説明

固体状態のモンテルカスト

化学式1:の化合物の固体形態が提供される。そのものを含む溶液から沈殿させることによって、化学式Iの化合物を固体状態で得ることができる。この化合物はロイコトリエン拮抗薬として有用であり、薬学的に許容され得る賦形剤をも含む医薬組成物に製剤化することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状態のモンテルカスト、それを含む医薬組成物に関し、ならびにその製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モンテルカスト、化学的には[R−(E)]−1−[[[1−[3−[2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル〕フェニル]−3[2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル〕プロピル〕チオ〕メチル〕シクロプロパン酢酸は、次の化学式(1)
【化1】

の構造を有する。
【0003】
モンテルカストモノナトリウム塩(モンテルカストナトリウム)は、喘息の治療に広く用いられている。経口用錠剤、チュアブル錠および顆粒の形態で、SINGULAIR(登録商標)(Merck社)の商標名で市販されている。モンテルカストナトリウムの構造は、化学式(2)
【化2】

に該当する。式中、M+はナトリウムカチオンを表す。モンテルカストナトリウムは吸湿性の白色〜オフホワイトの粉末であって、エタノール、メタノールおよび水に自由に溶解し、アセトニトリルには実質的に不溶である。
【0004】
モンテルカストおよび関連化合物に関するいくつかの特許はあるが、酸である固体のモンテルカストの単離、結晶化または沈殿について示す特許はなく、モンテルカストの塩が固体状態で得られることが示されているに過ぎない。例えば、BELLEY et al.による米国特許第5,565,473号(対応するEP 0 480 717号も参照すること)には、モンテルカストおよびその塩を含有する薬学的に有用な化合物の一種が開示されている。BELLEY et al.の実施例161は、モンテルカストの遊離酸を経由してナトリウム塩を作製することを主張している。しかしながら、遊離酸の形成も塩の形成も詳細には示されていない。その代わりに、合成の残留物について実施例146の10〜12工程の手順に従って実施することが記載されている。実施例146に従えば、(類似の)酸が溶解して精製したり、または固体で単離されることはなく、その酸は油の形状および/または溶液で残ったままである。そのナトリウム塩のみが、固体状態で単離される。従って、BELLEY et al.は、固体状態のモンテルカストを得ることを示してはいない。
【0005】
同様に、WO 95/18107号には、特にモンテルカストおよびその塩を調製する方法が開示されているが、固体状態で単離されたモンテルカスト、すなわち遊離酸は開示されていない。その代わりに、好ましい実施形態および実施例7に従えば、モンテルカストは容易に単離可能な結晶性ジシクロヘキシルアミン塩にインサイチュで変換され、次いでナトリウム塩に変換される。WO 95/18107号に従えば、このことによって、モンテルカストの精製および結晶性モンテルカストナトリウムの調製のための単純で効果的な方法が提供される。
【0006】
類似の開示は、KING et al.による米国特許第5,523,477号に見出される。実施例2では、モンテルカストを生成させ、ジシクロヘキシルアミン塩へ変換し、次いでそれを沈殿させることが示されている。実施例3では、固体のジシクロヘキシルアミン塩をトルエンに溶解させ、酢酸を添加して遊離酸を再生成させることによって、モンテルカストのジシクロヘキシルアミン塩をモンテルカストナトリウムに変換することが示されている。次いで、その酸(モンテルカスト)を含む有機層にNaOHを添加する。固体状態のモンテルカストが生成することについては報告されていない。
【0007】
公知のモンテルカストナトリウムは固体状態で単離可能ではあるが、種々の不都合を被っている。これは吸湿性であり、最大で3等量の水を容易に吸収する。ある程度の時間が経過した後に沈殿物が形成されうるほど、これは水溶液中でも安定ではない。このような溶液においては、これは界面活性であり、すなわちその挙動が石けんと似ており、このことは、錠剤を製造するための造粒方法において問題を生じさせる可能性がある。固体の形態で容易に得ることができるモンテルカストの薬学的に活性な型を有することが望ましく、公知のモンテルカストナトリウムを凌ぐいくつかの改良点を有することが好ましい。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、モンテルカスト(すなわち化学式(1)の化合物)を、固体の形態;例えば結晶の形態または非晶質の形態で単離できるという驚くべき発見を含む。従って、本発明の第一の態様は、化学式1:
【化3】

の化合物の固体形態に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、化学式1に記載の固体化合物と、少なくとも一つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物に関する。特に、このような組成物は固体組成物であり、好ましい態様においては、この組成物は経口投与に適合する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、化学式1の固体化合物のロイコトリエン拮抗薬の有効量を、それが必要な患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、溶媒中の化学式1:
【化4】

の化合物の溶液を供給する工程、およびこの溶液から化学式1の化合物を沈殿させて、この化合物を含む固体沈殿物を形成させる工程を含む方法に関する。この溶媒は、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、ハロゲン化炭化水素、有機酸、水およびこれらの組み合わせから選択してもよい。
【0012】
本発明のさらなる態様は、モンテルカストを溶液中で合成する工程;モンテルカストを沈殿させて固体のモンテルカストを得る工程;溶媒中にモンテルカストを溶解および/または分散させる工程;モンテルカストをモンテルカストのナトリウム塩に変換する工程;およびモンテルカストのナトリウム塩を固体形態で単離する工程を含む方法に関する。本方法は、とりわけ、精製モンテルカストナトリウムを得ることにとって有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、モンテルカストを固体状態または固体形態で単離することができるという驚くべき発見に関する。さらに、固体のモンテルカストは好都合な特性を有し、モンテルカストナトリウムと比較して顕著に低減された吸湿性を有する。
【0014】
モンテルカストの固体の形態、すなわち化学式(1)
【化5】

で表される化合物は、モンテルカストのあらゆる固体状態または固体形態であり得、具体的には、結晶の形態および非晶質の形態を含む。この固体形態は、結晶の形態の混合物、非晶質の形態と結晶の形態との混合物などの固体形態の混合物でもよい。さらに、固体のモンテルカストは、水和物を含む溶媒和物、または無水物であり得る。固体のモンテルカストは無水物が好ましい。本発明の目的のためには、無水物は少量の水を有することができるが、典型的には0.5質量%以下である。典型的な固体のモンテルカストの色は、黄色〜淡黄色であり、このことは、モンテルカストナトリウムの色のオフホワイトとは対照的である。
【0015】
いくつかの実施形態においては、固体のモンテルカストは実質的に純粋である;すなわち、実質的に不純物が無い。この点に関して、固体のモンテルカストは、少なくとも約90質量%であることが好ましく、少なくとも95質量%であることがより好ましく、少なくとも97質量%、98質量%または少なくとも99質量%であることがさらに好ましい。薬学的に活性な物質としては、固体のモンテルカストは例えば化学式(1)の化合物の純度が少なくとも99.5質量%、または少なくとも99.9質量%という高純度であることが好ましい。これに応じて、不純物のレベルは、約10質量%未満、5質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、または0.1質量%未満であってもよい。
【0016】
固体のモンテルカストは、モンテルカストのナトリウム塩などのモンテルカスト塩を本質的に含まないものが好ましい。具体的には、固体のモンテルカストは、いずれか一種(または複数種)のモンテルカスト塩を約10質量%未満有するものが好ましく、5質量%未満有するものがより好ましく、1質量%未満有するものがさらに好ましく、そして0.1質量%未満有するものが特に好ましい。同様に、固体のモンテルカストは、固体のモンテルカストの作製時に用いられた溶媒などの溶媒残留物を実質的に含まないものが好ましい。溶媒残留物の含有量は、約10質量%未満であってよく、2質量%未満が好ましく、1質量%未満、0.5質量%未満または0.1質量%未満が特に好ましい。
【0017】
固体のモンテルカストは結晶でもよい。148℃〜158℃の範囲内、すなわち148℃〜158℃の温度またはその範囲内の温度範囲で融解することを示す結晶の形態が好ましい。150℃〜158℃の範囲内、好ましくは152℃〜158℃の範囲内、そしていくつかの実施形態においては約156℃〜158℃の範囲内、特に約156℃または約157℃であって、それぞれ+/−0.5℃である一点以上の温度において、5℃/分での示差走査熱量測定(DSC)分析下で融解による吸熱ピークを示す結晶性モンテルカストが好ましい。融点または融解範囲およびDSCピークは、結晶の形態の違いすなわち多形体、結合した溶媒の違い、すなわち仮像、ならびに不純物のタイプおよび量に基づいて変化してもよい。好ましい結晶性モンテルカストの一例では、図1に示されるようなDSC曲線、および/または図2に示されるようなIRスペクトルおよび/または図3に示されるようなX線粉末回折パターンが見られる。
【0018】
固体のモンテルカストは、部分的に非晶質なものを含む非晶質でもよい。一般的に、非晶質の形態を含むモンテルカストの固体形態は、約60℃〜160℃の範囲内で融解し、典型的には、60℃〜100℃の範囲内の温度で融解し始める。非晶質モンテルカストは、一般的に結晶性モンテルカストよりも水溶性であり、このことは、即時放出性の経口用の剤形などにおいて有利となり得る。非晶質モンテルカストはまた、錠剤に形成し易く、有利な溶解特性を有する固形剤形として供給することができる。
【0019】
本発明は、モンテルカストの固体形態を製造する方法の発見も含む。一般的に、本方法は、溶媒に溶解した化学式1:
【化6】

の化合物を含む溶液を供給する工程;および
その溶液から化学式1の化合物を沈殿させてこの化合物を含む固体沈殿物を形成させる工程を含む。この溶媒は、芳香族炭化水素(トルエン、ベンゼンなど)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン(アセトンなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタンなど)、有機酸(酢酸など)、水およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。アルコール、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、および典型的な有機酸は、1〜12の炭素原子、好ましくは1〜8の炭素原子を有する一方、典型的な芳香族化合物は、6〜20の炭素原子を含む。この溶媒は一種類でもよく、または二種類以上の組み合わせ、すなわち溶媒系でもよい。好ましい溶媒はトルエンである。
【0020】
モンテルカストを含む溶液を「供給する工程」は、たとえ一時的であってもモンテルカスト溶液を生じさせる任意の一工程または複数の工程の組み合わせによって達成することができる。例えば、モンテルカストまたはモンテルカストを含む生成物を溶媒に単に溶解させることによって、モンテルカスト溶液を供給することができる。あるいは、化学合成によって、溶媒中のインサイチュでモンテルカストを形成させることによって、モンテルカスト溶液を供給することができる。合成することには、このことは下記に詳細に検討されているが、モンテルカスト塩の中和、およびモンテルカスト分子の有機合成の完了などのような反応が含まれる。限定されるわけではないが、BELLEY et alおよびKING et alに記載のそれらの有機合成を含む任意の適切な方法によってモンテルカスト分子を調製することができる。従って、「供給する」工程を満たすものとして、溶媒に溶解したモンテルカストを生じさせる任意の方法が意図される。
【0021】
溶解したモンテルカストを、モンテルカストを含む沈殿物を生産するための任意の適切な手段または技術によってその溶液から沈殿させる。沈殿物は非晶質でも、部分的に非晶質でもまたは結晶性でもよい。供給工程および沈殿工程が重複した方式で同時になされてもよく、またはモンテルカスト溶液を供給する工程とモンテルカストを沈殿させる工程との間に有意な時間の経過を伴った、すなわちこれらの工程の間に貯蔵期間を伴った逐次的な方式でもよい。このような全ての可能性が、本発明の範囲内のものとして意図される。従って、溶液に用いられる溶媒、溶液の温度および/またはモンテルカストの濃度などに基づいて沈殿が自発的に生じてもよく、または、例えば、溶媒の温度を低下させたり、溶液の体積を減少させたり、種結晶を添加することなどによって、沈殿を誘導してもよい。いくつかの実施形態においては、沈殿工程において自発的な沈殿および誘導された沈殿の両方を実施することに注意すべきである。さらに、沈殿の開始または収量の改善のために、反溶媒(モンテルカストがほとんど溶解しない溶媒)を添加して、沈殿を支援および/または誘導してもよく、該反溶媒は、沈殿開始の前、中または後に添加されることができる。沈殿工程は、時間の点に関して特に制限されるわけではないが、一般的には直後〜数時間の範囲であり、通常は6時間以下である。
【0022】
一般的に、沈殿工程の間の温度に制限はなく、典型的には0℃〜溶媒の還流温度未満の範囲である。沈殿工程の間、その温度を一定に維持する必要はない。いくつかの実施形態においては、通常、モンテルカスト溶液の供給と同時に、その溶液を大気温度より高い、例えば25℃より高い、好ましくは40℃より高い温度からその溶媒の還流温度まで加熱して、次いで冷却する。冷却中に沈殿が始まる。高温で沈殿させることによって、しばしば、より簡単にろ過できるより大きな沈殿物を得ることができる。
【0023】
沈殿後、任意で乾燥を伴うろ過を含む従来の手段によって、通常は固体のモンテルカストをその溶液または溶媒から分離する。このやり方において、乾燥した固体のモンテルカスト成分が得られる。
【0024】
上記のように、中和反応は溶液にモンテルカストを供給するための好都合のやり方である。中和の方法には、Mがカチオンである化学式(2)の化合物のようなモンテルカストの塩と酸とを反応させて化学式(1)のモンテルカストを得ることが含まれる。無機塩基および有機塩基を含む塩基から、モンテルカストの塩を調製することができる。無機塩基に由来する塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が挙げられる。毒性の無い有機塩基に由来する塩としては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、天然に由来する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン(ジシクロヘキシルアミンなど)、およびアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩基性イオン交換樹脂などが挙げられる。従って、化学式(2)におけるMは、上記の任意の塩基に対応するカチオンであってもよい。
【0025】
この方法において用いられる酸は有機酸でもまたは無機酸でもよく、酢酸が好ましい。中和反応の完了は、例えばpHを測定することによってモニタリングしてもよい。中和の完了時において、そのpHは約3〜7の範囲でよく、例えば4.5〜6.0である。
【0026】
単相系または多相系において中和反応を実施することができる。単相系では、得られたモンテルカストが好ましくはそこにやや溶け難いだけであり、従って容易に沈殿し残りの液体から分離できる単一の溶媒または相互に混和可能な溶媒の混合物が含まれる。出発物質たるモンテルカスト塩と中和用の酸とが、少なくとも温度が上昇した時点でその溶媒系に溶解するような溶媒系を選択することができるが、このことは必須ではない。
【0027】
溶媒系は多相、例えば二相であってもよい。例えば、本質的に水相である第一の相において中和反応が進行してもよく、そして反応生成物を、第一の相とは混和しない第二の相内に抽出してもよい。その一方、試薬および塩の副産物の残りは第一の相に留まったままである。これらの相を分離した後、基本的には上記のように、第二の相における溶液からモンテルカストが沈殿する。追加の相を用いて生成物の純度を改善してもよい。
【0028】
この点に関して、溶媒系は不純物を溶解していてもよい。例えば、溶媒系は反応の副産物、すなわち中和用の酸とモンテルカスト塩のカチオンとの塩を溶解していてもよく、したがってモンテルカストの沈殿物にはこの副産物が無い。なおさらに溶媒は、副生成物および出発物質たるモンテルカスト塩に一般的に存在する着色した不純物を溶解していてもよい。
【0029】
別の態様においては、モンテルカスト塩は溶媒系の一部に溶解または懸濁していてもよく、中和用の酸の溶液または懸濁液が溶媒系の他の一部であってもよい。例えば、反応が完了するまで、モンテルカスト塩を分割して溶媒系に添加してもよい。溶媒系の両方の部分の組成は、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
固体のモンテルカストを形成する方法は、精製技術としても有用である。有機合成溶液内で形成された未精製のモンテルカストを沈殿させて、不要な副産物および/または反応物をモンテルカストから除去することができる。あるいは、既に沈殿したモンテルカスト塩のまさにそのものを、本発明の方法、すなわち中和方法を介してモンテルカストをさらに精製してもよい。モンテルカストを沈殿させるために用いられる溶媒および沈殿の条件は、そのモンテルカスト塩を沈殿させるために用いられる溶媒および沈殿の条件と異なることが非常に多く、従って、モンテルカストとして沈殿させることによって、種々の不純物および/または種々の割合の不純物を除去することが可能となることに留意すべきである。単相系および多相系を含む上記のあらゆる沈殿条件を用いることができる。一旦固体のモンテルカストが形成されれば、溶媒中に溶解および/または分散させることができ、塩基と反応させることによって塩、特にナトリウム塩に変換することができる。この方法においては、固体のモンテルカストを、モンテルカスト塩の精製および/または単離方法における中間体として用いる。このような塩、特にナトリウム塩は医薬の製造に有用となり得、従って、高い純度が必要である。精製に用いられる好ましい溶媒はトルエンである。
【0031】
本発明の方法によって、固体の微結晶性モンテルカストの生産も可能となる。例えば、温度の管理、溶媒の性質、溶液の濃度などによって、沈殿した生成物の粒子サイズをコントロールされうる。さらに、超音波槽内で沈殿または結晶化を行うことによって、微結晶性生成物を形成されうる。あるいは、当分野において公知の微小化装置で微小化し、任意で篩い分けを組み合わせることによって、所望の粒子サイズのモンテルカストを得てもよい。
【0032】
得られた本発明の固体モンテルカストは、200ミクロン未満、例えば100ミクロン未満または63のミクロン未満の平均粒子サイズを有していてもよい。例えば、全ての結晶が63ミクロン未満でもよい。
【0033】
沈殿物は通常は結晶であるが、非晶質または部分的な結晶もあり得る。必要であれば、固体の非晶質モンテルカストを、その融解物または溶液からの(再)結晶化または(再)沈殿によって結晶の形態に変換することができる。結晶性モンテルカストの型は一般的に安定であり、非晶形に変換しない。しかしながら、適切な溶媒に結晶性モンテルカストを懸濁させることによって、いくらかの結晶性モンテルカストが非晶形に変換することはあり得る。
【0034】
モンテルカストを種々の医薬組成物に製剤化してもよい。医薬組成物は、本発明の固体状態のモンテルカストの有効成分としてのロイコトリエン拮抗薬の有効量と、少なくとも一つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含んでもよい。固体状態のモンテルカストは結晶または非晶質であり得る。例えば、適切な医薬組成物は、単数(または複数)の薬学的に許容され得る賦形剤と混合した微結晶性モンテルカストを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、非晶質モンテルカストは結晶性モンテルカストよりも水溶性が極めて高いので、有利であり得る。
【0035】
当分野において公知の薬学的に許容され得る賦形剤としては、担体、希釈剤、フィラー、バインダー、潤滑剤、崩壊剤、流動促進剤、染料、顔料、テイストマスキング剤、甘味料、香料、可塑剤ならびに吸着促進剤、浸透促進剤、界面活性剤、共力剤および専用の油などの許容され得るあらゆる補助剤が挙げられる。適切な単数(または複数)の賦形剤は、ある程度は剤形、意図する投与方法、意図する放出速度および製造の信頼性に基づいて選択される。賦形剤の一般的なタイプの例としては、種々のポリマー、ワックス、リン酸カルシウム、糖などが挙げられる。ポリマーとしては、セルロースおよびHPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ならびに、例えばCarbopol(登録商標)(B.F.Goodrich社)、Eudragit(登録商標)(Rohm社)といったポリアクリル酸のコポリマーおよびポリアクリル酸の架橋化ポリマーを含むポリアクリル酸;ポリカルボフィル;ならびにキトサンのポリマーが挙げられる。ワックスとしては、白蝋、微結晶性ワックス、カルナウバワックス、硬化ヒマシ油、ベヘン酸グリセリル、パルミチン酸ステアリン酸グリセリルおよび飽和ポリグリコール化グリセラートが挙げられる。リン酸カルシウムとしては、第二リン酸カルシウム、無水第二リン酸カルシウムおよび第三リン酸カルシウムが挙げられる。糖としては、ラクトース、マルトース、マンニトール、フルクトース、ソルビトール、ショ糖、キシリトール、イソマルトースおよびグルコースなどの単糖、ならびにマルトデキストリン、アミロデキストリン、デンプンおよび加工デンプンなどの複数の糖(多糖)が挙げられる。
【0036】
固体のモンテルカストを、非経口投与、経口投与、直腸投与(坐薬など)、経皮投与(経皮パッチなど)などのための組成物に製剤化してもよい。経口投与のための組成物は、固体でも液体でもよく、例えば、経口用の溶液、経口用のカプセルまたは経口用の錠剤の形態でもよい。好ましくは、固体のモンテルカストは固形剤形に、特に経口用の固形剤形または任意で発射ガスを伴う吸入可能な固形剤形に製剤化される。
【0037】
経口投与のための固体組成物は、その組成物から有効物質を即時に放出する性質または改変および/または延長して放出する性質を発揮してもよい。固体のモンテルカストを含む医薬組成物を、例えば、通常の即時放出性の錠剤または口腔内で急激に崩壊し得る錠剤として製剤化してもよい。例えば、口腔内で崩壊する剤形は、「Orally Disintegrating Tablets」という名称で2004年4月15日に出願された米国出願第10/824,619号に開示されているような、ケイ化微結晶性セルロースを少なくとも50%含んでもよい。このケイ化微結晶性セルロースは、米国特許第5,585,115号に記載されているような、コロイド状の二酸化ケイ素と微結晶性セルロースとの緊密な物理的混合物であることが好ましい。二酸化ケイ素の量は通常は、0.1〜20質量%の範囲内であり、より典型的には1.25〜5質量%、例えば約2質量%である。驚くべきことに、このような賦形剤が口腔内で崩壊する錠剤の基質を形成することができる;すなわち、この錠剤は、口腔内で80秒以内に、好ましくは2〜50秒で崩壊する。ケイ化微結晶性セルロースの量は、錠剤の質量を基づいて50%〜90%が好ましく、60%〜80%がより好ましい。その他の例としては、固体のモンテルカストを、WINTERBORNによる米国特許第6,063,802号に記載されているものと類似の、急激に崩壊可能な錠剤に製剤化してもよく、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、固体のモンテルカストを投与するために、チュアブル錠も経口用錠剤として検討される。
【0038】
任意の標準的な打錠技術、例えば湿式造粒、乾式造粒、溶融造粒または直接圧縮によって、固体のモンテルカストを含む錠剤を生産してもよい。一般的に、溶媒を用いない打錠方法(「乾式方法」)が好ましい。
【0039】
乾式造粒の方法は、典型的には(潤滑剤以外の)固体の賦形剤を混合する工程、その混合物を圧縮機(ローラー型圧縮機など)で圧縮する工程、圧縮された塊を粉砕する工程、粉砕された顆粒を篩い分ける工程、潤滑剤と混合する工程、およびその混合物を錠剤に圧搾する工程を含む。
【0040】
直接圧縮法は一般的には、固体の賦形剤を混合する工程、および均一の混合物を錠剤に圧搾する工程を含む。
【0041】
溶融造粒、すなわち温度を上昇することで溶融する、機能的な賦形剤(ベヘン酸グリセリルなど)と混合し、適切な装置で造粒される、造粒可能な溶融を形成することによって、モンテルカストを製剤化してもよい。
【0042】
錠剤におけるモンテルカストの相対量は、1〜10質量%、例えば2〜5質量%の範囲でよい。
【0043】
モンテルカストを混合して、公知のペレット化技術によってペレットに製剤化するのに適した組成物としてもよい。単回投与量のモンテルカストを含む複数のモンテルカストのペレットを、硬ゼラチンなどの薬学的に許容され得る成分から作られたカプセルに入れて、カプセルとする。別の方式としては、複数のペレットを適切なバインダーおよび崩壊剤と共に圧縮して、摂取時に崩壊してペレットを放出する崩壊可能な錠剤としてもよい。さらに別の方式としては、複数のペレットを一つの袋に満たしてもよい。
【0044】
モンテルカストを含む即時放出性の経口用固体組成物は、次の放出特性を有する。Ph.Eurのパドル法によってノーマルベッセル内またはVan Kelのピークベッセル内で交互に0.01MのHClで50rpmにて測定した時、有効成分の80%を超える量が30分以内、好ましくは15分以内に放出される。
【0045】
錠剤またはペレットを適切なフィルムコートで被覆してもよい。このものは、フィルムコート(胃で溶解する)でも「腸溶コート」(胃で溶解しない)でもよい。あるいは、錠剤またはペレットは非被覆でもよい。
【0046】
モンテルカストを、分子の分散体として製剤化してもよい。このような場合においては、適切な溶媒中で、モンテルカストをポリビニルピロリドンなどの薬学的に許容され得る適切なポリマーと混合してもよく、この混合物を蒸発させて固体の分散体を形成させてもよい。このような分散体は、水性媒体において優れた溶解性と、経口投与後の良好なバイオアベイラビリティを有してもよい。
【0047】
モンテルカストは、呼吸用の、すなわち肺への輸送に適した吸入可能な乾燥粉末の剤形であってもよい。この吸入可能な粉末は、(i)吸入用の装置内でもしくは装置によって容易に分散される;および/または(ii)少なくとも一部が肺に到達して肺胞内に侵入できるように、被験体によって吸入されることが可能な固体(すなわち非溶液)粒子を含んでもよい。この吸入可能な粉末を、カプセル内または従来の吸入器のような高圧ガスと一緒に密閉容器内に封入してもよい。
【0048】
本発明の組成物から製剤化される医薬品の剤形は、最小投薬単位のモンテルカスト、すなわち単回投与の際の治療上有効量のモンテルカストを含んでもよい。最小投薬単位におけるモンテルカストベースの量は、0.1〜100mg、1〜50mgまたは1〜20mgの範囲でよく、典型的には1〜10mgであり、例えば1、2、4、5、8、10または20mgであってもよい。
【0049】
錠剤における最小投薬単位としては単一の錠剤を含んでもよいが、同時に投与される、分割された錠剤またはいくつかのより小さな錠剤(ミニタブレット)も含んでもよい。ミニタブレットの場合においては、いくつかのより小さな錠剤をゼラチンカプセル内に満たして、最小投薬単位を形成してもよい。カプセルにおけるペレットの最小投薬単位は、単一のカプセルを含んでもよい。注射溶液の最小投薬単位は単一のバイアルでよい。経口投与のための溶液を複数回投与用のパッケージに梱包してもよく、基準化された容器内に最小投薬単位が梱包される。
【0050】
モンテルカストは、ロイコトリエンの作用に拮抗することができる。従って、例えばヒトの被験体においてロイコトリエンによって誘導される症状の予防または無効化に有用である。ロイコトリエンの作用についてのこの拮抗効果は、モンテルカストが哺乳動物特にヒトにおける以下のことを治療、予防または改善することに有用であることを示す。(1)喘息、慢性気管支炎および関連する閉塞性気道疾患を含む肺の疾患;(2)アレルギー性鼻炎、接触性皮膚炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギーおよびアレルギー反応;(3)関節炎または炎症性腸疾患などの炎症;(4)痛み;(5)乾癬、アトピー性湿疹などの皮膚疾患;(6)狭心症、心筋虚血、高血圧、血小板凝集などの心臓血管疾患;(7)免疫的要因または化学的要因(シクロスポリン)によって引き起こされる虚血に起因する腎不全;(8)片頭痛または群発性頭痛;(9)ブドウ膜炎などの眼の状態;(10)化学的刺激、免疫的刺激または感染による刺激の結果としての肝炎;(11)やけど、内毒素血症などのトラウマまたはショック状態;(12)同種移植の拒絶反応;(13)インターロイキンIIおよび腫瘍壊死因子などのサイトカインの治療的投与に付随する副作用の予防;(14)嚢胞性線維症、気管支炎およびその他の細い気道および太い気道疾患などの慢性肺疾患;ならびに(15)胆嚢炎。
【0051】
従って、モンテルカストを用いて、糜爛性胃炎;糜爛性食道炎;下痢;てんかん;早産;自然流産;月経困難症;虚血;有毒物質誘発性肝組織、膵臓組織、腎臓組織または心筋組織の障害または壊死;CCl4およびD−ガラクトサミンなどの肝毒物質により生じる肝実質の障害;虚血性腎不全;疾患誘発性肝障害;胆汁酸塩誘発性膵臓または胃の障害;トラウマまたはストレス誘発性細胞障害;ならびにグリセロール誘発腎不全などの哺乳動物(特にヒト)の病気の状態の治療または予防を行ってもよい。モンテルカストは、細胞保護作用も発揮する。
【0052】
胃腸粘膜の、強力な刺激物の不健全な影響、例えばアスピリンまたはインドメタシンなどの影響に対する抵抗性が上昇することを記録することによって、動物およびヒトの両方において、モンテルカストの細胞保護活性が観察され得る。非ステロイド性の抗炎症剤が消化管に与える影響を減少させることに加えて、動物の研究から、細胞保護化合物が、強酸、強塩基、エタノール、高張食塩水などの経口投与によって生じる胃の病変を予防することが示される。
【0053】
モンテルカストに加えて、本発明の医薬組成物はその他の有効成分、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAID)、BELLEY et al.による米国特許第5,565,473号に開示されているようなゾメピラックジフルニサルなどの末梢性の鎮痛剤などを含むことができ、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
次の非制限的な実施例によって、本発明をより具体的に記述し説明する。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
モンテルカストナトリウムの結晶性モンテルカスト酸への変換
モンテルカストナトリウム(0.5g)を、10mLの水および10mLのトルエンを含む二相系に溶解させた。充分に撹拌した溶液に、1.2mLの1M酢酸を室温で滴下した。10分後に撹拌を停止し、この混合物を分離用漏斗内に移した。水層を除去し、黄色の有機相を10mLの水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固させた。
【0056】
収量は約300mgの淡黄色の固体であった。1H−NMRによって、この生成物がモンテルカスト酸であることが決定された。この生成物の融解範囲が、148〜153℃であることが決定された。この生成物は、IRでも分析された。DSCは、開始:150.7℃;ピーク:153.6℃;および−74.6Jg-1を示した。カールフィッシャー装置を用いることによって、水分含有量が0.18質量%であることを決定した。これらの結果から、この生成物が結晶性モンテルカスト酸であることが示される。
【0057】
[実施例2]
モンテルカストナトリウムのモンテルカスト酸への変換
次のスキームによって、モンテルカストナトリウムをモンテルカストに変換した:
【化7】

【0058】
この方法は、下記の表1に示されるような成分を伴う。
【0059】
【表1】

【0060】
特に、3.0gのモンテルカストナトリウムを45mLの水に溶解させた。5分間撹拌した後、40mLのトルエンを添加した。充分に撹拌した溶液に、7.4mLの1M酢酸を室温で滴下した。15分後、撹拌を停止し、混合物を分離用漏斗内に移した。水層を除去した。いくらかの沈殿した酸を溶解させるために、黄色の有機相に20mLの酢酸エチルを添加した。50mLの水で有機相を洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固させて、極めて濃い黄色の「泡状の」固体を得た。この成分を真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。
【0061】
この生成物は、次のような融解範囲を有した:60℃:融解開始;70℃:成分の(部分的な)融解;103℃:再結晶の開始;125℃:融解開始;153℃:成分の完全な融解。この生成物をはIRでも分析された。この生成物は次のようなDSCを有した:60℃を超える温度での発熱開始(広いピーク)、次いで吸熱開始:142.0℃;ピーク:148.3℃;−31.3Jg-1。融解範囲およびDSCデータから、この生成物が非晶質成分であったことが示される。
【0062】
[実施例3]
非晶質モンテルカストの結晶性モンテルカストへの変換
DSCのカップを、実施例2の(部分的に)非晶質な成分のいくらかで満たし、120℃で1時間加熱した。IR分析から、この生成物が結晶性モンテルカスト酸(淡黄色の固体)であることが示された。
【0063】
[実施例4]
非晶質モンテルカストの結晶性モンテルカストへの変換
100mLのフラスコに、実施例2の(部分的に)非晶質な成分の一部を添加した。トルエン(35mL)を添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、この固体成分をろ過し、真空下、40℃で一晩かけて乾燥させて淡黄色の固体を得た。この生成物の融解範囲が152〜155℃であることを決定した。DSC分析から、この生成物が結晶性モンテルカスト酸であることが示された。
【0064】
[実施例5A]
モンテルカスト酸の吸湿性
実施例2からのモンテルカスト酸(50mg)を一晩空気に晒した。次いで、カールフィッシャー装置を用いて、水分含有量が0.07質量%であることが決定された。
【0065】
[実施例5B]
モンテルカスト酸の吸湿性
実施例2からのモンテルカスト酸(50mg)を2日間、40℃、75%の相対湿度で貯蔵した。次いで、カールフィッシャー装置を用いて、水分含有量が0.27質量%であることが決定された。
【0066】
[実施例6]
モンテルカストナトリウムのモンテルカスト酸への変換
次のスキームによって、モンテルカストナトリウムをモンテルカストに変換した:
【化8】

【0067】
この方法は、下記の表2に示されるような成分を伴っていた。
【0068】
【表2】

【0069】
特に、5gのモンテルカストナトリウムを100mlの水に溶解させた。この溶液に、12.33mlの1M酢酸を室温で滴下した。その懸濁液を20分間撹拌した。この酸をろ過し、水で洗浄した。得られた淡黄色の固体を、真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。
【0070】
収量は4.6gであった。この成分の融解範囲は、約90℃で融解する出発物よりもわずかに広いものであった。
【0071】
[実施例7]
モンテルカスト酸の変換
実施例6の固体生成物をトルエン中で3時間撹拌し、ろ過して、真空下40℃で一晩かけて乾燥させた。得られた結晶性生成物は、150.5〜154.8℃の融解範囲を有した。
【0072】
[実施例8]
モンテルカストナトリウムの低濃度水溶液からのモンテルカスト酸の沈殿
モンテルカストナトリウム(200mg)を60mlの水に溶解させ、室温で一晩撹拌して、いくらかの沈殿物を伴う白色の石鹸の泡状の溶液を得た。この混合物を第一のろ過に供して、少量の黄色の固体成分を単離し、真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。黄色の固体のDSC分析から、これは結晶性モンテルカスト酸ではないことが示された。
【0073】
最初のろ過からのろ液を一晩室温に維持した。次いで、第二のろ過に供し、極少量の黄色の固体成分を単離し、そして真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。この黄色の固体のDSC分析から、これは結晶性モンテルカスト酸ではないことが示された。
【0074】
[実施例9]
モンテルカストナトリウムのモンテルカスト酸への変換
モンテルカストナトリウム(3g)を、50mLの水に溶解させた。この溶液に、7.4mLの1M酢酸を室温で滴下した。得られた黄色の懸濁液を20分間撹拌した。この酸をろ過し、水で洗浄した。得られた黄色の固体を、真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。
【0075】
収量は2.8gであった。1H−NMRによって、この生成物がモンテルカスト酸であることが決定された。この生成物は、66℃で既に融解し始め、そして225℃で完全に融解するという、広い融解範囲を有した。この生成物のTGAから、質量の損失が無かったことが示された。この生成物をIRおよびDSCによっても分析した。この生成物が非晶質モンテルカスト酸であることを決定した。
【0076】
[実施例10]
イソプロパノール中の塩化水素酸によるモンテルカストナトリウムの処理
モンテルカストナトリウム(200mg)を40mLのイソプロパノールに溶解させた。この溶液に、イソプロパノール中の5〜6Nの塩化水素酸の0.24mLを室温で滴下した。透明溶液の色が無色から極めて濃い黄色に変化し、そしてこの反応は発熱性であった。10分後、沈殿物が生成した。45分間の撹拌の後、この懸濁液をろ過し、そして残留物をイソプロパノールで洗浄した。得られた濃黄色の固体を、真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。
【0077】
黄色の固体をIR、DSCおよびTGAで分析した。成分の一部がCDCl3に溶解しなかったので、この固体をNMRで分析することはできなかった。理論に拘束されることを望まないが、この黄色の固体は、モンテルカスト酸と(分子のキノリン部内の窒素との)HCl塩との混合物かもしれない。
【0078】
[実施例11〜20]
種々の溶媒からのモンテルカスト酸の再結晶
10個の20mLのフラスコを、実施例9からの100mg(0.17mmol)のモンテルカスト酸で満たした。この酸を溶媒に溶解させた。下記の表3に示される結果を伴っていた。
【0079】
次いで、4℃に維持された低温室にこのフラスコを貯蔵した。低温室で4日間貯蔵した後のフラスコの内容物を下記の表3に示した。
【0080】
【表3】

【0081】
低温室で貯蔵した後、実施例11、13、14、15および18の生成物をろ過して洗浄し、そしてこの固体を真空下、40℃で一晩かけて乾燥させた。収量は75〜85mgの範囲であった。
【0082】
実施例12、16、17、19および20の生成物を低温室で2週間以上貯蔵した後、これらの実施例の状態を下記の表4に示した:
【0083】
【表4】

【0084】
実施例11〜16、18および19のIRスペクトルは実質的に同一であった。
【0085】
DSCによって、実施例11〜16、18および19を分析した。下記の表5に要約された結果を伴っていた。実施例15のDSCは、そのメインピークの前に小さなピークを伴っていた。融解範囲およびカールフィッシャー装置によって決定されたような水分含有量も表5に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
[実施例21]
モンテルカストの遊離酸の錠剤、口腔内崩壊錠
【表6】

【0088】
[実施例22]
モンテルカストの遊離酸の錠剤、口腔内崩壊錠
【表7】

【0089】
[実施例23]
モンテルカストの遊離酸の錠剤、即時放出性の錠剤
【表8】

【0090】
上記の実施例21〜23においては、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウム)以外の全ての賦形剤を、ターブラーミキサーで15分間、25rpmにて混合した。潤滑剤を添加し、混合を5分間続けた。Korsch社のEK−0型打錠機で錠剤を調製した。
【0091】
[実施例24]
モンテルカストの遊離酸のカプセル
実施例23に記載の組成物をサイズ3のカプセルに充填することによって、カプセルを作製する。
【0092】
上記の特許および公開された特許出願のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。本発明の上記の観点から見れば、当業者にとっては、本発明の精神から逸脱することなく、多くの方法において本明細書に記載する態様を変更してもよいこと、およびこのような変更物が、次の請求の範囲に記載のような本発明の範囲に含まれることは、明らかに自明である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施例1で生成した結晶性モンテルカストのDSC曲線である。
【図2】実施例1で生成した結晶性モンテルカストのIRスペクトルである。
【図3】実施例1で生成した結晶性モンテルカストのX線粉末回折パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1:
【化1】

の化合物の固体形態。
【請求項2】
前記化合物が、結晶の形態である、請求項1に記載の固体化合物。
【請求項3】
前記結晶の形態が、148℃〜158℃の範囲内で融解することを示す、請求項1または2に記載の固体化合物。
【請求項4】
前記化合物が、非晶質である、請求項1のいずれかに記載の固体化合物。
【請求項5】
前記化合物が、10質量%未満の不純物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の固体化合物。
【請求項6】
前記化合物が、10質量%未満のその塩を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の固体化合物。
【請求項7】
前記化合物が、10質量%未満の溶媒を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の固体化合物。
【請求項8】
溶解した状態の前記化合物を含む溶液から化学式1の前記化合物を沈殿させることによって得ることができる、請求項1〜7のいずれかに記載の固体化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の前記固体化合物および少なくとも一つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、1〜50mgの化学式1の前記化合物を含む固体の経口投与形態である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記固体の経口投与形態が、口腔内崩壊錠である、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記経口用の固形剤形が、カプセルである、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
任意で、少なくとも一つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む、吸入可能な粉末状態の請求項1〜8のいずれかに記載の前記固体化合物を含む医薬組成物であって、任意でカプセルまたは吸入器に封入される組成物。
【請求項14】
前記組成物が、経皮貼布である、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の前記固体化合物と薬学的に許容され得る賦形剤とを混合することによって、医薬組成物を形成する工程を含む方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかの固体化合物のロイコトリエン拮抗薬の有効量または請求項9〜14のいずれかの医薬組成物の有効量を、それが必要な患者に投与する工程を含む方法。
【請求項17】
溶媒中の化学式1:
【化2】

の化合物の溶液を供給する工程;および
前記溶液から化学式1の前記化合物を沈殿させて前記化合物を含む固体沈殿物を形成させる工程であって、前記溶媒が、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、有機酸、水およびこれらの組み合わせからなる群より選択される工程、を含むプロセス。
【請求項18】
芳香族炭化水素が、6〜20の炭素原子を含むトルエンおよびベンゼンなどであり、
アルコール、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素ならびに有機酸が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタンおよび酢酸などの1〜12の炭素原子、好ましくは1〜8の炭素原子を有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記供給工程が、化学式1の前記化合物を前記溶媒に溶解させる工程を含む、請求項17または18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記供給工程が、化学式1の前記化合物を前記溶媒中で合成する工程を含む、請求項17〜19のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
化学式1の前記化合物を合成する前記工程が、前記溶媒中で前記化合物の塩を中和する段階を含む、請求項17〜20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
前記中和段階が、前記溶媒中で、前記塩と酢酸とを反応させて化学式1の前記化合物を形成させる段階を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
化学式1の前記化合物を合成する前記工程が、前記化合物の有機合成を完了させる工程を含む、請求項19〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
前記沈殿工程が、コントラソルベントを前記溶液に添加する工程を含む、請求項17〜23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記溶液から前記固体沈殿物を単離する工程をさらに含む、請求項17〜24のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
薬剤として使用するための、請求項1〜8のいずれかの化合物の固体形態または請求項9〜14のいずれかの医薬組成物。
【請求項27】
モンテルカストを溶液中で合成する工程;
前記モンテルカストを沈殿させて固体のモンテルカストを得る工程;
溶媒中に前記モンテルカストを溶解および/または分散させる工程;
前記モンテルカストをモンテルカストのナトリウム塩に変換する工程;および
モンテルカストの前記ナトリウム塩を固体の形態で単離する工程、を含むプロセス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−508271(P2007−508271A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530147(P2006−530147)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011430
【国際公開番号】WO2005/040123
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500415715)シントン・ベスローテン・フェンノートシャップ (10)
【Fターム(参考)】