説明

固体撮像装置

【課題】順次走査方式で画素信号を読み出した場合と比べて輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度が低下するのを抑制しつつ、飛び越し走査方式に対応した映像信号を生成する。
【解決手段】順次走査方式の画素信号SXから輝度信号SY1を生成し、その輝度信号SY1からカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出し、そのカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を輝度信号SY2から除去した後、飛び越し走査方式の輝度信号SY4と色信号SC4に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体撮像装置に関し、特に、NTSC方式のコンポジット映像信号からカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を除去する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
NTSC方式のコンポジット映像信号の輝度成分にカラーサブキャリア周波数3.579545MHz近傍の周波数成分が含まれている場合、テレビモニタにおいて輝度信号が色信号として間違って処理され、クロスカラーや偽色が発生するため、本来色の付いていない箇所に色が付くという現象が発生する。このため、コンポジット映像信号の輝度成分から予めカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を除去する処理が行われている。
【0003】
ここで、NTSC方式のコンポジット映像信号は飛び越し走査方式で生成されるため、従来のCMOSイメージセンサでは、飛び越し走査方式で画素アレイ部から画素信号を読み出し、NTSC方式のコンポジット映像信号が生成される。
また、例えば、特許文献1には、Y/C分離後のコンポーネント映像信号の輝度信号データに対して水平周波数3.58MHz、時間周波数15Hzの成分を抽出し、輝度信号データから減算することで、コンポーネント映像信号のドット妨害を除去する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、画素アレイ部から飛び越し走査方式で画素信号を読み出した場合、画素アレイ部の行が間引かれて読み出されるため、画素アレイ部から順次走査方式で画素信号を読み出した場合と比べて画素信号の情報量が半分になる。このため、画素信号から生成した輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度が低下したり、輝度信号からカラーサブキャリア周波数成分を除去する精度が低下したりするという問題があった。
【0005】
また、特許文献1に開示された方法では、輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分を検出するため、3次元周波数空間での周波数成分を検出する必要があり、フレームメモリが必要になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−325262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、順次走査方式で画素信号を読み出した場合と比べて輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度が低下するのを抑制しつつ、飛び越し走査方式に対応した映像信号を生成することが可能な固体撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、順次走査方式で読み出される画素信号から輝度信号を生成する輝度信号生成回路と、前記輝度信号生成回路にて生成された輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出するカラーサブキャリア成分検出回路と、前記カラーサブキャリア成分検出回路にて検出されたカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を前記輝度信号から除去するカラーサブキャリア成分除去回路とを備えることを特徴とする固体撮像装置を提供する。
【0009】
本発明の一態様によれば、順次走査方式で画素信号を読み出す固体撮像素子と、前記画素信号から輝度信号および色差信号を生成する輝度・色差信号生成回路と、前記輝度・色差信号生成回路にて生成された輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出するカラーサブキャリア成分検出回路と、前記カラーサブキャリア成分検出回路にて検出されたカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を前記輝度信号から除去するカラーサブキャリア成分除去回路と、前記輝度・色差信号生成回路にて生成された色差信号から色信号を生成する色信号生成回路と、前記カラーサブキャリア成分除去回路にてカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分が除去された順次走査方式の輝度信号と前記信号生成回路にて生成された色信号とを飛び越し走査方式の輝度信号と色信号に変換する順次走査・飛び越し走査変換回路と、前記順次走査・飛び越し走査変換回路にて飛び越し走査方式に変換された輝度信号と色信号とを合成することにより、コンポジット映像信号を生成するコンポジット映像信号生成回路とを備えることを特徴とする固体撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、順次走査方式で画素信号を読み出した場合と比べて輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度が低下するのを抑制しつつ、飛び越し走査方式に対応した映像信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、輝度信号の周波数がカラーサブキャリア周波数と一致した場合の輝度信号の波形とそれに対応する画素の輝度情報を示す図である。
【図3】図3は、図1のカラーサブキャリア成分検出回路105の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3のカラーサブキャリア周波数検出回路301の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4のカラーサブキャリア周波数検出回路301の単位遅延素子Z11〜Z22の遅延時間をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数14.31818MHzの1周期とした場合の周波数特性を示す図である。
【図6】図6は、単位画素あたりの輝度信号をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数14.31818MHzのクロックで処理した場合に輝度信号の周波数がカラーサブキャリア周波数3.579545MHzと一致し、かつ、画素アレイ部の行L1に対して行L2の輝度信号の位相が90度だけ遅れ、行L1と行L3の輝度信号の位相が180度だけずれている場合の輝度信号の波形とそれに対応する画素の輝度情報を示す図である。
【図7】図7は、単位画素あたりの輝度信号をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数14.31818MHzのクロックで処理した場合に輝度信号の周波数がカラーサブキャリア周波数3.579545MHzと一致し、かつ、画素アレイ部の行L1に対して行L2の輝度信号の位相が90度だけ進み、行L1と行L3の輝度信号の位相が180度だけずれている場合の輝度信号の波形とそれに対応する画素の輝度情報を示す図である。
【図8】図8は、図3のカラーサブキャリア成分除去回路106の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係る固体撮像装置に適用されるカラーサブキャリア成分除去回路の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る固体撮像装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、固体撮像素子としてCMOSイメージセンサ、コンポジット映像信号としてNTSC方式を例にとって説明する。ただし、順次走査方式で画素信号を読み出す固体撮像素子ならばCMOSイメージセンサに限定されることなく、例えば、CCDなどであってもよい。また、コンポジット映像信号についても、輝度信号と色信号とが合成されるならばNTSC方式に限定されることなく、例えば、PAL方式やSECAM方式などであってもよい。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、固体撮像装置には、固体撮像素子101と、輝度・色差信号生成回路102、遅延器103、104、カラーサブキャリア成分検出回路105、カラーサブキャリア成分除去回路106、色信号生成回路107、順次走査・飛び越し走査変換回路108、同期信号生成回路109およびNTSC方式コンポジット映像信号生成回路110が設けられている。
【0014】
固体撮像素子101は、単位画素が行列状に配置された画素アレイ部を有し、被写体からの入射光を各画素において光電変換することにより画素信号SXを得る。画素信号SXは単位画素が行列状に配置された画素アレイ部に対して順次走査方式で読み出される。
【0015】
輝度・色差信号生成回路102は、固体撮像素子101から読み出された画素信号SXを元にして輝度信号SY1と色差信号SC1を生成する。輝度信号SY1は、固体撮像素子101によって撮像した画像の輝度成分を持つ。色差信号SC1は固体撮像素子101によって撮像した画像の色差成分を持つ。
【0016】
遅延器103は、色差信号SC1を固体撮像素子101の画素アレイ部における2行分の読み出し時間に相当する時間だけ遅延させる。遅延器104は、輝度信号SY1を固体撮像素子101の画素アレイ部における2行分の読み出し時間に相当する時間だけ遅延させる。遅延器103、104は、カラーサブキャリア成分検出回路105の内部処理によって遅延した分を調整するために色差信号SC1と輝度信号SY1をそれぞれ遅延させる。
【0017】
カラーサブキャリア成分検出回路105は、固体撮像素子101の画素アレイ部の隣接する3行分の情報を利用して、輝度・色差信号生成回路102の出力である輝度信号SY1に含まれるNTSC方式のカラーサブキャリア周波数3.579545MHz近傍の周波数成分を検出して、カラーサブキャリア成分検出信号SBを出力する。
【0018】
カラーサブキャリア成分除去回路106は、カラーサブキャリア成分検出回路105の出力であるカラーサブキャリア成分検出信号SBを使って、遅延器104から出力される輝度信号SY2に含まれるカラーサブキャリア周波数3.579545MHz近傍の周波数成分を除去し、カラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3を出力する。色信号生成回路107は、遅延器103から出力される色差信号SC2を元にして色信号SC3を生成する。
【0019】
カラーサブキャリア成分除去回路106の出力である輝度信号SY3と、色信号生成回路107の出力である色信号SC3は、固体撮像素子101において順次走査方式で読み出された画素信号を元にして生成しているため、固体撮像素子101の画素アレイ部の全ての行の情報を含んでいる。一方、NTSC方式は飛び越し走査方式であるため、順次走査・飛び越し走査変換回路108は、行単位の間引き処理を行い、順次走査方式の輝度信号SY3と色信号SC3を飛び越し走査方式の輝度信号SY4と色信号SC4に変換する。
【0020】
同期信号生成回路109は、NTSC方式の垂直同期信号SD1と水平同期信号SD2を生成する。NTSC方式のコンポジット映像信号SEは、輝度信号SY4、色信号SC4、垂直同期信号SD1および水平同期信号SD2が合成された信号である。NTSC方式コンポジット映像信号生成回路110は、順次走査・飛び越し走査変換回路108から出力される輝度信号SY4および色信号SC4と、同期信号生成回路109から出力される垂直同期信号SD1および水平同期信号SD2を合成して、NTSC方式のコンポジット映像信号SEを生成する。
【0021】
NTSC方式コンポジット映像信号生成回路110は、単位画素あたりの輝度信号SY4をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数(=14.31818MHz)のクロックで処理する。
【0022】
ここで、順次走査方式の画素信号SXから輝度信号SY1を生成し、その輝度信号SY1からカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出し、そのカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を輝度信号SY2から除去した後、飛び越し走査方式の輝度信号SY4と色信号SC4に変換することにより、画素信号SXを飛び越し走査方式で読み出した場合に比べて、カラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分の検出時の輝度信号SY1の情報量を2倍にすることができる。このため、固体撮像素子101から飛び越し走査方式で画素信号SXを読み出した場合と比べて、輝度信号SY1に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出と除去の精度を向上させることができる。
【0023】
図2は、輝度信号の周波数がカラーサブキャリア周波数と一致した場合の輝度信号の波形とそれに対応する画素の輝度情報を示す図である。
図2において、NTSC方式コンポジット映像信号生成回路110は、単位画素あたりの輝度信号SY4をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数(=14.31818MHz)のクロックで処理するため、画素PX1、PX2の輝度Yが255、画素PX3、PX4の輝度Yが0の場合など、行方向に隣接する4個の画素で1周期となるように輝度信号SY4が変化した場合に輝度信号SY4の周波数がカラーサブキャリア周波数と一致する。
【0024】
このため、4個の画素から得られる輝度信号SY1を使ってカラーサブキャリア周波数成分の検出と除去を行うことができ、回路構成を簡易化でき、かつ、完全一致による検出や除去も容易化できる。
【0025】
なお、図2の例では、4個の画素から得られる輝度信号SY1を使ってカラーサブキャリア周波数成分の検出と除去を行うことができることを示したが、N個(Nは正の整数)の画素から得られる輝度信号SY1がカラーサブキャリア信号と一致する場合、N個の画素から得られる輝度信号SY1を使ってカラーサブキャリア周波数成分の検出と除去を行うようにしてもよい。
【0026】
また、図2の例では、カラーサブキャリア周波数の4倍の周波数(=14.31818MHz)のクロックで処理する方法について説明したが、カラーサブキャリア周波数の4×E(Eは正の整数)倍の周波数(=(14.31818×E)MHz)のクロックで処理するようにしてもよい。
【0027】
図3は、図1のカラーサブキャリア成分検出回路105の概略構成を示すブロック図である。
図3において、カラーサブキャリア成分検出回路105には、カラーサブキャリア周波数検出回路301、303、305、遅延器302、304、位相差補正部306および隣接行間信号加算部307が設けられている。カラーサブキャリア周波数検出回路301、303、305は、輝度信号SY1からカラーサブキャリア周波数成分を行ごとに検出する。遅延器302、304は、それぞれ固体撮像素子101の画素アレイ部における1行分の読み出し時間に相当する時間だけ信号を遅延させる。位相差補正部306は、カラーサブキャリア周波数検出回路301、303、305にてそれぞれ検出されたカラーサブキャリア周波数成分の各行ごとの位相差が打ち消されるように補正する。隣接行間信号加算部307は、位相差補正部306にて位相差が補正されたカラーサブキャリア周波数成分を隣接行間で加算する。
【0028】
ここで、位相差補正部306には、単位遅延素子Z1〜Z5が設けられている。なお、各単位遅延素子Z1〜Z5の遅延時間は、単位画素の処理時間(図2の1クロック分)と同じである。そして、画素アレイ部の隣接する3行分の画素をそれぞれ行L1、行L2、行L3とすると、単位遅延素子Z1、Z2は、行L1のカラーサブキャリア周波数成分の位相を180度だけ遅延させ、単位遅延素子Z3は、行L2のカラーサブキャリア周波数成分の位相を90度だけ遅延させ、単位遅延素子Z4、Z5は、行L3のカラーサブキャリア周波数成分の位相を180度だけ遅延させる。
【0029】
隣接行間信号加算部307には、加算器A1〜A5が設けられている。そして、加算器A1、A2は、行L1が行L2に対してカラーサブキャリア周波数成分の位相が90度だけ遅れ、行L1と行L3のカラーサブキャリア周波数成分の位相が180度ずれている場合の行L1〜行L3の3行分の信号を加算する。加算器A3、A4は、行L1が行L2に対してカラーサブキャリア周波数成分の位相が90度だけ進み、行L1と行L3のカラーサブキャリア周波数成分の位相が180度ずれている場合の行L1〜行L3の3行分の信号を加算する。加算器A5は、加算器A1、A2から出力された3行分の信号の加算結果と、加算器A3、A4から出力された3行分の信号の加算結果とを加算する。
【0030】
図4は、図3のカラーサブキャリア周波数検出回路301の概略構成を示すブロック図である。なお、カラーサブキャリア周波数検出回路303、305は、カラーサブキャリア周波数検出回路301と同じ構成である。
図4において、カラーサブキャリア周波数検出回路301には、単位遅延素子Z11〜Z22、乗算器M0、M2、M4、M6、M8、M10、M12および加算器A11〜A13が設けられている。なお、h(0)、h(2)、h(4)、h(6)、h(8)、h(10)、h(12)は乗算器M0、M2、M4、M6、M8、M10、M12の係数をそれぞれ示し、h(0)=h(12)=−1、h(2)=h(10)=2、h(4)=h(8)=−3、h(6)=4に設定することができる。単位遅延素子Z11〜Z22の遅延時間は、単位画素の処理時間と同じである。
【0031】
そして、輝度信号SY1は単位遅延素子Z11〜Z22にて単位画素の処理時間づつ順次遅延され、現在の輝度信号SY1には係数h(0)が乗算され、2単位画素前の輝度信号SY1には係数h(2)が乗算され、4単位画素前の輝度信号SY1には係数h(4)が乗算され、6単位画素前の輝度信号SY1には係数h(6)が乗算され、8単位画素前の輝度信号SY1には係数h(8)が乗算され、10単位画素前の輝度信号SY1には係数h(10)が乗算され、12単位画素前の輝度信号SY1には係数h(12)が乗算される。
【0032】
そして、乗算器M0、M2、M4の出力は加算器A11にて加算され、乗算器M8、M10、M12の出力は加算器A12にて加算され、乗算器M6の出力と加算器A11、A12の出力が加算器A13にて加算されることで、輝度信号SY1からカラーサブキャリア周波数成分が検出され、カラーサブキャリア周波数検出信号SFとして出力される。
【0033】
図5は、図4のカラーサブキャリア周波数検出回路301の単位遅延素子Z11〜Z22の遅延時間をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数14.31818MHzの1周期とした場合の周波数特性を示す図である。
図5において、単位遅延素子子Z11〜Z22の遅延時間を14.31818MHzの1周期とした場合、輝度信号SY1が4画素で1周期となるように変化した時に輝度信号SY1の周波数はカラーサブキャリア周波数と一致する。
この時、輝度信号SY1の周波数が3.579545MHz近傍でカラーサブキャリア周波数検出信号SFの値が高くなっている。従って、カラーサブキャリア周波数検出回路301は、輝度信号SY1に含まれるカラーサブキャリア周波数成分を検出できることが判る。
【0034】
図6および図7は、単位画素あたりの輝度信号をカラーサブキャリア周波数の4倍の周波数14.31818MHzのクロックで処理した場合に輝度信号の周波数がカラーサブキャリア周波数3.579545MHzと一致し、かつ、画素アレイ部の行L1に対して行L2の輝度信号の位相が90度だけずれ、行L1と行L3の輝度信号の位相が180度だけずれている場合の輝度信号の波形とそれに対応する画素の輝度情報を示す図である。なお、図6は、画素アレイ部の行L1に対して行L2の輝度信号の位相が90度だけ遅れ、図7は、画素アレイ部の行L1に対して行L2の輝度信号の位相が90度だけ進んだ状態を示す。
【0035】
図6および図7において、NTSC方式におけるカラーサブキャリア信号は、飛び越し走査による隣接する走査線同士で比較すると、カラーサブキャリア信号の位相が180度ずれている。従って、固体撮像素子101の画素アレイ部において順次走査で読み出された画素信号SXで考えると、行L1と行L3の輝度信号SY1の位相が180度ずれていると、輝度信号SY1の位相がカラーサブキャリア信号の位相と一致するようになる。このため、輝度信号SY1の周波数が3.579545MHz、かつ、行L1と行L3の輝度信号の位相が180度ずれている場合に、NTSC方式のカラーサブキャリア信号と輝度信号において周波数および位相が一致する。
【0036】
一方、行L1と行L3の輝度信号の位相が180度ずれている場合、隣接する画素との連続性を考慮すると、行L2の輝度信号SY1は行L1に対して位相が90度ずれていることが予想される。
【0037】
このため、図1のカラーサブキャリア成分検出回路105は、輝度信号SY1が図6および図7の状態、すなわち、行L1と行L2の輝度信号SY1の位相が90度ずれ、行L1と行L3の輝度信号SY1の位相が180度ずれている状態の時に、カラーサブキャリア成分検出信号の値が最大になるように動作する。
【0038】
すなわち、図3において、カラーサブキャリア成分検出回路105に入力された輝度信号SY1と、遅延器302によってカラーサブキャリア成分検出回路105に入力された輝度信号SY1を固体撮像素子101の画素アレイ部における1行分の読み出し時間に相当する時間だけ遅延させた信号と、遅延器302、304によってカラーサブキャリア成分検出回路105に入力された輝度信号SY1を固体撮像素子101の画素アレイ部における2行分の読み出し時間に相当する時間だけ遅延させた信号は、カラーサブキャリア周波数検出回路301、303、305にそれぞれ入力される。輝度信号SY1の周波数が3.579545MHz近傍の場合、カラーサブキャリア周波数検出回路301、303、305の出力値は大きくなる。単位遅延素子Z1〜Z5の遅延時間は単位画素の処理時間と同じとするので、輝度信号SY1の周波数が3.579545MHzの場合、単位遅延素子Z1〜Z5の遅延時間は輝度信号SY1の位相90度に相当する。
【0039】
このため、行L1の輝度信号SY1に対して行L2の輝度信号SY1の位相が90度だけ遅れ、行L1と行L3の輝度信号SY1の位相が180度ずれている状態の時に、カラーサブキャリア周波数検出回路301の出力信号と、カラーサブキャリア周波数検出回路303の出力信号を単位遅延素子1個分だけ遅延させた信号と、カラーサブキャリア周波数検出回路305の出力信号を単位遅延素子2個分だけ遅延させた信号を加算した信号の値は最大となる。
【0040】
同様に、行L1の輝度信号SY1に対して行L2の輝度信号SY1の位相が90度進み、行L1と行3Lの輝度信号の位相が180度ずれている状態の時に、カラーサブキャリア周波数検出回路301の出力信号を単位遅延素子2個分だけ遅延させた信号と、カラーサブキャリア周波数検出回路303の出力信号を単位遅延素子1個分だけ遅延させた信号と、カラーサブキャリア周波数検出回路305の出力信号を加算した信号の値は最大となる。
【0041】
ここで、順次走査方式の画素信号SXから生成された輝度信号SY1からカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出することにより、隣接する複数行の画素から得られる輝度信号SY1の相関を用いることができ、固体撮像素子101から飛び越し走査方式で画素信号SXを読み出した場合と比べて、輝度信号SY1に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度を向上させることができる。
【0042】
また、隣接する複数行の画素から得られる輝度信号SY1の位相差を利用することにより、NTSC方式で規定されている飛び越し走査の2つの走査線におけるカラーサブキャリア信号の位相差は180度であるという特性を利用でき、周波数のみによる検出と比べて輝度信号SY1に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出精度を向上させることができる。
【0043】
図8は、図3のカラーサブキャリア成分除去回路106の概略構成を示すブロック図である。
図8において、カラーサブキャリア成分除去回路106には、減算器G1および乗算器M21、M22が設けられ、帯域阻止フィルタが構成されている。そして、この帯域阻止フィルタでは、輝度信号SY2に含まれるカラーサブキャリア成分検出信号SBの大きさに基づいて輝度信号SY2の減衰率が制御される。
【0044】
この時、乗算器M21の係数h(0)は、カラーサブキャリア成分検出信号SBに係数h(0)を乗じた値をKとした場合にKが0以上かつ1以下となるように決定する。
【0045】
そして、乗算器M22において輝度信号SY2に1−Kが乗じられ、カラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3が出力される。ここで、カラーサブキャリア成分検出信号SBの値が0の場合は、K=0となるので1−K=1となり、入力された輝度信号SY2がそのまま出力される。一方、カラーサブキャリア成分検出信号SBの値が大きい場合はKの値が大きくなるので、1−Kの値は小さくなる。1−Kの値が小さいと、カラーサブキャリア成分除去回路106から出力される輝度信号SY3の値は小さくなる。従って、輝度信号SY2の周波数がカラーサブキャリア周波数近傍の場合、カラーサブキャリア成分検出信号SBの値が大きくなるので輝度信号SY3の値が小さくなる。
【0046】
この時、カラーサブキャリア周波数3.579545MHz近傍の輝度信号SY3を色信号SC3として間違って処理しても、輝度信号SY3の値が小さいのでその値を色として処理すると、色の値が小さくなる。輝度信号SY3の周波数がカラーサブキャリア周波数近傍の場合、色が薄くなって輝度も下がるのでクロスカラーが軽減される。
【0047】
ここで、カラーサブキャリア成分除去回路106として図8の帯域阻止フィルタを用いることで、低域通過フィルタを用いた場合と比べて輝度信号SY2の高域成分を減衰させることなく、輝度信号SY2からカラーサブキャリア周波数成分を除去できる。
【0048】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る固体撮像装置に適用されるカラーサブキャリア成分除去回路の概略構成を示すブロック図である。
図9において、このカラーサブキャリア成分除去回路106には、図8の構成に加え、ローパスフィルタLP、乗算器M33および加算器A21が設けられている。ここで、ローパスフィルタLPの高域遮断周波数はカラーサブキャリア周波数3.579545MHzよりも十分低い周波数とすることができる。
【0049】
そして、この構成では、輝度信号SY2が乗算器M22およびローパスフィルタLPに入力され、加算器A21においてローパスフィルタLPからの出力に係数Kを乗じた値と輝度信号SY2に係数1−Kを乗じた値が加算され、カラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3が出力される。従って、係数Kにより輝度信号SY2とローパスフィルタLPからの出力の加算比率を変えることができ、カラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3に含まれるローパスフィルタLPからの出力の割合が変わる。
【0050】
カラーサブキャリア成分検出信号SBの値が大きい時は、係数Kの値が大きくなるのでカラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3におけるローパスフィルタLPからの出力の割合が大きくなる。この場合、図8のカラーサブキャリア成分除去回路106と比較して、輝度信号SY2の減衰量が大きいので、カラーサブキャリア成分の除去の効果が高い。
【0051】
ローパスフィルタLPからの出力のみの場合、3.579545MHzより周波数が高い成分がすべて減衰されるため、カラーサブキャリア成分だけでなく輝度信号SY2の高周波成分が大きく減衰する。一方、図9のカラーサブキャリア成分除去回路106の場合、カラーサブキャリア成分検出信号SBの値が小さい時、すなわち、輝度信号の周波数が3.579545MHz近傍でない場合はローパスフィルタLPからの出力を加算する割合が小さいため、カラーサブキャリア成分除去後の輝度信号SY3に3.579545MHzより高周波数の成分が十分残る。
【0052】
これにより、低域通過フィルタLPのみを用いた場合と比べて輝度信号SY2の高域成分を減衰させることなく、輝度信号SY2からカラーサブキャリア周波数成分を除去できる。帯域阻止フィルタのみを用いて輝度信号SY2のカラーサブキャリア周波数成分を大きく減衰させると、目標周波数周辺の減衰させたくない周波数成分も大きく減衰する。これに対して、輝度信号SY2に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の検出値が高い時のみローパスフィルタLPが有効に働くようにすることでカラーサブキャリア周波数成分を大きく減衰させることができ、カラーサブキャリア周波数成分の検出値が低い時は帯域阻止フィルタが有効に働くようにすることでカラーサブキャリア周波数以外の周波数成分があまり減衰しないようにできる。
【符号の説明】
【0053】
101 固体撮像素子、102 輝度・色差信号生成回路、103、104、302、304 遅延器、105 カラーサブキャリア成分検出回路、106 カラーサブキャリア成分除去回路、107 色信号生成回路、108 順次走査・飛び越し走査変換回路、109 同期信号生成回路、110 NTSC方式コンポジット映像信号生成回路、301、303、305 カラーサブキャリア周波数検出回路、306 位相差補正部、307 隣接行間信号加算部、Z1〜Z5、Z11〜Z22 単位遅延素子、A1〜A5、A11〜A13、A21 加算器、M0、M2、M4、M6、M8、M10、M12、M21〜M23 乗算器、G1 減算器、LP ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次走査方式で読み出される画素信号から輝度信号を生成する輝度信号生成回路と、
前記輝度信号生成回路にて生成された輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出するカラーサブキャリア成分検出回路と、
前記カラーサブキャリア成分検出回路にて検出されたカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を前記輝度信号から除去するカラーサブキャリア成分除去回路とを備えることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
順次走査方式で画素信号を読み出す固体撮像素子と、
前記画素信号から輝度信号および色差信号を生成する輝度・色差信号生成回路と、
前記輝度・色差信号生成回路にて生成された輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を検出するカラーサブキャリア成分検出回路と、
前記カラーサブキャリア成分検出回路にて検出されたカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分を前記輝度信号から除去するカラーサブキャリア成分除去回路と、
前記輝度・色差信号生成回路にて生成された色差信号から色信号を生成する色信号生成回路と、
前記カラーサブキャリア成分除去回路にてカラーサブキャリア周波数近傍の周波数成分が除去された順次走査方式の輝度信号と前記信号生成回路にて生成された色信号とを飛び越し走査方式の輝度信号と色信号に変換する順次走査・飛び越し走査変換回路と、
前記順次走査・飛び越し走査変換回路にて飛び越し走査方式に変換された輝度信号と色信号とを合成することにより、コンポジット映像信号を生成するコンポジット映像信号生成回路とを備えることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項3】
N個(Nは正の整数)の画素から得られる輝度信号の周波数が前記カラーサブキャリア周波数と一致することを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記カラーサブキャリア成分検出回路は、
前記輝度信号からカラーサブキャリア周波数成分を行ごとに検出するカラーサブキャリア周波数検出回路と、
前記カラーサブキャリア周波数検出回路にて検出されたカラーサブキャリア周波数成分の各行ごとの位相差を補正する位相差補正部と、
前記位相差補正部にて位相差が補正されたカラーサブキャリア周波数成分を隣接行間で加算する隣接行間信号加算部とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記カラーサブキャリア成分除去回路は、
前記輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の大きさに基づいて前記輝度信号の減衰率を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記カラーサブキャリア成分除去回路は、
前記輝度信号に含まれるカラーサブキャリア周波数成分の大きさに基づいて、前記輝度信号の減衰率を制御するとともに、前記カラーサブキャリア周波数成分よりも低域部分の輝度信号の通過量を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の固体撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−130143(P2011−130143A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286062(P2009−286062)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】