説明

固形粉末化粧料及びその製造方法

【課題】油剤を高配合しても使用性、官能特性に優れ、さらに容易に製造することができる固形粉末化粧料の製造方法を提供する。
【解決手段】次の成分(a)〜(d);
(a) 抱水性油剤0.5〜10質量%(対固形粉末化粧料全量)を含む油剤 15%〜30質量%
(b) スクワランの吸油量100ml/100g以上で平均粒子径1.0〜25μmの球状樹脂粉末3.0〜20質量%
(c) 平均粒子径1.0〜20μmのオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 1.0〜20質量%
(d) (b)(c)以外の粉末 30〜81質量%
を含有し、成分(a)は、成分(b)中に吸蔵されており、圧縮成型して得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油剤と球状樹脂粉末とオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末を含む粉体を含有するソフトで滑らかな保湿性の高い固形粉末化粧料を提供するもので、更に詳しくは化粧料の伸び、密着性等の使用性が良好で、しっとりした保湿感が持続し、容易に生産することのできる固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料としては、コンパクトケースに収納され使用されるパウダーファンデーション等に代表される化粧料粉末を中容器(金皿、樹脂皿等)に充填し、圧縮成型固化して得られる化粧料剤型が挙げられる。そのような化粧料の殆どは主として粉末と油剤からなり、化粧料中の油剤は5〜15質量%配合されているのが一般的である。しかし、化粧料を肌に塗布した際、化粧料自体が皮脂を吸収し、かさつきや粉っぽさを感じるなどの問題があった。
【0003】
このような問題を改善するため、化粧料中の油剤を増やし、密着性やしっとり感を高める方法がとられている。しかし油剤の配合量が多くなるに従い、伸びが悪くなる等の感触の悪化、また粉末同士の凝集性が強まり、パフやスポンジなどの小道具によって化粧料を移しとろうとする際、化粧料がとれなくなるケーキング現象が生じることから油剤の量が制限され、満足のいくものは得られていない。
【0004】
一方、さらに油剤の配合量を増やし、化粧料中の油分が連続層になる油性化粧料が上市されている。この剤型では油剤や保湿成分を多量に配合できるため、容易に保湿感を高めることが可能であるが、べたつきやテカリ等を生じ、すべてを満足できるものには至っていない。
【0005】
このような問題点を解決するために、特定の多孔質シリカ(0.1〜20質量%)を含む粉体成分(60〜75質量%)とセラミド、セラミド類似構造物質、コレステロール、コレステリルエステル及びコレステリルイソステアレートから選ばれる保湿成分(0.1〜15質量%)を含む油分(25〜40質量%)とを配合した固形粉末化粧料が提案されている。(特許文献1)
【0006】
しかしながら、特許文献1の化粧料は、油性化粧料特有のべたつきやテカリ等は生じぬものの、使用感触と、湿感という点で満足できるものではなかった。またさらさらしたパウダー状ではないため、容器への充填、圧縮成形他の製造工程上取扱い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3526426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、油剤を高配合しても使用性、官能特性に優れ、さらに容易に製造することができる固形粉末化粧料及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の成分(a)〜(d);
(a) 抱水性油剤0.5〜10質量%(対固形粉末化粧料全量)を含む油剤 15%〜30質量%
(b) スクワランの吸油量100ml/100g以上で平均粒子径1.0〜25μmの球状樹脂粉末3.0〜20質量%
(c) 平均粒子径1.0〜20μmのオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 1.0〜20質量%
(d) (b)(c)以外の粉末 30〜81質量%
を含有し、成分(a)は、成分(b)中に吸蔵されており、圧縮成型して得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料である。
【0010】
上記成分(a)中の抱水性油剤が、ダイマー酸エステルであることが好ましい。
上記成分(b)は、多孔性であることが好ましい。
【0011】
上記成分(b)は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粉末及びエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体粉末から選ばれる1種又は2種以上の多孔性球状樹脂粉末であることが好ましい。
【0012】
本発明は上述した固形粉末化粧料の製造方法であって、上記油剤(a)中に上記球状樹脂粉末(b)を予め浸漬し、吸油させる工程を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固形粉末化粧料により、しっとりとした保湿感を付与でき、塗布具への取れが良好であり、ソフトで滑らか、密着性、伸びのよさ等の使用感にすぐれた性質を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来、固形粉末化粧料における油剤配合量を増やすと、密着性やしっとり感は得られるものの、伸びやとれが悪化するという問題があった。本発明の固形粉体化粧料は、油剤を高配合しつつ、かつ伸びやとれも良好という効果を有するものである。
【0015】
本発明は、油剤(a)15〜30質量%、球状樹脂粉末(b)3.0〜20質量%、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)1.0〜20質量%、及び、その他の粉体(d)を含有する固形粉末化粧料であって、さらに、上記油剤(a)中に上記球状樹脂粉末(b)は、上記油剤(a)を吸蔵していることを特徴とするものである。油剤(a)を吸蔵しているとは、球状樹脂粉末(b)が有する吸油性能によって、油剤(a)が球状樹脂粉末(b)に吸油された状態をいう。このような状態とするには、化粧品の各成分を混合する前に、上記油剤(a)中に上記球状樹脂粉末(b)を予め浸漬し、吸油させる工程等を行うことが好ましい。
【0016】
これによって、粉末同士の凝集が抑制され、伸びの悪化やケーキング現象の発生を防ぐことができる。さらに、得られた固形粉末化粧料を肌上に塗布した際に、吸蔵した油剤(a)が放出され、良好なしっとり感を得ることができるものである。
【0017】
上記油剤(a)は、抱水性油剤を含むものである。抱水性を有するとは、水分を水素結合等により抱水することができる性質のことであり、下記抱水力試験法で測定した場合、50℃において自重の等量以上の水分を抱水できる油剤である。
【0018】
(抱水性試験)
試験する油剤10gを200mlビーカーに秤り取り、50℃に加熱し、デスパミキサにて3000rpmで攪拌しながら50℃の水を徐々に、水が該油剤から排液してくるまで添加し、水が排液しない最大量(質量)を測定し、この数値を油剤量10gで除し、100倍して抱水力(%)とした。
【0019】
上記抱水性油剤は、しっとりとした感触及び高い保湿効果を付与する目的で含有されるものである。具体的にはラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ヒドロキシラノリン等のラノリン誘導体及びそれらをポリオキシアルキレンで変性したもの、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、アミノ酸フィトステロール、ヒマシ油、ステアリン酸硬化ヒマシ油、シア脂等の多価アルコール脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル等の脂肪酸エステル類を挙げることができる。
【0020】
特に好ましくは保水性、感触向上、安定性、安全性に優れるダイマー酸のエステルが好ましい。ダイマー酸のエステルとは、2分子の不飽和脂肪酸の重合によって得られる2塩基酸のエステルで、例えばダイマージリノール酸、ダイマージリノレイン酸、ダイマージオレイン酸などエステル或いはこれらの水素添加物などが例示できる。かかるダイマー酸のエステルのエステル部分を構成するアルキル基乃至はアルケニル基としては、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、リノレイルアルコール等の高級アルコール他、ダイマージリノレイルアルコールなどの、不飽和アルコール2分子が重合したダイマージオールから誘導されるものなどが好ましい。具体的には、リンカスターDA−H(高級アルコール工業株式会社製)、スーパーモルPS(クローダジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
これらの抱水性油剤は、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。上記抱水性油剤の含有量は、固形粉末化粧料総量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1.0〜7.0質量%である。含有量が0.5質量%未満では、しっとりとした感触や保湿効果を充分に得られず、また10質量%を超えて含有すると、べたつき等の使用感を悪化させる場合がある。
【0022】
抱水性油剤以外の油剤としては通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ヒマシ油、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、タートル油、アーモンド油、サフラワー油、アボガド油、ラノリン等の動植物油;ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸;グリセリルジイソステアレート、グリセリルトリイソステアレート、トリメチロールプロパン−2−エチルイソステアレート、グリセリル−トリ−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、セチル−2−エチルヘキサノエート、ジイソステアリルマレート、2−ヘプチルウンデシルパルミテート等の合成エステル油;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;固形パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、ミツロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;アルキル変性シリコーンワックス、揮発性鎖状シリコーン油、揮発性環状シリコーン油等のシリコーン系油剤;パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン等のフッ素系油剤等が挙げられる。
【0023】
これらの油剤は、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。上記油剤(a)の含有量は、抱水性油剤との合計で固形粉末化粧料総量に対して15〜30質量%であり、好ましくは15〜25質量%である。含有量が15質量%未満では、しっとりとした感触や保湿効果を充分に得られず、また30質量%を超えて含有すると、成型性を悪化させるなどハンドリングが悪くなる場合がある。
【0024】
本発明に用いられる成分(b)は、平均粒子径が1.0〜25μmの球状樹脂粉末である。粒子径や形状がコントロールされているため、従来固形粉末化粧料に汎用されているシリカより滑らかな使用感を付与することができる。なお、上記平均粒子径は、5〜20μmがより好ましい。
【0025】
上記球状樹脂粉末(b)は、JIS K5101に規定されるスクワランの吸油量が100ml/100g以上である。このような給油量を有する上記球状樹脂粉末(b)は、油剤(a)を吸蔵させたものとすることで他の粉末同士の凝集を抑制し、所謂ケーキング現象を防ぐことができる。さらに肌上へ塗布したときに吸蔵した油剤(a)を好適に放出し、しっとり感を付与することができる。このような効果を得るために、上記球状樹脂粉末(b)は、上記吸油量を有する必要がある。吸油量が100ml/100g未満であれば、充分に油剤(a)を吸蔵することができず、ケーキング現象を防ぐことができない。上記吸油量は、150ml/100g以上であることがより好ましい。
【0026】
上記球状樹脂粉末(b)を構成する樹脂素材としては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、メタクリル酸エスエル(メチルエステル,エチルエステル等)、アクリル酸エステル(メチルエステル,エチルエステル等)、スチルジビニルベンゼン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ナイロン、四弗化エチレン、ポリエチレン、ポリウレタン等の球状樹脂粉末を用いてもよい。上記球状樹脂粉末(b)は、油剤(a)を効率的に吸蔵できる点で、多孔質であることが好ましい。さらに、上記球状樹脂粉末(b)としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粉末及びエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体粉末から選ばれる1種又は2種以上の多孔質球状樹脂粉末であることが好ましい。
【0027】
上記球状樹脂粉末(b)の市販品としては、マイクロスフェアMHB−R、(松本油脂社製)、ガンツパールGMP−0800、ガンツパールGMP−0820、ガンツパールGMP−0830(ガンツ化成社製)等などが挙げられる。
【0028】
上記球状樹脂粉末(b)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に3.0〜20質量%配合される。3.0質量%未満では、化粧料中の油剤を充分に吸蔵することができずケーキング現象を防ぐことができない。20質量%を超えると、ざらつきを感じる。上記球状樹脂粉末(b)の配合量は、全組成中に5〜10質量%であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、上記油剤中の抱水性油剤としてダイマー酸エステルを使用し、球状樹脂粉末としてポリ(メタ)アクリル酸エステル粉末及びエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体粉末から選ばれる1種又は2種以上の多孔性樹脂粉末とを組み合わせて使用することが特に好ましい。これらは、吸油性が高い樹脂粉末と抱水性が高い油剤とを組み合わせて使用するものであり、これらの性質による相乗作用によって極めて優れた性能の化粧料を得ることができる。
【0030】
本発明に用いられるオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)は、なめらかでソフトな使用感触の付与を目的とし含有されるものである。オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)としては、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末又はオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末を母粉末とする複合球状粉末であってもよく、例えば、シリコーンゴム表面をシリコーンレジン、酸化チタン、ラウロイルリシン、酸化アルミニウム等で被覆させたもの等を挙げることができる。市販品としては、オルガノポリシロキサン球状粉末を母粉末として酸化チタンを被覆したEP−9261 TI、ラウロイルリシンを被覆したEP−9289 LL、酸化アルミニウムを被覆したEP−9293 AL(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)や、シリコーンレジンを被覆したKSP−100、KSP−101、KSP−105、KSP−300(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
上記オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)は、平均粒子径が1.0〜20μmである。平均粒子径を上記範囲内とすることにより滑らかさを付与することができる。なお、上記平均粒子径は、5〜15μmがより好ましい。
【0032】
上記オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、全組成中に1.0〜20質量%配合される。1.0質量%未満では、なめらかでソフトな使用感触の付与には充分ではなく、20質量%を超えると成型性が悪くなる。上記配合量は、好ましくは5〜15質量%である。
【0033】
本発明において、固形粉末化粧料は、さらに球状樹脂粉末(b)及びオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(c)を除くその他の粉体(d)を含むものである。このような粉体としては特に限定されず、固体粉末化粧料において使用される通常の粉体を挙げることができる。例えば、次の無機顔料、有機顔料等を挙げることができる。
【0034】
無機顔料としては、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ベントナイトやモンモリロナイト等の粘土鉱物粉末、アルミナ、硫酸バリウム、第2リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水和酸化鉄、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、粒子径0.1μm以下の微粒子酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト、酸化鉄、チタン酸鉄、黄土、マンゴウバイオレット、コバルトバイオレット、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト、コバルトチタネート、紺青、群青、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク及びこれらの2種以上を複合化した複合顔料等が挙げられる。
【0035】
有機顔料としては、ポリエステル、メタクリル酸メチル樹脂、セルロース、12ナイロン、6ナイロン、スチレンとアクリル酸の共重合体、ポリプロピレン、塩化ビニル、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、窒化ボロン、魚鱗箔、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及び無機顔料と有機顔料を複合化した複合顔料などが挙げられる。
【0036】
上記その他の粉体(d)は、疎水化処理剤を用いて疎水化処理されていてもよい。疎水化処理することにより色分離することなく耐水性、耐汗性、耐皮脂性等がし、化粧もちがより一層向上する。疎水化処理剤としてはデキストリン脂肪酸エスエル、金属石鹸、シリコーン系化合物、ジベンジリデンソルビトール等の有機化合物が挙げられる。これらの疎水化処理剤を用いて疎水化処理する方法は、従来公知の方法を用いればよい。上記その他の粉体(d)は、全組成物に対して30〜81質量%の割合で含まれる。
【0037】
本発明の固形粉末化粧料における粉体全体の配合量(すなわち、成分(b)(c)(d)の合計量)は、全組成中の70〜85質量%が好適である。配合量が70質量%未満であると、成形性が悪化するおそれがあり、85質量%を超えると、油剤が少なくなるため充分なしっとり感を得られない。
【0038】
本発明において、上記の各成分以外に、一般に用いられる薬効成分、着香剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、懸濁剤、安定化剤、湿潤剤、抗酸化剤、pH調整剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤等を配合することができる。
【0039】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、上記油剤(a)中に上記球状樹脂粉末(b)を予め浸漬し、吸油させる工程を有することを特徴とするものである。上記吸油工程を行うことにより、本発明の効果を得ることができる。上記吸油工程は、油剤(a)中に上記球状樹脂粉末(b)を浸漬することができれば特に限定されず、混合は必ずしも必要ではない。吸油が効率的に進むことから、加熱した油剤(a)中に球状樹脂粉末(b)を添加する方法が好ましい。
【0040】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法は、上記吸油工程を有するものであれば特に限定されず、例えば、上述した吸油させる工程を行った油剤(a)及び球状樹脂粉末(b)並びにその他の原料を使用した通常の圧縮成形を行うことによって行うことができる。
【0041】
本発明固形粉末化粧料は、その形態を特に限定されるものではないが、例えば、パウダーファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ等の化粧料として使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例及び比較例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、配合量はすべて質量%である。
【0043】
実施例に先立ち、本発明で用いた試験法、評価法を説明する。
評価方法:使用感(とれの良さ、滑らかさ、伸びの良さ、密着性、保湿感)及び成型性について
化粧品評価専門パネル20名に実施例及び比較例の化粧料を使用してもらい、各項目で各自が以下の基準に従って5段階評価し、化粧料毎に評点を付し、さらに全パネルの評点の平均点を以下の4段階の判断基準に従って判定した。尚、保湿感については、塗布直後、さらに2時間後、乾燥感が感じられないかを判定した。
(評価基準)
評価結果 : 評点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
(判定基準)
評点の平均点 : 判定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
成型性については、少なくとも化粧料が粉末状であり、容器へ充填し易いこと、圧縮成型後、成型品表面がめくれ等の外観上欠点がないことを判断基準に○と×で表した。
【0044】
(実施例1〜3及び比較例1〜10)
表1に示した各原料を用いて以下に示す製法に従って固形粉末化粧料を製造した。
(製法)実施例1〜3および比較例1〜9
A.油剤成分10〜16を75℃に加熱溶解し、均一に分散後、1または2を投入し充分に吸油させる。
B.粉末成分3〜9をヘンシェルミキサーで均一に分散する。
C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基剤を得る。
D.Cを更にアトマイザーで粉砕し、メッシュ掛けした後、化粧料基剤を加圧成型しパウダーファンデーションを得た。
【0045】
(製法)比較例10
A.油剤成分10〜16を75℃に加熱溶解し、均一に分散する。
B.粉末成分1〜9をヘンシェルミキサーで均一に分散する。
C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基剤を得る。
D.Cを更にアトマイザーで粉砕し、メッシュ掛けした後、化粧料基剤を加圧成型しパウダーファンデーションを得た。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、本発明のパウダーファンデーションは、塗布具に良好にとれ、その他の官能特性(滑らかさ、伸びのよさ、密着性、保湿感)及び成型性に優れたものであった。
【0048】
実施例4:コントロールカラー
(1)球状樹脂粉末 注11 10.0
(2)オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 注12 5.0
(3)着色剤 3.7
(4)アミノ酸処理セリサイト 注13 10.3
(5)アミノ酸処理タルク 注14 55.0
(6)抱水性油剤 注15 2.0
(7)α−オレフィンオリゴマー 8.0
(8)ジメチコン 5.0
(9)イソノナン酸イソノニル 1.0
注11 ガンツパールGMP0800 (ガンツ化成社)8μm 150ml/100g
注12 EP−9289LL (東レダウコーニング社)3μm
注13 NAIセリサイトFSE (三好化成社)
注14 NAIタルクJA−46R (三好化成社)
注15 ハイルーセントISDA (高級アルコール工業社)
(製法)実施例1と同様の方法でコントロールカラーを得た。
【0049】
実施例5:アイシャドウ
(1)球状樹脂粉末 注16 15.0
(2)オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 注17 8.0
(3)シリコーン処理マイカ 注18 18.7
(4)窒化ホウ素 5.0
(5)着色剤 6.3
(6)雲母チタン 20.0
(7)ナイロン末 5.0
(8)抱水性油 注19 2.5
(9)ジメチコン 4.0
(10) ミネラルオイル 10.0
(11)リンゴ酸ジイソステアリル 3.0
(12) ワセリン 2.5
注16 ガンツパールGMP−0800(ガンツ化成社)8μm 150ml/100g
注17 KSP−105 (信越化学工業社) 2μm
注18 SAマイカM−302(三好化成社)
注19 スーパーモルLM(クローダジャパン社)
(製法)実施例1と同様の方法でアイシャドウを得た。
【0050】
実施例4〜5の化粧料は、塗布具に良好にとれ、その他の官能特性(滑らかさ、伸びの良さ、密着性、保湿性)及び成型性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明の固形粉末化粧料は、油剤を高配合しても小道具へのとれが良好で充分な保湿感を有し、伸展性、密着性等の官能特性に優れ、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、サンケア製品、ボディ化粧品等のメイクアップ化粧料に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a) 抱水性油剤0.5〜10質量%(対固形粉末化粧料全量)を含む油剤 15%〜30質量%
(b) スクワランの吸油量100ml/100g以上で平均粒子径1.0〜25μmの球状樹脂粉末3.0〜20質量%
(c) 平均粒子径1.0〜20μmのオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 1.0〜20質量%
(d) (b)(c)以外の粉末 30〜81質量%
を含有し、成分(a)は、成分(b)中に吸蔵されており、圧縮成型して得られたものであることを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)中の抱水性油剤が、ダイマー酸エステルである請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(b)が多孔性である請求項1〜2いずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(b)がポリ(メタ)アクリル酸エステル粉末及びエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体粉末から選ばれる1種又は2種以上の多孔性球状樹脂粉末である請求項1〜2いずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の固形粉末化粧料の製造方法であって、
前記油剤(a)中に前記球状樹脂粉末(b)を予め浸漬し、吸油させる工程を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2011−20959(P2011−20959A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167846(P2009−167846)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】