、セルロースを100%とした場合のポリアミド酸の割合は、8%〜122%(セルロース:ポリアミド酸の重量比=100:8〜100:122)であった。
該ポリアミド酸含有セルロースエアロゲルまたは密実フィルムは、真空下で250℃ で10分間処理することにより、ポリイミド含有セルロースエアロゲルまたは密実フィルムとすることができた。イミド化の進行と完了は、重量減少および赤外吸収スペクトルによって確認された。
【実施例10】
【0038】
実施例1において、セルロースゲルの含有液体を水からアセトンに置換し、次いで、重合開始剤として1%の過酸化ベンゾイルを含むメタクリル酸メチル(液体)に置換し、ゲル外の付着液を除去した後、45℃で10時間置くことによりメタクリル酸メチルを重合させた。生成物として、セルロースゲルの空隙にポリメタクリル酸メチルが充填された密実な複合体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のセルロース−ポリスチレン複合化エアロゲルA−1の走査型電子顕微鏡像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料であって、前記再生セルロースはその各々の微細繊維により連続領域が形成され、該微細繊維の周囲に前記合成高分子が配置され、前記再生セルロースの各々の微細繊維の平均径が1μm以下である、上記複合材料。
【請求項2】
前記合成高分子が、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエステル、ジエン重合樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、アセタール樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記複合材料が固気複合材料であり、空隙率が30〜95%である請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
前記複合材料は、前記再生セルロースと前記合成高分子との合計重量を100とした場合、前記再生セルロースが10〜90であり、前記合成高分子が90〜10である請求項1〜3のいずれか1項記載の材料。
【請求項5】
固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料の製造方法であって、
a)再生セルロースのゲルであって且つ該ゲルの構成要素である微細繊維の各々の平均径が1μm以下である再生セルロースのゲルを準備する工程;
b)前記微細繊維の周囲に、合成高分子及び/又は合成高分子の前駆体を配置させる工程;及び
c)上記b)工程において前記前駆体を用いた場合、該前駆体を合成高分子に形成する工程;
を有する、上記方法。
【請求項6】
前記b)工程は、
b)−1)前記ゲルを、ゲルが溶解しない溶媒であって合成高分子及び/又はその前駆体を溶解する溶媒に浸漬し、ゲルの孔内に合成高分子及び/又はその前駆体を配置する工程;及び
b)−2)得られたゲルを、合成高分子を溶解しない合成高分子非溶媒に浸漬する工程;
を有し、
前記c)工程は、b)−2)工程前に行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記合成高分子が、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエステル、ジエン重合樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、アセタール樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記複合材料が固気複合材料であり、空隙率が30〜95%である請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記複合材料は、前記再生セルロースと前記合成高分子との合計重量を100とした場合、前記再生セルロースが10〜90であり、前記合成高分子が90〜10である請求項5〜8のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−185248(P2009−185248A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29042(P2008−29042)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】