説明

圧力センサ

【課題】圧力センサの気密性を向上させることができるとともに、圧力センサの構造および製造工程を簡易にすることができる圧力センサを提供する。
【解決手段】本発明の圧力センサ1において、ダイヤフラム2の内面2aに固着された振動子3を囲繞する環状の第1の電極4が形成される。第1の電極4の内側には結合電極5が形成される。これら第1の電極4および結合電極5は振動子3に接続される。また、この結合電極5はダイヤフラム2の外面2bにある第2の電極6と静電結合している。そのため、凹凸のない第1の電極4の表面を環状接合面として筐体7をダイヤフラム2に陽極接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに係り、特に、直接式のTPMS(タイヤ・プレッシャ・モニタリング・システム)に好適に利用できる圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは様々な場所や装置に用いられている。例えば、自動車のタイヤの空気圧を測定する直接式のTPMSにおいては、圧力センサをタイヤに内蔵して空気圧を直接測定するために圧力センサが用いられている。
【0003】
従来の圧力センサ101A、101Bは、その一例として、図4または図5に示すように、ダイヤフラム102、振動子103、引出電極104、105および筐体107を備えている。振動子103としては、一定幅を有する平面視直線状の水晶振動子またはSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタが選択されており、弾性変形するダイヤフラム102の内面102aにその振動子103が貼付けられている。
【0004】
また、この振動子103の両端には圧力センサ101A、101Bに併設される無線受信回路または加速度センサその他の回路(図示せず)と接続するための引出電極104、105が接続されている。この引出電極104、105は、図4に示すようにダイヤフラム102の内面102aにおいて振動子103の両端からダイヤフラム102の外縁まで引き延ばすか、図5に示すように柱状配線111およびビア・ホール112を介して振動子103の両端から筐体107の内部を介して引き延ばすことにより形成されている。
【0005】
そして、図4または図5に示すように、振動子103が温度変化および湿度変化の影響を受けないようにするため、平板状の底面部108と円形貫通孔109aを有する側壁部109とを接合させて得た容器状の筐体107が振動子103を封入するようにダイヤフラム102と接合されている(特許文献1を参照)。
【0006】
この従来の圧力センサ101A、101Bが自動車のタイヤ(図示せず)に内蔵されている場合、そのタイヤの空気圧に変化が生じると空気圧の変化に応じて圧力センサ101A、101Bのダイヤフラム102が弾性変形し、それに伴って振動子103に圧力が加えられるので、振動子103の発振周波数もしくは共振周波数が変化する。この振動子103の周波数変化を電気信号に変換することにより、タイヤ外部の無線送受信回路はタイヤの空気圧の変化を測定することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−208043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に示すように、従来の圧力センサ101Aに係る引出電極104、105をダイヤフラム102の内面102aにおいて振動子103の両端からダイヤフラム102の外縁まで引き延ばす場合、ダイヤフラム102と筐体107との接合面(図4の斜線部)の一部に引出電極104、105が存在してしまう。そのため、接合面に凹凸が形成されてしまうので、ダイヤフラム102と筐体107との気密性を高めることが困難であるという問題があった。
【0009】
また、図5に示すように、従来の圧力センサ101Bに係る引出電極104、105を柱状配線111およびビア・ホール112を介して振動子103の両端から筐体107の外部に引き延ばす場合、図4に示す圧力センサ101Aには存在しない柱状配線111およびビア・ホール112を形成しなければならない。そのため、圧力センサ101Bの構造およびその製造工程が複雑となるので、圧力センサ101Bの製造コストが上昇してしまうという問題があった。また、圧力センサ101Bの構造が複雑になると故障に対する圧力センサ101Bの信頼性も低下してしまうという問題もあった。
【0010】
さらに、引出電極104、105の引出方法にかかわらず、通常、ダイヤフラム102および筐体107は同一材料(例えばガラス)を用いて形成されているので、ダイヤフラム102と筐体107との接合手段として気密信頼性の高い陽極接合を用いることができないという問題があった。ここで、陽極接合以外の接合手段の一例としては低融点ガラス接合が挙げられるが、低融点ガラス接合は接合対象のガラス量の制御が難しいという難点を有している。そのため、圧力センサ101A、101Bの気密性が低下してその測定精度に悪影響を与えてしまうおそれがあるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、圧力センサの気密性を向上させることができるとともに、圧力センサの構造および製造工程を簡易にすることができる圧力センサを提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、本発明の圧力センサは、その第1の態様として、弾性変形するダイヤフラムの一方の面に固着されている振動子と、ダイヤフラムの一方の面において振動子を囲繞する環状に形成されているとともに、振動子の一端に接続されている第1の電極と、ダイヤフラムの一方の面において第1の電極に係る環の内側に形成されているとともに、振動子の他端に接続されている結合電極と、ダイヤフラムの一方の面と対向する他方の面において結合電極と対向することにより結合電極と電気的に結合している第2の電極と、ダイヤフラムに接合されたときに振動子を密封する容器状に形成されているとともに、第1の電極の表面を環状接合面として第1の電極を介してダイヤフラムに接合されている筐体とを備えていることを特徴としている。
【0013】
本発明の第1の態様の圧力センサによれば、第1の電極を環状に形成してその表面を筐体との接合面としているので、ダイヤフラムと筐体との接合面を平滑な環状にすることができる。また、従来の引出電極となる第1の電極、結合電極および第2の電極はダイヤフラムの互いに対向している一方の面および他方の面のいずれかに形成されているため、柱状配線およびビア・ホールなどの立体形状の配線を形成するよりも容易にそれらを形成することができる。
【0014】
本発明の第2の態様の圧力センサは、第1の態様の圧力センサにおいて、第1の電極は、金属を用いて形成されており、筐体における第1の電極との接合面は、ガラスを用いて形成されており、筐体は、第1の電極の表面と筐体における第1の電極との接合面とを陽極接合することより、ダイヤフラムに接合されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の第2の態様の圧力センサによれば、ダイヤフラムと筐体とを陽極接合することにより、接着剤による接合その他の陽極接合以外の接合方法よりも圧力センサの気密性を高めることができる。
【0016】
本発明の第3の態様の圧力センサは、第1または第2の態様の圧力センサにおいて、ダイヤフラムは、SiOを用いて形成されており、振動子は、SiOを用いて形成された水晶振動子であることを特徴としている。
【0017】
本発明の第3の態様の圧力センサによれば、ダイヤフラムと振動子との材質が同一になることから、ダイヤフラムと振動子との熱膨張係数が同等になる。これにより、ダイヤフラムまたは振動子のどちらか一方のみが熱膨張により大きくひずみ、振動子から得られる電気信号に悪影響を及ぼしてしまうことを少なくすることができる。
【0018】
本発明の第4の態様の圧力センサは、第1または第2の態様の圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムおよび前記筐体は、SiOを用いて形成されており、前記振動子は、SiOを用いて形成された水晶振動子であることを特徴としている。
【0019】
本発明の第4の態様の圧力センサによれば、ダイヤフラムおよび筐体ならびに振動子がすべて同一材質になることから、ダイヤフラムおよび筐体ならびに振動子の熱膨張係数が同等になる。これにより、ダイヤフラム、筐体または振動子のいずれか一方のみが熱膨張により大きくひずみ、圧力センサの気密性に悪影響を及ぼすことを少なくすることができる。
【0020】
本発明の第5の態様の圧力センサは、第1から第4のいずれか1の態様の圧力センサにおいて、筐体は、蓋となる底面部および振動子よりも大きく第1の電極に係る環よりも小さな貫通孔を有する側壁部を別個に形成し、底面部の周縁から側壁部が起立するように底面部および側壁部を接合することにより、有底穴を有する容器状に形成されていることを特徴としている。
【0021】
本発明の第5の態様の圧力センサによれば、例えば2枚の平板のうちの一方のみに貫通孔を形成してそれらを接合することにより筐体を形成することができるので、底面部および側壁部を一体に形成して筐体を製造するよりも筐体および圧力センサの製造工程を簡易にすることができる。
【0022】
本発明の第6の態様の圧力センサは、第1から第5のいずれか1の態様の圧力センサにおいて、第2の電極は、ダイヤフラムの他方の面において少なくとも振動子、第1の電極および結合電極のすべてと対向する1枚の平板状に形成されている接地電極であることを特徴としている。
【0023】
本発明の第6の態様の圧力センサによれば、振動子、第1の電極および結合電極のすべてが接地電極となる第2の電極により覆われており、それらを外来ノイズから電気的に遮断することができるので、圧力センサから得られる電気信号を外来ノイズから保護することができる。また、結合電極は第2の電極に覆われていることから、結合電極と第2の電極との対向面積が結合電極の面積と等しくなるため、結合電極と第2の電極との静電容量を最大限に大きくすることができる。
【0024】
本発明の第7の態様の圧力センサは、第1から第6のいずれか1の態様の圧力センサにおいて、前記筐体の外面のすべてもしくは一部を覆う接地電極を有していることを特徴としている。
【0025】
本発明の第7の態様の圧力センサによれば、接地電極がシールド効果を示すことにより、振動子、第1の電極および結合電極を外来ノイズから電気的に遮断することができるので、圧力センサから得られる電気信号を外来ノイズから保護することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の圧力センサによれば、第1の電極を環状に形成することによりダイヤフラムと筐体との接合面を平滑な環状にしているので、圧力センサの気密性を向上させることができる。また、第1の電極、結合電極および第2の電極を平面形状にしてそれらの構造および形成を容易にしているので、圧力センサの構造および製造工程を簡易にすることができる。これにより、圧力センサの測定精度および信頼性が向上するとともに、その製造コストが低廉なものとなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1および図2を用いて、本発明の圧力センサをその一実施形態により説明する。ここで、図1は本実施形態の圧力センサ1の分解斜視図を示しており、図2は図1の2−2矢視平面図を示している。また、図1および図2における斜線領域は、筐体7とダイヤフラム2との接合面を示している。
【0028】
本実施形態の圧力センサ1は、図1および図2に示すように、ダイヤフラム2、振動子3、第1の電極4、結合電極5、第2の電極6および筐体7を備えている。
【0029】
ダイヤフラム2は、図1および図2に示すように、外気圧の変化に応じて弾性変形する材料を用いて平板状(例えば図1および図2に示すような矩形平板状)に形成されている。本実施形態における弾性変形する材料としては、振動子3および筐体7に対する熱膨張の整合性の観点から、SiOが選択されている。
【0030】
振動子3は、図1および図2に示すように、ダイヤフラム2の内面(一方の面)2aに固着されている。この振動子3としては、水晶振動子、SAWフィルタその他の加圧により入力信号の周波数を変化させる素子を選択することができる。本実施形態の振動子3としては、ダイヤフラム2および筐体7に対する熱膨張の整合性の観点から、水晶振動子(SiO)が選択されている。
【0031】
第1の電極4は、図1および図2に示すように、ダイヤフラム2の内面2aにおいて振動子3を囲繞する環状(例えば図1および図2に示すような円環状)にスパッタ形成もしくはめっき形成されている。また、この第1の電極4は、その内側に固着された振動子3の一端3aに接続されている。第1の電極4に用いる材料としては、Cu、Ag、Auなどの良好な導電性を有する金属が用いられている。さらに、図1に示すように、この第1の電極4を圧力センサ1の外部にある他の回路(図示せず)に接続させるため、引き出しパターン4aが第1の電極4から筐体7の側壁部9の1つの角に設けられた切り欠き部9b側まで引き延ばされている。
【0032】
結合電極5は、図1および図2に示すように、ダイヤフラム2の内面2aであって第1の電極4に係る円環の内側の面において、コ状開口部5aを有する平滑な円形状にスパッタ形成もしくはめっき形成されている。この結合電極5に係るコ状開口部5aの内部には振動子3が配置させており、その振動子3の他端3bに結合電極5が接続されている。結合電極5に用いる材料としては、Cu、Ag、Auなどの良好な導電性を有する金属が用いられている。
【0033】
なお、結合電極5がコ状開口部5aを有する円形状に形成される理由は、振動子3の他端3b以外の部分に結合電極5を接触させず、かつ、第1の電極4に係る円環の内側の面において結合電極5の面積を最大限に大きくするためである。そのため、本実施形態の結合電極5の形状については、その形状がコ状開口部5aを有する円形状以外の他の形状となることを否定するものではない。
【0034】
第2の電極6は、図1および図2に示すように、ダイヤフラム2の内面2aと対向する他方の面、すなわちダイヤフラム2の外面2bにスパッタ形成もしくはめっき形成されており、結合電極5と対向することにより結合電極5と電気的に結合(静電容量結合)している。この第2の電極6の形状としては、少なくとも、結合電極5と対向する平板状に形成されていればよい。本実施形態の第2の電極6は、図2に示すように、結合電極5の他に、振動子3および第1の電極4のすべてと対向する1枚の広い平板状に形成されているとともに、接地電極となっている。この1枚の平板形は、図2に示すように矩形であっても良いし、図示はしないが矩形を除く多角形や円形であってもよい。
【0035】
筐体7は、ダイヤフラム2に接合されたときに振動子3を密封するような容器状に形成されている。本実施形態の筐体7においては、図1に示すように、別個に形成された底面部8および側壁部9を有している。底面部8は矩形平板状に形成されており、蓋の役割を果たす。側壁部9は底面部8と同じ大きさの矩形平板に振動子3よりも大きく第1の電極4に係る環よりも小さな貫通孔9aを形成した形状になっており、スペーサの役割を果たす。この側壁部9は、前述の通り、1つの角に切り欠き部9bを有している。そして、底面部8および側壁部9を底面部8の周縁から側壁部9が起立するように接合する。これにより、本実施形態の筐体7は有底穴7aを有する容器状に形成されている。
【0036】
ここで、これら底面部8および側壁部9に用いる材料としては、ダイヤフラム2および振動子3と同様、熱膨張の整合性の観点からSiOが選択されている。また、これら底面部8および側壁部9の接合としては、低融点ガラス接合、接着剤による接合または陽極接合が用いられる。陽極接合が選択された場合、SiOを用いて形成された底面部8と側壁部9との接合面のいずれか一方の接合面に、陽極接合に必要な金属製のダミー電極をスパッタ形成もしくはめっき形成しておく。
【0037】
また、この筐体7は、第1の電極4の表面を環状接合面として第1の電極4を介してダイヤフラム2に接合されている。筐体7における第1の電極4との接合部となる筐体7の側壁部9は貫通孔9aを有する矩形平板状に形成されており、矩形平板状のダイヤフラム2の内面2aに形成された第1の電極4は平滑な表面を有しているので、筐体7とダイヤフラム2との接合面はともに平滑となる。これらの平滑な接合面を接合するために本発明の圧力センサ1としては接着剤による接合その他の様々な接合手段を採用することができるが、本実施形態の圧力センサ1においては、筐体7の側壁部9の表面がSiO(ガラス)であり、第1の電極4が金属であることを利用して、筐体7の接合面(側壁部9の接合面)と第1の電極4の表面とを陽極接合することより、筐体7がダイヤフラム2に接合されている。
【0038】
さらに、本実施形態の筐体7においては、図1に示すように、底面部8の外面の全てを覆うことにより筐体7の外面の一部を覆う接地電極10が平板状に形成されている。この接地電極10は、第2の電極6と同様、少なくとも振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてと対向するように形成されていることが好ましい。
【0039】
次に、図1から図3を用いて、本実施形態の圧力センサ1の作用を説明する。ここで、図3は本実施形態の圧力センサ1の等価回路図を示している。
【0040】
本実施形態の圧力センサ1は、図1および図2に示すように、弾性変形するダイヤフラム2の内面2aに振動子3が固着されている。また、図2および図3に示すように、この振動子3の一端3aには第1の電極4が接続されており、振動子3の他端3bには結合電極5が接続されている。この結合電極5は、ダイヤフラム2の外面2bに形成された第2の電極6と電気的に結合している。
【0041】
結合電極5と第2の電極6との結合容量21については、例えば圧力センサ1の大きさに依存して1pF程度になってしまうこともあるため、大きな値を望むことはできない場合もある。しかし、振動子3の内部直列容量3cは数fF程度であり、大きな値を期待することができない場合の結合容量の1/100〜1/1000倍程度にしかならない。そのため、結合電極5と第2の電極6との電気的結合を十分に実現することできる。
【0042】
また、図3に示すように、第1の電極4と第2の電極6との間に寄生容量20が発生してしまうが、この寄生容量20は従来の圧力センサ101に係る振動子103の並列共振周波数を調整するために振動子103と並列に設けられていた外部の並列容量(図示せず)と回路上等価になる。そのため、寄生容量20は振動子3の並列共振周波数に悪影響を及ぼすことはない。以上より、第1の電極4および第2の電極6は引出電極としての役割を果たす。
【0043】
そして、ダイヤフラム2の外気圧に変化が生じた場合、ダイヤフラム2に弾性変形が生じ、それに伴ってダイヤフラム2の内面2aに固着された振動子3に圧力が加えられるので、振動子3の発振周波数もしくは共振周波数が変化する。この振動子3の周波数変化によって、ダイヤフラム2の外気圧変化を測定することができる。
【0044】
ここで、圧力センサ1の測定子となる振動子3は湿度変化の影響を受けやすい。つまり、圧力センサ1の測定精度は圧力センサ1の気密性に依存する。そのため、図1および図2に示すように、第1の電極4を環状に形成するとともに、第1の電極の内側に形成された結合電極5を第2の電極6に電気的に結合させている。これにより、結合電極5および第2の電極6の存在にかかわらず、振動子3を囲繞する平滑の閉じた環状に第1の電極4を形成することができる。この第1の電極4の表面を環状接合面とし、第1の電極4を介して筐体7をダイヤフラム2に接合することにより、ダイヤフラム2と筐体7との接合面から凹凸を排除することができるので、圧力センサ1の気密性を高めることができる。
【0045】
また、本実施形態の圧力センサ1は、第1の電極4が金属を用いて形成されており、筐体7における第1の電極4との接合面(側壁部9におけるダイヤフラム2との対向面)はSiO(ガラス)を用いて形成されている。これら第1の電極4の表面と筐体7における第1の電極4との接合面とを陽極接合することより、本実施形態の筐体7はダイヤフラム2に接合されている。陽極接合を用いることにより、接着剤を介することなく第1の電極4と筐体7とを接合することができるため、接着剤により接合部分にわずかな隙間が生じてしまうおそれも排除することができる。つまり、陽極接合を採用することにより、接着剤による接合その他の陽極接合以外の接合方法よりも圧力センサ1の気密性を高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の圧力センサ1においては、その気密性の向上のほか、圧力センサ1の測定性能を低下させてしまうような振動子3、ダイヤフラム2および筐体7に係る熱膨張のズレを防止している。つまり、本実施形態の圧力センサ1においては、振動子3に水晶振動子(SiO)を選択し、その振動子3の材質に整合させてダイヤフラム2および筐体7にSiOを用いている。これにより、振動子3、ダイヤフラム2および筐体7の材質が同一となり、それらの熱膨張係数が同等になるため、振動子3、ダイヤフラム2または筐体7のいずれか1個の部材のみが熱膨張により大きくひずみ、振動子3から得られる電気信号に悪影響を及ぼしてしまうことを少なくすることができる。
【0047】
ここで、ダイヤフラム2は平板状に形成されるため、ダイヤフラム2をSiOを用いて形成することはさほど困難なことではない。しかし、筐体7は容器状に形成する必要があるため、中空半球状やコップ状など採用する筐体7の形状によってはSiOを用いて筐体7を形成することが困難な場合もある。そこで、本実施形態の圧力センサ1においては、図1に示すように、矩形平板状の底面部8および貫通孔9aを有する矩形平板状の側壁部9を別個に形成して接合することにより、有底穴7aを有する容器状に筐体7を形成している。これにより、SiOを用いて形成された矩形平板のうちの一方のみに貫通孔9aを形成した後にそれらを接合して筐体7を形成することができるので、例えば中空半球状に底面部8および側壁部9を一体形成した筐体を製造するよりも、筐体7および圧力センサ1の製造工程を簡易にすることができる。
【0048】
また、本実施形態の圧力センサ1においては、外来ノイズの混入および不要な静電容量の形成についても対策されている。つまり、本実施形態の圧力センサ1においては、第2の電極6がダイヤフラム2の外面2bにおいて少なくとも振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてと対向する1枚の平板状の接地電極となっている。振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてが接地電極となる第2の電極6により覆われていることになるため、それらを外来ノイズから電気的に遮断することができる。
【0049】
また、第2の電極6により振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてが電気的に遮断されているので、振動子3、第1の電極4または結合電極5が外部の他の回路に配設された回路要素(図示せず)と不要な静電容量を形成することもない。そのため、圧力センサ1から得られる電気信号を外来ノイズの混入および不要な静電容量の形成から保護することができる。
【0050】
さらに、振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてを第2の電極6により覆うことにより、結合電極5の全面は第2の電極6に覆われていることになる。そのため、結合電極5と第2の電極6との対向面積が結合電極5の面積と等しくなるため、結合電極5と第2の電極6との静電容量を最大限に大きくすることができる。
【0051】
なお、第2の電極6についてはスパッタにより薄膜形成することができるため、第2の電極6がダイヤフラム2に与える圧力精度への影響はほとんど無視することができる。
【0052】
そのうえ、本実施形態の圧力センサ1においては、底面部8の外面のすべてに接地電極10が形成されている。第2の電極6と同様、振動子3、第1の電極4および結合電極5のすべてが筐体7の接地電極10により覆われるため、圧力センサ1から得られる電気信号を外来ノイズの混入および不要な静電容量の形成から保護することができる。
【0053】
すなわち、本実施形態の圧力センサ1によれば、圧力センサ1の内部の気密性が高まるので、振動子3が外部の影響を受けずに正確な電気信号を送信することができる。また、筐体7、ダイヤフラム2および振動子3の熱膨張ひずみを等しくしているので、圧力センサ1に対して熱膨張による悪影響を緩和することができる。さらに、接地された第2の電極6および接地電極10をダイヤフラム2および筐体7の外面に配設しているので、外来ノイズや不要な静電容量の形成を排除することができる。これらの作用により、圧力センサ1の測定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0054】
また、本実施形態の圧力センサ1によれば、第1の電極4、結合電極5および第2の電極6を平面形状にしてそれらの構造および形成を容易にしている。そのため、従来の圧力センサ101Bのように立体形状の柱状配線111およびビア・ホール112を形成する必要がないので(図4参照)、圧力センサ1の構造および製造工程を簡易にすることができる。これにより、圧力センサ1の製造コストが低廉なものとなるという効果を奏する。
【0055】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、他の実施形態の圧力センサにおいては、製造コストを下げるため、ダイヤフラム2および振動子3にSiOと同程度の熱膨張係数のガラスを用いて形成し、筐体7にSiOよりも低廉な非導電性材料を用いて形成しても良い。
【0057】
また、筐体7が中空半球状やコップ状に一体形成されている場合、その接地電極10はその筐体7の外面のすべてを覆うように形成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の圧力センサの一実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1の2−2矢視平面図
【図3】本実施形態の圧力センサを示す等価回路図
【図4】従来の圧力センサの一例を示す分解斜視図
【図5】従来の圧力センサの他の一例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0059】
1 圧力センサ
2 ダイヤフラム
3 振動子
4 第1の電極
5 結合電極
6 第2の電極
7 筐体
8 底面部
9 側壁部
9a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形するダイヤフラムの一方の面に固着されている振動子と、
前記ダイヤフラムの一方の面において前記振動子を囲繞する環状に形成されているとともに、前記振動子の一端に接続されている第1の電極と、
前記ダイヤフラムの一方の面において前記第1の電極に係る環の内側に形成されているとともに、前記振動子の他端に接続されている結合電極と、
前記ダイヤフラムの一方の面と対向する他方の面において前記結合電極と対向することにより前記結合電極と電気的に結合している第2の電極と、
前記ダイヤフラムに接合されたときに前記振動子を密封する容器状に形成されているとともに、前記第1の電極の表面を環状接合面として前記第1の電極を介して前記ダイヤフラムに接合されている筐体と
を備えていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記第1の電極は、金属を用いて形成されており、
前記筐体における前記第1の電極との接合面は、ガラスを用いて形成されており、
前記筐体は、前記第1の電極の表面と前記筐体における前記第1の電極との接合面とを陽極接合することより、前記ダイヤフラムに接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは、SiOを用いて形成されており、
前記振動子は、SiOを用いて形成された水晶振動子である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記ダイヤフラムおよび前記筐体は、SiOを用いて形成されており、
前記振動子は、SiOを用いて形成された水晶振動子である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記筐体は、蓋となる底面部および前記振動子よりも大きく前記第1の電極に係る環よりも小さな貫通孔を有する側壁部を別個に形成し、前記底面部の周縁から前記側壁部が起立するように前記底面部および前記側壁部を接合することにより、有底穴を有する容器状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記第2の電極は、前記ダイヤフラムの他方の面において少なくとも前記振動子、前記第1の電極および前記結合電極のすべてと対向する1枚の平板状に形成されている接地電極である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記筐体は、前記筐体の外面のすべてもしくは一部を覆う接地電極を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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