説明

土壌浄化剤組成物

【課題】油類によって汚染された土壌、特に重油等の石油系化合物、中でもC重油に汚染された土壌を効果的に洗浄することのできる、優れた土壌浄化剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A1)下記一般式(1)で表される化合物、及び、下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかと、(B)有機アミン化合物を含有することを特徴とする土壌浄化剤組成物である。
−O−(AO)−H (1)
−CO−(AO)−O−R (2)
ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数であって、2〜8の数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌浄化剤組成物に関し、より詳細には、油類によって汚染された土壌、特に重油等の石油系化合物、中でもC重油に汚染された土壌を洗浄するための土壌浄化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンスタンドや工場からの敷地跡地に存在する、長期にわたって漏出した有機物で汚染された土壌が社会問題となっており、早急な汚染土壌の浄化対策が求められている。
従来から、油汚染土壌の浄化方法としては、例えば、掘削した油含有土壌を加熱して油を除去する方法、高圧空気で油含有土壌から油を剥離し、微生物を用いて油を分解する方法、土壌洗浄法などが提案されている(特許文献1参照)。このうち土壌洗浄法は、コストや環境の面で優れた土壌浄化方法であり、従来から、例えば浄化薬剤として界面活性剤を用いた土壌洗浄剤や土壌浄化方法が報告されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−322073号公報
【特許文献2】特開2003−119495号公報
【特許文献3】特開2001−17955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、油類によって汚染された土壌、特に重油等の石油系化合物、中でもC重油に汚染された土壌を効果的に洗浄することのできる、優れた土壌浄化剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、有機アミン化合物とを含有する土壌浄化剤組成物を用いることで、重油、特に粘度が高く洗浄が困難なC重油に汚染された土壌から、効果的に重油を除去することができることを見出し、本発明の完成に至った。
前記したような、従来の土壌洗浄剤や土壌浄化方法(特開2004−322073号公報、特開2003−119495号公報、特開2001−17955号公報参照)では、例えば、土壌を攪拌せずに現位置で洗浄する際や、粘度が高く洗浄が困難なC重油を洗浄する際などにおいては、十分な洗浄力が得られないなどの問題があった。これに対し、本発明の土壌浄化剤組成物は、汚染土壌の洗浄性、及び、土壌中での通液性に優れるものであり、したがって、土壌を攪拌せずに現位置で洗浄する際や、粘度が高く洗浄が困難なC重油を洗浄する際などにも、十分な洗浄力を発揮することができるという利点がある。
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> (A1)下記一般式(1)で表される化合物、及び、下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかと、(B)有機アミン化合物とを含有することを特徴とする土壌浄化剤組成物である。
−O−(AO)−H (1)
−CO−(AO)−O−R (2)
ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数であって、2〜8の数を示す。
<2> 更に、(A2)下記一般式(3)で表される化合物、及び、下記一般式(4)で表される化合物の少なくともいずれかを含有する前記<1>に記載の土壌浄化剤組成物である。
−O−(AO)−H (3)
−CO−(AO)−O−R (4)
ただし、前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、R及びRはそれぞれ炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、mはAOの平均付加モル数であって、12〜20の数を示す。
<3> 更に、(C)アニオン性界面活性剤を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の土壌浄化剤組成物である。
<4>(C)アニオン性界面活性剤が、硫酸エステル塩、及び、スルホン酸塩の少なくともいずれかである前記<3>に記載の土壌浄化剤組成物である。
<5> 油類に汚染された土壌の洗浄に用いられる前記<1>から<4>のいずれかに記載の土壌浄化剤組成物である。
<6> 油類が重油である前記<5>に記載の土壌浄化剤組成物である。
<7> 重油がC重油である前記<6>に記載の土壌浄化剤組成物である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の土壌浄化剤組成物を用いることを特徴とする土壌浄化方法である。
<9> 油類に汚染された土壌を洗浄する前記<8>に記載の土壌浄化方法である。
<10> 油類が重油である前記<9>に記載の土壌浄化方法である。
<11> 重油がC重油である前記<10>に記載の土壌浄化方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、油類によって汚染された土壌、特に重油等の石油系化合物、中でもC重油に汚染された土壌を効果的に洗浄することのできる、優れた土壌浄化剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(土壌浄化剤組成物)
本発明の土壌浄化剤組成物は、(A1)一般式(1)で表される化合物、及び、一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかと、(B)有機アミン化合物とを含有してなり、好ましくは更に、(A2)一般式(3)で表される化合物、及び、一般式(4)で表される化合物の少なくともいずれかを含有してなり、特に好ましくは、(C)アニオン性界面活性剤を含有してなり、必要に応じて更に、適宜その他の成分を含有してなる。
なお、本明細書中において、前記(A1)成分単独、又は、前記土壌浄化剤組成物が前記(A1)成分及び前記(A2)成分の両者を含有する場合には、前記(A1)成分と前記(A2)成分との混合物を、単に「(A)成分」と称することがある。
【0009】
<(A)成分>
−(A1)成分−
前記(A1)成分は、主に、汚染土壌の洗浄工程において土壌から剥離した重油等を可溶化、乳化分散することにより洗浄する目的で、前記土壌浄化剤組成物に配合される。
前記(A1)成分は、下記一般式(1)で表される化合物、及び、下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかであり、前記(A1)成分は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0010】
−O−(AO)−H (1)
−CO−(AO)−O−R (2)
【0011】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ、炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基であり、中でも、炭素数10〜14の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数12〜14の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。前記R、Rの炭素数が、8未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないなどの問題があり、16を超えると、土壌浄化剤組成物の均一安定性が優れないなどの問題がある。一方、前記R、Rの炭素数が、より好ましい範囲内であると、洗浄力、及び、土壌浄化剤組成物の均一安定性のいずれにもより優れる点で、有利である。
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であり、中でも、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。前記Rの炭素数が、1未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないなどの問題があり、8を超えると、土壌浄化剤組成物の均一安定性が優れないなどの問題がある。一方、前記Rの炭素数が、より好ましい範囲内であると、洗浄力、及び、土壌浄化剤組成物の均一安定性のいずれにもより優れる点で、有利である。
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、中でも、洗浄力の点で、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。なお、AOとしては、前記オキシアルキレン基を、いずれか1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、nは、AOの平均付加モル数であり、その数としては、2〜8であり、3〜7が好ましく、4〜5がより好ましい。前記AO平均付加モル数が、2未満、又は、8を超えると、所望の程度の重油の可溶化力が得られないなどの問題がある。一方、前記AO平均付加モル数が、より好ましい範囲内であると、重油の可溶化力がより良好となる点で、有利である。
【0012】
前記(A1)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンモノ2−エチルヘキシルエーテル(EO平均付加モル数4、日本乳化剤(株)製ニューコール1004)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO平均付加モル数5、第一工業製薬(株)製ノイゲンXL−50)、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル(EO平均付加モル数5.5、ライオン(株)製レオコールDU−55)、ポリオキシエチレン第1級アルキル(直鎖C12−14)エーテル(EO平均付加モル数5、ライオン(株)製レオックスCC−50)、ポリオキシエチレン第2級アルキル(分岐C12−14)エーテル(EO平均付加モル数5、ライオン(株)製レオコールSC−50)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル(EO平均付加モル数5、PO平均付加モル数1.1、ライオン(株)製ライオノールTDL−50)、ラウリン酸ポリオキシエチレンメチルエーテル(EO平均付加モル数5)などが挙げられる。なお、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。
【0013】
−(A2)成分−
前記(A2)成分は、主に、前記(A1)成分との併用で、重油等の分散性を向上させ、洗浄効果をより優れたものにする目的で、前記土壌浄化剤組成物に配合される。前記(A1)成分と前記(A2)成分とを併用することで、特に、粘度が高く洗浄が困難なC重油の洗浄性を顕著に向上させることができる。なお、前記(A2)成分のこのような効果は、前記(A1)成分のみでは可溶化しきれないC重油成分を乳化分散することによるものと推測される。
前記(A2)成分は、下記一般式(3)で表される化合物、及び、下記一般式(4)で表される化合物の少なくともいずれかであり、前記(A2)成分は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
−O−(AO)−H (3)
−CO−(AO)−O−R (4)
【0015】
前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、R及びRはそれぞれ、炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基であり、中でも、炭素数10〜14の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数12〜14の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。前記R、Rの炭素数が、8未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないことがあり、16を超えると、土壌浄化剤組成物の均一安定性が優れないことがある。一方、前記R、Rの炭素数が、より好ましい範囲内であると、洗浄力、及び、土壌浄化剤組成物の均一安定性のいずれにもより優れる点で、有利である。
前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、Rは、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であり、中でも、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。前記Rの炭素数が、1未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないことがあり、8を超えると、土壌浄化剤組成物の均一安定性が優れないことがある。一方、前記Rの炭素数が、より好ましい範囲内であると、洗浄力、及び、土壌浄化剤組成物の均一安定性のいずれにもより優れる点で、有利である。
前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、中でも、洗浄力の点で、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。なお、AOとしては、前記オキシアルキレン基を、いずれか1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、mは、AOの平均付加モル数であり、その数としては、12〜20であり、14〜18が好ましく、14〜15がより好ましい。前記AO平均付加モル数が、12未満、又は、20を超えると、所望の程度のC重油の洗浄性が得られないことがある。一方、前記AO平均付加モル数が、より好ましい範囲内であると、C重油の洗浄性がより良好となる点で、有利である。
【0016】
前記(A2)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル(EO平均付加モル数14、第一工業製薬(株)製ノイゲンXL−140)、ポリオキシエチレン第2級アルキル(分岐C12−14)エーテル(EO平均付加モル数15、ライオン(株)製レオコールSC−150)などが挙げられる。なお、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。
【0017】
−HLB値−
前記(A)成分(前記(A1)成分単独、又は、前記土壌浄化剤組成物が前記(A1)成分及び前記(A2)成分の両者を含有する場合には、前記(A1)成分と前記(A2)成分との混合物)のHLB値としては、9〜12が好ましく、9〜11がより好ましい。前記HLB値が、好ましい範囲内にあると、重油の分散性と可溶化力のバランスがとれ、洗浄力、特にC重油の洗浄力がより良好となり、より好ましい範囲では、さらに重油の分散性と可溶化力のバランスがとれ、洗浄力により優れる点で、有利である。
なお、前記HLB値は、グリフィンの計算法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量、オキシエチレン基以外は親油部とする)によるものである。前記(A1)成分と前記(A2)成分との混合物のHLB値は、それぞれ単独成分のHLB値の配合組成(重量基準)に従った加重平均で算出するものとする。
【0018】
<(B)成分>
前記(B)成分は、主に、重油等を土壌(珪砂等)から剥離する効果を増強させる目的で、前記土壌浄化剤組成物に配合される。その結果、特に、粘度が高く洗浄が困難なC重油の洗浄性を顕著に向上させることができる。
前記(B)成分は、例えば、下記一般式(5)で表されるアルキルアミン、アルカノールアミン、下記一般式(6)で表されるポリエチレンアミン等の有機アミン化合物であり、前記(B)成分は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】

【0020】
NH(CHCHNH)H (6)
【0021】
前記一般式(5)中、R、R、及び、Rはそれぞれ、水素、ヒドロキシアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルキル基を示し、うち少なくとも1つは水素でない。
前記一般式(6)中、nは1〜6の数を示す。
【0022】
前記(B)成分の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミン等のポリエチレンアミンなどが挙げられる。これらの中でも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンが好ましく、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンがより好ましい。前記モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンは、洗浄性を向上させる効果に優れる点、また、臭気のなさの点で、有利である。また、土壌中は地表に比べて温度が低下することがあり、前記土壌浄化剤組成物をそのような土壌中で用いる場合には、低温下でも洗浄性を向上させる効果に優れる点で、モノエタノールアミン、エチレンジアミンが更に好ましい。
【0023】
<(C)成分>
前記(C)成分は、主に、前記土壌浄化剤組成物の洗浄性は維持したまま、土壌中の通液性を向上させる目的で、前記土壌浄化剤組成物に配合される。ここで通液性とは、土壌浄化剤組成物を含む溶液を土壌中に通液した際の通液のし易さをいい、例えば一定量の土壌中に一定の流速で土壌浄化剤組成物を通液したときに生じる圧力損失として表すことができる。
前記(C)成分は、アニオン性界面活性剤であり、前記(C)成分は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記(C)成分としては、例えば、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩が使用できる。
前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩、又はアンモニウム塩が挙げられ、これらの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
前記脂肪酸塩の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びこれらの混合物のアルカリ金属塩、有機アミン塩が挙げられる。
前記硫酸エステル塩の具体例としては、炭素数10〜20のアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩(AES)(例えば、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩)、炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル硫酸塩、ひまし油硫酸エステル塩が挙げられる。
前記スルホン酸塩の具体例としては、炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩(SAS)、炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS或いはABS)、炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、ジもしくは、モノアルキルスルホコハク酸塩(例えば、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT))、炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸又はそのメチル、エチルもしくはプロピルエステル塩が挙げられる。
前記燐酸エステル塩の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、長鎖アルキル燐酸塩が挙げられる。前記燐酸塩としては、例えば、モノエステル体、ジエステル体、モノ体とジ体の任意の混合物(セスキエステル体)を用いることができる。
【0025】
前記例示した(C)成分の中でも、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましい。具体的には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)や、α−オレフィンスルホン酸(AOS)のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、アルカンスルホン酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)が好ましい。前記直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のアルカリ金属塩、α−オレフィンスルホン酸(AOS)のアルカリ金属塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、アルカンスルホン酸のアルカリ金属塩は、乳化分散性に優れ、洗浄性を維持しながら通液性を向上させる効果に優れる点で、有利である。
【0026】
<含有量>
前記土壌浄化剤組成物中の、前記各成分((A1)成分、(B)成分、好ましくは更に(A2)成分、特に好ましくは更に(C)成分)の含有量としては、特に制限はなく、用いる浄化工法や、土壌の汚染の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下に示すような含有量であることが好ましい。
なお、以下、前記したように、「(A)成分」とは、前記(A1)成分単独、又は、前記土壌浄化剤組成物が前記(A1)成分及び前記(A2)成分の両者を含有する場合には、前記(A1)成分と前記(A2)成分との混合物を指すものとする。
【0027】
前記土壌浄化剤組成物中の、前記(A)成分、及び、前記(B)成分、更に前記(C)成分を含有する場合には(C)成分を含めた各成分の合計含有量(以下、前記(A)成分及び前記(B)成分、更に前記(C)成分を含有する場合には(C)成分を「有効成分」と称し、これらの合計含有量を「有効成分量」と称することがある)としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。前記有効成分量が、0.1質量%未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないことがある。一方、前記有効成分量が、より好ましい範囲内であると、より良好な洗浄力が得られる点で、有利である。
また、前記有効成分量の上限としては、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。前記有効成分量が、20質量%を超えると、前記土壌浄化剤組成物の粘度が増し、取り扱いが困難となることがある。一方、前記有効成分量が、より好ましい範囲内であると、前記土壌浄化剤組成物の増粘が抑制され、取り扱いがより容易となる点で、有利である。
【0028】
前記土壌浄化剤組成物を、洗浄工程において機械的攪拌力を作用させることができない薬剤注入工法(現位置浄化工法の一種、後述参照)などに適用する場合には、前記土壌浄化剤組成物中の、前記有効成分量としては、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。前記有効成分量が、0.5質量%未満であると、機械的攪拌力を作用させないため所望の程度の洗浄力が得られないことがある。一方、前記有効成分量が、より好ましい範囲内であると、機械的攪拌力を作用させなくとも、より良好な洗浄力が得られる点で、有利である。
また、前記土壌浄化剤組成物を、薬剤注入工法などに適用する場合の、前記有効成分量の上限としては、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。前記有効成分量が、10質量%を超えると、前記土壌浄化剤組成物の粘度が増し、薬剤注入工法において土壌浄化剤組成物を土壌中に通液させることが困難となることがある。一方、前記有効成分量が、より好ましい範囲内であると、前記土壌浄化剤組成物の増粘が抑制され、薬剤注入工法において土壌浄化剤組成物を土壌中に通液させることが容易となり、結果として洗浄効率をより向上させることができる点で、有利である。
【0029】
また、前記有効成分量に対する、前記(B)成分の含有量としては、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%が更に好ましい。前記有効成分量に対する前記(B)成分の含有量が、5質量%未満であると、重油、特にC重油に対する所望の程度の洗浄力が得られないことがあり、40質量%を超えると、所望の程度の前記(A)成分を配合できないことがある。一方、前記有効成分量に対する前記(B)成分の含有量が、更に好ましい範囲内であると、所望の程度の前記(A)成分を配合することができ、重油、特にC重油に対するより良好な洗浄力が得られる点で、有利である。
【0030】
また、前記土壌浄化剤組成物が(A1)成分及び(A2)成分の両者を含有する場合、前記(A)成分の含有量(前記(A1)成分及び前記(A2)成分の合計含有量)に対する、前記(A2)成分の含有量としては、0.5〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、2〜5質量%が更に好ましい。前記(A)成分の含有量に対する前記(A2)成分の含有量が、0.5質量%未満であると、(A2)成分の重油、特にC重油の分散性能による洗浄力向上効果が得られないことがあり、10質量%を超えると、相対的に(A1)成分の配合量が減るため重油の可溶化力が低下し、洗浄力が得られないことがある。一方、前記(A)成分の含有量に対する前記(A2)成分の含有量が、更に好ましい範囲内であると、重油の分散性と可溶化力のバランスがとれ、洗浄力がさらに良好となる点で、有利である。
【0031】
更に、(C)成分を含有する場合、有効成分量((A)成分の含有量((A1)成分と(A2)成分の合計含有量)と(B)成分と(C)成分の合計含有量)に対する(C)成分の含有量としては、0.08〜12質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.4〜4質量%が更に好ましい。
前記有効成分量に対する前記(C)の含有量が、0.08質量%未満であると、(C)成分添加の効果が十分に発揮されないことがあり、前記有効成分量に対する前記(C)の含有量が、12質量%を超えると、洗浄性が低下することがある。
【0032】
また、前記(C)成分の種類、添加量としては、土壌浄化剤組成物溶液中の目的とするミセルサイズに応じて適宜選択することができるが、液外観が透明にならない範囲で(C)成分を添加することが好ましい。
前記ミセルサイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200〜700nmが好ましい。前記ミセルサイズが700nmより大きいと、通液性向上効果が十分に発揮されないことがあり、前記ミセルサイズが200nm未満であると、洗浄性、特にC重油の洗浄性が悪化することがある。一方、前記好ましい範囲内であると、土壌浄化剤組成物の洗浄性を維持しながら土壌中の通液性をより向上させる点で、有利である。
前記ミセルサイズは、例えば、動的光散乱光度計DLS8000(大塚電子製)を用いて、土壌浄化洗浄剤の流体力学的半径Rhを測定することができる。
【0033】
<その他の成分>
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分以外のその他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記土壌浄化剤組成物には、(A)成分の酸化分解によるアルデヒド、カルボン酸の生成に伴う組成物のpH低下を防止する目的や、高硬度の地下水で前記土壌浄化剤組成物が希釈された場合の洗浄効果を維持させる目的から、トリポリリン酸、ピロリン酸、オルソリン酸、ヘキサメタリン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキシアミノカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸、芳香族カルボン酸、シクロカルボン酸、ホスホン酸、エーテルカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、これらのアルカリ金属塩等あるいは誘導体、有機カルボン酸ポリマー、多糖類酸化物などを任意で添加することができる。
具体的には、低級カルボン酸類として、酢酸、アジピン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、モノクロル酢酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸などの酸及びその塩が挙げられる。
アミノカルボン酸類としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラ酢酸(TTHA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、1,3−プロパン−2−ジアミン四酢酸(PDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、エチレングリコールジエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、β−アラニンジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸などの酸及びその塩が挙げられる。
芳香族カルボン酸類としては、安息香酸、サリチル酸などの酸及びその塩が挙げられる。
ホスホン酸類としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、N,N,N’,N’−テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン(EDTMP)などの酸及びその塩が挙げられる。
土壌浄化剤組成物のpHを8以上にするために、上記成分は塩で添加することが好ましい。
前記土壌浄化剤組成物中の、前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
<製造>
前記土壌浄化剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分と、前記(B)成分と、必要に応じて前記その他の成分と、溶媒とを混合することにより、製造することができる。より具体的には、例えば、溶媒中に、前記(A)成分と、前記(B)成分と、必要に応じて前記その他の成分とを添加し、10℃〜30℃で攪拌することにより、前記土壌浄化剤組成物を得ることができる。前記攪拌に用いる装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、攪拌子、攪拌羽などを利用することができる。
なお、前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、引火性や安全性の観点から、水が好ましい。
【0035】
前記溶媒として水を使用した場合の、前記土壌浄化剤組成物のpHは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8以上であることが好ましく、8〜11であることがより好ましい。前記pHが、8未満であると、所望の程度の洗浄力が得られないことがあり、11を超えると、アルカリによる取り扱い上の危険性が懸念される。一方、前記pHが、より好ましい範囲内であると、より良好な洗浄力が得られ、かつ、アルカリによる取り扱い上の危険性が低減される点で、有利である。前記pHは、例えば、酸やアルカリ等のpH調整剤を用い、調整することができる。
なお、前記pHは、得られた前記土壌浄化剤組成物について、pHメーター(堀場製作所製pHメーター M−12)を用い、25℃で測定した値である。
【0036】
なお、前記土壌浄化剤組成物は、前記(A)成分と前記(B)成分とからなる有効成分、又は前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分とからなる有効成分が前記したような好ましい含有量となるように調製し、そのまま汚染土壌に作用させる態様のものであってもよいし、また、前記有効成分をより濃縮した組成で調製し、使用前に、各成分が前記したような好ましい含有量となるように希釈して、汚染土壌に作用させる態様のものであってもよい。例えば、前記有効成分濃度を80〜90質量%で調整し、使用現場で水で希釈するとともに、目的に応じて有機酸などのその他任意添加成分を添加し、汚染土壌に作用させる態様が挙げられ、このような高濃度の組成物を輸送する使用形態であれば、輸送効率が向上するため好ましい。
また、前記土壌浄化剤組成物としては、前記有効成分が予め混合された組成物を、汚染土壌に作用させる態様のもののみに限定されず、例えば、前記(A)成分を含む組成物と、前記(B)成分を含む組成物と、更に(C)成分を添加する場合には(C)成分を含む組成物とを、別々に汚染土壌に作用させる態様のものであってもよい。即ち、汚染土壌を洗浄する際に、前記(A)成分及び前記(B)成分、更に(C)成分を添加する場合には(C)成分の各成分が、協働して汚染土壌に対して機能できる状態にあればよく、具体的には、例えば、前記(A)成分を含む組成物と、前記(B)成分を含む組成物とを、それぞれ別々の位置から、汚染土壌に作用させる態様のものであってもよい。
【0037】
前記土壌浄化剤組成物の、汚染土壌に対する適用量としては、特に制限はなく、用いる浄化工法や、土壌の汚染の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、汚染土壌量に対する有効成分(前記(A)成分及び前記(B)成分)の量として、0.5〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。汚染土壌量に対する有効成分量が、0.5質量%未満であると、所望の洗浄力が得られないことがあり、10質量%を超えても、薬剤コストに見合うそれ以上の効果が得られないことがある。一方、汚染土壌量に対する有効成分量が、より好ましい範囲内であると、洗浄力と薬剤コストのバランスの点で、有利である。
【0038】
<適用対象>
前記土壌浄化剤組成物は、鉱油、合成油、動植物油、これらの廃油等の、油類により汚染された土壌を浄化するための薬剤として好適であるが、前記油類のうち、特に重油等の石油系化合物、中でも粘度が高く洗浄が困難なC重油に汚染された土壌に対して、高い洗浄力を発揮するものである。なお、重油は、動粘度により、1種(A重油)、2種(B重油)、3種(C重油)の3種類に分類され、その規格はJIS K 2205に示される通りである。
【0039】
<適用方法>
前記土壌浄化剤組成物は、例えば、以下に示すような様々な土壌浄化方法に使用することが可能であり、その方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
土壌の浄化方法は、原位置で汚染土壌を浄化する工法(以下、「原位置浄化工法」と称することがある)と、掘削した汚染土壌を浄化する工法(以下、「掘削浄化工法」と称することがある)とに大別できる。原位置浄化工法は、原位置で汚染土壌を浄化する工法であり、汚染領域の近傍に設けた注入井戸から浄化剤を注入する工法(薬剤注入工法)、スタビライザ等の混合機械を用いて汚染土壌と浄化剤とを混合する工法などがある。また、掘削浄化工法は、掘削した汚染土壌を浄化処理プラントに搬送して洗浄を行う工法である。
【0040】
原位置浄化工法の一種である薬剤注入工法は、特殊な装置が不要であり、汚染土壌を原位置で浄化するためコスト的に有利である一方、洗浄時に機械的攪拌力を作用させることができないため、使用する浄化剤には高い洗浄力が求められる。
薬剤注入工法は、汚染領域の近傍に注入井戸と揚水井戸を設けて、注入井戸から浄化剤を含む液体(以下、「浄化用流体」と称することがある)を注入して揚水井戸から処理液を揚水することにより、注入井戸から揚水井戸へ向かう地下水の流れを形成し、汚染土壌の浄化を行う工法である。なお、注入井戸と揚水井戸は兼用とすることもできる。
【0041】
図1は、前記土壌浄化剤組成物を用いた、薬剤注入工法の好適な一例を示す説明図である。図1に示す浄化システム100は、不飽和層(非帯水層)1、及び、飽和層(帯水層)2が存在する対象汚染領域において、飽和層2中に存在する有機物層(汚染層)3を原位置で浄化するためのシステムである。
浄化システム100においては、対象汚染領域において注入井戸5、及び、揚水井戸6がそれぞれ離間して設けられている。注入井戸5、及び、揚水井戸6は、それぞれ地下水位4よりも下方に達するように、即ちそれらの下端が地下水位4よりも下方に位置するように設けられており、飽和層2においては注入井戸5から揚水井戸6に向かう地下水の動水勾配が形成されている。
注入井戸5の上端には移送ラインL1を介して薬剤混合供給装置7が連結されている。これにより、前記土壌浄化剤組成物を含む浄化用流体(薬剤)が薬剤混合供給装置7から注入井戸5を通って飽和層2に注入される。なお、薬剤混合供給装置7の構成は特に制限されないが、例えば、薬剤タンク、及び、注入ポンプなどを含んで構成することができる。
注入井戸5から飽和層2に注入された薬剤は、地下水の流れAに沿って飽和層2中を移動して、有機物層3に到達する。そして、有機物層3中の土粒子に付着している有機物が該薬剤の作用により土粒子から剥離することにより、汚染土壌の浄化が行われる。そして、剥離した有機物は地下水の流れAに沿って揚水井戸6まで移動する。
揚水井戸6の上端には揚水ラインL2を介して揚水ポンプ8が連結されており、この揚水ポンプ8により揚水(薬剤、水、有機物の混合液)が地上に汲み上げられる。採取された揚水は揚水ポンプ8からラインL3を通って油水分離槽9に送られ、揚水が、薬剤と有機物の混合液A及び薬剤と水の混合液Bに分離される。分離された混合液Aは廃棄ラインL4から回収される。一方、分離された混合液Bは、ラインL5を通って薬剤混合供給装置7へ送られ、薬剤の濃度調整を行った後に再利用される。
【0042】
図1に示すような実施形態によれば、対象汚染領域において、注入井戸5、及び、揚水井戸6をそれぞれ地下水位4よりも下方に達するように設け、注入井戸5から揚水井戸6へ向かう地下水の動水勾配を形成することにより、浄化効率を一層向上させることができる。即ち、注入井戸5から薬剤を添加することにより、これらの薬剤は地下水の流れAに沿って十分に速やかに移動することができるようになり、薬剤の到達範囲をより拡大することができるようになる。
また、薬剤注入工法による汚染土壌浄化を更に促進する方法として、汚染領域の下部から注入井戸を通して空気を吹き込む方法、汚染領域をスチームにより加熱する方法、浄化用流体が注入された位置とは異なる位置から土壌内の地下水を真空吸引する方法、汚染領域に超音波を付与する方法、注入井戸から注入する浄化用流体に一定の、又は、間欠的な圧力をかける方法などを併用することができる。なお、前記土壌浄化剤組成物を用いた土壌浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
前記土壌浄化剤組成物は、前記した何れの工法に対しても適用し得るが、前記土壌浄化剤組成物は、重油、特に粘度が高く洗浄が困難なC重油の洗浄力に優れ、また、機械的攪拌力を加えなくとも高い洗浄力を示すことから、前記した薬剤注入工法への使用に、特に好適である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜19、比較例1〜5)
表1〜3の各成分を、表4〜6の各組成となるように配合し、実施例1〜19、及び、比較例1〜5の土壌浄化剤組成物を調製した。具体的には、溶媒(水)中に各成分を投入し、マグネチックスターラーを用いて攪拌し、25℃で調製した。得られた各土壌浄化剤組成物のpHを、pHメーター(堀場製作所製pHメーター M−12)を用い、25℃で測定した。また、各土壌浄化剤組成物に配合されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(N−1〜N−10、又は、これらの混合物)のHLB値を、グリフィンの計算法により求めた。
得られた各土壌浄化剤組成物について、以下の方法によりモデル重油汚染土壌の洗浄試験を行い、各土壌浄化剤組成物の洗浄性及び通液性を評価した。結果を表4〜6に併せて示す。
【0046】
<モデル重油汚染土壌の洗浄試験>
−モデル重油汚染土壌−
6号珪砂に、C重油洗浄性試験の場合にはC重油を汚染土壌中に8質量%となるように添加、攪拌混合したものを、A重油洗浄性試験の場合にはA重油を汚染土壌中に8質量%となるように添加、攪拌混合したものを、それぞれモデル重油汚染土壌として使用した。C重油及びA重油は新日本石油(株)より入手した。
[使用したA重油]
密度(15℃):0.8681(g/cm
引火点(ペンスキーマルテンス式):95.5℃
流動点:−5.0℃
動粘度(50℃):3.196(mm/s)
水分:0.05(体積%)
目詰まり点:−4(℃)
総発熱量:44920(J/g)
蒸留(90%):354℃
[使用したC重油]
密度(15℃):0.9544(g/cm
引火点(ペンスキーマルテンス式):116.0℃
流動点:−10.0℃
動粘度(50℃):134(mm/s)
水分:0.1(体積%)
総発熱量:43110(J/g)
【0047】
−土壌重油汚染率の測定(洗浄性評価)−
調製したモデル重油汚染土壌50gを、円柱カラム21(内径3cm、長さ4cm)に充填し、図2のように装置を設定した。土壌を封入するカラムとしては前記円柱カラム21を使用し、チューブとしてはシリコンチューブ22(内径3mm)を使用した。受け槽としては、500mlビーカー23を使用した。土壌浄化剤組成物を、シリコンチューブ22を通じて円柱カラム21の下入り口から注入した。この際、カラム出口に取り付けたチューブ出口から減圧吸引して、チューブ出口までを液封した。その後、モデル重油汚染土壌に、土壌浄化剤組成物を流速1ml/min(温度25℃)となるように、図2に示す水位差を調整して流通させた。その後、円柱カラム21の上出口からシリコンチューブ22を通じて、洗浄廃液を回収した。
カラム内に土壌浄化剤組成物を合計300ml通液させた後に、さらに純水100mLを通液させて土壌浄化剤組成物をすすいだ。純水流通終了後、洗浄土壌をカラムからシャーレに回収し、室温で風乾した。その土壌から(株)堀場製作所 脂肪抽出装置 B−811型を用いてヘキサン150mlにて残存重油を2時間かけて抽出した。ソックスレー抽出後のヘキサン層からヘキサン分を加熱して蒸発除去し、その残分として抽出された油分重量(X(g))を測定した。洗浄土壌の土壌重油汚染率(質量%)は下記のように算出した。
モデル重油汚染土壌中の土壌分重量Y(g)=50×(100−8)/100=46
土壌重油汚染率(質量%)=X/(46+X)×100
A重油、C重油それぞれのモデル重油汚染土壌で前記洗浄試験を行なって得た洗浄土壌について土壌重油汚染率を測定し、その値をもって洗浄性を評価した(表4〜6のA重油洗浄性とC重油洗浄性)。
【0048】
−通液性評価−
前記洗浄性評価の試験の際に、土壌浄化剤組成物を流速1ml/min(温度25℃)で通液させるために要した水位差(cm)を測定した。なお、水位差が小さい程、通液性に優れた土壌浄化剤組成物であるということができる。
【0049】
<ミセルサイズの測定>
ミセルサイズの測定は、動的光散乱光度計DLS8000(大塚電子製)を用いて、土壌浄化洗浄剤の流体力学的半径Rhを測定した。測定条件は、サンプル1質量%水溶液に調製し、光源はアルゴンレーザー(488nm)を使用した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
表4〜6の結果から、(A)特定のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B)有機アミン化合物とを含む実施例1〜19の土壌浄化剤組成物は、前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくともいずれかを含まない比較例1〜5の土壌浄化剤組成物に比べ、重油の洗浄性、特にC重油の洗浄性に優れた土壌浄化剤組成物であることがわかった。また、実施例1〜19の土壌浄化剤組成物は、土壌中での通液性にも優れ、中でも、実施例16〜19の土壌浄化剤組成物はミセルサイズが小さく、土壌中での通液性により優れた土壌浄化剤組成物であることがわかった。したがって、実施例1〜19の土壌浄化剤組成物は、土壌を攪拌せずに現位置で洗浄を行う、薬剤注入工法などを利用した土壌浄化方法にも好適であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の土壌浄化剤組成物は、油類によって汚染された土壌、特に重油等の石油系化合物、中でもC重油に汚染された土壌の洗浄性に優れることから、様々な場面における土壌浄化(例えば、ガソリンスタンドや、工場の敷地跡地などの土壌浄化)に好適に利用可能である。中でも、本発明の土壌浄化剤組成物は、機械的攪拌力を加えなくとも高い洗浄力を示し、また、土壌中での通液性にも優れることから、原位置浄化工法の一種である薬剤注入工法への使用に、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の土壌浄化剤組成物を用いた薬剤注入工法の好適な一例を示す説明図である。
【図2】図2は、実施例において本発明の土壌浄化剤組成物の洗浄性及び通液性の評価に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0059】
100 浄化システム
A 地下水の流れ
1 不飽和層(非帯水層)
2 飽和層(帯水層)
3 有機物層(汚染層)
4 地下水位
5 注入井戸
6 揚水井戸
7 薬剤混合供給装置
8 揚水ポンプ
9 油水分離槽
21 円柱カラム
22 シリコンチューブ
23 500mlビーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)下記一般式(1)で表される化合物、及び、下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかと、(B)有機アミン化合物とを含有することを特徴とする土壌浄化剤組成物。
−O−(AO)−H (1)
−CO−(AO)−O−R (2)
ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数であって、2〜8の数を示す。
【請求項2】
更に、(A2)下記一般式(3)で表される化合物、及び、下記一般式(4)で表される化合物の少なくともいずれかを含有する請求項1に記載の土壌浄化剤組成物。
−O−(AO)−H (3)
−CO−(AO)−O−R (4)
ただし、前記一般式(3)及び前記一般式(4)中、R及びRはそれぞれ炭素数8〜16の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、mはAOの平均付加モル数であって、12〜20の数を示す。
【請求項3】
更に、(C)アニオン性界面活性剤を含有する請求項1から2のいずれかに記載の土壌浄化剤組成物。
【請求項4】
(C)アニオン性界面活性剤が、硫酸エステル塩、及び、スルホン酸塩の少なくともいずれかである請求項3に記載の土壌浄化剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−132905(P2009−132905A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284619(P2008−284619)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPOコーポレーション (130)
【Fターム(参考)】