説明

固体撮像素子

【課題】色ずれの抑制を図ることができる固体撮像素子を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る固体撮像素子は、複数の光電変換部が設けられた基板と、前記複数の光電変換部毎に設けられ、特定の波長帯域の光を選択的に透過させるカラーフィルタと、を備えている。そして、前記カラーフィルタは、屈折率の異なる層が積層された積層構造部と、複数の要素が前記特定の波長帯域および光の入射角度に応じて異なる周期で設けられた周期構造部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子の応用範囲は、デジタルカメラ、携帯電話などの各種モバイル端末や、監視カメラ、インターネットを介したチャット用のウェブカメラなど、広範な範囲に拡がりつつある。
この様な固体撮像素子には、無機材料を用いたフォトニックカラーフィルターが用いられる場合がある。
ここで、フォトニックカラーフィルター(以下、単にカラーフィルタと称する)を用いるものとすれば、画素の微細化や低背化に対応することができる。
しかしながら、入射する光の角度が大きくなると色ずれが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−225944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、色ずれの抑制を図ることができる固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る固体撮像素子は、複数の光電変換部が設けられた基板と、前記複数の光電変換部毎に設けられ、特定の波長帯域の光を選択的に透過させるカラーフィルタと、を備えている。そして、前記カラーフィルタは、屈折率の異なる層が積層された積層構造部と、複数の要素が前記特定の波長帯域および光の入射角度に応じて異なる周期で設けられた周期構造部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
【図2】周期構造部を例示するための模式斜視図である。(a)は周期構造部がドット状の要素を有するものとした場合、(b)は周期構造部がホール状の要素を有するものとした場合、(c)は周期構造部がストライプ状(筋状)の要素を有するものとした場合である。
【図3】光の入射角度がカラーフィルタの特性に与える影響を例示するための模式グラフ図である。(a)は、青色帯域の光の場合、(b)は緑色帯域の光の場合、(c)は赤色帯域の光の場合である。
【図4】基板の領域に応じて周期構造部が有する周期性を変化させた場合を例示するための模式図である。
【図5】基板の領域に応じて周期構造部が有する周期性を変化させた効果を例示するための模式グラフ図である。(a)は、青色帯域の光の場合、(b)は緑色帯域の光の場合、(c)は赤色帯域の光の場合である。
【図6】光の入射方向と周期性との関係を例示するための模式図である。(a)はストライプ状の要素の配設方向と、入射光の基板の主面に対して平行な方向における成分の方向とが平行となる場合、ストライプ状の要素の配設方向と、入射光の基板の主面に対して平行な方向における成分の方向とが直交する場合である。
【図7】図6(b)に例示をした場合の効果を例示するための模式グラフ図である。
【図8】ストライプ状の要素の配設形態を例示するための模式図である。
【図9】ストライプ状の要素の他の配設形態を例示するための模式図である。
【図10】ストライプ状の要素の他の配設形態を例示するための模式図である。
【図11】ストライプ状の要素の他の配設形態を例示するための模式図である。
【図12】他の実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
【図13】他の実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
【図14】他の実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、図中に示すX方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向を表している。X方向、Y方向は基板10の主面に対して平行な方向を表し、Z方向は基板10の主面に対して垂直な方向(積層方向)を表している。
【0008】
図1は、実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、固体撮像素子1には、基板10、配線部13、カラーフィルタ20B、20G、20R、マイクロレンズ51が設けられている。
基板10は、例えば、シリコン基板とすることができる。基板10は、画素領域と、画素領域の周辺に形成された図示しない周辺回路領域とを有する。
なお、図1は、画素領域における1画素の断面を表している。
基板10には、複数の光電変換部が設けられている。
すなわち、基板10における画素領域には、光電変換部としてフォトダイオード11B、11G、11Rが設けられている。基板10の表面を光の入射方向から見た場合に、複数のフォトダイオード11Bと、複数のフォトダイオード11Gと、複数のフォトダイオード11Rとが、マトリクス状(碁盤目状、ハニカム状等)に2次元配列されているようにすることができる。フォトダイオード11B、11G、11Rの平面形状は、例えば、正方形とすることができる。フォトダイオード11B、11G、11Rは、pn接合を有するものとすることができる。
【0009】
例えば、フォトダイオード11B、11G、11Rの1組が1画素に対応する。フォトダイオード11B、11G、11Rは、後述するカラーフィルタ20B、20G、20Rの作用によって、受光する光の波長帯域が異なるものとなる。例えば、フォトダイオード11Bは青色帯域の光を、フォトダイオード11Gは緑色帯域の光を、フォトダイオード11Rは赤色帯域の光を、それぞれ受光する。
基板10における図示しない周辺回路領域には、信号処理回路や、駆動制御回路などを構成するトランジスタが設けられている。信号処理回路は、フォトダイオード11B、11G、11Rにより光電変換されて出力される電気信号(画素信号)を処理する。駆動制御回路は、フォトダイオード11B、11G、11Rの駆動の制御を行う。
【0010】
基板10の上には、配線部13が設けられている。配線部13は、配線14と層間絶縁膜15とを有する。配線14は、複数層(図1では2層であるが、これに限らない)設けられている。なお、配線14は、単層であってもよい。層間絶縁膜15は、配線14と配線14との間、基板10と最下層の配線14との間、および最上層の配線14とカラーフィルタ20B、20G、20Rとの間に設けられている。
配線14は、フォトダイオード11B、11G、11Rと、周辺回路とを電気的に接続する。配線14の材料としては、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の高融点金属、あるいはTiSi、MoSi、WSi等の高融点金属のシリサイドを用いることができる。層間絶縁膜15の材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)を用いることができる。
なお、配線14は、金属材料などからなり遮光体となるので、フォトダイオード11B、11G、11Rの受光領域への光の入射を遮る位置には設けられていない。また、配線部13内に、配線14以外の遮光膜や、図示しない電荷転送部への転送電極を設けてもよい。
【0011】
配線部13の上には、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられている。カラーフィルタ20Bは、フォトダイオード11Bの上方に設けられ、フォトダイオード11Bに向けて特定の波長帯域(青色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Gは、フォトダイオード11Gの上方に設けられ、フォトダイオード11Gに向けて特定の波長帯域(緑色帯域)の光を透過させる。カラーフィルタ20Rは、フォトダイオード11Rの上方に設けられ、フォトダイオード11Rに向けて特定の波長帯域(赤色帯域)の光を透過させる。
すなわち、カラーフィルタ20B、20G、20Rは、複数のフォトダイオード11B、11G、11R毎に設けられ、特定の波長帯域の光を選択的に透過させる。
カラーフィルタ20B、20G、20Rの上には、層間膜41が設けられている。カラーフィルタ20B、20G、20Rの厚みは異なるものとなるので、層間膜41を設けることで上面に段差ができないようにされている。層間膜41の上面は平坦面となっており、その上にはマイクロレンズ51が設けられている。
【0012】
マイクロレンズ51は、カラーフィルタ20B、20G、20Rごとに設けられている。
マイクロレンズ51は、例えば、凸型レンズとすることができ、マイクロレンズ51により入射光が集光されるようにすることができる。マイクロレンズ51により集光された入射光は、カラーフィルター20B、20G、20Rによって分光され、フォトダイオード11B、11G、11Rに入射する。
フォトダイオード11B、11G、11Rに入射した光は、光電変換される。この光電変換により発生した電気信号(画素信号)は、図示しない配線14などを介して周辺回路に送られる。
【0013】
次に、カラーフィルタ20B、20G、20Rについてさらに例示をする。
カラーフィルタ20B、20G、20Rは、屈折率の異なる層が積層された積層構造部21B、21G、21Rと、複数の要素が特定の波長帯域および光の入射角度に応じて異なる周期で設けられた周期構造部31B、31G、31Rと、を有する。
カラーフィルタ20Bは、積層構造部21Bと周期構造部31Bとを有する。カラーフィルタ20Gは、積層構造部21Gと周期構造部31Gとを有する。カラーフィルタ20Rは、積層構造部21Rと周期構造部31Rとを有する。
周期構造部31Bは、フォトダイオード11Bの上方の配線部13上に設けられている。周期構造部31Gは、フォトダイオード11Gの上方の配線部13上に設けられている。周期構造部31Rは、フォトダイオード11Rの上方の配線部13上に設けられている。
積層構造部21Bは、周期構造部31B上に設けられている。積層構造部21Gは、周期構造部31G上に設けられている。積層構造部21Rは、周期構造部31R上に設けられている。
【0014】
積層構造部21B、21G、21Rは、上部ミラー層24と下部ミラー層25とを有する。上部ミラー層24と下部ミラー層25とは、積層方向に対称的な構造を有している。 上部ミラー層24は、相対的に屈折率の異なる第1の層26と第2の層27との積層構造を有する。第1の層26は、第2の層27よりも屈折率が高くなっている。第1の層26と第2の層27の積層数は、任意の数とすることができる。
上部ミラー層24と下部ミラー層25との間には、制御層28が設けられている。制御層28は、透過波長ごとに厚みが異なるか、もしくは屈折率が異なっている。また、図1におけるカラーフィルタ20Bのように、制御層28の厚みがゼロの場合、すなわち、制御層28が設けられない場合は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との境界において隣接する第1の層26からなる積層体が制御層として機能する。
【0015】
上部ミラー層24と下部ミラー層25は、それぞれ、互いに反射面を対向させた誘電体多層膜ミラーとして機能する。第1の層26及び第2の層27の膜厚Dは、以下の(1)式により規定することができる。
D=λ/(4×n) ・・・(1)
ここで、λは、例えば、可視領域の中心波長(例えば550nm)であり、nは屈折率である。なお、透過特性を最適化するために、各層の膜厚が(1)式により求められる値と異なるものとすることもできる。
【0016】
制御層28は、上部ミラー層24と下部ミラー層25との間に設けられている。制御層28の厚みと屈折率とを適切に設計することにより、上部ミラー層24及び下部ミラー層25の反射面で多重反射した光のうち特定の波長だけを透過させることができる。すなわち、積層構造部21B、21G、21Rにおいては、ファブリーペロー干渉計と同じ原理に基づいて透過波長を規定することができる。
第1の層26、第2の層27、制御層28は、無機材料から形成されるものとすることができる。第1の層26、第2の層27、制御層28の材料は、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、シリコン(Si)、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどとすることができる。
【0017】
周期構造部31B、31G、31Rは、周期構造部31B、31G、31Rよりも屈折率が低い下地層30中に設けられている。
周期構造部31B、31G、31R、下地層30は、無機材料から形成されるものとすることができる。周期構造部31B、31G、31R、下地層30の材料は、例えば、シリコン(Si)、多結晶シリコン、酸化シリコン(SiO)などとすることができる。
【0018】
図2は、周期構造部を例示するための模式斜視図である。
図2(a)は周期構造部がドット状の要素を有するものとした場合、図2(b)は周期構造部がホール状の要素を有するものとした場合、図2(c)は周期構造部がストライプ状(筋状)の要素を有するものとした場合である。
【0019】
図2(a)に示すように、周期構造部311はドット状の要素を有するものとすることができる。この場合、周期構造部311は円柱状の要素31aが周期的に配置されたものとすることができる。円柱状の要素31aが周期的に配置された周期構造部311は、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。
図2(b)に示すように、周期構造部312はホール状の要素を有するものとすることができる。この場合、周期構造部312はホール状の要素31bが周期的に配置されたものとすることができる。ホール状の要素31bが周期的に配置された周期構造部312は前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。ホール状の要素31bの内部は下地層30が埋め込まれているようにすることができる。
図2(c)に示すように、周期構造部313はストライプ状の要素を有するものとすることができる。この場合、周期構造部313はストライプ状の要素31cが周期的に配置されたものとすることができる。ストライプ状の要素31cが周期的に配置された周期構造部313は、前述した周期構造部31B、31G、31Rに対応する。
【0020】
また、周期構造部31B、31G、31Rは、透過波長ごとに特定の周期性を有している。すなわち、周期構造部31B、31G、31Rには、複数の要素が特定の波長帯域に応じて異なる周期で設けられている。
この場合、周期構造部31B、31G、31Rにおける要素の周期を適切に設計することにより、特定の波長帯域以外の光(フォトダイオードに導きたくない波長帯域の光)を反射及び吸収させることができる。
例えば、周期構造部31Bは、緑色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高くなるようになっている。周期構造部31Gは、青色帯域と赤色帯域の光の反射率及び吸収率が高くなるようになっている。周期構造部31Rは、青色帯域と緑色帯域の光の反射率及び吸収率が高くなるようになっている。
積層構造部21B、21G、21Rと、周期構造部31B、31G、31Rとの相乗的効果によって、カラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトルが所望の特性となるように制御することができる。
【0021】
ところが、本発明者らの得た知見によれば、入射する光の角度が変化すると、カラーフィルタ20B、20G、20Rの透過スペクトルが変化することが判明した。
図3は、光の入射角度θがカラーフィルタの特性に与える影響を例示するための模式グラフ図である。なお、図3(a)は、青色帯域の光の場合、図3(b)は緑色帯域の光の場合、図3(c)は赤色帯域の光の場合である。
また、「B0、G0、R0」は入射角度θが0°の場合、「B10、G10、R10」は入射角度θが10°の場合、「B20、G20、R20」は入射角度θが20°の場合、「B30、G30、R30」は入射角度θが30°の場合、「B40、G40、R40」は入射角度θが40°の場合である。
なお、入射角度θは、基板10の主面に対して垂直な方向(Z方向)と入射光の方向とがなす角度である。例えば、入射角度θが0°の場合は基板10の主面に対して垂直な方向から光が入射する場合である。
また、透過率は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法を用いたシミュレーションを行い求めた。
【0022】
図3(a)〜(c)に示すように、光の入射角度θが変化すると透過率が最大となる波長が変化する。すなわち、光の入射角度θが変化すると色ずれが生ずることになる。またこのことは、入射角度θが大きくなるほど顕著なものとなる。
そのため、周期構造部31B、31G、31Rには、複数の要素が光の入射角度に応じて異なる周期で設けられている。
例えば、基板10の周縁側の領域(第2の領域の一例に相当する)に入射する光の入射角度は、基板10の中心側の領域(第1の領域の一例に相当する)に入射する光の入射角度よりも大きくなる。そのため、基板10の中心側の領域の上方に設けられる周期構造部31B、31G、31Rが有する周期性と、基板10の周縁側の領域の上方に設けられる周期構造部31B、31G、31Rが有する周期性とが異なるものとなっている。
この場合、基板10の中心側の領域よりも光の入射角度が大きくなる基板10の周縁側の領域に設けられる要素の周期は、基板10の中心側の領域に設けられる要素の周期よりも短くなっている。
図4は、基板の領域に応じて周期構造部が有する周期性を変化させた場合を例示するための模式図である。なお、周期構造部はドット状の要素を有するものとしている。
図4に示すように、基板10の中心側の領域の上方に設けられる周期構造部311には、円柱状の要素31aが周期的に配置されている。基板10の周縁側の領域の上方に設けられる周期構造部311aには、円柱状の要素31a1が周期的に配置されている。
そして、要素31aと要素31a1とでは、周期が異なるものとなっている。
例えば、要素31a1の配設ピッチ寸法P1は、要素31aの配設ピッチ寸法Pよりも小さくなっている。また、要素31a1の大きさは、要素31aの大きさよりも小さくなっている。
【0023】
例えば、要素31aの配設ピッチ寸法Pは、カラーフィルタ20Bにおいて0.17±0.2μm、カラーフィルタ20Gにおいて0.25±0.2μm、カラーフィルタ20Rにおいて0.15μm以上、0.35μm以下とすることができる。
そして、要素31a1の配設ピッチ寸法P1は、以下の(2)式を満足するようにすることができる。
P1=P・cosθ ・・・(2)
ここで、P1は要素31a1の配設ピッチ寸法、Pは要素31aの配設ピッチ寸法、θは光の入射角度である。
なお、一例として、周期構造部が要素31aを有する場合(ドット状の要素を有する場合)を例示したが、(2)式は、周期構造部がストライプ状の要素31cを有する場合にも適用することができる。
【0024】
図5は、基板の領域に応じて周期構造部が有する周期性を変化させた効果を例示するための模式グラフ図である。すなわち、図4に例示をした場合の効果を例示するための模式グラフ図である。なお、図5(a)は、青色帯域の光の場合、図5(b)は緑色帯域の光の場合、図5(c)は赤色帯域の光の場合である。
また、「B0、G0、R0」は入射角度θが0°の場合、「B10、G10、R10」は入射角度θが10°の場合、「B20、G20、R20」は入射角度θが20°の場合、「B30、G30、R30」は入射角度θが30°の場合、「B40、G40、R40」は入射角度θが40°の場合である。
なお、入射角度θは、基板10の主面に対して垂直な方向(Z方向)と入射光の方向とがなす角度である。例えば、入射角度θが0°の場合は基板10の主面に対して垂直な方向から光が入射する場合である。
また、透過率は、RCWA法を用いたシミュレーションを行い求めた。
【0025】
図5(a)〜(c)に示すように、光の入射角度θが変化することで透過率が最大となる波長が変化することを抑制することができる。すなわち、光の入射角度θが変化することで色ずれが生ずることを抑制することができる。
【0026】
ここで、周期構造部313がストライプ状の要素31cが周期的に配置されたものである場合には、光の入射方向によって周期性が異なるものとなる。
図6は、光の入射方向と周期性との関係を例示するための模式図である。
なお、図6(a)はストライプ状の要素31cの配設方向Sbと、入射光Lの基板10の主面に対して平行な方向における成分Lxyの方向とが平行となる場合である。すなわち、入射光Lの成分Lxyの方向と、ストライプ状の要素31cが伸びている方向とが直交する場合である。
図6(b)はストライプ状の要素31cの配設方向Saと、入射光Lの基板10の主面に対して平行な方向における成分Lxyの方向とが直交する場合である。すなわち、入射光Lの成分Lxyの方向と、ストライプ状の要素31cが伸びている方向とが平行となる場合である。
図6(a)に例示をしたものにおいては、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部313は周期性を有することになる。この場合、入射光Lの入射角度θが変化すると成分Lxyの大きさが変化することになる。そのため、図6(a)に例示をしたものにおいては、入射角度θにより共鳴効果が変化するため色ずれの抑制効果が低減するおそれがある。
【0027】
一方、図6(b)に例示をしたものにおいては、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部313は周期性を有さないことになる。この場合、入射光Lの入射角度θが変化すると成分Lxyの大きさが変化することになる。しかしながら、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部313は周期性を有さないため、成分Lxyの大きさが変化しても共鳴効果が変化することがない。そのため、図6(b)に例示をしたものにおいては、入射角度θが変化しても色ずれの抑制効果が低減するおそれが少ない。
【0028】
図7は、図6(b)に例示をした場合の効果を例示するための模式グラフ図である。
なお、図7は緑色帯域の光の場合であり、G0は入射角度θが0°の場合、G10は入射角度θが10°の場合、G20は入射角度θが20°の場合、G30は入射角度θが30°の場合である。
入射角度θは、基板10の主面に対して垂直な方向(Z方向)と入射光の方向とがなす角度である。例えば、入射角度θが0°の場合は基板10の主面に対して垂直な方向から光が入射する場合である。
また、透過率は、RCWA法を用いたシミュレーションを行い求めた。
図7に示すように、図5(b)に例示をしたものと比べて、光の入射角度θが変化することで透過率が最大となる波長が変化することをさらに抑制することができる。すなわち、図5(b)に例示をしたものと比べて、光の入射角度θが変化することで色ずれが生ずることをさらに抑制することができる。
【0029】
この場合、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部313が周期性を有さないようにするためには、平面視において、ストライプ状の要素31cが基板10の中心側から外側に向けて伸びているような配置とすればよい。
図8は、ストライプ状の要素31cの配設形態を例示するための模式図である。
図8に示すように、平面視において、ストライプ状の要素31cが基板10の中心側から外側に向けて伸びているような配置とすれば、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部313が周期性を有さないようにすることができる。そのため、光の入射角度θが変化することで色ずれが生ずることをさらに抑制することができる。
【0030】
図9〜図11は、ストライプ状の要素31cの他の配設形態を例示するための模式図である。
図9〜図11は、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられた領域60を分割し、分割された領域毎に適切な周期構造部を設ける場合を例示するための模式図である。 なお、図9〜図11は、カラーフィルタ20B、20G、20Rがベイヤ(Bayer)配列となるように配列された場合である。
【0031】
図9は、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられた領域60を9分割した場合である。
【0032】
前述したように、カラーフィルタ20B、20G、20Rに設けられるストライプ状の要素31cは、透過波長ごとに特定の周期性を有するように設けられている。
透過波長ごとに特定の周期性を有する要素31cを設けるようにすれば、特定の波長帯域以外の光を反射及び吸収させることができるので、特定の波長帯域の光をフォトダイオードに導くことができる。
また、領域60a、60b、60c、60dにおいて、領域60の周縁により近くなるほどストライプ状の要素31cやドット状の要素31dの配設ピッチ寸法が小さくなるようになっている。
領域60の周縁により近くなるほど要素31cや要素31dの配設ピッチ寸法が小さくなるようにすれば、光の入射角度θが大きくなっても色ずれが大きくなることを抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態においては、以下のような構成とすることで、色ずれが大きくなることをさらに抑制するようにしている。
領域60の周縁側の領域となる領域60a、60b、60cにおいては、平面視においてストライプ状の要素31cが基板10(領域60)の中心側から外側に向けて伸びているような配置となっている。例えば、領域60a、60cにおいては、ストライプ状の要素31cが領域60の縁に垂直な方向に伸びているような配置となっている。また、領域60bにおいては、ストライプ状の要素31cが領域60の対角線に平行な方向に伸びているような配置となっている。
要素31cが領域60の中心側から外側に向けて伸びているような配置とすれば、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部が有する周期性を小さくすることができる。そのため、光の入射角度θが変化することで色ずれが生ずることをさらに抑制することができる。
【0034】
また、領域60の中心側の領域となる領域60dにおいては、ドット状の要素31dが設けられている。この場合、領域60dにおいても、ストライプ状の要素31cが領域60の中心側から外側に向けて伸びているような配置となるようにすることもできる。
ここで、中心側の領域となる領域60dにストライプ状の要素31cを設けるようにすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造が難しくなる。一方、領域60dにドット状の要素31dを設けるようにすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造を容易にすることができる。
そのため、本実施の形態においては、周期構造部31B、31G、31Rの製造を容易にするため、領域60dにドット状の要素31dを設けるようにしている。
【0035】
図10は、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられた領域60を4分割した場合である。図10は、領域60の対角線601により4分割した場合である。
図9において例示をしたものと同様に、カラーフィルタ20B、20G、20Rに設けられるストライプ状の要素31cは、透過波長ごとに特定の周期性を有するように設けられている。
また、領域60a1、60c1において、領域60の周縁により近くなるほど要素31cの配設ピッチ寸法が小さくなるようになっている。
そして、本実施の形態においても、領域60a1、60c1においては、平面視においてストライプ状の要素31cが基板10(領域60)の中心側から外側に向けて伸びているような配置となっている。例えば、領域60a1、60c1においては、ストライプ状の要素31cが領域60の縁に垂直な方向に伸びているような配置となっている。
【0036】
この場合、対角線601の近傍においては、図9に例示をした領域60bと同様の要素31cの配置とすることができる。
ここで、対角線601の近傍において領域60bと同様の要素31cの配置となるようにすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造が難しくなる。一方、要素31cの配置が領域60a1、60c1毎に同様となるようにすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造を容易にすることができる。
そのため、本実施の形態においては、周期構造部31B、31G、31Rの製造を容易にするため、要素31cの配置が領域60a1、60c1毎に同様となるようにしている。
【0037】
図11は、カラーフィルタ20B、20G、20Rが設けられた領域60を8分割した場合である。
図9において例示をしたものと同様に、カラーフィルタ20B、20G、20Rに設けられるストライプ状の要素31cは、透過波長ごとに特定の周期性を有するように設けられている。
また、領域60a2、60b2、60c2において、領域60の周縁により近くなるほど要素31cの配設ピッチ寸法が小さくなるようになっている。
そして、本実施の形態においても、領域60a2、60b2、60c2においては、平面視においてストライプ状の要素31cが基板10(領域60)の中心側から外側に向けて伸びているような配置となっている。例えば、領域60a2、60c2においては、ストライプ状の要素31cが領域60の縁に垂直な方向に伸びているような配置となっている。また、領域60b2においては、ストライプ状の要素31cが領域60の対角線に平行な方向に伸びているような配置となっている。
【0038】
ここで、ストライプ状の要素31cは、平面視において基板10(領域60)の中心から放射状に伸びているような配置とすることが好ましい。
しかしながら、平面視においてストライプ状の要素31cが基板10(領域60)の中心から放射状に伸びているような配置とすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造が難しくなる。一方、図9〜図11に例示をした場合のように、要素31cの配置が分割された領域毎に同じ形態を有するものとすれば、周期構造部31B、31G、31Rの製造を容易にすることができる。
この場合、平面視においてストライプ状の要素31cが放射方向と交差する方向に伸びていても、基板10(領域60)の中心側から外側に向けて伸びているようになっていれば、入射光Lの成分Lxyの方向に対して周期構造部が有する周期性を小さくすることができる。そのため、光の入射角度θが変化することで色ずれが生ずることを抑制することができる。
【0039】
図12〜図14は、他の実施形態に係る固体撮像素子を例示するための模式断面図である。
図12に示すように、基板10の上にカラーフィルタ20B、20G、20Rを設け、カラーフィルタ20B、20G、20Rの上に配線層13を設けてもよい。この場合、マイクロレンズ51は、配線層13の上に設けられる。カラーフィルタ20B、20G、20Rにおける周期構造部31B、31G、31Rは、基板10の上に設けられ、その周期構造部31B、31G、31Rの上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられる。
【0040】
また、図13に示すように、基板10の上に周期構造部31B、31G、31Rを設け、周期構造部31B、31G、31Rの上に配線層13を設けてもよい。この場合、配線層13の上に積層構造部21B、21G、21Rが設けられる。マイクロレンズ51は、積層構造部21B、21G、21R上に設けられる。
【0041】
また、図14に示すように、いわゆる裏面照射型の構造としてもよい。基板10の上に周期構造部31B、31G、31Rを設け、周期構造部31B、31G、31Rの上に積層構造部21B、21G、21Rを設けてもよい。この場合、マイクロレンズ51は、積層構造部21B、21G、21Rの上に設けられる。
【0042】
図12〜図14に例示をするいずれの構造においても、前述した周期構造部を設けることで、色ずれの抑制を図ることができる。
また、図12〜図14に例示をする構造では、基板10の上に周期構造部31B、31G、31Rを設けている。この構造の場合、周期構造部31B、31G、31Rを、周辺回路等のトランジスタのゲート電極と同時に形成することができるので、工程数の削減によるコスト低下を図ることができる。
【0043】
以上に例示をした実施形態によれば、色ずれの抑制を図ることができる固体撮像素子を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 固体撮像素子、10 基板、11B フォトダイオード、11G フォトダイオード、11R フォトダイオード、20B カラーフィルタ、20G カラーフィルタ、20R カラーフィルタ、21B 積層構造部、21G 積層構造部、21R 積層構造部、31B 周期構造部、31G 周期構造部、31R 周期構造部、31a 要素、31a1 要素、31b 要素、31c 要素、60 領域、60a 領域、60b 領域、60c 領域、60d 領域、311 周期構造部、311a 周期構造部、312 周期構造部、313 周期構造部、L 入射光、Lxy 成分、θ 入射角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換部が設けられた基板と、
前記複数の光電変換部毎に設けられ、特定の波長帯域の光を選択的に透過させるカラーフィルタと、
を備え、
前記カラーフィルタは、屈折率の異なる層が積層された積層構造部と、複数の要素が前記特定の波長帯域および光の入射角度に応じて異なる周期で設けられた周期構造部と、を有することを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
第1の領域よりも光の入射角度が大きくなる第2の領域に設けられる要素の周期は、前記第1の領域に設けられる要素の周期よりも短いことを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記基板の周縁側に設けられる要素の周期は、前記基板の中心側に設けられる要素の周期よりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記複数の要素は、以下の式を満足するように設けられることを特徴とする請求項2記載の固体撮像素子。
P1=P・cosθ
ここで、Pは第1の領域における要素の配設ピッチ寸法、P1は第1の領域よりも光の入射角度が大きくなる第2の領域における要素の配設ピッチ寸法、θは光の入射角度である。
【請求項5】
前記複数の要素は、ストライプ状を呈し、平面視において、前記基板の中心側から外側に向けて伸びていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−55202(P2013−55202A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191903(P2011−191903)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】