説明

固形粉末化粧料

【課題】伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れた固形粉末化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)〜(C);(A)フッ素化合物で表面が被覆されている粉体を含む粉体、(B)炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル等の油剤、を含有する固形粉末化粧料であって、成分(A)〜(C)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を除去することにより固形粉末化粧料を成形する。成分(B)の配合量は0.01〜5質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体と、炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体と、油剤と、揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填し、該揮発溶剤を除去することにより成形される固形粉末化粧料に関し、本発明の固形粉末化粧料は、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性等に優れたものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料の成形方法としては、粉体と油剤を含有する粉体組成物を圧縮成形する乾式成形法、粉体と油剤を含有する粉体組成物と揮発性溶剤とを混合してスラリーを調製し、これを容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を乾燥により除去して成形する湿式成形法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が、一般的に用いられている。前記湿式成形法は、前記乾式成形法に比べて、弾力を有する感触の良好な粉体や、アスペクト比(板状比)が高い薄片状粉体等を多量に含有する場合でも、耐衝撃性に優れた成形物を得ることができる成形方法とされている。
【0003】
しかしながら、前記湿式成形法による固形粉末化粧料は、揮発性溶剤の除去時に内容物が収縮することにより、内容物と容器又は中皿との間にスキマができ、耐衝撃性に劣る課題を有していた。このような課題の解決方法として、高アスペクト比の粉体と球状粉体を組み合わせる方法(例えば、特許文献3参照)が知られているが、この方法では、含有する粉体が限定されてしまい、多種多様の化粧料を具現化することが困難であった。また、耐衝撃性を向上させる目的で、有機変性ベントナイト等の有機変性粘土鉱物を結合剤として用いる方法(例えば、特許文献4参照)も知られているが、この方法では、伸び広がりが軽くソフトな使用感を具現化することができなかった。さらに、湿式成形法を用いて、耐衝撃性、化粧持続性に優れた固形粉末化粧料の開発(例えば、特許文献5参照)がなされたが、この固形粉末化粧料では、有機変性粘土鉱物を結合剤として用いているために、伸び広がりが悪く、その結果、化粧膜の均一性や付着性を満足するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−123107号公報
【特許文献2】特開平4−9322号公報
【特許文献3】特開平9−255528号公報
【特許文献4】特開平9−227338号公報
【特許文献5】特許3752187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れた固形粉末化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、湿式成形法における結合剤として、炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体を用いることにより、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れた固形粉末化粧料が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、[1]次の成分(A)〜(C);
(A)粉体
(B)炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体
(C)油剤
を含有する固形粉末化粧料であって、成分(A)〜(C)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を除去することにより成形されることを特徴とする固形粉末化粧料に関する。
また本発明は、[2]成分(A)が、フッ素化合物で表面が被覆されている粉体を含有することを特徴とする上記[1]記載の固形粉末化粧料や、[3]成分(C)が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の固形粉末化粧料や、[4]成分(B)の配合量が0.01〜5質量%であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の固形粉末化粧料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形粉末化粧料は、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる成分(A)粉体としては、通常化粧料に使用されるものであれば、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉄、コンジョウ、群青、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、カオリン、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、スメクタイト、ベントナイト、タルク、石膏、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ポリスチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー等の有機粉体類等、及びこれら粉体を一種又は二種以上複合化した粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0010】
上記粉体として、少なくともその一部が、種々の化合物でその表面が被覆処理をされている粉体を用いることができる。かかる被覆処理としては、落下時の耐衝撃性を高める上で、フッ素化合物による被覆処理が好ましい。例えば、成分(A)の粉体の内、15質量%以上、特に30質量%以上の粉体がフッ素化合物による被覆処理粉体であることが好ましい。
【0011】
具体的なフッ素化合物としては、パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、パーフルオロアルキルリン酸塩、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロアルコール、パーフルオロエポキシ化合物、パーフルオロアルキル硫酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、テトラフルオロエチレン樹脂、フッ素基含有アクリルポリマー、フッ素基含有シリコーンアクリルポリマー等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0012】
このようなフッ素化合物は、市販品として、パーフルオロアルキルリン酸塩であるアサヒガードAG530(旭ガラス社製)、パーフルオロアルキルシランであるLP−8T(信越シリコーン社製)、パーフルオロポリエーテルであるフォンブリンHC/05(アウジモント社製)等が挙げられる。また、被覆処理粉体としては、パーフルオロアルキルリン酸塩とパーフルオロアルキルエチルアクリレートを組み合わせて処理した粉体であるNFP処理粉体(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0013】
成分(A)にフッ素化合物を被覆する方法は、特に限定されず、通常公知の方法を用いることができるが、例えば、乾式処理法、湿式処理法、噴霧式処理法等が挙げられる。乾式処理法とは、粉体とフッ素化合物とを混合機中で直接混合し処理する方法等である。また、湿式処理法とは、水、アルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等の溶媒中にフッ素化合物を分散又は溶解し、次いで、この溶媒中に粉体を分散させ、均一混合後、該溶媒を除去する方法等である。更に、噴霧式処理法とは、フッ素化合物を直接噴霧するか、水、アルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等の溶媒中にフッ素化合物を分散又は溶解し、次いで、この溶媒を粉体に噴霧し、該溶剤を除去する方法等である。
【0014】
成分(A)に被覆するフッ素化合物の処理量は、特に限定はされないが、粉体が撥水性及び撥油性を帯びるのに必要な量である0.001〜30質量%(以下単に%という)が好ましく、特に0.1〜8%が好ましい。成分(A)における処理量がこの範囲であると、耐衝撃性がより向上する固形粉末化粧料を得ることができる。
【0015】
本発明に用いられる成分(B)炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体は、炭素数16〜35の高級αオレフィン一種を重合した単独重合体、炭素数16〜35の高級αオレフィンを二種以上重合した共重合体、又は炭素数16〜35の高級αオレフィン一種以上と他のオレフィン一種以上とを重合した共重合体を包含する。
【0016】
炭素数16〜35の高級αオレフィンとしては、例えば、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。重合に用いる高級αオレフィンの炭素数が16以上であると、重合して得られる高級αオレフィン重合体は、結晶性が高く、べたつきもなく更に強度が向上する。また、重合に用いる高級αオレフィンの炭素数が35以下であると、重合して得られる高級αオレフィン重合体は、未反応モノマーが少なく、融解、結晶化の温度域が狭い均一な組成となる。
【0017】
炭素数16〜35の高級αオレフィン一種以上と共重合される上記他のオレフィンとしては、炭素数2〜30のオレフィンを用いることができ、特にαオレフィンが好ましい。ここでいうαオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1,1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
【0018】
成分(B)の高級αオレフィン重合体中の炭素数16〜35のαオレフィン単位の含有量は50〜100モル%であり、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは85〜100モル%である。特に、炭素数16〜35の高級αオレフィンのみからなる単独重合体又は炭素数16〜35の高級αオレフィンの2種以上からなる共重合体が好ましい。
【0019】
成分(B)の高級αオレフィン重合体は、以下の特性を有する。
(1)融点(Tm):示差走査型熱量計(DSC)を用い、該重合体を窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される融点(Tm)が60℃以下であり、好ましくは35〜60℃である。
(2)広角X線散乱強度分布:15deg<2θ<30degに観測される側鎖結晶化に由来する、単一のピークX1が観測される。
(3)重量平均分子量(Mw):ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、好ましくは20,000〜150,000の範囲にある。分子量分布(Mw/Mn)は5.0以下であり、好ましくは3.0以下である。
(4)平均側鎖長:オレフィンの主鎖導入部分を除いた炭素数の平均値であり、好ましくは15以上、特に好ましくは15〜20である。例えば、ヘキサデセン(C16)/オクタデセン(C18)の90/10(モル比)共重合体の場合、側鎖長は(16−2)×0.9+(18−2)×0.1=16.2となる。
(5)硬度:JIS K 2235に準拠し、温度25℃で測定した硬度は、5以下が好ましく、特に好ましい範囲は2〜5である。
(6)立体規則性指標値(M2):T.Asakura,M.Demura,Y.Nishiyamaにより報告された「Macromolecules,24,2334(1991)」で提案された方法に準拠して求めたM2は、50モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50〜90モル%である。M2が50モル%以上の場合、重合体がアイソタクチック構造をとり、結晶性が向上する。
(7)融解吸熱カーブの半値幅(Wm):示差走査型熱量計により測定されたWmは10℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは6℃以下、特に好ましくは2〜4℃である。半値幅が小さいほど、均一な結晶が形成されていることを意味する。
【0020】
(高級αオレフィン重合体の製造法)
成分(B)の高級αオレフィン重合体の製造方法としては、上記特徴を有する高級αオレフィン重合体を製造することができる限り特に制限はないが、例えば、特開2005−75908又はWO2003/070790に記載された方法に基づき、以下に示すメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
即ち、(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数16〜35の高級αオレフィン一種又は二種以上を単独重合又は共重合させるか、あるいは炭素数16〜35の高級αオレフィン一種以上と他のオレフィン一種以上とを共重合させる方法である。
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E,E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E,E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
【0023】
本発明の固形粉末化粧料における、成分(B)の含有量は0.01〜5%が好ましい。成分(B)の含有量が0.01%未満では、耐衝撃性が良好にならない場合があり、また、5%を超えて含有しても、耐衝撃性の効果は大きく変わるものでは無い。
【0024】
本発明に用いられる成分(C)油剤は、通常化粧料に用いられる油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキレングリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸−2−エチルヘキシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル等のエステル類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)等のアミノ酸系油剤、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0025】
これらの中でも、成分(C)がポリグリセリン脂肪酸エステルである場合、成分(B)と良好なオイルゲルを形成し、粉体への分散性を高める効果があるため好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、常温にて液状あるいはペースト状、固形状のエステル油であり、具体的には、モノイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル等が挙げられ、特にジグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。市販品としては、コスモール41、コスモール42、コスモール43、コスモール44(いずれも日清オイリオグループ社製)、ニッコールデカグリン5−0、ニッコールデカグリン2−IS(いずれも日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明の固形粉末化粧料における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、0.5〜30%が好ましい。成分(C)の含有量が0.5%未満では、耐衝撃性が良好とならない場合があり、また、30%を超えて含有すると、伸び広がりが軽くソフトな使用感に劣る場合があり、好ましくない。
【0027】
本発明の固形粉末化粧料には、上記成分(A)〜(C)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に使用される成分である粉体、水性成分、水溶性高分子、界面活性剤、トリメチルシロキシケイ酸、アクリル−シリコーングラフト共重合体等の被膜形成剤、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン等の保湿剤、α−トコフェロール、アスコルビン酸等の酸化防止剤、ビタミン類、消炎剤、生薬等の美容成分、パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤、香料等を適宜配合することができる。
【0028】
本発明の固形粉末化粧料の調製方法は、特に限定されないが、例えば、成分(A)を含む粉体類を混合し、これに成分(B)、(C)及びその他成分を添加し、均一分散した粉体組成物を調製した後、揮発性溶剤と混合して容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を除去することにより成形される。また、予め、成分(B)と成分(C)とを十分に混合してゲルを形成させた後、成分(A)を含む粉体類と混合させると、粉体組成物中での分散性が高まるため好ましい。本発明においては、前記粉体組成物と揮発性溶剤との混合物を、容器に直接充填してもよいし、金皿や樹脂皿等の中皿に充填した後、これを容器に装着することも可能である。
【0029】
本発明に用いられる揮発性溶剤としては、沸点が250℃以下の揮発性化合物が好ましく、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、水、n−ブタノール、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素、低重合度のジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン、低沸点パーフルオロポリエーテル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これら揮発性溶剤として、軽質流動イソパラフィンを選択すると、ヒビ割れ防止効果がより優れるため好ましい。
【0030】
本発明における、揮発性溶剤の混合量は、成形前の混合物を容器又は中皿に充填するために、流動性を付与する程度に任意に選択されるが、前記粉体組成物:揮発性溶剤の質量比が、概ね1:0.3〜1:1.5が好ましい。この範囲であれば、揮発性溶剤の除去が良好である。
【0031】
本発明の固形粉末化粧料の調製方法において、揮発性溶剤を除去する方法は、特に限定されず、通常公知の方法を用いることができる。例えば、前記粉体組成物と揮発性溶剤との混合物を容器又は中皿に充填する際、表面を平滑にするために、パッド等を用いて弱くプレスすることが好ましいが、そのプレス時に、多孔質プレスヘッドや吸収体を用いて、揮発性溶剤を吸収させることもできる。また、乾燥により揮発性溶剤を除去することも可能であり、そのための条件は、揮発性溶剤の沸点や比熱に応じて適宜設定されるが、軽質流動イソパラフィンの場合、50〜70℃にて10〜20時間程度である。
【0032】
本発明の固形粉末化粧料としては、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、日焼け止め料、コンシーラー等が挙げられる。また本発明の固形粉末化粧料の形状は、ケーキ状、スティック状、ペンシル状等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[製造例1]炭素数18のαオレフィンのみからなる高級αオレフィン重合体
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン18」(炭素数18のαオレフィン)を160g、ヘプタン200mLを入れ、重合温度80℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.3MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級αオレフィン重合体144gを得た。得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は27,000、融点は42℃であった。
【0034】
[製造例2]炭素数16及び18のαオレフィンからなるαオレフィン重合体
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン16」(炭素数16のαオレフィン)を48g、出光興産(株)製「リニアレン18」(炭素数18のαオレフィン)を112g、ヘプタン200mLを入れ、重合温度80℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.4MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級αオレフィン共重合体140gを得た。得られたポリマーのGPCによる重量平均分子量(Mw)は24,000、融点は37℃であった。
【0035】
[製造例3]炭素数18、20、22及び24のαオレフィンからなる高級αオレフィン重合体
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン2024」(炭素数18、20、22、24のαオレフィンの5/47/33/15混合体)を160g、ヘプタン200mLを入れ、重合温度80℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを4μmol加え、水素を0.4MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級αオレフィン共重合体125gを得た。得られたポリマーのGPCCによる重量平均分子量(Mw)は23,000、融点は52℃であった。
【0036】
[実施例及び比較例]ファンデーション
表1に示す組成及び下記調製方法により、ファンデーションを調製し、耐衝撃性、伸び広がりの軽さ、化粧膜の均一性、付着性の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
(製造方法)
A:成分1〜13を混合する。
B:60℃にて成分14、15を加熱後、デスパーミキサーにて分散し、ゲルを得る。
C:成分16〜18にBを添加して、均一に混合する。
D:AにCを添加混合した後、粉砕して粉体組成物を得る。
E:粉体組成物100部に対して、溶剤60部を添加し、混合してスラリー状とする。
F:Eを金皿に充填し、70℃で一昼夜乾燥し、揮発性溶剤を除去してファンデーションを得た。
【0039】
(評価方法:耐衝撃性)
前記実施例1〜6及び比較例1及び2のファンデーションをそれぞれ5個用意し、金皿に充填した状態のまま、50cmの高さからアクリル板上に正立方向で自由落下させ、落下後の表面状態を観察し、サンプル毎に以下の評価基準により評点を付し、そしてn=5の評点の平均点を算出し、以下の4段階の判定基準により判定した。
<評価基準>
(評点):(評価)
4点 :変化なし
3点 :僅かにヒビ割れがあるが、使用性に問題なし
2点 :ヒビ割れ、スキマ有り
1点 :大きなヒビ割れやスキマ有り
【0040】
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :3.5以上
○ :3.0以上〜3.5未満
△ :2.0以上〜3.0未満
× :2.0未満
【0041】
(評価方法:伸び広がりの軽さ、化粧膜の均一性、付着性)
前記実施例1〜6及び比較例1、2のファンデーションについて専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて6段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
【0042】
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3点を超える5点以下:良好
△ :1点を超える3点以下:やや不良
× :1点以下 :不良
【0043】
表1の結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1〜6のファンデーションは、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れるものであった。一方、成分(B)を含有していない比較例1では、揮発性溶剤の除去時に、内容物が収縮することから、耐衝撃性が劣り、さらに肌への付着性も劣っていた。また、成分(C)を含有しない比較例2では、粉体同士の結合力が弱く、また、成分(B)の分散性も悪いため、耐衝撃性が劣り、さらに化粧膜の均一性、付着性も劣っていた。
【0044】
[実施例7]ケーキ状白粉
(成分) (%)
1.酸化チタン 5
2.パーフルオロアルキルシラン処理タルク(注5) 40
3.パーフルオロアルキルシラン処理セリサイト(注5) 残量
4.硫酸バリウム 5
5.無水ケイ酸 3
6.球状ポリスチレン 3
7.着色顔料 適量
8.防腐剤 0.2
9.ジイソステアリン酸ジグリセリル(注6) 3
10.製造例2記載の高級αオレフィン重合体 1
11.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.4
12.流動パラフィン 0.3
13.香料 0.1
注5:LP−8T(信越シリコーン社製)5%処理
注6:コスモール42(日清オイリオグループ社製)
【0045】
(製造方法)
A:成分1〜8を混合する。
B:成分9〜13を均一に加熱混合(60℃)する。
C:AにBを添加混合して粉体組成物を得た。
D:粉体組成物100部に対して、溶剤(デカメチルシクロペンタシロキサン)65部を添加し、混合してスラリー状とする。
E:Dを金皿に充填し、70℃で一昼夜乾燥し、揮発性溶剤を除去してケーキ状白粉を得た。
【0046】
実施例7のケーキ状白粉は、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れる固形粉末化粧料であった。
【0047】
[実施例8]アイシャドウ
(成分) (%)
1.パーフルオロアルキルリン酸処理雲母チタン(注7) 30
2.パーフルオロアルキルリン酸処理タルク(注7) 30
3.パーフルオロアルキルリン酸処理セリサイト(注7) 残量
4.窒化硼素 5
5.ナイロン 3
6.防腐剤 0.2
7.着色顔料 適量
8.製造例3記載の高級αオレフィン重合体 1
9.テトライソステアリン酸ジグリセリル(注8) 1.5
10.ジメチルポリシロキサン 10
11.トリイソオクタン酸グリセリド 10
12.香料 0.1
注7:アサヒガードAG530(旭ガラス社製)5%処理
注8:コスモール44(日清オイリオグループ社製)
【0048】
(製造方法)
A:成分1〜7を混合する。
B:60℃にて成分8、9を加熱後、デスパーミキサーにて分散し、ゲルを得る。
C:成分10〜12にBを添加して、均一に混合する。
D:AにCを添加混合した後、粉砕して粉末組成物を得た。
E:前記粉末組成物100部に対して、溶剤(エタノール)75部を添加し、混合してスラリー状とする。
F:Eを金皿に充填し、50℃で5時間乾燥し、揮発性溶剤を除去してアイシャドウを得た。
【0049】
実施例8のアイシャドウは、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れる固形粉末化粧料であった。
【0050】
[実施例9]ケーキ状ファンデーション
(成分) (%)
1.酸化チタン 10
2.セリサイト 残量
3.タルク 10
4.パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン処理
セリサイト(注1) 10
5.硫酸バリウム 5
6.無水ケイ酸 3
7.球状ポリスチレン 3
8.パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン処理
ベンガラ(注1) 0.5
9.パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン処理
黄酸化鉄(注1) 2
10.パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン処理
黒酸化鉄(注1) 0.2
11.防腐剤 0.2
12.ジイソステアリン酸ジグリセリル(注6) 3
13.製造例2記載の高級αオレフィン重合体 1
14.ワセリン 1
15.流動パラフィン 3
16.香料 0.1
【0051】
(製造方法)
A:成分1〜11を混合する。
B:60℃にて成分12〜15を加熱後、デスパーミキサーにて分散し、ゲルを得る。
C:Bに成分16を添加して、均一に混合する。
D:A、Cの総量100部に対して、溶剤65部をAとCの混合物に添加し、撹拌混合してスラリー状とする。
E:Dを金皿に充填し、70℃で一昼夜乾燥し、揮発性溶剤を除去してケーキ状ファンデーションを得た。
【0052】
実施例9のケーキ状ファンデーションは、伸び広がりが軽くソフトな使用感でありながら、落下時の耐衝撃性に優れ、さらに化粧膜の均一性、付着性に優れる固形粉末化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)粉体
(B)炭素数16〜35の高級αオレフィンを繰り返し単位として50〜100モル%含有し、融点が60℃以下である高級αオレフィン重合体
(C)油剤
を含有する固形粉末化粧料であって、成分(A)〜(C)と揮発性溶剤とを混合して容器又は中皿に充填し、該揮発性溶剤を除去することにより成形されることを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(A)が、フッ素化合物で表面が被覆されている粉体を含有することを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(C)が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
成分(B)の配合量が0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2009−249311(P2009−249311A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97208(P2008−97208)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】