説明

固体撮像素子および製造方法、並びに撮像ユニット

【課題】画素の開口をより広くすることができるようにする。
【解決手段】固体撮像素子を構成する基板には、被写体からの光を光電変換し、その結果得られた信号電荷を蓄積する受光部と、受光部から信号電荷を読み出すときに電圧が印加される第1転送電極とが隣接して設けられている。第1転送電極には、第1転送電極の一部を覆うように第1遮光膜が形成され、さらに第1遮光膜の表面の一部には第2遮光膜が形成されている。信号電荷の読み出し時には、これらの第1遮光膜と第2遮光膜を介して第1転送電極に電圧が印加される。第1転送電極に形成する遮光膜を、第1遮光膜と第2遮光膜に分けて形成することで、所望の形状の遮光膜を簡単に形成することができ、画素の開口をより広くすることができる。本技術は、撮像ユニットに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は固体撮像素子および製造方法、並びに撮像ユニットに関し、特に、画素の開口をより広くすることができるようにした固体撮像素子および製造方法、並びに撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子の微細化が進んでおり、これにともない撮像素子の感度やスミアノイズ特性などの集光特性が、各画素近傍の遮光膜の形状等から定まる画素の開口サイズに大きく左右されるようになってきている。
【0003】
そこで、各画素に蓄積された電荷を転送するために用いられる転送電極と遮光膜を共通化する配線構造とすることで、各画素の開口サイズをより広くする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この技術では、撮像素子の基板上に設けられた転送電極を覆うように絶縁膜が成膜され、転送電極の上面部分に形成された絶縁膜が除去されて、転送電極上にコンタクトが形成される。さらに、コンタクトと絶縁膜を覆うように遮光膜が成膜され、この遮光膜は、基板内へ入射する不要な光を遮光するとともに、転送電極に電圧を印加するための信号線としても機能する。すなわち、遮光膜と転送電極とはコンタクトを介して電気的に接続されているので、遮光膜およびコンタクトを介して、転送電極に電圧を印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−252840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、撮像素子の各画素の開口を充分に広くすることができなかった。
【0007】
例えば、転送電極と遮光膜を共通化する技術では、転送電極に対して設けられる絶縁膜の厚さや、コンタクトの大きさの制約により各画素の開口幅を充分に広くすることが困難であった。また、転送電極と遮光膜との間にコンタクトを設けなければならないので、転送電極の部分における基板の受光面と垂直な方向の高さが高くなり、これにより画素の開口が狭くなってしまう。
【0008】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画素の開口をより広くすることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の第1の側面の固体撮像素子は、入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部と、前記受光部近傍の導電材料と、前記導電材料の少なくとも一部を覆うように形成された第1の遮光膜と、前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に形成された第2の遮光膜とを備える。
【0010】
前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜を、導電性を有する部材とし、前記導電材料には、前記固体撮像素子の駆動時に前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜を介して電圧が印加されるようにすることができる。
【0011】
前記導電材料を、前記受光部に蓄積された前記信号電荷を読み出すときに電圧が印加される転送電極とすることができる。
【0012】
前記第2の遮光膜を、前記導電材料と前記導電材料に隣接する前記受光部とが並ぶ方向の幅が、前記第1の遮光膜の前記方向の幅よりも狭くなるように形成することができる。
【0013】
前記第1の遮光膜の前記受光部側の側面には、サイドウォール状に前記第2の遮光膜を形成することができる。
【0014】
前記導電材料をポリシリコンによって形成し、前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜をタングステンによって形成するようにすることができる。
【0015】
本技術の第1の側面の製造方法は、入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部の近傍に配置された導電材料の少なくとも一部を覆うように第1の遮光膜が形成され、前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に第2の遮光膜が形成されるステップを含む。
【0016】
本技術の第1の側面においては、入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部の近傍に配置された導電材料の少なくとも一部を覆うように第1の遮光膜が形成されており、前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に第2の遮光膜が形成される。
【0017】
本技術の第2の側面の撮像ユニットは、被写体から入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部と、前記被写体からの光を前記受光部に導く光学系と、前記受光部近傍の導電材料と、前記導電材料の少なくとも一部を覆うように形成された第1の遮光膜と、前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に形成された第2の遮光膜とを備える。
【0018】
本技術の第2の側面においては、被写体から入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部近傍に配置された導電材料の少なくとも一部を覆うように第1の遮光膜が形成されており、前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に第2の遮光膜が形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本技術の第1の側面および第2の側面によれば、画素の開口をより広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本技術を適用した撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】固体撮像素子の構成例を示す図である。
【図3】固体撮像素子の各画素のより詳細な構成例を示す図である。
【図4】製造処理を説明するフローチャートである。
【図5】固体撮像素子の製造工程を説明する図である。
【図6】固体撮像素子の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本技術を適用した実施の形態について説明する。
【0022】
〈第1の実施の形態〉
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術を適用した撮像装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0023】
撮像装置11は、撮像ユニット21、操作部22、制御部23、画像処理部24、表示部25、コーデック処理部26、および記録部27から構成される。
【0024】
撮像ユニット21は、被写体を撮像して画像を生成するユニットであり、レンズ部31、固体撮像素子32、およびA/D(Analog / Digital)変換器33から構成される。
【0025】
レンズ部31は、レンズ等の撮像光学系などからなり、制御部23の制御に従って駆動し、焦点調整を行なうとともに被写体からの光を固体撮像素子32に導く。固体撮像素子32は、例えばCCDセンサなどの固体撮像素子からなり、レンズ部31から入射した光を受光して光電変換し、受光した光の強度に応じた電圧信号をA/D変換器33に供給する。この電圧信号は、固体撮像素子32を構成する画素ごとに得られる。
【0026】
A/D変換器33は、固体撮像素子32から供給された画素ごとの電圧信号を、デジタルの画像信号(以下、画素信号とも称する)に変換し、順次、画像処理部24に供給する。
【0027】
操作部22は、例えばボタンやタッチパネルなどからなり、ユーザによる操作入力を受け、その操作入力に対応する信号を制御部23に供給する。制御部23は、操作部22から供給されたユーザの操作入力に対応する信号に基づいて、レンズ部31、固体撮像素子32、A/D変換器33、画像処理部24、表示部25、コーデック処理部26、および記録部27を制御する。
【0028】
画像処理部24は、A/D変換器33から供給された画像信号に対して、例えばホワイトバランス調整、デモザイク処理などの各種画像処理を施し、表示部25およびコーデック処理部26に供給する。
【0029】
表示部25は、例えば液晶ディスプレイなどからなり、画像処理部24から供給された画像信号に基づいて、被写体の画像を表示する。コーデック処理部26は、画像処理部24からの画像信号に対して符号化処理を施し、その結果得られた画像データを記録部27に供給する。
【0030】
記録部27は、コーデック処理部26から供給された画像データを記録する。記録部27に記録された画像データは、必要に応じて画像処理部24に読み出されて、表示部25に供給され、対応する画像が表示される。
【0031】
[固体撮像素子の構成例]
また、図1の固体撮像素子32は、例えば図2に示すように構成される。
【0032】
すなわち、固体撮像素子32は、被写体からの光が入射する撮像部61、撮像部61を囲むように設けられたオプティカルブラック領域62、水平転送部63、および出力部64から構成される。
【0033】
撮像部61には、マトリクス状に配列され、1つの画素を構成する受光部71と、図中、縦方向(以下、垂直方向とも称する)に並ぶ受光部71からの電荷を垂直方向に転送する垂直転送部72とが設けられている。
【0034】
なお、図2では、1つの四角形が1つの受光部71を表しており、図2では説明のため、一部の受光部71にのみ符号が付されている。受光部71は、入射した光を光電変換し、その結果得られた電荷を蓄積するとともに垂直転送部72に転送する。
【0035】
また、撮像部61には、複数の垂直転送部72が図中、横方向(以下、水平方向とも称する)に並べられて設けられており、垂直転送部72は、受光部71からの電荷を垂直方向に転送し、水平転送部63に供給する。
【0036】
より詳細には、垂直転送部72には、電荷を転送する電荷転送チャネル領域と、タイミング発生回路81から垂直転送クロックVφが印加されることで、電荷転送チャネル領域に電圧を印加する転送電極とから構成される。電荷転送チャネル領域での電荷の垂直方向への転送は、転送電極に所定の大きさの垂直転送クロックVφが印加されると行なわれる。
【0037】
また、タイミング発生回路81によって、水平転送部63に水平転送クロックHφが印加されると、水平転送部63は、垂直転送部72から転送されてきた電荷を水平方向に転送する。そして、水平転送部63を転送された電荷は、図示せぬフローティングディフュージョン部で電圧に変換され、変換により得られた電圧信号が出力部64から、図1のA/D変換器33に出力される。
【0038】
[各画素の構成例]
さらに、固体撮像素子32の各画素を構成する受光部71近傍は、例えば図3に示すように構成される。
【0039】
すなわち、矢印Q11に示すように、固体撮像素子32を構成する基板101内部に受光部71が形成されている。例えば、基板101はSi基板などとされる。なお、矢印Q11に示す固体撮像素子32においては、図中、縦方向が垂直方向であり、図中、横方向が水平方向である。
【0040】
また、受光部71の図中、左側には、基板101上に第1転送電極102−1が設けられており、第1転送電極102−1の図中、上下には第2転送電極103−1および第2転送電極103−2がそれぞれ設けられている。
【0041】
同様に、受光部71の図中、右側には、基板101上に第1転送電極102−2が設けられており、第1転送電極102−2の図中、上下には第2転送電極103−3および第2転送電極103−4がそれぞれ設けられている。
【0042】
図3の例では、図中、縦方向に並ぶ第2転送電極103−1、第1転送電極102−1、および第2転送電極103−2が1つの垂直転送部72を構成しており、これらの電極が並ぶ方向が垂直方向である。また、図中、縦方向に並ぶ第2転送電極103−3、第1転送電極102−2、および第2転送電極103−4も1つの垂直転送部72を構成している。
【0043】
なお、以下、第1転送電極102−1および第1転送電極102−2を特に区別する必要のない場合、単に第1転送電極102とも称し、第2転送電極103−1乃至第2転送電極103−4を特に区別する必要のない場合、単に第2転送電極103とも称する。
【0044】
また、水平方向に並ぶ各第2転送電極103は、第1遮光膜により電気的に接続されている。すなわち、図中、横方向に並ぶ第2転送電極103−1と第2転送電極103−3は、第1遮光膜104−1により接続されており、図中、横方向に並ぶ第2転送電極103−2と第2転送電極103−4は、第1遮光膜104−2により接続されている。
【0045】
また、第1転送電極102−1の上面には第1遮光膜104−3が設けられ、第1転送電極102−2の上面には第1遮光膜104−4が設けられている。なお、以下、第1遮光膜104−1乃至第1遮光膜104−4を特に区別する必要のない場合、単に第1遮光膜104とも称する。
【0046】
各第1遮光膜104は、導電性を有する金属材料などからなり、基板101に入射する不要な光を遮光するとともに、第1転送電極102や第2転送電極103に電圧を印加する信号線としても機能する。これらの第1遮光膜104は、第1転送電極102や第2転送電極103の図中、手前側、すなわち、第1転送電極102や第2転送電極103における基板101側とは反対側の面の一部の表面に設けられている。
【0047】
さらに、基板101上には、第1転送電極102や第2転送電極103、第1遮光膜104を絶縁するためのSiO2等の絶縁膜105が設けられている。
【0048】
また、より詳細には、基板101上の第1遮光膜104や絶縁膜105の上部には、矢印Q12に示すように、第2遮光膜106−1乃至第2遮光膜106−3が設けられている。なお、矢印Q12に示す固体撮像素子32においては、図中、縦方向が垂直方向であり、図中、横方向が水平方向である。
【0049】
この例では、第1遮光膜104−1と第1遮光膜104−2の間に第2遮光膜106−1が設けられており、第2遮光膜106−1では、受光部71近傍の領域は開口となっている。また、第1遮光膜104−1の図中、上側に第2遮光膜106−2が設けられており、第1遮光膜104−2の図中、下側には第2遮光膜106−3が設けられている。
【0050】
これらの第2遮光膜106−1乃至第2遮光膜106−3は、電気的に切り離された状態、つまり電気的に接続されていない状態となっている。なお、以下、第2遮光膜106−1乃至第2遮光膜106−3を特に区別する必要のない場合、単に第2遮光膜106とも称する。
【0051】
各第2遮光膜106は、導電性を有する金属材料などからなり、基板101に入射する不要な光を遮光する。また、第2遮光膜106−1は、第1遮光膜104を介して第1転送電極102と電気的に接続されており、第1転送電極102に電圧を印加する信号線としても機能する。
【0052】
第1遮光膜104および第2遮光膜106は、遮光部材としても信号線としても機能するので、遮光能力を有する導電性の金属材料、例えばタングステンなどとされることが望ましい。なお、第1転送電極102と第1遮光膜104の間や、第2転送電極103と第1遮光膜104の間には、必要に応じてTi(チタン),TiN(窒化チタン)等のバリアメタルなどが設けられるようにしてもよい。
【0053】
また、矢印Q12に示す固体撮像素子32における、中央部分の断面、つまりA1−A1’断面は、例えば矢印Q13に示すようになっている。矢印Q13に示す断面では、図中、横方向が水平方向であり、図中、奥行き方向が垂直方向である。
【0054】
矢印Q13に示す例では、基板101の中央部分の表面近傍に受光部71が設けられ、基板101の図中、上側、つまり表面には絶縁膜105が形成されている。また、絶縁膜105の図中、上側には、第1転送電極102が設けられており、第1転送電極102を覆うように第1遮光膜104が設けられ、さらに第1遮光膜104の一部の表面を覆うように第2遮光膜106が設けられている。
【0055】
特に、受光部71の図中、左側および右側に第1転送電極102−1および第1転送電極102−2が設けられており、これらの第1転送電極102−1から第1転送電極102−2までの部分が、受光部71を含む画素の開口部分となっている。
【0056】
画素部分の水平方向の断面(A1−A1’断面)では、第1遮光膜104は、第1転送電極102に対して横方向(水平方向)の幅が片側で10乃至100nmだけ広くなっており、第1転送電極102表面に直接、第1遮光膜104が形成されている。
【0057】
また、第1遮光膜104の図中、上側に設けられた第2遮光膜106は、第1遮光膜104よりも図中、横方向(水平方向)の幅が狭く形成されており、その幅の分だけ第1遮光膜104の図中、上側の面が第2遮光膜106に覆われずに露出している。
【0058】
第1遮光膜104の図中、左右の側面には、それらの側面を覆うように第2遮光膜106が設けられている。つまり第2遮光膜106は、第1遮光膜104の側面にサイドウォール状に残るように形成されている。
【0059】
さらに、矢印Q12に示す固体撮像素子32における、垂直転送部72の中央部分の断面、つまりB1−B1’断面は、例えば矢印Q14に示すようになっている。矢印Q14に示す断面では、図中、横方向が垂直方向であり、図中、奥行き方向が水平方向である。
【0060】
矢印Q14に示す例では、基板101上において、図中、左側から右方向に第2転送電極103−2、第1転送電極102−1、および第2転送電極103−1が絶縁膜105により絶縁されて順番に並べられている。
【0061】
基板101における第1転送電極102および第2転送電極103に対向する部分には、受光部71に蓄積された信号電荷を読み出し、その信号電荷を垂直方向に水平転送部63まで転送するための電荷転送チャネル領域(図示せず)が設けられている。
【0062】
第1転送電極102−1の図中、上側の表面には、直接、第1遮光膜104−3が形成されており、第1遮光膜104−3は、第1転送電極102−1に対して横方向(垂直方向)の幅が10乃至100nmだけ短くなるようになされている。また、第1遮光膜104−3の図中、上側の面には、第2遮光膜106−1が電気的に接続されるように設けられている。
【0063】
さらに、第2転送電極103の図中、上側には第1遮光膜104が設けられており、この第1遮光膜104の図中、上側の部分では、絶縁膜105が露出されるように、第2遮光膜106に溝が設けられている。すなわち、絶縁膜105上に設けられた第2遮光膜106−1と第2遮光膜106−3の間、および第2遮光膜106−1と第2遮光膜106−2の間には溝が設けられており、これらの溝により第2遮光膜106−1乃至第2遮光膜106−3が電気的に切り離されている。
【0064】
図3に示した固体撮像素子32では、各画素を構成する受光部71近傍に設けられた第1転送電極102に2層に分けて遮光膜(第1遮光膜104と第2遮光膜106)が形成され、それらの遮光膜が、遮光部材としてだけでなく電圧を印加するための信号線としても機能する。
【0065】
このような構成とすることで、第1転送電極102と遮光膜との間に、絶縁膜やコンタクトを設ける必要がなくなり、垂直転送部72の第1転送電極102、第1遮光膜104、および第2遮光膜106からなる部位をより小さくすることができる。これにより、各画素、つまり受光部71の開口をより広くすることができ、固体撮像素子32の集光特性を向上させることができる。
【0066】
特に、固体撮像素子32では、コンタクトを設ける必要がないので、垂直転送部72の受光部71近傍の部分(第1転送電極102の部分)の基板101と垂直方向の高さをより低くすることができ、受光部71の開口をより広くすることができる。
【0067】
また、図3の矢印Q13に示したように、第2遮光膜106の水平方向の幅、すなわち互いに隣接する受光部71と第1転送電極102とが並ぶ方向の幅を、第1遮光膜104の水平方向の幅よりも狭くすることで、受光部71の水平方向の開口をさらに広くすることができる。換言すれば、第1遮光膜104の上面に設けられた第2遮光膜106の受光部71に隣接する側の側面の位置が、より受光部71から遠い位置となるようにすることができるので、受光部71の開口をより広くすることができる。
【0068】
さらに、第1遮光膜104の受光部71側の側面に、第2遮光膜106をサイドウォール状に形成することにより、より高い入射角度の光に対しても感度特性を確保することが可能となる。
【0069】
なお、以上においては、受光部71に隣接して設けられている第1転送電極102の部分に形成される遮光膜を2層に分けて形成することで、画素の開口をより広くする例について説明したが、第1転送電極102に限らず他の電気部材に対して2層の遮光膜が形成されるようにしてもよい。例えば、固体撮像素子32を駆動するために電圧が印加される電気部品など、固体撮像素子32の駆動に必要な電気部材であればよい。
【0070】
次に、図3に示した固体撮像素子32の動作について説明する。
【0071】
画像の撮像が開始されると、受光部71は被写体から入射した光を光電変換し、その結果得られた信号電荷を蓄積する。また、タイミング発生回路81が第2遮光膜106および第1遮光膜104を介して第1転送電極102に垂直転送クロックを供給し、電圧を印加すると、受光部71に蓄積された信号電荷は、電荷転送チャネル領域に読み出される。
【0072】
さらに、その後、タイミング発生回路81が、適宜、第2遮光膜106および第1遮光膜104を介して第1転送電極102に垂直転送クロックを供給し、電圧を印加するとともに、第1遮光膜104を介して第2転送電極103に垂直転送クロックを供給し、電圧を印加すると信号電荷の転送が行なわれる。すなわち、電荷転送チャネル領域に読み出された信号電荷が、垂直方向に水平転送部63まで転送される。
【0073】
そして、タイミング発生回路81によって、水平転送部63に水平転送クロックが印加されると、水平転送部63は、垂直転送部72の電荷転送チャネル領域から転送されてきた電荷を水平方向に転送する。そして、水平転送部63を転送された電荷は電圧に変換され、その結果得られた電圧信号が出力部64から出力される。
【0074】
[製造処理の説明]
以上において説明した固体撮像素子32は、基板101上に2回に分けて遮光膜が形成されることで製造される。以下、図4乃至図6を参照して、固体撮像素子32が製造される製造処理について説明する。なお、図4は、製造処理を説明するフローチャートであり、図5および図6は、固体撮像素子32の製造工程を示す図である。図5および図6では、図3における場合と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0075】
ステップS11において、基板101上に絶縁膜105が成膜されるとともに、基板101上に第1転送電極102および第2転送電極103が形成される。例えば、第1転送電極102および第2転送電極103は、ポリシリコンによって形成される。そして、第1転送電極102および第2転送電極103が設けられた基板101上に、絶縁膜105がさらに成膜される。
【0076】
ステップS12において、第1転送電極102および第2転送電極103上に、第1遮光膜104が形成される。
【0077】
具体的には、まず基板101上に配置された第1転送電極102および第2転送電極103上にある絶縁膜105が、所望の電極形状に沿った形でドライエッチングにより除去される。すなわち、第1転送電極102や第2転送電極103に隣接する部分の絶縁膜105が除去され、その部分に第1遮光膜104−3や第1遮光膜104−2を埋め込むことができるようにされる。
【0078】
そして第1遮光膜104となる遮光膜材料が成膜され、得られた遮光膜がドライエッチングやCMP(Chemical Mechanical Polishing)により、絶縁膜105の第1転送電極102や第2転送電極103に隣接する部分に埋め込まれて、第1遮光膜104が形成される。
【0079】
これにより、図5の矢印Q31に示すように、基板101に設けられた第1転送電極102−1および第1転送電極102−2上に、それぞれ第1遮光膜104−3および第1遮光膜104−4が形成される。また、第2転送電極103−1および第2転送電極103−3上に第1遮光膜104−1が形成されるとともに、第2転送電極103−2および第2転送電極103−4上に第1遮光膜104−2が形成される。
【0080】
なお、矢印Q31に示す固体撮像素子32において、図中、縦方向および横方向は、それぞれ垂直方向および水平方向を示している。
【0081】
この例では、基板101上の中央にある受光部71の開口部分にも絶縁膜105が設けられた状態となっている。また、矢印Q31に示す固体撮像素子32における、中央部分の断面、つまりA2−A2’断面では、例えば矢印Q32に示すように、第1転送電極102を覆うように第1遮光膜104が絶縁膜105に埋め込まれている。
【0082】
なお、矢印Q32に示す断面では、図中、横方向が水平方向であり、図中、奥行き方向が垂直方向である。ここで、第1転送電極102の基板101に対向する面と、第1遮光膜104の基板101に対向する面が同一平面上に位置し、かつそれらの面が基板101の表面と平行となるようにされる。つまり、それらの面から基板101の表面までの距離が均一になるように加工が行なわれる。
【0083】
また、第1遮光膜104は、第1転送電極102に対して水平方向の幅が片側で10乃至100nmだけ広くなるように形成されており、これにより垂直転送部72に対する遮光性も確保されている。なお、第1遮光膜104を形成するときに、第1遮光膜104と第1転送電極102との安定したコンタクト性能を確保するため、Ti,TiN等のバリアメタルなどが第1遮光膜104と第1転送電極102の間に成膜されるようにしてもよい。
【0084】
さらに、矢印Q31に示す固体撮像素子32の垂直転送部72の断面、つまりB2−B2’断面では、矢印Q33に示すように、第1転送電極102と第2転送電極103の図中、上側に第1遮光膜104が形成されている。B2−B2’断面においても、第1遮光膜104は、絶縁膜105に埋め込まれた状態となっている。
【0085】
図4のフローチャートの説明に戻り、ステップS13において、ステップS12の処理で形成された第1遮光膜104を覆うように、SiO2等により絶縁膜105がさらに成膜される。
【0086】
そして、ステップS14において、基板101上の受光部71近傍の部分、つまり画素(受光部71)の開口となる部分と、第1遮光膜104の部分の絶縁膜105が、リソグラフィおよびドライエッチングにより除去される。
【0087】
これにより、例えば図5の矢印Q34に示す固体撮像素子32の点線で囲まれる領域にある絶縁膜105が除去される。なお、矢印Q34に示す固体撮像素子32において、図中、縦方向および横方向は、それぞれ垂直方向および水平方向を示している。
【0088】
この例では、第1遮光膜104を覆うように成膜された絶縁膜105のうち、受光部71直上の部分と、第1遮光膜104−3および第1遮光膜104−4の上面(基板101側とは反対側の面)の部分とが除去されている。
【0089】
したがって、固体撮像素子32における中央部分の断面、つまりA3−A3’断面では、矢印Q35に示すように、第1遮光膜104の表面や、受光部71近傍の第1遮光膜104−3と第1遮光膜104−4の間には絶縁膜105がない状態となっている。
【0090】
また、矢印Q34に示す固体撮像素子32の垂直転送部72の断面、つまりB3−B3’断面では、矢印Q36に示すように第1遮光膜104−3の図中、上側の面の一部が、絶縁膜105がない状態となっている。これに対して、第1遮光膜104−1と第1遮光膜104−2の図中、上側の面は絶縁膜105により覆われた状態となっている。
【0091】
図4のフローチャートの説明に戻り、ステップS15において、基板101上の絶縁膜105の部分と、絶縁膜105が除去された第1遮光膜104の部分とを覆うように、第2遮光膜106が成膜される。
【0092】
これにより、例えば図6の矢印Q37に示すように、基板101上に設けられた第1遮光膜104や絶縁膜105が全体的に第2遮光膜106により覆われる。なお、矢印Q37に示す固体撮像素子32において、図中、縦方向および横方向は、それぞれ垂直方向および水平方向を示している。
【0093】
矢印Q37に示す固体撮像素子32における中央部分の断面、つまりA4−A4’断面では、矢印Q38に示すように、第1遮光膜104の表面や、基板101表面に成膜された絶縁膜105の受光部71近傍の部分が第2遮光膜106で覆われている。
【0094】
また、矢印Q37に示す固体撮像素子32の垂直転送部72の断面、つまりB4−B4’断面では、矢印Q39に示すように、第1遮光膜104−3の図中、上側の面の露出していた部分と、絶縁膜105の部分とが第2遮光膜106で覆われている。
【0095】
このように第2遮光膜106を成膜することで、第1転送電極102上において、第1遮光膜104と第2遮光膜106とが電気的に接続された状態となる。つまり、第2遮光膜106に電圧を印加すると、その電圧は第2遮光膜106および第1遮光膜104を介して第1転送電極102にも印加されるようになる。
【0096】
なお、第2遮光膜106が成膜されても、矢印Q39に示すように、第1遮光膜104−1および第1遮光膜104−2と、第2遮光膜106とは、それらの間に設けられた絶縁膜105により絶縁された状態となっている。
【0097】
図4のフローチャートの説明に戻り、ステップS16において、ステップS15の処理で成膜された第2遮光膜106の一部が、リソグラフィおよびドライエッチングにより除去され、最終的な固体撮像素子32とされる。
【0098】
例えば、図6の矢印Q40に示すように、固体撮像素子32の点線で囲まれる領域にある第2遮光膜106が除去される。なお、矢印Q40に示す固体撮像素子32において、図中、縦方向および横方向は、それぞれ垂直方向および水平方向を示している。
【0099】
この例では、第2遮光膜106における受光部71直上の部分、第1遮光膜104−1および第1遮光膜104−2の直上の部分、並びに第1遮光膜104−3および第1遮光膜104−4の上面の端部分が除去される。
【0100】
これにより、矢印Q40に示す固体撮像素子32における中央部分の断面、つまりA54−A5’断面では、矢印Q41に示すように、第1転送電極102を覆う第1遮光膜104の表面に形成された第2遮光膜106の一部と、受光部71近傍の第2遮光膜106とが除去されている。
【0101】
この例では、第2遮光膜106が、第1遮光膜104よりも水平方向に細い線幅で形成されているので、受光部71の開口がより広くなっている。また、第1遮光膜104の側面に、第2遮光膜106がサイドウォール状に形成されているので、遮光性能が強化された状態となっている。
【0102】
また、矢印Q40に示す固体撮像素子32の垂直転送部72の中央部分の断面、つまりB5−B5’断面では、矢印Q42に示すように、第1転送電極102と第2転送電極103の間の部分(ギャップ)や、第1遮光膜104−3が第2遮光膜106−1により覆われている。したがって、これらのギャップ等に不要な光が入射することもない。
【0103】
同様に、矢印Q40に示す固体撮像素子32の垂直転送部72の端近傍の部分の断面、つまりC1−C1’断面では、矢印Q43に示すように、第1転送電極102と第2転送電極103の間のギャップや、第1遮光膜104−3の一部が第2遮光膜106−1により覆われている。したがって、矢印Q43に示す場合においても、これらのギャップ等に不要な光が入射することはなく、遮光性を向上させることができる。
【0104】
以上のようにして第2遮光膜106の一部が除去され、最終的な固体撮像素子32が得られると、製造処理は終了する。
【0105】
固体撮像素子32の製造時には、第1転送電極102や第2転送電極103に対して第1遮光膜104が形成され、その第1遮光膜104上などに第2遮光膜106が形成され、適宜、第2遮光膜106が加工されて最終的な固体撮像素子32とされる。
【0106】
このように、信号線としても機能し、第1転送電極102上に形成される遮光膜を、第1遮光膜104と第2遮光膜106に分けて、つまり2回に分けて形成することにより、より微細で複雑な形状の遮光膜をより簡単に形成することができる。したがって、より簡単に高開口な画素を有する固体撮像素子32を得ることができる。
【0107】
なお、固体撮像素子32はCCDセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなど、どのようなセンサであってもよい。
【0108】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0109】
さらに、本技術は、以下の構成とすることも可能である。
【0110】
[1]
入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部と、
前記受光部近傍の導電材料と、
前記導電材料の少なくとも一部を覆うように形成された第1の遮光膜と、
前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に形成された第2の遮光膜と
を備える固体撮像素子。
[2]
前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜は、導電性を有する部材からなり、
前記導電材料には、前記固体撮像素子の駆動時に前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜を介して電圧が印加される
[1]に記載の固体撮像素子。
[3]
前記導電材料は、前記受光部に蓄積された前記信号電荷を読み出すときに電圧が印加される転送電極である
[2]に記載の固体撮像素子。
[4]
前記第2の遮光膜は、前記導電材料と前記導電材料に隣接する前記受光部とが並ぶ方向の幅が、前記第1の遮光膜の前記方向の幅よりも狭くなるように形成されている
[1]乃至[3]の何れかに記載の固体撮像素子。
[5]
前記第1の遮光膜の前記受光部側の側面には、サイドウォール状に前記第2の遮光膜が形成されている
[1]乃至[4]の何れかに記載の固体撮像素子。
[6]
前記導電材料は、ポリシリコンによって形成されており、
前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜は、タングステンによって形成されている
[1]乃至[5]の何れかに記載の固体撮像素子。
【符号の説明】
【0111】
11 撮像装置, 21 撮像ユニット, 32 固体撮像素子, 71 受光部, 72 垂直転送部, 81 タイミング発生回路, 102 第1転送電極, 103 第2転送電極, 104 第1遮光膜, 105 絶縁膜, 106 第2遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部と、
前記受光部近傍の導電材料と、
前記導電材料の少なくとも一部を覆うように形成された第1の遮光膜と、
前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に形成された第2の遮光膜と
を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜は、導電性を有する部材からなり、
前記導電材料には、前記固体撮像素子の駆動時に前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜を介して電圧が印加される
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記導電材料は、前記受光部に蓄積された前記信号電荷を読み出すときに電圧が印加される転送電極である
請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記第2の遮光膜は、前記導電材料と前記導電材料に隣接する前記受光部とが並ぶ方向の幅が、前記第1の遮光膜の前記方向の幅よりも狭くなるように形成されている
請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記第1の遮光膜の前記受光部側の側面には、サイドウォール状に前記第2の遮光膜が形成されている
請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記導電材料は、ポリシリコンによって形成されており、
前記第1の遮光膜および前記第2の遮光膜は、タングステンによって形成されている
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部の近傍に配置された導電材料の少なくとも一部を覆うように第1の遮光膜が形成され、
前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に第2の遮光膜が形成される
ステップを含む固体撮像素子の製造方法。
【請求項8】
被写体から入射した光を光電変換して信号電荷を生成する受光部と、
前記被写体からの光を前記受光部に導く光学系と、
前記受光部近傍の導電材料と、
前記導電材料の少なくとも一部を覆うように形成された第1の遮光膜と、
前記第1の遮光膜の一部または全部の表面に形成された第2の遮光膜と
を備える撮像ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84713(P2013−84713A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222743(P2011−222743)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】