説明

圧力センサ

【課題】体外循環回路内の圧力を測定する圧力センサにおいて、体液或いは薬液の滞留を起し、体液の凝固を引き起こすことを防止する。
【解決手段】(イ)体外循環回路内圧力によって変形しない基準面と、該基準面に対して離隔配置された、体外循環回路内圧力によって変形する変形面と、前記基準面と該変形面を連結して内部に閉鎖された液密な空間を形成する、体外循環回路内圧力によって変形しない接続面と、該接続面の側面に設けられた液体流入口及び液体流出口を備えたケーシング、及び(ロ)前記ケーシングの外に配置され、前記変形面の変形量を直接的または間接的に検知することによって該ケーシング内の圧力を測定する手段;を備えた体外循環回路の圧力センサであって、液密に接続された該流路が、ケーシング内に導入される液体が前記接続面の側面内周に沿って流入するように配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に体液或いは薬液を流通させる体外循環回路内の圧力を測定する圧力センサに関する。
【0002】
さらに詳しくは、体外循環回路の途中に配置され、ケーシングと、該ケーシングに配置された液体流入口と液体流出口と、圧力によって少なくとも一部が変形する変形面及びケーシング内の圧力を測定する手段とを有する圧力センサにおいて、該ケーシング内に存在する液体を滞留なく流動させてケーシング内の液体を新たに導入された液体と効率良く置換することにより、該ケーシング内における体液或いは薬液が停滞して凝固することを防ぐようにした圧力センサに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の体内から血液を取り出し、血液処理装置を用いて血液の体外処理を行い、処理された血液を体内に戻す体外循環療法においては、通常、体外循環回路内の圧力を測定するための圧力センサが配置される。
【0004】
体外循環回路内の圧力を測定する手段の一例として、特許文献1には、体外循環療法で多用されているドリップチャンバーを用いた圧力測定方法が記載されている。
【0005】
図16はドリップチャンバーを用いた圧力測定方法の構成の一例を示す概略構成図である。図16に示すように、ドリップチャンバー2は、体外循環回路32の途中に配置され、ドリップチャンバー2の上部から分岐した分岐チューブ33と、分岐チューブ33の末端に配された圧力測定装置50とから構成されている。
【0006】
図16に示すようなドリップチャンバー形式の圧力測定方法においては、ドリップチャンバー2内にある程度の量の、例えば体積の半分程度の体液或いは薬液を貯留し、のこり半分は空気層として体外循環療法を施行する。空気を介することで、圧力測定装置が体液或いは薬液と直接接触することなく、体外循環回路内の圧力を測定している。
【0007】
しかしながら、ドリップチャンバー2は、その内径の大きさから、体液或いは薬液と空気との接触面積が大きく、さらには、貯留する体液或いは薬液の量が多いため、貯留されている液体全体が新たに導入される液体と置換されるまでに時間がかかり、体液或いは薬液の滞留や凝固を誘発するという可能性があった。
【0008】
このような問題点を解消する圧力センサの一例として、特許文献2には、体液或いは薬液と空気との接触を回避する圧力の測定方法として、隔膜(体外循環回路内圧力により変形する変形部)を介して体外循環回路内の圧力を測定する圧力測定方法が記載されている。
【0009】
図17は隔膜を介して体外循環回路内の圧力を測定する圧力測定方法の構成の一例を示す概略構成図である。図17に示すように、圧力センサ3は体外循環回路32の途中に配置され、圧力センサ3を構成するケーシング15に配置された、ケーシング内の圧力によって少なくとも一部が変形する変形面20の変形量を直接的または間接的に検知することによってケーシング15内の圧力を測定する。なお、図17において、図16の各構成部材と同じ機能を奏する構成部材には同じ符号を付している。
【0010】
【特許文献1】特開2002−282355
【特許文献2】特開平09−024026
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図17に示す圧力測定方法の構成において、従来の圧力センサ3においては、液体流入口30と液体流出口31が実質的にほぼ一直線上に配置されていることから、導入される液体が液体流入口30からケーシング15に流入する過程における流路の急拡大により、液体流入口30において、対流が生じ、そのため、流れに淀みが発生するために、体液や薬液が一定の場所に滞留することで、体液の凝固を引き起こす可能性があった。
【0012】
さらには、低流量の場合においては、ケーシング15内では、流れに乱れが生じることがなく、導入された液体は、実施的にほぼ一直線上に配置された液体流出口31に進むため、ケーシング15内での液体の置換が促進されず、ひいては体液の凝固を引き起こす可能性があった。
【0013】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑み、空気と接触することなく体外循環回路内の圧力を測定する圧力センサにおいて、流れの要因から、体液或いは薬液の滞留を起し難い、体液の凝固を引き起こすことのないような構造の圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、圧力センサの接液部を構成するケーシングとして、体外循環回路内圧力によって変形しない基準面と、該基準面に対し一定の距離を置いて離隔配置された、体外循環回路内圧力によって少なくとも一部が変形する変形面と、該変形面と前記基準面とを連結して内部に閉鎖された液密な空間を形成する、体外循環回路内圧力によって変形しない接続面とから構成され、該接続面の側面には液体流入口及び液体流出口とを設けたケーシングを用い、該ケーシング内に導入される流体が内周面に沿って流入するようにケーシングに流体を導入する流路を配置することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成を含む。
【0015】
(1)体外循環回路の圧力センサの第一の構成は、少なくとも(イ)体外循環回路内圧力によって変形しない基準面と、該基準面に対して離隔配置された、体外循環回路内圧力によって少なくとも一部が変形する変形面と、前記基準面と該変形面を連結して内部に閉鎖された液密な空間を形成する、体外循環回路内圧力によって変形しない接続面と、該接続面の側面に設けられた液体流入口及び液体流出口を備えたケーシング、及び(ロ)前記ケーシングの外に配置され、前記ケーシングの変形面の変形量を直接的または間接的に検知することによって該ケーシング内の圧力を測定する手段;を備えた体外循環回路の圧力センサであって、
前記液体流入口に前記ケーシングに液体を導入するための流路が液密に接続されており、且つ該流路は、ケーシング内に導入される液体が前記接続面の側面内周に沿って流入するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
(2)体外循環回路の圧力センサの第二の構成は、上記第一の構成において、前記液体流出口が、前記液体流入口から前記接続面の側面内周に沿ってケーシング内に導入された液体の流れ方向に、該液体流入口から1/2周以上1周未満離れた位置に配置され、ていることを特徴とする。
【0017】
(3)体外循環回路の圧力センサの第三の構成は、上記第一又は第二の構成において、前記接続面の近傍に液体の流れを乱すための邪魔板部が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧力センサは、上記第一の構成としたことにより、接続面の側面に沿った液体の流れが形成され、基準面のほぼ真中を中心として、基準面と平行に実質的に同心円状の流れが形成され、ケーシング内で流れに循環が生じる。このため、仮にケーシング内に導入される液体が、液体導入口において、流路の急拡大により滞留が生じたとしても、ケーシング内で循環する流れにより、その滞留を解消することができ、ケーシング内での液体の滞留や、体液の凝固を抑制できる。
【0019】
本発明の圧力センサは、上記第二の構成としたことにより、従来の液体流入口と液体流出口が実質的に一直線上に配置されている場合に比べて、低流量の場合においても、ケーシング内に強制的に流れの乱れを生じさせることが可能である。このため、ケーシング内での液体の滞留や、体液の凝固を抑制できる。本発明の圧力センサは、どのような流量においても好適に用いることができる。
【0020】
本発明の圧力センサは、上記第三の構成としたことにより、更に効率良くケーシング内の液体の置換を促進することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明圧力センサの実施態様を説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではない。
【0022】
[第一実施形態]
本発明に係る体外循環回路の圧力センサの第一実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態の圧力センサの模式図である。
【0023】
(圧力センサ1の構成)
図1において、圧力センサ1は、体外循環回路32上に配置され、体外循環回路内圧力によって変形しない基準面10と、基準面10に対して離隔配置された、体外循環回路内圧力によって少なくとも一部が変形する変形面20と、基準面10と変形面20とを連結して内部に閉鎖された液密な空間を形成する接続面12と、接続面12の側面に設けられた液体流入口30及び液体流出口31とを備えたケーシング15、ケーシング15外に配置され、ケーシング15の変形面20の変形量を間接的に検知することによってケーシング15内の圧力を測定する手段80から構成されている。
【0024】
圧力を測定する手段80は、変形面20と圧力測定装置50との間を液密、且つ気密な空間に形成する隔壁40と圧力測定装置50から構成される。
【0025】
(圧力測定方法)
図1において、圧力測定方法として、変形面20の変形部が体外循環回路32内の圧力が変化することにより、変形面20との間を気密な空間に形成する隔壁40内の圧力が変化し、その圧力変化を、圧力測定装置50を用いて測定することで、体外循環回路32内の圧力を間接的に測定する方法が示されている。
【0026】
圧力測定方法として、図8に示すように、変形面20の変形部の変形量をロードセンサ51やひずみゲージ等で直接測定することで、体外循環回路32内の圧力を測定する方法を用いても良い。圧力測定方法は、体外循環回路32内の圧力を正しく測定できるものであれば問題はなく、特に限定されるものではない。
【0027】
(形状)
図1において、基準面10は、円形をしているが、図2に示すような八角形などの多角形であっても特に問題はない。また、図3に示すように、基準面10と変形面20が異なる形状・大きさであっても特に問題はない。
【0028】
また、図1において基準面10は平板状であるが、基準面10の表面形状に凹凸を付すと、第二実施態様で後述するようにより液体の置換に効果が現れる場合もあり、その表面形状は特に限定するものではない。しかし、よりスムーズな液体の流れを形成するには、図1に示すような、基準面10および変形面20が円形かつ平板状で、同じ大きさの形状であることが好ましい。
【0029】
また、図1において、接続面12は、断面から見て直線状であるが、図4に示すように、基準面10と接続面12の接点や、変形面20と接続面12の接点が、90°でなく、45°程度の斜面を介して連結する形状であってもよい。
【0030】
また、図5に示すように、基準面10と接続面12の接点や、変形面20と接続面12の接点が、丸みをもって連結する形状であってもよい。また、図6に示すように、基準面10や変形面20が、全体が丸みを呈している形状などでもよい。
【0031】
図2〜図6のいずれの場合においても特に問題はないが、よりスムーズな液体の流れを形成するには、図5や図6に示すような、基準面と接続面の接点がある程度丸みをもって連結する形状であることが好ましい。
【0032】
さらに、図1において、変形面20の形状は、平板形状を成しているが、図7に示すように、断面から見て三角波形状や、またはサイン波のような形状をしていても問題はない。また、変形面20は、図1、図7では全て変形する部分である変形部としているが、変形面20に占める変形する部分(変形部)の面積や形状は、圧力を正しく測定できるものであればどのような割合の面積あるいは形状であっても良く、特に限定するものではない。
【0033】
また、図1において、体外循環回路32は、基準面10に対して、平行に流入しているが、図9に示すように、若干傾いていても上記発明の効果を低下させるものではない。しかしながら、よりスムーズな液体の流れを形成するには、体外循環回路32は、基準面10に対して、0〜30度の角度の範囲内で流入すること、さらに好ましくは0〜15度の範囲内、最も好ましくは平行に流入することが望ましい。
【0034】
さらに、図1において、液体流入口30は、完全に接続面12の側面に沿うように設置されているが、図10に示すように、液体流入口30が若干中心に向かってずれていても、上記発明の効果を低下させるものではない。しかしながら、よりスムーズな液体の流れを形成するには、液体流入口30は、接続面12の側面から法線方向内側に向かって0〜3mm以内、さらに好ましくは0〜2mm以内、最も好ましくは0〜1mmの位置に設置されていることが望ましい。
【0035】
液体流出口31は、図1においては、円形形状の最も高い位置に設置されているが、図11に示すような位置とし、圧力センサ1を液体流入口30が重力に対して平行となるように設置した場合、液体を流通させた際には、ケーシング15の上部の領域60に空気が残り、圧力センサ1内で体液或いは薬液が、空気に接触し、ひいては凝固を引き起こす可能性がある。しかし、治療中に圧力センサ1の向きを変えるなどすると圧力センサ1内に存在する空気を排出することが可能であることから、液体流出口31の位置は上記発明の効果を低下させるものではなく、特にその位置は限定されるものではない。
【0036】
また、図1においては、液体流出口31が、液体流入口30から接続面12の側面内周に沿ってケーシング15内に導入された液体の流れ方向に、液体流入口30から3/4周離れた位置に配置され、かつ液体の流出方向が液体の流入方向に対して180度の角度を成すように液体流出口31に接続されている。しかし、図12に示すように、液体流出口31が、液体流入口30から接続面12の内周面に沿ってケーシング15内に導入された液体の流れ方向に、液体流入口30から1/2周離れた位置に配置され、かつ液体の流出方向が液体の流入方向に対して90度の角度を成すように液体流出口31に接続されていても上記発明の効果を低下させるものではない。
【0037】
液体流出口31が、液体流入口30から接続面12の内周面に沿ってケーシング15内に導入された液体の流れ方向に、液体流入口30から1/2周以上1周未満離れた位置に配置されていることは特に好ましい。また、液体の流出方向が液体の流入方向に対する角度は、ケーシング15内での流れを特に変えるものではないため、その向きは使用条件に合わせて適宜設定すればよく、その向きを特に限定するものではない。
【0038】
加えて、図1においては、断面方向からみた液体流入口30および液体流出口31は、基準面10と変形面20との間の距離の、中央の位置となっている。しかしながら、図13に示すように、液体流入口30および液体流出口31は、基準面10側や、変形面20側に偏っていても上記発明の効果を低下させるものではなく、その配置を限定されるものではない。しかしながら、よりスムーズな液体の流れを形成するには、液体流入口30は、基準面10と変形面20との中心から0〜3mmの範囲内、さらに好ましくは0〜2mmの範囲内、最も好ましくは0〜1mmの範囲内に配置されていることが望ましい。液体流出口31の流出方向は、ケーシング15内の流れに影響を与えるものではないため、上記発明の効果を低下させるものではなく、その位置を特に限定するものではない。
【0039】
また図1において、液体流入口30と液体流出口31は、基準面10に対して、平行な同一面上に配置されている。しかしながら、液体流入口30と液体流出口31は、図13に示すように、基準面10に対して、平行な同一面上に配置されていなくても、上記発明の効果を低下させるものではなく、その配置を限定されるものではない。すなわち、液体流入口30と液体流出口31は、基準面10からの距離が異なる位置に配置されていてもよい。
【0040】
(材質)
ケーシング15、隔壁40の材質は、硬質・軟質は特に問わないが、液温や気温、ケーシング15を変形させるような外的な力などの環境要因により、ケーシング15の形状に変化が生じてしまうと、正しく体外循環回路32内の圧力を測定することが難しくなる。そのため、ケーシング15の材質は硬質であることが好ましく、さらには患者の体液に直接または間接的に触れるため、生体適合性を有している材質が好ましい。例えば、塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等を挙げることができ、いずれにおいても好適に用いることができる。またその製造方法は特に限定するものではないが、インジェクション成型、ブロー成型、切削加工による成型などが例示できる。
【0041】
圧力によって少なくとも一部が変形する変形面20の変形する部分(変形部)の材質は、硬質であると、圧力による変動量が小さくなり、体外循環回路32内の圧力を正確に測定することが難しくなることから、圧力に対して柔軟に変形する軟質な材質であることが望ましい。さらには患者の体液に直接または間接的に触れるため、生体適合性を有している材質が好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、シリコン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーコンパウンド等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。それ以外の部分(変形しない部分)の材質に関しては、上記したケーシング15や隔壁40と同等の材質であれば特に問題はない。
【0042】
体外循環回路32の材質は、合成樹脂、金属およびガラス等の何れでも構わないが、製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオフィレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。なかでも、軟質素材は折れ曲がりや割れ等に強く、操作時の柔軟性に優れているため好ましく、組み立て性の理由から軟質塩化ビニルが特に好ましい。
【0043】
(接合方法)
ケーシング15と隔壁40、体外循環回路32のそれぞれの接合方法は、特に限定はしないが、一般に合成樹脂の接合には、熱溶融接合や接着が挙げられ、例えば、熱溶融接合においては、高周波溶接、誘導加熱溶接、超音波溶接、摩擦溶接、スピン溶接、熱板溶接、熱線溶接などが挙げられ、接着剤の種類としては、シアノアクリレート系、エポキシ系、ポリウレタン系、合成ゴム系、紫外線硬化型、変性アクリル樹脂系、ホットメルトタイプ等を挙げる事ができる。
【0044】
また、変形面20において、変形する部分(変形部)と、それ以外の部分(変形しない部分)との接合方法は特に限定しないが、一般に硬質な素材と軟質な素材の接合には、軟質な素材を硬質な素材が押さえ込むことによりシールする機械的シールや、上記に示したような熱溶融接合や接着などを挙げる事ができる。
【0045】
このような圧力センサ1は、成型、接合後そのままの状態で使用してもよいが、特に体外循環療法の医療用途においては、滅菌して利用する。滅菌方法は通常の医療用具の滅菌方法に準じるとよく、薬液、ガス、放射線、高圧蒸気、加熱等によって滅菌すればよい。
【0046】
(大きさ)
圧力センサ1の基準面10、変形面20、接続面12の大きさは、あまり大きいと、ケーシング15の容積が大きくなり、プライミングボリュームが増大してしまうが、あまり小さいと、体外循環回路内の圧力が陰圧となることにより変形面20が基準面10側に膨らむことで、変形面20が液体流入口30や液体流出口31を塞いでしまい、液体が流通しなくなるという問題が生じる。そのため、基準面10の大きさは、直径にして15〜40mm程度が好ましく、さらに好ましくは20〜30mm程度であることが望ましく、接続面12の高さは5〜20mmが好ましく、さらに好ましくは、5〜10mmであることが望ましい。
【0047】
体外循環回路32の内径は、各体外循環療法に則して選択されればよく特に限定するものではない。例えば体外循環療法の中の一つである血液浄化療法においては、一般的に2〜5mm程度の内径のメインチューブが選択される。体外循環回路32の断面形状は円形断面でなくても良く、楕円形や四角形、六角形を含む非円形断面であっても問題はない。
【0048】
(液体)
圧力センサ1に流通させる液体は、体液或いは薬液であれば何でもよく、特に限定するものではない。体液の例として、血液、血漿、リンパ液、組織液、粘液、ホルモン、サイトカイン、尿等が挙げられ、薬液の例としては、生理食塩液、抗凝固剤、新鮮凍結血漿、透析液、アルブミン溶液、ろ過型人工腎臓用補液等が挙げられる。
【0049】
[第二実施形態]
次に本発明に係る体外循環回路の圧力センサの第二実施形態について図を用いて説明する。図14は第二実施形態の体外循環回路の模式図である。前述した第一実施態様と同一の部分および同様の機能を有する部分については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0050】
本実施形態の圧力センサ1は、上記第一実施形態の圧力センサ1に、液体流入口30と液体流出口31の間の接続面近傍に邪魔板部70を1つ設置したものである。邪魔板部70は、流体の流れを乱すためのものである。
【0051】
ケーシング15内に導入される流体が接続面12の側面内周に沿って基準面10に実質的に平行に流入するように配置することにより、ケーシング15内を循環するような流れを形成することで、体液或いは薬液の滞留を防いでいる。
【0052】
本実施形態では、さらに液体流入口30と液体流出口31の間の接続面近傍に流体の流れを乱すための邪魔板部70を設置することにより、更に効率良くケーシング内の液体の置換を促進することが可能となる。すなわち、ケーシング15内を循環するような流れに加え、さらにその中心に向かう流れを作り出すことで、ケーシング15内の乱れを強くし、ひいてはケーシング15内の体液或いは薬液を早期に置換することが可能となる。
【0053】
邪魔板70の設置位置は、特に限定するものではないが、最も流速の速い、接続面12に接する位置に配置されることが好ましい。また、邪魔板部70の設置位置は、図14においては、液体流入口30と液体流出口31の、距離の長い方の間の、液体流出口31に隣接する位置となっている。しかしながら、図15に示すように、邪魔板部70は、液体流出口31の対向する接続面12に設置されていても上記発明の効果を低下させるものではなく、その設置位置を特に限定するものではない。
【0054】
邪魔板70の大きさは、大きすぎると変形面20が変形した際に邪魔板70に干渉し、あまり小さいとその効果を発揮することができない。従って、邪魔板部70の直径方向の幅は、基準面10の直径に対して5〜15%程度の幅、さらに望ましくは10〜15%程度の幅、接続面12の側面の高さに対して30〜80%程度の高さ、さらに好ましくは50〜70%程度の高さであることが好ましいが、特に限定するものではない。
【0055】
邪魔板部70の形状は、基準面10から見た場合、図14に示すような三角形などの多角形や、その角にある程度丸みをつけたものなどが挙げられるが、上記効果を発揮できるものであれば何れにおいても問題はなく、特に限定するものではない。
【0056】
邪魔板部70の設置数は、図14においては、1つであるが、2つ以上設置すると、上記発明の効果をより向上することが可能となる。その際の設置数や、各邪魔板部70の間隔は、使用流量に応じて適宜設定すればよく、特に限定するものではないが、あまりに間隔が近すぎると、邪魔板部70を複数設置する意味がなくなり、また邪魔板部70の下流側で、流れに淀みが発生する可能性があるため、設置数を多くしすぎることも好ましくない。したがって、邪魔板部を複数設置する場合は、多くても4箇所程度が望ましく、また各邪魔板部70の間隔は、接続面12の周長に対して15〜25%以上離れていること、さらに好ましくは20〜25%以上離れている事が望ましい。
【実施例】
【0057】
以下実施例により本発明の効果を確認したので説明する。図1(第一実施形態)および図16(比較例1)に示す構成の圧力センサを用いて、下記の方法で液体の置換効率の比較テストを行った。
【0058】
(1)体外循環回路32および圧力センサ1に流通させる第一の液体を朱色に着色した水道水として送液ポンプを用い、50ml/分の流量で送液し、体外循環回路32および圧力センサ1を充填した。
【0059】
(2)次に体外循環回路32および圧力センサ1に流通させる第二の液体を透明な水道水とし、送液ポンプを用いて同流量の50ml/分で送液した。
【0060】
(3)第二の液体の送液開始時点より圧力センサ1のケーシング内全体が透明になるまで、つまりケーシング内が透明の水道水により置換されるまでの時間を測定した。
【0061】
(第一実施形態)
体外循環回路32としては、圧力センサ1の入口側及び出口側に夫々内径3.3mmの軟質塩化ビニルチューブを接続し、送液ポンプは入口側回路上に蠕動ポンプを設置した。
【0062】
基準面10及び変形面の直径が20mm、接続面の高さが10mmである図1の体外循環回路32、圧力センサ1を用いてテストを行なった。基準面10・変形面・接続面12の材質はそれぞれポリカーボネイトとした。置換効率を測定することを目的とし、圧力測定は行わないため、変形面20の構成はすべてポリカーボネイトとし、変形する部分(変形部)は設けなかった。
【0063】
テストの結果、ケーシング内が透明の水道水に置換されるまでの時間は120秒であった。
【0064】
(比較例1)
一方、比較例1として、同寸法で、液体流入口30と液体流出口31が実質的に直線状に配置されている図16の圧力センサを用いて、第一実施形態と同様のテストを行なった結果、ケーシング内が透明の水道水に置換されるまでの時間は450秒であった。
【0065】
(比較結果)
以上から、接続面12に設けられた液体流入口30及び液体流出口31とを備えたケーシング内に導入される流体が接続面12の内周面に沿って流入するように配置することで、ケーシング内での体液或いは薬液の滞留防止に著しい効果があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明圧力センサは、体液の凝固を起す危険性が少ないので、患者の体内から血液を取り出し、血液処理装置を用いて血液の体外処理を行い、処理された血液を体内に戻す体外循環療法において、安全に体外循環回路内の圧力を測定できるので、体外循環治療に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の圧力センサの実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す模式図である。
【図3】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図4】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図5】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図6】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図7】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図8】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図9】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図10】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図11】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図12】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図13】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図14】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図15】本発明の圧力センサの更に別の実施態様を示す模式図である。
【図16】従来の圧力センサを示す模式図である。
【図17】従来の圧力センサを示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1 …圧力センサ
2 …ドリップチャンバー
10 …基準面
12 …接続面
15 …ケーシング
20 …変形面
30 …液体流入口
31 …液体流出口
32 …体外循環回路
33 …分岐チューブ
40 …隔壁
50 …圧力測定装置
51 …ロードセンサ
60 …領域
70 …邪魔板部
80 …手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(1)体外循環回路内圧力によって変形しない基準面と、該基準面に対して離隔配置された、体外循環回路内圧力によって少なくとも一部が変形する変形面と、前記基準面と前記変形面を連結して内部に閉鎖された液密な空間を形成する、体外循環回路内圧力によって変形しない接続面と、該接続面の側面に設けられた液体流入口及び液体流出口を備えたケーシングと、
(2)前記ケーシングの外に配置され、前記ケーシングの変形面の変形量を直接的または間接的に検知することによって該ケーシング内の圧力を測定する手段と、
を備えた体外循環回路の圧力センサであって、
前記液体流入口に前記ケーシングに液体を導入するための流路が液密に接続されており、且つ該流路は、ケーシング内に導入される液体が前記接続面の側面内周に沿って流入するように配置されていることを特徴とする、体外循環回路の圧力センサ。
【請求項2】
前記液体流出口が、前記液体流入口から前記接続面の側面内周に沿ってケーシング内に導入された液体の流れ方向に、該液体流入口から1/2周以上1周未満離れた位置に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の体外循環回路の圧力センサ。
【請求項3】
前記接続面の近傍に液体の流れを乱すための邪魔板部が設置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の体外循環回路の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−282996(P2007−282996A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115852(P2006−115852)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000116806)旭化成メディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】