説明

固体酸及びその製造方法

【課題】取扱性が良好であり、酸点が多く酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れた固体酸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化グラフェン及び/又は厚さ10nm以下の酸化グラファイトをスルホン化することによって得られる固体酸。酸化グラフェン及び/又は酸化グラファイトの面方向の円相当径は1μm以上であることが好ましい。また、スルホ基は0.5〜10.0mmol/gのスルホン酸密度で導入されていることが好ましい。そして、この固体酸を、固体酸触媒やプロトン伝導膜に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸は、様々な化学反応において必要不可欠な触媒であって、硫酸等の液体酸が触媒として広く使用されている。しかしながら、液体酸は、反応後の生成物から分離、廃棄するに際し、多くの工程やエネルギーを要していた。
【0003】
一方、固体酸は、表面にプロトン解離性の官能基などを持ち、硫酸などの液体酸と同等の機能を発揮し、更には、液体酸に比べて分離、回収が容易で、繰り返し使用が可能であるため、近年注目を集めている。
【0004】
固体酸としては、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの無機系材料を基材とした無機材料系固体酸や、イオン交換樹脂等の合成樹脂系固体酸が用いられている。なかでも、熱的、化学的に安定であって、材料コストが低い無機材料系固体酸が広く用いられている。
【0005】
また、近年では、カーボン系材料を基材とした固体酸が開発され、バイオディーゼル製造や、セルロース加水分解の触媒として用いられている(非特許文献1参照)。
【0006】
また、下記特許文献1には、多環式芳香族炭化水素類を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で加熱処理して多環式芳香族炭化水素の縮合およびスルホン化を行い、極性溶媒に不溶の固体酸を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−238311号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Toda et al., Nature, 438, 178 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
固体酸の酸触媒としての機能や、プロトン導電性を高めるためには、体積当たりの表面積を高めて、酸点を増やす必要がある。そして、体積当たりの表面積を高めるには、固体酸のサイズを微小にしていく必要がある。
【0010】
しかしながら、固体酸を例えば触媒として利用する場合、反応物から固体酸のみを分離回収する必要があるので、固体酸のサイズが微小になるほど反応物から固体酸を回収することが困難になる。このため、反応物中に固体酸が混在してその純度が低下したり、固体酸の回収率が低下する問題があった。
また、固体酸を例えばプロトン伝導膜として利用する場合、固体酸のサイズを微小にするに伴い、固体酸どうしの接点が増加することから、プロトン伝導の抵抗が増加する問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、取扱性が良好であり、酸点が多く酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れた固体酸及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、酸化グラフェン及び/又は厚さ10nm以下の酸化グラファイトをスルホン化することによって得られる固体酸を提供する。
【0013】
酸化グラフェンや厚さ10nm以下の酸化グラファイトは、体積当たりの表面積が大きく、更には面方向のサイズが大きい。また、酸化グラフェンや酸化グラファイトをスルホン化することで、酸化グラフェンや酸化グラファイトの酸素原子部分を基点にスルホ基を導入できる。このため、酸化グラフェン及び/又は厚さ10nm以下の酸化グラファイトをスルホン化することによって得られる本発明の固体酸は、酸点が高く、面方向のサイズが大きいため、酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れつつ取扱性に優れている。
【0014】
本発明の固体酸は、前記酸化グラフェン及び/又は前記酸化グラファイトの面方向の円相当径が1μm以上であることが好ましい。この態様によれば、固体酸の面方向のサイズを高めることができるので、取扱性に優れた固体酸とすることができる。
【0015】
本発明の固体酸は、スルホ基が0.5〜10.0mmol/gのスルホン酸密度で導入されていることが好ましい。この態様によれば、十分な量のスルホ基が導入されているので、固体酸の酸点が増え、酸触媒としての機能や、プロトン導電性が向上する。
【0016】
また、本発明の固体酸触媒は、上記固体酸を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の固体酸触媒は、体積当たりの表面積が大きく、面方向のサイズが大きい固体酸を含んでいるので、酸触媒としての機能に優れている。更には、固体酸触媒を生成物から分離する際において、生成物と固体酸触媒とを容易に分離することができるので、生成物の純度や固体酸触媒の回収率を高めることができる。
【0018】
また、本発明のプロトン導電膜は、上記固体酸を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のプロトン導電膜は、体積当たりの表面積が大きく、面方向のサイズが大きい固体酸を含んでいるので、酸点を高めつつ、固体酸どうしの接点をより低減できる。このため、プロトン伝導の抵抗の増加を抑えることができ、プロトン導電性に優れたプロトン導電膜とすることができる。
【0020】
また、本発明の固体酸の製造方法は、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得て、得られた酸化グラファイトを層方向に剥離した後、スルホン化することを特徴とする。
【0021】
本発明の固体酸の製造方法は、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得て、得られた酸化グラファイトを層方向に剥離するが、酸化グラファイトは面方向の強度は強く、層方向にのみ剥離しやすいため、高い収率で酸化グラフェンや厚さ10nm以下の酸化グラファイトを得ることができる。そして、このようにして剥離した後、スルホン化することで、面方向のサイズが大きく、実質的に働く固体酸の量が多い固体酸を効率よく製造できる。
【0022】
本発明の固体酸の製造方法は、前記酸化グラファイトに超音波を照射して層方向に剥離することが好ましい。酸化グラファイトに超音波を照射することで、面内での破壊が起こらず、層方向にのみ剥離させることができる。
【0023】
固体酸の製造方法の前記スルホン化は、硫酸中で加熱処理することにより行うことが好ましい。また、前記加熱は、100〜250℃の範囲で行うことが好ましい。硫酸は酸化グラファイトの酸素原子部分を基点にスルホ化することができるため、高い密度でスルホ基を導入することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の固体酸は、酸点が高く、面方向のサイズが大きいため、酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れつつ取扱性に優れている。
したがって、本発明の固体酸を用いた固体酸触媒は、酸触媒としての機能に優れ、更には、固体酸触媒を生成物から分離する際において、生成物と固体酸触媒とを容易に分離することができ、生成物の純度や固体酸触媒の回収率を高めることができる。また、本発明の固体酸を用いたプロトン導電膜は、固体酸どうしの接点をより低減でき、プロトン伝導の抵抗の増加を抑えることができるので、プロトン導電性に優れたプロトン導電膜とすることができる。
そして、本発明の固体酸の製造方法によれば、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得て、得られた酸化グラファイトを層方向に剥離するので、高い収率で酸化グラフェンや厚さ10nm以下の酸化グラファイトを得ることができる。そして、このようにして剥離した後、スルホン化することで、酸化グラフェンや酸化グラファイトの酸素原子部分を基点にスルホ基が導入され、面方向のサイズが大きく、実質的に働く固体酸の量が多い固体酸を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】製造例1の固体酸のAFM像である。
【図2】同固体酸のAFMラインスキャン像である。
【図3】同固体酸の厚み分布図である。
【図4】製造例2の固体酸のスルホ基密度を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の固体酸は、酸化グラフェン及び/又は厚さ10nm以下の酸化グラファイト(以下、酸化グラフェンと、厚さ10nm以下の酸化グラファイトとを併せて「酸化グラフェンシート」ともいう。)をスルホン化することによって得られる、スルホ基が導入されたアモルファスカーボンからなる。
【0027】
ここで、酸化グラフェンとは、グラフェンを構成する炭素原子の一部がsp状態からsp状態に変化し、これらの変化した炭素原子に酸素原子が結合してなるものである。また、酸化グラファイトとは、上記酸化グラフェンが、面方向に2層以上、好ましくは2〜10層積層してなるものである。本発明において、酸化グラファイトは、厚さ5nm以下であるものの割合が90%以上であるものが好ましい。
【0028】
本発明において、上記酸化グラフェンシートは、面方向の円相当径が1μm以上であることが好ましく、1〜10μmがより好ましい。円相当径が1μm以上であれば、面方向に十分な広がりを持ち、酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れつつ取扱性に優れた固体酸が得られ易くなる。また、10μmを超えると酸化グラフェンシート同士が凝集しやすくなり、体積当たりの表面積が低下することとなる。なお、本発明において、円相当径とは、酸化グラフェンシートの面方向の面積と同じ面積の円を見積もり、この円の直径を意味する。
【0029】
本発明の固体酸は、酸化グラフェンシートにスルホ基が0.5〜10.0mmol/gのスルホン酸密度で導入されていることが好ましく、2.0〜7.0mmol/gのスルホン酸密度で導入されていることがより好ましい。スルホ基の導入量が0.5mmol/g未満であると、酸点が低く、酸触媒としての機能やプロトン導電性が不充分な場合がある。また、10.0mmol/gを超えると水中における安定性が低下し、分解が進みやすくなる。その結果固体酸としての寿命が低下する。なお、スルホ基の導入量は、元素分析法や、中和反応法により見積もることができる。スルホ基の導入量は、酸化グラフェンシートをスルホン化する際において、酸化グラフェンシートの分解が起こらない範囲で高温にすることで高めることができる。
【0030】
本発明の固体酸は、酸点が高く、面方向のサイズが大きいため、酸触媒としての機能やプロトン導電性に優れつつ取扱性に優れている。また、カーボンが基本構造であるため、溶媒に不溶であり、熱的・化学的に高い安定性を有する。したがって、本発明の固体酸は、固体酸触媒、プロトン導電膜等に好適に用いることができる。
【0031】
本発明の固体酸を固体酸触媒として利用する場合、酸触媒反応における酸触媒として好ましく用いることができる。そして、固体酸触媒として用いるには、固体酸をそのまま使用してもよく、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土等のマクロポーラスな触媒担体に担持させて用いてもよい。ただし、固体酸を触媒担体に担持させて使用した場合、被反応物質の触媒担体の細孔内外の拡散が律速となり、十分な反応速度を得ることができないことがある。
【0032】
また、本発明の固体酸をプロトン導電膜として用いる場合、固体高分子形燃料電池の電解質膜、製塩、純水製造等に好ましく用いられる。そして、プロトン導電膜としては、固体酸と、フッ素化したイオン交換樹脂等を含むペーストを基材に塗布し、乾燥して得られたもの等が挙げられる。
【0033】
次に、本発明の固体酸の製造方法について説明する。
【0034】
本発明の固体酸の製造方法は、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得る酸化工程と、酸化工程で得られた酸化グラファイトを層方向に剥離する剥離工程と、剥離工程で得られた酸化グラフェンシートをスルホン化するスルホン化工程とで主に構成されている。
【0035】
以下、各工程について説明する。酸化工程では、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得る。グラファイトの酸化は、例えば、グラファイトを濃硫酸中に浸し、過マンガン酸カリウムを加えて反応させた後、反応物を硫酸中に浸し、過酸化水素を加えて反応させることにより調製される。グラファイトを濃硫酸中で過マンガン酸カリウムを加えて反応させることで、グラファイトの炭素原子は、sp状態からsp状態に変化し、いわゆるベンゼン環を形成している炭素原子のような状態から飽和の脂肪族の炭素原子の状態に変化する。そして、その後硫酸中で過酸化水素を加えて反応させることにより、これらの変化した炭素原子に酸素原子や水素原子などが結合し、層間に酸素原子が導入されて酸化グラファイトが得られる。
【0036】
グラファイトの酸化は、得られる酸化グラファイトの酸化度が0.2〜1.0となるように行うことが好ましく、酸化度は0.5〜1.0がより好ましい。酸化度が0.2未満であると、剥離工程で酸化グラファイトを十分に剥離できないことがあり、厚さが10nmを超える酸化グラファイトの割合が多くなり、酸化グラフェンシートの収率が損なわれる。また、酸化度が1.0を超えると面内における炭素原子同士の結合が弱くなり、剥離工程において分解するため、酸化グラフェンシートの収率が損なわれる。なお、本発明において、酸化度とは、CHNSO元素分析において、(Oの物質量)/(Cの物質量)と定義した値を意味する。
【0037】
次に、剥離工程では、酸化工程で得られた酸化グラファイトを層方向に剥離する。酸化グラファイトの剥離方法としては、酸化グラファイトに超音波を照射して行うことが好ましい。酸化グラファイトに超音波を照射することで、面内での破壊が起こらず、層方向にのみ剥離させることができ、面方向のサイズが大きい酸化グラフェンシートを高い収率で回収できる。
【0038】
超音波の照射条件は、酸化グラファイトを、溶媒中に浸し、20〜60kHの超音波を5〜120分照射して行うことが好ましい。溶媒としては、特に限定はないが極性溶媒が好ましい。例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上の混合液等が挙げられる。
【0039】
次に、スルホン化工程では、酸化グラフェンシートをスルホン化して、酸化グラフェンシートにスルホ基を導入する。
【0040】
酸化グラフェンシートのスルホン化は、硫酸中で加熱処理して行うことが好ましい。加熱処理温度は、酸化グラフェンシートやスルホ基の熱分解が生じる温度未満であればよく、100〜250℃の温度条件で行うことが好ましい。加熱条件が100℃未満であると、スルホ基を導入するのに時間を要し、生産性が低下する傾向にあり、250℃を超えると、酸化グラフェンシートやスルホ基が熱分解することがある。
【実施例】
【0041】
(製造例1)
5gのグラファイト粉末と3.8gの硝酸ナトリウムをアイスバスで冷やされたフラスコの中に入れた。フラスコに170mlの濃硫酸を入れ、全体が均一になるまで30分攪拌を続けた。この溶液に、22.5gの過マンガン酸カリウムを3分間に1gずつの投入速度で加え、2時間攪拌を続けた。その後、フラスコをアイスバスから取り出し、80℃のウォータバスに入れ、さらに5日間攪拌を続けグラファイトを十分に酸化させた。
得られたスラリーを、攪拌している500mlの硫酸(濃度5質量%)に加え、2時間攪拌を続けた。この溶液に過酸化水素水(濃度30質量%)を、溶液の色が茶色から明るい黄色になるまで添加し、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた溶液に、過酸化水素水(3質量%)と、硫酸(0.5質量%)が所定の濃度となっている混合溶液500mlを添加し、10000Gで5分間遠心分離を行った。得られた沈殿物を、再度、過酸化水素水(3質量%)と、硫酸(0.5質量%)が所定の濃度となっている混合溶液500mlで再分散した後、10000Gで5分間遠心分離を行った。この操作を計5回行い、最終沈殿物を回収して酸化グラファイトを得た(酸化工程)。
得られた酸化グラファイト(最終沈殿物)を、500mlの純水の中に入れ、60分間超音波分散して、酸化グラファイトのカーボン層を剥離した。10000Gで5分間遠心分離を行い、上澄み液を取り出した(剥離工程)。
得られた上澄みの20mlと、濃硫酸40mlをフラスコに入れ、内部を窒素で置換した。十分に窒素で置換した後、マントルヒーターで200℃に加熱した。途中、200℃に到達するまでは還流を行わず、それ以降は還流を行った。還流を15時間続け、酸化グラファイトの層剥離物にスルホ基を導入した(スルホン化工程)。
加熱後、室温まで空冷し、100mlの純水に加えた。この溶液に30mlのアセトンと20mlのヘキサンを加え、5分間放置した後、10000Gで5分間遠心分離をした。得られた沈殿物を、再度100mlの純水で分散し、30mlのアセトンと20mlのヘキサンを加え、5分間放置した後、10000Gで5分間遠心分離をした。この工程を計5回行った。
最終的に得られた固形物を80℃で真空乾燥することで、グラファイトを構成するカーボン層の単層剥離物(酸化グラフェン)や多層剥離物(酸化グラファイト)に、スルホ基が導入された固体酸が得られた。
【0042】
得られた固体酸のCHNSO元素分析を行ったところ、C、H、O、Sの組成は、C:H:O:S=3.5:2.6:4.8:1.0であった。また、原料の酸化グラファイトの組成は、C:H:O=1.1:1.3:1.0であった。このことから、得られた固体酸のスルホ基の導入量は、6.5mmol/gと見積もられた。また、得られた固体酸0.5gを純水50mlに分散させ、水酸化ナトリウムで中和滴定したところ、スルホ基の導入量は同様に6.5mmol/gと見積もられた。
【0043】
次に、得られた固体酸の水分散液をSi基板上に塗布、乾燥し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察を行った。図1は固体酸のAFM像であり、コントラストが薄い部分は、高さが高いことを意味する。点21から23にかけて、コントラストが薄い部分が広がっている。この部分が固体酸に相当する。これらの固体酸の面方向の円相当径は1.5〜2.5μmと観察された。図2は点21から点23にかけてスキャンした、ラインスキャン像であり、高さ方向の段差が固体酸の厚みに相当する。また、図1における点21〜23が、図2における点31〜33と対応する。点31〜33における段差はそれぞれ約0.8nmと観察された。
【0044】
同様に、Si基板上のランダムに選択した場所において存在する100枚の固体酸に対し、厚みを測定し、厚み分布を算出した。図3に示すとおり、厚み5nm以下の固体酸枚数は全体の90%以上であった。また、厚み10nm以上のものは観察されなかった。
【0045】
(製造例2)
製造例1のスルホン化工程において、加熱温度を50℃、100℃、150℃、250℃、300℃にした以外は製造例1と同様にして固体酸を得た。得られた固体酸のスルホ基密度は図4のようになった。また、300℃で加熱した場合は、酸化グラファイトが二酸化炭素にまで酸化されてしまい、加熱後回収することができなかった。
【0046】
(試験例1)
製造例1で得られた固体酸を固体酸触媒として、酢酸とエタノールの酸触媒反応を行った。得られた固体酸をフラスコ内に0.2g取り、0.1molの酢酸と0.1molのエタノールを加えた。フラスコ内を窒素パージし、70℃6時間攪拌した。反応後、0.5μmのメンブレンフィルターで濾過したところ、濾過液は透明であり、メンブレンフィルターによって、固体酸を全て取り出すことができた。このときの濾過液のpHは空気中での水と同等の酸性であった。また、生成した酢酸エチルはガスクロマトグラフで調べたところ、0.05mol生成していた。このことから、本発明の固体酸は、酸触媒として機能することが確認でき、容易に触媒を分離回収できることが確認できた。
【0047】
(試験例2)
製造例1で得られた固体酸とスルホ基含有フッ素樹脂を、イソプロパノール中で重量比で、固体酸:スルホ基含有フッ素樹脂=5:95になるように配合し、ボールミルで混合して、ワニスを調整した。得られたワニスをシャーレに入れ、150℃でイソプロパノールを除去し、プロトン伝導膜を作成した。得られたプロトン伝導膜のプロトン伝導度は、0.1S/cmであった。また、スルホ基含有フッ素樹脂のみでプロトン伝導膜を作成したところ、プロトン伝導度は、0.02S/cmであった。このことから、本発明の固体酸は、プロトン伝導に寄与していることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化グラフェン及び/又は厚さ10nm以下の酸化グラファイトをスルホン化することによって得られる固体酸。
【請求項2】
前記酸化グラフェン及び/又は前記酸化グラファイトの面方向の円相当径が1μm以上である請求項1に記載の固体酸。
【請求項3】
スルホ基が0.5〜10.0mmol/gのスルホン酸密度で導入されている請求項1又は2に記載の固体酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸を含むことを特徴とする固体酸触媒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸を含むことを特徴とするプロトン伝導膜。
【請求項6】
グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得て、得られた酸化グラファイトを層方向に剥離した後、スルホン化することを特徴とする固体酸の製造方法。
【請求項7】
前記酸化グラファイトに超音波を照射して層方向に剥離する、請求項6に記載の固体酸の製造方法。
【請求項8】
前記スルホン化は、硫酸中で加熱処理することにより行う請求項6又は7に記載の固体酸の製造方法。
【請求項9】
前記加熱を100〜250℃の範囲で行う請求項8に記載の固体酸の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−98843(P2011−98843A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252649(P2009−252649)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】