説明

固体酸化物燃料電池用の、ニッケルのフォームおよびフェルトを基材とするアノード

固体酸化物燃料電池は、ニッケルフォームまたはニッケルフェルト基材を含んでなる。セラミック材料、例えばイットリアで安定化させたジルコニア、等を基材の細孔中に導入する。得られるアノードは、優れた導電率、強度および低熱膨脹率特性を達成し、燃料電池中に含まれるニッケルの総量が効果的に低減される。本発明により、従来のアノード設計と同等以上の燃料電池アノード特性が得られ、同時に、使用するニッケルが大幅に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には固体酸化物燃料電池(「SOFC」)用の電極に、より詳しくは、固体酸化物燃料電池用のニッケルフォームまたはニッケルフェルトを基材とするアノードに関する。
【発明の背景】
【0002】
燃料電池はすべて、酸化体ガスと燃料ガスとの間のイオン化発生反応により、化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換する。燃料電池は、従来の電力供給源に対して環境的により好ましい代替エネルギー供給源と考えられ、益々有望な研究および議論の対象になっている。
【0003】
固体酸化物燃料電池は、高温(750℃〜1000℃)電気化学的装置であり、主として酸化物セラミックから製造される。SOFCは、水素または改質された炭化水素(一酸化炭素および水素)と酸素で作動することができる。対照的に、定温燃料電池(60℃〜85℃)(プロトン交換メンブラン燃料電池「PEMFC」)は、水素またはメタノールと酸素に限定される。
【0004】
SOFCは、ガス透過性固体セラミックアノード、ガス透過性固体セラミックカソード、およびアノードとカソードとの間に配置された固体電解質からなる。
【0005】
この電解質は、緻密なセラミック層−典型的にはイットリアで安定化させたジルコニア(「YSZ」)であり、電子絶縁体、酸素イオン伝導体、および燃料と酸素ガスの交差バリヤーとして機能する。
【0006】
カソードは、通常、高導電率を得るためにドーピングされた酸化物である。カソードは、典型的にはLaSrMnO粉末およびYSZ粉末を焼結させ、固体のガス透過性複合材料を形成することにより、製造される。
【0007】
アノードは、典型的にはニッケル粉末または酸化ニッケル粉末をYSZ粉末と焼結させることにより製造されたサーメットである。焼結および還元の後、最終的な形態は、約65体積%が固体である焼結された多孔質構造であり、その約35%がニッケルである。ニッケルおよびYSZは、電子およびイオンをそれぞれ輸送するための連続的な導電性網目を形成する。
【0008】
ニッケルは、良好な導電性、耐食性および強度をアノードに与えるので、好ましい。しかし、ニッケルのコストは、比較的低コストの卑金属であるが、ある種のSOFC設計にはファクターになる場合がある。
【0009】
設計に応じて、SOFCは、アノード支持、電解質支持またはカソード支持型でよい。これらの部品は、電池組立構造に機械的な支持を与える。
【0010】
カソードまたは電解質支持されたSOFCでは、これらのそれぞれの部品が比較的厚くなり、それによって、SOFCの効率を下げ、コストを引き上げる傾向がある。
【0011】
対照的に、アノード支持型のSOFCは、厚さ約0.5mm〜1mmのアノード、厚さ約5〜10μmの電解質および厚さ約50μmのカソードを有する。アノード支持型のSOFCは、性能がより優れており、構造がより堅牢であり、導電性(より低い抵抗損)および経済性がより高いので、好ましい電池であることが多い。
【0012】
効率の高いアノードは、多くのパラメータを必要とし、それらの幾つかは相反する目的に作用する。
【0013】
1)導電率を増加するために、追加のニッケルを必要とする。
【0014】
2)電解質中のYSZの熱膨脹率(「CTE」)を適合させるために、ニッケルを少なくする必要がある。
【0015】
3)高いガス透過性を達成するために、高い気孔率が必要である。
【0016】
4)アノード活性を高くする(すなわち、分極損失を最少に抑える)ために、高い気孔率が好ましい。
【0017】
高導電率は、対応して高いニッケル含有量および低い気孔率を必要とする。残念ながら、ニッケルは他の電池材料のほとんどよりも高いCTEを有する。したがって、ニッケル含有量を高くすると、CTE不適合が増加し、亀裂や不連続性の危険性が生じる。他方、低気孔率は、ガス透過性を下げ、分極損失に大きな影響を及ぼす。
【0018】
現在市販されているアノードは、様々な形態のニッケル粉末または酸化ニッケル粉末を含んでなり、YSZ粉末と焼結させてサーメットを形成している。サーメットの導電率は、ニッケル含有量およびサーメット中にあるニッケルの幾何学的構造または形態によって異なる。研究により、フィラメント状ニッケル粉末、例えばInco(登録商標)Type 255(Incoは、Inco Limited, Toronto、カナダ、の商標である)は、従来の球状ニッケルまたは酸化ニッケル粉末よりも、優れたアノード性能を与えることが分かった(Ruka et al.への米国特許第6,248,468B1号)。
【0019】
現状技術水準のアノードは、気孔率が35%であり、固体(ニッケル+YSZ)の体積百分率として35%がニッケルである。
【0020】
本発明の目的は、ニッケル支持型アノード構造、および現状技術のアノード以上の導電率を与え、ニッケル含有量を大幅に低下させ、同時に電極中に高い気孔率を与えるアノードの製造方法を開発することである。
【発明の概要】
【0021】
多孔質金属基材としてニッケルのフォームまたはフェルト、およびその中に取り込まれた、酸素イオンを伝導するためのセラミック網目を包含するSOFCアノードを提供する。YSZまたは同様に作用する部品を、キャリヤーを介してニッケルのフォームまたはフェルト中に導入し、所望の高い導電率と好適なCTEを達成し、同時に、その中に含まれるニッケルの量を低減させる。
【0022】
上記のように、現在のSOFCアノード技術は、YSZ粉末と焼結させてサーメット電極を形成するために、様々な形態のNiまたはNiO粉末を使用している。サーメットの導電率は、そのニッケル含有量およびサーメット中にあるニッケルの幾何学的構造または形態により決定される。フィラメント状ニッケル粉末およびニッケル被覆されたグラファイトは、従来の焼結アノード設計における球状NiまたはNiO粉末よりも優れたアノード性能を与えると思われる。
【0023】
ニッケルを含む複合材料では、ニッケルの導電性網目を形成してその複合材料を導電性にするためのパーコレーション閾体積画分がある。このパーコレーション閾より上では、D. McLachlan, M. BlaszkiewiczおよびR. Newnham, J. Am. Ceram. Soc. 73 (1990), 2187頁、により開発されたモデル(「MBN」モデル)により、複合材料中のニッケルによる導電率は、
【数1】

により計算することができ、式中、
σ=複合材料導電率
σNi=Ni導電率
Ni=Ni体積画分(気孔を含む)
=Niパーコレーション体積画分
t=微小構造パラメータ
である。
【0024】
導電率の上側レベル(上限(bound)モデル−「UBM」)を計算するために、この値を、V=0であり、ニッケルが、ニッケルワイヤのように一次元構造を有し、そのワイヤが導電率測定における電流の方向と平行であると仮定して、MBNモデルから得ることができる。
【数2】

【0025】
典型的なバッテリー型ニッケルフォームは、一様な三次元セル構造を有し、上記のモデルは適用できない。電力の流れる方向にないニッケルストランドは、その方向における導電率に非常に僅かしか貢献しない。低密度ニッケルフォームを、個々の立方体セルから構成される三次元的正方形メッシュグリッドとして簡素化すると、すべてのニッケルストランドの3分の1だけが電流の流れる方向にあり、その方向で測定した導電率に貢献する。高気孔率または低ニッケル密度では、上記の問題を反映するために、高気孔率ニッケルフォームに対する修正された上限モデル(「MUBM」)が提案される。
【数3】

【0026】
このモデルにより予想される導電率は、三次元的多孔質構造により高気孔率末端で達成される最高導電率と考えることができる。
【0027】
図1は、室温における、YSZ粉末を有する高気孔率構造に対する上限モデルおよび修正された上限モデルの計算された理論的導電率値と、ニッケル総体積百分率の関係を示す。比較のため、幾つかの従来の焼結アノード設計−ニッケル被覆グラファイト(「NiGr」)およびニッケル粉末+グラファイト粉末(「Ni+Gr」)を示す。
【0028】
図1から、修正された上限と比較して、導電率の改良に重大な可能性が存在する。ニッケルフォームは良好な導電率を有することが分かっており、バッテリー工業で導電性集電装置として広く使用されている。
【0029】
下記の実験データにより立証されるように、SOFCのアノードにニッケルフォームを使用することにより、特定導電率に対して、より優れた導電性結果が得られる、および/または必要なニッケル含有量が低くなる。
【0030】
ニッケルフォームは、連続気泡重合体フォームの構造に基づく、高度に多孔質の、連続気泡を有する金属構造である。ニッケルフォームを製造するには、ニッケル金属被覆を連続気泡重合体構造、例えばポリウレタンフォーム、の上に施した後、調整された雰囲気中、高温で焼結させ、重合体基材を除去する。一般的に、ニッケル被覆は、様々な方法、例えばスパッタリング、電気メッキおよび化学蒸着(CVD)、により施すことができる。連続フォームの大量生産には、電気メッキおよびCVDがこの工業における主要製法である。Inco Limited(譲受人)における製造方法は、ニッケルテトラカルボニル(Ni(CO))のCVDまたは連続気泡ポリウレタン基材上へのニッケル電気メッキにより行う。
【0031】
一連の数値の前にある用語「約」は、他に指示がない限り、その一連の中にある各数値に適用されると解釈すべきである。
【0032】
表1は、Inco Limitedにより、所有財産として管理するニッケルカルボニルガス堆積技術(Babjak et al.への米国特許第4,957,543号)を使用して製造されたニッケルフォームの導電率を示す。修正された上限モデルに基づく計算値も示し、表中で比較する。ニッケルフォームの導電率が、予想された値に非常に良く対応し、このニッケルフォーム構造が優れた導電率を与えることは明らかである。これは、ニッケルが上にメッキされている原料ポリウレタンフォームに由来する独特なセルまたは細孔構造に帰せられ、粉末材料から出発する他の、現在焼結させている多孔質構造には当てはまらない。
【0033】
現在の技術では、Ni粉末またはNiO粉末を、それらの形態、例えば球状Inco(登録商標)Type 123Ni粉末および未焼成NiO粉末、あるいはフィラメント状Inco(登録商標)Type 255粉末(Jenson et al.への米国特許第4,971,830号、Ruka et al.への米国特許第6,248,468B1号)または他の合金粉末(Visco et al.への米国特許第2003/0059668A1号)、に関係なく、YSZとの焼結に使用してSOFCのアノードを製造しても、YSZ中である程度のNiが単離され、焼結構造中にある程度の行き止まりが存在する。これらの単離されたニッケル粒子または行き止まりは、アノードの導電率に貢献しない。導電性網目が形成される前は、すなわちいわゆるパーコレーション閾Vに達する前は、アノード中にあるすべてのニッケル粒子が導電率にほとんど貢献しない。Vは、どれ位多くのニッケルがアノード導電率に貢献していないかの良い目安になる。表1中に示すニッケルフォームの導電率は、Vをゼロに設定するMBNモデルを使用しても計算される。実験データが予想された値と一致することが分かる。これは、ニッケルフォーム中にある事実上すべてのニッケルが導電率に貢献することを示している。室温で測定した実験データおよびニッケルフォームの予想値を図2に示す。ニッケルフォームの値は、理論的曲線に良く匹敵し、図1に示す先行技術の焼結したアノードより優れている。
【0034】
表1 IncoのNiカルボニルガス堆積方法により製造したNiフォームの導電率、および上限モデルに基づいて計算した導電率

Ni密度 測定した導電率 計算した導電率、 計算した導電率、
体積% 1/cmΩ 修正された MBNモデルV=0.0、
上限モデル t=1.3、1/cmΩ
1/cmΩ
1.45 8.56 706.6 595.3
1.57 756.1 765.1 660.1
1.67 730.7 813.8 715.3
1.99 898 969.8 898.4
2.5 1328.5 1218.3 1208.6
2.78 1265.7 1354.8 1387.4
2.84 1394.4 1384.0 1426.5
4.46 2352.4 2173.5 2565.0
5.26 2624 2563.4 3178.5
5.41 2525.2 2636.5 3296.9
【0035】
図2から、ニッケル粉末またはニッケル被覆したグラファイト(NiGr)を使用する現在のSOFC焼結技術でみられるようなニッケル含有量の画分で、同等の導電率がニッケルフォームで達成されたことが分かる。これは、他の技術を使用するどのSOFC開発者によっても、一度も達成されていない重大な改良である。
【0036】
ニッケルフォームと同様に、ニッケルフェルトも、同様の導電率を与えることができ、アノードの多孔質金属基材として使用することができる。
【0037】
ニッケルフェルトは、重合体フェルトの構造を基材とする、非常に多孔質のフィラメント状金属構造である。ニッケルフェルトを製造するには、フェルト加工された重合体基材、例えばポリエステルフェルト、上にニッケル金属被覆を施した後、調整された雰囲気中、高温で焼結させ、重合体基材を除去する。一般的に、ニッケル被覆は、様々な方法、例えばスパッタリング、電気メッキおよび化学蒸着、により施すことができる。
【0038】
下記の考察は、基材としてニッケルフォームまたはニッケルフェルトを使用してSOFCアノードを製造する好ましい方法に関連する。YSZが標準的な電解質であるが、他のセラミック電解質が好適である。
【0039】
キャリヤー、例えばYSZ粉末、発泡剤、有機結合剤、または他の添加剤を含むスラリーをペースト塗布し、ニッケルフォームまたはニッケルフェルトの細孔中に入れ、次いで乾燥させる。Ni/YSZ比は、スラリー中の固体含有量により、およびペースト塗布する前にニッケルフォームまたはニッケルフェルトの厚さを調節することによっても、十分に制御することができる。ペースト塗布し、乾燥させた後、その断片を、目標とするいずれかの気孔率に圧縮することができる。
【0040】
ニッケルフォームまたはニッケルフェルトおよびYSZおよび他の添加剤からなる、乾燥させた未焼成断片を、様々な工程により、最終的なアノードに製造することができる。有機物質、グラファイト、または他の細孔形成剤を使用する場合、燃焼除去工程が必要になる場合がある。燃焼除去工程に続いて、適切な温度で焼結させ、連続YSZ網目を形成する必要がある。焼結は、Ni/NiO粉末およびYSZ粉末から製造する従来のアノードに使用するような、伝統的な焼結方法で、空気中、高温、例えば1475℃、で行うことができる。焼結に続いて還元工程を、還元雰囲気中、ニッケルの融点より低い温度で行うことができる。本発明のもう一つの特徴は、焼結および還元工程を一つの工程に組み合わせることができることである。焼結および還元の両方を、還元性雰囲気中、ニッケルの融点より低い温度で達成することができる。この場合、別の焼結工程を必要とせず、構造、したがって、ニッケルフォームまたはフェルトの導電性が保持される。スラリーの処方および粘度を調整し、最終的なアノード中に所望の気孔率を達成することができる。
【0041】
ニッケルフォームまたはニッケルフェルトをアノードの基材として使用し、ペースト塗布製法を使用してSOFCの最終的なアノード電極を製造することの潜在的な有益性は、下記の通りである。
【0042】
(1)ニッケルフォームまたはニッケルフェルトを使用し、アノード中の従来の焼結させたニッケル構造を置き換えることにより、必要な導電率を得るのに必要なニッケル含有量を劇的に下げることができる。
【0043】
(2)このようにニッケル含有量を物理的に下げることにより、電池成分間のCTE適合性が改良されるために、SOFCの作動および熱的サイクル寿命が延長される。
【0044】
(3)さらに、電極の体積がフォームまたはフェルトの気孔率により予め決められるので、電極の気孔率は、YSZ粉末のスラリー中における固体画分により、容易に制御することができる。様々な所望の密度に圧縮することにより、最終的な気孔率を制御することができる。これによって、細孔形成剤、例えばグラファイト、を使用して、より大きな細孔を形成することが避けられる。
【0045】
(4)他方、フォームまたはフェルト中にペースト塗布されたスラリーも、発泡剤、および/またはニッケル粉末および/または粒子を含むことができる。これによって、アノード構造全体にわたって広い融通性が得られ、マクロおよびマイクロ多孔度およびある範囲の異なった形態を与え、電気化学的性能を強化または選択的に微調整することができる。
【0046】
(5)YSZ装填量は、選択的ペースト塗布方法により、アノードの厚さを横切って変えることができる。電解質側と接触する側は、2回ペースト塗布し、装填量を増加することができる。
【0047】
(6)さらに、ニッケルフォームまたはフェルトの製造およびペースト塗布の両方共、バッテリー工業では確立した技術であり、アノード支持型SOFCの商業化に不可欠なファクターである、SOFCアノードの低コスト大量生産方法を与える。
【0048】
(7)ニッケルフォームまたはフェルトは、ニッケルの体積画分がアノードの約1%〜30%以上、好ましくは約3%〜15%、より好ましくは約5%〜10%である。
【0049】
(8)ニッケルフォームまたはフェルトのセルまたは細孔径は、約10μm〜2mm、好ましくは約50μm〜0.5mmである。
【0050】
(9)ニッケルフォームまたはフェルトの比表面積は、ニッケルおよび他の粉末被覆および結合技術を使用して変えることができる。
【0051】
(10)カルボニル技術により製造するのが好ましいが、ニッケルフォームまたはフェルトは、重合体材料または他の、細孔構造および多孔度が確立している材料に対して、化学蒸着、電気メッキ、スパッタリング、直接蒸着、焼結または他の方法により製造することもできる。
【0052】
(11)ニッケルフォームまたはフェルトは、特定の機械的特性、耐食性、または表面積増加などの理由から、その表面で、または全体的に、他の金属により変性することができる。
【0053】
(12)ペーストスラリーは、主要電解質成分、例えばYSZ、に加えて、Ni、NiO粉末または他の金属系添加剤、細孔形成剤および結合剤材料も含むことができる。
【例】
【0054】
多くの例により、本発明の効能を立証する。
例1 ペースト塗布、乾燥および圧縮方法
【0055】
この例で使用するニッケルフォームは、Inco Limitedにより、そのClydachニッケル精錬所、Wales、英国、で、金属カルボニル技術を使用して製造された。このフォームの密度は、測定された公称値が600g/mである。ニッケルフォームの公称厚さは、1.9mmである。このフォームを5cmx6cmの断片に切断した。第一の断片を0.98mmに予備圧縮し、第二および第三の断片を1.80mmおよび1.74mmにそれぞれ僅かに圧縮した。元のニッケルフォームにおける公称ニッケル体積画分は3.5%である。予備圧縮した断片では、ニッケル体積画分は、厚さ1.80mmおよび1.74mm、および0.98mmの断片でそれぞれ3.7%、3.9%、および6.6%である。ニッケルフォームは、カルボニル技術により、初期ニッケル体積画分約1.5%〜30%以上で製造することができ、上記のいずれかの圧縮方法により、容易に調節することもできる。
アノード#1〜6の製造
【0056】
YSZ粉末30g、ポリビニルアルコール(「PVA」)15g1.173重量%を水およびエタノール(重量比1:1)に入れた溶液を含むスラリーを、YSZ粉末をPVA溶液に加え、プロペラミキサーで5分間攪拌することにより、調製した。このスラリーを上記のニッケルフォーム断片中に、スパチュラを使用してペースト塗布した。表面を清掃して過剰ペーストを除去した後、これらの断片を強制空気加熱炉中、60℃で45分間乾燥させた。YSZおよびPVAの重量は、乾燥させた断片を秤量し、ニッケルフォーム重量を差し引いて決定した。YSZ密度6.1g/ccおよびNi密度8.9g/ccを使用し、断片の目標とする厚さを、所望の最終的多孔度により決定することができる。これらの断片を、様々なサイズに隙間を予め設定したローラープレスを通して圧縮する。表2は、初期フォームの特性および焼結前の最終的なアノード特性を示す。
【0057】
表2および下記の例で、ニッケル密度に関して下記の用語を使用する。用語「かさ体積%」は、総アノード体積の、Ni(またはYSZ)により占有される百分率を意味するのに対し、用語「%固体としての体積」は、固体(すなわちYSZ+Ni)により代表される総体積の、Ni(またはYSZ)により占有される百分率を意味する。すなわち、「かさ体積%」の測定は、試料の気孔率を含むのに対し、「%固体としての体積」は、これを含まない。
【0058】
表2から、異なった厚さのニッケルフォームを使用することにより、Ni/YSZ比を調節できることが分かる。アノード#1〜3は、厚さ0.98mmのフォームを使用して製造し、Ni/YSZ比が23%/77%=0.30であるのに対し、アノード#4〜6は、厚さ1.80mmのフォームを使用して製造し、Ni/YSZ比が0.16である。アノード#1〜6により立証されるように、目標とする様々な厚さに圧縮し、ペースト塗布した断片の様々な気孔率を達成した。
アノード#7〜9の製造
【0059】
Inco(登録商標)Type 255フィラメント状Ni粉末をスラリーに加えた以外は、同じ手順を使用してアノード#7〜9を製造した。これらのアノードでは、ニッケルを2つの形態、すなわちニッケルフォームおよびニッケル粉末、で配分した。他のニッケル添加剤、例えばニッケルフレーク、ニッケル繊維、ニッケル被覆したグラファイト、等、および細孔形成剤、もスラリーに加え、ニッケル配分を調節し、様々な細孔構造を形成することができる。
【0060】
アノード#7〜9およびアノード#1〜3を比較することにより、これらのアノードは異なったニッケル配分および類似のNi/YSZ比を有するが、ペースト塗布前の初期ニッケルフォーム厚さを制御することにより、類似の気孔率を達成できることが分かる。
【0061】
表2 ニッケルフォームを使用するペースト塗布したSOFC
【表1】

【0062】
例2 ニッケルフォームを使用するSOFCアノードの導電率
この例で使用するニッケルフォームは、Inco Limitedにより、そのClydachニッケル精錬所、Wales、英国、で、金属カルボニル技術を使用して製造された。このフォームの密度は、測定された公称値が1360g/mである。このニッケルフォームの大シートから、サイズ20mmx10mmで、平均厚さ2.46mmの試料を切断し、秤量した。これらの試料を使用し、フォームを基材とするNi/YSZ複合材料を調製し、導電率を測定した。比較導電率測定を行うために、切断した幾つかのフォーム断片はペースト塗布しなかった。選択したフォーム断片を、8モル%のYで安定化させたZrO(YSZ)セラミック粉末のアルコール懸濁液を含む小型容器の中に入れた。フォームをこの高粘度粉末懸濁液中に1〜2分間浸漬し、取り出し、1〜2分間空気乾燥させた。乾燥後、フォームの表面上にある過剰YSZ粉末を除去し、試料を秤量した。
【0063】
これらのペースト塗布したフォーム4個を寸法が20x10mmに近い鋼製ダイの中に配置し、手動制御の油圧プレスを使用し、15,000lb(66,720N)の圧力下で一緒にプレスした。比較目的で、このプレス操作を4個のペースト塗布していないニッケルフォームに、ただし、5,000lb(22,240N)の低い圧力下で行った。表3は、プレス前後の、幾つかのペースト塗布したフォームの寸法例を示す。切断した試料の寸法より僅かに大きいダイ壁空隙に向かって試料が変形するので、試料の長さおよび幅が僅かに増加する。プレスの際、試料の厚さが大幅に低下し、これが、試料の密度増加のほとんどを引き起こしている。表4および5は、プレス前後の試料から得た重要な物理的測定を示す。用語「かさ体積%」および「%固体としての体積」は、例1の用語と同じ意味を有する。表4は、プレス操作により、Ni(またはYSZ)のかさ体積が2のファクターで増加し、気孔率が同じファクターで低下することを示している。
【0064】
次いで、プレスしなかった、およびプレスした条件の両方における、ペースト塗布した、およびペースト塗布しなかったフォームの試料を、1475℃までの温度に加熱し、この温度に2時間保持し、次いで室温に冷却した。この工程の目的は、YSZ粉末を複合材料アノードの中で緻密な連続網目に焼結させることである。
【0065】
導電率試験を行う前に、焼結した試料をN95%/H5%ガス雰囲気中で950℃まで加熱し、この温度に4時間保持し、次いで室温に冷却した。この工程の目的は、空気中の高温焼結の際に形成されたNiOを元素状ニッケルに逆変換することである。
【0066】
試料の導電率は、標準的な2点プローブ技術により測定した。1ampの一定電流を断面積が既知の試料に通し、2点間の電圧低下を測定した。次いで、導電率を、下記の式を使用して計算した。
【数4】

式中、σは、1/(オーム.cm)で表す試料の導電率であり、Iは、ampで表す電流であり、Lは、電圧低下を測定する、cmで表す長さであり、Vは、ボルトで表す電圧低下であり、Aは、cmで表す試料の断面積である。
【0067】
各処理工程の導電率に対する影響を確認するために、切断した時のフォーム、プレスしたがペースト塗布していないフォーム、ペースト塗布したフォーム、およびペースト塗布し、プレスしたフォームの導電率を測定した。さらに、焼結/還元の前後におけるこれら試料全部の導電率も測定した。これらすべての実験の結果を図3に示す。
【0068】
図3は、導電率とかさニッケル体積%との関係をプロットした結果を示す。注目すべき第一点は、YSZペースト塗布工程自体は、材料の導電率を変化させないことである。したがって、ペースト塗布により、基材として使用するニッケルフォームと同等の導電率を有するNi/YSZ多孔質複合材料が得られる。第二に、圧縮により、主として気孔率が低下し、かさニッケル体積が増加するために、試料の導電率が増加する。ペースト中にYSZが存在するために、圧縮の際に変形し難くなるので、ニッケルのかさ体積が約15%に増加する。YSZが存在しない場合、ニッケルフォームは約45%に緻密化し、このために導電率がはるかに高くなる。
【0069】
図3における白と黒の記号は、それぞれ焼結/還元の前と後の導電率値を示す。
【0070】
図3には、従来のアノード製法により、NiおよびYSZ粉末を個別に使用するNi被覆されたグラファイト(NiGr)から製造されたアノードから得られる以前の結果および従来のアノード材料に関する文献で発表されたデータも示す。明らかに、YSZペースト塗布されたニッケルフォームは、これらの以前のアノード材料すべてと比較して、優れた導電率を有する。混合物の原則(「ROM」)に基づく計算も図3に含める。これは、上限モデルと呼ばれ、特定のかさニッケル含有量に対して、複合材料試料で得られる可能な最高の導電率を表す。明らかに、ニッケルフォーム試料はこの上限に近い。
【0071】
図3には、焼結/還元(「S&R」)後のフォーム材料に対する導電率データも示す。このデータから分かる最も重要な点は、「ペースト塗布し、圧縮した」試料の導電率が、焼結および還元の後に実際に増加していることである。これは、焼結の際に起こる体積の小さな減少(したがって、ニッケルかさ体積の増加)によるものである。圧縮していない、ペースト塗布したフォームおよび純粋なニッケルフォームの場合、導電率は僅かに低下している。これは、これらの試料の不完全還元によるものである。圧縮していない材料の、より開いた構造により、焼結の際にニッケルがより広範囲に酸化された。これは、使用した還元工程で、これらの試料がニッケルに完全に還元されなかったことを意味する。圧縮した材料では、気孔率がより低く、YSZの保護作用のために、ニッケルの酸化ははるかに少ない。この場合、その後に続く還元工程が、NiOをその元素状形態に完全に変換することができる。
【0072】
表3 ペースト塗布したNiフォームの、圧縮前後における寸法の例

試料 長さ(mm) 幅(mm) 厚さ(mm)
圧縮前(4層) 20.08 10.53 9.83
圧縮後(4層) 22.41 13.49 3.41
【0073】
表4 浸漬ペースト塗布方法により製造され、導電率測定に使用されたアノード複合材料の測定
試料 層の# Ni体積% YSZ体積% 気孔率 かさ かさ
固体* 固体* % YSZ Ni
体積%* 体積%
1 単/未圧縮 23.0 77.0 70 22.8 6.8
2 単/未圧縮 24.9 75.1 71.2 21.6 7.2
3 単/未圧縮 24.8 75.2 71.3 21.6 7.1
4 単/未圧縮 24.9 75.1 71.6 21.3 7.1
5 単/未圧縮 23.5 76.5 70.3 22.7 7.0
6 単/未圧縮 22.4 77.6 68.8 24.2 7.0
7 単/未圧縮 22.7 77.3 69.7 23.4 6.9
8 4/圧縮 23.4 76.6 39.8 46.1 14.1
9 4/圧縮 23.7 76.3 36.8 48.2 14.9
これらの値は、YSZスラリーをペースト塗布した後のフォームの重量増加に基づいて推定した。
【0074】
表5 圧縮前後の、導電率測定に使用したNiフォームの測定
試料 層の# Ni体積% YSZ体積% 気孔率 かさ かさ
固体* 固体* % YSZ Ni
体積%* 体積%
1 単/未圧縮 100 0 92.9 0 7.1
2 単/未圧縮 100 0 92.9 0 7.1
3 単/未圧縮 100 0 92.9 0 7.1
4 単/圧縮 100 0 54.7 0 45.3
例3 ニッケルフォームを使用して製造したSOFCアノードの熱膨脹率
【0075】
この例で使用するニッケルフォームは、Inco Limitedにより、そのClydachニッケル精錬所、Wales、英国、で、金属カルボニル技術を使用して製造された。このフォームの密度は、測定された公称値が1360g/mである。このニッケルフォームの大シートから、サイズ8mmx6mmで、平均厚さ2.46mmの試料を切断し、秤量した。これらの試料を使用し、フォームを基材とするNi/YSZ複合材料を調製し、熱膨脹率を測定した。選択したフォーム断片を、8モル%のYで安定化させたZrO(YSZ)セラミック粉末のアルコール懸濁液を含む小型容器の中に入れた。次いで、この粉末をフォームの内部構造中にアルコールを使用して流し込んだ。十分な量(固体ベースで約65体積%)のYSZをフォーム中に流し込んだ後、試料を容器から取り出し、1〜2分間空気乾燥させた。乾燥後、試料を秤量した。
【0076】
これらのペースト塗布したフォームの4個を寸法が8x6mmに近い鋼製ダイの中に配置し、手動制御の油圧プレスを使用し、5,000lb(22,240N)の圧力下で一緒にプレスした。表6は、プレス前後の、試料から得た重要な物理的測定値を示す。用語「かさ体積%」および「%固体としての体積」は、例1および2の用語と同じ意味を有する。表6は、プレス操作により、例2で観察されたファクター同様のファクターで、Ni(またはYSZ)のかさ体積が増加し、気孔率が低下することを示している。
【0077】
ペースト塗布し、圧縮したフォームの試料を空気雰囲気中で1475℃まで加熱し、この温度に2時間保持し、次いで室温に冷却した。CTE測定を行う前に、焼結した試料を還元性のN95%/H5%ガス雰囲気中で950℃まで加熱し、この温度に4時間保持し、次いで室温に冷却した。
【0078】
これらの還元した試料を膨脹計中に配置し、それらの950℃までの寸法変化を、それらの8mm寸法の方向で監視した。これらの実験は、H5%/N95%雰囲気中で行った。安定した試料寸法および正確なCTE測定を達成するのに、2加熱サイクル以上が必要であった。これは、試料の、試料固定具の座りによるものであった。しかし、試料寸法における永久的な長さの変化(特に最初の試験の後の)は、還元工程後に残留していた、酸化したニッケルのある程度の焼結および/またはさらなる還元が起きていることを示している。圧縮した試料では、加熱サイクルを、膨脹計曲線からヒステリシス(または永久的サイズ低下)が認められなくなるまで繰り返した。CTE測定は、最後の加熱曲線から行った。しかし、圧縮していない試料の場合、ヒステリシスの形態にある収縮が試料中に残った。この場合、加熱の際に一定の寸法変化が達成されるまで、加熱サイクルを繰り返した。やはり、CTE測定は、最後の加熱曲線から行った。
【0079】
図4は、表6に示す4個の圧縮した試料および圧縮していない試料に対する最後の加熱サイクルから得た膨脹計曲線を示す。これらの曲線の斜面は、圧縮した試料が圧縮していない試料よりも低いCTEを有することを明らかに示している。図4には、各試料に対して行った加熱サイクルの数も示す。圧縮せず、焼結しなかった試料番号1(単純な破線)は、寸法的に非常に不安定であり、14サイクル後でも収縮し続けた。しかし、これらのサイクル数の後、加熱曲線の斜面は、反復できなくなり、正確なCTE測定を行うことができた。ヒステリシスループを生じる収縮は、900℃を超えて初めて開始することにも注意する。圧縮していないが、焼結および還元させた試料番号2(太い実線)は、7サイクルだけで安定した斜面に達したが、ある程度の収縮は900℃を超えてもなお起こる。したがって、焼結は、圧縮していない状態で寸法的安定性を増加させる。
【0080】
対照的に、図4に示す圧縮した試料番号3および4(それぞれ一点破線および実線)は、寸法的にはるかに安定しており、ヒステリシスが無く、950℃までの焼結による永久的収縮も示していない。したがって、圧縮した試料の低いCTEおよびより安定した寸法の両方が、十分に焼結したYSZの連続網目が圧縮操作により達成されたことを示している。
【0081】
図5は、30℃〜1000℃の様々な温度に対する技術的アルファ(またはCTE)を示す。比較のため、純粋なNiおよびYSZに対する文献値も含む。圧縮しない(焼結する、しないに関わらず)場合、ウォッシュ処理した、またはペースト塗布したフォーム複合材料は、純粋なニッケル試料に予想されるCTEと類似している。同様に、「ウォッシュ処理および圧縮した」フォーム複合材料は、CTEが大幅に低い。これは、製造されたYSZのかさ体積が、圧縮により、より高い(すなわち約31%)ためであると予想される。これにより、YSZの連続網目が作られ、高温焼成の際に十分に焼結する。これによって、フォームにより形成された連続ニッケル構造に、より大きな束縛効果が作用し、したがって、CTEが下がる。
【0082】
図6は、表6の圧縮した材料に対する30〜900℃の技術的CTE値、ならびにNi被覆されたグラファイト(NiGr)で製造された複合材料に関して以前に発表された結果および現状技術水準アノードに対する文献値を示す。圧縮されたデータは、ROM予測と非常に良く一致し、ニッケル被覆されたグラファイト粒子で製造された複合材料で達成されたデータと類似している。最も重要なのは、圧縮された複合材料のCTEは、従来のアノード材料に関して報告されているCTEより低いことである。
【0083】
図7および8は、表6のウォッシュ処理した、および「ウォッシュ処理および圧縮した」試料の、焼結および還元前の微小構造をそれぞれ示す。YSZの凝集物は、圧縮していない試料で明らかに見ることができ、凝集物間に著しい空隙がある。YSZが、ニッケルフォームのセル中に十分に分散されている。しかし、YSZとNiとの間の直接的な接触は限られている。圧縮により、ニッケル細孔がYSZ上に潰れ、YSZ凝集物が単一の連続YSZ相に固まっている。圧縮方向に対して直角な細長い空隙がある。圧縮により、燃料電池性能に三重点境界として必要な、NiとYSZとの間の接触が劇的に増加する。
【0084】
表6 「ウォッシュ処理」ペースト塗布および「ウォッシュ処理および圧縮」方法により製造され、CTE測定に使用した、NiおよびYSZの体積比、気孔率およびかさ体積
試料 層の# Ni体積% YSZ体積% 気孔率 かさ かさ
固体* 固体* % YSZ Ni
体積%* 体積%
1 単/未圧縮 30 70 79 15.8 6.8
2 単/未圧縮 32 68 81 14.5 7.0
3 4/圧縮 34 66 52 31 16
4 4/圧縮 37 63 56 28 16
これらの値は、YSZスラリーをペースト塗布した後のフォームの重量増加に基づいて推定した。
【0085】
従来の焼結させたアノードでは、アノード中の連続多孔質ニッケル構造が、NiまたはNiO粉末をYSZ粉末と共に焼結させることにより、形成される。本方法では、確立された、所望の細孔構造を有する多孔質重合体または他の材料基材上にニッケル被覆することにより、連続多孔質ニッケル構造、すなわちニッケルフォームまたはフェルト、が、YSZとの焼結工程の前に形成される。
【0086】
得られるアノードは、セラミック成分および金属系成分を有する複合材料でよいセラミック網目からなる。金属系成分は、ニッケル、銅、または他のいずれかの適切な金属または合金から選択できるのに対し、セラミック成分は、YSZ、ガドリニウムドーピングされた酸化セリウムまたは他のいずれかの酸素伝導性セラミック材料から選択することができる。
【0087】
ニッケルフォームまたはニッケルフェルトは、導電率が本来最も高く、その独特なセル(細孔)構造のために、パーコレーション体積がゼロである。その導電率は、形態、例えば球状またはフィラメント状、に関係なく、金属粉末材料から出発して焼結させた公知のどの構造とも適合し得ない。ニッケルフォームの表面顕微鏡写真を図9に示し、ニッケルフェルトの表面顕微鏡写真を図10に示す。
【0088】
実質的に焼結させたニッケル粒子の不規則結合からなる従来の焼結させたアノードと反対に、本多孔質金属基材は、アノードの物理的プラットホームまたは骨格を形成し、特にアノードに、および一般的に燃料電池に、限定された物理的一体性を与える。さらに、ニッケル自体の量(per capita values)は、従来の設計より少ないが、同時に、優れた導電率、低CTE特性および高気孔率を提供する。
【0089】
法律の規定により、本発明の具体的な実施態様を例示し、説明した。当業者には明らかなように、請求項に規定する本発明の形態の中で変形を行うことができ、本発明のある特徴を、他の特徴を対応して使用することなく、有利に使用できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】導電率とニッケル体積の関係をプロットしたグラフである。
【図2】導電率とニッケル体積の関係をプロットしたグラフである。
【図3】焼結、還元および圧縮の前後における導電率とニッケルのかさ体積の関係をプロットしたグラフである。
【図4】寸法変化と温度の関係をプロットしたグラフである。
【図5】熱膨脹率と温度の関係をプロットしたグラフである。
【図6】熱膨脹率とニッケル体積百分率の関係をプロットしたグラフである。
【図7】本発明の一実施態様における顕微鏡写真である。
【図8】本発明の一実施態様における顕微鏡写真である。
【図9】本発明の一実施態様における顕微鏡写真である。
【図10】本発明の一実施態様における顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を得るための多孔質金属基材と、酸素イオンを伝導するためのセラミック網目とを含んでなる、燃料電池用アノード。
【請求項2】
前記多孔質金属基材が、ニッケルフォームおよびニッケルフェルトからなる群から選択される、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記セラミック網目が、イットリアで安定化されたジルコニアおよびガドリニウムドーピングされた酸化セリウムからなる群から選択される、請求項1に記載のアノード。
【請求項4】
前記セラミック網目が、セラミック成分および金属系成分を包含する複合材料である、請求項1に記載のアノード。
【請求項5】
前記セラミック成分が、イットリアで安定化されたジルコニアおよびガドリニウムドーピングされた酸化セリウムからなる群から選択され、前記金属系成分が、ニッケルおよび銅からなる群から選択される、請求項4に記載のアノード。
【請求項6】
カソード、アノード、および前記カソードと前記アノードとの間で電気的に連絡している電解質を含んでなる固体酸化物燃料電池であって、前記アノードが、複数の相互接続された細孔を有する多孔質金属基材を包含し、前記多孔質金属基材中に酸素イオン伝導性セラミック材料が配置されている、固体酸化物燃料電池。
【請求項7】
前記多孔質金属基材が、ニッケルフォームまたはニッケルフェルトからなる群から選択される、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項8】
前記多孔質金属基材のニッケル体積画分が、前記アノードの約1%〜30%である、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項9】
前記多孔質金属基材のニッケル体積画分が、前記アノードの約3%〜15%である、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項10】
前記多孔質金属基材のニッケル体積画分が、前記アノードの約5%〜10%である、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項11】
前記細孔のサイズが約10μm〜2mmである、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項12】
前記細孔のサイズが約50μm〜0.5mmである、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項13】
前記多孔質金属基材が、ニッケル粉末、ニッケル粒子、およびニッケル被覆されたグラファイトからなる群から選択されたニッケルを包含する、請求項6に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項14】
固体酸化物燃料電池用のアノードを製造する方法であって、
a)複数の相互接続された細孔を有する多孔質金属基材を用意すること、
b)少なくとも一種のセラミック材料を含むキャリヤーを前記基材中に導入すること、および
c)前記基材を加熱して前記アノードを形成すること
を包含する、方法。
【請求項15】
前記多孔質金属基材が、ニッケルフォームまたはニッケルフェルトからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属が、ニッケルおよび銅からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリヤーがニッケルを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリヤーが細孔形成剤を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記基材が圧縮される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、金属カルボニル被覆により形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記多孔質金属基材が、化学蒸着、電気メッキ、スパッタリング、直接蒸着および焼結からなる群から選択された方法により形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記アノードが、固体酸化物燃料電池中に配置される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
基材の細孔径が約10μm〜2mmである、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記基材の金属体積画分が、前記アノードの約1%〜30%である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記アノードの熱膨脹率が、前記燃料電池中に配置される前記固体電解質の熱膨脹率と少なくとも同等である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記基材が還元される、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記キャリヤーが、スラリーの一部として前記基材中に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
前記セラミック材料が、イットリアで安定化されたジルコニアおよびガドリニウムドーピングされた酸化セリウムからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
前記キャリヤーが、ニッケル粉末、ニッケルフレーク、ニッケル繊維およびニッケル被覆されたグラファイトからなる群から選択されたニッケルを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
前記基材が焼結される、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
前記基材が同時に焼結および還元される、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
セラミック成分および金属系成分を有するアノード中にセラミック網目を形成することを包含する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−531974(P2007−531974A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506621(P2007−506621)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002137
【国際公開番号】WO2005/099000
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591017261)シーブイアールディ、インコ、リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CVRD Inco Limited
【Fターム(参考)】