説明

圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置

【課題】圧力センサが切換わった際にセンサの出力値が急変することなく滑らかに切換わるようになした圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置を提供する。
【解決手段】測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサを備え、一のセンサの出力が所定のセンサ切換え圧力に達した時、一のセンサから他のセンサに切換えるとともに、前記一のセンサの切換え時の圧力勾配を求め、前記圧力勾配に応じた移動平均回数Nを設定し、切換え後の他のセンサの出力値の代わりに、移動平均値を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置に関し、特に圧力測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサの出力を、測定範囲に応じて択一的に切換え出力する際になされる圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から圧力測定器は、半導体製造分野をはじめとして各種分野において広く用いられている。例えば、半導体製造分野においては、その測定範囲は10-4〜103Paと広範な範囲をカバーする必要があるため、前記圧力測定器は、互いに異なる測定範囲の複数個の圧力センサを備え、必要に応じて所望の圧力センサの出力を選択して出力するように構成されている。
【0003】
このとき、各圧力センサの特性の相違により異なった値が出力されるために、切換え時に出力値が急変し、真空チャンバ内の真空度に変化がない場合であっても、圧力が急激に変化したように表示されるという課題があった。
このような課題を解決するために、特許文献1には、圧力センサの出力を切換える際に、センサの出力値が急変することなく、滑らかに切換わるようにした圧力センサの出力補正方法が提案されている。
【0004】
この提案された圧力センサの出力補正方法について図6に基づいて説明する。
図6に示すように、低圧側センサの出力PLがセンサ切換え点(切換え圧力)P0に達したとき、その時刻t0からある一定時刻tn(予め定められた時間とする)までの間に、切換え後の高圧センサ出力値PHに対して、次の(1)式で与えられる補正演算処理が行われる。
【0005】
PHC=PH−α{1−Δt/(tn−t0)}……(1)
尚、上式において、PHCは補正後の高圧側センサの出力値、αは切換え直前における低圧側のセンサ出力値と切換え直後における高圧側のセンサ出力値との差、Δtは切換え時t0からの時間変位であって0≦t≦tn−t0である。
【0006】
すなわち、低圧側センサの出力値PLが切換え圧力P0に到達すると、センサの出力値低圧側センサから高圧側センサに切換えられ、時刻t0からtnの一定期間は、高圧センサ出力値PHに対して(1)式の補正演算が行われる。
これにより、この一定の期間t0〜tnにおいては、切換え直前の低圧側センサ出力値P0を初期値として、以後、切換え直前における低圧側センサ出力値と切換え直後における高圧側センサ出力値との差であるαの傾きをもった直線上に表される補正値が出力される。
【特許文献1】特開平6−186119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記したように、一定の期間t0〜tnにおいては、切換え直前における低圧側センサ出力値と切換え直後における高圧側センサ出力値との差であるαの傾きをもった直線上に表される補正値が出力される。
そのため、図7に示すように、低圧側センサの出力値PLが緩やかに上昇し、更に切換え直前における低圧側センサ出力値PLと切換え直後における高圧側センサ出力値PHとの差αの値が大きい場合には、出力される補正値は急激に上昇(変化)することになる。
その結果、例えば、真空チャンバ内の真空度に急激な変化がない場合であっても、補正値(出力値)が急激に変化することとなり、真空チャンバ内の圧力が急激に変化したように圧力表示されるという技術的課題があった。
【0008】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためになされたものであって、圧力センサが切換わった際にセンサの出力値が急変することなく滑らかに切換わるようになした圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するためになされた本発明にかかる圧力センサの出力補正方法は、測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサを備え、一のセンサの出力が所定のセンサ切換え圧力に達した時、一のセンサから他のセンサに切換えるとともに、切換え後の他のセンサの出力値の代わりに、移動平均値を出力する圧力センサの出力補正方法であって、前記一のセンサの切換え時の圧力勾配を求め、前記圧力勾配に応じた移動平均回数Nを設定し、以下の数1によって計算される移動平均値を出力することを特徴としている。
【数1】

(上記式中、1≦n≦N、Cnはn番目に出力される移動平均値、Poは一のセンサの切換え時の圧力、pnは、n番目の移動平均値の出力時における他のセンサの出力値)
【0010】
このように、一のセンサの切換え時の圧力P0の重み付けを徐々に減少させつつ、他のセンサの出力値を徐々に加算し、移動平均値を求め、前記他のセンサの出力値の代わりに前記移動平均値を出力するため、圧力センサが切換わった際にセンサの出力値が急変することなく、滑らかに切換えることができる。
【0011】
ここで、前記圧力勾配の所定値を超える場合に所定移動平均回数が設定され、かつ、前記圧力勾配が所定値以下の場合には、前記圧力勾配の所定値を超える場合の所定移動平均回数よりも多くの回数が設定されることが望ましい。
このように、圧力勾配が所定値以下の場合には、前記圧力勾配の所定値を超える場合の所定移動平均回数よりも多くの回数が設定され、移動平均値が求められるため、滑らかに切換えることができ、違和感が抑制される。
【0012】
また、前記一のセンサが他のセンサと比べて高圧側を測定範囲とするセンサであり、他のセンサが低圧側を測定範囲とするセンサであって、一のセンサから他のセンサへの切換え時に、他のセンサの出力値が一のセンサよりも大きな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以下になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されることが望ましい。
このように、他のセンサの出力値が一のセンサよりも大きな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以下になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されるため、滑らかに切換えることができ、違和感が抑制される。
【0013】
更に、前記一のセンサが他のセンサと比べて低圧側を測定範囲とするセンサであり、他のセンサが高圧側を測定範囲とするセンサであって、一のセンサから他のセンサへの切換え時に、他のセンサの出力値が一のセンサよりも小さな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以上になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されることが望ましい。
このように、他のセンサの出力値が一のセンサよりも小さな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以上になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されるため、滑らかに切換えることができ、違和感が抑制される。
【0014】
また、前記目的を達成するためになされた本発明にかかる圧力センサ出力補正装置は、圧力測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサと、この複数のセンサ出力を測定範囲に応じて択一的に切換え出力する選択手段と、前記圧力センサの測定圧力をサンプリングし、サンプリングデータを記憶すると共に、前記記憶されたサンプリングデータから移動平均値を演算、出力する移動平均値演算出力手段とを備え、前記移動平均値の演算処理が、前記圧力センサの出力補正方法によってなされることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力センサが切換わった際にセンサの出力値が急変することなく滑らかに切換わるようになした圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置の一実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。尚、図1は本発明にかかる圧力センサの出力補正装置の概略構成図、図2、図3は圧力降下時における圧力センサ切換えを説明するための図、図4、図5は圧力上昇時における圧力センサの切換えを説明するための図である。
【0017】
図1に示すように、本発明にかかる圧力センサ出力補正装置は、測定範囲が互いに異なるn個(nは2以上の整数)の圧力センサ1−1〜1−nが設けられており、これらセンサ出力は選択器(選択手段)2において択一的に切換えられ出力される。この切換え制御はコントローラ4にて行われ、その切換え出力は移動平均値演算処理部(移動平均値演算出力手段)3へ供給され、センサ出力切換えタイミングに応答して、後述する補正方法に従って演算された移動平均値を圧力センサ出力として外部(例えば表示器)へ導出するように構成されている。
【0018】
この移動平均値演算処理部3の演算処理を図2乃至図5に基づいて説明する。尚、以下の例では、二つの圧力センサを用いた場合について説明する。具体的には、高圧側圧力センサとしてピラニセンサを、また低圧側圧力センサとして冷陰極電離センサを用いた場合について説明する。尚、ピラニセンサとして例えば0.1〜103Paが測定範囲にあるもの、冷陰極電離センサとして例えば1.0Pa〜10-4Paが測定範囲にあるものを例に挙げることができる。
【0019】
先ず、真空チャンバ内の圧力が低下し、ピラニセンサから冷陰極電離センサに切換えが行なわれる場合について、図2、図3に基づいて説明する。
図3に示すように、ピラニセンサの出力PHが徐々に低下し、センサ切換え点PD0に達した時、ピラニセンサから冷陰極電離センサに前記選択器2によって切換えられる(S1、S2)。このとき、冷陰極電離センサの出力値がピラニセンサから出力値PD0より大きい場合には、冷陰極電離センサの出力値がピラニセンサから出力値以下になるまで、前記出力値PD0を保持、出力し、表示器に表示する(S3,S4)。
【0020】
そして、ピラニセンサの出力値がPD0に到達し、かつ冷陰極電離センサの出力値がピラニセンサから出力値PD0以下の場合には、以下の移動平均値の演算処理がなされ(S5)、切換え後の冷陰極電離センサの出力値PLの代わりに、移動平均値を出力し、表示する(S6)。
この移動平均値の演算処理は繰り返され、繰り返し移動平均値が出力され、前記移動平均値が冷陰極電離センサの出力値PLと一致した後は、冷陰極電離センサの出力値PLを出力し、表示する。
【0021】
前記移動平均値は、次のようにして演算される。
まず、ピラニセンサの出力PHが低下し、センサ切換え点PD0に達した時のΔPH/Δtを求める。即ち、センサ切換え点PD0における圧力勾配を求める。更に言えば、図2に示されたピラニセンサの出力PHを表した直線の傾きを求める。
【0022】
このΔPH/Δtの値が大きいときには、ピラニセンサの出力PHが急激に低下したことを表し、このΔPH/Δtの値が小さいときには、ピラニセンサの出力PHが緩やかにに低下したことを表している。
【0023】
そして、ピラニセンサの出力PHが急激に低下した場合には、ピラニセンサの出力値PD0と切換え後の冷陰極電離センサの出力値PLとの間に大きな差が生じている場合であっても、センサをピラニセンサから冷陰極電離センサに切換え、冷陰極電離センサの圧力値を出力しても、違和感は生じ難い。
一方、ピラニセンサの出力PHが緩やかに低下し、更にピラニセンサの出力値PD0と切換え後の冷陰極電離センサの出力値PLとの間に大きな差が生じている場合には、切換え後の冷陰極電離センサの出力値PLを出力すると、ピラニセンサの出力値PD0からの変化が大きく、違和感が生じる。
【0024】
そのため、ΔPH/Δtの値に応じた移動平均回数N(サンプリングデータ数)を定め、移動平均値Cを求める。この移動平均回数は、前記圧力勾配が所定値以下の場合には、前記圧力勾配の所定値を超える場合の所定移動平均回数よりも多くの回数が設定され、滑らかに切換えられる。
例えば、ΔPH/Δt=1であり、圧力勾配が緩やかな場合には、その移動平均回数N(サンプリングデータ数)を100回とし、ΔPH/Δt=100であり、圧力勾配が急な場合には、その移動平均回数N(サンプリングデータ数)を2回とし、両者の間にあるΔPH/Δt=10の場合には、その移動平均回数(サンプリングデータ数)を10回とする。尚、このΔPH/Δt(圧力勾配)と移動平均回数(サンプリングデータ数)との関係は、実験などにより予め定められる。
【0025】
そして、ピラニセンサの圧力が切換え圧力であるPD0に達し、圧力勾配がΔPH/Δt=50であり、予め設定された移動平均回数(サンプリングデータ数)Nが5回である場合を、例にとって説明する。
先ず、ピラニセンサの圧力PD0を、5回分のサンプリングデータとして前記移動平均値演算処理部3に記憶、蓄積し、移動平均値C0を演算する。
即ち、移動平均値C0=N(PD0)/N=5(PD0)/5=PD0
この演算後、移動平均値C0が出力され、表示される。
【0026】
一方、冷陰極電離センサの圧力値は、所定時間の間隔(例えば、20ms)をもってサンプリングされ、このサンプリングデータPL1は前記移動平均値演算処理部3に記憶される。このとき、前記ピラニセンサの圧力PD0にかかる一つのサンプリングデータは消去され、前記サンプリングデータPL1が記憶、蓄積され、移動平均値C1が演算される。即ち、C1={(N−1)PD0+PL1}/N=(4PD0+PL1)/5が計算され、移動平均値C1が出力、表示される。
【0027】
更に、新にサンプリングデータPL2がサンプリングされた場合には、前記ピラニセンサの圧力PD0にかかる二つ目のサンプリングデータが消去され、前記サンプリングデータPL2が記憶、蓄積され、移動平均値C2が演算される
即ち、C2={(N−2)PD0+PL1+PL2}/N=(3PD0+PL1+PL2)/5が計算され、移動平均値C2が出力、表示される。
【0028】
更にまた、新にサンプリングデータPL3がサンプリングされた場合には、前記ピラニセンサの圧力PD0にかかる3つ目のサンプリングデータが消去され、前記サンプリングデータPL3が記憶、蓄積され、移動平均値C3が演算される。
即ち、C3={(N−3)PD0+PL1+PL2+PL3}/N=(2PD0+PL1+PL2+PL3)/5が計算され、移動平均値C3が出力、表示される。
同様にして、新にサンプリングデータPL4がサンプリングされた場合には、C4={(N−4)PD0+PL1+PL2+PL3}/N=(PD0+PL1+PL2+PL3+PL4)/5が計算され、移動平均値C4が出力、表示される。
【0029】
そして、新にサンプリングデータPL5がサンプリングされた場合には、PD0(ピラニセンサの圧力にかかるサンプリングデータ)は消去され、前記移動平均値演算処理部3に記憶された5個のサンプリングデータPL1,PL2,PL3,PL4,PL5に基づいて、移動平均値C5=(PL1+PL2+PL3+PL4+PL5)/5が計算され、移動平均値C5が出力、表示される。
【0030】
そして、新たなサンプリングデータPH6が蓄積され、前記移動平均値演算処理部3に記憶されると、5個のサンプリングデータPL2,PL3,PL4,PL5,PL6によって、(PL2+PL3+PL4+PL5+PL6)/5より求め、前記移動平均値C6を圧力値として、出力する。
同様にして、新たなサンプリングデータの蓄積と、最も古いサンプリングデータの削除を行ないつつ、前記移動平均値を計算し、圧力値として出力する。
【0031】
尚、新たなサンプリングデータの蓄積と、最も古いサンプリングデータの削除を行ないつつ、前記移動平均値を計算し、圧力値として出力することを所定回数(n+j)行い、図2に示すように、移動平均値と新たなサンプリングデータとが一致した場合には、前記した移動平均値演算処理を終了し、新たなサンプリングデータを移動平均値演算処理することなく出力、表示する。
ここで、前記した移動平均値演算処理を終了する場合として移動平均値と新たなサンプリングデータとが一致した場合の他、移動平均値と新たなサンプリングデータとの差が所定の範囲内にある場合に終了しても良い。更に言えば、移動平均値と新たなサンプリングデータとが一致しない場合、あるいは移動平均値と新たなサンプリングデータとの差が所定の範囲内にない場合には、前記移動平均値演算処理は繰り返される。
【0032】
前記移動平均値のn番目の出力を一般式で表せば、
【数2】

として表すことができる。尚、(2)式におけるNは移動平均回数、nは1≦n≦N、Cnはn番目に出力される移動平均値、PD0はピラニセンサの切換え時の圧力、PLnは、n番目の移動平均値の出力時における冷陰極電離センサの出力値である。
【0033】
このように、センサ切換え点PD0に達した時のΔPH/Δtを求め、ΔPH/Δt(圧力勾配)に応じた、予め設定され移動平均回数を求め、その後、上記した(2)式に基づき移動平均値を求め出力し、表示するため、圧力センサが切換わった際にセンサの出力値が急変することなく滑らかに切換えることができる。
【0034】
次に、図4、図5に基づいて、低圧側の冷陰極電離センサから高圧側のピラニセンサへの切換えの際の移動平均値処理について説明する。
図4に示すように、冷陰極電離センサの出力PLが徐々に上昇し、センサ切換え点PU0に達した時、冷陰極電離センサからピラニセンサに切換えられる(図5のS11、S12)。
このとき、ピラニセンサの出力値PHが冷陰極電離センサから出力値PL(PU0)より小さい場合には、ピラニセンサの出力値PHが冷陰極電離センサの出力値PL(PU0)以上になるまで、前記出力値PU0を保持し、表示器に出力する(図5のS13、S14)。
【0035】
そして、冷陰極電離センサの出力値PLがPU0に到達し、かつピラニセンサの出力値PHが冷陰極電離センサの出力値PL以上である場合に、切換え後のピラニセンサの出力値PHの代わりに、移動平均値を演算し、出力する。
【0036】
この移動平均値は、前記した圧力降下時と同様に、センサ切換え点PU0に達した時のΔPD/Δtを求める。即ち、センサ切換え点PU0における圧力勾配を求め、ΔPL/Δtの値に応じた移動平均回数Nを決定する。この圧力勾配ΔPL/Δtと移動平均回数Nの関係は、前記した圧力降下時と同様に、圧力勾配が小さい場合には移動平均回数が大きく、圧力勾配が大きい場合には移動平均回数Nが小さく設定される。尚、この移動平均回数Nと圧力勾配の関係は、予め実験等により求めておく。
【0037】
そして、先ず、冷陰極電離センサの圧力PU0を、5回分のサンプリングデータとしては前記移動平均値演算処理部3に記憶、蓄積し、移動平均値C0を演算する。
即ち、移動平均値C0=N(PU0)/N=5(PU0)/5=PU0
この演算後、移動平均値C0が出力され、表示される。
【0038】
この移動平均値のn番目の出力を一般式で表せば、
【数3】

として表すことができる。尚、(3)式におけるNは移動平均回数、nは1≦n≦N、Cnはn番目に出力される移動平均値、PU0は冷陰極電離センサの切換え時の圧力、PHnは、n番目の移動平均値の出力時におけるピラニセンサの出力値である。
【0039】
このように、センサ切換え点PU0に達した時のΔPL/Δtを求め、ΔPL/Δt(圧力勾配)に応じた、予め設定され移動平均回数Nを求める。
その後、上記した一般式(3)に基づき移動平均値を求め出力し、図4に示すように、圧力値として出力することを所定回数(n+j)行い、移動平均値と新たなサンプリングデータとが一致した場合には、前記した移動平均値演算処理を終了し、新たなサンプリングデータを移動平均値演算処理することなく出力、表示する。
このように、移動平均演算処置が行われるため、冷陰極電離センサの出力値を緩やかに上昇させることができ、更に切換え直前における冷陰極電離センサと切換え直後におけるピラニセンサ出力値との差が大きい場合にあっても、移動平均値(出力値)は急激に変化させることなく、滑らかに変化させることができる。
【0040】
以上説明したように、切換え直後から所定期間、補正値が出力され、表示されるため、センサ切換え前後の急激な出力変化がなくなり、安定な高信頼性のセンサ出力データを得ることができる。
【0041】
尚、図2に示した切換え時の圧力PD0は、図4に示した切換え時の圧力PU0よりも小さな値に設定される。例えば、図2に示した切換え時の圧力PD0を0.5Paに、また図4に示した切換え時の圧力PU0を0.7Paに設定し、いわゆるヒステリシスを持たせている。
このように、圧力上昇時の切換え時の圧力を、圧力下降時の切換え時の圧力よりも大きく設定したのは、切換え圧力付近で圧力の上昇と下降とが繰返されるような場合、センサーの切換えが頻繁になされる、いわゆるチャタリングを防止するためである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる圧力センサの出力補正方法及び圧力センサの出力補正装置は前記した真空度の測定に限定されるものではなく、水圧、油圧等の種々の媒体の圧力計測に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明にかかる圧力センサの出力補正装置の概略構成図である。
【図2】図2は圧力降下時における圧力変化を示す図である。
【図3】図3は圧力降下時における圧力センサ切換え動作を説明するためのフローチャート図である。
【図4】図4は圧力上昇時における圧力変化を示す図である。
【図5】図5は圧力上昇時における圧力センサ切換え動作を説明するためのフローチャート図である。
【図6】図6は従来の補正された圧力変化を示す図である。
【図7】図7は従来の補正された圧力変化を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 センサ
2 選択器
3 移動平均値演算処理部
4 コントローラ
PH 高圧側センサ(ピラニセンサ)出力値
PL 低圧側センサ(冷陰極電離センサ)出力値
PD0 圧力降下時の切換え圧力
PU0 圧力上昇時の切換え圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサを備え、一のセンサの出力が所定のセンサ切換え圧力に達した時、一のセンサから他のセンサに切換えるとともに、切換え後の他のセンサの出力値の代わりに、移動平均値を出力する圧力センサの出力補正方法であって、
前記一のセンサの切換え時の圧力勾配を求め、前記圧力勾配に応じた移動平均回数Nを設定し、以下の数1によって計算される移動平均値を出力することを特徴とする圧力センサの出力補正方法。
【数1】

(上記式中、1≦n≦N、Cnはn番目に出力される移動平均値、Poは一のセンサの切換え時の圧力、pnは、n番目の移動平均値の出力時における他のセンサの出力値)
【請求項2】
前記圧力勾配の所定値を超える場合に所定移動平均回数が設定され、かつ、前記圧力勾配が所定値以下の場合には、前記圧力勾配の所定値を超える場合の所定移動平均回数よりも多くの回数が設定されることを特徴とする請求項1記載の圧力センサの出力補正方法。
【請求項3】
前記一のセンサが他のセンサと比べて高圧側を測定範囲とするセンサであり、他のセンサが低圧側を測定範囲とするセンサであって、
一のセンサから他のセンサへの切換え時に、他のセンサの出力値が一のセンサよりも大きな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以下になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧力センサの出力補正方法。
【請求項4】
前記一のセンサが他のセンサと比べて低圧側を測定範囲とするセンサであり、他のセンサが高圧側を測定範囲とするセンサであって、
一のセンサから他のセンサへの切換え時に、他のセンサの出力値が一のセンサよりも小さな値である場合には、他のセンサの出力値が一のセンサの出力値以上になるまで、前記一のセンサの切換え時の出力値が保持され、出力されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧力センサの出力補正方法。
【請求項5】
圧力測定範囲が互いに異なる複数の圧力センサと、この複数のセンサ出力を測定範囲に応じて択一的に切換え出力する選択手段と、前記圧力センサの測定圧力をサンプリングし、サンプリングデータを記憶すると共に、前記記憶されたサンプリングデータから移動平均値を演算、出力する移動平均値演算出力手段とを備え、
前記移動平均値の演算処理が、前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された圧力センサの出力補正方法によってなされることを特徴とする圧力センサ出力補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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