説明

固相抽出及びクロマトグラフィー用の新規なイオン交換多孔質樹脂

【課題】固相抽出及びクロマトグラフィー用の新規な多孔質樹脂、及び該樹脂による溶質を単離又は除去するために溶液を処理する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの疎水性成分、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのイオン交換官能基を含む多孔質樹脂。疎水性成分としてはジビニルベンゼン、親水性成分としてNービニルピロリドン、イオン交換官能基としてはスルホン基が好ましい。溶液を処理する方法は、溶質を有する溶液を該多孔質樹脂と、溶質が該多孔質樹脂に収着するような条件下で接触させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも1つの疎水性成分、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのイオン交換官能基を含有する固相抽出及びクロマトグラフィー用の新規な多孔質樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
固相抽出(SPE)は、例えば、分析試料の予備濃縮及び浄化のために、種々の化学物質の精製のために、また水溶液から毒性又は有用な物質を除去するために広く使用されるクロマトグラフ技術である。SPEは適当な樹脂を含有するカラム又はカートリッジを用いて一般に実施される。SPE法は疎水機構、イオン交換、キレート化機構、収着機構及びその他の機構により検体と相互作用して、流体に検体を結合させ、そして流体から検体を分離できる吸収剤を用いて発展してきた。SPEの用途に応じて、異なる吸収剤が求められるため、特殊な選択性を持つ新規な特性の吸収剤が必要である。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
本発明の目的は優れた湿潤性を示す固相抽出及びクロマトグラフィー用の多孔質樹脂として使用できる化合物を提供することである。
本発明の他の目的は特殊な選択性を有する多孔質樹脂化合物を提供することである。
本発明の他の目的は検体を選択的に捕獲でき、そして検体が保持されないで通過するのを妨害できる多孔質樹脂化合物を提供することである。
本発明の他の目的はイオン交換官能基、疎水性成分及び親水性極性成分を有する多孔質樹脂化合物を提供することである。
本発明の他の目的は溶液から溶質を単離又は除去するために本発明の新規な多孔質樹脂を利用することである。
本発明の更に他の目的は溶液中の溶質の量を分析により決定するために本発明の新規な多孔質樹脂を利用することである。
1つの態様において、本発明は化学式:
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物及びその塩を特徴とし、但し、A、B及びCの順番はランダム、ブロック、又はランダム及びブロックの組合せであり;
但し、
【0006】
【化2】

【0007】
但し、Aは
【0008】
【化3】

【0009】
から成る群から選ばれ、但し、Bは
【0010】
【化4】

【0011】
から成る群から選ばれ、但し、CはA又は修正されたAであり、ここで、修正されたAは
【0012】
【化5】

【0013】
から成る群から選ばれ、そしてここで、XはSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、及びCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)から成る群から選ばれる。
本発明の他の態様は少なくとも1つの疎水性単量体と少なくとも1つの親水性単量体を共重合させて共重合体を生成し、そして上記共重合体をスルホン化反応させて、少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含むスルホン化共重合体を生成することにより得られる多孔質樹脂である。
好ましい態様において、上記疎水性単量体はジビニルベンゼンであり、上記親水性単量体はN‐ビニルピロリドンであり、そして上記共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。好ましくは、上記多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
本発明の他の態様は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む固相抽出又はクロマトグラフィー用の多孔質樹脂である。
本発明の他の態様は溶質を単離又は除去するために溶液を処理する方法である。溶質を有する溶液はこの溶質が多孔質樹脂に収着するような条件下で多孔質樹脂に接触する。この多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。特定の態様では、溶質は多孔質樹脂から除去される。特定の態様では、イオン交換官能基はSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、又はCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)である。特定の態様では、親水性単量体は複素環式基、例えば、飽和、不飽和又は芳香族の複素環式基を含む。窒素‐含有複素環式基の例はピリジル基、例えば、2‐ビニルピリジン、3‐ビニルピリジン、又は4‐ビニルピリジンを含み、又はピロリドニル基、例えば、N‐ビニルピロリドンを含む。特定の態様では、疎水性単量体は芳香族炭素環式基、例えば、フェニル基又はフェニレン基、又は直鎖C2‐C18‐アルキル基又は枝分れC2‐C18‐アルキル基を含む。疎水性単量体は、例えば、スチレン又はジビニルベンゼンである。好ましい共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。好ましい多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
本発明の別の特徴は溶液中の溶質の量を分析により決定する方法である。溶質を有する溶液は溶質が多孔質樹脂に収着するような条件下で多孔質樹脂と接触する。この多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。収着した溶質を有する上記多孔質樹脂は上記多孔質樹脂から上記溶質を放出するような条件下で溶媒を用いて洗浄される。洗浄の後に、溶媒中に存在する上記放出した溶質の量は分析により決定される。特定の態様では、多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
本発明の別の特徴は開口容器内に詰められた多孔質樹脂を含む固相抽出カートリッジである。この多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。特定の態様では、多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
本発明の上記及び他の特徴、目的及び利点は図面と共に以下の明細書の記載により更によく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】模範的化合物のアセトアミノフェン、p‐トルアミド、カフェイン、プロカインアミド、ラニチジン、アンフェタミン、メスアンフェタミン及びm‐トルイジンの化学式を示す。
【図2A】図2Aは、ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のバッチ6Bに対するクロマトグラフ保持力に基づくイオン強度の効果を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のバッチJJL03−100に対するクロマトグラフ保持力に基づくイオン強度の効果を示すグラフである。
【図2C】図2Cは、スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のバッチJJL03−100に対するクロマトグラフ保持力に基づくイオン強度の効果を示すグラフである。
【図3】本発明の特定のスルホン化樹脂に対する模範的化合物のクロマトグラフ保持力に基づくスルホン化の効果を示すグラフである。
【図4】SymmetryShield(登録商標)RP8カラムを用いた模範的化合物の分離を示すクロマトグラムである。
【図5A】図5Aは、ラニチジンが内標準である固相抽出のために、スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のバッチJJL03‐124及びバッチJJL03‐100を用いた豚の血漿からのメタノール/水酸化アンモニウム抽出物のクロマトグラムである。
【図5B】図5Bは、ラニチジンが内標準である固相抽出のために、スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のバッチJJL03‐124及びバッチJJL03‐100を用いた豚の血漿からのメタノール/水酸化アンモニウム抽出物のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な記述
本発明は化学式:
【0016】
【化6】

【0017】
の化合物及びその塩を提供し、但し、A、B及びCの順番はランダム、ブロック、又はランダム及びブロックの組合せであり;
但し、
【0018】
【化7】

【0019】
但し、Aは
【0020】
【化8】

【0021】
から成る群から選ばれ、但し、Bは
【0022】
【化9】

【0023】
から成る群から選ばれ、但し、CはA又は修正されたAであり、ここで、修正されたAは
【0024】
【化10】

【0025】
から成る群から選ばれ、そしてここで、XはSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、及びCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)から成る群から選ばれる。
【0026】
好ましい化合物はXがSO3H、CH2PO32、CH2CO2H、又はこれらの組合せであるものである。最も好ましい化合物はXがSO3Hであるものである。
好ましくは、Xは化合物のグラム当り約0.01〜約5.0ミリ当量の濃度で存在し、より好ましくは約0.6〜約3.2ミリ当量の濃度で存在し、更により好ましくは約0.8〜約2.1ミリ当量の濃度で存在し、そして最も好ましくは約1.0ミリ当量の濃度で存在する。
【0027】
ブロックの順番はそれぞれの構成単位が一定のパターン又は一連の繰り返しで結合する順番を意味する。ランダムの順番はそれぞれの構成単位が無作為に結合する順番を意味する。
【0028】
本発明の化合物は少なくとも1つの疎水性単量体、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、又はエチルビニルベンゼン、及び少なくとも1つの親水性単量体、例えば、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルピリジン、メタクリレート、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド又はメタクリルアミドを官能化する、即ち、化学的に変えることにより調製できる。好ましくは、疎水性単量体はジビニルベンゼンである。好ましくは、親水性単量体はN‐ビニルピロリドンである。上記共重合体は当業者に公知の標準的な合成法により、例えば、実施例1に記述するように調製できる。
【0029】
このような共重合体、例えば、ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)はイオン交換官能基、X基の添加によって官能化が可能であり、これらの基は陽イオン、例えば、SO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、又はCH2PO32、又は陰イオン、例えば、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32、CH2+[(CH2y=CH33-、SO2NHR又はCH2NHR又は中間体、例えば、CH2Clである。これらの添加は、例えば、Lieto等のChemtechの46〜53頁(1983);Mitchell等のTetrahedronLettersの3795〜3798頁(1976);及びクロマトグラフ科学双書,47巻、585〜720頁(1990)におけるK.Ungerの“クロマトグラフ技術における充填物及び固定相”に記載されているようにして達成可能である。例えば、ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)のスルホン化を記述する実施例2を参照。
【0030】
本発明の新規な化合物は、例えば、固相抽出及びクロマトグラフィー用の多孔質樹脂として使用できる。固相抽出は、例えば、収着、イオン交換、キレート化、サイズ排除(分子濾過)、親和力、又はイオン対の機構により、ガス及び液体のような流体相から分子化学種の部類を単離するために固相を採用する方法を意味する。
【0031】
また本発明は少なくとも1つの疎水性単量体及び少なくとも1つの親水性単量体を共重合して共重合体を形成し、この共重合体をスルホン化反応させて少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの疎水性成分、及び少なくとも1つの親水性成分を含むスルホン化共重合体を形成することにより得られる多孔質樹脂を含む。
【0032】
多孔質樹脂は溶液が拡散できる通路を通って浸透する架橋重合体粒子の部類のメンバーを意味する。気孔は密に詰め込まれた重合体鎖の間の領域を意味する。単量体は重合前の1又はそれ以上の重合可能な官能基を含む分子、又は重合体の繰返し単位を意味する。共重合体は2又はそれ以上の異なる単量体を含む重合体を意味する。イオン交換官能基は対イオンが部分的に遊離し、そして同じ符号の別のイオンと容易に交換できる基を意味する。親水性は水を引付け、吸着し、又は吸収するための親和力を持つことを意味する。疎水性は水をはじき、又は水を吸着又は吸収する親和力を持たないことを意味する。
【0033】
好ましい態様では、疎水性単量体はジビニルベンゼンである。好ましい態様では、親水性単量体はN‐ビニルピロリドンである。好ましい態様では、共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。好ましい態様において、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。好ましくは、スルホン酸塩基は多孔質樹脂のグラム当り、約0.01〜約5.0、より好ましくは約0.6〜約3.2、更により好ましくは約0.8〜約2.1、そして最も好ましくは約1.0ミリ当量の濃度で存在する。
【0034】
また本発明は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含有する固相抽出又はクロマトグラフィー用の多孔質樹脂を含む。
【0035】
イオン交換官能基は多孔質樹脂を塩基性で陽イオンの溶質と相互反応させることができる。親水性極性成分は溶質に対する極性相互作用及び水素結合能力を多孔質樹脂に持たせることができる。疎水性成分は疎水性相互作用を通じて無極性溶質に対する親和力を多孔質樹脂に持たせることができる。本発明の多孔質樹脂は溶質に対して種々の相互作用力の組み合わせを有するため、これらは、例えば、固相抽出、イオン交換、液体クロマトグラフィーの用途において極めて有用な樹脂である。例えば、これらの新規な多孔質樹脂は流体から溶質を回収し、固定し、及び/又は除去できる。
【0036】
また本発明は溶液を処理して溶質を単離又は除去する方法を含む。溶質を有する溶液は多孔質樹脂に溶質が収着するような条件下で多孔質樹脂に接触する。この多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。ある態様では、溶質は多孔質樹脂から除去される。
収着は吸収又は吸着により取り上げて保持できることを意味する。
【0037】
ある態様において、イオン交換官能基はSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、又はCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)である。好ましくは、イオン交換官能基はSO3Hである。好ましくは、イオン交換官能基は多孔質樹脂のグラム当り、約0.01〜約5.0、より好ましくは約0.6〜約3.2、更により好ましくは約0.8〜約2.1、そして最も好ましくは約1.0ミリ当量の濃度で存在する。
【0038】
ある態様において、親水性極性成分はアミド基、エステル基、カーボネート基、カルバメート基、尿素基、ヒドロキシ基、又はピリジル基である。
ある態様において、多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基を有する共重合体を含み、そしてこの共重合体は少なくとも1つの親水性単量体及び少なくとも1つの疎水性単量体を含む。好ましくは、親水性単量体は複素環式基、例えば、飽和、不飽和又は芳香族の複素環式基を含む。例としては、窒素‐含有複素環式基、例えば、ピリジル基、例えば、2‐ビニルピリジン、3‐ビニルピリジン、又は4‐ビニルピリジンを含み、又はピロリドニル基、例えば、N‐ビニルピロリドンを含む。好ましくは、疎水性単量体は芳香族炭素環式基、例えば、フェニル基又はフェニレン基、又は直鎖C2‐C18‐アルキル基又は枝分れC2‐C18‐アルキル基を含む。疎水性単量体は、例えば、スチレン又はジビニルベンゼンである。好ましい共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
【0039】
好ましい多孔質樹脂は上述した化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
好ましい態様では、多孔質樹脂は少なくとも約12モルパーセントのN‐ビニルピロリドンを含む。好ましい態様では、多孔質樹脂は約30モルパーセントより少ないN‐ビニルピロリドンを含む。モルパーセントは多孔質樹脂の共重合体を構成する種々の(2又はそれ以上の)単量体の合計モルに対する対象の単量体の、パーセントで表示された、モル分率を意味する。好ましくは、多孔質樹脂は固相抽出能力を有する。
【0040】
多孔質樹脂は、例えば、ビーズ、ペレット、又は用途に応じたその他の形状であってもよい。多孔質樹脂粒子は、例えば、球形、規則的な形状、又は不規則な形状を持つことができる。好ましくは、上記樹脂粒子は約3〜約500μm、より好ましくは約20〜約200μmの範囲の直径を有するビーズである。好ましくは、多孔質樹脂はグラム当り約50〜約850平方メートルの範囲の比表面積と約0.5nm〜約100nmの範囲の直径を有する。ある態様では、多孔質樹脂はマトリックス中に入れられる。
ある態様において、2種類以上の官能化多孔質樹脂が本発明のカラム、カートリッジ及び類似物中で使用できる。
【0041】
溶質は、例えば、疎水性、親水性、又はイオンの相互作用又はこれらの相互作用の2又は3種の組合せを有する分子であってもよい。好ましくは、溶質は多孔質樹脂に吸着されるのに適した極性を有する有機化合物である。このような溶質は、例えば、薬剤、農薬、除草剤、毒物及び環境汚染物質、例えば、地下燃料又は水銀、鉛又はカドミウムのような重金属を含む金属‐有機化合物のような他の工業物質の燃焼により生じる物質を含む。また溶質は上記物質の代謝物質又は分解生成物であってもよい。また溶質は、例えば、蛋白質、ペプチド、ホルモン、ポリヌクレオチド、ビタミン、補因子、代謝物質、脂質のような生体分子、及び炭水化物を含む。
【0042】
溶液は、例えば、水、水溶液、水又は水溶液の混合物、及び水‐混和性極性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はアセトニトリルを含むことができる。好ましい態様では、溶液は酸性、塩基性又は中性の水溶液、即ち、約1%〜約99%水容量の溶液である。溶質を含む溶液は任意に更に1又はそれ以上の別の溶質を含むことができる。ある態様において、溶液は種々の溶質の錯体を含む水溶液である。この形式の溶液は、例えば、血液、血漿、尿、髄液、滑液、及び肝臓組織、筋肉組織、脳組織又は心臓組織のような組織の抽出物を含むその他の生物的液体を含む。これらの抽出物は、例えば、水性又は有機の抽出物であってもよく、これらは乾燥後に水又は水/有機混合物中に戻される。また溶液は、例えば、地下水、地上水、飲料水、又は土壌サンプルのような環境サンプルの水性又は有機抽出物を含む。溶液の他の例は果物や野菜のジュース又はミルクのような食品、又は果物、野菜、穀物又は肉のような食物の水性又は水性/有機抽出物を含む。その他の溶液は、例えば、植物及びスープからの天然抽出物を含む。
【0043】
溶液はバッチ又はクロマトグラフ法のように、溶質を多孔質樹脂に収着させる方法で多孔質樹脂に接触できる。例えば、溶液は多孔質重合体カラム、ディスク又はプラグに通されてもよいし、又は溶液はバッチ‐撹拌反応器内で多孔質樹脂と撹拌されてもよい。また溶液はマイクロタイター(microtiter)板から成る多孔質樹脂‐含有ウエル(well)に加えられてもよい。多孔質樹脂は、例えば、ビーズ又はペレットの形状を成すこともできる。溶液は溶質が多孔質樹脂上に実質的に収着するのに十分な時間で多孔質樹脂に接触する。この時間は溶質が多孔質樹脂表面と溶液との間で平衡になるのに必要な時間である。多孔質樹脂上への溶質の収着又は分割は部分的又は完全である。
【0044】
ある態様では、多孔質樹脂は開口容器内の粒子として充填されて固相抽出カートリッジを形成する。
また本発明は溶液中の溶質の量を分析により決定する方法を含む。溶質を有する溶液は多孔質樹脂への溶質の収着を許容するような条件下で多孔質樹脂と接触する。上記多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。上記収着した溶質を有する多孔質樹脂は多孔質樹脂から溶質を放出するような条件下で溶媒により洗浄される。上記洗浄の後に、溶媒中に存在する上記放出した溶質の量が分析により決定される。
【0045】
ある態様において、多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
多孔質樹脂に接触する溶液は目的の溶質を希釈された形で、例えば、正確な定量には低すぎる濃度で含むことができる。溶質を多孔質樹脂上に収着し、次いで、例えば、実質的に小容量の極性の小さい溶媒を用いて脱着することにより、目的の溶質を含有し、最初の溶液よりも溶質の濃度が実質的に高い溶液を調製できる。この方法は溶媒交換が可能、即ち、溶媒は第1溶媒から除去され、そして第2溶媒に再溶解できる。
【0046】
溶質を多孔質樹脂から脱着するのに適する溶媒は、極性水‐混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール、又はアセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、又は水及びこれらの溶媒の混合物である。また脱着溶媒は、例えば、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、又は酢酸エチルのような非極性又は適度に極性の水‐非混和性溶媒である。これらの溶媒の混合物も好適である。好ましい溶媒又は溶媒混合物はそれぞれ別個のケースに応じて決定されるべきである。好ましい溶媒はクロマトグラフ法において、日常的に行われているため、不当な実験を行うことなく、当業者が決定できる(例えば、McDonald及びBouvier,eds.,の固相抽出の適用ガイド及び参考文献の“サンプル調製法の進歩のための資源”6巻、Waters,Milford,MA(1995);及びSnyder及びKirkland、最新の液体クロマトグラフィー入門、ニューヨーク:J.Wiley及びSons(1974)を参照)。
【0047】
溶媒中に存在する脱着された溶媒の量は当業者に知られている種々の技術、例えば、高性能液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/質量分析、又はイムノアッセイにより分析的に決定できる。
【0048】
また本発明は開口容器内に詰められた多孔質樹脂を含む固相抽出カートリッジを含む。この多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分及び少なくとも1つの疎水性成分を含む。特定の態様では、多孔質樹脂は上述の化学式Iの化合物及びその塩である。好ましくは、多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である。
【0049】
容器は、例えば、両端が開放した円筒形の容器又はカラムであって、溶液は一端を通って容器内に入り、容器内の多孔質樹脂と接触し、そして他端を通って容器から出る。多孔質樹脂は約3μm〜約500μm、好ましくは約20μm〜約200μmの直径を有するビーズのような小粒子として容器内に充填できる。ある態様では、多孔質樹脂粒子は多孔質膜の網にかけられた状態で容器内に充填できる。
【0050】
容器は固相抽出プロセスの時間枠内において、工程で使用される溶液と溶媒に適合できる材料から形成できる。このような材料はガラス又は高密度ポリエチレン及びポリプロピレンのような種々のプラスチックを含む。ある態様では、容器はその大部分が円筒形であり、そして一端に狭い先端を有する。このような容器の一例はシリンジバレルである。容器内の多孔質樹脂の量は容器の容積により制限され、そして約0.001グラム〜約50キログラム、好ましくは約0.025グラム〜約1グラムの範囲内にある。所望の抽出に適する多孔質樹脂の量は収着される溶質の量、多孔質樹脂の利用される表面積、及び溶質と多孔質樹脂との間の相互作用の強度に依存する。この量は当業者により容易に決定できる。カートリッジは単一使用のカートリッジであって、単一サンプルの処理に使用された後に、廃棄されてもよく、又は複数サンプルの処理に使用できる。
以下の非限定的実施例は更に本発明を説明する。
【0051】
実施例
実施例1ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合の調製
この実施例はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合の調製を説明する。
【0052】
5.0グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(MethocelE15、ダウケミカル会社、Midland、ミシガン州)を1000ミリリットルの水に溶かした溶液を3000ミリリットルのフラスコに加えた。これに175グラムのジビニルベンゼン(DVBHP-80、ダウケミカル)、102グラムのN‐ビニル‐2‐ピロリドン(InternationalSpecialtyProducts、Wayne、ニュージャージー州)、及び1.85グラムのアゾビスイソブチロニトリル(Vazo64、デュポンケミカル会社、Wilmington、デラウエア州)を242グラムのトルエンに溶かした溶液を加えた。
上記80%純度のジビニルベンゼンはスチレン又はエチルビニルベンゼン、又は低純度のジビニルベンゼンのような他の疎水性単量体と置換されてもよいが、しかし80%純度のジビニルベンゼンが好ましい。上記N‐ビニルピロリドンはN‐ビニル‐ピリジン、メタクリレート、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド、又はメタクリルアミドのような他の親水性単量体と置換されてもよいが、しかしN‐ビニルピロリドンが好ましい。
【0053】
得られた2相の混合物を室温で30分間撹拌して、所望のミクロン寸法の油滴を形成した。次いで得られた懸濁液を適度に撹拌しながら、70℃まで加熱し、そしてこの温度で20時間維持した。この懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、そしてメタノールで洗浄した。この濾過ケークを真空中で80℃で16時間乾燥した。生成物重合体の組成を元素分析により決定した。元素分析:N:2.24%;モルパーセントN‐ビニルピロリドン:20%。
【0054】
またこの方法によりジビニルベンゼンとN‐ビニルピロリドンの出発比率を変化させることにより、約13、14、16、及び22モルパーセントのN‐ビニルピロリドンを含む一連のポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体を調製した。
【0055】
実施例2ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合のスルホン化
この実施例はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)多孔質樹脂の調製を説明する。実施例1から得た共重合体、好ましくはポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)は硫酸(95‐98%、A.C.S.試薬、Aldrich、25,810‐5、Milwaukee、ウイスコンシン州)で誘導できる。最も好ましくは、OASIS(登録商標)HLB(Waters株式会社、Milford、マサチューセッツ州から入手)が使用される。
【0056】
プロセス設計及び品質管理のための指針として役立ち得る。
式1:共重合体(meqHSO3/gスルホン化共重合体)のイオン交換能力=0.53+0.018×[温度]+0.00029×[時間]
ここで、[温度]=反応温度(℃)
[時間]=反応時間(分)
【0057】
【表1】

【0058】
実施例3スルホン化樹脂のクロマトグラフ保持挙動に関するスルホン化の効果
この実施例はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)樹脂のスルホン化の程度が樹脂の疎水性及びイオン交換性の挙動並びに樹脂の保持特性にどのように影響を与えるかを示す。
【0059】
実施例2から得られた樹脂のJJL03‐90,100,114,119,123,124,及び143をそれぞれ4.6×30mmの高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラム中にスラリー状で充填した。疎水性の保持及びイオン交換の挙動に関するスルホン化の効果を種々の中性及び塩基性の検体の保持力を検査することにより決定した。選ばれたモデル化合物はアセトアミノフェン、p‐トルアミド、カフェイン、プロカインアミド、ラニチジン(ranitidine)、アンフェタミン、メスアンフェタミン(methanphetamine)及びm‐トルイジンであった。これらのモデル化合物を図1に示す。移動相を40:60メタノール‐20mM(NH4)H2PO4から構成し、NH4Clをイオン強度調節剤として用いてpHを3.0とした。流量は1.0mL/分、温度は30℃であった。注入容量は5マイクロリットルであった。各化合物は別々に注入された。検出を254nmの紫外線により実施した。
【0060】
疎水性又はイオン性の機構による相互作用が存在するか否かを決定するために、保持挙動をイオン強度の関数として決定した。図2A〜2Cは非スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)(Oasis(登録商標)HLB、バッチ6B)、及び比較的多くスルホン化されたポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)(バッチJJL03‐100)(2.52meq/g)について、保持に基づくイオン強度の効果を示す。非スルホン化樹脂から判るように、イオン強度の増大につれて、全ての成分について保持力の増大は極めて僅かであった。この結果は疎水性の相互作用の機構と一致する。また非スルホン化樹脂について、保持係数が1未満の場合、使用される条件下において塩基性化合物の疎水性保持力はほんの僅かであった。スルホン化樹脂の場合、中性化合物の保持力はほとんど変化しないことが判明した。しかしながら、塩基性化合物の保持力はイオン強度によって劇的に影響された。保持力はイオン強度の増大と共に著しく増大し、これはイオン交換機構を示唆する。
【0061】
図3は保持力に基づく樹脂のスルホン化の効果を示す。1MのNH4Clが保持時間を最小にするために使用された。このグラフは中性化合物の保持力がスルホン化の増大につれて減少したことを示す。塩基性化合物については、保持力はスルホン化が1meq/gにまで増大するにつれて増大した。しかしながら、より高いスルホン化のレベルにおいては、保持力は再び減少した。
【0062】
実施例4スルホン化樹脂の固相抽出の実施に基づくスルホン化の効果
この実施例はスルホン化樹脂の固相抽出(SPE)の実施に基づくこの樹脂のスルホン化の効果を説明する。
【0063】
SPEの実施を評価するために、HPLC法を採用して、いくつかのモデル化合物の回収を検証した。SymmetryShield(登録商標)RP8カラム、3.5μm、4.6×75mm(Waters株式会社、Milford、マサチューセッツ州)をSentry(登録商標)カラム(Waters株式会社、Milford、マサチューセッツ州)と共にインラインで使用した。流量は2.0ミリリットル/分、温度は36℃であった。移動相を95:520mMK2HPO4、pH7.0‐メタノールから構成した。検出を254nmの紫外線により実施した。注入容量は10μLであった。最適な分離を示すクロマトグラムを図4に示す。
【0064】
SPEの評価のために、次の樹脂、即ち、Oasis(登録商標)HLBバッチ#6B、JJL03-143、JJL03-124及びJJL03-100を使用した。96‐ウエルプレート形態で吸収剤をそれぞれ30ミリグラム使用してSPEを実施した。工程は以下の通りである。上記カートリッジ/ウェルを1ミリリットルのメタノール(−1mL/分)で状態調整し、次いで1ミリリットルの水で平衡にした。スパイクされた(spiked)リン酸塩で緩衝された生理食塩水又はスパイクされた豚の血漿から成る1ミリリットルのサンプルを導入した。サンプルはアセトアミノフェン、トルアミド、カフェイン及びプロカインアミドを10μg/mLまでスパイクされ、そしてアンフェタミン、メスアンフェタミン及びトルイジンを20μg/mLまでスパイクされた。導入されたサンプルを0.1MのHClを1ミリリットル含む水で洗浄し、次いで1ミリリットルのメタノールで洗浄し、そして2%のNH4OHを含有する1ミリリットルのメタノールの1/2で溶離した。平衡の後に、全ての画分を集めた。10μg/mLのラニチジン(ranitidine)の50μLをそれぞれのサンプルに加えた。このサンプルを加熱ブロック内のN2流の下で蒸発させて乾燥した。次いでサンプルを1ミリリットルの20mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)で復元した。
【0065】
最初のSPE性能実験をリン酸塩‐緩衝生理食塩水中で実施した。完全な物質収支がスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)、バッチ#JJL03-143を使用してSPE画分に対して実行された。表2は回収と物質収支の結果を示す。
【0066】
【表2】

【0067】
アンフェタミン、メスアンフェタミン及びトルイジンは全てのケースにおいて、十分に回収できなかった。これはこれらの化合物が半‐揮発性であるため、蒸発を通じて失われることに起因する。サンプルが乾燥していない実験例では、完全な回収が得られた。生理食塩水を回収して調べた結果、漏出はいかなる場合でも添加又はHCl洗浄工程において生じなかった。全ての化合物がOasis(登録商標)HLBに対するメタノール洗浄において溶離したが、中性化合物のみが全てのスルホン化樹脂に対して溶離した。塩基性化合物はメタノール/NH4OH溶液によって完全に溶離した。スルホン化樹脂に関しては、ほとんどのカフェインが最初のメタノール洗浄で溶離した。また各画分の回収はスルホン化の程度に依存し、スルホン化が最小の樹脂は最初のメタノール洗浄で回収が最大になることが判明した。この異常な結果はカフェインが13.9のpKbを有する弱塩基であることに起因する。別の観察によれば、アセトアミノフェンはスルホン化樹脂に関してメタノール/塩基の溶離において僅かな量の漏出(−1%)を示した。
類似の結果が血漿を用いた場合に得られた。表3は3種類の異なる吸収剤のOasis(登録商標)HLBバッチ6B、JJL03-100及びJJL03-124について得られた回収の結果を示す。
【0068】
【表3−1】

【0069】
【表3−2】

【0070】
中性物質はメタノール洗浄において溶離し、塩基はメタノール/水酸化アンモニウム工程において溶離した。スルホン化樹脂からのスパイクされない血漿抽出物のHPLC分析を図5A及び5Bに示し、ここでラニチジンが内標準である。
抽出物中の蛋白質をクマシーブルー(Coomassieblue)によって計量した。血漿の2つの異なるロットを試験した。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
塩基化されたメタノール中の蛋白質はOasis(登録商標)HLB、JJL03-100及びJJL03-124について類似点があることが判明した。比較として、(メタノール溶離工程からの)Oasis(登録商標)HLBカートリッジについて、これらの蛋白質量は推奨されるSPEプロトコール(“WaterOasis(登録商標)HLB抽出カートリッジ及びプレート”1997Waters株式会社、6/97WB025‐US)を用いて典型的に観察されるものより約5倍も少なかった。
高いスルホン化ローディング(loadings)において、樹脂を通過する血漿ロード(load)は懸濁した。関連の観察の結果、流量は高いスルホン化ローディングにおいて減少することが判明した。これらの観察結果は樹脂の酸性度に起因する。大部分のスルホン化樹脂は最も高い酸性度を有する。従って、血漿を樹脂に通すことは酸性の沈殿物を生成させること相当し、これはサンプルをより懸濁させ、そしてフリット及び樹脂含有充填ベッドを塞ぐことになる。
実施例5ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)多孔質樹脂のクロロメチル化
ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)、OASIS(登録商標)HLB、(Waters株式会社、Milford、マサチューセッツ州)を塩酸(12モル、36.5〜38%、A.C.S.試薬、J.T.Baker、9535‐03、Phillipsburgh、ニュージャージー州)及びパラホルムアルデヒド(95%、AldrichChemical、15,812‐7、Milwaukee、ウイスコンシン州)で誘導した。3リットルの三つ口の丸底フラスコに温度計、撹拌機、凝縮器、及び反応器温度制御装置を取り付けた。塩酸を上記フラスコ中に導入した(塩酸の量に関しては表5を参照)。次いで撹拌及び温度制御を行った。撹拌機はフラスコ頂部の中心開口内に適当なテフロン(登録商標)ベアリングを介してすりガラスシャフトにより固定された。テフロン(登録商標)パドルは単一羽根であった。撹拌速度を適切な混合を得るために調節した。ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)、OASIS(登録商標)HLBを添加した(OASIS(登録商標)HLBの量に関しては表5を参照)。次いでパラホルムアルデヒドを添加した(パラホルムアルデヒドの量に関しては表5を参照)。反応混合物を特定時間、一定の温度で撹拌した(反応時間及び温度に関しては表5を参照)。反応混合物を冷却し、そして酸溶液を濾過した。クロロメチル化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体を収集し、そしてスラリーのpHが5.0以上になるまで水で洗浄した。次いでクロロメチル化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体の濾過ケークをメタノール(HPLC等級、J.T.Baker、9535‐03、Phillipsburgh、ニュージャージー州)で2回洗浄し、そして真空中において80℃で15時間乾燥した。クロロメチル化の程度を塩素元素分析(AtlanticMicrolab株式会社、Norcross、ジョージア州)により決定した。上記共重合体上のクロロメチル基(CH2Cl)の量を表5に示す。
反応時間、反応温度、及び塩酸モル濃度は全てポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体へのクロロメチル基の付与量に影響を与えることが判明した。これら3種類の変数の種々の組合せ及びその結果のクロロメチル付与量を表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
実施例6クロロメチル化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)多孔質樹脂のアミノ化実施例5で述べたように調製されたクロロメチル化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)多孔質樹脂を次の第三アミン(全てをAldrichChemical、Milwaukee、ウイスコンシン州から購入)、即ちトリメチルアミン(TMA、40重量%水溶液、43、326‐8)、トリエチルアミン(TEA、99%、13、206‐3)、N,N‐ジメチルエチルアミン(DMEA、99%、23、935‐6)、N,N‐ジエチルメチルアミン(DEMA、98%、D9、820‐3)、N,N‐ジメチルブチルアミン(DMBA、99%、36、952‐7)、及びN‐メチルピロリドン(NMP、97%、M7、920‐4)と反応させた。一般的なアミノ化の手順を以下に示す。反応アミンアルキル基のクロロメチル化ロード(load)及び立体サイズ(Hirsch,J.A.立体化学における話題、第1巻、Allinger,N.L.;Eliel,E.D.,Eds.Wiley:ニューヨーク、1967、第1章)はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体上へのアンモニウム基のローディングに通常影響を与えることが判明した。一般的な反応の手順を以下に示す。工程1のクロロメチルのローディング、アミンの種類、及び反応温度の種々の組合せ、及び得られる第4アミンのローディングを表6に示す。
【0075】
250ミリリットルの三つ口の丸底フラスコに温度計、撹拌機、凝縮器、及び反応器温度制御装置を取り付けた。トリアルキルアミンを上記フラスコ内に導入し(それぞれのアミンの量に関しては表6を参照)、そして撹拌及び温度制御を開始した。撹拌機はフラスコ頂部の中心開口内に適当なテフロン(登録商標)ベアリングを介してすりガラスシャフトにより固定された。テフロン(登録商標)パドルは単一羽根であった。クロロメチル化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)を添加(樹脂の量に関しては表6を参照)し、そして充分な混合を得るために撹拌速度を調節した。反応混合物を特定時間、一定の温度で撹拌した(反応時間及び温度に関しては表6を参照)。反応混合物を冷却し、そしてアミンを濾過した。アミン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体を収集し、そしてスラリーのpHが5.5以下になるまで水で洗浄した。次いでアミノ化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)共重合体の濾過ケークをメタノール(HPLC等級、J.T.Baker、9535‐03、Phillipsburgh、ニュージャージー州)で2回洗浄し、そして真空中において80℃で15時間乾燥した。アミノ化の程度を滴定により決定した。上記共重合体上のメチレントリアルキルアンモニウム基(CH2NR3+Cl-)の量を表6に示す。
【0076】
【表6】

【0077】
結論として、上記実験によれば、スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)は塩基性化合物のSPEのために通常の方法で使用できることが実証された。またこれは中性及び塩基性化合物のクラス分別を達成する道具として使用できる。
当業者は普通の実験を使用するだけで上述した本発明の具体例と同等の物を数多く確認できるであろう。これらのそして全ての同等物は上述のクレイムの保護範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:
【化1】

の化合物及びその塩であって、但し、A、B及びCの順番はランダム、ブロック、又はランダム及びブロックの組合せであり;
但し、
【化2】

但し、Aは
【化3】

から成る群から選ばれ、但し、Bは
【化4】

から成る群から選ばれ、但し、CはA又は修正されたAであり、ここで、修正されたAは
【化5】

から成る群から選ばれ、そしてここで、XはSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、及びCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)から成る群から選ばれる上記化合物及びその塩。
【請求項2】
Xは化合物のグラム当り約0.1〜約5.0ミリ当量の濃度で存在する請求項1の化合物。
【請求項3】
Xは化合物のグラム当り約0.6〜約3.2ミリ当量の濃度で存在する請求項1の化合物。
【請求項4】
Xは化合物のグラム当り約0.8〜約2.1ミリ当量の濃度で存在する請求項1の化合物。
【請求項5】
Xは化合物のグラム当り約1.0ミリ当量の濃度で存在する請求項1の化合物。
【請求項6】
XはSO3H、CH2PO32、及びCH2CO2Hから成る群から選ばれる請求項1の化合物。
【請求項7】
XはSO3Hである請求項6の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つの疎水性単量体と少なくとも1つの親水性単量体を共重合させて共重合体を生成し、そして上記共重合体をスルホン化反応させて、少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含むスルホン化共重合体を生成することにより得られる固相抽出又はクロマトグラフィー用の多孔質樹脂。
【請求項9】
上記疎水性単量体はジビニルベンゼンである請求項8の多孔質樹脂。
【請求項10】
上記親水性単量体はN‐ビニルピロリドンである請求項8の多孔質樹脂。
【請求項11】
上記共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項8の多孔質樹脂。
【請求項12】
上記多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項8の多孔質樹脂。
【請求項13】
上記スルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)は多孔質樹脂のグラム当り約0.1〜約5.0ミリ当量の濃度で存在するスルホン酸塩の基を有する請求項12の多孔質樹脂。
【請求項14】
少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む固相抽出又はクロマトグラフィー用の多孔質樹脂。
【請求項15】
溶質を単離又は除去するために溶液を処理する方法であって、溶質を有する溶液を多孔質樹脂と上記溶質が上記多孔質樹脂に収着するような条件下で接触させることを含み;
上記多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む:上記方法。
【請求項16】
上記イオン交換官能基はSO3H、CH2CO2H、CH2CH(CO2H)2、CO2H、PO32、PO22、CH2PO32、CH2Cl、CH2NH2、CH2N[(CH2yCH32(但しyは0〜18の整数である)、CH2+[(CH2y=CH33-(但しy=は0〜18の整数そしてD-はアニオンである)、SO2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)、及びCH2NHR(但しRはポリエチレンイミンである)から成る群から選ばれる請求項14の方法。
【請求項17】
上記イオン交換官能基はSO3H、CH2PO32、及びCH2CO2Hから成る群から選ばれる請求項16の方法。
【請求項18】
上記イオン交換官能基はSO3Hである請求項17の方法。
【請求項19】
上記イオン交換官能基は多孔質樹脂のグラム当り約0.1〜約5.0ミリ当量の濃度で存在する請求項15の方法。
【請求項20】
上記親水性極性成分はアミド基、エステル基、カーボネート基、カルバメート基、尿素基、ヒドロキシ基、及びピリジル基から成る群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項21】
上記多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基を有する共重合体を含み、上記共重合体は少なくとも1つの親水性単量体及び少なくとも1つの疎水性単量体を含む請求項15の方法。
【請求項22】
上記親水性単量体は複素環式基を含む請求項21の方法。
【請求項23】
上記複素環式基はピリジル基又はピロリドニル基である請求項22の方法。
【請求項24】
上記ピリジル基は2‐ビニルピリジン、3‐ビニルピリジン、及び4‐ビニルピリジンから成る群から選ばれる請求項23の方法。
【請求項25】
上記ピロリドニル基はN‐ビニルピロリドンである請求項23の方法。
【請求項26】
上記疎水性単量体はフェニル基、フェニレン基、直鎖C2‐C18‐アルキル基及び枝分れC2‐C18‐アルキル基から成る群から選ばれる基を含む請求項21の方法。
【請求項27】
上記疎水性単量体はスチレン又はジビニルベンゼンである請求項26の方法。
【請求項28】
上記疎水性単量体はジビニルベンゼンである請求項26の方法。
【請求項29】
上記共重合体はポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項21の方法。
【請求項30】
上記多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である請求項15の方法。
【請求項31】
上記多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項15の方法。
【請求項32】
上記スルホン酸塩基は多孔質樹脂のグラム当り約0.1〜約5.0ミリ当量の濃度で存在する請求項31の方法。
【請求項33】
上記多孔質樹脂は少なくとも約12モルパーセントのN‐ビニルピロリドンを含む請求項31の方法。
【請求項34】
上記多孔質樹脂は約30モルパーセントより少ないN‐ビニルピロリドンを含む請求項31の方法。
【請求項35】
上記多孔質樹脂はビーズの形状である請求項15の方法。
【請求項36】
上記ビーズは約3〜約500マイクロメーターの平均寸法を有する請求項35の方法。
【請求項37】
上記多孔質樹脂はマトリックス中に入れられる請求項15の方法。
【請求項38】
上記多孔質樹脂は固相抽出能力を有する請求項15の方法。
【請求項39】
上記溶質は薬剤、農薬、除草剤、生体分子、毒物、汚染物質、代謝物、及びこれらの分解生成物から成る群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項40】
上記溶液は水、水溶液、水又は水溶液の混合物、及び水‐混和性極性有機溶媒から成る群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項41】
上記溶液は血液、血漿、尿、髄液、滑液、組織抽出物、地下水、地上水、飲料水、土壌抽出物、食糧物質、食糧物質の抽出物、植物及びブイヨンからの天然抽出物から成る群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項42】
上記多孔質樹脂は開口容器内にある請求項15の方法。
【請求項43】
上記多孔質樹脂から上記溶質を除去する工程を更に含む請求項15の方法。
【請求項44】
溶液中の溶質の量を分析により決定する方法であって、溶質を有する溶液を多孔質樹脂と上記溶質が上記多孔質樹脂に収着するような条件下で接触させ;
上記多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含み;
上記収着した溶質を有する上記多孔質樹脂を上記多孔質樹脂から上記溶質を放出するような条件下で溶媒を用いて洗浄し;そして上記洗浄の後に、上記溶媒中に存在する上記放出した溶質の量を分析により決定する:ことを含む上記方法。
【請求項45】
上記多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である請求項44の方法。
【請求項46】
上記多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項45の方法。
【請求項47】
開口容器内に詰められた多孔質樹脂を含み、上記多孔質樹脂は少なくとも1つのイオン交換官能基、少なくとも1つの親水性極性成分、及び少なくとも1つの疎水性成分を含む固相抽出カートリッジ。
【請求項48】
上記多孔質樹脂は化学式Iの化合物及びその塩である請求項47の固相抽出カートリッジ。
【請求項49】
上記多孔質樹脂はスルホン化ポリ(ジビニルベンゼン‐co‐N‐ビニルピロリドン)である請求項48の固相抽出カートリッジ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2009−215566(P2009−215566A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120385(P2009−120385)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2000−553484(P2000−553484)の分割
【原出願日】平成11年6月10日(1999.6.10)
【出願人】(500283044)ウォーターズ・インヴェストメンツ・リミテッド (11)
【Fターム(参考)】