説明

固体高分子電解質とその膜及びそれを用いた膜/電極接合体並びに燃料電池

【課題】耐久性に優れ、製造容易な固体高分子電解質とその膜及びそれを用いた膜/電極接合体並びに燃料電池を提供する。
【解決手段】スルホアルキル基を側鎖に含むポリエーテルスルホン系高分子化合物、ポリエーテルエーテルケトン系高分子化合物、ポリフェニレンスサルフィッド系高分子化合物、ポリフェニレンエーテル系高分子化合物、ポリスルホン系高分子化合物、ポリエーテルケトン系高分子化合物、ポリケトン系高分子化合物及びポリアリールエーテルケトン系高分子化合物のいずれかよりなる芳香族炭化水素系高分子化合物からなり、イオン交換基当量重量250〜1000g/molを有する固体高分子電解質とその膜及びそれを用いた膜/電極接合体並びに燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等に用いられる電解質膜等に好適な耐酸化性等に優れ、低コスト高耐久性を有する新規な固体高分子電解質とその膜それを用いた膜/電極接合体並びに燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質は高分子鎖中にスルホン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されている。
【0003】
改質ガス燃料電池はプロトン伝導性の固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を設け、メタン、メタノール等、低分子の炭化水素を改質することにより得られる水素ガスを燃料ガスとして一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として他方の電極(空気極)へ供給し、起電力を得るものである。また、水電解は、固体高分子電解質膜を用いて水を電気分解することにより水素と酸素を製造するものである。
【0004】
燃料電池や水電解等の固体高分子電解質膜として、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(登録商標、旭化成工業株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)の商品名で知られる高いプロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸膜に代表されるふっ素系電解質膜が化学的安定性に優れていることから使用されている。
【0005】
また、食塩電解は固体高分子電解質膜を用いて塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより、水酸化ナトリウム、塩素と水素を製造するものである。この場合、固体高分子電解質膜は塩素と高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液にさらされるので、これらに対する耐性の乏しい炭化水素系電解質膜を使用することができない。そのため、食塩電解用の固体高分子電解質膜には、一般に、塩素及び高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液に対して耐性があり、さらに、発生するイオンの逆拡散を防ぐために表面に部分的にカルボン酸基を導入したパーフルオロスルホン酸膜が用いられている。
【0006】
ところで、パーフルオロスルホン酸膜に代表されるふっ素系電解質は、C−F結合を有しているために化学的安定性が非常に大きく、上述した燃料電池用、水電解用、あるいは食塩電解用の固体高分子電解質膜の他、ハロゲン化水素酸電解用の固体高分子電解質膜としても用いられ、さらにはプロトン伝導性を利用して、湿度センサ、ガスセンサ、酸素濃縮器等にも広く応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-93114号公報
【特許文献2】特開平9-245818号公報
【特許文献3】特開平11-116679号公報
【特許文献4】特表平10-503788号公報
【特許文献5】特表平11-510198号公報
【特許文献6】特表平11-515040号公報
【特許文献7】特開2000-106203号公報
【特許文献8】特開平9-102322号公報
【特許文献9】米国特許第4,012,303号公報
【特許文献10】米国特許第4,695,685号公報
【特許文献11】特公平1-42866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ふっ素系電解質は製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。そのため、ふっ素系電解質膜は、宇宙用あるいは軍用の固体高分子型燃料電池等、特殊な用途に用いられ、自動車用の低公害動力源としての固体高分子型燃料電池等、民生用への応用を困難なものとしていた。
【0009】
そこで、安価な固体高分子電解質膜として特許文献1にはスルホン化ポリエーテルエーテルケトン、特許文献2、特許文献3にはスルホン化ポリエーテルスルホン、特許文献4にはスルホン化アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンポリマー、特許文献5にはスルホン化ポリスルフィッド、特許文献6にはスルホン化ポリフェニレン等の芳香族炭化水素系電解質膜が提案された。これらエンジニアプラスチックをスルホン化した芳香族炭化水素系電解質膜はナフィオンに代表されるふっ素系電解質膜と比較すると、製造が容易で低コストという利点がある。しかし、その一方、芳香族炭化水素系電解質膜は劣化し易いという問題が残されていた。特許文献7によると、固体高分子電解質膜と空気極(酸化剤極)の界面に形成された触媒層において生成した過酸化水素が芳香族炭化水素骨格を酸化劣化させるため、芳香族炭化水素骨格を有する電解質膜は劣化し易い。
【0010】
そこで、ふっ素系電解質膜と同等以上の耐酸化劣化特性を有し、しかも低コストで製造可能な固体高分子電解質膜を得るために、従来から種々の試みがなされている。例えば、特許文献8には、炭化ふっ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成される、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜が提案されている。
【0011】
特許文献8に開示されているスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−ETFE膜は安価であり、燃料電池用の固体高分子電解質膜として十分な強度を有し、しかもスルホン酸基の導入量を増やすことによって導電率を向上させることが可能とされている。しかしながら、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−ETFE膜は、炭化ふっ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖部分の耐酸化劣化特性は高いが、スルホン酸基を導入した側鎖部分は、酸化劣化を受けやすい芳香族炭化水素系高分子である。従って、これを燃料電池に用いた場合には、膜全体の耐酸化劣化特性が不十分であり、耐久性に乏しいという問題がある。
【0012】
また、特許文献9及び特許文献10には、炭化ふっ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた膜に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜とした、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE膜が提案されている。これは、前記のスルホン酸基を導入したポリスチレン側鎖部の化学的安定性が十分ではないとの認識を前提に、スチレンの代わりに、部分的にふっ素化したα,β,β−トリフルオロスチレンを用いたものである。しかしながら、側鎖部分の原料となるα,β,β−トリフルオロスチレンは、合成が困難であるため、燃料電池用の固体高分子電解質膜として応用することを考えた場合には、前述のナフィオンの場合と同様にコストの問題がある。また、α,β,β−トリフルオロスチレンは重合反応性が低いためグラフト側鎖として導入できる量が少なく、得られる膜の導電率が低いという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、ふっ素系電解質と同等以上、もしくは実用上十分な耐劣化特性を有し、しかも製造容易な高耐久性固体高分子電解質それを用いた膜/電極接合体及び燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために電解質膜の劣化メカニズムを検討したところ、芳香族炭化水素系電解質膜の劣化は酸化劣化よりもむしろ芳香族環に直接スルホン酸基が結合しているため、強酸、高温下で芳香族環からスルホン酸基が脱離し、そのことによりイオン伝導率が低下する現象が主因であることが分かった。
【0015】
本発明に係る高耐久性固体高分子電解質は、スルホン酸基の代わりに(化1)で示されるスルホアルキル基を側鎖に導入したポリエーテルスルホン系高分子化合物、ポリエーテルエーテルケトン系高分子化合物、ポリフェニレンスサルフィッド系高分子化合物、ポリフェニレンエーテル系高分子化合物、ポリスルホン系高分子化合物、ポリエーテルケトン系高分子化合物、ポリケトン系高分子化合物及びポリアリールエーテルケトン系高分子化合物のいずれかよりなる芳香族炭化水素系高分子化合物からなることを要旨とするもので、ふっ素系電解質と同等以上、もしくは実用上十分な耐久性を有し、しかも経済的な高耐久性固体高分子電解質を得ることが可能となる。そして本発明は、イオン交換基当量重量250〜1000g/molを有するものであり、同じイオン交換基当量重量ならばスルホアルキル基を導入した電解質のイオン導電率はスルホン酸基を導入した電解質のイオン導電率より大きい利点がある。これはスルホアルキル基の方がスルホン酸基より運動し易いことと関係があるものと思われる。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明における前記芳香族炭化水素系高分子化合物が、イオン交換基当量重量250〜1000g/molのポリエーテルスルホン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜800g/molのポリエーテルエーテルケトン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜520g/molのポリフェニレンスサルフィッド系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜370g/molのポリフェニレンエーテル系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜750g/molのポリスルホン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜680g/molのポリエーテルケトン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜610g/molのポリケトン系高分子化合物及びイオン交換基当量重量250〜620g/molのポリアリールエーテルケトン系高分子化合物のいずれかよりなること、又、前述の高分子電解質を含む膜からなる高分子電解質膜が好ましい。
【0018】
更に、触媒金属の微粒子が担持された炭素材を有する導電材を高分子電解質膜の表面にバインダーによって結合する電極触媒被覆用溶液として、前記バインダーに前述に記載の高分子電解質を含むものが好ましい。
【0019】
本発明において膜/電極接合体は、前述の高分子電解質膜と、該高分子電解質膜を介して両側に配置されたカソード電極及びアノード電極からなるガス拡散電極とで構成される固体高分子型燃料電池用膜/電極接合体であること、又、前記ガス拡散電極が触媒金属の微粒子が担時された炭素材からなる導電材を高分子電解質膜の表面にバインダーによって結合された電極よりなり、前記バインダーが前述の高分子電解質を含むことが好ましい。
【0020】
又、本発明においては、高分子電解質膜と、該高分子電解質膜を介して両側に配置されたカソード電極及びアノード電極からなるガス拡散電極と、該ガス拡散電極を挟むように設置されたガス不透過性の一対のセパレータと、前記固体高分子電解質膜と前記セパレータとの間に配置された一対の集電材とを有する固体高分子型燃料電池において、前述の固体高分子電解質膜からなること、又、ガス拡散電極が前述に記載の固体高分子型燃料電池用膜/電極接合体からなることが好ましい。
【0021】
本発明のスルホアルキル化芳香族炭化水素系電解質はスルホアルキル基を側鎖に導入した主鎖に芳香族環を有する炭化水素系電解質であれば特に制限は無い。具体例としては、1977年イギリスのICI社によって開発された(化2)で代表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ドイツBASF社で開発された半結晶性のポリアリールエーテルケトン(PAEK)、住友化学工業等で販売されている(化3)で代表される構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックスで販売されているポリケトン(PK)、住友化学工業、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックスや三井化学等で販売されている(化4)で代表される構造単位を有するポリエーテルスルホン(PES)、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックスで販売されている(化5)で代表される構造単位を有するポリスルホン(PSU)、東レ、大日本化学工業、トープレン、出光石油化学や呉羽化学工業等で販売されている(化6)で代表される構造単位を有するリニア或いは架橋型のポリフェニレンサルフィッド(PPS)、旭化成工業、日本ジーイープラスチックス、三菱エンジニアリングプラスチックスや住友化学工業で販売されている(化7)で代表される構造単位を有する変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等のエンジニアリングプラスチック或いはそのポリマアロイに(化1)で表されるスルホアルキル基を側鎖に導入した芳香族炭化水素系高分子化合物である。このうち、主鎖の耐酸化劣化特性の観点からスルホアルキル化PEEK、PEAK、PEK、PK、PPS、PESが好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
芳香族炭化水素系高分子或いはそのポリマアロイに(化1)で表されるスルホアルキル基を側鎖に導入する際に用いるスルホアルキル化方法には、特に制限はないが、具体的な方法として例えば、J.Amer.Chem.Soc.,76,5357-5360(1954)に記載されているような(化8)に示すサルトンを用いて芳香族環にスルホアルキル基を導入する方法がある。
【0029】
【化8】

【0030】
又、芳香族環の水素をリチウムに置換し、次いでジハロゲノアルカンでハロゲノアルキル基に代え、スルホアルキル基に変換する方法やテトラメチレンハロゲニウムイオンを用いてハロゲノブチル基を導入し、ハロゲンをスルホン酸基に変換する方法などがある。(化9)を参照。
【0031】
【化9】

【0032】
芳香族炭化水素系高分子化合物をスルホアルキル化する際に用いるスルホアルキル化方法には、特に制限はないが、コストの観点から上記(化8)で表される方法が好ましい。
【0033】
本発明で用いられる高分子電解質のイオン交換基当量重量は250〜1000g/molのスルホアルキル化ポリマーであ。又、好ましくは、300〜1500g/molである。さらに好ましくは350〜1000g/molである。イオン交換基当量重量が2500g/molを越えると出力性能が低下することがあり、250g/molより低いと該重合体の耐水性が低下し、それぞれ好ましくない。
【0034】
なお、本発明でイオン交換基当量重量とは、導入されたスルホアルキル基単位モルあたりの該スルホアルキル化ポリマーの分子量を表し、値が小さいほどスルホアルキル化度が高いことを示す。イオン交換基当量重量は、1H-NMRスペクトロスコピー、元素分析、特許文献11に記載の酸塩基滴定、非水酸塩基滴定(規定液はカリウムメトキシドのベンゼン・メタノール溶液)等により測定が可能である。
【0035】
スルホアルキル化された該高分子電解質のイオン交換基当量重量を250〜2500g/molに制御する方法としては、芳香族炭化水素系高分子とスルホアルキル化剤の配合比、反応温度、反応時間、芳香族炭化水素系高分子の化学構造等を変化させることで、目的とするイオン交換基当量重量を有するスルホアルキル化ポリマーを得ることができる。
【0036】
本発明で用いられる高分子電解質を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態で使用される。スルホアルキル化ポリマーを膜へ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)あるいは溶融状態より製膜する方法(溶融プレス法もしくは溶融押し出し法)等が可能である。具体的には前者については、たとえばポリマー溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する。
【0037】
製膜に用いる溶媒は、高分子を溶解し、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N'-ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、i-プロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコールが好適に用いられる。
【0038】
該高分子電解質膜の厚みは特に制限はないが10〜200μmが好ましい。特に30〜100μmが好ましい。実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能向上のためには200μmより薄い方が好ましい。溶液キャスト法の場合、膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。溶融状態より製膜する場合、膜厚は溶融プレス法あるいは溶融押し出し法等で得た所定厚さのフィルムを所定の倍率に延伸することで膜厚を制御できる。
【0039】
また、本発明の電解質を製造する際に、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用できる。
【0040】
燃料用電池として用いる際の膜/電極接合体に使用されるガス拡散電極は、触媒金属の微粒子を担持した導電材により構成されるものであり、必要に応じて撥水剤や結着剤が含まれていてもよい。また、触媒を担持していない導電材と必要に応じて含まれる撥水剤や結着剤とからなる層を、触媒層の外側に形成してもよい。このガス拡散電極に使用される触媒金属としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。このような触媒の中で、特に白金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は10〜300オングストロームである。これらの触媒はカーボン等の担体に付着させた方が触媒の使用量が少なくコスト的に有利である。触媒の担持量は電極が成形された状態で0.01〜10mg/cm2が好ましい。
【0041】
導電材としては、電子導伝性物質であればいずれのものでも良く、例えば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられ、これらが単独あるいは混合して使用される。撥水剤としては、例えばふっ素化カーボン等が使用される。バインダーとしては本発明の電極触媒被覆用溶液をそのまま用いることが接着性の観点から好ましいが、他の各種樹脂を用いても差し支えない。その場合は撥水性を有する含ふっ素樹脂が好ましく、特に耐熱性、耐酸化性の優れたものがより好ましく、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。
【0042】
燃料用電池として用いる際の電解質膜と電極接合法についても特に制限はなく、公知の方法を適用することが可能である。膜/電極接合体の製作方法として、例えば、カーボンに担持させたPt触媒紛をポリテトラフルオロエチレン懸濁液と混ぜ、カーボンペーパーに塗布、熱処理して触媒層を形成する。次いで、電解質膜と同一の電解質溶液を触媒層に塗布し、電解質膜とホットプレスで一体化する方法がある。この他、電解質膜と同一の電解質溶液を予めPt触媒紛にコーテイングする方法、触媒ペーストを電解質膜の方に塗布する方法、電解質膜に電極を無電解鍍金する方法、電解質膜に白金族の金属錯イオンを吸着させた後、還元する方法等がある。
【0043】
固体高分子型燃料電池は、以上のように形成された電解質膜とガス拡散電極との接合体の外側に燃料流路と酸化剤流路を形成する溝付きの集電体としての燃料配流板と酸化剤配流板を配したものを単セルとし、このような単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構成される。燃料電池は、高い温度で作動させる方が、電極の触媒活性が上がり電極過電圧が減少するため望ましいが、電解質膜は水分がないと機能しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、ふっ素系電解質と同等以上、もしくは実用上十分な耐劣化特性を有し、しかも製造容易な高耐久性固体高分子電解質とその膜及びそれを用いた膜/電極接合体並びに燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】固体高分子型燃料電池用電池単セルの構造を示す図。
【図2】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図3】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図4】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図5】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図6】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図7】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図8】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図9】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図10】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図11】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図12】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図13】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図14】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図15】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図16】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【図17】固体高分子型燃料電池用電池単セルの電流密度−出力電圧を示す図。
【図18】固体高分子型燃料電池用電池単セルの耐久性試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0046】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
【0047】
(1)イオン交換基当量重量
測定しようとするスルホアルキル化ポリマーを密閉できるガラス容器中に精秤(a(グラム))し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩撹拌した。系内に発生した塩化水素を0.1Nの水酸化ナトリウム標準水溶液(力価f)にて、指示薬にフェノールフタレインを用いて滴定(b(ml))した。イオン交換基当量重量(g/mol)は下式より求めた。
イオン交換基当量重量=(1000×a)/(0.1×b×f)
(2)燃料電池単セル出力性能評価
電極を接合した電解質を評価セルに組み込み、燃料電池出力性能を評価した。反応ガスには、水素/酸素を用い、共に1気圧の圧力にて、23℃の水バブラーを通して加湿した後、評価セルに供給した。ガス流量は、水素60ml/min、酸素40ml/min、セル温度は、70℃とした。電池出力性能は、H201B充放電装置(北斗電工社製)により評価した。
【0048】
(実施例1)
(1)スルホプロピル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、21.6gのポリエーテルスルホン(PES)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、8時間還流した。次いで、反応物を25ミリリットルの濃塩酸を添加した氷水500ミリリットルに注ぎ、反応を停止させた。反応溶液を1リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホプロピル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量は980g/molであった。
【0049】
スルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリエーテルスルホンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0050】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホプロピル化ポリエーテルスルホン1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量は初期と変わらず980g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例1の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の960g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質は後述の比較例1の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0051】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚42μmの電解質膜Iを作成した。得られた電解質膜Iのイオン導電率は5S/cmであった。
【0052】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜Iとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例1の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質IIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質膜は後述の比較例1の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0053】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液I)を調整した。この電極触媒被覆用溶液Iを前記(2)で得られた電解質膜Iの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体Iを作製した。
【0054】
40重量%の白金担持カーボンに、後述の比較例1の(2)に記載した電極触媒被覆用溶液IIを前記(2)で得られた電解質膜Iの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体I'を作製した。
【0055】
40重量%の白金担持カーボンに、パーフロロスルホン酸電解質の5重量%濃度のアルコール−水混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜Iの両側に塗布した。電解質膜と電極触媒被覆溶液は分離し、均一に塗布できず、膜/電極接合体を作製することができなかった。電極触媒被覆用溶液として電極触媒被覆用溶液Iが優れている。
【0056】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体Iとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体Iは高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0057】
又、ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体I'とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体I'は電極が若干剥がれていたが膜はしっかりしており、発電能力をあった。
【0058】
一方、後述の比較例1の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IIと電極触媒被覆用溶液IIを用いて作製した膜/電極接合体IIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピルポリクロロトリフルオロエチレン電解質膜/電極接合体は後述の比較例1の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0059】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
前記膜/電極接合体I又はI'を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。即ち、高分子電解質膜1、酸素極2及び水素極3は前述の(3)で製作された膜/電極接合体4によって構成され、その両電極に薄いカーボンペーパーのパッキング材によって支持し、シールされる集電材5を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)6からなる図1に示す固体高分子型燃料電池単セルを作製した。酸素極2がカソード電極及び水素極3がアノード電極となる。
【0060】
前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図2に示す。図2中の12は本願発明の電解質膜/電極接合体Iを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図2中の13は電解質膜/電極接合体I'を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図2中の14はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図2の12に示すように出力電圧は初期0.8Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図2の14のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。
【0061】
一方、図2中の15(後述に記載した比較例1のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルは、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例1及び比較例1の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例1の燃料電池単セルの出力電圧が比較例1の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例1の膜/電極接合体が比較例1の膜/電極接合体より優れているからである。
【0062】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0063】
(比較例1)
(1)スルホン化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、25gのポリエーテルスルホン(PES)と濃硫酸125mlを入れた。窒素気流下、室温にて一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下ロウトより48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するためゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃にて3.5時間撹拌してスルホン化した。次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下しでスルホン化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホン化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量は960g/molであった。
【0064】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホン化ポリエーテルスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホン化ポリエーテルスルホン電解のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホン化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量は3000g/molと初期の960g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。
【0065】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホン化ポリエーテルスルホン電解質を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚45μmの電解質膜IIを作成した。得られた電解質膜IIのイオン導電率は0.02S/cmであった。
【0066】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜IIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、電解質膜IIは破け、ぼろぼろになっていた。
【0067】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液II)を調整した。この電極触媒被覆用溶液IIを前記(2)で得られた電解質膜IIの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体IIを作製した。
【0068】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体IIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体IIの膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。
【0069】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
比較例1の膜/電極接合体IIの両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果、図2の15に示すように出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間600時間後で出力電圧が無くなった。
【0070】
スルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリエーテルスルホンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0071】
実施例1及び比較例1の(1)から分かるように安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質はスルホン化芳香族炭化水素電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0072】
実施例1及び比較例1の(1)及び(2)から分かるように実施例1のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は980g/mol、比較例1のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は960g/molと、実施例1のイオン交換基当量重量が比較例1のものと比較して大きいにも拘らず(通常、イオン交換基当量重量が小さいものほどイオン伝導率は大きい)、実施例1の電解質膜のイオン導電率は比較例1の電解質膜のイオン導電率より大きく、実施例1の電解質膜は比較例1の電解質膜より優れている。又、実施例1及び比較例1の(2)から分かるように安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質膜はスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0073】
実施例1及び比較例1の(3)から分かるように安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質膜/電極接合体はスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0074】
又、実施例1及び比較例1の(4)から分かるように実施例1の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧は比較例1の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧より大きく、実施例1の電極触媒被覆用溶液は比較例1の電極触媒被覆用溶液より優れている。本発明の燃料電池単セルは低コストでパーフルオロスルホン酸系燃料電池単セルと同等の耐久性があり、スルホン化芳香族炭化水素系燃料電池単セルと異なって実用上十分な耐久性を有している。
【0075】
図2から分かるように12(実施例1の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.8Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図2中の14のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、15(比較例1の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例1及び比較例1の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例1の燃料電池単セルの出力電圧が比較例1の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例1の膜/電極接合体が比較例1の膜/電極接合体より優れているからである。
【0076】
(実施例2)
(1)スルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、14.5gのポリエーテルエーテルケトン、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、30時間還流した。次いで、反応溶液を0.5リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン交換基当量重量は800g/molであった。
【0077】
スルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリエーテルエーテルケトンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/40以下と安価である。
【0078】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず800g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例2の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で2500g/molと変化し、初期の600g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質は後述の比較例2の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0079】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドン溶媒に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚42μmの電解質膜IIIを作成した。
【0080】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜IIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例2の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質IVは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホンは後述の比較例2の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0081】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)のN−メチルピロリドン溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液III)を調整した。この電極触媒被覆用溶液IIIを前記(2)で得られた電解質膜IIIの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体IIIを作製した。
【0082】
40重量%の白金担持カーボンに、後述の比較例2の(3)の電極触媒被覆用溶液IVを前記(2)で得られた電解質膜IIIの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体III'を作製した。
【0083】
40重量%の白金担持カーボンに、パーフロロスルホン酸電解質の5重量%濃度のアルコール−水混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜IIIの両側に塗布した。電解質膜と電極触媒被覆用は分離し、均一に塗布できず、膜/電極接合体を作製することができなかった。
【0084】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体IIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体IIIは高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0085】
又、ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体III'とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体III'は電極が若干剥がれていたが膜はしっかりしており、発電能力をあった。
【0086】
一方、後述の比較例2の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IVと電極触媒被覆用溶液IVを用いて作製した膜/電極接合体IVは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピルポリクロロトリフルオロエチレン電解質膜/電極接合体は後述の比較例2の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0087】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体III及びIII'を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。これらの膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。膜/電極接合体IIIを組みこんだ燃料電池単セルの電流密度−電圧プロットを図3に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.6(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.76(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0088】
実施例2の膜/電極接合体III及びIII'の両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図4に示す。図4中の16は本願発明の電解質膜/電極接合体IIIを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図4中の17は電解質膜/電極接合体III'を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図4中の18はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図4の16に示すように出力電圧は初期0.76Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図4の18のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図4中の19(後述に記載した比較例2のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間5000時間後で出力が無くなった。
【0089】
このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例2及び比較例2の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例2の燃料電池単セルの出力電圧が比較例2の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例2の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例2の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例2の膜/電極接合体が比較例2の膜/電極接合体より優れているからである。
【0090】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0091】
(比較例2)
(1)スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、6.7gのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と96%の濃硫酸100mlを入れた。窒素気流下、60℃にて60分撹拌して溶解した。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながらオレウム(20wt%のSO3を含む)を添加し、濃硫酸濃度を98.5wt%とした。次いで、80℃にて30分加熱した。反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン交換基当量重量は600g/molであった。
【0092】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質のイオン
交換基当量重量は2500g/molと初期より大きくなり、スルホン基が解離していた。
【0093】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚45μmの電解質膜IVを作成した。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質膜IVのイオン導電率は0.02S/cmであった。
【0094】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質膜IVとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン電解質膜は破け、ぼろぼろになっていた。
【0095】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液IV)を調整した。この電極触媒被覆用溶液IVを前記(2)で得られた電解質膜IVの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体IVを作製した。
【0096】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体IVとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体IVの膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。
【0097】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
比較例2の膜/電極接合体IVの両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果、図4の19に示すように出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間5000時間後に出力が無くなった。
【0098】
スルホプロピル化ポリエーテルエーテルケトン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリエーテルエーテルケトンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/40以下と安価である。
【0099】
実施例2及び比較例2の(1)から分かるように実施例2のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質は比較例2のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質より、120℃イオン交換水に対して安定である。
【0100】
実施例2及び比較例2の(3)から分かるように実施例2の電極触媒被覆用溶液は芳香族炭化水素系膜に対して、パーフルオロスルホン酸系電極触媒被覆用溶液より優れている。また、実施例2及び比較例2の(4)から分かるように実施例2の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧は比較例2の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧より大きく、実施例2の電極触媒被覆用溶液は比較例2の電極触媒被覆用溶液より優れている。
【0101】
図4から分かるように16(実施例2の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.8Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図4中の18のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、19(比較例2の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間5000時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例2及び比較例2の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例2の燃料電池単セルの出力電圧が比較例2の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例2の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例2の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例2の膜/電極接合体が比較例2の膜/電極接合体より優れているからである。
【0102】
(実施例3)
(1)スルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッドの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、10.8gのポリフェニレンサルフィッド(PPS)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのアセトフェノンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、10時間還流した。次いで、反応溶液を0.5リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッドを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質のイオン交換基当量重量は520g/molであった。
【0103】
スルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリフェニレンサルフィッドを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べて1/50以下と安価である。
【0104】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず520g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例3の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3500g/molと変化し、初期の500g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質は後述の比較例3の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0105】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質を5重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドン溶媒に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚46μmの電解質膜Vを作成した。
【0106】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜Vとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例3の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質VIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質膜は後述の比較例3の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0107】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)電解質VのN−メチルピロリドン溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液V)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜Vの片側に塗布した後、乾燥した。又、40重量%の白金−ルテニウム合金担持カーボンに、前記(2)電解質VのN−メチルピロリドン溶液を、白金−ルテニウム合金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液V')を調整した。この電極触媒被覆用溶液V'を前記(2)で得られた電解質膜Vの残りの側に塗布した後、乾燥した。白金担持量0.25mg/cm2(酸素極)と白金−ルテニウム合金担持量0.3mg/cm2(水素極)の膜/電極接合体Vを作製した。
【0108】
後述の比較例3の電極触媒被覆用溶液VIを用いた以外、全く同一にして白金担持量0.25mg/cm2(酸素極)と白金−ルテニウム合金担持量0.3mg/cm2(水素極)の膜/電極接合体V'を作製した。
【0109】
40重量%の白金担持カーボンに、パーフロロスルホン酸電解質の5重量%濃度のアルコール−水混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜Vの両側に塗布した。電解質膜と電極触媒被覆用は分離し、均一に塗布できず、膜/電極接合体を作製することができなかった。
【0110】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体Vとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体Vは高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0111】
又、ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体V'とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体V'は電極が若干剥がれていたが膜はしっかりしており、発電能力をあった。
【0112】
一方、後述の比較例1の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜VIと電極触媒被覆用溶液VIを用いて作製した膜/電極接合体VIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質膜/電極接合体は後述の比較例3の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0113】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。膜/電極接合体Vを用いた単電池セルの電流密−出力電圧プロットを図5に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.63(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.78(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0114】
又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図6に示す。図6中の20は本願発明の電解質膜/電極接合体Vを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図6中の21は電解質膜/電極接合体V'を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図6中の22はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図6の20に示すように電解質膜/電極接合体Vを用いた燃料電池単セルの出力電圧は初期0.78Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図6の22のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図6中の23(後述に記載する比較例3のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。
【0115】
また、実施例3及び比較例3の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例3の燃料電池単セルの出力電圧が比較例3の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例3の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例3の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例3の膜/電極接合体が比較例3の膜/電極接合体より優れているからである。
【0116】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0117】
(比較例3)
(1)スルホン化ポリフェニレンサルフィッドの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、5℃にて12gのポリフェニレンサルフィッド(PPS)と220mlのクロロ硫酸を入れた。窒素気流下、5℃にて30分撹拌してPPSを溶解した。次いで、20℃にて150分、50℃にて60分保持した。反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホン化ポリフェニレンサルフィッドを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルフィッドのイオン交換基当量重量は500g/molであった。
【0118】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホン化ポリエーテルスルホン1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホン化ポリフェニレンサルフィッドのイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホン化ポリフェニレンサルフィッドのイオン交換基当量重量は3500g/molと初期より大きくなり、スルホン基が解離していた。
【0119】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚45μmのスルホン化ポリフェニレンサルフィッド電解質膜VIを作成した。得られた膜VIのイオン導電率は0.02S/cmであった。
【0120】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホン化ポリフェニレンサルフィッド電解質膜VIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、スルホン化ポリフェニレンサルフィッド電解質膜VIは破け、ぼろぼろになっていた。
【0121】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液VI)を調整した。この電極触媒被覆用溶液VIを前記(2)で得られた電解質膜VIの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体VIを作製した。
【0122】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体VIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体VIの膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。
【0123】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
比較例3の膜/電極接合体VIの両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果、図6の23に示すように出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。
【0124】
スルホプロピル化ポリフェニレンサルフィッド電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリフェニレンサルフィッドを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べて1/50以下と安価である。
【0125】
実施例3及び比較例3の(1)から分かるように実施例3のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質は比較例3のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質より、120℃のイオン交換水に対して安定である。
【0126】
実施例3及び比較例3の(1)及び(2)から分かるように実施例3のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は520g/mol、比較例3のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は500g/molと、実施例3のイオン交換基当量重量が比較例3のものと比較して大きいにも拘らず(通常、イオン交換基当量重量が小さいものほどイオン伝導率は大きい)、実施例3の電解質膜のイオン導電率は比較例2の電解質膜のイオン導電率より大きくため、実施例3の電解質膜は比較例3の電解質膜より優れている。
【0127】
実施例3及び比較例3の(3)から分かるように実施例3の電極触媒被覆用溶液は芳香族炭化水素系膜に対して、パーフルオロスルホン酸系電極触媒被覆用溶液より優れている。又、実施例3及び比較例3の(4)から分かるように実施例3の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧は比較例3の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧より大きく、実施例3の電極触媒被覆用溶液は比較例3の電極触媒被覆用溶液より優れている。
【0128】
図6から分かるように20(実施例3の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.78Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図6中の22のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、23(比較例3のスルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例3及び比較例3の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例3の燃料電池単セルの出力電圧が比較例3の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例3の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例3の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例3の膜/電極接合体が比較例3の膜/電極接合体より優れているからである。
【0129】
(実施例4)
(1)スルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイドの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、12.0gの変性ポリフェニレンオキサイド(m−PPE)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのジメチルスルホキシドを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、150℃に8時間保った。次いで、反応物を25ミリリットルの濃塩酸を添加した氷水500ミリリットルに注ぎ、反応を停止させた。有機物層を分離し、水洗、オクチルアルコールを数滴添加した炭酸ナトリウム水溶液で中和した。水酸化アルミニウムを濾別、濾液を活性炭で脱色した後、溶媒を揮散させた。得られたスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量は370g/molであった。
【0130】
スルホプロピル化ポリフェニレンオキサイド電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリフェニレンオキサイドを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0131】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず520g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例4の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3500g/molと変化し、初期の490g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質は後述の比較例4の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0132】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚42μmのスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIを作成した。得られた膜VIIのイオン導電率は0.01S/cmであった。
【0133】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜VIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例4の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質VIIIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜は後述の比較例4の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0134】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液VII)を調整した。この電極触媒被覆用溶液VIIを前記(2)で得られたスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIの両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体VIIを作製した。
【0135】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体VIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体VIIは高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0136】
一方、後述の比較例4の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜VIIIと電極触媒被覆用溶液VIIIを用いて作製した膜/電極接合体VIIIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピル化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜/電極接合体は後述の比較例4の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0137】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体VIIを沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体VIIを評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密−電圧プロットを図7に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.69(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.82(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図8に示す。図8中の24は本願発明の電解質膜/電極接合体VIIを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図8中の25はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図8の24に示すように出力電圧は初期0.82Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図8の25のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図8中の26(後述に記載する比較例4のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。
【0138】
このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例4及び比較例4の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例4の燃料電池単セルの出力電圧が比較例4の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例4の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例4の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例4の膜/電極接合体が比較例4の膜/電極接合体より優れているからである。
【0139】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0140】
(比較例4)
(1)スルホン化変性ポリフェニレンオキサイドの合成
拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、5℃にて12gのポリフェニレンオキサイド(m−PPE)と220mlのクロロ硫酸を入れた。窒素気流下、℃5にて30分撹拌してPPSを溶解した。次いで、20℃にて150分、5℃0にて60分保持した。反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホン化変性ポリフェニレンオキサイドを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量は490g/molであった。
【0141】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120に℃2週間保持した。その後、冷却してスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質のイオン交換基当量重量は3500g/molと初期より大きくなり、スルホン基が解離していた。
【0142】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚45μmのスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIIを作成した。得られたスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIIのイオン導電率は0.02S/cmであった。
【0143】
スルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、スルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜VIIIは破け、ぼろぼろになっていた。
【0144】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)スルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液VIII)を調整した。この電極触媒被覆用溶液VIIIを前記(2)で得られたスルホン化変性ポリフェニレンオキサイド電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体VIIIを作製した。
【0145】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体VIIIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体VIIIの膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。
【0146】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
比較例4の膜/電極接合体VIIIの両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果、図8の26に示すように出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。
【0147】
スルホプロピル化ポリフェニレンオキサイド電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリフェニレンオキサイドを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0148】
実施例4及び比較例4の(1)から分かるように実施例4のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質は比較例4のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質より、12℃0のイオン交換水に対して安定である。
【0149】
実施例4及び比較例4の(1)及び(2)から分かるように実施例4のアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は520g/mol、比較例4のスルホン酸基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は490g/molと、実施例4のイオン交換基当量重量が比較例4のものと比較して大きいにも拘らず(通常、イオン交換基当量重量が小さいものほどイオン伝導率は大きい)、実施例4の電解質膜のイオン導電率は比較例4の電解質膜のイオン導電率より大きくため、実施例4の電解質膜は比較例4の電解質膜より優れている。
【0150】
実施例4及び比較例4の(3)から分かるように実施例4の電極触媒被覆用溶液は芳香族炭化水素系膜に対して、パーフルオロスルホン酸系電極触媒被覆用溶液より優れている。
【0151】
また、実施例4及び比較例4の(4)から分かるように実施例4の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧は比較例4の電極触媒被覆用溶液を用いた燃料電池単セルの出力電圧より大きく、実施例4の電極触媒被覆用溶液は比較例4の電極触媒被覆用溶液より優れている。
【0152】
図8から分かるように24(実施例4の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.82Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図8中の25のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、26(比較例4の燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例4及び比較例4の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例4の燃料電池単セルの出力電圧が比較例4の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例4の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例4の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例4の膜/電極接合体が比較例4の膜/電極接合体より優れているからである。
【0153】
(実施例5)
(1)スルホプロピル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、11.6gのポリエーテルスルホン(PES)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのアセトフェノンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、8時間還流した。次いで、反応溶液を0.5リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホプロピル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量は700g/molであった。
【0154】
スルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリエーテルスルホンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0155】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホプロピル化ポリエーテルスルホン1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、12℃0に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量は初期と変わらず700g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例1の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の960g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質は後述の比較例1の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0156】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN,N'-ジメチルホルムアミド溶液に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚40μmの電解質膜IXを作成した。
【0157】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜IXとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、電解質膜IXのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例1の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホンは後述の比較例1の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0158】
(3)電極触媒被覆用溶液および膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)のN,N'-ジメチルホルムアミド溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液IX)を調整した。この電極触媒被覆用溶液IXを前記(2)で得られた電解質膜IXの片側に塗布した後、乾燥した。又、40重量%の白金−ルテニウム合金担持カーボンに、前記(2)のN,N'-ジメチルホルムアミド溶液を、白金−ルテニウム合金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液IX')を調整した。この電極触媒被覆用溶液IX'を前記(2)で得られた電解質膜IXの残りの側に塗布した後、乾燥した。白金担持量0.29mg/cm2(酸素極)と白金−ルテニウム合金担持量0.32mg/cm2(水素極)の膜/電極接合体IXを作製した。ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体IXとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体IXは高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0159】
一方、後述の比較例1の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IIと電極触媒被覆用溶液IIを用いて作製した膜/電極接合体IIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリエーテルスルホン電解質膜/電極接合体は後述の比較例1の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0160】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体IXを沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体IXを評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密度−電圧プロットを図9に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.63(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.80(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0161】
また、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図10に示す。図10中の27は本願発明の電解質膜/電極接合体IXを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図10中の28はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図10の27に示すように出力電圧は初期0.80Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図10の28のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図10中の29(比較例1のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。
【0162】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0163】
(実施例6)
(1)スルホプロピル化ポリスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、22.1gのポリスルホン(PSU)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶媒(1:1)を入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、100℃に24時間保った。次いで、反応物を25ミリリットルの濃塩酸を添加した氷水500ミリリットルに注ぎ、反応を停止させた。有機物層を分離し、水洗、オクチルアルコールを数滴添加した炭酸ナトリウム水溶液で中和した。水酸化アルミニウムを濾別、濾液を活性炭で脱色した後、溶媒を揮散させた。得られたスルホプロピル化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量は750g/molであった。
【0164】
スルホプロピル化スルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリスルホンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0165】
スルホプロピル化ポリスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず750g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、後述の比較例5の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の700g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリスルホン電解質は後述の比較例5の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0166】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホプロピル化ポリスルホン電解質を5重量%の濃度になるようにトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶媒(1:1)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚42μmのスルホプロピル化ポリスルホン電解質膜Xを作成した。
【0167】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホプロピル化ポリスルホン電解質膜Xとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、後述の比較例5の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質XIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリスルホン電解質膜は後述の比較例5の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0168】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)のトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液X)を調整した。この電極触媒被覆用溶液Xを前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体Xを作製した。
【0169】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体Xとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体は高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0170】
一方、後述の比較例5の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜XIと電極触媒被覆用溶液XIを用いて作製した膜/電極接合体XIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピル化スルホン電解質膜/電極接合体は後述の比較例5の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0171】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体Xを沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体Xを評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密度−出力電圧プロットを図11に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.68(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.81(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0172】
又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図12に示す。図12中の30は本願発明の電解質膜/電極接合体Xを用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図12中の31はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図12の30に示すように出力電圧は初期0.81Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図12の31のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。
【0173】
一方、図12中の32(比較例5のスルホン化芳香族炭化水素電解質XIを使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例6及び比較例5の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例6の燃料電池単セルの出力電圧が比較例5の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例6の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例5の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例6の膜/電極接合体が比較例5の膜/電極接合体より優れているからである。
【0174】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0175】
(比較例5)
(1)スルホン化ポリスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、25gのポリスルホン(PSU)と濃硫酸125mlを入れた。窒素気流下、室温にて一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下ロウトより48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するためゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃にて3.5時間撹拌してスルホン化した。次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下しでスルホン化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホン化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量は700g/molであった。
【0176】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホン化ポリスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホン化ポリスルホン電解のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホン化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量は3000g/molと初期の700g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。
【0177】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られたスルホン化ポリスルホン電解質を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚45μmの電解質膜XIを作成した。得られた電解質膜XIのイオン導電率は0.02S/cmであった。
【0178】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記電解質膜XIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、電解質膜XIは破け、ぼろぼろになっていた。
【0179】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の5重量%濃度のN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液XI)を調整した。この電極触媒被覆用溶液XIを前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体XIを作製した。
【0180】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体XIとイオン交換水20ミリリットルを入れ、12℃0に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体XIの膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。
【0181】
(4)燃料電池単セルの耐久性試験
比較例5の膜/電極接合体XIの両側に薄いカーボンペーパーのパッキング材(支持集電体)を密着させて、その両側から極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)からなる固体高分子型燃料電池単セルを作製し、電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果、図12の32に示すように出力電圧は初期0.68Vで、稼動時間600時間後で出力電圧が無くなった。
【0182】
(実施例7)
(1)スルホプロピル化ポリスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、22.1gのポリスルホン(PSU)、12.2g(0.1モル)のプロパンサルトン、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、24時間還流した。次いで、反応物を25ミリリットルの濃塩酸を添加した氷水500ミリリットルに注ぎ、反応を停止させた。有機物層を分離し、水洗、オクチルアルコールを数滴添加した炭酸ナトリウム水溶液で中和した。水酸化アルミニウムを濾別、濾液を活性炭で脱色した後、溶媒を揮散させた。得られたスルホプロピル化ポリスルホンのイオン交換基当量重量は660g/molであった。
【0183】
スルホプロピル化スルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリスルホンを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/50以下と安価である。
【0184】
スルホプロピル化ポリスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホプロピル化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホプロピル化ポリスルホン電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず660g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、比較例5の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質のイオン交換基当量重量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の700g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリスルホン電解質は後述の比較例5の(1)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0185】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶媒(1:1)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚38μmの電解質膜を作成した。
【0186】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホプロピル化ポリスルホン電解質膜とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、比較例5の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質XIは同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホプロピル化ポリスルホン電解質膜は比較例5の(2)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0187】
(3)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)のトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。
【0188】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体は高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。
【0189】
一方、比較例5の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質を用いて作製した膜/電極接合体は同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホプロピル化スルホン電解質膜/電極接合体は比較例5の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0190】
(4)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密度−電圧プロットを図13に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.75(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.83(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0191】
又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図14に示す。図14中の33は本願発明の電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図14中の34はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図14の33に示すように出力電圧は初期0.83Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図14の34のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。
【0192】
一方、図14中の35(比較例5のスルホン化芳香族炭化水素電解質XIを使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.63Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。
【0193】
又、実施例7及び比較例5の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例7の燃料電池単セルの出力電圧が比較例5の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例7の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例5の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例7の膜/電極接合体が比較例5の膜/電極接合体より優れているからである。
【0194】
(5)燃料電池の作製
前記(4)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0195】
(実施例8〜実施例13)
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、芳香族炭化水素系高分子、サルトン、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。撹拌しながら約30分かけて14.7g(0.11モル)の無水塩化アルミニウムを加えた。無水塩化アルミニウムの添加終了後、所定温度に所定時間保った。次いで、反応物を25ミリリットルの濃塩酸を添加した氷水150ミリリットルに注ぎ、反応を停止させた。次いで、反応溶液を0.5リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホアルキル化芳香族炭化水素を析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホアルキル化芳香族炭化水素電解質のイオン交換基当量重量の測定、電解質膜及び電解質膜/電極接合体の耐水劣化特性、及び燃料電池単セルの評価を行った。
【0196】
その結果を表1に示す。スルホアルキル化芳香族炭化水素電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックを原料に1工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/40以下と安価である。又、実施例8〜13のスルホアルキル化芳香族炭化水素電解質をポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器中イオン交換水中で120℃/2週間保持した後のイオン交換基当量重量は比較例1のスルホン化芳香族炭化水素電解質と異なり、初期と変わらず、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定でコストと特性が両立して優れている。実施例8〜13のスルホアルキル化芳香族炭化水素電解質膜をポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器中イオン交換水中で120℃/2週間保持した後の形態は比較例1のスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、初期と変わらず、高価なパーフルオロスルホン酸電解質膜と同様に安定でコストと特性が両立して優れている。
【0197】
実施例8〜13のスルホアルキル化芳香族炭化水素電解質膜/電極接合体をポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器中イオン交換水と120℃に2週間加熱しても比較例1のスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり初期と変化せず、高価なパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体と同様に安定でコストと特性が両立して優れている。又、300mA/cm2で5000時間稼動後の実施例8〜13のスルホアルキル化芳香族炭化水素電解質を用いた単電池セルの出力は比較例1のスルホン化芳香族炭化水素系電解質を用いた単電池セルと異なり、初期と変わらず、高価なパーフルオロスルホン酸電解質を用いた単電池セルと同様に安定でコストと特性が両立して優れている。
【0198】
【表1】

【0199】
(実施例14)
(1)クロルメチル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、21.6gのポリエーテルスルホン(PES)、60g(2モル)のパラホルムアルデヒド、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。10℃0に保って撹拌しながら73gの塩化水素ガスを吹き込んだ。吹き込み終了後、150℃に4時間保った。次いで、反応溶液を1リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでクロルメチル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃にて一晩減圧乾燥した。
【0200】
(2)スルホメチル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、10gの前記クロルメチル化ポリエーテルスルホン、乾燥した50mlのニトロベンゼン、30gの硫酸ナトリウムを入れ、100℃にて5時間撹拌した。更に、10ミリリットルのイオン交換水を加え、5時間撹拌した。次いで、反応溶液を1リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホメチル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量は600g/molであった。
【0201】
本製造方法で得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリポリエーテルスルホンを原料に2工程で製造でき、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/30以下と安価である。しかし、実施例1のようにポリポリエーテルスルホンを直接サルトンでスルホアルキル化して得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは実施例14の製造方法より1工程少ないため、実施例14の製造方法で得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストの1/1.5となり、直接サルトンでスルホアルキル化する製造方法のほうがコスト的に有利である。
【0202】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず600g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、比較例1の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素電解質のイオン交換基当量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の960g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質は安価なスルホン化芳香族炭化水素電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0203】
(3)電解質膜の作製
前記(2)で得られたスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質を5重量%の濃度になるようにトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶媒(1:1)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、8℃0で真空乾燥して膜厚42μmのスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜を作成した。
【0204】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記℃スルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、比較例1の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質は同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜は安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0205】
(4)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(3)のトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。
【0206】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記膜/電極接合体とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体は高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、比較例1の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IIと電極触媒被覆用溶液IIを用いて作製した膜/電極接合体IIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜/電極接合体は比較例1の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0207】
(5)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密度−出力電圧プロットを図15に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.68(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.82(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0208】
又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図16に示す。図16中の36は本願発明の電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図16中の37はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図16の36に示すように出力電圧は初期0.82Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図16の37のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図16中の38(比較例1のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。
【0209】
このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例14及び比較例1の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例14の燃料電池単セルの出力電圧が比較例4の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例14の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例14の膜/電極接合体が比較例1の膜/電極接合体より優れているからである。
【0210】
(6)燃料電池の作製
前記(5)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0211】
(実施例15)
(1)ブロモヘキサメチル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、23.2gのポリエーテルスルホン(PES)、乾燥した50mlのニトロベンゼンを入れた。これに6.5gのn−ブトキシリチウムを加え、室温に2時間保った。次いで、100gの1,6−ジブロモヘキサンを加え、更に12時間撹拌した。反応溶液を1リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでブロモヘキサメチル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0212】
(2)スルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、10gの前記ブロモヘキサメチル化ポリエーテルスルホン、乾燥した50mlのニトロベンゼン、30gの硫酸ナトリウムを入れ、100℃にて5時間撹拌した。更に、10ミリリットルのイオン交換水を加え、5時間撹拌した。次いで、反応溶液を1リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。得られたスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホンのイオン交換基当量重量は600g/molであった。
【0213】
本製造方法で得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは市販の安価なエンジニアプラスチックであるポリポリエーテルスルホンを原料に2工程で製造できる為、原料が高価で5工程を経て製造されるパーフルオロスルホン酸電解質のコストに比べ1/30以下と安価である。しかし、実施例1のようにポリポリエーテルスルホンを直接サルトンでスルホアルキル化して得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストは実施例14の製造方法より1工程少ないため、実施例14の製造方法で得られるスルホアルキル化ポリエーテルスルホン電解質のコストの1/1.5となり、コスト的に有利である。
【0214】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られたスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質1.0gとイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その後、冷却してスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量を測定した。その結果、スルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質のイオン交換基当量重量は初期と変わらず600g/molと高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定であった。一方、比較例1の(1)に示したように安価なスルホン化芳香族炭化水素電解質のイオン交換基当量は同一加温加水分解条件で3000g/molと変化し、初期の960g/molの値より大きくなり、スルホン基が解離していた。即ち、安価なスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質は安価なスルホン化芳香族炭化水素電解質と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸電解質と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0215】
(3)電解質膜の作製
前記(2)で得られた生成物を5重量%の濃度になるようにN,N'−ジメチルホルムアミド−シクロヘキサノン−メチルエチルケトン混合溶媒(体積比20:80:25)に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して膜厚42μmの電解質膜を作成した。得られたスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜のイオン導電率は8S/cmであった。
【0216】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、そのイオン導電率は高コストのパーフルオロスルホン酸膜と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、比較例1の(2)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質は同一加温加水分解条件で破け、ぼろぼろになっていた。即ち、安価なスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜は安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0217】
(4)電極触媒被覆用溶液及び膜/電極接合体の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(3)のトリクロロエタン−ジクロロエタンの混合溶液を、白金触媒と高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(3)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。
【0218】
ポリテトラフルオロエチレンコーテングのSUS製密閉容器に得られた前記スルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜/電極接合体とイオン交換水20ミリリットルを入れ、120℃に2週間保持した。その結果、膜/電極接合体は高コストのパーフルオロスルホン酸膜とパーフルオロスルホン酸電解質を用いて作製した膜/電極接合体と同様に初期と変わらず、膜もしっかりしていた。一方、比較例1の(3)に示したように比較的安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜IIと電極触媒被覆用溶液IIを用いて作製した膜/電極接合体IIは同一加温加水分解条件で膜は破け、ぼろぼろになり、電極は剥がれていた。即ち、安価なスルホヘキサメチル化ポリエーテルスルホン電解質膜/電極接合体は比較例1の(3)に記載した安価なスルホン化芳香族炭化水素系電解質膜/電極接合体と異なり、高価なパーフルオロスルホン酸膜/電極接合体と同様に安定を示し、コストと特性が両立して優れている。
【0219】
(5)燃料電池単セル出力性能評価
前記膜/電極接合体を沸騰した脱イオン水中に2時間浸漬することにより吸水させた。得られた膜/電極接合体を評価セルに組みこみ、燃料電池出力性能を評価した。得られた電流密度−出力電圧プロットを図17に示す。電流密度1(A/cm2)のとき出力電圧は0.68(V)で、電流密度300(mA/cm2)のとき出力電圧は0.83(V)で固体高分子型燃料電池単セルとして十分使用可能であった。
【0220】
又、前記固体高分子型燃料電池単セルを電流密度300mA/cm2の条件で長時間稼動試験を行った。その結果を図18に示す。図18中の39は本願発明の電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図18中の40はパーフルオロスルホン酸電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池単セルの耐久性試験結果である。図18の39に示すように出力電圧は初期0.83Vで、稼動時間5000時間後でも初期と変わらず、図18の40のパーフルオロスルホン酸膜を用いた結果と同等であった。一方、図18中の41(比較例1のスルホン化芳香族炭化水素電解質を使用した燃料電池単セル)の出力電圧は初期0.73Vで、稼動時間600時間後で出力が無くなった。
【0221】
このことから芳香族炭化水素の芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルが、スルホン基と直接結合した芳香族炭化水素系電解質を用いた燃料電池単セルより耐久性に優れていることが明白である。又、実施例15及び比較例1の膜/電極接合体の白金担持量が0.25mg/cm2と同じであるにも拘わらず、実施例15の燃料電池単セルの出力電圧が比較例4の燃料電池単セルの出力電圧より大きい理由は実施例15の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率が比較例1の膜/電極接合体の電解質膜及び電極触媒被覆用溶液のイオン導電率より大きく、実施例15の膜/電極接合体が比較例1の膜/電極接合体より優れているからである。
【0222】
(6)燃料電池の作製
前記(5)で作製した単電池セルを36層積層した固体高分子型燃料電池を作製したところ、3kWの出力を示した。
【0223】
以上、いずれの実施例においても、スルホアルキル化芳香族炭化水素系電解質は安価なエンジニアプラスチックを原料にし1工程で製造できることから、従来の原料な高価と5工程を経て製造されているパーフロロスルホン酸膜に代表されるふっ素系電解質膜に比べ、そのコストは1/40以下と安価で、1工程で製造できる高い生産性を有する。又、芳香族環にアルキル基を介してスルホン酸基を結合することにより、芳香族環に直接結合したスルホン酸基と異なり、イオン導電率も大きく、スルホン酸基が強酸・高温下で解離せず、実用上十分な高耐久性を示す。更に、本発明に係るスルホアルキル化芳香族炭化水素系電解質を用いた膜/電極接合体は、燃料電池として実用上十分な高耐久性を示し、製造工程の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0224】
1…高分子電解質膜、2…酸素極、3…水素極、4…膜/電極接合体、5…集電材、6…セパレータ、7…空気、8…空気+水、9…水素+水、10…残留水素、11…水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(化1)で表されるスルホアルキル基を側鎖に含む芳香族炭化水素系高分子化合物を有し、該芳香族炭化水素系高分子化合物が、ポリエーテルスルホン系高分子化合物、ポリエーテルエーテルケトン系高分子化合物、ポリフェニレンスサルフィッド系高分子化合物、ポリフェニレンエーテル系高分子化合物、ポリスルホン系高分子化合物、ポリエーテルケトン系高分子化合物、ポリケトン系高分子化合物及びポリアリールエーテルケトン系高分子化合物のいずれかよりなり、イオン交換基当量重量250〜1000g/molであることを特徴とする固体高分子電解質。
【化1】

【請求項2】
請求項1において、芳香族炭化水素系高分子化合物が、イオン交換基当量重量250〜1000g/molのポリエーテルスルホン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜800g/molのポリエーテルエーテルケトン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜520g/molのポリフェニレンスサルフィッド系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜370g/molのポリフェニレンエーテル系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜750g/molのポリスルホン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜680g/molのポリエーテルケトン系高分子化合物、イオン交換基当量重量250〜610g/molのポリケトン系高分子化合物及びイオン交換基当量重量250〜620g/molのポリアリールエーテルケトン系高分子化合物のいずれかよりなることを特徴とする固体高分子電解質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高分子電解質を含む膜からなることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項4】
触媒金属の微粒子が担持された炭素材を有する導電材からなる電極材が、固体高分子電解質膜の表面にバインダーによって結合された膜/電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜及び前記バインダーの少なくとも一方が請求項3に記載の固体高分子電解質を有することを特徴とする膜/電極接合体。
【請求項5】
固体高分子電解質膜の一方の面にアノード電極及び他方の面にカソード電極が形成された膜/電極接合体を有する燃料電池において、前記膜/電極接合体が請求項4に記載の膜/電極接合体からなることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−238754(P2009−238754A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114158(P2009−114158)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2004−202560(P2004−202560)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】