説明

固結材注入装置

【課題】主剤と硬化剤などの複数の液剤からなり、地盤改良工事等に使用される固結材を、簡便な構成により等量注入することが可能な固結材注入装置を提供する。
【解決手段】主剤と硬化剤などの異なる液剤からなる2液型固結材を個別に収納するタンク1,2には、それぞれ管路3,4が連結されるとともに、その途中にグラウトポンプ5,6が設置されている。さらに下流側には、内部が長手方向に沿って2等分された管体からなる調圧部材8が設けられている。そして、グラウトポンプ5,6により圧送された各液剤は、この調圧部材8でほぼ等圧状態に調整され、ほぼ同じ流量となってY字管9で合流して注入管11から地中に拡散浸透する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤と硬化剤などの複数の液剤からなり、地盤改良工事等に適用される固結材の注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダム工事やトンネル工事等における湧水・漏水の防止、あるいは軟弱土壌の強化などの地盤改良工事においては、セメント系グラウト材や硬質発泡ウレタン等の各種固結材の注入工法が広く行われている。ここで使用される固結材としては、主剤と硬化剤(促進剤)の組合せからなる2液型のものが多用されている。その混合割合は、現場での作業性等を考慮し、等量となるように予め調整されるのが一般的である。この固結材注入工法は、例えばセメントミルク等の主剤と珪酸ナトリウム水溶液等の硬化剤とを適宜の段階で混合するとともに、ボーリングロッド、二重管等の注入管を介して地中に注入し、両者の反応により硬化(ゲル化)させるものである。注入方法としては、2液をグラウトミキサー等で混合した後にグラウトポンプにより圧送して注入管から吐出する1ショット方式、2液を別々の管路で圧送して管路の途中で合流した後に注入管から吐出する1.5ショット方式、さらに2液を別々の管路で圧送して地中内に挿入された二重管先端の吐出部で混合する2ショット方式などがある。
【0003】
ところで、2液型固結材の中には両液剤の粘度に大きな差があり、その流動性が異なることが多い。したがって、このような2液型固結材の注入装置においては、グラウトポンプで圧送された各液剤について、それらの合流部分よりも手前側で注入圧力と流量を検知し、この情報をグラウトポンプにフィードバックすることにより、両液剤が確実に同じ容積比率で混合されるように調整している(特許文献1,2参照)。このため、圧力センサ等が必要であり、注入装置の構成及び制御が複雑になるという問題があった。
【特許文献1】実用新案登録第2520649号公報
【特許文献2】特公昭58−30445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑みなされたもので、簡便な構成により等量注入が可能な固結材注入装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、混合により硬化する複数の液剤からなる固結材を個別の管路を介して各液剤をポンプで圧送し、それら管路の下流側の適宜位置で各液剤を合流させて地盤へ注入する固結材注入装置において、前記各管路の合流位置よりも上流側に、各液剤の注入圧力を略等圧状態に調整する調圧部材を設けるという技術手段を採用した。なお、前記調圧部材としては、軸心方向に延在する弾性変形可能な隔壁により等分された複数の流路を備え、それら流路の両端側において前記各管路と連通する管体が好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固結材注入装置によれば、粘度の異なる複数の液剤からなる固結材を対象にした場合、連動させたポンプで各液剤を加圧したときに調圧部材よりも上流側では、それら液剤の流動性が異なるために各管路内での注入圧力に差が生じるが、調圧部材を通過する際に各管路内の注入圧力が略等圧状態に調整される結果、その下流側ではほぼ同じ流量で液剤が合流することになる。このため、従来装置のような圧力センサ等が不要になり、装置の簡略化が可能である。
【0007】
また、内空部が弾性変形可能な隔壁で複数の流路に等分された管体を調圧部材として使用した場合には、これを各液剤が個別に流通する複数の管路を跨ぐように配置し、管体の流路の両端側を各管路と連通すると、調圧部材内の隔壁が隣接する流路間の圧力差に基づき高い側から低い側に湾曲変形する。即ち、管体の流路の断面積が圧力差に応じて適宜変化することにより、簡便な手段で常に略等圧状態を実現することができるので好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の固結材注入装置は、上記のような構成を採用するから、2液型に限らず3液以上の液剤からなる各種の固結材に適用することができる。その注入方法は、各液剤が独立した管路の途中で合流する1.5ショット方式、あるいは地盤内に挿入された注入管の吐出口まで管路が独立している2ショット方式のいずれにも対応が可能であるが、調圧後も独立した管路が続き2ショット方式よりは、合流場所が管路の途中にある1.5ショット方式のほうが調圧部材の効果をより発揮させやすいので好ましい。また、調圧部材として使用する複数の流路を備える管体は、その内空部内に設けられた隔壁が液剤の注入圧力によって容易に弾性変形することが要件であるから、素材にはゴム、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどの弾性高分子材料が好適である。但し、周囲の管壁部分については、注入圧力で変形しない程度の十分な厚さが必要である。したがって、同じ素材で一体成形をする場合には、隔壁部分の厚さを管壁部分に比べて薄く形成することになるが、隔壁部分の素材を管壁部分と異ならせた場合にはこの限りでない。さらに、管体の長さや肉厚等は、液剤の種類、圧送条件などに応じて適宜選定すればよく、調圧部材を管路(配管系統)の複数個所に設けることも可能である。以下、図面に基づき本発明の実施例について説明するが、もちろんこれに限定されるものではなく、この発明の技術思想内での種々の変更実施は可能である。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に係る固結材注入装置の第1実施例を示す説明図である。図示の固結材注入装置は、主剤と硬化剤からなる2液型固結材を対象としたものであり、その注入方法は1.5ショット方式である。それぞれの液剤を収納する2個のタンク1,2には、独立した管路3,4が連結されるとともに、それら管路3,4の途中にグラウトポンプ5,6が設置されている。グラウトポンプ5,6は、原動機7に連結して連動するように設定されている。それぞれの管路3,4は、グラウトポンプ5,6の下流側において調圧部材8に連結され、さらに調圧部材8の下流側でY字管9に連結されている。Y字管9の先端側は、アダプタ10を介して注入管11に連結されるとともに、注入管11は削孔12に対して挿入口側においてウエス等の閉塞材13により封止されている。なお、管路3側には流量計14が設けられている。
【0010】
図2は、調圧部材8のA−A線断面図であり、横断面円形状の管体の内空部が、その軸心方向に沿って設けられた隔壁15より流路16,17に2等分されている。調圧部材8は、適宜の弾性高分子材料からなり、隔壁15の肉厚が管壁18よりも薄く形成されている。なお、図示はしないが、調圧部材8と管路3,4との接続は、流路16,17の横断面形状が円形でないことから、それらの形状に挿入部分が適合した適宜形状の継手を介して行われ、気密状態で結合される。
【0011】
次に、上記固結材注入装置の使用方法について説明する。タンク1,2に収納されたそれぞれの液剤は、連動したグラウトポンプ5,6により管路3,4内を同じ吐出圧で圧送され、調圧部材8を通過してY字管9で合流する。この場合、それぞれの液剤の粘度に大きな差があると、調圧部材8よりも上流側の管路3,4内での注入圧力に差が生じる。即ち、高粘度の液剤側では流動性が低いために、低粘度の液剤側に比べて注入圧力が高くなる。したがって、このような状態においては、調圧部材8を介さずにそのままY字管9に合流するとなると、流量に差が生じ、等量で混合することができない。これに対して、本発明ではそれぞれの液剤が調圧部材8を通過する際に、流路16,17内での圧力差に応じて隔壁15が弾性変形し、流路16,17の断面積が変化する。即ち、図2において二点鎖線で示すように、高圧側の流路17が低圧側の流路16に向けて湾曲することで略等圧状態に調整され、調圧部材8を出た時点では、ほぼ同じ吐出圧で圧送されることにより、ほぼ同じ容積比率でY字管9に流入する。Y字管9で合流して混合された2種の液剤は、注入管11から削孔12内に吐出され、さらに周囲の地盤に拡散浸透することになる。
【実施例2】
【0012】
図3は、本発明に係る固結材注入装置の第2実施例の要部を示す説明図である。なお、前記第1実施例と重複する部分についてはその説明を省略する。図示の固結材注入装置は、2ショット方式に適用したものであり、調圧部材19の下流側にアダプタ20を介して注入管としての二重管21が連結された構成である。このアダプタ20は二重管構造であり、管路22が端面側から内側の通路に接続されるとともに、管路23が側面側から外側の通路に接続されている。この場合、ポンプで圧送された2種の液剤は、調圧部材19において等圧状態に調整された後、ほぼ同じ流量でアダプタ20及び二重管21を通過し、二重管21の先端を出た所で合流して混合され、削孔24内から周囲の地盤に拡散浸透する。
【実施例3】
【0013】
図4は、本発明に係る固結材注入装置の第3実施例で使用する調圧部材の断面図である。図示の調圧部材25は、3液からなる固結材を対象とするものであり、内空部が隔壁26により3等分されている。隔壁26の肉厚は管壁27よりも薄く成形され容易に弾性変形が可能である。そして、流路28,29,30内を流通する各液剤の注入圧力に差があった場合には、隔壁26が適宜弾性変形してそれぞれの圧力差に応じて流路断面積を変化させることにより、注入圧力を等圧状態に調整することができる。その結果、調圧部材25を通過した時点で、3液の流量はほぼ等量となるように調整される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る固結材注入装置の第1実施例を示す説明図である。
【図2】第1実施例で使用する調圧部材の断面図である。
【図3】本発明に係る固結材注入装置の第2実施例の要部を示す説明図である。
【図4】第3実施例で使用する調圧部材の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1,2…タンク、3,4,22,23…管路、5,6…ポンプ、7…原動機、8,19,25…調圧部材、9…Y字管、10,20…アダプタ、11,21…注入管、15,26…隔壁、16,17,28,29,30…流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合により硬化する複数の液剤からなる固結材を個別の管路を介して各液剤をポンプで圧送し、それら管路の下流側の適宜位置で各液剤を合流させて地盤へ注入する固結材注入装置において、前記各管路の合流位置よりも上流側に、各液剤の注入圧力を略等圧状態に調整する調圧部材を設けたことを特徴とする固結材注入装置。
【請求項2】
前記調圧部材が、軸心方向に延在する弾性変形可能な隔壁により等分された複数の流路を備え、それら流路の両端側において前記各管路と連通する管体であることを特徴とする請求項1に記載の固結材注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−70633(P2006−70633A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257825(P2004−257825)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】