土留め壁施工法
【課題】 高コスト化を抑制しながら高精度かつ強固な土留め壁を構築する。
【解決手段】 盛り土層を積層して次第に高く盛り上げられて形成される盛り土部5内に補強体14が多層に埋設され、これら補強体14が盛り土部5の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される各親杭10を高さ方向に対して多数位置で補強して当該親杭10の応力変位を抑制する。
【解決手段】 盛り土層を積層して次第に高く盛り上げられて形成される盛り土部5内に補強体14が多層に埋設され、これら補強体14が盛り土部5の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される各親杭10を高さ方向に対して多数位置で補強して当該親杭10の応力変位を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築した土留め壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留め壁は、一般に土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともにこれら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築され、所定の高さに盛り上げた盛り土を保持する。例えば山留め施工と称される工法は、斜面に沿って建設された道路や基礎地盤の支持力が弱い場所に沿って建設された道路の拡幅工事等に採用されて土留め壁を構築する工法である。山留め施工法としては、例えばレール、I型鋼、H型鋼等の親杭を土留め線に沿って互いに重ね合わせて打設して補強立壁を構築する親杭工法や、比較的重量の大きなプレキャストコンクリートパネル等のパネル体を隣り合って設置して補強立壁を構築するパネル工法等が実施されている。
【0003】
土留め壁においては、水平支持を有しない例えばH型鋼からなる自立型親杭の場合に、盛り土による壁面側からの圧力によって前方側に変形して曲げ応力が大きくなる。土留め壁においては、このために4m程度の高さの壁面が適用限界であり、前面から緊張力を負荷するアンカ材や背面から支持する控え杭等の補強材を併用する対応が図られる。しかしながら、かかる土留め壁も、工事コストが増加すること、アンカ材によるアンカ作用を効率的よく発揮させることが困難であること或いは補強材を設置するまでに投入される盛り土によって親杭が前方側に傾倒するといった問題が発生する。
【0004】
また、パネル工法においては、パネルを簡易に設置することが可能であり、振動や騒音の問題も低減されて比較的低コストの施工が可能である。しかしながら、かかるパネル工法においては、パネル自体の重量、盛り土の鉛直分力等により壁面部分の鉛直地盤反力が大きくなることから、パネルに対する支持力の小さな斜面や軟弱地盤地等では支持力不足や地盤沈下等が発生して適用することができないといった問題がある。
【0005】
山留め施工法としては、上述した親杭工法と一種のパネル工法とを組み合わせた工法である親杭横矢板工法も実施されている。親杭横矢板工法は、土留め線に沿って適宜の間隔で打設した親杭間に掘削に並行して負荷に応じて選択される木矢板、軽量鋼横矢板或いはコンクリート矢板等の矢板を組み合わせて土留めする工法である(例えば、特許文献1乃至特許文献3を参照)。親杭横矢板工法は、鋼矢板を並べて打設する鋼矢板工法等に比較して低コストであり、また地下埋設物処理が簡易であること、騒音や振動等の環境対策等に有効であるといった特徴を有している。
【0006】
【特許文献1】特公平6−99908号公報
【特許文献2】特開平9−95938号公報
【特許文献3】特開2005−201009公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された親杭横矢板工法は、横矢板と掘削面との間に発泡性裏込め材を充填して発泡段階で生じる膨張圧で地山からの土圧に対向させるようにする。かかる親杭横矢板工法においては、親杭と横矢板とによって掘削面側からの圧力を受けることから、大きな高さの擁壁工事に適用することはできない。また、かかる親杭横矢板工法においては、発泡性裏込め材を用いることからコスト高となるといった問題もある。
【0008】
また、特許文献2に開示された親杭横矢板工法は、各親杭間に多段に組み合わされる複数枚の横矢板どうしを複数本の鋼棒を挿通することによって互いに連結して強度の向上を図るようにしている。かかる親杭横矢板工法においては、鋼棒を貫通させるための複数個の貫通孔を形成した横矢板を用いるが、各横矢板が貫通孔を形成することによってコスト高となるとともに機械的強度も低下するといった問題がある。また、かかる親杭横矢板工法においては、例えば軟弱地盤等で施工が行われる場合に、各親杭が根入れ部の受動土圧不足によるヒービング現象が生じやすく、また盛り土からの圧力によって水平変位が生じやすいといった問題が解決されない。また、かかる親杭横矢板工法においては、変位が生じやすい親杭に各横矢板が支持されることから、それぞれに形成した貫通孔の軸線を一致させて鋼棒を貫通させる作業が極めて困難である。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された親杭横矢板工法は、親杭間に横矢板を組み合わせて構築した山留め壁が、各親杭間に跨って固定された横材と、この横材と山側土壌の間に配設されたアンカ部材とによって補強される。かかる親杭横矢板工法は、機械的強度の大きな山留め壁を構築することが可能であっても、横材とその取付のためにコスト高となり、また軟弱地盤や親杭の支持圧を充分に確保し得ない現場等の施工では、折角の横材やアンカ部材の機能が発揮されないといった問題もある。
【0010】
したがって、本発明は、簡易な施工により盛り土部の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される親杭の応力変位を抑制して強固な土留め壁を構築することを可能とする土留め壁施工法を提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかる土留め壁施工法は、土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて所定の高さに盛り土されてなる盛り土部を保持する土留め壁を構築する。土留め壁施工法は、土留め壁に対して、土砂の投入と転圧及び締め固めを行って各横矢板の上方部位を露出させる高さの盛り土層を形成する単位盛り土層形成工程と、横矢板或いは親杭の背面部に一端側を固定した補強体の自由端側を基礎面若しくは盛り土層形成工程により形成する単位盛り土層の表面上に敷設する補強体敷設工程とが繰り返し施される。土留め壁施工法は、単位盛り土層を積層形成して親杭と横矢板とにより構成される土留め壁により保持される所定高さの盛り土部が形成され、この盛り土部内に多層に埋設された補強体が各親杭を高さ方向に対して多段に補強する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる土留め壁施工法によれば、盛り土層を積層して次第に高く盛り上げられて形成される盛り土部内に補強体が多層に埋設され、これら補強体が盛り土部の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される各親杭を補強して当該親杭の応力変位を抑制する。土留め壁施工法によれば、各親杭の応力変位が抑制されることにより、強固な土留め壁を構築することが可能となる。土留め壁施工法によれば、軟弱地盤や充分な支持圧が確保することが困難な現場であっても補強体により盛り土の下層部形成時から各親杭を補強してその水平変位を抑制するとともに各横矢板の支持力や沈下の発生を解消して高精度かつ強固な土留め壁を構築することが可能である。土留め壁施工法によれば、新規な構成材や施工手順を不要とし、低規格の親杭或いは親杭間の間隔を広げて本数の削減を図ることが可能であることから工事費用が大幅に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として図面に示した傾斜面1に沿って設けられた道路2を拡幅する道路工事に実施されて掘削部位3に沿って土留め壁4を構築する土留め壁施工法について詳細に説明する。なお、土留め壁施工法は、かかる道路工事ばかりでなく、例えば軟弱地盤地等の基礎地盤の支持力が弱い場所や地下埋設物が輻輳しておりその回避処理が困難な場所或いは騒音や振動等の環境対策等が必要な場所での地下構造物の建設工事等のように盛り土部5を保持する土留め壁4を構築する場合にも有効に適用される。また、土留め壁施工法は、平地等に所定の高さで盛り上げた盛り土を保持する土留め壁4を構築する場合にも採用される。
【0014】
道路建設工事においては、詳細を後述するが、図1に示すように傾斜面1に沿って所定幅と深さで掘削が行われ、掘削部位3に土砂を投入して転圧・締め固めを行うことにより掘削部底面3A上に所定の高さの盛り土部5を形成する。道路建設工事においては、盛り土部5が、掘削部底面3A上に盛り土層5A〜5Uを所定の高さに多層に積層して構成される。道路建設工事においては、盛り土部5を詳細を後述する土留め壁施工法により土留め線6に沿って構築した土留め壁4(擁壁)によって保持する。道路建設工事においては、天端部の嵩上げや笠石7の設置等の付帯工事を行った後に、盛り土部5を含んで表面上に所定の舗装8を行って道路2を完成させる。
【0015】
土留め壁施工法は、後述するように土留め線6に沿って所定の間隔を以って打ち込んで立設した多数本の自立型親杭、例えばH型鋼10A〜10N(以下、個別に説明する場合を除いてH型鋼10と総称する。)と、隣り合うH型鋼10A、10B間にそれぞれ高さ方向に組み合わされる複数個の横矢板、例えばプレキャストコンクリートパネル11A〜11M(以下、個別に説明する場合を除いてコンクリートパネル11と総称する。)によって所定の高さを有する土留め壁4を構築する。土留め壁施工法においては、各コンクリートパネル11の背面側に、補強体、例えばジオテキスタイル14A〜14K(以下、個別に説明する場合を除いてジオテキスタイル14と総称する。)が、支持鋼管12A〜12K(以下、個別に説明する場合を除いて支持鋼管12と総称する。)と連結棒13A〜13K(以下、個別に説明する場合を除いて連結棒13と総称する。)を介してそれぞれ固定される。
【0016】
土留め壁施工法は、H型鋼10A、10B間にコンクリートパネル11を組み合わせた状態で、このコンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に組み合わせた支持鋼管12にジオテキスタイル14の一端側を巻き付けて連結棒13により固定する。土留め壁施工法は、H型鋼10A、10B間に支持鋼管12を介して一端部を固定したジオテキスタイル14の自由端側を下層に形成された盛り土部5上に敷き込み、このジオテキスタイル14上に上層の盛り土部5を形成する。土留め壁施工法は、盛り土部5内に多数個のジオテキスタイル14が多層に亘って埋め込まれるようにする。
【0017】
土留め壁施工法には、親杭としてH型鋼10ばかりでなく、従来山留め工事に一般的に用いられている例えばレールやI型鋼或いは鋼管杭等の適宜の杭部材を用いてもよい。土留め壁施工法においては、補強体として、ジオテキスタイル14に代えて例えばアンカプレート付き鋼棒や帯状鋼材等を用いてもよい。
【0018】
H型鋼10は、周知のように相対するフランジ部16F、16B間を全長に亘ってウエブ15で連結して断面H字状に形成された杭部材であり、ウエブ15の両側面に沿ってフランジ部16F、16Bに囲まれた空間部17R、17Lが全長に亘って構成される。土留め壁施工法においては、各H型鋼10が、図2に示すように隣り合うH型鋼10Aの空間部17RとH型鋼10Bの相対する空間部17Lとを互いに対向させ、土留め線6に沿って1.5m〜2.5m程度の間隔を以って傾斜面1に所定の深さに打ち込んで自立するようにして立設させる。
【0019】
H型鋼10は、従来と同様に盛り土部5から作用される圧力を受け止めて構築した土留め壁4を保持するいわゆる水平支持杭部材を構成するとともに、コンクリートパネル11の取付部材を構成する。H型鋼10は、後述する補強体により高さ方向に対して多点で補強されて応力変位の発生が抑制されて強固な土留め壁4が構築されるようにする。
【0020】
コンクリートパネル11は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい長さと空間部17R、17Lの幅よりもやや小さな厚みに形成される。コンクリートパネル11は、盛り土部5を保持するとともに、各ジオテキスタイル14のアンカ作用によりH型鋼10を補強する作用も奏する。土留め壁施工法においては、吊り上げられた各コンクリートパネル11が、H型鋼10A、10Bの上方から両端部をそれぞれ相対する空間部17R、17Lに嵌合させて落とし込まれるようにして高さ方向に順次組み合わされる。なお、コンクリートパネル11については、プレキャストコンクリートパネルに限定されるものでは無く、現場で形成されたコンクリートパネルや波板鋼板等の適宜のパネルを用いることも可能である。
【0021】
支持鋼管12は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ同等の長さと、H型鋼10のフランジ部16F、16Bとコンクリートパネル11との間に構成される間隙よりもやや小径とされる。支持鋼管12は、隣り合うH型鋼10A、10B間にコンクリートパネル11を組み合わせた状態で、このコンクリートパネル11の背面側から両端部を相対する隣り合うH型鋼10Aの空間部17RとH型鋼10Bの相対する空間部17Lに嵌合して組み付けられる。支持鋼管12は、上述した外径寸法によりH型鋼10A、10B間に上方から落とし込むようにして組み付けることが可能である。支持鋼管12は、後述するようにジオテキスタイル14の取付部材を構成する。
【0022】
支持鋼管12は、H型鋼10の山側フランジ部16Bとコンクリートパネル11の端部との間に挟み込まれるようにして組み付けられることから、盛り土部5の高さに応じて高さ方向に対してスライドさせることが可能である。したがって、支持鋼管12は、ジオテキスタイル14を掛け合わせた状態で、ジオテキスタイル14が盛り土部5上に敷き込まれるように下方へと移動させることによってジオテキスタイル14が簡易に組み付けられるようにする。なお、支持鋼管12については、例えばL型鋼材やI型鋼材或いは角型等の各種鋼管等の適宜の支持部材を用いるようにしてもよい。
【0023】
ジオテキスタイル14は、周知のように高分子繊維や合成樹脂製のシート体からなり、盛り土上に敷き込まれることによって補強効果や排水補強効果を奏する。ジオテキスタイル14は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ幅とされるとともに、掘削部位の奥行きよりもやや短い長さを有している。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14が、一端側をコンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に支架した支持鋼管12に巻き付け折り返し部位を連結棒13によって固定され、他端側が盛り土部5或いは掘削底面上に敷き込まれる。
【0024】
土留め壁施工法においては、詳細を後述するように支持鋼管12を介してH型鋼10A、10B間に一端側を固定した各ジオテキスタイル14が盛り土部5内に埋め込まれてそれぞれアンカ作用を奏することにより、盛り土部5からの圧力を受けるH型鋼10を高さ方向において多段に保持する。各H型鋼10には、盛り土層5A〜5Uを積層形成するにしたがって盛り土部5から次第に大きな圧力が作用される。土留め壁施工法においては、上述したようにジオテキスタイル14が、盛り土施工の初期段階から所定の高さ毎に埋め込まれて盛り土部5内に多層に設けられて各H型鋼10を高さ方向の複数箇所で補強する。
【0025】
なお、土留め壁施工法においては、各ジオテキスタイル14を支持鋼管12と連結棒13とによりH型鋼10に固定するようにしたが、かかる固定構造に限定されるものではないことは勿論である。土留め壁施工法においては、支持鋼管12と連結棒13とに代えて例えばH型鋼10の山側フランジ部16Bに溶接等により固定した取付部材を設け、この取付部材に直接或いは支持鋼管12等を支架してジオテキスタイル14を組み合わせるようにしてもよい。また、土留め壁施工法においては、例えばコンクリートパネル11の背面部に予めカギ状の取付部を一体に形成し、この取付部にジオテキスタイル14を直接或いは支持鋼管12等を支架して固定する構造であってもよい。
【0026】
以下、上述した構成部材による土留め壁施工法を採用した道路建設工事の施工工程について、図1及び図3乃至図8を参照して説明する。実施の形態として示した道路建設工事は、図3に示すように傾斜面1に沿って建設された道路2の崖側を拡幅する工事である。道路建設工事は、例えば重機等により同図鎖線で示す道路2に沿った領域を所定幅と高さを以って掘削して、上方から底面に向かって次第に傾斜する掘削傾斜面3Bを有する掘削部位3を形成する。道路建設工事においては、掘削部位3の底面3Aに対して、整形及び充分な転圧・締め固め施工を施して平坦化することにより、後述する土留め壁施工法により構築する土留め壁4の基準面とする。
【0027】
道路建設工事においては、図4に示すように掘削部底面3A上の土留め線6に沿って上述した多数本のH型鋼10を、隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17Lを互いに対向させて所定の間隔を以って打ち込む。各H型鋼10は、上端部が道路2と略同一面を構成するとともに、それぞれ自立可能な深さを以って打ち込まれる。なお、道路建設工事においては、現場の状況に応じて例えば傾斜面1にH型鋼10を打ち込んだ後に、これらH型鋼10と道路2との間の地盤を掘削するようにしてもよいことは勿論である。道路建設工事においては、各H型鋼10を支柱部材として詳細を後述する土留め壁施工法により土留め壁4を構築する。
【0028】
土留め壁施工法においては、クレーン等により最下層の第1のコンクリートパネル11Aを吊り上げ、図5矢印で示すようにこの第1のコンクリートパネル11Aを隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17L間にそれぞれ両端部を嵌合させて組み合わす。土留め壁施工法においては、各H型鋼10間において各第1のコンクリートパネル11Aがそれぞれの下端縁を基準面を構成する掘削部底面3A上に突き当てられて組み合わされることから、互いに高水平度を保持して組み合わせを行うことが可能であり、またそれぞれの上部に複数個のコンクリートパネル11が互いに精度よく組み合わせることを可能とする。
【0029】
土留め壁施工法においては、第1のコンクリートパネル11Aを組み合わせた状態で図6に示すように掘削部底面3A上に土砂を投入し、この土砂に転圧・締め固めを施して第1盛り土層5Aを形成する。土留め壁施工法においては、第1盛り土層5Aが、同図に示すように第1のコンクリートパネル11Aの上方部位を露出させる高さを以って形成される。土留め壁施工法においては、投入した土砂に対して充分な転圧・締め固めを施して盛り土部5の最下層を構成する強固な第1盛り土層5Aを形成する。
【0030】
土留め壁施工法においては、図7に示すように第1盛り土層5Aから露出された第1のコンクリートパネル11Aの上方部位に位置して、支持鋼管12と連結棒13を介して第1のジオテキスタイル14Aが組み付けられる。土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17Lに両端を嵌合して支架される。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aが、支持鋼管12に一端側を巻き付けられるとともに、折り返すことによって重ね合わされた部位を連結棒13によって固定することにより第1のコンクリートパネル11Aの背面側においてH型鋼10A、10Bに固定される。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aが、その先端を掘削傾斜面3Bに近接して対向する長さを有し、H型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい幅を有するものが用いられる。
【0031】
土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、H型鋼10A、10Bに対して上方から空間部17R、17L内に落とし込まれるようにして組み合わされる。土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、図7に示すように相対する谷側のフランジ部16F、16Fとの間に第1のコンクリートパネル11Aの端部を介在させる。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aを固定した状態で、支持鋼管12がその両端を第1のコンクリートパネル11Aと相対する山側のフランジ部16B、16Bとの間に位置するようにしてスライドさせることにより、同図に示すように第1のジオテキスタイル14Aを第1盛り土層5A上に敷き込むようにする。
【0032】
なお、土留め壁施工法においては、上述したように掘削底面5A上に形成した第1盛り土層5Aの表面に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込むようにしたが、かかる工程に限定されるものでは無い。土留め壁施工法においては、第1盛り土層5Aを形成する前工程において、上述した支持鋼管12と連結棒13及び第1のジオテキスタイル14Aの組み付け工程を施して掘削部底面3A上に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込みむようにしてもよい。土留め壁施工法においては、この場合に盛り土部5の最下層に第1のジオテキスタイル14Aが埋め込まれることになる。
【0033】
土留め壁施工法においては、以上の工程を経て、隣り合うH型鋼10A、10B間に最下層の第1のコンクリートパネル11Aを組み合わせ、この第1のコンクリートパネル11Aによって掘削部底面3A上に形成した強固な第1盛り土層5Aが土留めされ、この第1盛り土層5A上に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込んだ最下層部位を形成する。土留め壁施工法においては、この最下層部位上に第2層盛り土層5B乃至第U層盛り土層5Uの形成工程が施される。
【0034】
土留め壁施工法においては、第2層部位の形成工程が、隣り合うH型鋼10A、10B間に第1のコンクリートパネル11A上に位置して第2のコンクリートパネル11Bを組み合わす工程と、第1盛り土層5A上に土砂を投入して転圧・締め固めを施して第2盛り土層5Bを形成する工程とを有する。また、土留め壁施工法においては、第2層部位の形成工程が、隣り合うH型鋼10A、10B間に支持鋼管12と連結棒13とを組み付ける工程と、これら支持鋼管12と連結棒13とに第2のジオテキスタイル14Bを取り付ける工程と、H型鋼10A、10Bに沿って支持鋼管12を下方へとスライドさせることにより第2のジオテキスタイル14Bを第2盛り土層5B上に敷き込む工程とを有する。
【0035】
なお、土留め壁施工法においては、第1のコンクリートパネル11Aに対して第2のジオテキスタイル14Bがやや大きい長さを有するものが用いられるが、その先端を掘削傾斜面3Bに近接させて敷き込まれる。なお、第2層部位の形成工程の各工程は、上述した最下層の形成工程の各工程と同様にして行われる。
【0036】
土留め壁施工法においては、上述した第2層部位の形成工程と同等の各工程を順次繰り返し施工することによって、図8に示すようにH型鋼10とコンクリートパネル11とにより掘削部位3上に第1盛り土層5A乃至第U盛り土層5Uを積層して所定の高さを有して形成された盛り土部5を保持する土留め壁4が構築される。道路建設工事においては、上述した土留め壁施工法によって形成された盛り土部5に対して、天端の嵩上げ工や舗装工を施して図1に示した傾斜面1に拡幅された道路2を完成させる。
【0037】
ところで、土留め壁施工法においては、盛り土層を積層して盛り土部5が次第に高くなるにしたがって、この盛り土部5からコンクリートパネル11を介してH型鋼10に対して次第に大きな圧力が負荷される。土留め壁施工法においては、上述したように各盛り土層5A〜5Uを形成する際に、その都度それぞれの表面に支持鋼管12と連結棒13とを介してH型鋼10間に一端側を固定したジオテキスタイル14を敷き込むことにより、H型鋼10が所定の高さにおいて補強されるようにする。
【0038】
すなわち、土留め壁施工法においては、上述したように盛り土施工の初期段階から所定の高さ毎に埋め込まれるジオテキスタイル14により、工程の進行に伴って盛り土部5から次第に大きな圧力が負荷されるH型鋼10を高さ方向の多点箇所において水平方向に保持して補強が行われるようにする。したがって、土留め壁施工法においては、従来一般的に実施されているH型鋼10をアンカ部材や控え杭部材により補強する工法と比較して、施工時や完成後においてもH型鋼10に応力変位が発生することを抑制して強固な土留め壁4を構築する。また、土留め壁施工法においては、各層のジオテキスタイル14がH型鋼10やコンクリートパネル11に対する盛り土部5からの圧力集中を低減する。土留め壁施工法においては、これによってより強固な土留め壁4が構築されるようにする。
【0039】
また、土留め壁施工法においては、軟弱地盤や充分な支持圧が確保することが困難な現場であっても各ジオテキスタイル14により盛り土部5の下層部形成時から各H型鋼10を補強してその水平変位を抑制するとともに各コンクリートパネル11の支持力や沈下の発生を低減して高精度かつ強固な土留め壁4を構築することを可能とする。土留め壁施工法によれば、新規な構成材や施工手順を不要とし、低規格のH型鋼10或いはH型鋼10の間隔を広げて本数の削減を図ることを可能として工事費用が大幅に低減されるようにする。
【0040】
上述した土留め壁施工法においては、各コンクリートパネル11の高さに応じて各盛り土層を形成するとともに、これら盛り土層上にジオテキスタイル14を敷き込むようにしたが、かかる工程に限定されるものでは無い。土留め壁施工法においては、盛り土部5の高さが大きくなるにしたがって、この盛り土部5からH型鋼10やコンクリートパネル11に作用される圧力も小さくなる。したがって、土留め壁施工法においては、より大きな圧力が負荷されるH型鋼10の下方部位に対応する盛り土部5の下層領域ではジオテキスタイル14が間隔を密にして敷き込まれるとともに、上方部位になるにしたがって間隔を粗にして敷き込むようにしてもよい。
【0041】
上述した実施の形態においては、各層のジオテキスタイル14をH型鋼10間に支架した支持鋼管12に対して連結棒13を介して組み付けるようにしたが、本発明はかかる構成に限定されるものでは無い。図9に第2の実施の形態として示した土留め壁20は、コンクリートパネル11が組み付けられる親杭部材としてH型鋼10を用いるとともに補強体としてジオテキスタイル14を用いる基本的施工法を上述した土留め壁4と同様とする。土留め壁20は、H型鋼10の前面側、すなわち谷側のフランジ部16Fの前面に複数のコンクリートパネル11を適宜の取付機構を介して高さ方向に並べて取り付けることにより前面にH型鋼10が現れない構造となる。土留め壁20においては、H型鋼10の前面において、長さ方向に隣り合うコンクリートパネル11が相対する端部を突き合わされて組み合わされることによりフラットな前面が構成されるようにする。
【0042】
土留め壁20においては、例えばコンクリートパネル11の背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部21A、21Bが一体に形成されている。土留め壁20においては、例えばコンクリートパネル11に対して取付部21A、21B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0043】
以上のように構成される土留め壁20を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bの前面に複数のコンクリートパネル11が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においては、盛り土部5を形成する前工程でコンクリートパネル11の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にコンクリートパネル11の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。
【0044】
土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、コンクリートパネル11に対するジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁20を構築する。
【0045】
図10に第3の実施の形態として示した土留め壁25は、親杭部材として上述したH型鋼10に代えて鋼管26が用いられ、この鋼管26の谷側外側面に一体に形成された高さ方向の取付ブラケット部27を介して複数のパネル28が高さ方向に並べて取り付けることにより前面がフラットに構成されるようにする。土留め壁25においても、上述した土留め壁20と同様に、例えばパネル28の背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部29A、29Bが一体に形成されている。土留め壁25においても、例えばパネル28に対して取付部29A、29B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0046】
以上のように構成される土留め壁25を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合う鋼管26A、26Bの前面に取付ブラケット部27A、27Bにより複数のパネル28が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でパネル28の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にパネル28の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、パネル28の取付部29A、29Bに支持鋼管12と連結棒13とを介してジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁25を構築する。
【0047】
図11に第4の実施の形態として示した土留め壁30は、親杭部材として上述したH型鋼10を用いるが、このH型鋼10に対してこれを内部に収納するようにしてパネル31が高さ方向に組み合わされる。土留め壁30においては、パネル31が所定の厚みを有するとともに、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔よりもやや大きな長さを有して形成される。パネル31には、長さ方向の両端近傍に位置して、H型鋼10を貫通させる高さ方向の組み付けガイド孔32A、32Bが形成される。パネル31には、長さ方向の一方側面部に高さ方向の嵌合凸部33Aが一体に形成されるとともに、相対する他方側面部に高さ方向の嵌合凹部33Bが形成される。パネル31には、背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部34A、34Bが一体に形成される。
【0048】
土留め壁30は、後述するように長さ方向に隣り合うパネル31A、31Bが、相対する嵌合凸部33Aと嵌合凹部33Bとを嵌合させてH型鋼10に組み合わされる。土留め壁30においても、例えばパネル31に対して取付部34A、34B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0049】
以上のように構成される土留め壁30を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bを組み付けガイド孔32A、32Bに貫通させて複数のパネル31が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でパネル31の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にパネル31の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においても、所定の高さの盛り土層を形成した後に、パネル31の取付部34A、34Bに支持鋼管12と連結棒13とを介してジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁30を構築する。
【0050】
上述した各実施の形態においては、補強体としてジオテキスタイル14が用いられたが、本発明はかかる構成に限定されるものでは無い。図12に第5の実施の形態として示した土留め壁35においては、補強体として例えば角型鋼管36に固定した取付ブラケット部材37A、37Bに一端部をそれぞれ一体化される帯状の補強鋼材38A、38Bによって構成される。土留め壁35は、角型鋼管36が、同図(A)に示すようにH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい長さを有して形成される。角型鋼管36には、同図(B)に示すように背面側に長さ方向の両端側に位置して補強鋼材38A、38Bを固定するための取付ブラケット部材37A、37Bが溶接等によって一体に形成される。
【0051】
なお、取付ブラケット部材37A、37Bは、それぞれ補強鋼材38A、38Bの一端側に一体に形成されている。また、取付ブラケット部材37A、37Bは、角型鋼管36に溶接により一体化するようにしたが、例えばH型鋼10A、10Bの山側フランジ部16Bに溶接等により一体に取り付けるようにしてもよい。また、かかる構造は、コンクリートパネル11の背面側に形成するようにしてもよい。
【0052】
以上のように構成される土留め壁35を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bに対して複数のコンクリートパネル11が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でコンクリートパネル11の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にコンクリートパネル11の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、コンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に角型鋼管を支持する。なお、角型鋼管36には、予めブラケット部材39A、39Bを溶接することにより補強鋼材38A、38Bが一体に形成される。土留め壁施工法においては、補強鋼材38A、38Bが盛り土層上に敷き込まれる。土留め壁施工法においては、補強鋼材38A、38B上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁35を構築する。
【0053】
なお、補強体については、上述した帯状の補強鋼材38ばかりでなく、例えば従来の土留め壁施工法において用いられているアンカープレート付き鋼棒等の一般的なアンカ部材を用いるようにしてもよい。また、補強材については、ジオテキスタイル14と同様に盛り土層上に敷き込まれるプレート状の部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる土留め壁施工法を採用して土留め壁を構築した傾斜面に沿った道路の拡幅工事の概要を示す要部断面図である。
【図2】同土留め壁施工法により構築される土留め壁の要部斜視図である。
【図3】拡幅工事を行う傾斜面の要部断面図である。
【図4】掘削を施した傾斜面にH型鋼を打ち込んだ状態の要部断面図である。
【図5】土留め線に沿って立設したH型鋼間に第1のコンクリートパネルを組み合わせた状態の要部断面図である。
【図6】掘削部位の底面上に第1盛り土層を形成した要部断面図である。
【図7】第1のコンクリートパネルに一端を固定した第1のジオテキスタイルを第1盛り土層上に敷き込んだ状態の要部断面図である。
【図8】掘削部位に形成した多層の盛り土層からなる盛り土部を土留め壁によって保持した状態の要部断面図である。
【図9】第2の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図10】第3の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図11】第4の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図12】第5の実施の形態として示す土留め壁であり、同図(A)は要部平面図、同図(B)は要部斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 傾斜面、2 道路、3 掘削部位、3A 掘削部底面、3B 掘削部斜面、4 土留め壁、5 盛り土部、5A〜5U 盛り土層、6 土留め線、10 H型鋼、11 コンクリートパネル、12 支持鋼管、13 連結棒、14 ジオテキスタイル、15 ウェブ、16 フランジ部、17 空間部、20 土留め壁、25 土留め壁、26 鋼管、30 土留め壁、31 パネル、32 組み付けガイド孔、33A 嵌合凸部、33B 嵌合凹部、35 土留め壁、36 角型鋼管、37 取付ブラケット部材、38 補強鋼材
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築した土留め壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留め壁は、一般に土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともにこれら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築され、所定の高さに盛り上げた盛り土を保持する。例えば山留め施工と称される工法は、斜面に沿って建設された道路や基礎地盤の支持力が弱い場所に沿って建設された道路の拡幅工事等に採用されて土留め壁を構築する工法である。山留め施工法としては、例えばレール、I型鋼、H型鋼等の親杭を土留め線に沿って互いに重ね合わせて打設して補強立壁を構築する親杭工法や、比較的重量の大きなプレキャストコンクリートパネル等のパネル体を隣り合って設置して補強立壁を構築するパネル工法等が実施されている。
【0003】
土留め壁においては、水平支持を有しない例えばH型鋼からなる自立型親杭の場合に、盛り土による壁面側からの圧力によって前方側に変形して曲げ応力が大きくなる。土留め壁においては、このために4m程度の高さの壁面が適用限界であり、前面から緊張力を負荷するアンカ材や背面から支持する控え杭等の補強材を併用する対応が図られる。しかしながら、かかる土留め壁も、工事コストが増加すること、アンカ材によるアンカ作用を効率的よく発揮させることが困難であること或いは補強材を設置するまでに投入される盛り土によって親杭が前方側に傾倒するといった問題が発生する。
【0004】
また、パネル工法においては、パネルを簡易に設置することが可能であり、振動や騒音の問題も低減されて比較的低コストの施工が可能である。しかしながら、かかるパネル工法においては、パネル自体の重量、盛り土の鉛直分力等により壁面部分の鉛直地盤反力が大きくなることから、パネルに対する支持力の小さな斜面や軟弱地盤地等では支持力不足や地盤沈下等が発生して適用することができないといった問題がある。
【0005】
山留め施工法としては、上述した親杭工法と一種のパネル工法とを組み合わせた工法である親杭横矢板工法も実施されている。親杭横矢板工法は、土留め線に沿って適宜の間隔で打設した親杭間に掘削に並行して負荷に応じて選択される木矢板、軽量鋼横矢板或いはコンクリート矢板等の矢板を組み合わせて土留めする工法である(例えば、特許文献1乃至特許文献3を参照)。親杭横矢板工法は、鋼矢板を並べて打設する鋼矢板工法等に比較して低コストであり、また地下埋設物処理が簡易であること、騒音や振動等の環境対策等に有効であるといった特徴を有している。
【0006】
【特許文献1】特公平6−99908号公報
【特許文献2】特開平9−95938号公報
【特許文献3】特開2005−201009公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された親杭横矢板工法は、横矢板と掘削面との間に発泡性裏込め材を充填して発泡段階で生じる膨張圧で地山からの土圧に対向させるようにする。かかる親杭横矢板工法においては、親杭と横矢板とによって掘削面側からの圧力を受けることから、大きな高さの擁壁工事に適用することはできない。また、かかる親杭横矢板工法においては、発泡性裏込め材を用いることからコスト高となるといった問題もある。
【0008】
また、特許文献2に開示された親杭横矢板工法は、各親杭間に多段に組み合わされる複数枚の横矢板どうしを複数本の鋼棒を挿通することによって互いに連結して強度の向上を図るようにしている。かかる親杭横矢板工法においては、鋼棒を貫通させるための複数個の貫通孔を形成した横矢板を用いるが、各横矢板が貫通孔を形成することによってコスト高となるとともに機械的強度も低下するといった問題がある。また、かかる親杭横矢板工法においては、例えば軟弱地盤等で施工が行われる場合に、各親杭が根入れ部の受動土圧不足によるヒービング現象が生じやすく、また盛り土からの圧力によって水平変位が生じやすいといった問題が解決されない。また、かかる親杭横矢板工法においては、変位が生じやすい親杭に各横矢板が支持されることから、それぞれに形成した貫通孔の軸線を一致させて鋼棒を貫通させる作業が極めて困難である。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された親杭横矢板工法は、親杭間に横矢板を組み合わせて構築した山留め壁が、各親杭間に跨って固定された横材と、この横材と山側土壌の間に配設されたアンカ部材とによって補強される。かかる親杭横矢板工法は、機械的強度の大きな山留め壁を構築することが可能であっても、横材とその取付のためにコスト高となり、また軟弱地盤や親杭の支持圧を充分に確保し得ない現場等の施工では、折角の横材やアンカ部材の機能が発揮されないといった問題もある。
【0010】
したがって、本発明は、簡易な施工により盛り土部の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される親杭の応力変位を抑制して強固な土留め壁を構築することを可能とする土留め壁施工法を提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかる土留め壁施工法は、土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて所定の高さに盛り土されてなる盛り土部を保持する土留め壁を構築する。土留め壁施工法は、土留め壁に対して、土砂の投入と転圧及び締め固めを行って各横矢板の上方部位を露出させる高さの盛り土層を形成する単位盛り土層形成工程と、横矢板或いは親杭の背面部に一端側を固定した補強体の自由端側を基礎面若しくは盛り土層形成工程により形成する単位盛り土層の表面上に敷設する補強体敷設工程とが繰り返し施される。土留め壁施工法は、単位盛り土層を積層形成して親杭と横矢板とにより構成される土留め壁により保持される所定高さの盛り土部が形成され、この盛り土部内に多層に埋設された補強体が各親杭を高さ方向に対して多段に補強する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる土留め壁施工法によれば、盛り土層を積層して次第に高く盛り上げられて形成される盛り土部内に補強体が多層に埋設され、これら補強体が盛り土部の高さが大きくなるにしたがって次第に大きな圧力が作用される各親杭を補強して当該親杭の応力変位を抑制する。土留め壁施工法によれば、各親杭の応力変位が抑制されることにより、強固な土留め壁を構築することが可能となる。土留め壁施工法によれば、軟弱地盤や充分な支持圧が確保することが困難な現場であっても補強体により盛り土の下層部形成時から各親杭を補強してその水平変位を抑制するとともに各横矢板の支持力や沈下の発生を解消して高精度かつ強固な土留め壁を構築することが可能である。土留め壁施工法によれば、新規な構成材や施工手順を不要とし、低規格の親杭或いは親杭間の間隔を広げて本数の削減を図ることが可能であることから工事費用が大幅に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として図面に示した傾斜面1に沿って設けられた道路2を拡幅する道路工事に実施されて掘削部位3に沿って土留め壁4を構築する土留め壁施工法について詳細に説明する。なお、土留め壁施工法は、かかる道路工事ばかりでなく、例えば軟弱地盤地等の基礎地盤の支持力が弱い場所や地下埋設物が輻輳しておりその回避処理が困難な場所或いは騒音や振動等の環境対策等が必要な場所での地下構造物の建設工事等のように盛り土部5を保持する土留め壁4を構築する場合にも有効に適用される。また、土留め壁施工法は、平地等に所定の高さで盛り上げた盛り土を保持する土留め壁4を構築する場合にも採用される。
【0014】
道路建設工事においては、詳細を後述するが、図1に示すように傾斜面1に沿って所定幅と深さで掘削が行われ、掘削部位3に土砂を投入して転圧・締め固めを行うことにより掘削部底面3A上に所定の高さの盛り土部5を形成する。道路建設工事においては、盛り土部5が、掘削部底面3A上に盛り土層5A〜5Uを所定の高さに多層に積層して構成される。道路建設工事においては、盛り土部5を詳細を後述する土留め壁施工法により土留め線6に沿って構築した土留め壁4(擁壁)によって保持する。道路建設工事においては、天端部の嵩上げや笠石7の設置等の付帯工事を行った後に、盛り土部5を含んで表面上に所定の舗装8を行って道路2を完成させる。
【0015】
土留め壁施工法は、後述するように土留め線6に沿って所定の間隔を以って打ち込んで立設した多数本の自立型親杭、例えばH型鋼10A〜10N(以下、個別に説明する場合を除いてH型鋼10と総称する。)と、隣り合うH型鋼10A、10B間にそれぞれ高さ方向に組み合わされる複数個の横矢板、例えばプレキャストコンクリートパネル11A〜11M(以下、個別に説明する場合を除いてコンクリートパネル11と総称する。)によって所定の高さを有する土留め壁4を構築する。土留め壁施工法においては、各コンクリートパネル11の背面側に、補強体、例えばジオテキスタイル14A〜14K(以下、個別に説明する場合を除いてジオテキスタイル14と総称する。)が、支持鋼管12A〜12K(以下、個別に説明する場合を除いて支持鋼管12と総称する。)と連結棒13A〜13K(以下、個別に説明する場合を除いて連結棒13と総称する。)を介してそれぞれ固定される。
【0016】
土留め壁施工法は、H型鋼10A、10B間にコンクリートパネル11を組み合わせた状態で、このコンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に組み合わせた支持鋼管12にジオテキスタイル14の一端側を巻き付けて連結棒13により固定する。土留め壁施工法は、H型鋼10A、10B間に支持鋼管12を介して一端部を固定したジオテキスタイル14の自由端側を下層に形成された盛り土部5上に敷き込み、このジオテキスタイル14上に上層の盛り土部5を形成する。土留め壁施工法は、盛り土部5内に多数個のジオテキスタイル14が多層に亘って埋め込まれるようにする。
【0017】
土留め壁施工法には、親杭としてH型鋼10ばかりでなく、従来山留め工事に一般的に用いられている例えばレールやI型鋼或いは鋼管杭等の適宜の杭部材を用いてもよい。土留め壁施工法においては、補強体として、ジオテキスタイル14に代えて例えばアンカプレート付き鋼棒や帯状鋼材等を用いてもよい。
【0018】
H型鋼10は、周知のように相対するフランジ部16F、16B間を全長に亘ってウエブ15で連結して断面H字状に形成された杭部材であり、ウエブ15の両側面に沿ってフランジ部16F、16Bに囲まれた空間部17R、17Lが全長に亘って構成される。土留め壁施工法においては、各H型鋼10が、図2に示すように隣り合うH型鋼10Aの空間部17RとH型鋼10Bの相対する空間部17Lとを互いに対向させ、土留め線6に沿って1.5m〜2.5m程度の間隔を以って傾斜面1に所定の深さに打ち込んで自立するようにして立設させる。
【0019】
H型鋼10は、従来と同様に盛り土部5から作用される圧力を受け止めて構築した土留め壁4を保持するいわゆる水平支持杭部材を構成するとともに、コンクリートパネル11の取付部材を構成する。H型鋼10は、後述する補強体により高さ方向に対して多点で補強されて応力変位の発生が抑制されて強固な土留め壁4が構築されるようにする。
【0020】
コンクリートパネル11は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい長さと空間部17R、17Lの幅よりもやや小さな厚みに形成される。コンクリートパネル11は、盛り土部5を保持するとともに、各ジオテキスタイル14のアンカ作用によりH型鋼10を補強する作用も奏する。土留め壁施工法においては、吊り上げられた各コンクリートパネル11が、H型鋼10A、10Bの上方から両端部をそれぞれ相対する空間部17R、17Lに嵌合させて落とし込まれるようにして高さ方向に順次組み合わされる。なお、コンクリートパネル11については、プレキャストコンクリートパネルに限定されるものでは無く、現場で形成されたコンクリートパネルや波板鋼板等の適宜のパネルを用いることも可能である。
【0021】
支持鋼管12は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ同等の長さと、H型鋼10のフランジ部16F、16Bとコンクリートパネル11との間に構成される間隙よりもやや小径とされる。支持鋼管12は、隣り合うH型鋼10A、10B間にコンクリートパネル11を組み合わせた状態で、このコンクリートパネル11の背面側から両端部を相対する隣り合うH型鋼10Aの空間部17RとH型鋼10Bの相対する空間部17Lに嵌合して組み付けられる。支持鋼管12は、上述した外径寸法によりH型鋼10A、10B間に上方から落とし込むようにして組み付けることが可能である。支持鋼管12は、後述するようにジオテキスタイル14の取付部材を構成する。
【0022】
支持鋼管12は、H型鋼10の山側フランジ部16Bとコンクリートパネル11の端部との間に挟み込まれるようにして組み付けられることから、盛り土部5の高さに応じて高さ方向に対してスライドさせることが可能である。したがって、支持鋼管12は、ジオテキスタイル14を掛け合わせた状態で、ジオテキスタイル14が盛り土部5上に敷き込まれるように下方へと移動させることによってジオテキスタイル14が簡易に組み付けられるようにする。なお、支持鋼管12については、例えばL型鋼材やI型鋼材或いは角型等の各種鋼管等の適宜の支持部材を用いるようにしてもよい。
【0023】
ジオテキスタイル14は、周知のように高分子繊維や合成樹脂製のシート体からなり、盛り土上に敷き込まれることによって補強効果や排水補強効果を奏する。ジオテキスタイル14は、図2に示すように、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ幅とされるとともに、掘削部位の奥行きよりもやや短い長さを有している。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14が、一端側をコンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に支架した支持鋼管12に巻き付け折り返し部位を連結棒13によって固定され、他端側が盛り土部5或いは掘削底面上に敷き込まれる。
【0024】
土留め壁施工法においては、詳細を後述するように支持鋼管12を介してH型鋼10A、10B間に一端側を固定した各ジオテキスタイル14が盛り土部5内に埋め込まれてそれぞれアンカ作用を奏することにより、盛り土部5からの圧力を受けるH型鋼10を高さ方向において多段に保持する。各H型鋼10には、盛り土層5A〜5Uを積層形成するにしたがって盛り土部5から次第に大きな圧力が作用される。土留め壁施工法においては、上述したようにジオテキスタイル14が、盛り土施工の初期段階から所定の高さ毎に埋め込まれて盛り土部5内に多層に設けられて各H型鋼10を高さ方向の複数箇所で補強する。
【0025】
なお、土留め壁施工法においては、各ジオテキスタイル14を支持鋼管12と連結棒13とによりH型鋼10に固定するようにしたが、かかる固定構造に限定されるものではないことは勿論である。土留め壁施工法においては、支持鋼管12と連結棒13とに代えて例えばH型鋼10の山側フランジ部16Bに溶接等により固定した取付部材を設け、この取付部材に直接或いは支持鋼管12等を支架してジオテキスタイル14を組み合わせるようにしてもよい。また、土留め壁施工法においては、例えばコンクリートパネル11の背面部に予めカギ状の取付部を一体に形成し、この取付部にジオテキスタイル14を直接或いは支持鋼管12等を支架して固定する構造であってもよい。
【0026】
以下、上述した構成部材による土留め壁施工法を採用した道路建設工事の施工工程について、図1及び図3乃至図8を参照して説明する。実施の形態として示した道路建設工事は、図3に示すように傾斜面1に沿って建設された道路2の崖側を拡幅する工事である。道路建設工事は、例えば重機等により同図鎖線で示す道路2に沿った領域を所定幅と高さを以って掘削して、上方から底面に向かって次第に傾斜する掘削傾斜面3Bを有する掘削部位3を形成する。道路建設工事においては、掘削部位3の底面3Aに対して、整形及び充分な転圧・締め固め施工を施して平坦化することにより、後述する土留め壁施工法により構築する土留め壁4の基準面とする。
【0027】
道路建設工事においては、図4に示すように掘削部底面3A上の土留め線6に沿って上述した多数本のH型鋼10を、隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17Lを互いに対向させて所定の間隔を以って打ち込む。各H型鋼10は、上端部が道路2と略同一面を構成するとともに、それぞれ自立可能な深さを以って打ち込まれる。なお、道路建設工事においては、現場の状況に応じて例えば傾斜面1にH型鋼10を打ち込んだ後に、これらH型鋼10と道路2との間の地盤を掘削するようにしてもよいことは勿論である。道路建設工事においては、各H型鋼10を支柱部材として詳細を後述する土留め壁施工法により土留め壁4を構築する。
【0028】
土留め壁施工法においては、クレーン等により最下層の第1のコンクリートパネル11Aを吊り上げ、図5矢印で示すようにこの第1のコンクリートパネル11Aを隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17L間にそれぞれ両端部を嵌合させて組み合わす。土留め壁施工法においては、各H型鋼10間において各第1のコンクリートパネル11Aがそれぞれの下端縁を基準面を構成する掘削部底面3A上に突き当てられて組み合わされることから、互いに高水平度を保持して組み合わせを行うことが可能であり、またそれぞれの上部に複数個のコンクリートパネル11が互いに精度よく組み合わせることを可能とする。
【0029】
土留め壁施工法においては、第1のコンクリートパネル11Aを組み合わせた状態で図6に示すように掘削部底面3A上に土砂を投入し、この土砂に転圧・締め固めを施して第1盛り土層5Aを形成する。土留め壁施工法においては、第1盛り土層5Aが、同図に示すように第1のコンクリートパネル11Aの上方部位を露出させる高さを以って形成される。土留め壁施工法においては、投入した土砂に対して充分な転圧・締め固めを施して盛り土部5の最下層を構成する強固な第1盛り土層5Aを形成する。
【0030】
土留め壁施工法においては、図7に示すように第1盛り土層5Aから露出された第1のコンクリートパネル11Aの上方部位に位置して、支持鋼管12と連結棒13を介して第1のジオテキスタイル14Aが組み付けられる。土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、隣り合うH型鋼10A、10Bの相対する空間部17R、17Lに両端を嵌合して支架される。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aが、支持鋼管12に一端側を巻き付けられるとともに、折り返すことによって重ね合わされた部位を連結棒13によって固定することにより第1のコンクリートパネル11Aの背面側においてH型鋼10A、10Bに固定される。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aが、その先端を掘削傾斜面3Bに近接して対向する長さを有し、H型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい幅を有するものが用いられる。
【0031】
土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、H型鋼10A、10Bに対して上方から空間部17R、17L内に落とし込まれるようにして組み合わされる。土留め壁施工法においては、支持鋼管12が、図7に示すように相対する谷側のフランジ部16F、16Fとの間に第1のコンクリートパネル11Aの端部を介在させる。土留め壁施工法においては、第1のジオテキスタイル14Aを固定した状態で、支持鋼管12がその両端を第1のコンクリートパネル11Aと相対する山側のフランジ部16B、16Bとの間に位置するようにしてスライドさせることにより、同図に示すように第1のジオテキスタイル14Aを第1盛り土層5A上に敷き込むようにする。
【0032】
なお、土留め壁施工法においては、上述したように掘削底面5A上に形成した第1盛り土層5Aの表面に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込むようにしたが、かかる工程に限定されるものでは無い。土留め壁施工法においては、第1盛り土層5Aを形成する前工程において、上述した支持鋼管12と連結棒13及び第1のジオテキスタイル14Aの組み付け工程を施して掘削部底面3A上に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込みむようにしてもよい。土留め壁施工法においては、この場合に盛り土部5の最下層に第1のジオテキスタイル14Aが埋め込まれることになる。
【0033】
土留め壁施工法においては、以上の工程を経て、隣り合うH型鋼10A、10B間に最下層の第1のコンクリートパネル11Aを組み合わせ、この第1のコンクリートパネル11Aによって掘削部底面3A上に形成した強固な第1盛り土層5Aが土留めされ、この第1盛り土層5A上に第1のジオテキスタイル14Aを敷き込んだ最下層部位を形成する。土留め壁施工法においては、この最下層部位上に第2層盛り土層5B乃至第U層盛り土層5Uの形成工程が施される。
【0034】
土留め壁施工法においては、第2層部位の形成工程が、隣り合うH型鋼10A、10B間に第1のコンクリートパネル11A上に位置して第2のコンクリートパネル11Bを組み合わす工程と、第1盛り土層5A上に土砂を投入して転圧・締め固めを施して第2盛り土層5Bを形成する工程とを有する。また、土留め壁施工法においては、第2層部位の形成工程が、隣り合うH型鋼10A、10B間に支持鋼管12と連結棒13とを組み付ける工程と、これら支持鋼管12と連結棒13とに第2のジオテキスタイル14Bを取り付ける工程と、H型鋼10A、10Bに沿って支持鋼管12を下方へとスライドさせることにより第2のジオテキスタイル14Bを第2盛り土層5B上に敷き込む工程とを有する。
【0035】
なお、土留め壁施工法においては、第1のコンクリートパネル11Aに対して第2のジオテキスタイル14Bがやや大きい長さを有するものが用いられるが、その先端を掘削傾斜面3Bに近接させて敷き込まれる。なお、第2層部位の形成工程の各工程は、上述した最下層の形成工程の各工程と同様にして行われる。
【0036】
土留め壁施工法においては、上述した第2層部位の形成工程と同等の各工程を順次繰り返し施工することによって、図8に示すようにH型鋼10とコンクリートパネル11とにより掘削部位3上に第1盛り土層5A乃至第U盛り土層5Uを積層して所定の高さを有して形成された盛り土部5を保持する土留め壁4が構築される。道路建設工事においては、上述した土留め壁施工法によって形成された盛り土部5に対して、天端の嵩上げ工や舗装工を施して図1に示した傾斜面1に拡幅された道路2を完成させる。
【0037】
ところで、土留め壁施工法においては、盛り土層を積層して盛り土部5が次第に高くなるにしたがって、この盛り土部5からコンクリートパネル11を介してH型鋼10に対して次第に大きな圧力が負荷される。土留め壁施工法においては、上述したように各盛り土層5A〜5Uを形成する際に、その都度それぞれの表面に支持鋼管12と連結棒13とを介してH型鋼10間に一端側を固定したジオテキスタイル14を敷き込むことにより、H型鋼10が所定の高さにおいて補強されるようにする。
【0038】
すなわち、土留め壁施工法においては、上述したように盛り土施工の初期段階から所定の高さ毎に埋め込まれるジオテキスタイル14により、工程の進行に伴って盛り土部5から次第に大きな圧力が負荷されるH型鋼10を高さ方向の多点箇所において水平方向に保持して補強が行われるようにする。したがって、土留め壁施工法においては、従来一般的に実施されているH型鋼10をアンカ部材や控え杭部材により補強する工法と比較して、施工時や完成後においてもH型鋼10に応力変位が発生することを抑制して強固な土留め壁4を構築する。また、土留め壁施工法においては、各層のジオテキスタイル14がH型鋼10やコンクリートパネル11に対する盛り土部5からの圧力集中を低減する。土留め壁施工法においては、これによってより強固な土留め壁4が構築されるようにする。
【0039】
また、土留め壁施工法においては、軟弱地盤や充分な支持圧が確保することが困難な現場であっても各ジオテキスタイル14により盛り土部5の下層部形成時から各H型鋼10を補強してその水平変位を抑制するとともに各コンクリートパネル11の支持力や沈下の発生を低減して高精度かつ強固な土留め壁4を構築することを可能とする。土留め壁施工法によれば、新規な構成材や施工手順を不要とし、低規格のH型鋼10或いはH型鋼10の間隔を広げて本数の削減を図ることを可能として工事費用が大幅に低減されるようにする。
【0040】
上述した土留め壁施工法においては、各コンクリートパネル11の高さに応じて各盛り土層を形成するとともに、これら盛り土層上にジオテキスタイル14を敷き込むようにしたが、かかる工程に限定されるものでは無い。土留め壁施工法においては、盛り土部5の高さが大きくなるにしたがって、この盛り土部5からH型鋼10やコンクリートパネル11に作用される圧力も小さくなる。したがって、土留め壁施工法においては、より大きな圧力が負荷されるH型鋼10の下方部位に対応する盛り土部5の下層領域ではジオテキスタイル14が間隔を密にして敷き込まれるとともに、上方部位になるにしたがって間隔を粗にして敷き込むようにしてもよい。
【0041】
上述した実施の形態においては、各層のジオテキスタイル14をH型鋼10間に支架した支持鋼管12に対して連結棒13を介して組み付けるようにしたが、本発明はかかる構成に限定されるものでは無い。図9に第2の実施の形態として示した土留め壁20は、コンクリートパネル11が組み付けられる親杭部材としてH型鋼10を用いるとともに補強体としてジオテキスタイル14を用いる基本的施工法を上述した土留め壁4と同様とする。土留め壁20は、H型鋼10の前面側、すなわち谷側のフランジ部16Fの前面に複数のコンクリートパネル11を適宜の取付機構を介して高さ方向に並べて取り付けることにより前面にH型鋼10が現れない構造となる。土留め壁20においては、H型鋼10の前面において、長さ方向に隣り合うコンクリートパネル11が相対する端部を突き合わされて組み合わされることによりフラットな前面が構成されるようにする。
【0042】
土留め壁20においては、例えばコンクリートパネル11の背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部21A、21Bが一体に形成されている。土留め壁20においては、例えばコンクリートパネル11に対して取付部21A、21B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0043】
以上のように構成される土留め壁20を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bの前面に複数のコンクリートパネル11が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においては、盛り土部5を形成する前工程でコンクリートパネル11の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にコンクリートパネル11の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。
【0044】
土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、コンクリートパネル11に対するジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁20を構築する。
【0045】
図10に第3の実施の形態として示した土留め壁25は、親杭部材として上述したH型鋼10に代えて鋼管26が用いられ、この鋼管26の谷側外側面に一体に形成された高さ方向の取付ブラケット部27を介して複数のパネル28が高さ方向に並べて取り付けることにより前面がフラットに構成されるようにする。土留め壁25においても、上述した土留め壁20と同様に、例えばパネル28の背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部29A、29Bが一体に形成されている。土留め壁25においても、例えばパネル28に対して取付部29A、29B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0046】
以上のように構成される土留め壁25を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合う鋼管26A、26Bの前面に取付ブラケット部27A、27Bにより複数のパネル28が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でパネル28の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にパネル28の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、パネル28の取付部29A、29Bに支持鋼管12と連結棒13とを介してジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁25を構築する。
【0047】
図11に第4の実施の形態として示した土留め壁30は、親杭部材として上述したH型鋼10を用いるが、このH型鋼10に対してこれを内部に収納するようにしてパネル31が高さ方向に組み合わされる。土留め壁30においては、パネル31が所定の厚みを有するとともに、隣り合うH型鋼10A、10Bの間隔よりもやや大きな長さを有して形成される。パネル31には、長さ方向の両端近傍に位置して、H型鋼10を貫通させる高さ方向の組み付けガイド孔32A、32Bが形成される。パネル31には、長さ方向の一方側面部に高さ方向の嵌合凸部33Aが一体に形成されるとともに、相対する他方側面部に高さ方向の嵌合凹部33Bが形成される。パネル31には、背面に長さ方向の両端側に位置してジオテキスタイル14を取り付けるための少なくとも一対の取付部34A、34Bが一体に形成される。
【0048】
土留め壁30は、後述するように長さ方向に隣り合うパネル31A、31Bが、相対する嵌合凸部33Aと嵌合凹部33Bとを嵌合させてH型鋼10に組み合わされる。土留め壁30においても、例えばパネル31に対して取付部34A、34B間に支持鋼管12が支架され、この支持鋼管12に連結棒13を介してジオテキスタイル14が取り付けられる。
【0049】
以上のように構成される土留め壁30を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bを組み付けガイド孔32A、32Bに貫通させて複数のパネル31が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でパネル31の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にパネル31の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においても、所定の高さの盛り土層を形成した後に、パネル31の取付部34A、34Bに支持鋼管12と連結棒13とを介してジオテキスタイル14の取付工程が施され、さらに当該盛り土層上にジオテキスタイル14の敷き込みが行われる。土留め壁施工法においては、ジオテキスタイル14上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁30を構築する。
【0050】
上述した各実施の形態においては、補強体としてジオテキスタイル14が用いられたが、本発明はかかる構成に限定されるものでは無い。図12に第5の実施の形態として示した土留め壁35においては、補強体として例えば角型鋼管36に固定した取付ブラケット部材37A、37Bに一端部をそれぞれ一体化される帯状の補強鋼材38A、38Bによって構成される。土留め壁35は、角型鋼管36が、同図(A)に示すようにH型鋼10A、10Bの間隔とほぼ等しい長さを有して形成される。角型鋼管36には、同図(B)に示すように背面側に長さ方向の両端側に位置して補強鋼材38A、38Bを固定するための取付ブラケット部材37A、37Bが溶接等によって一体に形成される。
【0051】
なお、取付ブラケット部材37A、37Bは、それぞれ補強鋼材38A、38Bの一端側に一体に形成されている。また、取付ブラケット部材37A、37Bは、角型鋼管36に溶接により一体化するようにしたが、例えばH型鋼10A、10Bの山側フランジ部16Bに溶接等により一体に取り付けるようにしてもよい。また、かかる構造は、コンクリートパネル11の背面側に形成するようにしてもよい。
【0052】
以上のように構成される土留め壁35を構築する土留め壁施工法においては、所定の間隔を以って立設した隣り合うH型鋼10A、10Bに対して複数のコンクリートパネル11が高さ方向に組み合わされる。土留め壁施工法においても、盛り土部5を形成する前工程でコンクリートパネル11の組み合わせを行うが、上述した工法と同様にコンクリートパネル11の組み合わせと盛り土層の形成とを交互に行うようにしてもよい。土留め壁施工法においては、所定の高さの盛り土層を形成した後に、コンクリートパネル11の背面側に位置してH型鋼10A、10B間に角型鋼管を支持する。なお、角型鋼管36には、予めブラケット部材39A、39Bを溶接することにより補強鋼材38A、38Bが一体に形成される。土留め壁施工法においては、補強鋼材38A、38Bが盛り土層上に敷き込まれる。土留め壁施工法においては、補強鋼材38A、38B上に上層の盛り土層が形成され、以下同様の工程を順次繰り返し施工することによって、所定の高さを有する盛り土部5を保持する土留め壁35を構築する。
【0053】
なお、補強体については、上述した帯状の補強鋼材38ばかりでなく、例えば従来の土留め壁施工法において用いられているアンカープレート付き鋼棒等の一般的なアンカ部材を用いるようにしてもよい。また、補強材については、ジオテキスタイル14と同様に盛り土層上に敷き込まれるプレート状の部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる土留め壁施工法を採用して土留め壁を構築した傾斜面に沿った道路の拡幅工事の概要を示す要部断面図である。
【図2】同土留め壁施工法により構築される土留め壁の要部斜視図である。
【図3】拡幅工事を行う傾斜面の要部断面図である。
【図4】掘削を施した傾斜面にH型鋼を打ち込んだ状態の要部断面図である。
【図5】土留め線に沿って立設したH型鋼間に第1のコンクリートパネルを組み合わせた状態の要部断面図である。
【図6】掘削部位の底面上に第1盛り土層を形成した要部断面図である。
【図7】第1のコンクリートパネルに一端を固定した第1のジオテキスタイルを第1盛り土層上に敷き込んだ状態の要部断面図である。
【図8】掘削部位に形成した多層の盛り土層からなる盛り土部を土留め壁によって保持した状態の要部断面図である。
【図9】第2の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図10】第3の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図11】第4の実施の形態として示す土留め壁の要部平面図である。
【図12】第5の実施の形態として示す土留め壁であり、同図(A)は要部平面図、同図(B)は要部斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 傾斜面、2 道路、3 掘削部位、3A 掘削部底面、3B 掘削部斜面、4 土留め壁、5 盛り土部、5A〜5U 盛り土層、6 土留め線、10 H型鋼、11 コンクリートパネル、12 支持鋼管、13 連結棒、14 ジオテキスタイル、15 ウェブ、16 フランジ部、17 空間部、20 土留め壁、25 土留め壁、26 鋼管、30 土留め壁、31 パネル、32 組み付けガイド孔、33A 嵌合凸部、33B 嵌合凹部、35 土留め壁、36 角型鋼管、37 取付ブラケット部材、38 補強鋼材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築した土留め壁に対して、
上記各横矢板の上方部位を露出させるようにして土砂の投入と転圧及び締め固めを行う盛り土層形成工程と、上記横矢板或いは上記親杭の背面部に一端側を固定した補強体の自由端側を底面若しくは上記盛り土層形成工程により形成した盛り土層の表面上に敷設する補強体敷設工程とが繰り返し施されることにより、多層の盛り土層により所定高さに形成されて上記各親杭と上記各横矢板とにより構成される上記土留め壁により保持される盛り土部内に上記補強体が多層に埋設され、
上記各親杭が、上記盛り土層を積層形成する際に敷設される上記各補強体により高さ方向おいて多段に補強されることにより、次第に大きくなる圧力に対して応力変位の発生が抑制されることを特徴とする土留め壁施工法。
【請求項2】
上記土留め壁が、相対するフランジ部間を全長に亘ってウエブで連結して断面H字状に形成されたH型鋼からなる親杭と、この親杭の上記フランジ部と上記ウエブとにより構成された空間部に側縁部が嵌合されて組み合わされる横矢板とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項3】
上記土留め壁が、型鋼又は筒状鋼管からなる親杭と、この親杭の前面若しくは背面に側端部を固定されて組み合わされる横矢板とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項4】
上記土留め壁が、高さ方向の嵌合部に上記各親杭を貫通させて上記各横矢板が組み合わされて構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項5】
上記補強体が、上記親杭に端部を組み合わされる支持部材を介して上記横矢板或いは上記親杭の背面部に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の土留め壁施工法。
【請求項6】
上記補強体が、上記横矢板或いは上記親杭の背面部に一端側を固定され自由端側を上記底面若しくは上記盛り土層形成工程により形成した上記盛り土層の表面上に敷き込まれて埋設されるジオテキスタイルであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の土留め壁施工法。
【請求項1】
土留め線に沿って所定の間隔を以って自立型の親杭を立設するとともに、これら各親杭にそれぞれ複数の横矢板を高さ方向に組み合わせて構築した土留め壁に対して、
上記各横矢板の上方部位を露出させるようにして土砂の投入と転圧及び締め固めを行う盛り土層形成工程と、上記横矢板或いは上記親杭の背面部に一端側を固定した補強体の自由端側を底面若しくは上記盛り土層形成工程により形成した盛り土層の表面上に敷設する補強体敷設工程とが繰り返し施されることにより、多層の盛り土層により所定高さに形成されて上記各親杭と上記各横矢板とにより構成される上記土留め壁により保持される盛り土部内に上記補強体が多層に埋設され、
上記各親杭が、上記盛り土層を積層形成する際に敷設される上記各補強体により高さ方向おいて多段に補強されることにより、次第に大きくなる圧力に対して応力変位の発生が抑制されることを特徴とする土留め壁施工法。
【請求項2】
上記土留め壁が、相対するフランジ部間を全長に亘ってウエブで連結して断面H字状に形成されたH型鋼からなる親杭と、この親杭の上記フランジ部と上記ウエブとにより構成された空間部に側縁部が嵌合されて組み合わされる横矢板とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項3】
上記土留め壁が、型鋼又は筒状鋼管からなる親杭と、この親杭の前面若しくは背面に側端部を固定されて組み合わされる横矢板とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項4】
上記土留め壁が、高さ方向の嵌合部に上記各親杭を貫通させて上記各横矢板が組み合わされて構成されることを特徴とする請求項1に記載の土留め壁施工法。
【請求項5】
上記補強体が、上記親杭に端部を組み合わされる支持部材を介して上記横矢板或いは上記親杭の背面部に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の土留め壁施工法。
【請求項6】
上記補強体が、上記横矢板或いは上記親杭の背面部に一端側を固定され自由端側を上記底面若しくは上記盛り土層形成工程により形成した上記盛り土層の表面上に敷き込まれて埋設されるジオテキスタイルであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の土留め壁施工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−197954(P2007−197954A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15935(P2006−15935)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(504461323)
【出願人】(503295699)
【出願人】(504461345)
【出願人】(504461356)
【出願人】(504461389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(504461323)
【出願人】(503295699)
【出願人】(504461345)
【出願人】(504461356)
【出願人】(504461389)
【Fターム(参考)】
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