説明

圧力センサ素子および圧力センサ

【課題】本発明は、圧力センサ素子の耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】圧力センサ素子30は、センサ面331および側面333を有する板状のシリコン基板330と、シリコン基板330のセンサ面331に接合された第2平面322、および側面333と略同一平面上に配置された側面323を有する板状のガラス基板320とを備え、ガラス基板320は、更に、第2平面322から側面333に向かうに従ってセンサ面331から離間しながら第2平面322と側面323とを繋ぐ面取り面326を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を検出する圧力センサに関し、特に、圧力センサにおける圧力センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサとしては、シリコン基板のセンサ面にガラス基板の接合面を接合した圧力センサ素子を用いたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。シリコン基板にガラス基板を接合した圧力センサ素子では、検出すべき圧力に基づく圧力荷重を伝達するための金属製の伝達部材をガラス基板の接合面に背向する背向面に接合させ、ガラス基板を介してシリコン基板のセンサ面に圧力荷重が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような圧力センサでは、圧力センサ素子に予め予荷重をかけた状態から検出すべき圧力を検出しているが、この場合、センサ基板のセンサ面(もしくはガラス基板の接合面)に予荷重による応力が最もかかった状態となっている。そして、この状態で圧力センサが加熱されると、各部材(伝達部材、シリコン基板、ガラス基板)の間の熱膨張率の差に起因して、各部材に熱応力が加わると、最も応力が加わったセンサ面の周縁部と接合するガラス基板の接合面の周縁部にクラック(ひび)が発生してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、圧力センサ素子の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1] 適用例1の圧力センサ素子は、圧力を感知するセンサ面、および前記センサ面に繋がる第1側面を有する板状のシリコン基板と、前記シリコン基板の前記センサ面に接合された接合面、および前記第1側面と略同一平面上に配置された第2側面を有する板状のガラス基板とを備える圧力センサ素子であって、前記ガラス基板は、更に、前記接合面と前記第2側面とを繋ぐ面取り面を有することを特徴とする。適用例1の圧力センサ素子によれば、ガラス基板における接合面の周縁部のうち第2側面との境界に面取り面を設けることによって、接合面に対して第2側面が直接的に略直角に繋がる場合(面取り面が形成されない場合)と比較して、熱応力に対するガラス基板の強度を向上させることができる。その結果、圧力センサ素子の耐久性を向上させることができる。
【0008】
[適用例2] 適用例1の圧力センサ素子において、前記面取り面は、平面、または凹状の円弧面であると良い。適用例2の圧力センサ素子によれば、面取り面を容易に形成することができる。
【0009】
[適用例3] 適用例1または適用例2の圧力センサ素子において、前記面取り面は、エッチング加工された面であると良い。適用例3の圧力センサ素子によれば、面取り面を形成する際に面取り面に残された加工クラックやチッピング(剥離)をエッチング加工によって除去することによって、面取り面における加工クラックやチッピングを起点とする損傷を抑制し、熱応力に対するガラス基板の強度を一層向上させることができる。
【0010】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかの圧力センサ素子において、前記ガラス基板は、更に、二つの前記第2側面を繋ぐと共に、前記接合面に対して90°以下の傾斜角を成して前記センサ面から迫り上がる第3側面を有しても良い。適用例4の圧力センサ素子によれば、センサ面から迫り上がる第3側面に90°以下の傾斜角を設けることによって、第3側面が接合面に対して垂直を成す場合と比較して、熱応力に対するガラス基板の強度を向上させることができる。
【0011】
[適用例5] 適用例4の圧力センサ素子において、前記第3側面は、エッチング加工された面であると良い。適用例5の圧力センサ素子によれば、第3側面を形成する際に第3側面に残された加工クラックやチッピングをエッチング加工によって除去することによって、第3側面における加工クラックやチッピングを起点とする損傷を抑制し、熱応力に対するガラス基板の強度を一層向上させることができる。
【0012】
[適用例6] 適用例6の圧力センサは、適用例1ないし適用例5のいずれかの圧力センサ素子を備えることを特徴とする。適用例6の圧力センサによれば、シリコン基板にガラス基板を接合した圧力センサ素子を用いた圧力センサの耐久性を向上させることができる。
【0013】
本発明の形態は、圧力センサ素子および圧力センサの形態に限るものではなく、例えば、圧力センサを備える内燃機関、圧力センサ素子を製造する方法などの種々の形態に適用することも可能である。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】圧力センサの構成を示す説明図である。
【図2】圧力検出機構の詳細構成を示す説明図である。
【図3】圧力センサ素子の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】圧力センサ素子の詳細構成を示す上面図および側面図である。
【図5】圧力センサ素子の詳細構成を示す拡大断面図である。
【図6】圧力センサ素子の詳細構成を示す拡大断面図である。
【図7】圧力センサ素子の製造工程を示す工程図である。
【図8】貫通孔を形成したガラスウェハを示す説明図である。
【図9】ダイシングラインを形成したガラスウェハを示す説明図である。
【図10】変形例における圧力センサ素子の詳細構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した圧力センサについて説明する。
【0016】
A.実施例:
A−1.圧力センサの構成:
図1は、圧力センサ20の構成を示す説明図である。圧力センサ20は、棒状部材110を介して棒状部材110の中心軸CA1に沿った方向に伝達される圧力荷重に基づいて、棒状部材110に加わる圧力を検出する。圧力センサ20は、圧力検出機構210および配線基板220を備える。圧力センサ20の圧力検出機構210は、棒状部材110に加わる圧力変化を電気的特性(本実施例では電気抵抗)の変化に変換する機構である。圧力センサ20の配線基板220は、圧力検出機構210の電気的特性に基づいて、棒状部材110に加わる圧力に応じた電気信号を出力する。本実施例では、圧力センサ20の配線基板220は、圧力に応じた電気信号を、外部端子180を介して外部に出力する。
【0017】
図2は、圧力検出機構210の詳細構成を示す説明図である。圧力検出機構210は、圧力センサ素子30、伝達部材212、素子ケース214および台座218を備える。圧力検出機構210を構成する各部材は、棒状部材110から中心軸CA1に沿って、伝達部材212、圧力センサ素子30、台座218の順に配置され、これらの部材は、素子ケース214内に組み付けられている。素子ケース214は、棒状部材110の後端側に設けられたリング112に嵌め込まれている。
【0018】
圧力検出機構210の素子ケース214は、棒状部材110からの圧力荷重を圧力センサ素子30へと伝達する。素子ケース214の先端側は、リング112を介して棒状部材110と接続する凸部を備えると共に、素子ケース214の後端側は、伝達部材212及び圧力センサ素子30を内包する筒状部を備える。素子ケース214の筒状部の伝達部材212に当接する面は平面である。素子ケース214は、金属(例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)、析出硬化系ステンレス鋼(SUS630))製である。
【0019】
圧力検出機構210の伝達部材212は、素子ケース214と協働して、棒状部材110からの圧力荷重を圧力センサ素子30へと伝達する。伝達部材212は、後述するガラス基板320の第1平面321とガラスペースト等の耐熱性接着剤で接合され、ガラス基板320の第1平面321に接合する面は、平面となっている。一方、素子ケース214に当接する面は、素子ケース214に向けて突出し、中心軸CA1上を頂点とする球面となっている。伝達部材212は、金属(例えば、チタン合金(Ti−6Al−4V)、コバール)製である。
【0020】
圧力検出機構210の台座218は、伝達部材212との間に圧力センサ素子30を挟持すると共に、中心軸CA1方向への圧力センサ素子30の移動を抑制する。これによって、圧力センサ素子30は、棒状部材110から伝達される圧力荷重に応じて圧縮される。
【0021】
圧力検出機構210の圧力センサ素子30は、ガラス基板320、シリコン基板330およびガラス基板340を備える。圧力センサ素子30を構成する各部材は、棒状部材110から中心軸CA1に沿って、ガラス基板320、シリコン基板330,ガラス基板340の順に積層され、これらの隣り合う部材同士は陽極接合されている。本実施例では、圧力センサ素子30の各部材の厚さは、それぞれ0.5mm程度である。本実施例では、圧力センサ20に用いられる圧力センサ素子30が使用される温度範囲は、マイナス40℃〜プラス300℃程度である。
【0022】
A−2.圧力センサ素子の詳細構成:
図3は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す斜視図である。図4は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す上面図および側面図である。図5および図6は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す拡大断面図である。
【0023】
図3には、ガラス基板320側の斜め方向から見た圧力センサ素子30を図示した。図4の上段には、ガラス基板320側から中心軸CA1に沿って見た圧力センサ素子30の上面図を図示し、図4の下段には、中心軸CA1に直交する方向から見た圧力センサ素子30の側面図を図示した。図5には、図4の上面図に示す線分F5−F5で切断した圧力センサ素子30の断面図を図示した。図6には、図4の上面図に示す線分F6−F6で切断した圧力センサ素子30の断面図を図示した。
【0024】
圧力センサ素子30は、図3に示すように、紙面上側からガラス基板320、シリコン基板330、およびガラス基板340が順に積層配置された構造を有する。なお、本実施例では、圧力センサ素子30の構成として、ガラス基板320、シリコン基板330、およびガラス基板340をそれぞれ説明するが、ガラス基板340については、圧力センサ素子30に必須の構成ではなく、圧力センサ素子30は、少なくともガラス基板320およびシリコン基板330を有していればよい。
【0025】
圧力センサ素子30のシリコン基板330は、シリコン製の部材であり、中心軸CA1に直交する二つの平面であるセンサ面331および背向面332を有する板状を成す。シリコン基板330のセンサ面331は、圧力を感知する平面であり、ガラス基板320に陽極接合されている。シリコン基板330の背向面332は、センサ面331に背向する平面であり、ガラス基板340に陽極接合されている。
【0026】
中心軸CA1方向から見たシリコン基板330は正方形であり、シリコン基板330は、センサ面331および背向面332に加え、四つの側面333を有する。シリコン基板330の側面333は、センサ面331および背向面332に対してそれぞれ略垂直を成して繋がる第1側面である。
【0027】
本実施例では、シリコン基板330のセンサ面331には、圧力に応じて電気抵抗が変化する公知の抵抗体(図示しないが、具体的には、特開2010−175447の図8を参照)が電極パッド411,412,413と共に形成されている。図4の上段に示すように、シリコン基板330のセンサ面331において後述のガラス基板320から露出する四つの角のうちの三つの角の各々に、電極パッド411,412,413が個別に形成されている。シリコン基板330の電極パッド411,412,413は、それぞれ配線基板220へと電気的に接続される。本実施例では、シリコン基板330における電極パッドの数は三つであるが、他の実施形態において、二つであっても良いし、四つ以上であっても良く、用途に合わせて電極パッドの数を適宜設定すればよい。
【0028】
圧力センサ素子30のガラス基板340は、ガラス製の部材であり、中心軸CA1に直交する二つの平面である第1平面341および第2平面342を有する板状を成す。ガラス基板340の第1平面341は、シリコン基板330の背向面332に陽極接合された接合面であり、ガラス基板340の第2平面342は、台座218に当接する当接面である。
【0029】
中心軸CA1方向から見たガラス基板340の形状は、シリコン基板330と同じ大きさの正方形であり、ガラス基板340は、第1平面341および第2平面342に加え、四つの側面343を有する。ガラス基板340の側面343は、第1平面341および第2平面342に対してそれぞれ略垂直を成して繋がる端面である。
【0030】
圧力センサ素子30のガラス基板320は、ガラス製の部材であり、中心軸CA1に直交する二つの平面である第1平面321および第2平面322を有する板状を成す。ガラス基板320の第1平面321は、伝達部材212に当接する当接面であり、ガラス基板320の第2平面322は、シリコン基板330のセンサ面331に陽極接合された接合面である。本実施例では、ガラス基板320の第1平面321および第2平面322は、シリコン基板330との陽極接合に先立って、エッチング加工によって加工クラックやチッピングが除去された面である。
【0031】
図4に示すように、中心軸CA1方向から見たガラス基板320の形状は、シリコン基板330と同じ大きさの正方形における四つの角を各角を中心とする円弧でそれぞれ切り欠いた形状であり、ガラス基板320は、第1平面321および第2平面322に加え、四つの側面323および四つの側面327を有する。ガラス基板320の側面323は、中心軸CA1方向から見た正方形の辺に沿った面であり、ガラス基板320の側面327は、中心軸CA1方向から見た正方形を切り欠く円弧面である。
【0032】
図5に示すように、ガラス基板320の側面323は、シリコン基板330の側面333と略同一平面上に配置された第2側面であり、第1平面321および第2平面322に対してそれぞれ略垂直を成すように繋がっている。本実施例では、ガラス基板320の側面323は、ガラス基板320とシリコン基板330とを陽極接合した後に、シリコン基板330の側面333およびガラス基板340の側面343と共に、ダイシング加工によって形成された面である。エッチング加工は、シリコン基板330のパッシベーション層(SiO2)を溶解させて、シリコン基板330の電極パッド411,412,413を剥離させる可能性があることから、ダイシング加工によって形成された側面323,333,343にエッチング加工を実施することはできない。そのため、ガラス基板320の側面323には、ダイシング加工による加工クラックやチッピングが残されている。
【0033】
図5に示すように、ガラス基板320における第1平面321と側面323との角部には、第1平面321と側面323とを繋ぐ面取り面324が形成され、第2平面322と側面323との角部には、第2平面322と側面323とを繋ぐ面取り面326が形成されている。ガラス基板320の面取り面326は、第2平面322から側面323に向かうに従ってシリコン基板330のセンサ面331から遠ざかる。本実施例では、ガラス基板320の面取り面324および面取り面326の各断面形状は直線である。本実施例では、ガラス基板320の面取り面324および面取り面326は、エッチング加工によって加工クラックやチッピングが除去された面であり、ガラス基板320とシリコン基板330との陽極接合に先立って形成される。
【0034】
さらに、図6に示すように、ガラス基板320の側面327は、二つの側面323を繋ぐと共に、シリコン基板330のセンサ面331から迫り上がる第3側面であり、第2平面322に対して90°以下の傾斜角θsを成す。ガラス基板320における第1平面321と側面327との境界には、第1平面321と側面327とを繋ぐ面取り面328が形成されているが、第2平面322と側面327との角部には、面取り面は形成されていない。本実施例では、ガラス基板320の側面327および面取り面328は、エッチング加工によって加工クラックやチッピングが除去された面であり、ガラス基板320とシリコン基板330との陽極接合に先立って形成される。
【0035】
A−3.圧力センサ素子の製造工程:
図7は、圧力センサ素子30の製造工程を示す工程図である。圧力センサ素子30の製造工程では、ガラス基板320の元であるガラスウェハ520を用意する工程(プロセスP20)を実施する。
【0036】
ガラスウェハ520を用意する工程(プロセスP20)では、まず、ガラスウェハ520に貫通孔527をサンドブラスト加工によって形成する(プロセスP22)。図8は、貫通孔527を形成したガラスウェハ520を示す説明図である。図8の(a)段には、ガラスウェハ520の一部を第1平面521から見た上面図を図示し、図8の(b)段には、(a)段の上面図に示す線分F8(b)−F8(b)で切断したガラスウェハ520の部分断面図を図示した。
【0037】
図8に示すように、相互に平行な第1平面521および第2平面522を有する円板であるガラスウェハ520に対して、第1平面521から第2平面522へと貫通する複数の貫通孔527を、第1平面521および第2平面522上において縦横で等間隔に、サンドブラスト加工によって形成する。貫通孔527は、傾斜角θsの勾配を有する孔であり、第2平面522側よりも第1平面521側で大きく開口する。本実施例では、複数の貫通孔527を形成した後、これらの貫通孔527の各々における第1平面521との角部に面取り面528をサンドブラスト加工によって形成する。ガラスウェハ520の第1平面521、第2平面522、貫通孔527、面取り面528の各々は、圧力センサ素子30におけるガラス基板320における第1平面321、第2平面322、側面327、面取り面328の各々にそれぞれ相当する。
【0038】
図7の説明に戻り、貫通孔527を形成した後(プロセスP22)、ガラスウェハ520にダイシングライン524,526をサンドブラスト加工によって形成する(プロセスP24)。図9は、ダイシングライン524,526を形成したガラスウェハ520を示す説明図である。図9の(a)段には、ガラスウェハ520の一部を第1平面521から見た上面図を図示し、図9の(b)段には、(a)段の上面図に示す線分F9(b)−F9(b)で切断したガラスウェハ520の部分断面図を図示した。
【0039】
図9に示すように、貫通孔527を形成したガラスウェハ520に対して、第1平面521にダイシングライン524を、第2平面522にダイシングライン526を、それぞれサンドブラスト加工によって形成する。ダイシングライン524およびダイシングライン526は、複数の貫通孔527の各中心を縦横に結ぶ直線に沿った溝であり、本実施例では、「V」字状の断面形状を有する溝である。ガラスウェハ520のダイシングライン524は、圧力センサ素子30におけるガラス基板320の面取り面324に相当し、ガラスウェハ520のダイシングライン526は、圧力センサ素子30におけるガラス基板320の面取り面326に相当する。
【0040】
図7の説明に戻り、ダイシングライン524,526を形成した後(プロセスP24)、ガラスウェハ520に対して、フッ酸によるエッチング加工を実施する(プロセスP26)。これによって、ガラスウェハ520における第1平面321、第2平面322、ダイシングライン524,526、側面327および面取り面328の各々から、加工クラックやチッピングを除去する。
【0041】
ガラスウェハ520に対するエッチング加工を終え(プロセスP26)、ガラスウェハ520の用意が完了すると(プロセスP20)、ガラスウェハ520の第2平面522にシリコンウェハ530を陽極接合する陽極接合工程(プロセスP40)を実施し、ガラスウェハ520にガラスウェハ540を陽極接合した接合体630を作成する。シリコンウェハ530は、シリコン基板330の元となるシリコン製の円板であり、陽極接合工程(プロセスP40)に先立って抵抗対や電極パッドが予め形成されている。本実施例では、陽極接合工程(プロセスP40)では、ガラスウェハ520およびシリコンウェハ530を重ね合わせて約250〜600℃に加熱しながら約400〜1000V(ボルト)の電圧を印加する。
【0042】
陽極接合工程(プロセスP40)の後、接合体620のシリコンウェハ530側にガラスウェハ540を陽極接合する陽極接合工程(プロセスP50)を実施し、接合体620にガラスウェハ540を陽極接合した接合体630を作成する。ガラスウェハ540は、ガラス基板340の元となるガラス製の円板である。本実施例では、陽極接合工程(プロセスP50)では、接合体620およびガラスウェハ540を重ね合わせて約250〜600℃に加熱しながら約400〜1000Vの電圧を印加する。
【0043】
陽極接合工程(プロセスP50)の後、ダイシング加工により接合体630から複数の圧力センサ素子30を切り出すダイシング工程(プロセスP60)を実施する。ダイシング工程(プロセスP60)では、ダイシングライン524,526の中心に沿って接合体630を切断する。ダイシング工程(プロセスP60)による接合体630の切り口は、圧力センサ素子30における各部材の側面323,333,343になる。
【0044】
ダイシング工程(プロセスP60)を終えると、複数の圧力センサ素子30が完成する。なお、シリコン基板330の電極パッド411,412,413が剥離する可能性があることから、ダイシング加工後の圧力センサ素子30に対してエッチング加工を実施することはできない。そのため、圧力センサ素子30における各部材の側面323,333,343には、ダイシング加工による加工クラックやチッピングが残されている。
【0045】
A−4.効果:
以上説明した圧力センサ20によれば、ガラス基板320における第2平面322の周縁部のうち側面323との角部に面取り面326を設けることによって、第2平面322に対して側面323が直接的に略直角に繋がる場合(面取り面326が形成されない場合)と比較して、熱応力に対するガラス基板320の強度を向上させることができる。その結果、圧力センサ素子30の耐久性を向上させることができ、ひいては圧力センサ20の耐久性を向上させることができる。
【0046】
また、ガラス基板320の面取り面326は平面であるため、面取り面326を容易に形成することができる。
【0047】
また、ガラス基板320の面取り面326は、エッチング加工された面であるため、面取り面326を形成する際に面取り面326に残された加工クラックやチッピングをエッチング加工によって除去することによって、面取り面326における加工クラックやチッピングを起点とする損傷を抑制し、熱応力に対するガラス基板320の強度を一層向上させることができる。
【0048】
また、シリコン基板330のセンサ面331から迫り上がるガラス基板320の側面327は、ガラス基板320の第2平面322に対して90°以下の傾斜角θsを成すため、側面327が第2平面322に対して垂直を成す場合と比較して、熱応力に対するガラス基板320の強度を向上させることができる。
【0049】
また、ガラス基板320の側面327は、エッチング加工された面であるため、側面327を形成する際に側面327に残された加工クラックやチッピングをエッチング加工によって除去することによって、側面327における加工クラックやチッピングを起点とする損傷を抑制し、熱応力に対するガラス基板320の強度を一層向上させることができる。
【0050】
また、ガラス基板320における第1平面321の周縁部には面取り面324,328が形成されているため、第1平面321の周縁部が面取り加工されていない場合と比較して、外力に対するガラス基板320の強度を向上させることができる。
【0051】
B.他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、圧力センサ素子30は、圧力センサ20への利用に限るものではなく、汎用的に用いられる圧力センサに組み込まれても良いし、特定の用途に用いられる圧力センサに組み込まれても良い。
【0052】
また、前述の実施例では、図5に示すように、ガラス基板320の面取り面324,326は平面であったが、これに限るものではなく、凹状の円弧面であっても良い。図10は、変形例における圧力センサ素子30の詳細構成を示す拡大断面図である。図10の変形例では、ガラス基板320の面取り面324,326は凹状の円弧面である。図10の変形例における圧力センサ素子30を製造工程では、ダイシングライン524,526を形成する工程(プロセスP24)において、「V」字状の断面形状を有する溝に代えて、半円状の断面形状を有する溝によるダイシングライン524,526をサンドブラスト加工によって形成する。そのため、ガラス基板320の面取り面326が凹状の円弧面であっても、面取り面326を容易に形成することができる。
【0053】
また、前述の実施例では、圧力センサ素子30を製造工程において、サンドブラスト加工によって貫通孔527、面取り面528、ダイシングライン524,526を形成したが(プロセスP22,P24)、他の実施形態において、貫通孔527、面取り面528、ダイシングライン524,526の少なくとも一つを、サンドブラスト加工に代えて、切削加工によって形成しても良い。
【0054】
また、前述の実施例では、ガラス基板320に面取り面324,328を形成したが、他の実施形態において、面取り面324,328を形成しなくても良い。また、前述の実施例では、ガラス基板320の側面327は、円弧面であったが、他の実施形態において、平面であっても良い。また、ガラス基板320の側面327は、第2平面322に対して90°以下の傾斜角θsを成す面としたが、他の実施形態において、第2平面322に対して垂直を成す面であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
20…圧力センサ
30…圧力センサ素子
110…棒状部材
112…リング
180…外部端子
210…圧力検出機構
212…伝達部材
214…素子ケース
218…台座
220…配線基板
320…ガラス基板
321…第1平面
322…第2平面
323…側面
324…面取り面
326…面取り面
327…側面
328…面取り面
330…シリコン基板
331…センサ面
332…背向面
333…側面
340…ガラス基板
341…第1平面
342…第2平面
343…側面
411,412,413…電極パッド
520…ガラスウェハ
521…第1平面
522…第2平面
524…ダイシングライン
526…ダイシングライン
527…貫通孔
528…面取り面
530…シリコンウェハ
540…ガラスウェハ
620…接合体
630…接合体
CA1…中心軸
θs…傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を感知するセンサ面、および前記センサ面に繋がる第1側面を有する板状のシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記センサ面に接合された接合面、および前記第1側面と略同一平面上に配置された第2側面を有する板状のガラス基板と
を備える圧力センサ素子であって、
前記ガラス基板は、更に、前記接合面と前記第2側面とを繋ぐ面取り面を有することを特徴とする圧力センサ素子。
【請求項2】
前記面取り面は、平面、または凹状の円弧面であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ素子。
【請求項3】
前記面取り面は、エッチング加工された面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力センサ素子。
【請求項4】
前記ガラス基板は、更に、二つの前記第2側面を繋ぐと共に、前記接合面に対して90°以下の傾斜角を成して前記センサ面から迫り上がる第3側面を有する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の圧力センサ素子。
【請求項5】
前記第3側面は、エッチング加工された面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力センサ素子。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の圧力センサ素子を備える圧力センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate