説明

固液分離装置

【課題】凝集槽で形成されたフロックを分解させずに沈殿槽に導入させて沈殿槽で確実にフロックを沈殿させる固液分離装置を提供する。
【解決手段】汚濁物質を凝集処理する凝集槽15と、汚濁物質を沈殿させる沈殿槽30とを備え、沈殿槽は、進入する凝集処理水自体の推進力で沈殿槽で旋回流を生じさせる旋回流式沈殿槽であり、凝集槽及び沈殿0の周壁部3,31には、周壁面を共用する共用部16が形成され、かつ、共用部には、凝集槽と沈殿槽とを連通する連通口17が設けられ、凝集槽には、凝集処理水を連通口に導く凝集槽垂直バッフル35が設けられ、かつ、沈殿槽には、凝集処理水を連通口から沈殿槽に導く沈殿槽垂直バッフル36が設けられ、凝集槽垂直バッフルと沈殿槽垂直バッフルとは、連通口を間に挟むように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置に関する。さらに詳しくは、被処理水に凝集剤を添加して汚濁物質を凝集処理し、凝集処理された凝集処理水を固液分離して汚濁物質を沈殿させて汚濁物質を分離除去する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚濁水を旋回流式沈殿槽に導入して固液分離する固液分離装置として、特許文献1には、渦流式固液分離装置やバースクリーン等の第1の固液分離手段で夾雑物を除去し、次いで、凝集剤添加手段で凝集剤を添加して被処理水中の汚濁物質を凝集させ、その後、渦流式固液分離装置である第2の固液分離手段で被処理水を清澄分と固形分とに分離する固液分離装置が記載されている。この固液分離装置では、凝集剤添加手段で汚濁物質を凝集してフロックを形成し、このフロック含有水を渦流式固液分離装置に導入し、固液分離する。
【0003】
特許文献2には、円筒状の分離槽の内部に固体等を捕捉するための捕捉材を筒状に設け、被処理水を環状に流動させて固液分離するための装置に関する固液分離装置が記載されている。
【0004】
非特許文献1には、沈殿槽の内部で被処理水を旋回させて流動させる沈殿槽として、内部に円筒状のスクリーンを設け、被処理水に含まれる汚濁物質をスクリーンで捕捉するスワール式沈殿槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−209306号公報
【特許文献2】特表平10−504227号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「資源環境対策」Vol.41、No.6、pp.42(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された固液分離装置では、凝集処理した凝集処理水を配管等で旋回式沈殿槽に導入するため、配管等を通過する際に、形成されたフロックに抵抗や衝撃が加わり、フロックが微細な浮遊物質に分解される。微細に分解された浮遊物質は、処理水とともに旋回式沈殿槽から流出するため、処理水の水質が悪化する。
【0008】
特許文献2及び非特許文献1に示された固液分離装置では、汚濁物質を捕捉するためのスクリーンが目詰まりを起こし易く、安定して固液分離を行うことが困難である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、凝集槽で形成されたフロックを分解させることなく沈殿槽に導入し、沈殿槽でフロックを効率よく沈殿させることができる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固液分離装置は、被処理水に凝集剤を添加して汚濁物質を凝集処理する凝集槽と、該凝集槽で凝集処理された凝集処理水を固液分離して汚濁物質を沈殿させる円筒状の沈殿槽と、を備え、前記沈殿槽は、進入する凝集処理水自体の推進力で該沈殿槽の内部で旋回流を生じさせる旋回流式沈殿槽である固液分離装置において、前記凝集槽と前記沈殿槽とは、各々の中心間距離Lが下記で定義されるLmin及びLmaxに対しLmin≦L≦Lmaxの関係を満たすように互いに近接して設置されていることを特徴とするものである。
【0011】
Lmin:(R+r)×0.8、
Lmax:(R+r)×1.2と(R+r+d)のうちいずれか大きい方
ただし、
r:凝集槽半径、
R:沈殿槽半径、
d:凝集槽と沈殿槽が離間している際に凝集槽から沈殿槽に凝集処理水を連通する通液路の横幅
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固液分離装置では、凝集槽と沈殿槽とが近接している。そのため、凝集処理水に対して不必要な負荷や衝撃を与えることがないので、凝集槽で形成されたフロックを破壊させることなく沈殿槽に移動させることができる。このため、沈殿槽では、フロックが沈殿しやすい大きなフロックの状態で存在し、効率よく沈殿する。
【0013】
前記凝集槽に、該凝集槽の凝集処理水を該通液路に導く第1の縦バッフルが設けられ、前記沈殿槽に、凝集処理水を該通液路から該沈殿槽に導く第2の縦バッフルが設けられてもよい。この場合、凝集処理水は円滑に凝集槽から沈殿槽に進入し、凝集槽で形成されたフロックは過度の抵抗を受けることなく通液路を通過する。このため、凝集槽で形成されたフロックは殆ど破壊されることなくそのままの大きさを維持した状態で沈殿槽に移動し、沈殿槽で効率的に沈殿する。
【0014】
本発明では、前記凝集槽の周壁部及び前記沈殿槽の周壁部に、周壁面を共用する共用部が形成され、かつ、該共用部に、前記凝集槽と前記沈殿槽とを連通する前記通液路としての連通口を設けてもよい。このように構成すれば、凝集槽から沈殿槽に移送される際のフロックの破壊がさらに防止される。
【0015】
第1及び第2の縦バッフルを略平行とした場合、連通口に導かれる凝集処理水の進行方向と、連通口から沈殿槽に進入する凝集処理水の進行方向とを一致させることができ、凝集処理水に不必要な負荷や衝撃を与えることをより効果的に防止でき、フロックの破壊を防止することができる。
【0016】
第1及び第2のバッフルを、各槽の半径方向に対して30〜60゜の交差角度にて斜交させてもよく、このようにすれば、沈殿槽の内部で凝集処理水が効率よく旋回する好適な向きで凝集処理水を沈殿槽に進入させることができる。
【0017】
第1及び第2の縦バッフルの高さ寸法及び前記共用部から延びる長さ寸法を沈殿槽の直径の1/100〜1/10とした場合、凝集処理水を確実に凝集槽から連通口を通過させて沈殿槽に導くことができると共に、凝集処理水の進行を阻害することを防止することができる。また、形成されたフロックが第1及び第2の縦バッフルに衝突することも防止することができる。
【0018】
前記連通口の高さ寸法を第1及び第2の縦バッフルの高さ寸法の50〜100%に形成した場合、第1の縦バッフルは、連通口の高さ方向の全ての領域に凝集処理水を導くことができ、第2の縦バッフルは、連通口から凝集槽に進入した直後の凝集処理水を、進行方向を急激に変更することなく沈殿槽内に流入させるようになる。
【0019】
凝集槽には、その内部の凝集処理水を撹拌する撹拌装置を設けた場合、凝集槽に添加される凝集剤をむら無く被処理水に作用させることができ、効果的にフロックを形成できる。
【0020】
前記撹拌装置を、第1の縦バッフルが凝集処理水を前記連通口に導く方向と逆方向に凝集処理水に旋回力を付与するよう構成した場合、連通口に導かれる凝集処理水の流速及び流量を安定させることができ、偏流なく沈殿槽に凝集処理水を進入させることができる。そのため、沈殿槽の内部で安定した旋回流を形成させることができる。
【0021】
前記沈殿槽に、その内部に進入した凝集処理水の旋回を助勢する旋回補助装置を設け、その旋回部を第2の縦バッフルの下端よりも下側の位置に配置した構成とした場合、旋回補助装置を第2の縦バッフルに干渉させることなく沈殿槽の内部で凝集処理水を安定して旋回させることができる。
【0022】
前記旋回補助装置を、前記沈殿槽の軸心部を上下方向に延在する回転軸と、該回転軸の下部から放射方向に延在する複数の回転アームとで構成し、前記回転アームを第2の縦バッフルの下端よりも下側に位置する構成とした場合、複数の回転アームが旋回を補助するので、好適な旋回力を凝集処理水に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る固液分離装置の横断面図である。
【図2】図1のII−II断面を示す縦断面図である。
【図3】連通口、第1縦バッフル及び第2縦バッフルの高さ寸法の関係を示す説明図である。
【図4】連通口に対応する位置での沈殿槽の周壁部の接線に対する第1縦バッフル及び第2縦バッフルの傾き及び共用部から延びる長さ寸法を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る固液分離装置の横断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る固液分離装置の横断面図である。
【図7】図6のVII−VII断面を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る固液分離装置の横断面図である。
【図9】比較例1に係る固液分離装置の横断面図である。
【図10】比較例2に係る固液分離装置の横断面図である。
【図11】第5実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図12】第6実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図13】第7実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図14】第8実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図15】第9実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図16】第10実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図17】第11実施形態に係る固液分離装置の構成図である。
【図18】比較例3に係る固液分離装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1〜8の固液分離装置1A,1B,1C,1Dは、被処理水に凝集剤を添加して汚濁物質を凝集処理する凝集槽15,60と、この凝集槽15,60で凝集処理された凝集処理水を固液分離して汚濁物質を沈殿させる円筒状の沈殿槽30,80とを備えている。沈殿槽30,80は、凝集槽15,60から進入する凝集処理水自体の推進力で沈殿槽30,80の内部で旋回流を生じさせる旋回流式沈殿槽である。また、凝集槽15,60の周壁部3,61及び沈殿槽30,80の周壁部31,81には、周壁面を共用する共用部16,62が形成され、かつ、共用部16,62には、凝集槽15,60と沈殿槽30,80とを連通する連通口17,63が設けられている。
【0026】
凝集槽15,60の内部には、凝集槽15,60の凝集処理水を連通口17,63に導く第1の縦バッフル(以下、第1縦バッフルという。)35,70が設けられ、かつ、沈殿槽30,80の内部には、凝集処理水を連通口17,63から沈殿槽30,80に導く第2縦バッフル36,71が設けられている。そして、第1縦バッフル35,70と第2の縦バッフル(以下、第2縦バッフルという。)36,71とは、前記連通口17,63を間に挟むように配置されている。
【0027】
この固液分離装置1A,1B,1C,1Dを使用して被処理水を固液分離すれば、凝集槽15,60と沈殿槽30,80とが連通口17,63だけで連絡されているので、凝集槽15,60で凝集処理された凝集処理水に不必要な負荷を与えることなく沈殿槽30,80に移動させることができる。このため、凝集槽15,60から沈殿槽30,80に凝集処理水を移動させる際に、凝集槽15,60で形成されたフロックが分解されることを防止でき、フロックをそのままの状態で沈殿槽30,80に移動させることができる。その結果、汚濁物質を確実に除去した処理水を固液分離装置から送り出すという格別の効果を奏することができる。
【0028】
図1〜4の第1実施形態の固液分離装置1Aは、凝集槽15に撹拌装置20を設け、凝集槽15の内部の凝集処理水に対して、第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向と同方向に凝集処理水に旋回力を付与するものである。
【0029】
図5の第2実施形態の固液分離装置1Bは、第1縦バッフル35が凝集処理水を前記連通口17に導く方向と逆方向に凝集処理水に旋回力を付与するものである。
【0030】
図6,7の第3実施形態の固液分離装置1Cは、沈殿槽30に旋回補助装置40を設け、沈殿槽30の内部に進入した凝集処理水の旋回を補助するものである。
【0031】
図8の第4実施形態の固液分離装置1Dは、混和槽50と凝集槽60とを別個独立に設け、これら混和槽50と凝集槽60とを移送配管58で連絡したものである。
【0032】
[第1実施形態(図1〜4)]
固液分離装置1Aは、無機凝集剤及びpH調整剤が添加される混和槽4、高分子凝集剤が添加される凝集槽15及びフロックを沈殿させる沈殿槽30が一体的に形成されている。混和槽4と凝集槽15とを構成する処理槽2は円筒状又は略円筒状に形成され、その周壁部3には、周壁面が存在しない欠損部3aが設けられている。一方、沈殿槽30は通常の円筒状に形成されている。
【0033】
処理槽2に形成された欠損部3aは沈殿槽30の周壁部31に突き合わされ、この突き合わされた欠損部3aが沈殿槽30の周壁部31に接合されて一体に形成されている。このため、欠損部3aでは、処理槽2の周壁面3と沈殿槽30の周壁面31とを共用する共用部7,16が形成されている。
【0034】
この固液分離装置1Aは、被処理水を混和槽4に導入させ、無機凝集剤を添加して被処理水を凝集させ易くすると共に、pH調整剤を添加して被処理水を中性にする。次いで被処理水を凝集槽15に導入させ、被処理水に高分子凝集処理してフロックを形成させる。その後、凝集処理された凝集処理水を沈殿槽30に進入させる。沈殿槽30では、凝集処理水に含まれる汚濁物質を沈殿させて汚濁物質を除去する。そして、汚濁物質が除去された処理水を固液分離装置1Aの外に送り出している。
【0035】
<混和槽及び凝集槽>
混和槽4と凝集槽15とは一体に形成された筒状又は略筒状の処理槽2として構成されている。この処理槽2の内部には仕切板5が設けられており、仕切板5が処理槽2の内部を混和槽4と凝集槽15とに区分している。仕切板5は、共用部7,16と、処理槽2を構成する周壁部3の共用部7,16と対向する部位とを連絡するようにして設けられている。また、仕切板5には開口部6が形成されており、被処理水を混和槽4から凝集槽15に移動可能としている。
【0036】
混和槽4は、処理槽2の周壁部3、混和槽4の周壁部3と沈殿槽30の周壁部31とを共用する共用部7及び仕切板5により周囲が包囲されて構成されている。また、混和槽4の周壁部3には導入口8が設けられており、混和槽4の内部に被処理水を導入している。そして、混和槽4の底部9には導入された被処理水を撹拌する撹拌装置10が設けられている。
【0037】
この撹拌装置10は、混和槽4の内部に設けられた撹拌翼12と、混和槽4の底部9の外側に取り付けられ、撹拌翼12を回転駆動する駆動モータ11とから構成されている。この撹拌装置20の撹拌翼12の回転方向は、必要に応じ、時計方向又は反時計方向のいずれかに設定される。
【0038】
この混和槽4では、被処理水に無機凝集剤を添加して被処理水に含有される汚濁物質を凝集させ易くしている。添加する無機凝集剤は特に限定はなく、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩等が挙げられる。
【0039】
また、pH調整剤が添加されて被処理水が中性にされる。添加するpH調整剤も特に限定はなく、例えば、金属イオンから不溶性塩を生成させるための不溶性塩生成剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ剤を挙げることができる。また、リン酸イオンの不溶性塩生成剤としては、塩化カルシウム等のカルシウム塩や水酸化カルシウム等を挙げることができる。そして、フッ化物イオンの不溶性塩生成
剤としては、塩化カルシウム等のカルシウム塩や水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0040】
凝集槽15は、処理槽2の周壁部3、凝集槽15の周壁部3と沈殿槽30の周壁部31を共用する共用部16及び仕切板5により周囲が包囲されて構成されている。また、共用部16には、凝集槽15と沈殿槽30とを連通させている連通口17が形成されている。さらに、凝集槽15には、共用部16から凝集槽15の内部に向けて延びる第1縦バッフル35が連通口17の側部に設けられている。この連通口17及び第1縦バッフル35の詳細は後に説明する。
【0041】
この凝集槽15の底部18にも、内部の被処理水を撹拌する撹拌装置20が設けられている。撹拌装置20は、凝集槽15の内部に設けられた撹拌翼22と、凝集槽15の底部18の外側に取り付けられ、撹拌翼22を回転駆動する駆動モータ21とから構成されている。この撹拌装置20の撹拌翼22の回転方向は、必要に応じ、時計方向又は反時計方向のいずれかに設定される。この第1実施形態では、第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導き易い方向である反時計方向に回転駆動させている。
【0042】
この凝集槽15では、内部の凝集処理水に高分子凝集剤を添加する。高分子凝集剤は特に限定されず、例えば、アニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤を挙げることができる。
【0043】
<沈殿槽>
沈殿槽30は、内部に進入された凝縮処理水を沈殿槽30の内部で旋回させる旋回流式沈殿槽30である。沈殿槽30は円筒状に形成されており、その周壁部31には処理槽2の周壁部3を共用する共用部7,16が設けられている。共用部7,16のうち、凝集槽15の周壁部3と沈澱槽30の周壁部31との共用部16には、凝集槽15と沈殿槽30とを連通する連通口17が形成されている。さらに、沈殿槽30の内部には、共用部16から沈殿槽30の内部に向けて延びる第2縦バッフル36が連通口17の側部に設けられている。なお、この連通口17及び第2縦バッフル36の詳細も後に説明する。凝集処理水はこの連通口17から処理水の内部に進入し、第2縦バッフル36によって進入方向が所定の方向に導かれる。沈殿槽30に進入した凝集処理水は、凝集処理水自体の推進力で沈殿槽30の内部を周方向に旋回する。
【0044】
一方、沈殿槽30の上部には取水トラフ38が設けられている。この取水トラフ38は、外形がリング状に形成されており、その上面が開放された溝である。取水トラフ38には、凝集処理水中の汚濁物質を沈殿させた後の上澄み液が、開放された上面から溝に流れ込まれるように構成されている。そして、取水トラフ38には沈殿槽30の外部に向けて延びる排水管39が接続されており、凝集処理水から汚濁物質が除去された処理水を外部に送り出している。
【0045】
<連通口、第1縦バッフル及び第2縦バッフル>
連通口17は、凝集槽15の周壁部3と沈殿槽30の周壁部31とが共用される共用部16に形成されており、凝集槽15と沈殿槽30とを連通させている。連通口17は正方形又は縦長の長方形等の矩形状に形成されている。図3に示すように、連通口17の高さ方向の寸法Hは、第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36の高さ寸法H2の50%〜100%に形成することが好ましい。また、連通口17の面積は、この連通口17を通過させる凝集処理水の流量に応じ、凝集処理水が適切な流速で凝集槽15から沈殿槽30に進入するように形成する。凝集処理水の流速が0.01m/秒〜1m/秒となるように連通口17の面積を形成することが好ましい。
【0046】
この連通口17の一方の側部17aには、図4に示すように、共用部16から凝集槽15の内部に向けて延びる板状の第1縦バッフル35が設けられている。また、側部17aと対向する他方の側部17bには、共用部16から沈殿槽30の内部に向けて延びる板状の第2縦バッフル36が設けられている。第1縦バッフル35と第2縦バッフル36とは、連通口17を間に挟んで平行をなして配置されている。第1縦バッフル35は、凝集槽15の内部に位置する凝集処理水を連通口17に向けて導く。第2縦バッフル36は連通口17から沈殿槽30の内部に凝集処理水を導く。これらのバッフル35,36は、平板状であり、上下方向に延在している。
【0047】
これらの第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36に導かれて沈殿槽30に進入した凝集処理水は、その推進力で沈殿槽30の内部を沈殿槽30の周方向に旋回する。凝集処理水が沈殿槽30の内部で適切に旋回するためには、沈殿槽30に進入する方向が重要である。そのため、この固液分離装置1Aでは、第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36は、沈殿槽30の周壁部31に対応する円上の連通口17の位置での接線Tに対して、斜めに傾けられて配置されている。第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36の接線となす角度θは、10°以上、特に15°以上とりわけ30°以上であり、かつ60°以下、特に45°以下とすることが好ましい。従って、バッフル35と、半径方向の交差角度αは、80°以下、特に60°以下であり、かつ30°以上であることが好ましい。
【0048】
第1縦バッフル35は、共用部16との接続部である付け根部分と凝集槽15の内部に向けて延びている先端部分との間の長さ寸法M、及び上端と下端との間の高さ寸法Nがいずれも沈殿槽30の直径の100分の1〜10分の1の寸法に形成されている。同様に、第2縦バッフル36は、共用部16との接続部である付け根部分と沈殿槽30の内部に向けて延びている先端部分との間の長さ寸法M、及び上端と下端との間の高さ寸法Nがいずれも沈殿槽30の直径の100分の1〜10分の1の寸法に形成されている。
【0049】
<作用及び効果>
以上に説明した固液分離装置1Aは、以下のように作用する。
【0050】
まず、被処理水が、混和槽4に設けられた導入口8から混和槽4に導入される。混和槽4に被処理水が導入されると、無機凝集剤が添加され、被処理水に含まれる汚濁物質が凝集され易くなる。また、pH調整剤が添加されて被処理水が中性にされる。この際、混和槽4に設けられた撹拌装置10が無機凝集剤及びpH調整剤が添加された被処理水を撹拌し、混和槽4の内部でむら無く無機凝集剤及びpH調整剤を作用させる。
【0051】
混和槽4の内部には導入口8から順次に被処理水が導入されるため、混和槽4の内部に位置する被処理水には推進力が付与され、仕切板5に形成された開口部6から凝集槽15に順次に押し出されるようにして移動される。
【0052】
次いで、凝集槽15に移動した被処理水には、凝集槽15で高分子凝集剤が添加される。この凝集槽15にも撹拌装置20が設けられているため、高分子凝集剤が添加された被処理水は撹拌され、むら無く高分子凝集剤が作用する。高分子凝集剤により凝集処理された凝集処理水には、汚濁物質が凝集されたフロックが形成される。凝集処理後の凝集処理水は、その推進力で押し出されるようにして第1縦バッフル35で連通口17に導かれる。その後、凝集処理水は、第2縦バッフル36に導かれながら連通口17から沈殿槽30に進入する。
【0053】
この際、凝集処理水は共用部16に形成された連通口17を通過するだけなので、凝集処理水に不必要な負荷や衝撃を与えることがない。そのため、凝集槽15で形成されたフロックが分解されることなく沈殿槽30に移動される。また、第1縦バッフル35と第2縦バッフル36とは平行をなして配置されているので、凝集処理水は、凝集槽垂
直バッフル35及び第2縦バッフル36によって適切な方向に進入方向が導かれて沈殿槽30に進入する。その結果、沈殿槽30に進入した凝集処理水は、沈殿槽30の内部で円滑に旋回流を形成する。さらに、第1縦バッフル35と第2縦バッフル36とを平行に配置することで、フロックが第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36に衝突することを防止できる。
【0054】
連通口17の高さ方向の寸法Hを、図3に示すように、第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36の高さ寸法H2の50%〜100%に形成した場合、第1縦バッフル35は、連通口17の高さ方向の全ての領域に凝集処理水を導くことができ、第2縦バッフル36は、連通口17から凝集槽に進入した直後の凝集処理水が進行方向を急激に変更することを防止できる。
【0055】
また、図4に示すように、第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36を、連通口17の位置での共用部16の接線Tに対して10度〜60度に傾けて配置すれば、沈殿槽30の内部で凝集処理水が効率よく旋回する好適な向きで凝集処理水を沈殿槽30に進入させることができる。
【0056】
さらに、第1縦バッフル35及び沈殿槽津意直バッフルの長さ寸法M及び高さ寸法Nを沈殿槽30の直径の100分の1〜10分の1の寸法に形成すれば、凝集処理水を確実に凝集槽15から連通口17を通過させて沈殿槽30に導くことができると共に、凝集処理水の進行を阻害することを防止することができる。また、形成されたフロックを第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36に衝突させることも防止することができる。
【0057】
この沈殿槽30では、凝集処理水が沈殿槽30の内部を周方向に旋回しながら凝集処理水より比重の大きなフロックを沈殿槽30の底部に沈殿させる。そのため、沈殿槽30の内部では、汚濁物質の除去された処理水が上部を占めることになる。
【0058】
汚濁物質が除去された処理水は、沈殿槽30の上部に設けられた取水トラフ38に流れ込み、その後、取水トラフ38に接続された排水管39を通り外部に送り出される。
【0059】
[第2実施形態(図5)]
第2実施形態に係る固液分離装置1Bは、第1実施形態に係る固液分離装置1Aと同様に構成された装置を使用して被処理水から汚濁物質を除去する。第1実施形態と異なる点は、凝集槽15に設けられた撹拌装置20の作用である。そのため、固液分離装置1Bの説明のために参照する図5には、第1実施形態に係る固液分離装置1Aと同一の符号を付して概要のみを説明し、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
この固液分離装置1Bは、混和槽4、凝集槽15及び沈殿槽30が一体的に形成されて構成されている。混和槽4と凝集槽15とを構成する処理槽2は円筒状又は略円筒状に形成され、その周壁部3には、周壁面が存在しない欠損部3aが設けられている。一方、沈殿槽30は通常の円筒状に形成されている。
【0061】
処理槽2の欠損部3aは沈殿槽30の周壁部31に突き合わされ、この欠損部3aが沈殿槽30の周壁部31に接合されて一体に形成されている。欠損部3aでは、処理槽2の周壁面3と沈殿槽30の周壁面31とを共用する共用部7,16が形成されている。
【0062】
混和槽4と凝集槽15とは一体に形成された筒状又は略筒状の処理槽2として構成されている。この処理槽2はその内部に仕切板5が設けられており、この仕切板5が処理槽2の内部を混和槽4と凝集槽15とに区分している。仕切板5は、共用部7,16と、処理槽2を構成する周壁部の共用部16と対向する部位とを連絡するようにして設けられている。また、仕切板5には開口部6が形成されており、被処理水を混和槽4から凝集槽15に移動可能としている。
【0063】
また、凝集槽15及び沈殿槽30の双方の周壁部3,31をなす共用部16には、凝集槽15と沈殿槽30とを連通している連通口17が形成されている。この連通口17の一方の側部17aには、共用部16から凝集槽15の内部に向けて延びる板状の第1縦バッフル35が設けられている。また、側部17aと対向する他方の側部17bには共用部16から沈殿槽30の内部に向けて延びる板状の第2縦バッフル36が設けられている。第1縦バッフル35と第2縦バッフル36とは、連通口17を間に挟んで平行をなして配置されている。第1縦バッフル35は、凝集槽15の内部に位置する凝集処理水を連通口17に向けて導く一方で、第2縦バッフル36は連通口17から沈殿槽30の内部に凝集処理水を導いている。
【0064】
沈殿槽30は、内部に進入させた凝集処理水を周方向に旋回させつつフロックを沈殿させる旋回流式沈殿槽30である。沈殿槽30の上部には、リング状の取水トラフ38が設けられている。取水トラフ38には沈殿槽30の外部に向けて延びる排水管39が接続されており、凝集処理水から汚濁物質が除去された処理水を外部に送り出している。
【0065】
この固液分離装置1Aは、被処理水を混和槽4に導入させ、無機凝集剤を添加して被処理水を凝集させ易くすると共に、pH調整剤を添加して被処理水を中性にする。次いで被処理水を凝集槽15に導入させ、被処理水に高分子凝集処理してフロックを形成させる。その後、凝集処理された凝集処理した凝集処理水を沈殿槽30に進入させる。沈殿槽30では、凝集処理水に含まれる汚濁物質を沈殿させて汚濁物質を除去する。そして、汚濁物質が除去された処理水を固液分離装置1Aの外に送り出している。
【0066】
<撹拌装置>
この固液分離装置1Aの特徴は、凝集槽15に設けられた撹拌装置20が、第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向と逆方向に凝集処理水に旋回力を付与して凝集処理水を撹拌する点にある。
【0067】
凝集槽15の内部の凝集処理水は、図5に示した状態では、第1縦バッフル35によって凝集槽15の内部における右側から連通口17に導かれる。これに対し、撹拌装置20が備える回転羽根は、第1縦バッフル35が凝集処理水を導く方向とは逆方向である時計回りに回転される。このように、撹拌装置20の回転羽根を回転させることで、連通口17を通過する凝集処理水の流速を均一にすることができる。そのため、連通口17から沈殿槽30に進入した凝集処理水の流れを安定させ、沈殿槽30の内部で好適な旋回流を形成させることができる。
【0068】
撹拌装置20の回転翼22は、その先端の速度が1m/秒〜5m/秒となるように回転させることが好ましい。
【0069】
[第3実施形態(図6,7)]
図6及び図7に示す第3実施形態に係る固液分離装置1Cの基本的な構成は、第1実施形態に係る固液分離装置1A及び第2実施形態に係る固液分離装置1Bと同様である。そのため、図6及び図7には、第1実施形態及び第2実施形態に係る固液分離装置1A,1Bと同一の符号を付して概要のみを説明し、ここでは詳細な説明を省略する。
【0070】
この固液分離装置1Cも、混和槽4、凝集槽15及び沈殿槽30が一体的に形成されている。混和槽4と凝集槽15とを構成する処理槽2は、円筒状又は略円筒状に形成され、その周壁部3には、周壁面が存在しない欠損部3aが設けられている。一方、沈殿槽30は通常の円筒状に形成されている。
【0071】
処理槽2の欠損部3aは、沈殿槽30の周壁部31に突き合わされ、欠損部3aが沈殿槽30の周壁部31に接合されて一体に形成される。欠損部3aでは、処理槽2の周壁部3と沈殿槽30の周壁部31とを共用する共用部7,16が形成されている。
【0072】
混和槽4と凝集槽15とは一体に形成された筒状又は略筒状の処理槽2として構成されている。この処理槽2はその内部に仕切板5が設けられており、この仕切板5が処理槽2の内部を混和槽4と凝集槽15とに区分している。仕切板5は、共用部7,16と、処理槽2の周壁部3の共用部7,16と対向する部位とを連絡するようにして設けられている。また、仕切板5には開口部6が形成されており、被処理水を混和槽4から凝集槽15に移動可能としている。
【0073】
凝集槽15及び沈殿槽30の双方の周壁部3,31をなす共用部16には、凝集槽15と沈殿槽30とを連通する連通口17が形成されている。この連通口17の一方の側部17aには、共用部16から凝集槽15の内部に向けて延びる板状の第1縦バッフル35が設けられている。また、側部17aと対向する他方の側部17bには共用部16から沈殿槽30の内部に向けて延びる板状の第2縦バッフル36が設けられている。これらの第1縦バッフル35と第2縦バッフル36とは、連通口17を間に挟んで平行をなして配置されている。第1縦バッフル35は、凝集槽15の内部に位置する凝集処理水を連通口17に向けて導く一方で、第2縦バッフル36は連通口17から沈殿槽30の内部に凝集処理水を導いている。
【0074】
沈殿槽30は、内部に進入させた凝集処理水を周方向に旋回させつつフロックを沈殿させる旋回流式沈殿槽30である。沈殿槽30の上部には、リング状の取水トラフ38が設けられている。取水トラフ38には沈殿槽30の外部に向けて延びる排水管39が接続されており、凝集処理水から汚濁物質が除去された処理水を外部に送り出している。
【0075】
この固液分離装置1Cは、被処理水を混和槽4に導入させ、無機凝集剤を添加して被処理水を凝集させ易くしている。また、pH調整剤を添加して被処理水を中性にする。次いで被処理水を凝集槽15に導入させ、被処理水に高分子凝集処理してフロックを形成させる。その後、凝集処理された凝集処理した凝集処理水を沈殿槽30に進入させる。沈殿槽30では、凝集処理水に含まれる汚濁物質を沈殿させて汚濁物質を除去する。そして、汚濁物質が除去された処理水を固液分離装置1Cの外に送り出している。
【0076】
<旋回補助装置>
この第3実施形態に係る固液分離装置1Aの特徴は、沈殿槽30の内部に進入した凝集処理水の旋回を補助する旋回補助装置40が、第2縦バッフル36の下端よりも下側の位置に配置されている点にある。
【0077】
旋回補助装置40は、沈殿槽30の底面18の中心部に取りつけられた回転駆動部41と、回転駆動部41から上方に向けて延び、回転駆動部41によって回転される回転軸42と、回転軸42から沈殿槽30の周壁部31に向けて放射状に延びる複数の回転アーム43とから構成されている。回転駆動部41は、回転軸42を、凝集処理水自体の推進力で凝集処理水が旋回する方向と同方向に回転させる。また、全ての回転アーム43は、第2縦バッフル36の下端よりも下側に位置している。
【0078】
回転アーム43の形状は特に限定されず、丸棒、角棒又は板材を使用することができるが、その数は4本〜8本設けることが好ましい。各回転アーム43の長さは、沈殿槽30の半径の60%以上、100%未満の寸法に形成することが好ましい。これに対し、回転アーム43の縦断面積は、沈殿槽30の縦断面積に対して0.002%〜0.2%となるように構成することが好ましい。具体的には、縦断面積が5cm〜500cmに形成するとよい。
【0079】
この旋回補助装置40は、沈殿槽30に進入された凝集処理水自体の推進力で凝集処理水が旋回する方向と同方向に回転アーム43を回転させて、凝集処理水の旋回を補助する。凝集処理水が沈殿槽30の内部で好適に旋回するためには、回転アーム43の先端部が1m/秒〜5m/秒の速度で移動するように回転駆動させることが好ましい。
【0080】
なお、沈殿槽30の底部に沈殿した汚濁物質を集泥するには、集泥レーキが一般に使用されるが、この旋回補助装置40の回転アーム43を集泥レーキのレーキアームとして機能させることもできる。
【0081】
[第4実施形態(図8)]
この固液分離装置1Dは、無機凝集剤及びpH調整剤が添加される混和槽50と、高分子凝集剤が添加される凝集槽60と、汚濁物質を沈殿させる沈殿槽80とから構成されている。混和槽50は、凝集層及び沈殿槽80とは独立して設けられており、凝集槽60と移送配管58で接続されている。一方、凝集槽60と沈殿槽80とは一体的に構成されている。
【0082】
<混和槽>
混和槽50は、外形が円筒状に形成されている。混和槽50の周壁部52には、内部に被処理水を導入させる導入口51と、凝集槽60に被処理水を移送する移送配管58が設けられている。また、混和槽50には、内部の被処理水を撹拌する撹拌装置55が設けられている。
【0083】
<凝集槽及び沈殿槽>
凝集槽60は、外形が円筒状又は略円筒状に形成されており、周壁部61の一部には周壁面の存在したい欠損部61aが設けられている。一方、沈殿槽80は、その外形が円筒状に形成されている。凝集槽60は、欠損部61aが沈殿槽80の周壁部81に突き合わされており、付き合わされた欠損部61aが沈殿槽80の周壁部81に接合されて沈殿槽80と一体的に構成されている。欠損部61aでは、凝集槽60の周壁部61と沈殿槽80の周壁部81とが共用さる共用部62が形成されている。
【0084】
凝集槽60の周壁部61には移送配管58が接続されており、この移送配管58を介して混和槽50から被処理水が送り込まれる。また、凝集槽60には撹拌装置65設けられており、内部の被処理水を撹拌している。そして、共用部62には凝集槽60と沈殿槽80とを連通している連通口63が形成されている。この連通口63は、凝集槽60で凝集処理された凝集処理水を凝集槽60から沈殿槽80に進入させる。さらに、凝集槽60には、共用部62から凝集槽60の内部に向けて延びる第1縦バッフル70が連通口63の側部に設けられている。
【0085】
沈殿槽80は、内部に進入された凝集処理水を旋回させつつ汚濁物質を沈殿させる旋回流式沈殿槽80である。沈殿槽80は円筒状に形成されており、その周壁部81には凝集槽60の周壁部61を共用する共用部62が設けられている。この共用部62には凝集槽60と沈殿槽80とを連通する連通口63が形成されている。さらに、沈殿槽80の内部には、共用部62から沈殿槽80の内部に向けて延びる第2縦バッフル71が連通口63の側部に設けられている。凝集処理水は、この連通口63から沈殿槽80の内部に進入し、沈殿槽80垂直バッフルによりその進入方向が所定の方向に導かれる。沈殿槽80に進入した凝集処理水は、凝集処理水自体の推進力で沈殿槽80の内部を周方向に旋回する。
【0086】
一方、沈殿槽80の上部にはリング状の取水トラフ83が設けられている。取水トラフ83には、凝集処理水中の汚濁物質を沈殿させた後の上澄み液が、開放された上面から流れ込まれるように構成されている。そして、取水トラフ83には沈殿槽80の外部に向けて延びる排水管84が接続されており、凝集処理水から汚濁物質が除去された処理水を外部に送り出している。
【0087】
<連通口、第1縦バッフル及び第2縦バッフル>
連通口63は、凝集槽60の周壁部と沈殿槽80の周壁部とが共用される共用部62に形成されており、凝集槽60と沈殿槽80とを連通させている。連通口63は正方形又は縦長の長方形等の矩形状に形成されている。
【0088】
第1縦バッフル70は板状に形成されており、連通口63の一方の側部にて、共用部62から凝集槽60の内部に向けて延びるようにして設けられている。また、第2縦バッフル71も板状に形成されており、他方の側部にて、共用部62から沈殿槽80の内部に向けて延びるようにして設けられている。これら第1縦バッフル70と第2縦バッフル71とは、連通口63を間に挟んで平行をなして配置されている。第1縦バッフル70は、凝集槽60の内部に位置する凝集処理水を連通口63に向けて導く一方で、第2縦バッフル71は連通口63から沈殿槽80の内部に凝集処理水を導いている。
【0089】
なお、この連通口63、第1縦バッフル71及び第2縦バッフル71の構成の詳細は、第1〜第3実施形態の固液分離装置1A,1B,1Cの連通口17、第1縦バッフル35及び第2縦バッフル36の構成と同様である。
【0090】
固液分離装置1Dをこの第4実施形態のように、混和槽50を独立させて構成しても、凝集槽60及び沈殿槽80の双方の周壁部61,81を共用する共用部62を設け、共用部62に連通口63を形成しているので、凝集処理水が凝集槽60から沈殿槽80に移動する際に凝集槽60で形成されたフロックは分解されることがない。
【0091】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態に係る固液分離装置90Aの構成図であり、(a)図は平面図、(b)図は縦断面図、(c)は第1縦バッフル付近の斜視図、(d)図は第2縦バッフル付近の斜視図である。
【0092】
この固液分離装置90Aでは、被処理水(原水)は、原水配管91において無機凝集剤が添加された後、混和槽92に流入し、pH調整剤添加手段92bからpH調整剤が添加され、撹拌装置92aで撹拌される。この無機凝集剤、pH調整剤としては前述のもの等を用いることができる。なお、pH計92cで検出されるpHが所定範囲となるようにpH調整剤が添加される。
【0093】
混和槽92内の液は、移送配管93において高分子凝集剤(例えばアニオン性高分子凝集剤)が添加され、凝集槽94の好ましくは下部に移送される。
【0094】
この凝集槽94には撹拌装置94aが設けられ、液がゆっくりと撹拌され、フロックが成長する。
【0095】
凝集槽94の側周壁面には第1縦バッフル95が設けられている。この第1縦バッフル95は、水平断面が略々コ字形のものであり、凝集槽94の側周壁面に連なる1対のサイド板95a,95aと、該サイド板95a,95a同士を橋絡する正面板95bとを有している。この実施形態では、第1縦バッフル95の底面部に底板95cが設けられており、第1縦バッフル95と凝集槽94の側周壁面との間に上開で有底の略角筒形のスペースが形成されている。凝集槽94内の液は、第1縦バッフル95の上端を越流して該スペースに流入し、該スペース下部の該側周壁面に開口する通液路96(移送配管)を介して沈殿槽97に移送され、汚泥の沈降分離処理が行われる。処理水(上澄水)はこの沈殿槽97内の上部に設けられた処理水取出トラフ97aから取り出され、沈殿した汚泥は沈殿槽97の底部から取り出される。
【0096】
前記通液路96は、この沈殿槽97の側周壁面に開口している。この通液路96の開口部に対面するように第2縦バッフル98が設けられている。この第2縦バッフル98は、側周壁面に連なり、板面を上下方向とした正面板98aと、該正面板98aの下端と側周壁面との間に設けられた底板98bと、正面板98aの上端と側周壁面との間に設けられた天井板98cとを有している。正面板98aは、沈殿槽97の半径方向に対し斜交する方向に延在している。
【0097】
なお、正面板98aと沈殿槽97の半径方向との交差角度は好ましくは30゜〜60゜特に好ましくは40〜50゜である。
【0098】
底板98b及び天井板98cは略三角形状である。正面板98aの側周壁面と反対側の側端辺と側周壁面との間は開放部98dとなっている。通液路96からの液がこの開放部98dから沈殿槽97内に側周壁面に沿うように略々接線方向に流出し、緩やかに旋回し、この間に沈殿処理が行われる。
【0099】
この実施形態では、混和槽92、凝集槽94及び沈殿槽97はいずれも円筒容器状であり、相互間に適宜の間隔があいている。
【0100】
凝集槽94の半径をrとし、沈殿槽97の半径をRとし、両者間の通液路96の水平幅をdとした場合、凝集槽94と沈殿槽97との中心間距離Lは次式を満たす。
【0101】
Lmin≦L≦Lmax
ただし、Lmin=(R+r)×0.8である。Lmaxは、(R+r)×1.2と(R+r+d)との大きい方である。
【0102】
このように構成された固液分離装置においては、凝集槽94と沈殿槽97とが近接しており、凝集槽94から沈殿槽97に移送されている間にフロックが損壊することが防止される。また、この実施形態では、沈殿槽97の半径方向に斜交する正面板98aを有した第2縦バッフル98が沈殿槽97に設けられており、凝集処理液が沈殿槽97内の略接線方向にスムーズに流れるので、フロックの損壊が防止される。
【0103】
さらに、通液路96からの凝集処理水が短絡的にトラフ97aに流れることが防止され、沈殿分離が十分に行われる。
【0104】
[第6実施形態]
図11の第5実施形態では、第1縦バッフル95は、その上端が凝集槽94内の水面近くまで延在するものとなっているが、図12の第6実施形態の固液分離装置90Bでは、第1縦バッフル95Bが凝集槽94の水深の中間付近となっている。
【0105】
第6実施形態のその他の構成は第5実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0106】
この第6実施形態のように、凝集槽94の第1バッフル95Bの上端を凝集槽94の水深の中間付近とすることによって、凝集槽水面から空気を巻き込むことで凝集ペレットが破壊してしまうことを良好に防ぐことができ、SSの流出率を低く抑えることができる。バッフルの上端から水面までの距離は凝集槽水深の20%〜70%あるいは200mm〜2000mmより好ましくは500mm〜1000mmである。
【0107】
[第7実施形態]
図13に示す第7実施形態の固液分離装置90Cは、第6実施形態において凝集槽94と沈殿槽97との中心間距離Lを第6実施形態よりも小さくしたものである。その他の構成は第6実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0108】
このように凝集槽94と旋回流式沈殿槽97とをさらに近接して設置することにより、フロックの崩壊を防ぎ、SSの流出率を低くすることができる。
【0109】
[第8実施形態]
図14に示す第8実施形態の固液分離装置90Dでは、凝集槽94の第1縦バッフル95Dの構成が第5〜第7実施形態の第1縦バッフル95,95Bと異なっている。
【0110】
この第1縦バッフル95Dは、凝集槽95の側周壁面に連なる正面板95hと、底板95kとで構成されている。正面板95hは、平板状であり、一方の側辺95’が凝集槽95の側周壁面に連なり、他方の側辺95’’は該側周壁面から離隔している。正面板95hは凝集槽95の半径方向に対し交差角度α=30〜60゜(好ましくは40〜50゜)に斜交している。
【0111】
該正面板95hの一方の側辺95’から他方の側辺95’’に向う方向は、撹拌装置94aにより形成される凝集槽94内の液の旋回方向となっている。通液路96の開口は、該一方の側辺95’側に位置している。従って、凝集槽94内を旋回する水は、正面板95hの側辺95’’を回り込み、旋回方向と反対方向に流れて通液路96に流入する。
【0112】
正面板95hは、第2縦バッフル98の正面板98aと略平行である(αがほぼ等しい)ことが好ましい。なお、ほぼ等しいとは両正面板の角度αの差異が±5゜以内特に±3゜以内であることをいう。
【0113】
縦バッフルの正面板95h、98a同士を略平行とすることにより、フロックの崩壊を防ぎ、SSの流出を低く抑えることができる。このとき、凝集槽94の槽壁と沈殿槽97の槽壁の間隔はできるだけ小さいことが好ましく、該間隔は通液路96の開口の幅d以下とする。
【0114】
第1縦バッフル95Dの上端は凝集槽94の上下方向中間付近となっている。
【0115】
第8実施形態のその他の構成は第7実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0116】
[第9実施形態]
図15に示す第9実施形態に係る固液分離装置90Eは、第8実施形態の固液分離装置90Dにおいて、沈殿槽97に旋回補助装置99を設けたものである。この旋回補助装置99は、沈殿槽97の軸心部に上下方向に配置された回転軸99aと、該回転軸99aを回転させるモータ97bと、回転軸99aの下端から放射方向に延設された旋回部としてのアーム99cとを有している。このアーム99cは、周方向に間隔をおいて複数本設けられている。該アーム95cは、第2縦バッフル98よりも下位に配置されている。
【0117】
第9実施形態のその他の構成は第8実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0118】
この実施の形態では、通液路96よりも下側に、回転方向が凝集槽処理水の流入方向と同方向となるアーム99cを設け、沈殿槽全体の水を緩やかに回転させることにより、流入水の回転力を補助し、さらに良好な旋回流式沈殿槽処理性能を実現できる。アームの本数は、4本から8本が好ましく、長さは沈殿槽半径の60%から99%までが好ましい。アームの断面の形状は丸型または方形とすることができる。断面積は5cmから500cmまたは沈殿槽の面積の0.002%から0.2%が好ましい。アーム99cの高さは、沈殿槽底から縦バッフル98の間とする。アーム99cの先端部速度は、0.02m/secから5m/secが好ましい。
【0119】
[第10実施形態]
図16に示す第10実施形態の固液分離装置90Fにおいては、第9実施形態においてアーム99cの下側にレーキ板99dを設けたものである。レーキ板99dによって集泥された汚泥は沈殿槽97の底部のピット97pに導かれて排出される。
【0120】
[第11実施形態]
図17に示す第11実施形態の固液分離装置90Gは、図14の第8実施形態において第1縦バッフル95Gを水面近くまで立ち上がるようにしたものである。
【0121】
その他の構成は図14の第8実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0122】
上記固液分離装置90A〜90Gにおいて、凝集槽94のG値は10(1/s)〜100(1/s)が好ましい。凝集槽94の撹拌翼の先端部速度は、0.05m/secから2m/secが好ましい。各第1及び第2縦バッフルの大きさは、横幅及び高さ共に沈殿槽97の直径の1/100〜1/10が好ましい。凝集槽94と沈殿槽97の側周壁における通液路96の開口の形状は方形とすることが好ましい。通液路96の開口の高さは各縦バッフル高さの50%から100%が好ましい。
【0123】
通液路96の開口面積は、通水量に基づき、平均流速が0.01m/secから1m/secになるようにすることが好ましい。通液路96の開口部横幅は通液路96の開口面積を通液路開口高さで除して決定することができる。
【0124】
図18は後述の比較例に係る固液分離装置90Hを示すものであり、第1縦バッフル95Hを前記図11の第1縦バッフル95と同様形状のものとし、通液路96を凝集槽94の上部としている。沈殿槽97Hは横流式角型沈殿槽であり、縦板97bと底板97cで形成される流入部に対し通液路96からの液が流入し、該流入部の下部の開口97dから液が沈殿槽97H内に流入する。トラフ97fは該流入部と反対側の槽壁上部に設けられている。その他の構成は固液分離装置90Aと同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【実施例】
【0125】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0126】
[実施例1]
実施例1では、第1実施形態に係る固液分離装置1Aを使用して固液分離処理を行った。固液分離処理の対象となる被処理水は、カオリンが300mg/L含まれた工業用水を使用した。
【0127】
まず、混和槽4で、被処理水にポリ塩化アルミニウム(PAC)を無機凝集剤として添加して凝集処理し、水酸化ナトリウム25%溶液をpH調整剤として添加して中性にした。ポリ塩化アルミニウム(PAC)の添加量は、200mg/L(as 10%(PAC)溶液)とした。次いで、凝集槽15で、被処理水にPA301を高分子凝集剤として3mg/L添加して汚濁物質を凝集させた。汚濁物質を凝集させる際、凝集槽15では、撹拌装置20の撹拌翼22の回転方向を第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向と同方向に回転させて撹拌した。その後、凝集処理水を沈殿槽30に進入させ、フロックを沈殿槽で沈殿させて除去した。
【0128】
フロックが除去された後の処理水の浮遊物質の濃度(SS濃度)を測定したところ、浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は23mg/Lであった。
【0129】
[実施例2]
実施例2では、第2実施形態に係る固液分離装置1Bを使用して固液分離処理を行った。この実施例2では、凝集槽15に設けられている撹拌装置20の撹拌翼22を第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向とは逆方向に回転させて撹拌した。ただし、処理の対象となる被処理水並びに、添加した無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤は実施例1と同様である。このようにして固液分離を行ったところ、実施例2では浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は16mg/Lであった。
【0130】
撹拌翼22を第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向とは逆方向に回転させる固液分離装置1Bを使用した実施例2の測定結果と、撹拌翼22を第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向と同方向に回転させる固液分離装置1Aを使用した実施例1の測定結果とを比較すると、実施例2では測定結果は、16mg/Lであり、測定結果は23mg/Lであった実施例1よりも良好な測定結果を得た。このことから、第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向とは逆方向に凝集処理水に旋回力を付与するように凝集槽15で撹拌装置20の回転翼22を回転させると、より効果的に浮遊物質を除去することができる。
【0131】
[実施例3]
実施例3では、第3実施形態に係る固液分離装置1Cを使用して固液分離処理を行った。この実施例3では、実施例2の場合と同様に、凝集槽15に設けられている撹拌装置20の撹拌翼22を第1縦バッフル35が凝集処理水を連通口17に導く方向とは逆方向に回転させて撹拌した。また、沈殿槽30では、旋回補助装置40によって凝集処理水が旋回することを補助した。ただし、処理の対象となる被処理水並びに、添加した無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤は実施例1及び実施例2と同様である。このようにして固液分離を行ったところ、実施例3では浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は9mg/Lであった。
【0132】
沈殿槽30に設けられた旋回補助装置40で凝集処理水の旋回を補助する固液分離装置1Cを使用した実施例3の測定結果と、旋回補助装置40を設けずに、凝集処理水の推進力だけで旋回させる固液分離装置1Bを使用した実施例2の測定結果とを比較すると、実施例3の測定結果は9mg/Lであり、測定結果が16mg/Lであった実施例2の場合よりも良好な測定結果を得た。この結果から明らかなように、沈殿槽30に旋回補助装置40を設け、沈殿槽30での凝集処理水の旋回を補助すれば、さらに効果的に浮遊物質を除去することができる。
【0133】
[実施例4]
実施例4では、第4実施形態に係る固液分離装置を使用して固液分離処理1Dを行った。この実施例4で使用した固液分離装置1Dは、凝集槽60と沈殿槽80とが一体的に構成されている一方で、混和槽50は凝集槽60及び沈殿槽80とは独立して設けられている。混和槽50と凝集槽60とは、移送配管58で相互に連絡されている一方で、凝集槽60と沈殿槽80とは、両者の共用部62に設けられた連通口63で相互に連絡されている。また、凝集槽60では、第1縦バッフル70が凝集処理水を連通口63へ導く方向とは逆方向に撹拌装置65の撹拌翼67を回転させて撹拌している。ただし、処理の対象となる被処理水並びに、添加した無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤は実施例1と同様である。このようにして固液分離したところ、実施例4では浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は17mg/Lであった。
【0134】
混和槽50と凝集槽60とを別体とし、両者を移送配管58で連絡した固液分離装置1Dを使用した実施例4の測定結果と、混和槽4と凝集槽15とを一体的に形成し、混和槽4と凝集槽15を仕切板で区分けし、かつ、混和槽4と凝集槽15とを仕切板5の開口部6で相互に連絡して構成した固液分離装置1Bを使用した実施例2とを比較すると、実施例4の測定結果は17mg/Lであり、測定結果が16mg/Lである実施例2とほとんど差異がない。このことから明らかなように、混和槽50を凝集槽60と独立して設け、混和槽50と凝集槽60とを移送配管58で連絡させたとしても、凝集槽60と沈殿槽80とを連通口63で連通させる構成を採用すれば、凝集槽60で形成されたフロックが分解されることなく沈殿槽80に移動され、フロックを効果的に沈殿させることができる。
【0135】
[比較例1]
比較例1では、図9に示す固液分離装置100を使用して固液分離処理を行った。固液分離装置100は、混和槽101、凝集槽110及び沈殿槽120が相互に独立して設けられている。混和槽101と凝集槽110とは移送配管108で連絡されていると共に、凝集槽110と沈殿槽120とが移送配管118で連絡されている。
【0136】
混和槽101は、外形が円筒状に形成され、その周壁部103には導入口102と移送配管108が設けられている。また、混和槽101には撹拌装置105が設けられている。
【0137】
凝集槽110は、外形が円筒状に形成され、その周壁部113には、被処理水を混和槽101から凝集槽110に移送する移送配管108と、凝集処理水を凝集槽110から沈殿槽120に移送する移送配管118が取り付けられている。また、混和槽101には撹拌装置115が設けられている。撹拌装置115は、図9に示す状態で、撹拌翼116を反時計方向に回転させており、内部の凝集処理水が移送配管118に導かれる方向と同方向に旋回力を付与している。
【0138】
沈殿槽120は、内部に進入された凝集処理水を旋回させつつフロックを沈殿させる旋回流式沈殿槽である。沈殿槽120は、外形が円筒状に形成されており、その周壁部121には、凝集処理水を凝集槽110から沈殿槽120に移送する移送配管118が取り付けられている。この移送配管118は、移送配管118が取り付けられている部位での周壁部121の接線に対して斜めに傾けられて取り付けられており、沈殿槽120の内部に進入される凝集処理水を沈殿槽120の内部で旋回させている。
【0139】
そして、沈殿槽120の上部には、取水トラフ125と取水トラフ125に接続された排出管126が設けられており、沈殿槽120の上澄み液を取水トラフ125に流し込ませ、処理水を排出管126から外部に送り出している。
【0140】
この比較例1に係る固液分離装置100を使用して浮遊物質の濃度(SS濃度)した際の、処理の対象となる被処理水並びに、添加した無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤は、実施例1と同様である。
【0141】
この比較例1では、浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は51mg/Lであった。この測定結果から明らかなように、凝集槽110と沈殿槽120とを移送配管118で連絡して固液分離装置100を構成すると、本発明に係る固液分離装置1A,1B,1C,1Dのように凝集槽15,60の周壁部3,61と沈殿槽30,80の周壁部31,81とに共用部16,62を設け、共用部16,62に連通口17,63を形成した場合に比べ、汚濁物質の除去効率が低いことが分かる。
【0142】
[比較例2]
比較例2では、図10に示す固液分離装置130を使用して固液分離処理を行った。固液分離装置130は、その全体構成が、本発明の第1〜第3実施形態に係る固液分離装置1A,1B,1Cと同様に、無機凝集剤及びpH調整剤が添加される混和槽133、高分子凝集剤が添加される凝集槽150及びフロックを沈殿させる沈殿槽170が一体的に形成されている。混和槽133と凝集槽150とからなる処理槽131は、その周壁部132に形成された欠損部132aが沈殿槽170の周壁部171に突き合わされ、この突き合わされた欠損部132aが沈殿槽170の周壁部171に接合されて一体に形成されている。このため、欠損部132aでは、処理槽131の周壁部132と沈殿槽170の周壁部171とを共用する共用部137,138が形成されている。
【0143】
処理槽131にはその内部に仕切板135が設けられており、この仕切板135が処理槽131の内部を混和槽133と凝集槽150とに区分している。仕切板135には開口部136が形成されており、被処理水を混和槽133から凝集槽150に移動可能としている。また、混和槽133と凝集槽150とには被処理水を撹拌する撹拌装置140,155がそれぞれ設けられている。
【0144】
凝集槽150の周壁部131と沈殿槽170の周壁部171との共用部138には凝集槽150と沈殿槽170とを連通する連通口160が形成されている。凝集槽150で凝集処理された凝集処理水はこの連通口160を通過して沈殿槽170に進入する。なお、凝集槽150に設けられた撹拌装置155は、凝集処理水が、凝集処理水自体の推進力で連通口160に向かう方向とは逆向方向に回転翼156を回転させている。
【0145】
本発明に係る固液分離装置1A,1B,1C,1Dとの差異は、凝集槽150には第1縦バッフルは設けられておらず、沈殿槽170にのみ第2縦バッフル165が設けられている点である。
【0146】
この比較例2に係る固液分離装置130を使用して浮遊物質の濃度(SS濃度)した際の、処理の対象となる被処理水並びに、添加した無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤は、実施例1と同様である。
【0147】
この比較例2では、浮遊物質の濃度(SS濃度)の測定結果は38mg/Lであった。この測定結果から明らかなように、沈殿槽170にのみ垂直バッフルを設けても、凝集槽150に垂直バッフルを設けなければ、沈殿槽170で良好な旋回流を形成させることができず、汚濁物質の除去効率が低いことが分かる。
【0148】
以上の実施例1〜実施例4の測定結果、及び比較例1,2の測定結果を表1に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
表1に示すように、浮遊物質の濃度(SS濃度)が最も高い実施例1の場合でも、浮遊物質の濃度(SS濃度)は23mg/Lしかない。これに対し、比較例1の測定結果は、浮遊物質の濃度(SS濃度)が51mg/Lであった。この数値を比較すると、実施例1の測定結果は、比較例1の測定結果の約45%と、浮遊物質の濃度(SS濃度)は半分以下である。また、実施例1の測定結果と、比較例2の測定結果とを比較しても、実施例1の測定結果は、比較例2の測定結果の約60%の浮遊物質の濃度(SS濃度)に抑えられている。
【0151】
この測定結果から分かるように、凝集槽の周壁部と沈殿槽の周壁部とを共用する共用部を設け、この共用部に凝集槽と沈殿槽とを連通する連通口を形成し、かつ、凝集槽及び沈殿槽のいずれにも垂直バッフルを設け、凝集処理水を垂直バッフルで適切に導いて連通口から沈殿槽に進入させると、汚濁物質を効果的に除去することができる。
【0152】
[実施例5〜11、比較例3]
有機排水の生物処理水(SS濃度300mg/L)を原水とし、図11〜17(実施例5〜11)、図18(比較例3)の固液分離装置により固液分離処理を行った。混和槽に添加する無機凝集剤は、PAC(添加量200mg/Las10%溶液)とし、中和剤として水酸化ナトリウム25%溶液を用いて、中性にした。凝集槽では高分子凝集剤を3mg/L加えた。
【0153】
実施例5〜11及び比較例3の処理水SS濃度を表2に示す.
【0154】
【表2】

【0155】
表2の通り、本発明の装置によると、処理水に流出するSS濃度を低くすることができる。
【符号の説明】
【0156】
1A,1B,1C,1D,90A〜90H 固液分離装置
2 処理槽
3 周壁部
4,50,92 混和槽
5 仕切板
6 開口部
7 共用部
8,51 導入口
10,55 撹拌装置
12,57 撹拌翼
15,60,94 凝集槽
16,62 共用部
17,63 連通口
20,65 撹拌装置
22,67 撹拌翼
30,80,97 沈殿槽
31,81 周壁部
35,70,95,95B,95D,95G,95H 第1縦バッフル
36,71,98 第2縦バッフル
38,83,97a 取水トラフ
39,84 排水管
40,99 旋回補助装置
43 回転アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に凝集剤を添加して汚濁物質を凝集処理する凝集槽と、
該凝集槽で凝集処理された凝集処理水を固液分離して汚濁物質を沈殿させる円筒状の沈殿槽と、を備え、
前記沈殿槽は、進入する凝集処理水自体の推進力で該沈殿槽の内部で旋回流を生じさせる旋回流式沈殿槽である固液分離装置において、
前記凝集槽と前記沈殿槽とは、各々の中心間距離Lが下記で定義されるLmin及びLmaxに対しLmin≦L≦Lmaxの関係を満たすように互いに近接して設置されていることを特徴とする固液分離装置。
Lmin:(R+r)×0.8、
Lmax:(R+r)×1.2と(R+r+d)のうちいずれか大きい方
ただし、
r:凝集槽半径、
R:沈殿槽半径、
d:凝集槽と沈殿槽が離間している際に凝集槽から沈殿槽に凝集処理水を連通する通液路の横幅
【請求項2】
前記凝集処理水を前記沈殿槽に進入させるように通液路が設けられており、
前記凝集槽には、該凝集槽の凝集処理水を該通液路に導く第1の縦バッフルが設けられ、
前記沈殿槽には、凝集処理水を該通液路から該沈殿槽内に導く第2の縦バッフルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記第1の縦バッフルは前記凝集槽の半径方向に対して交差角度30〜60゜の斜交方向に延在しており、前記第2の縦バッフルは前記沈殿槽の半径方向に対して交差角度30〜60゜の斜交方向に延在していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
前記第1の縦バッフルと前記第2の縦バッフルとが略平行となっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記凝集槽の周壁部及び前記沈殿槽の周壁部には、周壁面を共用する共用部が形成され、該共用部には、前記通液路として前記凝集槽と前記沈殿槽とを連通する連通口が設けられており、
前記第1の縦バッフルは該連通口の一方の側縁部に連なっており、
前記第2の縦バッフルは該連通口の他方の側縁部に連なっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記第1の縦バッフルの高さ寸法及び前記共用部から延びる長さ寸法、並びに前記第2の縦バッフルの高さ寸法及び前記共用部から延びる長さ寸法は、前記沈殿槽の直径の1/100〜1/10であることを特徴とする請求項5に記載の固液分離装置。
【請求項7】
前記通液路の高さ寸法が前記第1及び第2の縦バッフルの高さ寸法の50〜100%であることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の固液分離装置。
【請求項8】
前記凝集槽に、その内部の凝集処理水を旋回させる撹拌装置が設けられており、
該旋回方向は、該第1の縦バッフルが凝集処理水を前記通液路に導く方向と逆方向であることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1項に記載の固液分離装置。
【請求項9】
前記沈殿槽には、その内部に進入した凝集処理水を旋回する方向に助勢するための旋回補助装置が設けられており、
該旋回補助装置は、該第2の縦バッフルの下端よりも下位に配置された旋回部を有することを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1項に記載の固液分離装置。
【請求項10】
前記旋回補助装置は、前記沈殿槽の軸心部を上下方向に延在する回転軸と、該回転軸の下部から放射方向に延在された、前記旋回部としての複数の回転アームとを有することを特徴とする請求項9に記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−46898(P2013−46898A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−80475(P2012−80475)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】