説明

土木・建設用繊維集合体

【課題】 二酸化炭素発生量を低減できるなど環境に優しく、かつ石油系由来のポリマーを使用した製品と比較してバイオマス由来のポリマーを使用した製品が劣る耐摩耗性等の欠点を解消できる土木・建設用繊維集合体を提供する。
【解決手段】 横断面形状が芯鞘形状を呈し、鞘部が石油系由来のポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーからなる複合繊維で構成されている土木・建設用繊維集合体。複合繊維の鞘部はポリエチレンテレフタレート、芯部はポリ乳酸であることが好ましい。土木・建設用繊維集合体の具体例としては、織物で形成された土のう、編地で形成された陸上ネット及び安全ネット等がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリマーを一成分とする複合繊維で構成された土木・建設用繊維集合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の合成繊維は、その大部分が石油などの限りある貴重な化石資源を原料としているが、近年、化石資源はその資源不足が懸念されるだけでなく、二酸化炭素発生量についても社会に大きな影響を与えている。二酸化炭素固定化は地球温暖化防止に効果があることが期待され、特に二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書に対応するために、二酸化炭素固定化物質は非常に注目度が高く、バイオマス由来物質の積極的な使用が望まれている。
【0003】
バイオマス由来の合成繊維や合成樹脂を燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、重要視する傾向となっている。しかしながら、バイオマス由来の合成繊維の多くは、耐摩耗性が従来の汎用合成繊維よりも劣っている。
【0004】
また、石油系由来のポリマーとバイオマス由来のポリマーからなる複合繊維については、ポリ乳酸系樹脂を芯部に、芳香族ポリエステル系樹脂を鞘部に配した複合繊維が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらは原糸に関するもので、具体的な用途については詳細が記載されておらず、各用途についての要求特性についても開示されていない。
【0005】
一方、土木・建設用繊維集合体については、その形態や縫製方法について各種のものが開示されている(例えば特許文献4〜6参照)。しかし、これらの繊維集合体にはいずれも一般の合成繊維が使用されており、環境に配慮されたものではない。
【0006】
また、バイオマス系の繊維を使用して土木・建設用繊維集合体を作製する方法についても開示されている(例えば特許文献7、8参照)。しかし、これらの繊維集合体には、ポリ乳酸繊維が用いられているので耐摩耗性が不良であり、環境面に配慮し、かつ耐摩耗性にも優れた土木・建設用繊維集合体は未だ提案されていない。
【特許文献1】特開2004−353161号公報
【特許文献2】特開2005−187950号公報
【特許文献3】特開2005−232627号公報
【特許文献4】特開平11−50428号公報
【特許文献5】特開2004−257151号公報
【特許文献6】特開2005−154982号公報
【特許文献7】特開2004−183173号公報
【特許文献8】特開2000−129646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みて行われたもので、従来の石油系由来のポリマーだけからなる合成繊維ではなく、バイオマス由来のポリマーを少なくとも一部に含有した複合繊維を使用することで、二酸化炭素発生量を低減できるなど環境に優しく、かつ石油系由来のポリマーを使用した製品と比較してバイオマス由来のポリマーを使用した製品が劣る耐摩耗性等の欠点を解消できる土木・建設用繊維集合体を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、横断面形状が芯鞘形状を呈しており、鞘部が石油系由来のポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーで構成される複合繊維を用いた土木・建設用繊維集合体は、耐摩耗性が優れていることを見出して本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)横断面形状が芯鞘形状を呈し、鞘部が石油系由来のポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーからなる複合繊維で構成されていることを特徴とする土木・建設用繊維集合体。
(2)複合繊維の鞘部がポリエチレンテレフタレート、芯部がポリ乳酸であることを特徴とする上記(1)記載の土木・建設用繊維集合体。
(3)繊維集合体が織物で形成された土のうであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の土木・建設用繊維集合体。
(4)織物の下記式(A)に示すカバーファクター(CF)が1000以上であることを特徴とする上記(3)記載の土のう。
カバーファクター(CF)=Td・(Ts/ρt)1/2+Yd・(Ys/ρy)1/2 …(A)
ただし、
Td:経織密度(本/2.54cm)
Yd:緯織密度(本/2.54cm)
Ts:経糸繊度(デシテックス)
Ys:緯糸繊度(デシテックス)
ρt:経糸材料の比重(g/cm)
ρy:緯糸材料の比重(g/cm)
(5)繊維集合体が編地で形成された陸上ネットであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の土木・建設用繊維集合体。
(6)挿入糸とループ糸からなるラッセル編地からなり、前記挿入糸とループ糸の繊度比(挿入糸繊度/ループ糸繊度)が1.0以上であることを特徴とする上記(5)記載の陸上ネット。
(7)繊維集合体が編地で形成された安全ネットであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の土木・建設用繊維集合体。
(8)挿入糸とループ糸からなるラッセル編地からなり、前記挿入糸とループ糸の繊度比(挿入糸繊度/ループ糸繊度)が1.0以上であることを特徴とする上記(7)記載の安全ネット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土木・建設用繊維集合体は、芯部がバイオマス由来のポリマーで形成された複合繊維を使用しているため、従来の石油系由来のポリマーからなる合成繊維のみで構成されたものより、製造から廃棄の段階で発生する二酸化炭素量が低減されて環境に優しく、かつ、バイオマス由来のポリマー単独の繊維を用いた繊維集合体より耐摩耗性等の物性を向上させることができる。
【0011】
したがって、本発明によれば、バイオマス由来のポリマーを一部に使用して環境面に配慮した複合繊維を使用したにもかかわらず、耐摩耗性等の物性が良好で、土のう、陸上ネット、安全ネット等の用途に好適な土木・建設用繊維集合体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の土木・建設用繊維集合体は、鞘部が石油系由来のポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーからなる芯鞘型の複合繊維で構成されるものである。
【0013】
まず、本発明で用いる芯鞘型の複合繊維の鞘部を構成する石油系由来のポリマーは、溶融紡糸が可能なものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、石油由来の1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とからなるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などのポリアルキレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11及びナイロン12に代表されるポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンに代表されるポリ塩化ポリマー、ポリ4フッ化エチレン並びにその共重合体、ポリフッ化ビニリデン等に代表されるフッ素系繊維等が挙げられる。これらの中では、低コストであるポリエステルやポリアミド系ポリマーが好ましい。また、バイオマス由来のポリマーとしては脂肪族ポリエステルが多いため、相溶性を考慮するとポリエステル系のものがより好ましく、コストや取り扱い性も考慮すると、特にPETが好ましい。
【0014】
また、粘度、熱的特性、相溶性を鑑みてポリエステル系ポリマーには、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールや、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトン等の脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
【0015】
次に、本発明で用いる芯鞘型の複合繊維の芯部を構成するバイオマス由来のポリマーについても、溶融紡糸が可能なものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ポリ乳酸(PLA)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とからなるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)やポリブチレンサクシネート(PBS)などバイオマス由来のモノマーを化学的に重合してなるポリマー類や、ポリヒドロキシ酪酸等のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)等の微生物生産系ポリマーを挙げることができる。これらの中では、耐熱性が安定し、比較的量産化が進んでいるポリ乳酸が好ましい。
【0016】
ポリ乳酸としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリD,L−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体とすることが好ましい。そして、ポリ乳酸は、上記のようにL−乳酸とD−乳酸が単独で用いられているもの、もしくは併用されているものであるが、中でも融点が120℃以上、融解熱が10J/g以上であることが好ましい。
【0017】
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリL−乳酸やポリD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーになると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維を得ることが困難になり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性に劣ったものとなりやすいため好ましくない。
【0018】
そこで、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが82/18以上のものが好ましく、中でも90/10以上、さらには95/5以上のものが好ましい。また、ポリ乳酸の中でも、上記したようなポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)は融点が200〜230℃と高いため、摩擦熱等の影響を受け難く、特に好ましい。
【0019】
ポリ乳酸とヒドロキシカルボン酸の共重合体である場合は、ヒドロキシカルボン酸の具体例としてはグリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。中でもヒドロキシカプロン酸又はグリコール酸を用いることがコスト面からも好ましい。ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体の場合は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとしては、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。このようにポリ乳酸に他の成分を共重合させる場合は、ポリ乳酸を80モル%以上とすることが好ましい。ポリ乳酸が80モル%未満になると、共重合ポリ乳酸の結晶性が低くなり、融点が120℃未満、融解熱が10J/g未満となりやすい。
【0020】
また、ポリ乳酸の分子量としては、分子量の指標として用いられるASTMD−1238法に準じ、温度210℃、荷重2160gで測定したメルトフローレートが、1〜100(g/10分)であることが好ましく、より好ましくは5〜50(g/10分)である。メルトフローレートをこの範囲とすることにより、強度、湿熱分解性、耐摩耗性が向上する。また、ポリ乳酸の耐久性を高める目的で、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物等の末端封鎖剤を添加してもよい。
【0021】
上記したポリ乳酸には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、耐光剤、耐候剤、香料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加してもよい。
【0022】
上記した石油系由来のポリマーやバイオマス由来のポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて各種充填剤、増粘剤、結晶核剤として効果を示す公知の添加剤を添加することができる。具体的にはカーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、ベヘン酸アミド等の脂肪族アミド系化合物、脂肪族尿素系化合物、ベンジリデンソルビトール系化合物、架橋高分子ポリスチレン、ロジン系金属塩や、ガラス繊維、ウィスカー等が挙げられる。これらは、そのまま添加してもよいし、ナノコンポジットとして必要な処理の後、添加することもできる。価格を抑え、良好な物性バランスを達成するためには、無機の充填剤の配合が好ましい。また、結晶核剤の配合も好ましい。
【0023】
また、石油系由来のポリマーやバイオマス由来のポリマーには、必要に応じて、顔料、染料等の着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合することができる。
【0024】
さらに、上記の石油系由来のポリマーやバイオマス由来のポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて可塑剤を配合することもできる。可塑剤を配合することで、加熱加工時、特に押出加工時の溶融粘度を低下させ、剪断発熱等による分子量の低下を抑制することが可能となり、場合によっては結晶化速度の向上も期待できる。可塑剤の種類は、特に限定されるものではないが、バイオマス由来のポリマー、特に脂肪族系ポリエステルの可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤などが好ましく、ポリエステルとの相溶性に優れる点からエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。
【0025】
具体例として、エーテル系可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。また、エステル系可塑剤としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール、また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。また、上記ポリエーテルとポリエステルの2種以上の組み合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマー等、またはこれらのホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられる。さらに、エステル化されたヒドロキシカルボン酸等も用いることができる。上記の可塑剤は、必要に応じて1種もしくは複数種を用いることができる。
【0026】
また、石油系由来のポリマー、特にPET等のポリエステルの可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤等が好ましい。
【0027】
本発明の土木・建設用繊維集合体を構成する複合繊維は、横断面が芯鞘形状を呈しており、鞘部が上記した石油系由来のポリマーで形成されると共に芯部が上記したバイオマス由来のポリマーで形成されていることが必要である。このような複合繊維とすることで、バイオマス由来のポリマーを少なくとも一部、すなわち芯部に含有するので、製造から廃棄の段階で発生する二酸化炭素量が低減されて環境に優しいものである。また、芯部を石油系由来のポリマーで形成される鞘部で囲んだ複合繊維であるため、石油系由来ポリマーの繊維と比較してバイオマス由来ポリマーの繊維が劣る耐摩耗性等の欠点を解消することができる。このような芯鞘型の複合繊維は、公知の方法によって製造することができる。
【0028】
上記した複合繊維はその芯部と鞘部とがほぼ同心円状に配置された同心芯鞘型の複合繊維であることが好ましく、このような構成とすることで、鞘部に石油系由来のポリマーを均一に配することができる。芯部と鞘部が偏心状に存在すると、鞘部の石油系由来のポリマー層に薄い箇所ができるが、このポリマー層が薄い箇所において、耐摩耗性が不良となりやすい。
【0029】
また、上記した芯鞘型の複合繊維の芯部と鞘部との比率としては、芯/鞘の質量比率で20/80〜80/20が好ましい。芯/鞘の質量比率が20/80未満になるとバイオマス由来のポリマーの比率が少なくなり、二酸化炭素の低減効果等のバイオマス由来のポリマーを用いるメリットが少なくなるため好ましくない。また、芯/鞘の質量比率が80/20を超えると、本発明の目的とする耐摩耗性の向上が得られ難くなるため好ましくない。なお、複合繊維の形態は長繊維、短繊維を用いた紡績糸のいずれでもよいが、耐摩耗性を向上させるには長繊維が好ましい。
【0030】
本発明の土木・建設用繊維集合体の形態は、特に限定されるものではなく、例えば織物、編地、不織布等の布帛が挙げられるが、上記した芯鞘型の複合繊維のみで構成されるものほか、上記の複合繊維と、例えばナイロン6やナイロン66などのポリアミド、PETやPBT、PTTなどの芳香族ポリエステル等の繊維の中から選ばれた1種以上の繊維とで構成されるものでもよい。
【0031】
しかし、製造から廃棄の段階で発生する二酸化炭素量を低減できる環境考慮型の繊維集合体とするためには、上記の複合繊維を50質量%以上、特に70質量%以上使用したものが好ましい。
【0032】
本発明の土木・建設用繊維集合体は、用途によってコ−ティング等の付帯加工を施してもよいが、コーティングを施す場合、従来から使用されている基布を構成するポリマーを複合繊維鞘部の石油系由来のポリマーとして使用することにより、従来とほぼ同一の処理で製品を作製できるという利点がある。
【0033】
また、コーティングにおいても、環境面からバイオマス由来のポリマーを用いることも好ましく、ポリ乳酸、PTTやPBS等のバイオマス由来のモノマーを化学的に重合してなるポリマー類やポリヒドロキシ酪酸等のPHA等の微生物生産系のものを有機溶媒で溶解したものやエマルジョン化した溶液によるコーティングがより好ましい。
コーティング方法は特に限定されるものではなく、具体的にはナイフコーティング法、ディッピング法及びラミネート法等を採用することができる。
【0034】
本発明の土木・建設用繊維集合体の具体的な用途としては、例えば割栗石や塊等を投入して使用される根固め工法用袋材、浚渫汚泥等の脱水に使用される袋体、土のう、軟弱地盤用保護剤、補強グリッド材、各種排水材、侵食防止材、遮水シート及び各部材に付属するネット、ロープやくくり紐、安全ネット、陸上ネット等が挙げられる。
【0035】
上記した土のうには、一般に土砂などを詰め込まれる一般土のう、大型土のうや高吸水性物質を詰め込まれる水のう、肥料やピートモス等が詰め込まれる植生土のうやコンクリート等が詰め込まれる土木工事用土のう等があるが、これらの土のうは織物で形成されることが好ましい。
【0036】
土のうを形成する織物については特に限定されるものではなく、土のうの用途に応じて種々の形態をとることができ、織物の組織についても原糸や使用される状況によって適時選択することが可能である。しかしこの織物の下記(A)で示すカバーファクター(CF)は1000以上であることが好ましい。
カバーファクター(CF)=Td・(Ts/ρt)1/2+Yd・(Ys/ρy)1/2 …(A)
ただし、
Td:経織密度(本/2.54cm)
Yd:緯織密度(本/2.54cm)
Ts:経糸繊度(デシテックス)
Ys:緯糸繊度(デシテックス)
ρt:経糸材料の比重(g/cm)
ρy:緯糸材料の比重(g/cm)
カバーファクター(CF)が1000未満になると、土のうを構成する布地としては空隙率が大きすぎるため、内部に投入する土砂や高分子吸収剤もしくはコンクリート等が抜け出しやすくなるだけでなく、織物の目がずれやすくなる。
【0037】
また、土木・建設用繊維集合体である陸上ネットとは、ゴルフ場、ゴルフ練習場、各種運動場等に設置して使用されるものであり、安全ネットとは、建築工事や土木工事等で使用されるものであり、陸上ネットや安全ネットは編地で形成するのが好ましい。これらのネットを編地で形成すると柔軟性を付与できるだけでなく、組織による伸びが発生するため、これらのネットに要求されるタフネス等の優れた物性を付与することができる。
【0038】
これらのネットを形成する編地についても特に限定されるものではなく、産業資材用に使用される編組織を採用することができ、より具体的にはラッセル編、無結節編及び有結節編等を挙げることができる。編組織は、原糸や使用される状況下によって適時選択することが可能であるが、結節部に応力が集中する有結節編以外のラッセル編や無結節編地がより好ましい。直線強力が求められる際は無結節編が好ましく、使用される状況が過酷でネットの一部が破損されるような場合や、原糸の直線強力は比較的弱いが、結節強力が良好な場合等はループで構成されるラッセル編を適用する方が好ましい。
【0039】
挿入糸とループ糸からなるラッセル編地は、挿入糸とループ糸の繊度比(挿入糸繊度/ループ糸繊度)が1.0以上であることが好ましい。繊度比が1.0未満になると、例えば同じ強度の原糸を使用した場合、編地強力は満足するが、挿入糸が切断される以上の強力部分は不要となる。すなわち、ループ糸の不要な部分は編地の質量を大きくすることになる。現場作業者の高齢化が進み、資材の軽量化が求められている昨今においては現状にそぐわなくなる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における各物性は、次の方法にて測定、評価した。
(1)ポリ乳酸の融点(℃)、融解熱(J/g)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を使用し、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
(2)ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)
超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液との等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiralOA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(3)繊維繊度(dtex)
JIS L−1013正量繊度に準じて測定した。
(4)強度(繊維)(cN/dtex)
JIS L−1013 引張強さ及び伸び率の標準時試験に準じて測定した。
(5)強力((編地)(N)
ラッセル編について編構成トータル繊度5,000dtex未満の編地はJIS L 1043の6.11の6.11.1(a)法に準じて、5,000dtex以上の編地はJIS L1043の6.11の6.11.1(b)法に準じて、200mm/分の引張速度で測定を行った。無結節編地(貫通型)は原糸(直線)方向にそくして他方向の編糸を切断し(他方向の編糸長は1cmに切断する)1節1脚法で300mm/分の引張速度で測定を行った。
【0041】
(6)耐摩耗性
JIS D−4604の耐摩耗性試験に準じて試験を行った。試料(編地又は織物)の一端に試料の強力値の1.25%の荷重を吊るし、他端を丸やすりの上に渡した後、振動ドラムに固定した。次いで、振動ドラムをクランクとクランクアームによって往復運動させ、試料を繰り返し毎分30±1回として5,000回往復摩耗させ、試料の外観を観察した。
(7)実施試験1(安全ネット及び陸上ネット用)
編地端部をロープをくぐらせながら3重に縫製し、仕立て寸法が4m×4mとなるようにした。仕立て後のネットの質量を確認し、このネットを15%(60cm)の垂れを持たせて水平方向に鉄枠に展張して半年間暴露を行い、鉄枠とのすれ状態や全体の状況を観察した。
【0042】
(8)実施試験2(土木・建設用)
4.7×3.2mに仕立てた土木用資材には8トン分の人頭大の割栗石を、3.0×2.0mに仕立てた土木用資材には2トン分の人頭大の割栗石をそれぞれ投入して1m高さから2回落下させ、土木用資材の破損状況を観察した。
(9)実施試験3(土のう用)
土のう用生布を巾50cm×122cmに裁断し、中央部から折り曲げ、両端部を縫製して48cm×60cmの袋体を作製した。この袋体内に20kgfの土砂をいれて2m上方から10回自由落下させ、落下後の状態を目視で観察した。
(10) 実施試験4(土のう用)
JIS Z1651に準じて、丸型で2点ベルト吊りの周辺直径1200mm、高さ1200mmのフレキシブルコンテナを作製し、これを大型土のうとした。この袋体内に2000kgfの土砂をいれ、2m上方から1回自由落下させ、落下後の状態を目視で観察した。
【0043】
(実施例1)
ポリ乳酸(PLA)として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/Dが98.5/1.5のものを、芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸を15モル%共重合した共重合PETを用い、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、共重合PETが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるように配して芯/鞘の質量比率を50/50とし、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた複合繊維は、繊度1560dtex140フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.3cN/dtex、切断伸度28.9%であった。

次いで、得られた複合繊維を挿入糸とループ糸に用い、9Gのラッセル編機で編の構成が13本格になるように編地を作製した(1辺10mm)。
【0044】
(実施例2)
実施例1で得られた複合繊維を使用し、無結節編機を用いて10本を撚り合わせた無結節編地を作製した(1辺25mm)。
(実施例3)
実施例1と同様な方法で溶融紡糸し、丸断面形状で繊度1560dtex140フィラメントと1670dtex140フィラメントの2種類の複合繊維を得た。これらの複合繊維はいずれも引張強力が4.3cN/dtex、切断伸度が28.9%であった。

次いで、1560dtex140フィラメント糸を挿入糸に、1670dtex140フィラメント糸をループ糸に用い、9Gのラッセル編機で編の構成が13本格になるように編地を作製した(1辺10mm)。
【0045】
(比較例1)
実施例1で使用したポリ乳酸のみを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られたポリ乳酸繊維は、繊度1430dtexの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度30.9%であった。
次いで、得られた繊維を用いて実施例1と同様にして製編し、編地を得た。
(比較例2)
比較例1で使用した繊維を用いて実施例2と同様にして製編し、編地を得た。
(比較例3)
実施例1で使用した共重合PETのみを融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた繊維は、繊度1430dtexの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度27.8%であった。
次いで、この繊維を用いて実施例1と同様にして製編し、編地を得た。
【0046】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた編地と、この編地を陸上ネット及び安全ネットとして評価した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜3で得られた編地は、耐摩耗性等、全ての評価項目が満足できるもので、陸上ネット及び安全ネット用として優れたものであり、しかもバイオマス由来のポリマーであるポリ乳酸を用いた複合繊維を使用しているため、環境にも優しい素材であった。また、挿入糸とループ糸の繊度比が1である実施例1の編地は、この繊度比が0.93である実施例3の編地と強力はほぼ同等であるが、総重量は約5%も軽いものであった。
一方、比較例1、2で得られた編地は耐摩耗性が不良であり、実用に耐え得るものではなかった。また、石油系由来のポリマーである共重合PETからなる繊維を使用した比較例3の編地は、耐摩耗性等の評価項目はよいが、環境に優しい素材ではない。
【0049】
(実施例4)
ポリ乳酸として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/Dが98.5/1.5のものを用い、芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸を15モル%共重合した共重合PETを用い、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、共重合PETが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるように配し、芯/鞘の質量比率を50/50として、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた複合繊維は、繊度1430dtex210フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.3cN/dtex、切断伸度28.9%であった。
【0050】
次いで、この複合繊維を用いて9Gのラッセル編機で編の構成が13本格になるように編地を作製した(1辺25mm)。この編地を3.0m×4.0mに裁断したものを2枚重ねにして、約3.0×2.0mになるように2つ折りにし、2つ折り部に対向する辺を開口部として残して側部の2辺を縫合し、巾着袋になるように束ねて結縛した。次に、開口部の全周に沿って、開口部より3目下部の編目に、口縛りロープとして太さ6mmのナイロンロープ(引張強力:0.75t)を挿通した。また、同様に開口部の全周に沿って、開口部から5目下部の編目に、吊りロープとして太さ22mmのポリエステルロープ(引張強力:6.3t)を挿通し、土木・建設用資材を得た。
【0051】
(実施例5)
実施例4で得られた複合繊維を使用し、9Gのラッセル編機で編の構成が103本格になるように編地を作製した(1辺75mm)。この編地を4.7m×6.4mに裁断したものを2枚重ねにして、約4.7×3.2mになるように2つ折りにし、2つ折り部に対向する辺を開口部として残して側部の2辺を縫合し、巾着袋になるように束ねて結縛した。
次いで、開口部の全周に沿って、開口部より3目下部の編目に、口縛りロープとして太さ6mmのナイロンロープ(引張強力:0.75t)を挿通した。また、同様に開口部の全周に沿って、開口部から5目下部の編目に、吊りロープとして太さ30mmのポリエステルロープ(引張強力:12.0t)を挿通し、土木・建設用資材を得た。
【0052】
(実施例6)
実施例4で得られた複合繊維を使用し、無結節編機を用いて10本を撚り合わせた無結節編地を作製した(1辺25mm)。得られた編地を用い、実施例10と同様にして縫製し、土木・建設用資材を得た。
(実施例7)
実施例4で得られた複合繊維を使用し、9Gのラッセル編機で編の構成が5本格になるように編地を作製した(1辺25mm)以外は、実施例10と同様にして土木・建設用資材を作製した。
【0053】
(比較例4)
実施例4で使用したポリ乳酸のみを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られたポリ乳酸繊維は、繊度1430dtexの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度30.9%であった。
得られたポリ乳酸繊維を用い、実施例4と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
(比較例5)
比較例4で得られたポリ乳酸繊維を用い、実施例5と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
(比較例6)
比較例4で得られたポリ乳酸繊維を用い、実施例6と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
【0054】
(比較例7)
実施例4で使用した共重合PETのみを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた共重合PET繊維は、繊度1430dtexの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度27.8%であった。
得られた共重合PET繊維を用い、実施例4と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
(比較例8)
比較例7で得られた共重合PET繊維を用い、実施例5と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
(比較例9)
比較例7で得られた共重合PET繊維を用い、実施例6と同様にして製編・縫製し、土木・建設用資材を得た。
【0055】
実施例4〜7及び比較例4〜9で得られた土木・建設用資材の評価結果を表2、3に示す。
【0056】
【表2】


【表3】

【0057】
表2、3から明らかなように、実施例4〜6で得られた土木・建設用資材は、耐摩耗性等、全ての評価項目が満足できるものであり、また、実施例7で得られた土木・建設用資材は、編地の強力値がやや低かったが、土木・建設用資材としての実用性は有するものであった。また、これらの資材は、バイオマス由来のポリマーであるポリ乳酸を用いた複合繊維を使用しているため、環境にも優しい素材であった。
一方、比較例4〜6で得られた土木・建設用資材は耐摩耗性が不良であり、実用に耐え得るものではなかった。また、石油系由来のポリマーである共重合PETからなる繊維を使用した比較例7〜9の土木・建設用資材は、耐摩耗性等の評価項目はよいが、環境に優しい素材ではない。
【0058】
(実施例8)
ポリ乳酸として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/Dが98.5/1.5のものを用い、芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸を15モル%共重合した共重合PETを用い、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行った。このとき、共重合PETが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるように配し、芯/鞘の質量比率を50/50として、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた複合繊維は、繊度280dtex48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.3cN/dtex、切断伸度28.9%であった。

この複合繊維を経糸と緯糸に用い、レピア織機にて経緯共に41本/2.54cmの織密度で製織し、土のう用の織物を得た。この織物のカバーファクター(CF)は1192であった。(複合繊維の質量比は50/50なので、繊維の比重は(1.27+1.38)/2=1.325で計算を行った。)
【0059】
(実施例9)
ポリ乳酸として実施例8で使用したものを用い、芳香族ポリエステルとして、カーボンブラックを1.5%練りこんだ融点217℃のイソフタル酸15モル%共重合した共重合PETを用いて、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給し、溶融紡糸を行った。このとき、共重合PETが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるように配し、芯/鞘の質量比率を50/50として、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた複合繊維は、繊度1670dtex192フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度30.1%であった。

この複合繊維を経糸と緯糸に用い、レピア織機にて経緯共に22本/2.54cmの織密度で製織し、土のう用の織物を得た。この織物のカバーファクター(CF)は1562であった。
【0060】
(実施例10)
実施例8で得られた複合繊維を経糸と緯糸に用い、レピア織機にて経緯共に32本/2.54cmの織密度で製織し、土のう用の織物を得た。この織物のカバーファクター(CF)は930であった。
(比較例10)
実施例8で使用したポリ乳酸のみを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られたポリ乳酸繊維は、繊度280dtex48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度は30.9%であった。
【0061】
得られたポリ乳酸繊維を用い、実施例8と同様にして製織し、土のう用の織物を得た。この織物のカバーファクター(CF)は1218であった。
(比較例11)
実施例8で使用した共重合PETのみを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度240℃で溶融紡糸を行った。得られた共重合PET繊維は、繊度280dtex48フィラメントの丸断面形状のものであり、引張強力は4.5cN/dtex、切断伸度は27.8%であった。
得られた共重合PET繊維を用い、実施例8と同様にして製織し、土のう用の織物を得た。この織物のカバーファクター(CF)は1168であった。
【0062】
実施例8〜10及び比較例10、11で得られた土のう用織物の評価結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4から明らかなように、実施例8、9で得られた土のう用織物は、耐摩耗性等、全ての評価項目が満足できるものであり、また、実施例10で得られた土のう用織物は、カバーファクター(CF)がやや小さかったが、土のうとしての実用性は有するものであった。また、これらの土のう用織物は、バイオマス由来のポリマーであるポリ乳酸を用いた複合繊維を使用しているため、環境にも優しい素材であった。
一方、比較例10で得られた土のう用織物は耐摩耗性が不良であり、実用に耐え得るものではなかった。また、石油系由来のポリマーである共重合PETからなる繊維を使用した比較例11の土のう用織物は、耐摩耗性等の評価項目はよいが、環境に優しい素材ではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が芯鞘形状を呈し、鞘部が石油系由来のポリマー、芯部がバイオマス由来のポリマーからなる複合繊維で構成されていることを特徴とする土木・建設用繊維集合体。
【請求項2】
複合繊維の鞘部がポリエチレンテレフタレート、芯部がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1記載の土木・建設用繊維集合体。
【請求項3】
繊維集合体が織物で形成された土のうであることを特徴とする請求項1又は2記載の土木・建設用繊維集合体。
【請求項4】
織物の式(A)に示すカバーファクター(CF)が1000以上であることを特徴とする請求項3記載の土のう。
カバーファクター(CF)=Td・(Ts/ρt)1/2+Yd・(Ys/ρy)1/2 …(A)
ただし、
Td:経織密度(本/2.54cm)
Yd:緯織密度(本/2.54cm)
Ts:経糸繊度(デシテックス)
Ys:緯糸繊度(デシテックス)
ρt:経糸材料の比重(g/cm)
ρy:緯糸材料の比重(g/cm)
【請求項5】
繊維集合体が編地で形成された陸上ネットであることを特徴とする請求項1又は2記載の土木・建設用繊維集合体。
【請求項6】
挿入糸とループ糸からなるラッセル編地からなり、前記挿入糸とループ糸の繊度比(挿入糸繊度/ループ糸繊度)が1.0以上であることを特徴とする請求項5記載の陸上ネット。
【請求項7】
繊維集合体が編地で形成された安全ネットであることを特徴とする請求項1又は2記載の土木・建設用繊維集合体。
【請求項8】
挿入糸とループ糸からなるラッセル編地からなり、前記挿入糸とループ糸の繊度比(挿入糸繊度/ループ糸繊度)が1.0以上であることを特徴とする請求項7記載の安全ネット。


【公開番号】特開2008−184694(P2008−184694A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16458(P2007−16458)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】