説明

固体電解質製造アセンブリ及び方法

固体電解質の製造システムは、電力供給部及びスーパーキャパシタ脱塩ユニットを有するスーパーキャパシタ脱塩装置を備える。スーパーキャパシタ脱塩ユニットは、電力供給部に電気的に接続された1対の電極を有し、充電運転モード及び放電運転モードで操作可能である。供給源は、スーパーキャパシタ脱塩ユニットが充電運転モードであるとき、供給液をスーパーキャパシタ脱塩ユニットに供給するように構成されている。供給液は1種類以上の所定の電解質を含有する。結晶化装置は、上記所定の電解質の飽和液体又は過飽和液体である濃縮液を放電運転モードのスーパーキャパシタ脱塩装置から受け取る。上記所定の電解質が結晶化装置で固体電解質として析出する。製造システムはさらに、結晶化装置の液体から固体電解質を固体電解質製品として分離する分離装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質の製造分野、特に塩水から固体電解質を製造するアセンブリ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩水、例えば海水、塩湖水、汽水又は工業的塩水製品を用いて固体電解質を製造している。従来の固体電解質製造方法の1つに、塩水から水を蒸発除去して固体電解質を得る蒸発プロセスなどの熱プロセスがある。塩水中の水の量は、普通、非常に多く、例えば、海水で約96.5重量%であり、蒸発プロセスは水を液体から蒸気に相変化させることが必要なため、蒸発プロセスの消費エネルギーは莫大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/094367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩水から固体電解質を製造する現在利用可能な装置又はシステムとは異なる装置又はシステムを開発することが望ましい。塩水から固体電解質を製造する現在利用可能な方法とは異なる方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、固体電解質の製造システムを提供する。製造システムは、電力供給部及びスーパーキャパシタ脱塩ユニットを有するスーパーキャパシタ脱塩装置を備える。スーパーキャパシタ脱塩ユニットは、電力供給部に電気的に接続された1対の電極を有し、充電運転モード及び放電運転モードで操作可能である。供給源は、スーパーキャパシタ脱塩ユニットが充電運転モードであるとき、供給液をスーパーキャパシタ脱塩ユニットに供給するように構成されている。供給液は1種類以上の所定の電解質を含有する。結晶化装置は、上記所定の電解質の飽和液体又は過飽和液体である濃縮液を放電運転モードのスーパーキャパシタ脱塩装置から受け取る。上記所定の電解質は、結晶化装置で固体電解質として析出する。製造システムはさらに、固体電解質を結晶化装置の液体から固体電解質製品として分離する分離装置を備える。
【0006】
一実施形態では、固体電解質を製造する方法を提供する。本方法は、スーパーキャパシタ脱塩ユニットを用いて充電工程時に供給液から溶解電解質イオンを吸着し、放電工程時にスーパーキャパシタ脱塩ユニットからイオンを脱着して濃縮液にし、濃縮液を結晶化装置内に通して濃縮液の溶解電解質イオンを結晶化装置で固体電解質として析出させ、固体電解質を濃縮液から電解質製品として分離する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【図1】本発明の一実施形態による固体電解質製造システムの具体例の線図である。
【図2】本発明の一実施形態による固体電解質製造システムの充電運転モード時のスーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置の具体例の線図である。
【図3】本発明の一実施形態による固体電解質製造システムの放電運転モード時のスーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置の具体例の線図である。
【図4】本発明の別の実施形態による固体電解質製造システムのSCD装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態による固体電解質製造システムの具体例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は固体電解質の製造分野に関する。本発明の実施形態の固体電解質製造システムを用いて塩水、例えば海水、塩湖水、汽水又は塩素アルカリ工業の塩水製品などの工業的塩水製品から固体電解質を製造することができる。以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明を簡単にするため、異なる実施形態で共通の要素には同じ参照番号を用いる。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量を修飾し、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動しうる数量を表現する際に適用される。したがって、「約」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。
【0010】
本明細書で用いる技術用語及び科学用語は、別途定義しない限り、本発明の属する技術分野の技術者によって通常理解されている意味をもつ。本明細書において「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、量又は重要性をも意味するものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別するために用いる。単数形で記載したものであっても、数を限定するものではなく、そのものが少なくとも1つ存在することを意味する。
【0011】
本明細書で用いる「電解質」という用語は、水中で解離できるすべての物質、例えばNaCl、CaSO4などの塩又はNaOHなどのアルカリをいう。
【0012】
「スーパーキャパシタ」は、普通のキャパシタと比べると比較的高いエネルギー密度をもつ電気化学的キャパシタである。本明細書で用いる「スーパーキャパシタ」という用語は、ウルトラキャパシタなどの他の高性能のキャパシタを含む。キャパシタは、1対の狭い間隔で並んだ導体(「電極」と呼ぶ)間の電界にエネルギーを蓄積することができる電気装置である。電圧がキャパシタに印加されると、等しい大きさであるが、反対極性の電荷が各電極に蓄積される。
【0013】
本明細書で用いる「濃度」という用語は、所定温度で単位体積の水に溶解した電解質の量をいう。「溶解度」は、所定温度で単位体積の水に溶解できる電解質の量をいう。「飽和水」は、所定温度で少なくとも1種の所定の電解質で飽和した水をいう。「過飽和水」は、少なくとも1種の電解質を所定温度で電解質の溶解限度を超える量含有する水をいう。「飽和率」は、所定温度での水における所定の電解質の濃度と同電解質の溶解度の比(濃度/溶解度)をいう。
【0014】
図1を参照すると、固体電解質製造システム10は、スーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置12を備える。SCD装置12は、複数回の連続運転サイクルを行うように制御され、各運転サイクルは、充電運転モード(図2)及び放電運転モード(図3)を含む。供給源14は、SCD装置12が充電運転モードのとき、供給液15をSCD装置12に供給する。供給液15は、少なくとも1種の所定の電解質(M+m-n)の溶解カチオン(M+)及びアニオン(X-)を含有する塩水である。結晶化装置16は、放電運転モードでSCD装置12から濃縮液18を受け取る。濃縮液18は、所定電解質(M+m-n)の飽和又は過飽和液体であり、結晶化装置16で固体電解質粒子として析出する。コントローラ19は、適切なバルブ、センサ、スイッチなどと信号授受関係にあり、これらを制御してSCD装置12及び結晶化装置16の運転を制御する。
【0015】
図1の実施形態では、放電運転モードのSCD装置12から濃縮液18を結晶化装置16が受け取る。一実施形態では、さらに、結晶化装置16の濃縮液18を経路52によりSCD装置12に戻し、連続的に循環させ、放電運転に再使用する。したがって、濃縮液18中のカチオン36及びアニオン38(図2及び図3)の濃度は、放電が継続するにつれて連続的に増加し、濃縮液18は所定電解質(M+m-n)の飽和又は過飽和水になる。結果として、飽和率は結晶化装置16で電解質(M+m-n)の析出が起こり始めるレベルまで増加する。結晶化装置16の析出速度と充電運転でのイオン除去速度が等しくなると、濃縮液18でのイオン(M+m-n)の飽和率は、それ以上増加せず、平衡に達する。
【0016】
図示した実施形態では、固体電解質製造システム10はさらに、結晶化装置18で電解質製品54として析出した固体電解質(M+m-n)を取り出す分離装置53を備える。一実施形態では、電解質製品54は各粒子の直径が0.001mm〜1.0mmの範囲である固体電解質粒子である。別の実施形態では、電解質製品54は電解質粒子を含有するスラリーである。分離装置53の実施形態には、沈降タンク、フィルタープレス、精密濾過フィルター、限外濾過フィルター、ハイドロサイクロン又は遠心分離機がある。一実施形態では、電解質製品54をSCD装置12の充電運転モードで結晶化装置から取り出す。
【0017】
一実施形態では、分離装置53はフィルターである。分離装置53内の固体電解質の取り出し後の液体を放電運転モード時に経路55よりSCD装置12に連続的に戻す。
【0018】
図2は充電運転モードのSCD装置12、図3は放電運転モードのSCD装置12の具体例を示す。図示した実施形態では、1例のSCD装置12は、脱塩容器20、電力供給部21及び容器20の容積内に収容され、電力供給部21に電気的に接続された1以上のSCDユニット22を有する。電力供給部21は、例えば電圧源、電流源又はエネルギー回収コンバータとすることができる。
【0019】
図2及び図3に示した実施形態では、SCDユニット22は、1対の電極24及び26、及び1対の電極24と26間に画成されたコンパートメント28を含む。一実施形態では、SCDユニット22はさらに、1対の電極24と26間にフロースペーサ30を有する。さらに、脱塩容器20は、供給源14からの供給液15がコンパートメント28に入る1以上の入口(図示せず)及びコンパートメント28からの排出液体が出る1以上の出口34を有する。外力を用いて液体を脱塩容器20内部に誘導することができる。適当な外力には、重力、吸引及びポンピングがある。
【0020】
ある実施形態では、第1電極24及び第2電極26のそれぞれは、コンパートメント28に露出された多孔質導電性部分及び電力供給部21への電気的接続のために多孔質導電性部分内に集電体(図示せず)を有する。集電体は、適当な金属構造、例えば、プレート、メッシュ、ホイル又はシートで形成できる。ある実施形態では、集電体は、チタン、白金、イリジウム、ロジウムなどの金属を含むことができる。別の実施形態では、集電体は、金属合金、例えばステンレス鋼を含むことができる。他の実施形態では、集電体は、グラファイト又はプラスチック材料を含むことができる。適当なプラスチック材料には、例えば、ポリオレフィンがある。適当なポリオレフィンには、ポリエチレンがあり、これは導電性カーボンブラック又は金属粒子と混合できる。
【0021】
ある実施形態では、多孔質導電性部分は、大きな表面積をもつ導電性材料又は導電性複合材料を含む。このような導電性材料には、カーボン、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、炭素布、カーボンエアロゲル、ニッケルなどの金属粉末、ルテニウム酸化物などの金属酸化物、導電性ポリマー及びこれらの混合物があげられる。
【0022】
一実施形態では、各電極の多孔質導電性部分は複数の細孔を有する。したがって、第1電極24及び第2電極26のそれぞれの表面積は大きい。一実施形態では、各電極のBrunauer−Emmet−Teller(BET)表面積は約2.0〜約5.5×106ft2lb-1、即ち約400〜1100m2-lの範囲である。一実施形態では、電極表面積は約1.3×107ft2lb-1、即ち約2600m2-1以下の範囲にすることができる。一実施形態では、第1電極24及び第2電極26のそれぞれの電気抵抗率は比較的低く、例えば40Ω・cm2未満である。一実施形態では、追加の材料を第1電極24及び第2電極26の表面に堆積することができ、このような追加の材料には、触媒、防汚剤、表面エネルギー改良剤などがある。一実施形態では、第1電極24及び第2電極26の集電体及び/又は多孔質導電性部分は同じでも異なってもよい。
【0023】
第1電極24及び第2電極26の表面積が大きいため、SCDユニット22は大きな吸着容量、高いエネルギー密度及び高い静電容量を有する。ある実施形態では、導電性材料の静電容量は約10F/g超である。ある実施形態では、材料の静電容量は、約10F/g〜約50F/g、約50F/g〜約75F/g、約75F/g〜約100F/g、約100F/g〜約150F/g、約150F/g〜約250F/g、約250F/g〜約400F/g、約400F/g〜約500F/g、約500F/g〜約750F/g、約750F/g〜約800F/g又は約800F/g超の範囲にすることができる。
【0024】
図示した実施形態では、第1電極24及び第2電極26は、プレートの形状であり、これらプレートが互いに平行に配置されて積層構造を形成しているが、別の実施形態では、第1電極24及び第2電極26は異なる形状でもよい。このような別の形状には、襞のある構成及び入れ子鉢状構成がある。一実施形態では、第1電極24及び第2電極26は、ロール型配置で互いが同心円状になるように配置することができる。
【0025】
適当なフロースペーサ30は電気絶縁ポリマーを含むことができる。適当な電気絶縁ポリマーにはオレフィン系材料がある。適当なオレフィン系材料には、ポリエチレン及びポリプロピレンがあり、これらはハロゲン化されていてもよい。他の適当な電気絶縁ポリマーには、例えばポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリアリーレンエーテル及びナイロンがある。さらに、フロースペーサ30の厚さは、約0.0000010cm〜約1cmの範囲にすることができる。一実施形態では、厚さは、約0.0000010cm〜約0.00010cm、約0.00010cm〜約0.010cm、約0.0010cm〜約0.1cm又は約0.10cm〜約1cmの範囲にすることができる。フロースペーサ30は膜、メッシュ、マット、シート、フィルム又は織物の形態にすることができる。流体連通にするために、フロースペーサ30は、多孔質、穿孔性とするか、1主表面から反対側の主表面まで延在する流路を有することができる。流路、細孔及び穿孔の平均直径は、5mm未満であり、内部を流れる液体の乱流を増加するように構成できる。一実施形態では、平均直径は、約5mm〜約4mm、約4mm〜約3mm、約3mm〜約2mm、約2mm〜約1mm、約1mm〜約0.5mm又は約0.5mm未満である。このような乱流増加は近接する電極の性能に良好な影響を与えることができる。
【0026】
図2を参照すると、充電運転モード時に第1電極24は、電力供給部21の正端子に接続され、正極として機能する。第2電極26は、電力供給部21の負端子に接続され、負極として機能する。供給源14から供給液15をSCDユニット22及び第1電極24と第2電極26間を通過させる。カチオン(M+)36は、負極(第2電極)26の導電性多孔質部分に向かって移動し、吸着され、アニオン(X-)38は、正極(第1電極)24に向かって移動し、吸着される。SCDユニット20内部でのこの電荷蓄積の結果として、SCDユニット20から出てくる排出液、即ち希釈液40は、カチオン(M+)36及びアニオン(X-)38の濃度が供給液15に比べて低い。一実施形態では、希釈液40をSCD装置12に戻すことにより再び電解質製造にかけることができる。別の実施形態では、希釈液40を例えば工業的用途のために排出する。
【0027】
図3を参照すると、充電運転モード後の放電運転モード時、吸着したカチオン及びアニオンは第1電極24及び第2電極26の表面から脱離する。ある実施形態では、SCDユニット20の放電運転モード時、第1電極24及び第2電極26の極性をそのままに維持するが、第1電極24と第2電極26間の電位差を小さくすると、アニオン38及びカチオン36が第1電極24及び第2電極26から脱離することができる。一方、別の実施形態では、SCDユニット20の放電モード時、第1電極24及び第2電極26の極性を反対にし、第2電極22に吸着したカチオン31が第1電極24に向かって移動し、アニオン32が第1電極24から第2電極26へ移動する。結果として、排出液(濃縮液42ともいう)は、カチオン及びアニオンの濃度が供給液15に比べて高い。その間、SCDユニット22から放出されたエネルギーは、再利用するか、エネルギー回収装置、例えば双方向DC−DCコンバータにより回収することができる。
【0028】
図4を参照すると、本発明の別の実施形態のSCD装置44は、複数のSCDユニット22を脱塩容器46に収容した構成である。各SCDユニット22は1対の電極24及び26及び1対の電極24と26間のコンパートメント28を有する。SCDユニット22は、並列に配列され、イオン不透過フィルム45により互いに隔離される。適当なイオン不透過フィルム30には導電性材料がある。適当な導電性材料には導電性添加剤を充填したオレフィン系ポリマーがある。適当なオレフィン系ポリマーには、ポリエチレン及びポリプロピレンがあり、これらはハロゲン化されていてもよい。適当な導電性添加剤には、グラファイト粉末、カーボンブラック粉末及び活性炭がある。図示した実施形態では、脱塩容器46が複数の入口48と複数の出口50とを有し、複数の入口48は並列の対応するそれぞれのコンパートメント28中に供給液15を同時に導入し、複数の出口50は充電運転モードで希釈液40となり、放電運転モードで濃縮液18となる排出液を出す。別の実施形態では、図には示されていないが、1つだけの入口48がコンパートメント28の1つに供給液15を導入し、1つのコンパートメント28の出口52が別のコンパートメント28の入口50と直列に連通して液体が各コンパートメント28を通過するような方法で複数のコンパートメント28を相互連結する。1つだけの出口52が排出液の排出口である。したがって、濃縮液18の電解質濃度を一層高くすることができる。他の実施形態では、SCD装置44を上記の並列及び直列モードを組合せた方法で構成できる。
【0029】
ある実施形態では、電解質の析出はその飽和又は過飽和の程度が非常に高くなるまで起こらないことがある。例えば、CaSO4は室温で500%の飽和率に達した後、透明な溶液中でCaSO4の析出が起こる。したがって、ある例では、電解質の飽和又は過飽和の程度が低い状態でシード粒子(図示せず)を図1の結晶化装置16中に添加してシード粒子の表面での析出を引き起こすことができる。例えば、CaSO4の析出は、十分なシード粒子の存在で105%〜120%のように低い飽和率で起こすことができる。
【0030】
一実施形態では、シード粒子は、製造する所定の種類の電解質の電解質粒子である。別の実施形態では、シード粒子は砂などの別の粒子とすることができる。ある実施形態では、粒子の平均直径は約0.001〜約1mmの範囲とすることができる。
【0031】
一実施形態では、供給源14からの供給液15は主に1種の所定電解質を含有する。1例では、供給液15は、塩素アルカリ工業の製品であるNaOH溶液であり、溶解Na+及びOH-を含有する。溶解NaOHの濃度は、供給液15のすべての溶解電解質の約10〜30%である。したがって、結晶化装置16で析出した固体電解質は非常に高純度のNaOH粒子を含有し、分離装置53からの電解質製品は非常に高純度のNaOH製品である。
【0032】
別の実施形態では、供給源14からの供給液15は2種類以上の電解質を含有する。したがって、結晶化装置14で析出した固体電解質は、上記の2種以上の電解質粒子の混合物を含有し、分離装置53からの電解質製品は上記の2種以上の電解質の混合物を含有することがある。
【0033】
図5は本発明の別の実施形態による固体電解質製造システム56を示す。固体電解質製造システム56は、第1SCD装置58、第2SCD装置60、第1結晶化装置62、第2結晶化装置64、第1分離装置66、第2分離装置68及びコントローラ70を備える。ある実施形態では、供給源14により供給される供給液15は、2種類以上の電解質(「第1電解質」及び「第2電解質」)を含有する。供給液15は第1SCD装置58を通る。供給液15の第1及び第2電解質の溶解カチオン及びアニオンは、第1SCD装置58の充電運転モード時に吸着され、放電運転モード時に脱離する。ある実施形態では、充電運転モードで得られる希釈液72を、第1SCD装置58の充電運転モード時に第1SCD装置58に戻すことにより再び電解質製造にかけたり、例えば工業的用途のために排出したりできる。
【0034】
図示した実施形態では、第1結晶化装置62は第1SCD装置58から濃縮液74を受け取る。ある実施形態では、コントローラ70は、第1結晶化装置62における溶解した第1及び第2電解質の濃度を制御するように構成されており、濃縮液74の第1及び第2電解質の一方だけが第1結晶化装置62で析出するが、他方の電解質は析出しないように制御する。
【0035】
一実施形態では、コントローラ70は、所定温度での第1結晶化装置62における第1及び第2電解質の濃度を測定し、コントローラ70に濃度シグナル78を送るセンサ装置76を有する。一実施形態では、電解質の濃度は15〜25℃の範囲の室温で測定される。センサ装置76の実施形態には、イオン選択性電極、導電性電極又はオフラインの定期的測定装置がある。コントローラ70は、濃度信号78を用いて以下の式1にしたがって第1及び第2電解質の飽和率(R)をそれぞれ計算する。
【0036】
R=C/Cs 式1
式中のCは第1結晶化装置62の電解質の濃度であり、Csは電解質の溶解度である。高い飽和率(R)は通常、電解質が析出しやすいことを意味する。コントローラ70は第1SCD装置58の運転を制御するように構成されており、1つの電解質の飽和率が十分に高く、この電解質が第1結晶化装置62で析出するが、他方の電解質の飽和率が十分に高くなく、第1結晶化装置62でその電解質の析出が起こらないように制御する。
【0037】
所定温度での第1及び第2電解質の溶解度は実質的に一定であり、したがって、飽和率は第1結晶化装置62における溶解電解質の濃度に関連するだけである。さらに、供給液中の2つの電解質の含量は決定されるので濃縮液74中の2つの電解質の比は実質的に一定である。したがって、コントローラ70は、第1SCD装置58の濃縮液74の総電解質濃度を制御するように構成されており、高い飽和率をもつ第1及び第2電解質の一方が析出するのに十分に高い濃度となり、低い飽和率をもつ第1及び第2電解質のもう一方が低い濃度となり、第1SCD装置58で析出しないように制御する。したがって、第1結晶化装置で析出する電解質は、非常に高純度電解質であり、さらに第1分離装置66により液体から第1電解質製品として分離される。
【0038】
1例では、供給液15はカチオン及びアニオンとしてCa++、SO4-、Na+及びCl-を含有する。したがって、4種類の電解質、具体的には硫酸カルシウム「CaSO4」、塩化ナトリウム「NaCl」、塩化カルシウム「CaCl2」及び硫酸ナトリウム「NaSO4」が濃縮液74から第1結晶化装置62で析出する。温度20℃での4つの電解質の溶解度は以下の表1の通りである。
【0039】
【表1】

一実施形態では、第1結晶化装置62における各溶解電解質の濃度を測定し、コントローラ70に送る。コントローラ70は、濃度測定値及び表1の溶解度を用いて式1にしたがって飽和率(R)を計算するように構成されており、さらに、最も高い飽和率(R)をもつ電解質が析出し、他の種類の電解質の飽和率は十分に高くなく、他の電解質種の析出は起こらないように第1SCD装置58の運転を制御する。
【0040】
表1に比較したように、CaSO4の溶解度は他の3種類の電解質よりはるかに低い。1例では、濃縮液74中のCaSO4の飽和率(R)が最も高く、濃縮液74がCaSO4の過飽和水であり、CaSO4の飽和率が1より大きい。一実施形態では、コントローラ70は、NaCl、CaCl2及びNa2SO4の飽和率(R)のそれぞれが1より小さくなるように制御する。一実施形態では、3種類の電解質のいずれかの飽和率が1に近づくと、バランスをとるために供給源14からの供給液15を第1結晶化装置62に流すようにも制御する。
【0041】
一実施形態では、充電モード時に供給液15の一部を第2SCD装置60に供給し、一方、放電モード時に第1分離装置66から液体を第2SCD装置60に供給する。充電及び放電運転モード時に吸着及び脱離することにより、さらに濃縮された濃縮液80を放電運転モードで第2結晶化装置64が受け取る。濃縮液80は、2種類以上の電解質の過飽和液体であり、上記電解質の混合物である固体電解質として析出する。固体電解質混合物はさらに、第2分離装置68により液体から第2電解質製品として分離される。
【0042】
本明細書の実施形態は、特許請求の範囲に記載した発明の構成要素に相当する構成要素を含む組成物、構造、システム及び方法の例である。本明細書では、特許請求の範囲に記載した発明の構成要素に同様に相当する代替構成要素を含む実施形態を当業者が製作し、実施できるようにしている。したがって、本発明の要旨は特許請求の範囲の文言と異ならない組成物、構造、システム及び方法を含み、さらに特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない別の構造、システム及び方法を含む。特定の特徴及び実施形態だけについて例示し、説明したが、多くの変更や改変を当業者が想起することができるであろう。特許請求の範囲はこれらの変更や改変をすべて含む。
【符号の説明】
【0043】
10 固体電解質製造システム
12 スーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置
14 供給源
15 供給液
16 結晶化装置
18 濃縮液
19 コントローラ
20 脱塩容器
21 電力供給部
22 SCDユニット
24、26 電極
28 コンパートメント
30 フロースペーサ
34 出口
36 カチオン
38 アニオン
40 希釈液
44 SCD装置
45 イオン不透過フィルム
46 脱塩容器
48 入口
50 出口
52 経路
53 分離装置
54 電解質製品
55 経路
56 固体電解質製造システム
58 第1SCD装置
60 第2SCD装置
62 第1結晶化装置
64 第2結晶化装置
66 第1分離装置
68 第2分離装置
70 コントローラ
72 希釈液
76 センサ装置
78 濃度シグナル
80 濃縮液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給部及び該電力供給部に電気的に接続された1対の電極を有し、充電運転モード及び放電運転モードで操作可能なスーパーキャパシタ脱塩ユニットを含むスーパーキャパシタ脱塩装置と、
スーパーキャパシタ脱塩ユニットが充電運転モードのときスーパーキャパシタ脱塩ユニットに1種類以上の所定の電解質を含有する供給液を供給するように構成された供給源と、
所定電解質の飽和液体又は過飽和液体である濃縮液を放電運転モードのスーパーキャパシタ脱塩装置から受け取る結晶化装置であって、所定の電解質が結晶化装置で固体電解質として析出する構成の結晶化装置と、
結晶化装置の液体から固体電解質を固体電解質製品として分離する分離装置と
を備える、固体電解質製造システム。
【請求項2】
1対の電極がそれぞれ多孔質導電性部分及び多孔質導電性部分に付着した集電体を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
多孔質導電性部分のBrunauer−Emmet−Teller(BET)表面積が約2.0〜約5.5×106ft2lb-lの範囲である、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
多孔質導電性部分がカーボン、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、炭素布、カーボンエアロゲル、金属粉末、導電性ポリマー又はこれらの混合物を含有する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
スーパーキャパシタ脱塩ユニットが1対の電極間にフロースペーサを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
スーパーキャパシタ脱塩装置が複数のスーパーキャパシタ脱塩ユニットを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
さらに、析出を誘導するための複数のシード粒子が結晶化装置内部に設けられている、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
供給液が2種類以上の溶解電解質を含有し、システムがさらに結晶化装置中の濃縮液を制御するように構成されたコントローラを備え、結晶化装置中の濃縮液が前記電解質の1種類の飽和又は過飽和水になり、それ以外の前記電解質で飽和未満になるように制御し、かくして水中で飽和又は過飽和になった電解質が結晶化装置で析出する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
コントローラが、濃縮液中の前記溶解電解質のそれぞれの飽和率を計算し、前記電解質の1種類の飽和率を1以上に制御し、その他の電解質の飽和率を1未満に制御するように構成された、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
その他の電解質の飽和率が1に近づくと、バランスをとるために供給液を結晶化装置に流すようにも制御する、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
さらに、第2スーパーキャパシタ装置、第2結晶化装置及び第2分離装置を備え、固体電解質の取り出し後、第1結晶化装置からの液体を第2スーパーキャパシタ脱塩装置の放電モード時の第2スーパーキャパシタ脱塩装置への供給液として用いる、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
第2スーパーキャパシタ装置からの濃縮液が、前記電解質両方の飽和又は過飽和電解質を含有し、第2結晶化装置に送られ、ここで前記電解質両方が固体電解質として析出し、第2結晶化装置から第2分離装置により取り出される、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記分離装置が沈降タンク、フィルタープレス、精密濾過フィルター、限外濾過フィルター、ハイドロサイクロン又は遠心分離機を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
スーパーキャパシタ脱塩ユニットを用いて充電工程時に供給液から溶解電解質イオンを吸着し、
放電工程時にスーパーキャパシタ脱塩ユニットからイオンを脱着して濃縮液にし、
濃縮液を結晶化装置に通して濃縮液の溶解電解質イオンを結晶化装置で固体電解質として析出させ、
固体電解質を濃縮液から電解質製品として分離する
工程を含む、固体電解質の製造方法。
【請求項15】
供給液が2種類以上の溶解電解質を含有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらに、濃縮液が前記電解質の1つで飽和又は過飽和になるように、それ以外の前記電解質で飽和未満になるように濃縮液を制御する工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
制御工程で、濃縮液中の前記電解質の濃度を測定し、前記電解質のそれぞれの濃縮率を計算し、前記電解質の1種類の飽和率を1以上になるように制御し、それ以外の前記電解質の飽和率が1未満になるように制御する、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−502369(P2013−502369A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525582(P2012−525582)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042673
【国際公開番号】WO2011/022154
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】