説明

固液分離装置

【課題】固液分離部内を延びるスクリューを回転駆動して、該固液分離部の軸線方向一端側の入口から固液分離部内に入り込んだ処理対象物を固液分離部の軸線方向他端側の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出部を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置であって、固液分離部の出口に対向して位置していて、該出口から排出される処理対象物の量を規制することにより、固液分離部内の圧力を高める規制部材を有している固液分離装置において、固液分離部内の圧力低下を防止すると共に、固液分離部内に処理対象物が固まって詰まることを阻止する。
【解決手段】規制部材47を、スクリュー21の軸41上に、固液分離部3の出口3Bに対して接近又は離隔する方向に移動可能に支持すると共に、規制部材47を出口3Bに向けて加圧する付勢手段57を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離部に配置されたスクリューを回転駆動して、該固液分離部に入り込んだ処理対象物を固液分離部の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、前記固液分離部の濾液排出部を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置であって、前記固液分離部の出口に対向して位置していて、該出口から排出される処理対象物の量を規制することにより、固液分離部内の圧力を高める規制部材を有している固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離するために、上記形式の固液分離装置を用いることは従来より周知である(例えば、特許文献1乃至5参照)。この形式の固液分離装置によれば、固液分離部の出口に対向して規制部材が配置されているので、その出口から排出される処理対象物の量を規制して、固液分離部内の圧力を高めることができ、これにより、処理対象物に対する脱液効率を高めることができる。
【0003】
ところが、従来の規制部材は、スクリューの軸に固定されていて、規制部材と固液分離部の出口との間の距離が一定に保たれていたため、固液分離装置の作動開始直後や、固液分離装置の作動中に、固液分離部内に入り込む処理対象物の含液率が大きく変化したような場合に、固液分離部内の圧力を適正な大きさに維持することが困難であった。この欠点を、処理対象物が多量の水分を含んだ汚泥である場合に例をとって、より具体的に明らかにする。
【0004】
一般に、固液分離装置の作動開始直後の固液分離部内には、含水率の高い汚泥が移動していて、含水率の低い汚泥の量は少なくなっている。このため、固液分離部の出口に対向して規制部材が設けられてはいるが、固液分離部内の圧力は比較的低く保たれ、汚泥に対する水分の絞り効果が低くなり、固液分離部の出口からは、含水率の高い汚泥が多量に排出される。これにより、汚泥の脱水効率が低下する。
【0005】
一方、固液分離装置の作動中に、固液分離部に送り込まれる汚泥の含水率が高くなりすぎると、上述したところと全く同様にして、汚泥に対する脱水効率が低下する。
【0006】
逆に、固液分離装置の作動中に、固液分離部内に送り込まれる汚泥の含水率が低くなりすぎると、固液分離部の出口に対向して規制部材が設けられているので、固液分離部内には含水率の低くなった汚泥が多量に存在することになり、固液分離部内の圧力が過度に高くなる。このようになると、含水率の極端に低くなった固い汚泥が固液分離部内に詰まってしまい、遂にはスクリューを回転駆動するモータが停止してしまうおそれがある。このようになれば、固液分離を行うこと自体が不可能となる。
【0007】
上述した欠点は、処理対象物が汚泥以外の物、例えば野菜屑や果実の皮などである場合も同様に発生する。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−19011号公報
【特許文献2】特開平5−228695号公報
【特許文献3】特開2003−265908号公報
【特許文献4】特許第3565841号公報
【特許文献5】特許第3638597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を効果的に抑制することのできる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の固液分離装置において、前記規制部材を、前記固液分離部の出口に対して接近又は離隔する方向に移動可能に支持すると共に、該規制部材を前記固液分離部の出口に向けて加圧する付勢手段を設けたことを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0011】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記規制部材は、前記スクリューと共に回転するように該スクリューの軸に組み付けられていると有利である(請求項2)。
【0012】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、前記付勢手段は、前記スクリューの軸に対して固定されたばね受けと、該ばね受けと前記規制部材との間に配置されて、該規制部材を前記固液分離部の出口に向けて加圧する加圧ばねとを具備すると有利である(請求項3)。
【0013】
また、上記請求項3に記載の固液分離装置において、前記規制部材には、前記加圧ばねを覆う筒状のカバーが固着されていると有利である(請求項4)。
【0014】
さらに、上記請求項3又は4に記載の固液分離装置において、前記ばね受けは、前記スクリューの軸に着脱可能に嵌合していると共に、該軸の軸線方向に配列された複数のばね受け部材により構成されていると有利である(請求項5)。
【0015】
また、上記請求項3又は4に記載の固液分離装置において、前記加圧ばねのばね力を調整するばね力調整手段を具備していると有利である(請求項6)。
【0016】
さらに、上記請求項6に記載の固液分離装置において、前記ばね力調整手段は、前記ばね受けと規制部材とに架け渡され、かつ前記スクリューの軸とほぼ平行に延びる連結ボルトを具備し、該連結ボルトは、前記規制部材とばね受けのうちの一方の部材に螺着され、その他方の部材に対しては、摺動可能に嵌合すると共に、該連結ボルトの頭部又は当該連結ボルトに螺着されたナットが、前記一方の部材に対向した側と反対側の他方の部材の面に当接していて、該連結ボルトを回転することにより、前記規制部材とばね受けの間の間隔を変えるように構成されていると有利である(請求項7)。
【0017】
また、上記請求項3乃至7のいずれかに記載の固液分離装置において、前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して固定すると共に、必要に応じて、該ばね受けが前記スクリューの軸に対して、その軸線方向に移動することを許容するばね受け位置調整手段を具備すると有利である(請求項8)。
【0018】
さらに、上記請求項8に記載の固液分離装置において、前記ばね受け位置調整手段は、前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできるばね受け固定部材より成ると有利である(請求項9)。
【0019】
また、上記請求項8に記載の固液分離装置において、前記ばね受け位置調整手段は、前記スクリューの軸に対して回転可能で、かつ該スクリューの軸線方向に移動可能に当該スクリューの軸に嵌合したリング状の第1の有歯部材と、該第1の有歯部材を前記スクリューの軸に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできる有歯部材用固定部材と、前記スクリューに対して固定された第2の有歯部材とを有し、前記第1の有歯部材は、前記ばね受けを挟んで、前記固液分離部の出口に対して対向配置され、通常、前記有歯部材用固定部材により前記スクリューの軸に対して固定された前記第1の有歯部材の歯の先端と、前記第2の有歯部材の歯の先端とが互いに当接した状態で第1の有歯部材が前記スクリューの軸に嵌合しており、前記スクリューの軸に対する第1の有歯部材の固定状態を解除した後、該第1の有歯部材を回転させ、当該第1の有歯部材の歯と前記第2の有歯部材の歯を噛み合わせることによって、該第1の有歯部材が、前記ばね受けと共に、スクリューの軸に沿って前記固液分離部の出口から離隔する向きに移動することを許容するように構成されていると有利である(請求項10)。
【0020】
さらに、上記請求項10に記載の固液分離装置において、前記第2の有歯部材の外周部に嵌合し、かつ該第2の有歯部材に対して固定された固定リングと、前記スクリューの回転時に、前記ばね受けが前記固定リングと共に回転するように、ばね受けと固定リングを連結する連結部材とを有していると有利である(請求項11)。
【0021】
また、上記請求項11に記載の固液分離装置において、前記固定リングと、前記第2の有歯部材は、該固定リングと第2の有歯部材と前記スクリューの軸とを直径方向に貫通する固定リング用ボルトと該固定リング用ボルトに螺着されて締め付けられたナットとによってスクリューの軸に対して固定されていると共に、前記第2の有歯部材に対して、その軸線方向に螺着されて、先端面が前記スクリューの軸の端面に圧接した有歯部材用ボルトによって、スクリューの軸に対する第2の有歯部材のがたつきが阻止されていると有利である(請求項12)。
【0022】
さらに、上記請求項8に記載の固液分離装置において、前記ばね受け位置調整手段は、前記スクリューの軸に対して回転可能に嵌合し、かつ外周面に雄ねじが形成されたねじ部材と、該ねじ部材が前記スクリューの軸に対して回転しないように、該ねじ部材を固定し、又はその固定状態を解除して、ねじ部材がスクリューの軸に対して回転することを許容するねじ部材用固定部材とを有し、前記ねじ部材に、前記ばね受けに形成された孔が嵌合すると共に、該孔の内周面に形成された雌ねじが前記ねじ部材の雄ねじに係合し、前記スクリューの軸に対するねじ部材の固定状態を解除した後、該ねじ部材を回転させることによって、前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して、その軸線方向に移動させるように構成されていると有利である(請求項13)。
【0023】
また、上記請求項13に記載の固液分離装置において、前記スクリューの軸に固定された固定リングと、前記スクリューの回転時に、前記ばね受けが前記固定リングと共に回転するように、該固定リングとばね受けを連結する連結部材とを有していると有利である(請求項14)。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、規制部材が、固液分離部の出口に対して接近又は離隔する方向に移動可能に支持されていると共に、付勢手段によって固液分離部の出口に向けて加圧されているので、規制部材が固液分離部の圧力に応じて、固液分離部の出口に対する適正な位置を占めることができ、常に処理対象物に対する高い脱液効率を保ちつつ、固液分離部内に処理対象物が固まって詰まる不具合を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0026】
図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0027】
ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された後述する複数の固定板28と複数の可動板29とを有し、入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口によって、汚泥が流入する流入口4が構成されている。符号7は入口部材1の底壁を示す。また固定板28と可動板29を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成され、さらに入口部材1の側壁5に対向したもう一つの側壁8には、横断面が矩形状に形成されたモータ支持部材9の一方の側壁10がボルトとナットによって固定され、モータ支持部材9の他方の側壁11に、減速機付きのモータ12が固定支持されている。
【0028】
入口部材1の両側壁5,8は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー13,14にそれぞれ着脱可能に固定され、モータ支持部材9の両側壁10,11も下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー14に着脱可能に固定されている。
【0029】
出口部材2は、その上部と下部が開口し、水平断面が矩形状に形成されていて、固定板28と可動板29を向いた側の出口部材2の側壁19と、これに対向する出口部材2の側壁20には、開口22,23がそれぞれ形成されている。側壁19,20は、下方に延び、その下端部が支持フレームのステー52,53に図示していないボルトとナットによって着脱可能に固定されている。また、側壁20に形成された開口23には、軸受部材18が配置され、その軸受部材18は、ボルト24とナット25によって側壁20に着脱可能に固定されている。出口部材2の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口26を構成している。
【0030】
一方、入口部材1と出口部材2の間には、小リング状の複数のスペーサ38によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板28と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置されたリングより成る可動板29とが配置されている。図2は隣り合う2つの固定板28と、これらの固定板28の間に配置された可動板29と、スペーサ38の外観を示す分解斜視図であり、複数の固定板28は、図1乃至図3に示すように同心状に配列され、軸線方向に隣り合う固定板28の間に4つのスペーサ38がそれぞれ配置されている。
【0031】
図示した固液分離装置においては、図2及び図3に示すように、各固定板28には、その半径方向に突出し、かつその周方向に配列された4つの耳部39が形成され、その各耳部39に取付孔32がそれぞれ形成されている。各耳部39に形成された各取付孔32と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置された各スペーサ38の中心孔には、ステーボルト34がそれぞれ貫通して延び、さらにその各ステーボルト34は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19を貫通し、各ステーボルト34の各端部に形成された雄ねじにナット36,36Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。なお、図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどの図示を省略してある。
【0032】
上述のようにして、複数の固定板28は、複数のステーボルト34と、ナット36,36Aとによって一体的に固定連結され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。各ステーボルト34は、複数の固定板28を貫通して延びていて、その複数の固定板28を連結する用をなす。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板をわずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0033】
図3に示すように、各固定板28の間にそれぞれ配置された各可動板29の厚さTは、各固定板間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定板28の端面と、これに対向する可動板29の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させる濾液排出部を構成するものである。可動板29の厚さTは、例えば、1.0mm乃至2mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば2mm乃至3mm程に設定される。また固定板28の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。ギャップg、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0034】
図4は、固定板28と、可動板29と、隣り合う固定板28の間に配置されたスペーサ38と、ステーボルト34の配置状態を示す説明図であり、この図では可動板29を破線で示してある。ここで、固定板28の周方向に隣り合う2つのスペーサ38の間の間隔をLとしたとき、この間隔Lの方が可動板29の外径Dよりも小さくなっている(L<D)。このため、可動板29が隣り合う固定板28の間から抜け出ることが阻止される。
【0035】
また、図2に示すように、複数のスペーサ38の固定板中心側の部分に接する円CCを考えたとき、各可動板29の外径Dは、円CCの直径Dよりも小さく、しかも各可動板29の外径Dが各固定板28の内径Dよりも大きく設定されている(D>D,D>D)。これにより、各可動板29は、各固定板28の中心孔から抜け出ることなく、該可動板29の半径方向に可動で、かつ隣り合う固定板28の間に回転可能に保持される。
【0036】
また、本例の固液分離装置においては、図4に示すように、固定板28の外径Dが前述の円CCの直径Dよりも小さく設定されている(D>D)。図4においては、隣り合う固定板28と可動板29を、その軸線方向に見たときに、これらの板28,29が互いに重なり合う部分にハッチングを付してある。本例の固定板28は、複数の耳部39を有しているが、かかる固定板28の外径Dは、これらの耳部39以外の円環状の部分の外径である。
【0037】
上述のように、本例の固液分離装置においては、スペーサ38により、軸線方向に間隔をあけて配置され、かつステーボルト34によって互いに固定された複数の固定板28と、隣り合う固定板28の間に配置された可動板29と、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19とによって、処理対象物(この例では汚泥)から液体を分離する固液分離部3が構成されている。この固液分離部3は内部が中空に形成され、入口部材1の側壁5の開口6によって、固液分離部3の入口3Aが構成され、出口部材2の側壁19の開口22によって、固液分離部3の出口3Bが構成されている。図3は、かかる固液分離部の部分縦断面図である。また、図1に示すように、固液分離部3は、その出口3Bの側が高くなるように傾斜して配置されている。
【0038】
また、固液分離部3の内部には、その固液分離部3の軸線方向に延びるスクリュー21が配置され、このスクリュー21は、軸41と、この軸41と一体のらせん状に延びる羽根42を有している。かかるスクリュー21は、図1に示すように、複数の固定板28と、可動板29の内部を貫通して延びると共に、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19,20に形成された開口6,22,23を貫通して延びていて、このスクリュー21の軸41の一方の端部が、軸受部材18に回転自在に支持されている。なお、図4にはスクリュー21の図示は省略してある。
【0039】
一方、図1に示したモータ12の出力軸45は、モータ支持部材9の側壁11,10と、入口部材1の側壁8を貫通して延び、側壁10に軸受を介して回転自在に支持されている。かかる出力軸45の先端部は、図5に示すように、内部が中空に形成され、その中空部49の中央部に係合片50が固定配置されている。また、スクリュー21の軸41の他方の端部には、係合溝51が形成され、軸41の端部が図1に示すように出力軸45の中空部49に挿入され、軸41に形成された係合溝51が出力軸45に設けられた係合片50に係合している。モータ12が作動して出力軸45が回転すると、その回転が、互いに係合した係合片50と係合溝51を介してスクリュー21に伝えられ、該スクリュー21がその中心軸線のまわりに回転する。
【0040】
次に、本例の固液分離装置の基本的な動作例を説明する。
【0041】
固液分離部3の下方に位置する図示していないサービスタンク内の汚泥が、同じく図示していないフロック化装置に供給され、そのフロック化装置において、多量の水分を含む汚泥に凝集剤が混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。フロック化された汚泥(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、固液分離装置の入口部材1内に流入する。かかる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー21はモータ12によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した汚泥は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6を通って、固定板28と可動板29の内部空間に流入する。このように、汚泥は、固液分離部3の内部空間に、その軸線方向一端側の入口3Aから流入する。
【0042】
上述のようにして固液分離部3の内部に流入した汚泥は、モータ12により回転駆動されたスクリュー21によって、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bへ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定板28と可動板29との間の微小ギャップg(図3)より成る濾液排出部を通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、ステー13,52に固定された濾液受け部材40に受け止められ、次いで濾液排出管46を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度水処理され、次いで固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0043】
ここで、図3に示す如く、スクリュー21の外径Dは、その回転が阻害されないように、固定板28の内径Dよりもわずかに小なる大きさに設定されている(D>D)が、このスクリュー21の外径Dは可動板29の内径Dよりも大きく設定されている。可動板29の内径Dがスクリュー21の外径Dよりも小さく設定されているのである(D>D)。このため、スクリュー21の回転によって、各可動板29は、スクリュー21から外力を受けて半径方向に押し動かされ、固定板28に対して積極的に運動する。このようにして、可動板29を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、微小ギャップgに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、そのギャップgに対するクリーニング効率を高めることができる。
【0044】
上述のように固液分離部3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が、図1に矢印Dで示すように、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bから排出される。固液分離部3から排出された汚泥は、下部の排出口26を通して下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。
【0045】
上述のように、固液分離装置は、固液分離部に配置されたスクリューを回転駆動して、該固液分離部に入り込んだ処理対象物を固液分離部の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出部を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。
【0046】
ところで、図1及び図6に示すように、固液分離部3の出口3Bに対向して、規制部材47が設けられている。ここに示した規制部材47は、円板状に形成されていて、その規制部材47の外周部には、筒状のカバー54が一体に固着されている。また、規制部材47の中心孔55には、樹脂製のリングより成る滑り部材56が嵌着固定されていて、その滑り部材56がスクリュー21の軸41に対して、回転不能ではあるが、その軸線方向に摺動可能に嵌合している。滑り部材56を省略して、規制部材47を直に軸41に嵌合させることもできる。またカバー54を省くことも可能である。
【0047】
前述のように含水率の下げられた汚泥は、固液分離部3の出口3Bから排出されるが、このとき出口3Bには、規制部材47が対向して位置しているので、出口3Bから排出される汚泥がその規制部材47に当り、これによって出口3Bから排出される汚泥の量が規制される。このようにして固液分離部3内の圧力が高められ、固液分離部3内における汚泥の脱水効率が高められる。このように、規制部材は、固液分離部の出口に対向して位置していて、その出口から排出される処理対象物の量を規制することにより、固液分離部内の圧力を高め、固液分離部内での処理対象物の脱液効率を高める用をなす。
【0048】
ここで、従来の規制部材は、スクリューの軸に固定されていて、その規制部材と固液分離部の出口との間の距離が一定していたため、前述の欠点を免れなかったのであるが、本例の規制部材47は、図1及び図6に矢印Eで示すように、固液分離部3の出口3Bに対して接近又は離隔する方向に移動可能に支持されていると共に、この規制部材47が図6に示した付勢手段57によって固液分離部3の出口3Bに向けて加圧されている。しかも、規制部材47は、スクリュー21と共に回転するように、そのスクリュー21の軸41に対して相対回転不能に組み付けられている。
【0049】
より具体的に示すと、規制部材47は、滑り部材56を介して、スクリュー21の軸41にその軸線方向に摺動可能に嵌合していると共に、図6のVII−VII線断面図である図7に示すように、スクリュー21の軸41の外周面に、その軸線方向に延びる溝58が形成され、その溝58に、滑り部材56に突設された突部59が軸41の軸線方向に摺動可能に嵌合している。これにより、規制部材47は、滑り部材56を介して、固液分離部3の出口3Bに対して接近又は離隔する方向Eに摺動可能ではあるが、軸41に対して相対回転不能に当該軸41に支持される。
【0050】
また、図6に例示した付勢手段57は、ボルト60によってスクリュー21の軸41に対して固定されたばね受け61と、そのばね受け61と規制部材47との間に配置されて、規制部材47を固液分離部3の出口3Bに向けて加圧する加圧ばね62とを具備している。ここに示した加圧ばね62は、圧縮コイルばねより成り、複数の加圧ばね62が用いられているが、板ばねなどから成る加圧ばねを用いることもできる。ばね受け61は、その中心部に形成された孔16が、スクリュー21の軸41に対し、その軸線方向に移動可能に嵌合し、かかるばね受け61がボルト60を締め付けることにより軸41に固定されるのである。
【0051】
加圧ばね62は、規制部材47に固着された筒状のカバー54によって覆われていて、その加圧ばね62に汚泥が進入することが阻止される。これにより、加圧ばね62が汚泥により汚されたり、そのばねの機能が害される不具合が阻止される。
【0052】
上述した構成によれば、固液分離装置の作動開始直後や、固液分離部3内に送られる汚泥の含水率が高くなって、固液分離部3内の圧力が低くなったとき、固液分離部3の出口3Bから排出される汚泥によって規制部材47に加えられる圧力が低下するので、加圧ばね62により加圧された規制部材47は、固液分離部3の出口3Bに近づき、規制部材47と出口3Bとの間の隙間GA(図6)が狭くなる。このため、固液分離部3の出口3Bから排出される汚泥の量が減少し、固液分離部3内の圧力が上昇する。これにより汚泥に対する脱水効率の低下が防止される。
【0053】
逆に、固液分離部3に送られる汚泥の含水率が低下して、固液分離部3内の圧力が高まると、その出口3Bから排出される汚泥によって規制部材47に加えられる圧力が大きくなるので、規制部材47は加圧ばね62の加圧作用に抗して固液分離部3の出口3Bから離れる向きに移動し、規制部材47と出口3Bとの間の隙間GAが拡大する。このため、出口3Bから排出される汚泥の量が増大し、固液分離部3内の圧力が低下する。これにより、固液分離部3内に含水率の低い固くなった汚泥が詰まってしまう不具合を防止することができる。固液分離装置の作動時における規制部材47と出口3Bとの間の隙間GAは、例えば5乃至30mm程度となる。
【0054】
上述のように、本例の固液分離装置によれば、規制部材47が、固液分離部3内の圧力に応じて、固液分離部3の出口3Bに対する適正な位置を占め、汚泥に対する高い脱水効率を保ちつつ、固液分離部3内に汚泥が固まって詰まる不具合を防止することが可能である。かかる効果は、処理対象物が汚泥以外の物であるときも同様に奏することができる。
【0055】
また、規制部材47はスクリュー21と共に回転するので、含水率の低下した汚泥を固液分離部3の出口3Bから固液分離部3外に効率よく排出させることができる。
【0056】
上述のように、本例の固液分離装置によれば、固液分離部3内に固くなった汚泥が詰まってしまうことを防止することが可能ではあるが、固液分離部内に送り込まれる処理対象物の特性によっては、その処理対象物が固まって固液分離部3内に詰まってしまうことも考えられる。
【0057】
そこで、本例の固液分離装置においては、前述のようにばね受け61がボルト60より成るばね受け固定部材によってスクリュー21の軸41に固定されている。このため、万一、上述のように固液分離部3内に汚泥などが固まって詰まってしまった場合には、モータ12の作動を停止させた上で、ボルト60を緩めて、軸41に対するばね受け61の固定状態を解除し、そのばね受け61を、軸41に沿って、固液分離部3の出口3Bから離れる向きに移動させることができる。これにより、規制部材47を固液分離部3の出口3Bから大きく離し、隙間GAを大きく拡大することができるので、出口3Bから図示していない棒などを容易に突入させて、固液分離部3内に詰まった汚泥を楽に掻き出すことができる。詰まった汚泥の掻き出し作業を終えた後、再びばね受け61を元の位置に戻し、ボルト60を締め付けることにより、ばね受け61を軸41に対する所定の位置に固定することができる。
【0058】
上述のように、本例の固液分離装置は、ばね受けをスクリューの軸に対して固定すると共に、必要に応じて、そのばね受けがスクリューの軸に対して、その軸線方向に移動することを許容するばね受け位置調整手段を有しており、図1乃至図7に示した固液分離装置においては、そのばね受け位置調整手段が、ばね受け61をスクリュー21の軸41に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできるボルト60より成るばね受け固定部材によって構成されている。勿論、ボルト60以外のばね受け固定部材、例えばばね受け61と軸41に挿入されるピンなどを用いることもできる。
【0059】
また、加圧ばね62のばね力を調整するために、ボルト60を緩めてばね受け61をスクリュー21の軸41に沿って移動させ、次いでボルト60を締め付けてばね受け61をその位置に固定することもできる。このように、本例の固液分離装置は、加圧ばねのばね力を調整するばね力調整手段を有している。処理対象物の特性に応じて、或いは固液分離部3の出口3Aから排出される脱水後の汚泥の含水率を変える目的などで、ばね力調整手段により、加圧ばね62のばね力を変えることができるのである。図6に示した固液分離装置においては、そのばね力調整手段が、ばね受け61をスクリュー21の軸41に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできるボルト60より成るばね受け固定部材により構成されている。ボルト60が、ばね力調整手段を構成すると共に、前述のばね受け位置調整手段をも構成しているのである。
【0060】
図17は、規制部材47と、これに関連する構成の他の例を示す、図6と同様な断面図である。ここに示した規制部材47も固液分離部3の出口3Bに対向して配置され、その規制部材47の中心孔55に嵌着固定された樹脂製の滑り部材56が、スクリュー21の軸41に対して回転不能ではあるが、その軸線方向に摺動可能に嵌合している。このように、図17に示した規制部材47も、滑り部材56を介して、スクリュー21の軸41に対して相対回転不能ではあるが、その軸線方向には摺動可能に嵌合している。しかも、この規制部材47も、ばね受け61と、加圧ばね62とから成る付勢手段57によって、固液分離部3の出口3Bに向けて加圧されている。ここに示した加圧ばね62は、スクリュー21の軸41のまわりに巻回された圧縮コイルより成り、その一端が規制部材47用の滑り部材56に圧接し、他端がばね受け61に圧接している。加圧ばね62の一端を規制部材47に圧接させてもよい。ここでは、1つの加圧ばね62が設けられている。また本例の規制部材47にも加圧ばね62を覆うカバー54が固着されている。
【0061】
図17に示した付勢手段57のばね受け61は、スクリュー21の軸41に着脱可能に嵌合している複数のばね受け部材61Aにより構成され、これらのばね受け部材61Aは、スクリュー21の軸41の軸線方向に重ねて配列されている。図示した例では、各ばね受け部材61Aがリングにより構成され、その各ばね受け部材61Aの中心部に形成された孔16が、スクリュー21の軸41に対して、回転不能ではあるが、その軸41の軸線方向には摺動可能に当該軸41に嵌合している。例えば、軸41に、図7に示した溝58と同様にその軸線方向に長く延びた溝(図示せず)を形成し、その溝に、各ばね受け部材61の中心孔16の内周面に形成した突部(図示せず)を摺動可能に嵌合することにより、ばね受け部材61Aをスクリュー21の軸41に対して回転不能で、かつ軸線方向に摺動可能に嵌合することができる。
【0062】
また、スクリュー21の軸41には、固定リング114より成るストッパが嵌合し、この固定リング114は、その固定リングと軸41を貫通して延びるボルト115と、そのボルト115の雄ねじに螺着されて締め付けられたナット(図示せず)によって、軸41に着脱可能に固定されている。かかる固定リング114と加圧ばね62との間に、複数のばね受け部61Aが配置されている。これにより、複数のばね受け部材61Aは、加圧ばね62によって、固定リング114に対して加圧され、図17における一番右側に位置したばね受け部材61Aが固定リング114に圧接する。このようにして、ばね受け61はスクリュー21の軸41に対して固定され、この状態で、そのばね受け61と加圧ばね62との協働作用により、規制部材47を固液分離部3の出口3Bに向けて加圧する。かかる構成により、先に示した規制部材と同様に、固液分離部3の出口3Bから排出される汚泥の量を規制して、固液分離部3内の圧力を高め、固液分離部3内の汚泥に対する脱水効率を高めることができる。
【0063】
ここで、加圧ばね62のばね力を調整するには、ボルト24からナット25を外して、そのボルト24を軸受部材18と出口部材2から取り外し、その軸受部材18をスクリュー21の軸41から離脱すると共に、ボルト115を固定リング114から取り外して、固定リング114を軸41から抜き出す。これにより、一部のばね受け部材61Aを軸41から抜き出し、または他のばね受け部材を軸41に嵌合して、当該他のばね受け部材を追加することができる。このようにばね受け部材61Aの数を調整した後、再びボルト115とナットによって固定リング114を軸41に固定すると共に、軸受部材18を、スクリュー21の軸41に嵌合して、出口部材2の側壁20に固定する。
【0064】
上述のようにばね受け61の厚さHを調整することによって、加圧ばね62のばね力を所望する大きさに設定することができる。また、上述のように、軸受部材18を出口部材2から外すと共に、固定リング114を軸41から抜き出すことによって、ばね受け61の全体を固液分離部3の出口3Bから大きく離し、或いは全てのばね受け61を軸41から外すことによって、規制部材47を固液分離部3の側から大きく離間させ、隙間GAを大きく拡大することができる。この状態で、出口3Bから棒を突入して、固液分離部3内に詰まった汚泥を掻き出し、固液分離部3の内部を清掃することができる。このように、簡単にばね受け61の位置を調整することができるのである。図17に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図5に示した構成と変りはない。
【0065】
図8乃至図16は、規制部材47と、これに関連する構成のさらに他の例を示す図である。図8に示した規制部材47も、先に示した規制部材と同様に、固液分離部3の出口3Bに対向して位置していて、その出口3Bから排出される汚泥の量を規制することにより、固液分離部3内の圧力を高め、固液分離部3内の汚泥に対する脱水効率を高める用をなす。
【0066】
また、この規制部材47も、図8及び図11に示すように、固液分離部3の出口3Bに対向して位置した円板状に形成され、その規制部材47に筒状のカバー54が一体に固着されている。規制部材47の中心孔55には、図示していないボルトとナットとにより滑り部材56が嵌着固定され、この滑り部材56も、樹脂製のリングから構成され、かかる滑り部材56が、スクリュー21の軸41に、その軸線方向に摺動可能に嵌合している。これにより、規制部材47は、図8に矢印Eで示すように、固液分離部3の出口3Bに対して接近又は離隔する方向に移動可能に軸41に支持される。
【0067】
また、後述するように、この規制部材47も、スクリュー21と共に回転するように、そのスクリュー21の軸41に対して相対回転不能に組み付けられている。
【0068】
さらに、本例の固液分離装置にも、図8及び図11に示すように、規制部材47を固液分離部3の出口3Bに向けて加圧する付勢手段57が設けられており、この付勢手段57は、後述する態様でスクリュー21の軸41に対して固定されたばね受け61と、そのばね受け61と規制部材47との間に配置されて、規制部材47を固液分離部3の出口3Bに向けて加圧する加圧ばね62とを有している。ばね受け61は、その中心部に形成された孔16が、スクリュー21の軸41に対し、その軸線方向に移動可能に嵌合しているのであるが、通常は、後述するように軸41に対して、その軸線方向に固定されると共に、その軸41に対して回転不能となっている。また、ここでも、加圧ばね62は圧縮コイルばねにより構成され、複数の加圧ばね62が用いられているが、板ばねなどから成る加圧ばねを用いることもできる。かかる加圧ばね62は、規制部材47に固着された筒状のカバー54によって覆われ、加圧ばね62に汚泥が侵入して、そのばね62の機能が害される不具合が阻止される。
【0069】
また、図8及び図11に示すように、各加圧ばね62を貫通して延びる連結ボルト63が設けられ、その各連結ボルト63は、ばね受け61に形成された貫通孔64を摺動可能に貫通し、当該連結ボルト63の頭部63Aがばね受け61の面15に当接している。しかも、その各連結ボルト63の雄ねじは、規制部材47に形成されたねじ孔65に螺着され、その各雄ねじにナット66が螺着されて締め付けられている。このように、規制部材47は、連結手段の一例である連結ボルト63とナット66によって、スクリュー21の軸41に固定されたばね受け61に連結されている。これにより、固液分離装置の作動時にスクリュー21が回転したとき、規制部材47はスクリュー21と共に回転し、含水率の低下した汚泥を、固液分離部3の出口3Bを通して、固液分離部3外に効率よく排出させることができる。
【0070】
上述した構成によっても、以下に説明するように、図1、図6及び図17に示した規制部材と同様の作用を奏することができる。
【0071】
すなわち、固液分離装置の作動開始直後や、固液分離部3内に送られる汚泥の含水率が高くなって、固液分離部3内の圧力が低くなったときは、固液分離部3の出口3Bから、図8に矢印Dで示すように排出される汚泥によって規制部材47に加えられる圧力が低下するので、加圧ばね62により加圧された規制部材47は、固液分離部3の出口3Bに近づき、規制部材47と出口3Bとの間の隙間GA(図8)が狭くなる。このため、出口3Bから排出される汚泥の量が減少し、固液分離部3内の圧力が上昇する。これにより汚泥に対する脱水効率の低下が防止される。
【0072】
逆に、固液分離部3に送られる汚泥の含水率が低下して、固液分離部3内の圧力が高まると、出口3Bから排出される汚泥によって規制部材47に加えられる圧力が大きくなるので、規制部材47は加圧ばね62の加圧作用に抗して固液分離部3の出口3Bから離れる向きに移動し、規制部材47と出口3Bとの間の隙間GAが拡大する。このため、出口3Bから排出される汚泥の量が増大し、固液分離部3内の圧力が低下する。これにより、固液分離部3内に、含水率の低い固くなった汚泥が詰まってしまう不具合を防止することができる。
【0073】
規制部材47が出口3Bに対して接近又は離隔する方向に移動するとき、規制部材47に固定された各連結ボルト63は、規制部材47と共に移動して、ばね受け61に形成された貫通孔64中を摺動する。図8には、連結ボルト63が出口3Bに対して最も離隔したときの状態を、仮想線で示してある。
【0074】
上述のように、本例の固液分離装置によっても、規制部材47が、固液分離部3内の圧力に応じて、固液分離部3の出口3Bに対する適正な位置を占め、汚泥に対する高い脱水効率を保ちつつ、固液分離部3内に汚泥が固まって詰まる不具合を防止することが可能である。汚泥以外の処理対象物を脱液処理する場合も同様である。
【0075】
ところで、図8乃至図16に示した固液分離装置も、加圧ばね62のばね力を調整するばね力調整手段を具備している。以下、その構成を明らかにする。
【0076】
このばね力調整手段は、ばね受け61と規制部材47とに架け渡され、かつスクリュー21の軸41とほぼ平行に延びる上述の連結ボルト63を具備している。前述のように、この連結ボルト63は、規制部材47とばね受け61のうちの一方の部材(図示した例では規制部材47)に螺着され、その他方の部材(図示した例ではばね受け61)に対しては、摺動可能に嵌合している。しかも連結ボルト63の頭部63Aが、一方の部材(規制部材47)に対向した側と反対側の他方の部材(ばね受け61)の面15に当接している。連結ボルト63の頭部63Aを面15に当接させる代わりに、その連結ボルト63に螺着されたナット(図示せず)を面15に当接させてもよい。ここで、ナット66を緩めた上で、連結ボルト63を回転すると、連結ボルト63の雄ねじに螺着した一方の部材、すなわち規制部材47が連結ボルト63に対してその軸線方向に移動する。これにより、規制部材47とばね受け61との間の間隔が変えられ、加圧ばね62のばね力が調整される。このように、処理対象物の特性に合せ、ないしは脱水後の汚泥の含水率を変えるために、加圧ばね62のばね力を簡単に調整することができる。
【0077】
また、本例の固液分離装置も、ばね受け61をスクリュー21の軸41に対して固定すると共に、必要に応じて、ばね受け61がスクリュー21の軸41に対して、その軸線方向に移動することを許容するばね受け位置調整手段が設けられている。これによって、万一、固液分離部3内に処理対象物が固まって詰まったとき、その処理対象物を固液分離部3の出口3Bから容易に掻き出すことができる。以下に、このばね受け位置調整手段の具体的構成を明らかにする。
【0078】
図8乃至図11に示すように、ばね受け61に隣接して位置するリング状の第1の有歯部材87がスクリュー21の軸41に嵌合し、しかもその第1の有歯部材87に隣接して位置する第2の有歯部材88が軸41に嵌合している。第1の有歯部材87は、ばね受け61を挟んで、固液分離部3の出口3Bに対して対向配置され、その第1の有歯部材87を挟んで第2の有歯部材88が固液分離部3の出口3Bに対して対向配置されているのである。この第2の有歯部材88は、後述するようにスクリュー21の軸41に固定されている。図8乃至図10に示すように、スクリュー21の軸41は、中空なパイプ95と、そのパイプ95の端部に溶接された端部材96とから成り、第2の有歯部材88は軸41の端部材96に嵌合している。また、第1及び第2の有歯部材87,88には、その互いに対向する側にそれぞれ歯が形成されているが、これについては後述する。
【0079】
スクリュー21の軸41に固定された第2の有歯部材88は、図8乃至図10に示すように、出口部材2の側壁20に、ボルト24とナット25とによって固定された軸受部材18に回転自在に支持されている。このように、本例の固液分離装置においては、スクリュー21の軸41が、第2の有歯部材88を介して軸受部材18に回転自在に支持されているのである。
【0080】
第1の有歯部材87は、スクリュー21の軸41に対して回転可能で、かつそのスクリュー21の軸線方向に移動可能にスクリュー21の軸41に嵌合しているが、通常は、図8及び図9に示すように、第1の有歯部材87に螺着した複数の固定ボルト89を締め付けて、その固定ボルト89の先端面を軸41の表面に圧接させることによって、第1の有歯部材87が軸41に対して固定されている。固定ボルト89を緩めることにより、軸41に対する第1の有歯部材87の固定状態を解除することができる。このように、固定ボルト89は、第1の有歯部材87を、スクリュー21の軸41に対し固定し、又はその固定状態を解除する有歯部材用固定部材の一例を構成している。
【0081】
また、図8乃至図11に示すように、第2の有歯部材88の外周部には、固定リング90が嵌合し、図9及び図11に示すように、この固定リング90と第2の有歯部材88とスクリュー21の軸41には、その直径方向に固定リング用ボルト91が貫通し、その固定リング用ボルト91の雄ねじにナット92が螺着されてこれが締め付けられている。これにより、第2の有歯部材88はスクリュー21の軸41に固定され、固定リング90も第2の有歯部材88に対して固定される。固定リング90と、第2の有歯部材88は、該固定リング90と第2の有歯部材88とスクリュー21の軸41とを直径方向に貫通する固定リング用ボルト91と該固定リング用ボルト91に螺着されて締め付けられたナット92とによって、スクリュー21の軸41に対して固定されているのである。
【0082】
その際、上記固定リング用ボルト91とナット92だけで第2の有歯部材88をスクリュー21の軸41に固定したとすると、第2の有歯部材88が軸41に対してわずかにがたつくおそれがある。そこで、本例の固液分離装置においては、図8乃至図10に示すように、第2の有歯部材88には、軸41の軸線方向に延びるねじ孔93が形成され、このねじ孔93に有歯部材用ボルト94が螺着されて締め付けられ、その有歯部材用ボルト94の先端面が軸41の端面に圧接する。また、この有歯部材用ボルト94には、その緩み止め用のナット97が螺着されている。これにより、第2の有歯部材88が軸41に対してがたつく不具合を阻止できる。このように、第2の有歯部材88に対して、その軸線方向に螺着されて、先端面がスクリュー21の軸41の端面に圧接した有歯部材用ボルト94によって、スクリュー21の軸41に対する第2の有歯部材88のがたつきが阻止されているのである。
【0083】
また、図10に示すように、固定リング90とばね受け61は、連結部材の一例である複数のボルト98によって連結されている。これらのボルト98は、スクリュー21の軸41に対して平行に延びていると共に、その雄ねじが、固定リング90に形成されたねじ孔99の雌ねじに螺着され、さらに、これらのボルト98は、ばね受け61に形成された孔105に摺動可能に嵌合している。また、これらのボルト98の雄ねじには、そのボルト98の緩み止め用のナット100が螺着されて締め付けられている。このようにして、ボルト98より成る連結部材は、スクリュー21の回転時に、ばね受け61が固定リング90と共に回転するように、ばね受け61と固定リング90を強固に固定連結する。ばね受け61が軸41に対して回転することが阻止されるのである。しかも、固液分離装置の作動時に、固液分離部3内の汚泥による圧力が規制部材47と加圧ばね62を介してばね受け61に作用するので、ばね受け61が、軸41に固定された第1の有歯部材87の端面102に強く圧接する。このようにして、ばね受け61は、スクリュー21の軸41に対して固定される。
【0084】
ナット100を緩め、ボルト98を回転させた後、第1の有歯部材87の端面102とばね受け61との間に、例えばリング状に形成された図示していないスペーサを介設することによって、加圧ばね62のばね力を調整することも可能である。
【0085】
一方、図13及び図14は、第1及び第2の有歯部材87,88の配置状態を示す斜視図であり、図15及び図16は、これらの有歯部材87,88の配置状態を示す展開図である。これらの図においては、固定ボルト89、ボルト91、ナット92及びこれらのボルトが螺着され、ないしは挿通される孔についての図示は省略してある。
【0086】
図13乃至図16に示すように、第1の有歯部材87と第2の有歯部材88の互いに対向する側には、複数の歯103,104がそれぞれ形成されている。通常は、図13及び図15に示すように、図8に示した固定ボルト89によってスクリュー21の軸41に固定された第1の有歯部材87の歯103の先端と、同様に軸41に固定された第2の有歯部材88の歯104の先端とが互いに当接した状態で、第1及び第2の有歯部材87,88がスクリュー21の軸41に嵌合している。この状態で、図1を参照して先に説明したように、スクリュー21がモータにより回転駆動され、固液分離部3に汚泥が供給されて、その汚泥の固液分離動作が行われる。
【0087】
これに対し、万一、固液分離部3内に汚泥が固まって詰まってしまった場合には、図1に示したモータの作動を停止させた上で、図8に示した固定ボルト89を回してこれを緩め、スクリュー21の軸41に対する第1の有歯部材87の固定状態を解除する。第1の有歯部材87を軸41に対して、回転可能で、摺動可能な状態にするのである。
【0088】
次いで、図13及び図15に矢印Fで示すように、第1の有歯部材87を軸41のまわりに回転させる。このとき、図8に示した固液分離部3内の圧力は高まっているので、規制部材47は、その内圧によってばね受け61の側に押圧され、これに伴って、ばね受け61も、加圧ばね62を介して加圧され、第1の有歯部材87の側に押圧される。これにより第1の有歯部材87は、ばね受け61によって押圧されて、該第1の有歯部材87の歯103が、図14及び図16に示すように、第2の有歯部材88の歯104に噛み合い、第1の有歯部材87が、スクリュー21の軸41に沿って、固液分離部3の出口3Bから離れる向きに移動する。この移動に伴って、ばね受け61と規制部材47も出口3Bから離れる向きに移動するので、出口3Bと、規制部材47との間の隙間GAが大きく拡大する。これにより、出口3Bから図示していない棒などを突入させて、固液分離部3内に詰まった汚泥を掻き出すことができる。
【0089】
その掻き出し作業の終了後、再び第1の有歯部材87を矢印Fと反対の方向に回転させて、その第1の有歯部材87の歯103の先端と、第2の有歯部材88の歯104の先端を突き合わせた状態に当接させ、第1の有歯部材87を固定ボルト89によって軸41に対して固定して規制部材47とばね受け61を所定の位置に戻す。
【0090】
図8に示した固液分離装置においては、前述のように、連結ボルト63に螺着されたナット66を工具によって緩めてから、その連結ボルト63を回転することによって、規制部材47とばね受け61との間の間隔を変えて加圧ばね62のばね力を調整するのであるが、図8から判るように、規制部材47が固液分離部3の出口3Bに近接した状態では、工具をナット66に近づけることができない。そこで、上述のように、第1の有歯部材87の歯103と第2の有歯部材88の歯104を噛み合わせることにより、規制部材47を固液分離部3の出口3Bから大きく離した上で、ナット66のまわりに付着した汚泥を取り去ることによって、そのナット66に工具を係合させて、支障なくそのナット66を緩め、次いで連結ボルト63の頭部63Aに工具を係合して、その連結ボルト63を回転させることができる。
【0091】
上述のように、本例のばね受け位置調整手段は、スクリュー21の軸41に対して回転可能で、かつ該スクリュー21の軸線方向に移動可能に当該スクリュー21の軸41に嵌合したリング状の第1の有歯部材87と、その第1の有歯部材87をスクリュー21の軸41に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできる固定ボルト89より成る有歯部材用固定部材と、スクリュー21に対して固定された第2の有歯部材88とを有し、第1の有歯部材88は、ばね受け61を挟んで、固液分離部3の出口3Bに対して対向配置され、通常、有歯部材用固定部材によりスクリュー21の軸41に対して固定された第1の有歯部材87の歯103の先端と、第2の有歯部材88の歯104の先端とが互いに当接した状態で第1の有歯部材87がスクリュー21の軸41に嵌合しており、スクリュー21の軸41に対する第1の有歯部材87の固定状態を解除した後、該第1の有歯部材87を回転させ、当該第1の有歯部材87の歯103と第2の有歯部材88の歯104を噛み合わせることによって、該第1の有歯部材87が、ばね受け61と共に、スクリュー21の軸41に沿って固液分離部3の出口3Bから離隔する向きに移動することを許容するように構成されている。
【0092】
図8乃至図16に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図5に示した固液分離装置の構成と変りはない。
【0093】
図18及び図19は、規制部材47と、これに関連する構成のさらに別の例を示す断面図である。ここに示した規制部材47も、固液分離部3の出口3Bに対向して位置し、その出口3Bから排出される汚泥の量を規制して固液分離部3内の圧力を高め、固液分離部3内の汚泥に対する脱水効率を高める働きをなす。かかる規制部材47の基本構成は図8に示した規制部材47と変りはない。すなわち、図18に示した規制部材47の中心孔55に嵌着固定された滑り部材56がスクリュー21の軸41に、その軸線方向に摺動可能に嵌合し、これによって規制部材47が矢印Eで示すように固液分離部3の出口3Bに対して接近又は離隔する方向に移動可能に軸41に支持される。また、ここに示した固液分離装置においても、スクリュー21の軸41に対して固定されたばね受け61と、そのばね受け61と規制部材47との間に圧装された複数の加圧ばね62より成る付勢手段57が設けられていて、その加圧ばね62により規制部材47が固液分離部3の出口3Bに向けて付勢される。これにより、規制部材47が、先に説明した各形式の規制部材と同様に、固液分離部3内の圧力に応じて、固液分離部3の出口3Bに対する適正な位置を占め、汚泥に対する高い脱水効率を保ちつつ、固液分離部3内に汚泥が固まって詰まる不具合を防止することが可能である。図18に示した規制部材47にも、筒状のカバー54が一体に固定されている。
【0094】
また、図18に示した固液分離装置も、各加圧ばね62を貫通して延びる連結ボルト63を有し、その各連結ボルト63の一方の端部は、ばね受け61を貫通し、その頭部63Aがばね受け61の面15に当接し、当該連結ボルト63の他方の端部に形成された雄ねじが規制部材47に形成されたねじ孔65に螺着されている。これにより、固液分離装置の作動時にスクリュー21が回転したとき、規制部材47はスクリュー21と共に回転する。図18に示した固液分離装置のスクリュー21の軸41は、出口部材2に固定された軸受部材18に直に、回転自在に支持されている。
【0095】
加圧ばね62のばね力を調整するときは、図8に示した固液分離装置と全く同じく、ナット66を緩めて連結ボルト63を回転することによって、ばね受け61と規制部材47との間の間隔を変えて、各加圧ばね62のばね力を調整する。このように、図18に示した固液分離装置は、図8に示したばね力調整手段と同じく構成されたばね力調整手段を有している。
【0096】
また、図18に示した固液分離装置にも、ばね受け位置調整手段が設けられており、その構成と作用は以下のとおりである。
【0097】
図18に示すように、スクリュー21の軸41には、筒状に形成されたねじ部材110が回転可能で、かつその軸41の軸線方向に移動可能に嵌合している。このねじ部材110の外周面には雄ねじ111が形成されている。かかるねじ部材110の外周面に、ばね受け61の中心部に形成された孔16が嵌合すると共に、その孔16の内周面に形成された雌ねじ112が、ねじ部材110の雄ねじ111にねじ係合している。ねじ部材110をスクリュー21の軸41に対して、回転可能ではあるが、その軸41の軸線方向に移動不能に嵌合することもできる。
【0098】
また、ねじ部材110には、固定ボルト113が螺着され、通常は、その固定ボルト113を締め付けて、該ボルト113の先端面を軸41の表面に圧接させることによって、ねじ部材110を、軸41に対して回転しないように軸41に固定することができる。固定ボルト113を緩めることによって、軸41に対するねじ部材110の固定状態が解除され、該ねじ部材110が軸41に対して回転できる状態となる。このように、固定ボルト113は、ねじ部材110がスクリュー21の軸41に対して回転しないように、そのねじ部材110をスクリュー21の軸41に対して固定し、又はその固定状態を解除して、ねじ部材110がスクリュー21の軸41に対して回転することを許容するねじ部材用固定部材の一例を構成している。
【0099】
上述のように、通常、ねじ部材110は、軸41に対して固定されているので、そのねじ部材113の雄ねじ111にねじ係合したばね受け61も、軸41に対してその軸線方向に固定される。
【0100】
また、図18に示した固液分離装置においては、図17に示した固液分離装置と同様に、スクリュー21の軸41に固定リング114が嵌合し、その固定リング114は、当該固定リング114と軸41を貫通して延びるボルト115と、そのボルト115の雄ねじに螺着されて締め付けられた図示していないナットとによって、軸41に固定されている。かかる固定リング114と、ばね受け61は、図19に示すように、連結部材の一例であるボルト116によって連結されている。このボルト116はスクリュー21の軸41に対して平行に延び、その一端側に形成された雄ねじが固定リング114に形成されたねじ孔117に螺着され、当該ボルト116の他端側がばね受け61に形成された孔118に摺動可能に嵌合している。また、ボルト116の雄ねじには、そのボルト116の緩み止め用のナット119が螺着されて締め付けられている。かかるボルト116によって、スクリュー21の回転持に、ばね受け61が、軸41に対して固定された固定リング114と共に回転するように、固定リング114とばね受け61が連結される。ばね受け61が軸41に対して回転することが阻止されるのである。図18及び図19に示した状態では、軸41に対して固定されたねじ部材110は、同じく軸41に固定された固定リング114に当接している。また、図18に示すように、ねじ部材110の外周面には、その周方向に配列された複数の工具係合孔120が形成されている。
【0101】
ここで、万一、固液分離部3内に汚泥が固まって詰まってしまった場合には、図1に示したモータを停止させた上で、図18に示した固定ボルト113を緩め、スクリュー21の軸41に対するねじ部材110の固定状態を解除した後、そのねじ部材110に形成されたいずれかの工具係合孔120に図示していない工具を係合させて、ねじ部材130を回転させる。これにより、ばね受け61は、固液分離部3の出口3Bから離れる向きに移動し、規制部材47も同じ方向に軸41に沿って移動する。このようにしてばね受け61が、ねじ部材110の面121に当接する位置まで移動すれば、出口3Bと規制部材47との間の隙間GAが大きく拡大する。これにより、出口3Bから図示していない棒を突入させて、固液分離部3内に詰まった汚泥を掻き出して、固液分離部3内を清掃することができる。この清掃作業終了後、ねじ部材110を、上述したところと逆方向に回転することにより、規制部材47とねじ受け61は固液分離部3の出口3Bの側に移動し、出口3Bと規制部材47との間の隙間GAを適正な大きさにすることができる。次いで、固定ボルト113を回転し、ねじ部材110を軸41に対して固定する。
【0102】
上述のように、本例のばね受け位置調整手段は、スクリュー21の軸41に対して回転可能に嵌合し、かつ外周面に雄ねじ111が形成されたねじ部材110と、そのねじ部材110がスクリュー21の軸41に対して回転しないように、該ねじ部材110を固定し、又はその固定状態を解除して、ねじ部材110がスクリュー21の軸41に対して回転することを許容する固定ボルト113により構成されたねじ部材用固定部材とを有し、ねじ部材110に、ばね受け61に形成された孔16が嵌合すると共に、該孔16の内周面に形成された雌ねじ112がねじ部材110の雄ねじ111に係合し、スクリュー21の軸41に対するねじ部材110の固定状態を解除した後、該ねじ部材110を回転させることによって、ばね受け61をスクリュー21の軸41に対して、その軸線方向に移動させるように構成されている。かかるばね受け位置調整手段によって、ばね受け61をスクリュー21の軸41に対して固定することができると共に、必要に応じて、ばね受け61がスクリュー21の軸41に対してその軸線方向に移動することを許容することができる。
【0103】
また、図18に示した固液分離装置も、スクリュー21の軸41に固定された固定リング114と、スクリュー21の回転時に、ばね受け61が固定リング114と共に回転するように、該固定リング114とばね受け61を連結する連結部材とを有しているので、支障なく、ばね受け61をスクリュー21と一体に回転させることができる。
【0104】
また、図18に示した固液分離装置においても、前述のように、連結ボルト63に螺着されたナット66を工具によって緩めてから、その連結ボルト63を回転することによって、規制部材47とばね受け61との間の間隔を変えて加圧ばね62のばね力を調整できるが、図18から判るように、規制部材47が固液分離部3の出口3Bに近接した状態では、工具をナット66に近づけることができない。そこで、上述のように、ねじ部材110を回転させることによって、規制部材47を固液分離部3の出口3Bから大きく離した上で、ナット66のまわりに付着した汚泥を取り去り、そのナット66に工具を係合させれば、支障なくそのナット66を緩め、次いで連結ボルト63を回転させることができる。
【0105】
上述した点は、図8に示した固液分離装置においても同様であるが、図8に示した構成では、加圧ばね62のばね力を調整するために、規制部材47とばね受け61との間隔を変え、その規制部材47を、再び図8に示したように固液分離部3の出口3Bの近くにもたらすと、その出口3Bと規制部材47との間の隙間GAの大きさがばね力調整前の隙間GAの大きさに対して変化することになる。このため、ばね力調整後の隙間GAの大きさが大きくなりすぎたり、逆に狭くなりすぎて、汚泥に対する脱水効率が低下したり、逆に固液分離部3内に汚泥が固まって詰まってしまうおそれがある。
【0106】
これに対し、図18に示した固液分離装置においては、ねじ部材110を回転して、規制部材47を固液分離部3の出口3Bから大きく離してから、連結ボルト63を回転することにより、加圧ばね62のばね力を調整し、その後、ねじ部材110を逆方向に回転して、規制部材47を出口3Bの近くまで移動させるので、そのねじ部材110の回転量を調整することにより、規制部材47と出口3Bとの間の隙間GAの大きさを、ばね力調整前の適正な大きさに設定することができる。このように図18に示した固液分離装置によれば、ばね力を適正に調整できると共に、規制部材47と出口3Bの間の隙間を適正な大きさに設定することができる。このようにして、処理対象物の特性に合せて、最も効率のよい固液分離動作を行うことができる。図18及び図19に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図5に示したところと変りはない。
【0107】
以上、多数の固定板28と多数の可動板29とを有し、スクリュー21の回転により可動板29を作動させる固液分離部3を備えた固液分離装置を説明したが、本発明は、他の適宜な形式の固液分離部を備えた固液分離装置にも広く適用できるものである。例えば、可動板をスクリューではなく、独立した駆動装置により駆動する形式の固液分離装置、隣り合う固定板の間に複数の可動板を設けた固液分離装置、多数の可動板を有してはいるが、固定板は有していない固液分離装置、円筒体の周壁に濾液排出部としての多数の濾液排出孔が形成された固液分離装置などにも本発明を支障なく適用することができる。また、複数のスクリューを備えた固液分離装置に対しても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図である。
【図2】隣り合う固定板と、その両固定板の間に配置された可動板などを示す固液分離装置の分解斜視図である。
【図3】固液分離部の縦断面図である。
【図4】固定板と、可動板と、スペーサと、ステーボルトの配置状態を示す説明図である。
【図5】出力軸とスクリューの軸の連結に関する構成を示す斜視図である。
【図6】図1に示した規制部材と、これに関連する部材の拡大断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】他の固液分離装置の規制部材と、これに関連する部材を示す、図11のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図11のIX−IX線断面図である。
【図10】図11のX−X線断面図である。
【図11】図8のXI−XI線断面図である。
【図12】図8の矢印XII方向に見た図である。
【図13】第1及び第2の有歯部材の配置状態を示す斜視図である。
【図14】第1及び第2の有歯部材の歯が互いに噛み合ったときの状態を示す斜視図である。
【図15】第1及び第2の有歯部材が図13に示した状態にあるときの第1及び第2の有歯部材の展開図である。
【図16】第1及び第2の有歯部材が図14に示した状態にあるときの第1及び第2の有歯部材の展開図である。
【図17】他の固液分離装置の規制部材と、これに関連する部材を示す、図8と同様な断面図である。
【図18】さらに他の固液分離装置の規制部材と、これに関連する部材を示す、図8と同様な断面図である。
【図19】図18に示した固液分離装置の固定リングとばね受けを連結する連結ボルトを示す断面図である。
【符号の説明】
【0109】
3 固液分離部
3B 出口
15 面
16 孔
21 スクリュー
47 規制部材
54 カバー
57 付勢手段
61 ばね受け
61A ばね受け部材
62 加圧ばね
63 連結ボルト
63A 頭部
87 第1の有歯部材
88 第2の有歯部材
90 固定リング
91 固定リング用ボルト
92 ナット
94 有歯部材用ボルト
103,104 歯
110 ねじ部材
111 雄ねじ
112 雌ねじ
114 固定リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液分離部に配置されたスクリューを回転駆動して、該固液分離部に入り込んだ処理対象物を固液分離部の出口へ向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、前記固液分離部の濾液排出部を通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置であって、前記固液分離部の出口に対向して位置していて、該出口から排出される処理対象物の量を規制することにより、固液分離部内の圧力を高める規制部材を有している固液分離装置において、
前記規制部材を、前記固液分離部の出口に対して接近又は離隔する方向に移動可能に支持すると共に、該規制部材を前記固液分離部の出口に向けて加圧する付勢手段を設けたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記スクリューと共に回転するように該スクリューの軸に組み付けられている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記スクリューの軸に対して固定されたばね受けと、該ばね受けと前記規制部材との間に配置されて、該規制部材を前記固液分離部の出口に向けて加圧する加圧ばねとを具備する請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記規制部材には、前記加圧ばねを覆う筒状のカバーが固着されている請求項3に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記ばね受けは、前記スクリューの軸に着脱可能に嵌合していると共に、該軸の軸線方向に配列された複数のばね受け部材により構成されている請求項3又は4に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記加圧ばねのばね力を調整するばね力調整手段を具備している請求項3又は4に記載の固液分離装置。
【請求項7】
前記ばね力調整手段は、前記ばね受けと規制部材とに架け渡され、かつ前記スクリューの軸とほぼ平行に延びる連結ボルトを具備し、該連結ボルトは、前記規制部材とばね受けのうちの一方の部材に螺着され、その他方の部材に対しては、摺動可能に嵌合すると共に、該連結ボルトの頭部又は当該連結ボルトに螺着されたナットが、前記一方の部材に対向した側と反対側の他方の部材の面に当接していて、該連結ボルトを回転することにより、前記規制部材とばね受けの間の間隔を変えるように構成されている請求項6に記載の固液分離装置。
【請求項8】
前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して固定すると共に、必要に応じて、該ばね受けが前記スクリューの軸に対して、その軸線方向に移動することを許容するばね受け位置調整手段を具備する請求項3乃至7のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項9】
前記ばね受け位置調整手段は、前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできるばね受け固定部材より成る請求項8に記載の固液分離装置。
【請求項10】
前記ばね受け位置調整手段は、前記スクリューの軸に対して回転可能で、かつ該スクリューの軸線方向に移動可能に当該スクリューの軸に嵌合したリング状の第1の有歯部材と、該第1の有歯部材を前記スクリューの軸に対して固定し、又はその固定状態を解除することのできる有歯部材用固定部材と、前記スクリューに対して固定された第2の有歯部材とを有し、前記第1の有歯部材は、前記ばね受けを挟んで、前記固液分離部の出口に対して対向配置され、通常、前記有歯部材用固定部材により前記スクリューの軸に対して固定された前記第1の有歯部材の歯の先端と、前記第2の有歯部材の歯の先端とが互いに当接した状態で第1の有歯部材が前記スクリューの軸に嵌合しており、前記スクリューの軸に対する第1の有歯部材の固定状態を解除した後、該第1の有歯部材を回転させ、当該第1の有歯部材の歯と前記第2の有歯部材の歯を噛み合わせることによって、該第1の有歯部材が、前記ばね受けと共に、スクリューの軸に沿って前記固液分離部の出口から離隔する向きに移動することを許容するように構成されている請求項8に記載の固液分離装置。
【請求項11】
前記第2の有歯部材の外周部に嵌合し、かつ該第2の有歯部材に対して固定された固定リングと、前記スクリューの回転時に、前記ばね受けが前記固定リングと共に回転するように、ばね受けと固定リングを連結する連結部材とを有している請求項10に記載の固液分離装置。
【請求項12】
前記固定リングと、前記第2の有歯部材は、該固定リングと第2の有歯部材と前記スクリューの軸とを直径方向に貫通する固定リング用ボルトと該固定リング用ボルトに螺着されて締め付けられたナットとによってスクリューの軸に対して固定されていると共に、前記第2の有歯部材に対して、その軸線方向に螺着されて、先端面が前記スクリューの軸の端面に圧接した有歯部材用ボルトによって、スクリューの軸に対する第2の有歯部材のがたつきが阻止されている請求項11に記載の固液分離装置。
【請求項13】
前記ばね受け位置調整手段は、前記スクリューの軸に対して回転可能に嵌合し、かつ外周面に雄ねじが形成されたねじ部材と、該ねじ部材が前記スクリューの軸に対して回転しないように、該ねじ部材を固定し、又はその固定状態を解除して、ねじ部材がスクリューの軸に対して回転することを許容するねじ部材用固定部材とを有し、前記ねじ部材に、前記ばね受けに形成された孔が嵌合すると共に、該孔の内周面に形成された雌ねじが前記ねじ部材の雄ねじに係合し、前記スクリューの軸に対するねじ部材の固定状態を解除した後、該ねじ部材を回転させることによって、前記ばね受けを前記スクリューの軸に対して、その軸線方向に移動させるように構成されている請求項8に記載の固液分離装置。
【請求項14】
前記スクリューの軸に固定された固定リングと、前記スクリューの回転時に、前記ばね受けが前記固定リングと共に回転するように、該固定リングとばね受けを連結する連結部材とを有している請求項13に記載の固液分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−268517(P2007−268517A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322506(P2006−322506)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【特許番号】特許第3917646号(P3917646)
【特許公報発行日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】