説明

固形物分離システム

【課題】分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、設置スペースを縮小する。
【解決手段】原水ポンプ10で発生した水流を利用して流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集してフロックを形成する凝集剤を注入する凝集剤注入装置12と、水流を利用して、凝集剤が注入された原水を攪拌して送出する第1攪拌装置13と、攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを形成するとともに、水流を利用して送出するフロック形成槽14と、フロックを含む原水を流入すると、水流を利用して流入した原水を旋回するとともに、遠心力によって固形物であるフロックと処理水とに分離する遠心分離装置15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理や浄水処理等の水処理で固形物を含む原水から固形物を分離する固形物分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水処理では、懸濁物質や濁度成分等の固形物の分離処理には、図13に示すように凝集剤及び凝集助剤を利用するフロック形成と、重力沈降槽における沈降分離とを組み合わせた固形物分離システム1が多く利用されている。
【0003】
図13に示す固形物分離システム1では、処理対象となる原水は、原水ポンプ100によって混和槽101に送水される。混和槽101では、原水と、凝集剤注入装置103によって注入された凝集剤とが混和装置102によって混和される。混和槽101で凝集剤と混和された原水は、反応槽104に送水される。反応槽104では、原水と、凝集助剤注入装置106によって注入された凝集助剤とが混合装置105によって混合される。反応槽106で凝集助剤と混合された原水は、フロック形成槽107に送水される。フロック形成槽107では、フロキュレータ108が凝集を促進してフロックを成長させる。フロック形成槽107で形成されたフロックを含む原水は、重力沈降槽109に送水される。原水を重力沈降槽109内に所定時間以上滞留させることで、フロックと水との比重差によって比重の大きい固形物のフロックを沈降させて原水からフロックを分離する。また、固形物分離システム1では、フロックが沈降後の清澄な上澄み液を処理水とする。
【0004】
すなわち、重力沈降を利用するシステムでは、フロックが沈降するために必要な時間、原水を重力沈降槽109に滞留させる必要がある。したがって、重力沈降槽109は、容量を大きくする必要がある。これに対し、重力沈降槽109の容量を縮小するとともに、分離効率を向上する目的で、傾斜管や傾斜板を利用して処理速度の向上することができるが、処理速度の短縮や重力沈降槽109の容量の縮小には限界があった。
【0005】
この重力沈降の利用による処理速度の短縮や重力沈降槽の容量の縮小の課題を解決する有効な手段として、液体サイクロンのような遠心分離装置がある(例えば、特許文献1参照)。液体サイクロンでは内部で砂分を含む原水を旋回させ、遠心力を利用して所定の粒径以上の砂分を、原水から分離する。このような液体サイクロンでは、重力よりも加速度の大きな遠心力を利用するため、重力を利用する場合よりも短時間で固形物である砂分を分離することができるとともに、液体サイクロンの容量を重力沈降槽の容量よりも縮小することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−313900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液体サイクロンでは、原水を高速で旋回させるため、結合力の小さいフロックのように旋回流で破壊されやすい物質の分離には液体サイクロンを利用することはできなかった。したがって、原水からフロックのように破壊されやすい物質を分離するためには処理速度が長くて容量が大きい重力沈降槽の使用が避けられなかった。
【0008】
したがって、本発明によれば、分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、設置スペースを縮小する固形物分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、原水ポンプを介して固形物を含む原水を流入し、この原水を固形物と処理水とに分離する固形物分離システムであって、原水ポンプで発生した水流を利用して流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集してフロックを形成する凝集剤を注入する凝集剤注入装置と、水流を利用して、凝集剤が注入された原水を攪拌して送出する第1攪拌装置と、攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを形成するとともに、水流を利用して送出するフロック形成槽と、フロックを含む原水を流入すると、水流を利用して流入した原水を旋回するとともに、遠心力によって固形物であるフロックと処理水とに分離する遠心分離装置とを備える。
【0010】
また、他の形態に係る本発明は、原水ポンプを介して固形物を含む原水を流入し、この原水を固形物と処理水とに分離する固形物分離システムであって、原水ポンプの前段を流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集してフロックを形成する凝集剤を注入する凝集剤注入装置と、原水ポンプで発生した水流を利用して、凝集剤が注入された原水を攪拌して送出する第1攪拌装置と、攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを形成するとともに、水流を利用して送出する第1フロック形成槽と、フロックを含む原水を流入すると、水流を利用して流入した原水を旋回するとともに、遠心力によって固形物であるフロックと処理水とに分離する遠心分離装置とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、固形物分離システムにおける分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、設置スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図2】第2の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図3】第3の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図4】第4の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図5】第5の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図6】第6の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図7】第7の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図8】第8の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図9】第9の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図10】第10の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図11】第11の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図12】第12の実施形態に係る固形物分離システムの概略図である。
【図13】従来の固形物分離システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を用いて本発明の各実施形態に係る固形物分離システムについて説明する。本発明に係る固形物分離システムは、図13を用いて上述した従来の固形物分離システム1と同様に、排水処理や浄水処理等の水処理において、懸濁物質や濁度成分等の固体を含む原水を固体と液体とに分離する装置である。以下の説明において、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
〈第1の実施形態〉
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る固形物分離システム1aは、処理対象となる原水を導入する原水ポンプ10と、送水ライン11を流れる原水に凝集剤を注入する凝集剤注入装置12と、送水ライン11上で原水と注入された凝集剤とを攪拌する攪拌装置13と、凝集剤と攪拌された原水が流入すると、凝集剤により原水に含まれる固形物をフロックに成長させるフロック形成槽14と、成長したフロックを含む原水が流入すると、フロックとなった固形物を分離する遠心分離装置15とを備えている。
【0015】
原水ポンプ10は、固形物分離システム1aに導入する原水を遠心分離装置15にまで送水されるような水流で送水する。
【0016】
凝集剤注入装置12は、送水ライン11を流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集させる凝集剤を注入する。この凝集剤注入装置12は、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸バンド、ポリ硫酸鉄等の無機系の凝集剤から、原水に含まれる固形物に応じて選択された適当な種類及び量の凝集剤を注入する。
【0017】
攪拌装置13は、送水ライン11上に設けられ、ラインミキサ等、水流のみを利用して他の動力を必要とせずに原水と凝集剤とを攪拌する装置である。攪拌装置13で原水と凝集剤を攪拌することにより、フロック形成槽14内でフロックを成長しやすくする。
【0018】
フロック形成槽14では、攪拌装置13で凝集剤と攪拌された原水が流入すると、内部に滞留中に原水に含まれる固形物が凝集し、フロックが形成される。フロック形成槽14は密閉形状であり、形成されたフロックを含む原水は、原水ポンプ10の水流によって新たに流入する原水によって押し出され、遠心分離装置15に送水される。
【0019】
フロック形成槽14に流入する原水には、溶解性のガス、凝集剤供給の際に侵入したガスが含まれることがある。このフロック形成槽14は、密閉型であるため、原水に含まれて侵入したガス(気体)を排出する機構がないと、フロック形成槽14内でガスやスカムが残存し、フロック形成の効率を低下させることがある。したがって、フロック形成槽14には、フロック形成槽14内で残存しているガスを排出するガス抜き機構141と、スカムを排出するスカム抜き機構141を備えることが望ましい。ガス抜きやスカム抜きの機構141を備えたフロック形成槽14では、内部でのフロックの残存を防止することができる。
【0020】
遠心分離装置15は、内部で流入した原水を回転させて遠心力を発生させ、この遠心力によってフロックに重力よりも大きい加速度を与え、沈降速度を高めながらフロックを沈降させて原水を処理水と固形物(フロック)に分離する。
【0021】
上述したように、第1の実施形態に係る固形物分離システム1aでは、従来の固形物分離システムで必要であった混和槽を備えず、原水ポンプ10からフロック形成槽14に原水を送水する送水ライン11上に攪拌装置13を設置している。また、固形物分離システム1aでは、従来の固形物分離システムで必要であった重力沈降槽に代えて、遠心力を利用して固形物を沈降させる機能を有する重力沈降槽よりも小型の遠心分離装置15を有している。したがって、固形物分離システム1aによれば、固形物分離システム1aを簡易化してコンパクトにし、設置スペースを縮小することができる。
【0022】
また、固形物分離システム1aでは、遠心分離装置15が旋回流を発生して重力とともに遠心力を利用してフロックを沈降させる。したがって、固形物分離システム1aによれば、従来の重力のみを利用する場合と比較して短時間でフロックを沈降させるため、分離効率を向上することができる。
【0023】
さらに、固形物分離システム1aでは、原水ポンプ10のみによって遠心分離装置15にまで原水を送水しており、攪拌装置13及び遠心分離装置15は水流の動力のみによって攪拌又は分離することができる。したがって、固形物分離システム1aは、原水ポンプ10以外の動力を必要としないため、低エネルギを実現することができる。すなわち、固形物分離システム1aは、従来の固形物分離システム1で必要であった混和装置102、混合装置105、フロキュレータ108及び重力沈降槽109で沈降したフロックを収集する手段(図示せず)を運転するための動力を必要としないため、低エネルギを実現することができる。
【0024】
〈第2の実施形態〉
図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る固形物分離システム1bは、図1を用いて上述した第1の実施形態に係る固形物分離システム1aと比較して、送水ライン(第1送水ライン)11、凝集剤注入装置12、攪拌装置(第1攪拌装置)13、フロック形成槽(第1フロック形成槽)14の他に、第2送水ライン16、凝集助剤注入装置17、第2攪拌装置18及び第2フロック形成槽19を備えている点で異なる。
【0025】
図3に示す固形物分離システム1bでは、遠心分離装置15には、第1フロック形成槽14から原水が送水されるのではなく、第2送水ライン16を介して第2フロック形成槽19に原水が送水される。
【0026】
凝集助剤注入装置17は、第2送水ライン16を流れる原水に、凝集剤によって形成されるフロックを強固に又は大きく形成させる凝集助剤を注入する。この凝集助剤注入装置17は、ポリアクリルアミド等の有機高分子凝集剤やポリシリカ等の無機高分子凝集剤から、原水に含まれる固形物に応じて選択された適当な種類及び量の凝集助剤を注入する。
【0027】
すなわち、遠心分離装置15に流入したフロックの結合力が小さく、フロックが軟らかい場合、原水の水流で生じるせん断力により、フロックは微細化して回収しにくくなる。また、遠心分離装置15に流入したフロックの径が小さい場合、遠心力によってフロックを回収しにくくなる。したがって、凝集助剤注入装置17でフロックを強固に又は大きく形成する凝集助剤を注入し、フロックを回収しやすい性質にすることで、原水中の固形物の回収率が向上する。
【0028】
第2攪拌装置18は、第2送水ライン16上に設けられ、ラインミキサ等、水流のみを利用して他の動力を必要とせずに原水と凝集助剤とを攪拌する装置である。第2攪拌装置18で原水と凝集助剤を攪拌することにより、第2フロック形成槽19内でフロックを回収しやすい性質に形成しやすくする。
【0029】
第2フロック形成槽19では、第2攪拌装置18で凝集助剤と攪拌された原水が流入すると、内部に滞留中に原水に含まれる固形物が凝集助剤の効果によってフロックを回収しやすい性質に成長させる。第2フロック形成槽19も第1フロック形成槽14と同様に密閉状態であるため、ガスやスカムの残存を防止するため、ガス抜き機構191と、スカムを除去するスカム抜き機構191を備えることが望ましい。
【0030】
上述したように、第2の実施形態に係る固形物分離システム1bでは、凝集助剤注入装置17によって凝集助剤を注入してフロックを遠心分離装置15で回収しやすい性質に形成させる。したがって、固形物分離システム1bによれば、遠心分離装置15によってフロックが回収しやすくなるため、分離効率を向上することができる。
【0031】
また、第2の実施形態に係る固形物分離システム1bによれば、第1の実施形態に係る固形物分離システム1aと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0032】
なお、図2に示す固形物分離システム1bでは、第1フロック形成槽14及び第2フロック形成槽19を備えているが、第1フロック形成槽14を備えずに第2フロック形成槽19のみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19の容積を大きくして第2フロック形成槽19での滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0033】
〈第3の実施形態〉
図3に示すように、本発明の第3の実施形態に係る固形物分離システム1cは、図2を用いて上述した第2の実施形態に係る固形物分離システム1bと比較して、第3送水ライン20、調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えている点で異なる。
【0034】
図3に示す固形物分離システム1cでは、第1フロック形成槽14から流出する原水は、第3送水ライン20を介してpH測定装置23でpH値が測定された後、第2送水ライン16を介して第2フロック形成槽19に送水される。
【0035】
調整剤注入装置21は、フロック形成槽14から流出した第3送水ライン20を流れる原水に、凝集剤による凝集効果を向上するために原水のpH値を調整する調整剤を注入する。この調整剤注入装置21が注入する調整剤は、酸(塩酸、硫酸、クエン酸等)やアルカリ(水酸化ナトリウム溶液、消石灰溶液等)の調整剤(pH調整剤)である。
【0036】
第3攪拌装置22は、第3送水ライン20上に設けられ、ラインミキサ等、原水と調整剤とを攪拌する装置である。第3攪拌装置22が原水と調整剤を攪拌することにより、原水のpH値を均一にし、第2フロック形成槽19内でフロックを回収しやすい性質に形成しやすくする。
【0037】
pH測定装置23は、調整剤注入装置21が調整剤を注入した後の原水のpH値を測定するpHセンサである。
【0038】
pH制御装置24は、目標pHを設定値として入力されてまたは保持しており、pH測定装置23で測定されたpH値を入力すると、設定値と入力したpH値を比較してその差に応じた量の調整剤を原水に注入するように調整剤注入装置21を制御する。すなわち、pH制御装置24は、pH測定装置23で測定するpH値に基づいて調整剤注入装置21をフィードバック制御する。
【0039】
上述したように、第3の実施形態に係る固形物分離システム1cでは、調整剤注入装置21によって原水に調整剤を注入し、原水のpH値を凝集に適当な値にする。したがって、固形物分離システム1cによれば、凝集効果を向上させることで、分離効率を向上することができる。
【0040】
また、第3の実施形態に係る固形物分離システム1cでは、pH測定装置23で測定される原水のpH値に応じてpH制御装置24が調整剤注入装置21をフィードバック制御する。したがって、固形物分離システム1cによれば、過多又は過少な調整剤の注入を防止して適量の調整剤を注入するとともに、分離効率を向上することができる。
【0041】
さらに、第3の実施形態に係る固形物分離システム1cによれば、第2の実施形態に係る固形物分離システム1bと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0042】
なお、図4に示す固形物分離システム1cでは、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えているが、固形物分離システム1cで凝集剤の注入率や処理対象の原水のpH値に変動がない場合、pH測定装置23及びpH制御装置24は備えず、調整剤注入装置21は、常時一定量の調整剤を注入してもよい。
【0043】
また、図3に示す例では、調整剤を注入後の原水のpH値を測定して調整剤注入装置21をフィードバック制御しているが、調整剤を注入前の原水のpH値を測定して調整剤注入装置21をフィードフォワード制御してもよい。
【0044】
さらに、図3に示す固形物分離システム1cでは、第1フロック形成槽14及び第2フロック形成槽19を備えているが、第1フロック形成槽14を備えずに第2フロック形成槽19のみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19の容積を大きくして第2フロック形成槽19での滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0045】
〈第4の実施形態〉
図4に示すように、本発明の第4の実施形態に係る固形物分離システム1dは、図3を用いて上述した第3の実施形態に係る固形物分離システム1cと比較して、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26を備えている点で異なる。
【0046】
流動電流測定装置25は、凝集剤注入装置12が凝集剤を注入した後の原水のpH値を測定する流動電流計である。
【0047】
凝集剤制御装置26は、流動電流測定装置25で測定された電流値を入力すると、入力した電流値に応じた凝集剤を原水に注入するように凝集剤注入装置12を制御する。すなわち、凝集剤制御装置26は、流動電流測定装置25の測定結果を利用して凝集剤注入装置12をフィードバック制御する。例えば、凝集剤制御装置26は、原水の流動電流値から最適な凝集剤の注入量を求める関係式を記憶しており、入力した流動電流値に応じた量の凝集剤を注入するように凝集剤注入装置12を制御する。
【0048】
上述したように、第4の実施形態に係る固形物分離システム1dでは、流動電流測定装置25で測定される原水の流動電流値に応じて凝集剤制御装置26が凝集剤注入装置12をフィードバック制御する。したがって、固形物分離システム1dによれば、過多又は過少な凝集剤の注入を防止して適量の凝集剤を注入することが可能となり、分離効率を向上することができる。
【0049】
また、第4の実施形態に係る固形物分離システム1dによれば、第3の実施形態に係る固形物分離システム1cと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0050】
なお、処理対象の原水のpHを調整する必要がなく、調整剤を注入する必要がない場合、固形物分離システム1dでは、調整剤注入装置21及び第3攪拌装置22を備えていなくてもよい。調整剤を注入する必要があっても、凝集剤の注入率や原水のpHに変動がない場合、固形物分離システム1dでは、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0051】
また、図4に示す例では、凝集剤を注入後の原水の流動電流値を測定して凝集剤注入装置12をフィードバック制御しているが、凝集剤を注入前の原水の流動電流値を測定して凝集剤注入装置12をフィードフォワード制御してもよい。
【0052】
さらに、図4に示す固形物分離システム1dでは、第1フロック形成槽14及び第2フロック形成槽19を備えているが、第1フロック形成槽14を備えずに第2フロック形成槽19のみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19の容積を大きくして第2フロック形成槽19での滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
〈第5の実施形態〉
図5に示すように、本発明の第5の実施形態に係る固形物分離システム1eは、図4を用いて上述した第4の実施形態に係る固形物分離システム1dと比較して、第1フロック形成槽14aが攪拌機能を有するとともに、第2フロック形成槽19aも攪拌機能を有している点で異なる。
【0054】
第1フロック形成槽14aの内部には、例えば板等の障害物142が設けられ、流入口から流入した原水が内部で障害物142によって上下又は左右に迂流しながら流出口まで進むように形成されている。この第1フロック形成槽14aで内部に障害物142を有している場合、原水は内部で緩やかに迂流して攪拌される。したがって、第1フロック形成槽14aでは、原水中の固形物同士の衝突を促がし、凝集で形成されたフロックをより大きなフロックに成長させる。この第1フロック形成槽14aでは単に板等の障害物142を内部に設けるのみによってフロックを大きく成長させることが可能であり、槽内で原水を攪拌させる攪拌手段等の新たな動力は必要としていない。
【0055】
第2フロック形成槽19aの内部にも、板等の障害物191が設けられ、流入口から流入した原水が内部で障害物191によって上下又は左右に迂流しながら流出口まで進むように形成されている。この第2フロック形成槽19aでも、流入した原水が内部で緩やかに迂流して攪拌され、原水中の固形物同士の衝突を促がしてフロックをより大きなフロックに成長させる。第2フロック形成槽19aでも単に板等の障害物191を内部に設けるのみによってフロックを大きく成長させることが可能であり、新たな動力は必要としていない。
【0056】
ここで、フロックを大きく成長させるためには、第1フロック形成槽14aでの原水の攪拌強度を第1攪拌強度以下とすることが望ましい。具体的には、この第1攪拌強度は、90(l/s)程度である。第1フロック形成槽14aでの攪拌強度を第1攪拌強度以下としたとき、硬度は弱くても、径が大きいフロックに成長させることができる。
【0057】
また、第1フロック形成槽14aで成長させたフロックを第2フロック形成槽19aで硬化にするためには、第2フロック形成槽19aでの原水の攪拌強度を第2攪拌強度以上とすることが望ましい。具体的には、この第2攪拌強度は、180(l/s)程度である。第2フロック形成槽19aでの攪拌強度を第2攪拌強度以上としたとき、硬度の弱かったフロックを硬化させることができる。
【0058】
このフロック形成槽14a,19aにおける攪拌強度は、フロック形成槽14a,19a内の障害物142,192の形状、設置方法及び設置数量等によって変更することができる。
【0059】
具体的には、攪拌強度をGTで表わすとき式(1)のように求めることができる。
【数1】

【0060】
G:攪拌強度(l/s)
ρ:水の密度(kg/m3
g:重力加速度(m/s2
h:フロック形成槽内における損失水頭(m)
T:フロック形成槽における滞留時間(s)
μ:水の粘性係数(kg/m・s)
ここで、フロック形成槽14a,19a内に障害物142,192を配置して原水を内部で攪拌させている場合、内部の障害物142,192にスラッジが残存することがある。このようにフロック形成槽14a,19a内でスラッジが残存した場合には、フロックの巨大化や原水の流路が閉塞し、フロック形成の効率を低下させることがある。したがって、フロック形成槽14a,19aは、ガス抜きやスカム抜きの機構141に加え、逆洗機構(図示せず)を備えることが望ましい。逆洗機構を備えたフロック形成槽14a,19aでは、フロックの巨大化や流路の閉塞を防止し、原水の水流の低下を防止することができる。
【0061】
逆洗の一例としては、フロック形成槽14a,19aが下向流で通常運転をしているとき、流路を切り替えて上向流にして逆方向で運転することができる。例えば、逆方向の運転を逆洗とすることができれば、新たに逆洗機構として備えるのは、フロック形成槽14a,19aを逆向きに運転するための機構のみでよく、フロック形成槽14a,19aの運転を停止せずに逆洗をすることができる。
【0062】
また、逆洗の他の例としては、洗浄用にフロック形成槽14a,19aに閉ループを作り、循環流で洗浄を行う。この方法では、洗浄用の水を貯留するタンクを省略することができる。
【0063】
上述したように、第5の実施形態に係る固形物分離システム1eでは、フロック形成槽14a,19aは、流入する原水を迂流させて攪拌することで、フロックを大きく成長させる。したがって、固形物分離システム1eによれば、大きく成長したフロックを分離することで、分離効率を向上することができる。
【0064】
また、第5の実施形態に係る固形物分離システム1eによれば、第4の実施形態に係る固形物分離システム1dと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0065】
なお、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1eでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0066】
また、図5に示す固形物分離システム1eでは、第1フロック形成槽14a及び第2フロック形成槽19aを備えているが、第1フロック形成槽14aを備えずに第2フロック形成槽19aのみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19a一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19aの容積を大きくして第2フロック形成槽19aでの滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14aを備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0067】
〈第6の実施形態〉
図6に示すように、本発明の第6の実施形態6に係る固形物分離システム1fは、図5を用いて上述した第5の実施形態に係る固形物分離システム1eと比較して、第1攪拌装置13を備えず、第1凝集剤注入装置12が原水ポンプ10の前段に凝集剤を注入する点で異なる。
【0068】
原水ポンプ10では、フロック形成槽14a,19a等に原水を送水するため、内部で原水を攪拌する。したがって、この原水ポンプ10の前段で原水に凝集剤を注入することで、原水ポンプ10内で原水と凝集剤とが攪拌されるため、原水ポンプ10の後段で第1攪拌装置13が不要となる。この場合、原水ポンプ10としては、内部で原水が十分に攪拌されるように、渦流ポンプ等のように、内部で羽根が回転するタイプのポンプを利用することが望ましい。
【0069】
上述したように、第6の実施形態に係る固形物分離システム1fでは、第1攪拌装置が不要となる。したがって、固形物分離システム1fによれば、さらにシステムの簡易化を実現することができる。
【0070】
また、第6の実施形態に係る固形物分離システム1fによれば、第5の実施形態に係る固形物分離システム1eと同様に、省エネルギ化、省スペース化を実現することができるとともに、分離効率を向上することができる。
【0071】
なお、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1fでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0072】
また、図6に示す固形物分離システム1fでは、第1フロック形成槽14a及び第2フロック形成槽19aを備えているが、第1フロック形成槽14aを備えずに第2フロック形成槽19aのみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19a一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19aの容積を大きくして第2フロック形成槽19aでの滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14aを備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0073】
〈第7の実施形態〉
図7に示すように、本発明の第7の実施形態に係る固形物分離システム1gは、図6を用いて上述した第2の実施形態に係る固形物分離システム1fと比較して、混練装置27を備えている点で異なる。
【0074】
混練装置27は、混練することにより、フロック形成槽14a,19aで形成されたフロックから水分を排出して硬化するとともに、球状にする装置である。フロックには水分が多く含まれているが、この水分を除去することができれば、フロックを硬くすることができる。このような水分を含むフロックに衝撃を与えた場合、フロックは塑性変形して硬化される。また、この衝撃を利用した塑性変形を複数回繰り返すと、フロックは球形に近づく。
【0075】
上述したように、第7の実施形態に係る固形物分離システム1gでは、混練装置27がフロックを硬化し、球状にする。したがって、固形物分離システム1gによれば、遠心分離装置15内におけるフロックの微細化し、分離効率が向上することができる。
【0076】
また、第7の実施形態に係る固形物分離システム1gによれば、第6の実施形態に係る固形物分離システム1fと同様に、システムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0077】
なお、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1gでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0078】
また、図7に示す固形物分離システム1gでは、第1フロック形成槽14a及び第2フロック形成槽19aを備えているが、第1フロック形成槽14aを備えずに第2フロック形成槽19aのみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19a一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19aの容積を大きくして第2フロック形成槽19aでの滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14aを備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0079】
〈第8の実施形態〉
図8に示すように、本発明の第8の実施形態に係る固形物分離システム1hは、図7を用いて上述した第7の実施形態に係る固形物分離システム1gと比較して、第3送水ライン20、調整剤注入装置(第1調整剤注入装置)21、第3攪拌装置22、pH測定装置(第1pH測定装置)23及びpH調整制御装置(第1pH調整制御装置)24に加え、第4送水ライン28、第2調整剤注入装置29、第4攪拌装置30、第2pH測定装置31及び第2pH制御装置32を備えている点で異なる。
【0080】
第2調整剤注入装置29は、第2フロック形成槽19aから流出した第4送水ライン28を流れる原水に、フロックをさらに硬化させるために原水のpH値を調整する酸やアルカリ等の調整剤(pH調整剤)を注入する。この調整剤注入装置29が注入する調整剤は、酸(塩酸、硫酸、クエン酸等)やアルカリ(水酸化ナトリウム溶液、消石灰溶液等)の調整剤(pH調整剤)である。
【0081】
第4攪拌装置30は、第4送水ライン28上に設けられ、ラインミキサ等、原水と調整剤とを攪拌する装置である。第4攪拌装置30が原水と調整剤を攪拌することにより、原水のpH値を均一にし、フロックが硬化しやすくなる。
【0082】
第2pH測定装置31は、第2調整剤注入装置29が調整剤を注入した後の原水のpH値を測定するpHセンサである。
【0083】
第2pH制御装置32は、第2pH測定装置31で測定されたpH値を入力すると、入力したpH値に応じた量の調整剤を原水に注入するように第2調整剤注入装置29を制御する。すなわち、第2pH制御装置32は、第2pH測定装置31で測定するpH値に基づいて第2調整剤注入装置29をフィードバック制御する。例えば、第2pH制御装置32は、目標pHを設定値として入力するまたは保持しており、設定値と入力したpH値とを比較して、その差に応じた量の調整剤を注入するように第2調整剤注入装置29を制御する。
【0084】
上述したように、第8の実施形態に係る固形物分離システム1hでは、第2調整剤注入装置29によって原水に調整剤を注入し、原水のpH値を混練に適当な値にする。したがって、固形物分離システム1hによれば、混練効果を向上させることで、分離効率を向上することができる。
【0085】
また、第8の実施形態に係る固形物分離システム1hでは、第2pH測定装置31で測定される原水のpH値に応じて第2pH制御装置32が第2調整剤注入装置29をフィードバック制御する。したがって、固形物分離システム1hによれば、過多又は過少な調整剤の注入を防止して適量の調整剤を注入するとともに、分離効率を向上することができる。
【0086】
さらに、第8の実施形態に係る固形物分離システム1hによれば、第8の実施形態に係る固形物分離システム1hと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができるとともに、固形物の分離効率を向上することができる。
【0087】
なお、図9に示す固形物分離システム1hでは、第2pH測定装置31及び第2pH制御装置32を備えているが、固形物分離システム1hで凝集剤の注入率や処理対象の原水のpH値に変動がない場合、第2pH測定装置31及び第2pH制御装置32は備えず、第2調整剤注入装置29は、常時一定量の調整剤を注入してもよい。
【0088】
また、図8に示す例では、調整剤を注入後の原水のpH値を測定して第2調整剤注入装置29をフィードバック制御しているが、調整剤を注入前の原水のpH値を測定して第2調整剤注入装置29をフィードフォワード制御してもよい。
【0089】
さらに、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1hでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、第1調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、第1pH測定装置23及び第1pH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0090】
また、図8に示す固形物分離システム1hでは、第1フロック形成槽14及び第2フロック形成槽19を備えているが、第1フロック形成槽14を備えずに第2フロック形成槽19のみを備えていても良い。このように第2フロック形成槽19一台のみを有する場合には、第2フロック形成槽19の容積を大きくして第2フロック形成槽19での滞留時間を長くすることで、第1フロック形成槽14を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
〈第9の実施形態〉
図9に示すように、本発明の第9の実施形態に係る固形物分離システム1iは、図8の固形物分離システム1hの遠心分離装置15として、液体サイクロン15aを備えている。
【0092】
液体サイクロン15aは、接線方向から原水を流入し、流入した原水の水流で生じる旋回流によって、原水から固形物の分離をする装置である。
【0093】
なお、液体サイクロン15aの他にも、遠心濃縮機や遠心脱水機のように内部で原水を旋回させて遠心力を利用して原水から固形物を分離する装置を遠心分離装置15として利用することができる。
【0094】
上述したように、第9の実施形態に係る固形物分離システム1iによれば、第8の実施形態に係る固形物分離システム1iと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができるとともに、固形物の分離効率を向上することができる。
【0095】
〈第10の実施形態〉
図10に示すように、本発明の第10の実施形態に係る固形物分離システム1jは、図7を用いて上述した第7の実施形態に係る固形物分離システム1gと比較して、第2フロック形成槽19aから流出する原水が流れる第5送水ライン33と、第5送水ライン33を流れる原水に凝集助剤を注入する第2凝集助剤注入装置34と、第2凝集助剤注入装置34が凝集助剤を注入した原水を攪拌する第5攪拌装置35と、フロックを形成する第3フロック形成槽36を備えている点で異なる。この固形物分離システム1jでは、第3フロック形成槽36の後段に混練装置27が配置されている。なお、第3フロック形成槽36もガス抜き機構やスカム抜き機構を有していてもよいが、図示を省略する。
【0096】
第2凝集助剤注入装置34が注入する凝集助剤は、第1凝集助剤注入装置17が注入する凝集助剤と同一であっても異なっていても良い。第2凝集助剤注入装置34は、第2フロック形成槽19aで形成されたフロックをより強固にするために、有機高分子凝集助剤や無機高分子凝集助剤から選択された適当な種類及び量の凝集剤を注入する。このように、凝集助剤注入とフロック形成のフローを多段にすることで、より強固で回収しやすいフロックを形成することができる。
【0097】
上述したように、第10の実施形態に係る固形物分離システム1jでは、第2凝集助剤注入装置34が、凝集助剤を注入して第3フロック形成槽36でフロックを形成する。したがって、固形物分離システム1jによれば、より強固なフロックを形成することが可能となり、分離効率を向上することができる。
【0098】
また、第10の実施形態に係る固形物分離システム1jによれば、第7の実施形態に係る固形物分離システム1fと同様に、システムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【0099】
なお、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1jでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、pH測定装置23及びpH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0100】
〈第11の実施形態〉
図11に示すように、本発明の第11の実施形態に係る固形物分離システム1kは、図10を用いて上述した第10の実施形態に係る固形物分離システム1jと比較して、第1遠心分離装置15から流出する処理水が流れる第5送水ライン33と、第5送水ライン33を流れる処理水に凝集助剤を注入する第3凝集助剤注入装置39と、第3凝集助剤注入装置が凝集助剤を注入した処理水を攪拌する第5攪拌装置35と、フロックを形成する第3フロック槽36と、フロック形成槽36で形成されたフロックを混練装置27と、混練装置27で混練されたフロックを分離し、フロックが分離された処理水を流出する第2遠心分離装置37を備えている点で異なる。なお、第3フロック形成槽36もガス抜き機構やスカム抜き機構を有していてもよいが、図示を省略する。
【0101】
第1遠心分離装置15でそれまでに形成されたフロックは分離されているが、第1遠心分離装置15から流出する処理水には、分離しきれない固形物が含まれていることがある。分離しきれない固形物の中には、第1遠心分離装置15の内部で発生する水流によって壊れてしまったフロック等が含まれている。水流によってフロックが崩壊する際は、フロックの分子結合の弱い箇所から崩壊するため、再度凝集助剤を添加して強固なフロックを形成し、さらに遠心分離のフローを多段にすることで、固形物の回収率を向上することができる。その結果、処理水の水質を向上することができる。
【0102】
第2凝集助剤注入装置34が注入する凝集助剤は、第1凝集助剤注入装置17が注入する凝集助剤と同一であっても異なっていても良い。第2凝集助剤注入装置34は、第2フロック形成槽19aで形成されたフロックをより強固にするために、有機高分子凝集助剤や無機高分子凝集助剤から選択された適当な種類及び量の凝集剤を注入する。第3凝集助剤注入装置39が注入する凝集助剤は、第2凝集助剤注入装置34が注入する凝集助剤と同一のものであることが望ましい。
【0103】
上述したように、第11の実施形態に係る固形物分離システム1kでは、フロックの形成と遠心分離を複数回行なうことで、処理水の水質を向上することができる。
【0104】
さらに、第11の実施形態に係る固形物分離システム1kによれば、第8の実施形態に係る固形物分離システム1hと同様にシステムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができるとともに、固形物の分離効率を向上することができる。
【0105】
さらに、処理対象の原水の水質(流動電流値やpH値)によっては、固形物分離システム1hでは、流動電流測定装置25及び凝集剤制御装置26や、第1調整剤注入装置21、第3攪拌装置22、第1pH測定装置23及び第1pH制御装置24を備えていなくてもよい。
【0106】
〈第12の実施形態〉
図12に示すように、本発明の第12の実施形態に係る固形物分離システム1lは、図2を用いて上述した第2の実施形態に係る固形物分離システム1bと比較して、原水ポンプ10を備えず、第2フロック形成槽19と遠心分離装置15の間でポンプ38を備えている点で異なる。このポンプ38は、水源や原水タンク(図示せず)から第2フロック形成槽19まで原水を引き、その水流によって原水を遠心分離装置15に送水する。
【0107】
原水ポンプ10によって各機構に原水を送水する場合、各機構が加圧されるため、各機構に耐圧性を持たせる必要があることがある。これに対し、ポンプ38によって第2フロック形成槽19まで原水を引いた場合、ポンプの負荷を軽減し、フロック形成槽14,19等の固形物分離システムlが有する各機構に要求される耐圧性を軽減することができる。
【0108】
上述したように、第12の実施形態に係る固形物分離システム1bでは、ポンプ38によって第2フロック形成槽19まで原水を引くことで、各機構で要求される耐圧性を低減することができる。
【0109】
また、第12の実施形態に係る固形物分離システム1lによれば、第2の実施形態に係る固形物分離システム1bと同様に分離効率の向上、システムの簡易化、省エネルギ化、省スペース化を実現することができる。
【符号の説明】
【0110】
1a〜1i…固形物分離システム
10…原水ポンプ
11…送水ライン
12…凝集剤注入装置、第1凝集剤注入装置
13…攪拌装置、第1攪拌装置
14…フロック形成槽、第1フロック形成槽
15…遠心分離装置
15a…液体サイクロン
16…第2送水ライン
17…凝集助剤注入装置
18…第2攪拌装置
19…第2フロック形成槽
20…第3送水ライン
21…調整剤注入装置、第1調整剤注入装置
22…第3攪拌装置
23…pH測定装置、第1pH測定装置
24…pH制御装置、第1pH制御装置
25…流動電流測定装置
26…凝集剤制御装置
27…混練装置
28…第4送水ライン
29…第2調整剤注入装置
30…第4攪拌装置
31…第2pH測定装置
32…第2pH制御装置
33…第5送水ライン
34…第2凝集助剤注入装置
35…第5攪拌装置
36…第3フロック形成槽
37…第2遠心分離装置
38…ポンプ
39…第3凝集助剤注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水ポンプを介して固形物を含む原水を流入し、この原水を固形物と処理水とに分離する固形物分離システムであって、
前記原水ポンプで発生した水流を利用して流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集してフロックを形成する凝集剤を注入する凝集剤注入装置と、
前記水流を利用して、凝集剤が注入された原水を攪拌して送出する第1攪拌装置と、
攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを形成するとともに、前記水流を利用して送出するフロック形成槽と、
フロックを含む原水を流入すると、前記水流を利用して流入した原水を旋回するとともに、遠心力によって固形物であるフロックと処理水とに分離する遠心分離装置と、
を備えることを特徴とする固形物分離システム。
【請求項2】
原水ポンプを介して固形物を含む原水を流入し、この原水を固形物と処理水とに分離する固形物分離システムであって、
前記原水ポンプの前段を流れる原水に、原水に含まれる固形物を凝集してフロックを形成する凝集剤を注入する凝集剤注入装置と、
前記原水ポンプで発生した水流を利用して、凝集剤が注入された原水を攪拌して送出する第1攪拌装置と、
攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを形成するとともに、前記水流を利用して送出する第1フロック形成槽と、
フロックを含む原水を流入すると、前記水流を利用して流入した原水を旋回するとともに、遠心力によって固形物であるフロックと処理水とに分離する遠心分離装置と、
を備えることを特徴とする固形物分離システム。
【請求項3】
前記凝集剤が注入された後に前記水流を利用して流れる原水に、原水に含まれるフロックを硬化し又は大きくする凝集助剤を注入する凝集助剤注入装置と、
前記水流を利用して、凝集助剤が注入された原水を攪拌する第2攪拌装置とを備え、
前記フロック形成槽は、攪拌された原水を流入すると、流入した原水を滞留してフロックを硬化し又は大きくして前記水流を利用して送出することを特徴とする請求項1又は2に記載の固形物分離システム。
【請求項4】
前記フロック形成槽として、
前記第1攪拌装置で凝集剤と攪拌された後の原水を流入する第1フロック形成槽と、
前記第2攪拌装置で凝集助剤と攪拌された後の原水を流入する第2フロック形成槽と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の固形物分離システム。
【請求項5】
前記凝集助剤が注入される前の原水に、原水のpH値を調整する調整剤を注入する第1調整剤注入装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の固形物分離システム。
【請求項6】
凝集助剤が注入される前又は凝集助剤が注入された後の原水のpH値を測定する第1pH測定装置と、
前記第1pH測定装置で測定されたpH値に応じて前記第1調整剤注入装置が注入する調整剤の注入量を制御する第1pH調整制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の固形物分離システム。
【請求項7】
前記凝集剤が注入される前又は前記凝集剤が注入された後の原水の流動電流値を測定する流動電流測定装置と、
前記流動電流測定装置で測定された流動電流値に応じて前記凝集剤注入装置で注入する凝集剤の注入量を制御する凝集剤制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の固形物分離システム。
【請求項8】
前記フロック形成槽は、前記水流を利用して内部で原水を攪拌することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の固形物分離システム。
【請求項9】
前記第1フロック形成槽は、第1攪拌強度以下の強度で原水を攪拌し、
前記第2フロック形成槽は、第2攪拌強度以上の強度で原水を攪拌することを特徴とする請求項4に記載の固形物分離システム。
【請求項10】
前記遠心分離装置の前段に備えられ、前記水流を利用してフロックを含む原水を流入すると、フロックの水分を除去してフロックを硬化し又は球状に成形して前記遠心分離装置に送出する混練装置を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の固形物分離システム。
【請求項11】
前記遠心分離装置の前段に備えられ、前記水流を利用してフロックを含む原水を流入すると、フロックの水分を除去してフロックを硬化し又は球状に成形して前記遠心分離装置に送出する混練装置と、
前記混練装置に流入するフロックを含む原水に、原水のpH値を調整する調整剤を注入する第2調整剤注入装置と、
前記第2調整剤注入装置が調整剤を注入する前又は注入した後の原水のpH値を測定する第2pH値測定手段と、
前記第2pH値測定手段で測定されたpH値に応じて前記第2調整剤注入装置による調整剤の注入量を制御する第2pH制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の固形物分離システム。
【請求項12】
前記フロック形成槽は、スカム抜き機構又はガス抜き機構の少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載の固形物分離システム。
【請求項13】
前記フロック形成槽では、逆洗機構を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の固形物分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−214360(P2010−214360A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238694(P2009−238694)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】