説明

圧力センサ

【課題】メタルダイヤフラムの割れやワイヤの断線が発生することを抑制することができる圧力センサを提供する。
【解決手段】空間15に、測定媒体が通過する断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材24を備える。これにより、オリフィス部材24によって測定媒体となる流体の流入が規制され、圧力減衰効果が得られので、受圧部となるメタルダイヤフラム17に対して直接印加される圧力が急峻に変化することを抑制することができる。したがって、メタルダイヤフラム17に印加される圧力の不均一を抑制することができ、メタルダイヤフラム17の割れやワイヤ9の断線の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力伝達媒体がメタルダイヤフラムによって封入されて成る圧力検出室にセンシング部を備えた圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、圧力伝達媒体がメタルダイヤフラムによって封入されて成る圧力検出室にセンシング部を備えた圧力センサが提案されている。
【0003】
具体的には、この圧力センサは、第1のケースとしてのコネクタケースと測定媒体を導入するための第2のケースとしてのハウジングとを備えている。そして、コネクタケースとハウジングとの間にメタルダイヤフラムを配置した状態で、ハウジングに形成されている収容凹部内にコネクタケースが挿入されてハウジングの収容凹部の端部がかしめられることにより、内部に圧力検出室が区画形成されている。この圧力検出室内には、圧力を検出するセンシング部が配置されていると共にフッ素オイル等の圧力伝達媒体が封入されている。そして、コネクタケースにはターミナルが保持されており、ターミナルとセンシング部とがワイヤを介して電気的に接続されている。
【0004】
また、ハウジングには、測定媒体を導入するための圧力導入孔が形成されており、この圧力導入孔のうちメタルダイヤフラム側の端部が広げられて断面テーパ状(ラッパ形状)の部屋(空間)が形成されている。つまり、圧力導入孔に導入された測定媒体が空間に導入されてメタルダイヤフラムに印加されるようになっている。
【0005】
このような圧力センサでは、測定媒体が圧力導入孔から空間に導入された後にメタルダイヤフラムに印加されるため、測定媒体の圧力を広い面積で受圧することができ、圧力損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−90846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記圧力センサでは、圧力導入孔から急峻な圧力(急激に大きく変化するような圧力)が導入された場合、メタルダイヤフラムの中心部、つまり圧力導入孔の直上に位置する部分に圧力が伝わった後に広がりながら外縁部分に圧力が印加される。このため、圧力伝達時間に差が生じ、メタルダイヤフラムに印加される圧力の面内バラツキが発生して圧力不均一が生じる。そして、このような圧力不均一が発生すると、メタルダイヤフラムに割れが発生したり、センシング部とターミナルとを接続するワイヤに断線が発生したりすることがある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、メタルダイヤフラムの割れやワイヤの断線が発生することを抑制することができる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1のケース(1)と測定媒体が導入される圧力導入孔(14)が形成された第2のケース(11)とを一体に組み付けて成るケーシング(100)と、測定媒体の圧力に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(4)と、第1のケース(1)の一面(1a)と第2のケース(11)の一面(11a)との間に配置されたメタルダイヤフラム(17)と、第1のケース(1)とメタルダイヤフラム(17)との間に形成されてセンシング部(4)を収容する圧力検出室(20)内に充填される圧力伝達媒体(21)と、第1のケース(1)に備えられ、センシング部(4)と電気的に接続されるターミナル(8)と、センシング部(4)とターミナル(8)とを電気的に接続するワイヤ(9)と、を備え、第2のケース(11)のうち圧力導入孔(14)における第1のケース(1)側の端部が広げられることで形成された空間(15)内に圧力導入孔(14)を通じて測定媒体が導入されることにより、空間(15)内の測定媒体の圧力がメタルダイヤフラム(17)を介してセンシング部(4)に伝達される圧力センサにおいて、以下の点を特徴としている。
【0010】
すなわち、空間(15)には、測定媒体が通過する断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(24)が備えられていることを特徴としている。
【0011】
このような圧力センサでは、オリフィス部材(24)によって測定媒体となる流体の流入が規制され、圧力減衰効果が得られので、受圧部となるメタルダイヤフラム(17)に対して直接印加される圧力が急峻に変化することを抑制することができる。したがって、メタルダイヤフラム(17)に印加される圧力の不均一を抑制することができ、メタルダイヤフラム(17)の割れやワイヤ(9)の断線の発生を抑制することができる。
【0012】
また、オリフィス部材(24)は測定媒体の圧力に応じて変位可能とされている。このため、導入される圧力が急峻に変化する場合には、オリフィス部材(24)が変位することによって弾性力が生じ、オリフィス部材(24)自体がバネとしての機能を果す。つまり、オリフィス部材(24)が緩衝部材としての機能を果す。このため、さらに、メタルダイヤフラム(17)に印加される圧力が急峻に変化することを抑制することができる。また、オリフィス部材(24)が測定媒体の圧力に応じて変位するため、測定媒体の流速がオリフィス部材(24)を通過する前後で変化する割合を小さくすることもできる。
【0013】
この場合、請求項2に記載の発明のように、空間(15)を構成する壁面に窪み部(25)を形成し、当該窪み部(25)にオリフィス部材(24)の外縁部を備えることができる。このように、窪み部(25)を形成して窪み部(25)にオリフィス部材(24)の外縁部を備えることにより、オリフィス部材(24)を空間(15)に備えることができる。
【0014】
そして、このような圧力センサは、圧力導入孔(14)が形成された第2のケース(11)が被実装部材に取り付けられて用いられるが、第2のケース(11)を被実装部材に取り付ける際に当該第2のケース(11)には外力が印加される。しかしながら、第2のケース(11)に窪み部(25)を形成することにより、窪み部(25)によって印加される外力を緩和することができる。このため、第2のケース(11)が変形することを抑制することができ、第2のケース(11)の変形に伴ってメタルダイヤフラム(17)の形状が変形して圧力検出室(20)の体積が変化することを抑制することができる。したがって、圧力検出室(20)の内圧が変化することを抑制することができ、検出精度が低下することを抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、圧力導入孔(14)に、測定媒体が通過する断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(26)を備えることができる。
【0016】
これによれば、圧力導入孔(14)に備えられているオリフィス部材(26)によっても圧力減衰効果が得られるので、さらにメタルダイヤフラム(17)の割れやワイヤ(9)の断線が発生することを抑制することができる。
【0017】
この場合、請求項4に記載の発明のように、圧力導入孔(14)を構成する壁面に窪み部(27)を形成し、当該窪み部(27)にオリフィス部材(26)の外縁部を備えることができる。
【0018】
このように、窪み部(27)を形成して窪み部(27)にオリフィス部材(26)の外縁部を備えることにより、オリフィス部材(26)を圧力導入孔(14)に備えることができる。そして、この窪み部(27)により、さらに第2のケース(11)に印加される外力を緩和することができ、第2のケース(11)が変形することを抑制することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項3または4に記載の発明において、圧力導入孔(14)に備えられたオリフィス部材(26)における測定媒体が通過する部分と、空間(15)に備えられたオリフィス部材(24)における測定媒体が通過する部分とは、圧力導入孔(14)の中心軸と平行な方向において重ならないように形成されることが好ましい。
【0020】
これによれば、測定媒体は、圧力導入孔(14)に備えられたオリフィス部材(26)を通過した後、流れ方向を変化させて空間(15)に備えられたオリフィス部材(24)を通過することになり、さらに圧力減衰効果を高くすることができる。
【0021】
例えば、請求項6に記載の発明のように、圧力導入孔(14)に備えられたオリフィス部材(26)は、板部材で構成されると共に当該板部材のうちの圧力導入孔(14)の中心軸と重なる部分に測定媒体を通過させる貫通孔(26a)が形成されているものとすることができる。また、空間(15)に備えられるオリフィス部材(24)は、板部材で構成されると共に当該板部材のうちの圧力導入孔(14)の中心軸と重なる部分と異なる部分に複数の貫通孔(24a)が形成されるものとすることができる。そして、複数の貫通孔(24a)を中心軸と重なる部分を基準として対称に形成することができる。
【0022】
これによれば、測定媒体は、圧力導入孔(14)の中心軸と重なる部分を基準として対称に形成された貫通孔(24a)を通過した後にメタルダイヤフラム(17)に印加されるため、オリフィス部材(24)の中心軸と重なる部分と異なる部分に1つの貫通孔(24a)のみが形成されている場合と比較して、測定媒体がメタルダイヤフラム(17)に不均一に印加されることを抑制することができる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明では、圧力導入孔(14)には、測定媒体が通過する断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(26)が備えられていることを特徴としている。
【0024】
このような圧力センサでは、圧力導入孔(14)に備えられるオリフィス部材(26)によって圧力減衰効果が得られるため、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。
【図2】図1に示すオリフィス部材の平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。
【図4】図3に示す圧力導入孔に備えられたオリフィス部材の平面図である。
【図5】図3に示す空間に備えられたオリフィス部材の平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態におけるオリフィス部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。なお、本実施形態の圧力センサは、例えば、エアコンの冷媒配管内の冷媒圧力、エンジン内のエンジンオイル圧等の検出に用いられると好適である。
【0028】
図1に示されるように、圧力センサには第1のケースとしてのコネクタケース1が備えられており、このコネクタケース1は、例えば、断熱樹脂材料であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂を型成形することにより作られ、本実施形態では円柱状とされている。このコネクタケース1は、一端部の一面1aに凹部2が形成され、他端部に開口部3が形成されている。
【0029】
そして、凹部2には、センシング部4が図示しないシリコーン系接着剤等を介して搭載されている。このセンシング部4は、センサチップ5とガラス等で構成される台座6とを有し、これらセンサチップ5と台座6とが陽極接合されて構成されている。
【0030】
センサチップ5は、ダイヤフラム7を有し、ダイヤフラム7に図示しないブリッジ回路を構成するようにゲージ抵抗が形成されて構成されている。すなわち、このセンサチップ5は、ダイヤフラム7に圧力が印加されるとゲージ抵抗の抵抗値が変化してブリッジ回路の電圧が変化し、この電圧の変化に応じてセンサ信号を出力する半導体ダイヤフラム式のものである。
【0031】
また、コネクタケース1には、センサチップ5と外部の回路等とを電気的に接続するための複数の金属製棒状のターミナル8が備えられており、各ターミナル8はインサートモールドによりコネクタケース1と一体に成形されることによってコネクタケース1内に保持されている。
【0032】
具体的には、各ターミナル8はコネクタケース1を貫通しており、各ターミナル8のうち一端部はコネクタケース1から凹部2内に突出しており、他端部はコネクタケース1から開口部3内に突出している。
【0033】
凹部2内に突出する各ターミナル8の一端部は、ボンディングワイヤ9を介してセンシング部4(センサチップ5)と電気的に接続されている。そして、凹部2には、凹部2に突出するターミナル8とコネクタケース1との隙間を封止するシール材10が配置されている。
【0034】
また、開口部3内に突出している各ターミナル8の他端部は、図示しないワイヤハーネス等の外部配線部材を介して外部回路と電気的に接続される。
【0035】
そして、図1に示されるように、コネクタケース1には第2のケースとしてのハウジング11が組みつけられている。具体的には、ハウジング11には収容凹部12が形成されており、この収容凹部12内にコネクタケース1のうち凹部2が形成されている一面1a側が挿入され、ハウジング11の端部13がコネクタケース1にかしめられることでコネクタケース1とハウジング11とが組みつけられている。これにより、第1のケースとしてのコネクタケース1と第2のケースとしてのハウジング11とが一体に組みつけられて成るケーシング100が構成され、このケーシング100内にセンシング部4が備えられる構造となる。
【0036】
ハウジング11は、例えば、SUS等の金属材料より成るものであり、測定媒体を導入するための圧力導入孔14と、圧力導入孔14におけるセンシング部4側の端部が断面テーパ状(ラッパ状)に広げられることで形成された空間(部屋)15と、圧力センサを測定対象物に固定するために圧力導入孔14の外周壁面に形成されたネジ部16とが形成されている。
【0037】
また、コネクタケース1の一面1aと、ハウジング11のうちこの一面1aと対向している一面11a(収容凹部12の底面)との間には、SUS等から成る円形のメタルダイヤフラム17とメタルダイヤフラム17の外縁部分に配置されるSUS等から成る環状のリングウェルド18とが備えられている。具体的には、メタルダイヤフラム17およびリングウェルド18は、ハウジング11に対してレーザ溶接等されて固定されている。そして、ハウジング11の一面11aには、ハウジング11、メタルダイヤフラム17およびリングウェルド18が溶け合った溶接部19が形成されている。なお、メタルダイヤフラム17のうち外縁部分はリングウェルド18と共にハウジング11に対して固定される部分であり、メタルダイヤフラム17のうち凹部2を閉塞する部分は測定媒体の圧力に応じて変位するダイヤフラム部として機能する部分である。
【0038】
このように一体化されたケーシング100において、凹部2、メタルダイヤフラム17、およびリングウェルド18にて囲まれる空間にて圧力検出室20が構成されている。そして、この圧力検出室20には、本発明の圧力伝達媒体に相当するフッ素オイル等のオイル21が充填されている。
【0039】
また、コネクタケース1のうち凹部2が形成される一面1aには、凹部2を囲むように環状の溝22が形成されており、この環状の溝22には、例えば、シリコーンゴム等から成るOリング23が備えられている。このOリング23は、コネクタケース1とハウジング11とのかしめによるかしめ圧で押し潰されることで圧力検出室20を封止するものである。
【0040】
そして、本実施形態では、ハウジング11における空間15には、測定媒体が通過する断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能な弾性を有する樹脂等で構成されたオリフィス部材24が備えられている。具体的には、空間15を構成する壁面には、圧力導入孔14の中心軸(以下では、単に中心軸という)に対して、径方向に環状の窪み部25が形成されている。そして、この窪み部25にオリフィス部材24が挿入されることによって、空間15にオリフィス部材24が備えられている。
【0041】
図2は、オリフィス部材24の平面図であり、コネクタケース1側からオリフィス部材24を視た図である。図1および図2に示されるように、オリフィス部材24は、本実施形態では円板状とされており、中心軸と重なる中央部に厚さ方向に貫通する貫通孔24aが形成されている。そして、外縁部(図2中では点線より外側の部分)が窪み部25に挿入されることによって空間15に備えられている。
【0042】
次に上記圧力センサの製造方法について説明する。
【0043】
まず、ターミナル8がインサート成形されると共に上記構成のコネクタケース1を用意する。そして、センサチップ5が台座6と陽極接合されて成るセンシング部4を用意し、センシング部4を凹部2の底面に接着剤を介して接着する。
【0044】
次に、コネクタケース1のうち凹部2が形成された一面1aを上に向けた状態で凹部2内へシール材10を注入し、シール材10を凹部2の底面まで行き渡らせた後、硬化する。このとき、シール材10がセンサチップ5の表面に付着しないように注入量を調整する。
【0045】
その後、ワイヤボンディングを行い、センシング部4(センサチップ5)と各ターミナル8の一端部とをボンディングワイヤ9を介して電気的に接続する。そして、溝22にOリング23を配置する。
【0046】
続いて、上記のように空間15に窪み部25が形成されたハウジング11を用意し、空間15にオリフィス部材24を配置する。具体的には、オリフィス部材24は弾性を有する材料で構成されているため、オリフィス部材24を湾曲させた状態で空間15内に配置し、外縁部が窪み部25に挿入されるように、オリフィス部材24を元の状態に戻すことにより、空間15にオリフィス部材24を備える。その後、メタルダイヤフラム17をハウジング11の一面11a上に配置すると共にリングウェルド18を収容凹部12に圧入してハウジング11の一面11a上に配置する。次に、リングウェルド18の上方から溶接等を行うことにより、リングウェルド18とメタルダイヤフラム17とハウジング11とを接合する。
【0047】
続いて、圧力伝達媒体としてのオイル21をディスペンサ等によって凹部2内へ注入する。そして、この状態のものを真空室にいれて、凹部2内の余分な空気を除去する。その後、真空室内でハウジング11を上から水平に保ったままハウジング11の収容凹部12にコネクタケース1が嵌合するように降ろす。このとき、コネクタケース1の一面1aとリングウェルド18とが十分接するまで押さえる。これにより、凹部2、メタルダイヤフラム17およびリングウェルド18にて圧力検出室20が構成され、圧力検出室20にオイル21が充填された構造となる。
【0048】
その後、ハウジング11の端部13をコネクタケース1にかしめることにより、ハウジング11とコネクタケース1とを一体化する。このような製造方法により本実施形態の圧力センサが製造される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の圧力センサは、空間15にオリフィス部材24を備えている。このため、オリフィス部材24によって測定媒体となる流体の流入が規制され、圧力減衰効果が得られるので、受圧部となるメタルダイヤフラム17に対して直接印加される圧力が急峻に変化することを抑制することができる。したがって、メタルダイヤフラム17に印加される圧力の不均一を抑制することができ、メタルダイヤフラム17の割れやボンディングワイヤ9の断線が発生することを抑制することができる。
【0050】
また、オリフィス部材24は、測定媒体の圧力に応じて変位可能とされている。このため、導入される圧力が急峻に変化する場合には、オリフィス部材24が変位することによって弾性力が生じ、オリフィス部材24自体がバネとしての機能を果す。つまり、オリフィス部材24が緩衝部材としての機能を果す。このため、さらに、メタルダイヤフラム17に印加される圧力が急峻に変化することを抑制することができる。また、オリフィス部材24が測定媒体の圧力に応じて変位するため、測定媒体の流速がオリフィス部材24を通過する前後で変化する割合を小さくすることもできる。
【0051】
さらに、このような圧力センサは、ハウジング11に形成されたネジ部16が被実装部材としての冷媒配管等に形成された雌ネジ部に螺合されて固定され、配管内の測定媒体が圧力導入孔14に導入されるようにして用いられる。このとき、ハウジング11は、軸力(外力)によって変形する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、オリフィス部材24を窪み部25に挿入することによって空間15に備えるようにしており、窪み部25によって軸力の影響を緩和することができるようにしている。このため、軸力によってハウジング11が変形することを抑制することができ、ハウジング11の変形に伴ってメタルダイヤフラム17の形状が変形して圧力検出室20の体積が変化することを抑制することもできる。すなわち、圧力検出室20の内圧が変化することを抑制することができ、検出精度が低下することを抑制することもできる。
【0052】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して圧力導入孔14にもオリフィス部材を備えたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図3は、本実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。
【0053】
図3に示されるように、本実施形態では、圧力導入孔14に、圧力導入孔14の断面積を縮小し、測定媒体の圧力に応じて変位可能なオリフィス部材26が備えられている。具体的には、圧力導入孔14を構成する壁面には、中心軸に対して径方向であって環状の窪み部27が形成されている。そして、この窪み部27にオリフィス部材26が挿入されることによって、圧力導入孔14にオリフィス部材26が備えられている。
【0054】
図4は圧力導入孔14に備えられるオリフィス部材26の平面図ある。図4に示されるように、オリフィス部材26は本実施形態では円板状とされており、中心軸と重なる中央部に厚さ方向に貫通する貫通孔26aが形成されている。そして、外縁部(図4中では点線の外側の部分)が窪み部27に挿入されることによって圧力導入孔14に備えられている。
【0055】
また、空間15に備えられるオリフィス部材24には、ハウジング11をコネクタケース1側から視たとき、つまり、ハウジング11を中心軸と平行な方向から視たとき、オリフィス部材26に形成されている貫通孔26aと重ならない部分に貫通孔24aが形成されている。
【0056】
図5はオリフィス部材24の平面図である。図5に示されるように、本実施形態では、オリフィス部材24には、中心軸と重なる中央部を基準として対称に4つの貫通孔24aが形成されている。
【0057】
このような圧力センサでは、圧力導入孔14にもオリフィス部材26が備えられており、このオリフィス部材26によって空間15に備えられているオリフィス部材24と同様の効果が得られるため、上記第1実施形態よりさらに圧力減衰効果が得られる。したがって、受圧部としてのメタルダイヤフラム17に印加される圧力の不均一をさらに抑制することができ、メタルダイヤフラム17の割れやボンディングワイヤ9の断線が発生することをさらに抑制することができる。
【0058】
また、空間15に備えられるオリフィス部材24には、中心軸と平行な方向から視たとき、オリフィス部材26に形成された貫通孔26aと重ならない部分に貫通孔24aが形成されている。このため、オリフィス部材26の貫通孔26aを通過した測定媒体は、流れ方向を変化させてオリフィス部材24の貫通孔24aを通過した後、メタルダイヤフラム17に印加されることになる。このため、オリフィス部材24の貫通孔24aとオリフィス部材26の貫通孔26aとが中心軸と平行な方向に重なっている場合と比較して、測定媒体の圧力減衰効果を高くすることができる。
【0059】
さらに、オリフィス部材24には中央部を基準にして対称に4つの貫通孔24aが形成されているため、オリフィス部材24の中央部と異なる部分に1つの貫通孔24aのみが形成されている場合と比較して、測定媒体がメタルダイヤフラム17に不均一に印加されることを抑制することができる。
【0060】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してオリフィス部材24を備える場所を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図6は、本実施形態における圧力センサの断面構成を示す図である。
【0061】
図6に示されるように、本実施形態では、ハウジング11の一面11aのうち空間15と連結する内縁部に凹部11bが環状に形成されている。そして、この凹部11bにオリフィス部材24の外縁部が搭載されている。オリフィス部材24は、凹部11bに備えられる外縁部が内縁部より厚くされた肉厚部24bとされている。
【0062】
このような圧力センサは、例えば、次のように製造される。すなわち、ハウジング11の一面11aに形成された凹部11bにオリフィス部材24の外縁部を配置する。そして、リングウェルド18をハウジング11の収容凹部12における一面11aまで圧入する際に、リングウェルド18によって肉厚部24bを押し潰す。これにより、オリフィス部材24が空間15に備えられる。
【0063】
このように、空間15を構成する壁面に窪み部25を形成しない圧力センサとしても、オリフィス部材24を空間15に備えているので上記第1実施形態と同様の効果が得られ、メタルダイヤフラム17の割れやボンディングワイヤ9の断線が発生することを抑制することができる。
【0064】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してオリフィス部材24の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図7は、本実施形態におけるオリフィス部材24の平面図である。
【0065】
図7に示されるように、本実施形態では、オリフィス部材24は、円板部材24cと、この円板部材24cの側面に備えられる複数の板バネ部材24dとを有する構成とされている。この円板部材24cには、第1実施形態の貫通孔24aに相当する部分は設けられていない。
【0066】
このようなオリフィス部材24は、板バネ部材24dのうち円板部材24c側と連結されている端部側が空間15内に配置されるように、板バネ部材24dのうち円板部材24cと連結されている端部側と反対側の端部が窪み部25に挿入されると共に窪み部25の壁面を押圧することによって空間15に備えられる。そして、測定媒体は、隣接する板バネ部材24dの間を通過するようになっている。
【0067】
このようなオリフィス部材24を備える圧力センサとしても、オリフィス部材24を空間15に備えているので上記第1実施形態と同様の効果が得られ、メタルダイヤフラム17の割れやボンディングワイヤ9の断線が発生することを抑制することができる。
【0068】
(他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、オリフィス部材24を円板状のものとしたものを説明したが、例えば、オリフィス部材24を矩形状のものとすることもできる。この場合、ハウジング11の空間15を構成する壁面に形成される窪み部25の形状を矩形状のオリフィス部材24が挿入できるものとすればよい。同様に、上記第2実施形態のオリフィス部材26や上記第3実施形態のオリフィス部材24を矩形状とすることもできる。また、上記第4実施形態において、オリフィス部材24は、矩形板部材と、この側面に備えられる板バネ部材とを有するものとしてもよい。
【0069】
また、上記第1、第3実施形態では、オリフィス部材24に1つの貫通孔24aを形成した例について説明したが、オリフィス部材24に複数の貫通孔24aを形成するようにしてもよい。同様に、上記第2実施形態においても、オリフィス部材24に4つ以上の複数の貫通孔24aを形成してもよい。
【0070】
さらに、上記第2実施形態において、オリフィス部材24の中央部に貫通孔24aを形成し、ハウジング11を中心軸と平行な方向から視たとき、オリフィス部材26のうちオリフィス部材24に形成されている貫通孔24aと重ならない部分に貫通孔26aを形成するようにしてもよい。
【0071】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせることもできる。例えば、上記第3実施形態に上記第2実施形態を組み合わせて、圧力導入孔14にオリフィス部材26を備えることができる。また、上記第4実施形態を第2実施形態に組み合わせて、オリフィス部材26を円板部材と板バネ部材とにより構成することもできる。もちろん、上記第2実施形態において、オリフィス部材24を円板部材24cと板バネ部材24dとにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 コネクタケース
4 センシング部
8 ターミナル
9 ボンディングワイヤ
11 ハウジング
12 収容凹部
14 圧力導入孔
15 空間
17 メタルダイヤフラム
18 リングウェルド
19 溶接部
20 圧力検出室
21 オイル
24 オリフィス部材
25 窪み部
26 オリフィス部材
27 窪み部
100 ケーシング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケース(1)と測定媒体が導入される圧力導入孔(14)が形成された第2のケース(11)とを一体に組み付けて成るケーシング(100)と、
前記測定媒体の圧力に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(4)と、
前記第1のケース(1)の一面(1a)と前記第2のケース(11)の一面(11a)との間に配置されたメタルダイヤフラム(17)と、
前記第1のケース(1)と前記メタルダイヤフラム(17)との間に形成されて前記センシング部(4)を収容する圧力検出室(20)内に充填される圧力伝達媒体(21)と、
前記第1のケース(1)に備えられ、前記センシング部(4)と電気的に接続されるターミナル(8)と、
前記センシング部(4)と前記ターミナル(8)とを電気的に接続するワイヤ(9)と、を備え、
前記第2のケース(11)のうち前記圧力導入孔(14)における前記第1のケース(1)側の端部が広げられることで形成された空間(15)内に前記圧力導入孔(14)を通じて前記測定媒体が導入されることにより、前記空間(15)内の前記測定媒体の圧力が前記メタルダイヤフラム(17)を介して前記センシング部(4)に伝達される圧力センサにおいて、
前記空間(15)には、前記測定媒体が通過する断面積を縮小し、前記測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(24)が備えられていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記空間(15)を構成する壁面には窪み部(25)が形成されており、当該窪み部(25)に前記オリフィス部材(24)の外縁部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記圧力導入孔(14)には、前記測定媒体が通過する断面積を縮小し、前記測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(26)が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記圧力導入孔(14)を構成する壁面には窪み部(27)が形成されており、当該窪み部(27)に前記オリフィス部材(26)の外縁部が備えられていることを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記圧力導入孔(14)に備えられた前記オリフィス部材(26)における前記測定媒体が通過する部分と、前記空間(15)に備えられた前記オリフィス部材(24)における前記測定媒体が通過する部分とは、前記圧力導入孔(14)の中心軸と平行な方向において重なっていないことを特徴とする請求項3または4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記圧力導入孔(14)に備えられた前記オリフィス部材(26)は、板部材で構成されると共に当該板部材のうちの前記中心軸と重なる部分に前記測定媒体を通過させる貫通孔(26a)が形成され、
前記空間(15)に備えられた前記オリフィス部材(24)は、板部材で構成されると共に当該板部材のうちの前記中心軸と重なる部分と異なる部分に複数の貫通孔(24a)が形成され、前記複数の貫通孔(24a)は前記中心軸と重なる部分を基準として対称に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
第1のケース(1)と測定媒体が導入される圧力導入孔(14)が形成された第2のケース(11)とを一体に組み付けて成るケーシング(100)と、
前記測定媒体の圧力に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(4)と、
前記第1のケース(1)の一面(1a)と前記第2のケース(11)の一面(11a)との間に配置されたメタルダイヤフラム(17)と、
前記第1のケース(1)と前記メタルダイヤフラム(17)との間に形成されて前記センシング部(4)を収容する圧力検出室(20)内に充填される圧力伝達媒体(21)と、
前記第1のケース(1)に備えられ、前記センシング部(4)と電気的に接続されるターミナル(8)と、
前記センシング部(4)と前記ターミナル(8)とを電気的に接続するワイヤ(9)と、を備え、
前記第2のケース(11)のうち前記圧力導入孔(14)における前記第1のケース(1)側の端部が広げられることで形成された空間(15)内に前記圧力導入孔(14)を通じて前記測定媒体が導入されることにより、前記空間(15)内の前記測定媒体の圧力が前記メタルダイヤフラム(17)を介して前記センシング部(4)に伝達される圧力センサにおいて、
前記圧力導入孔(14)には、前記測定媒体が通過する断面積を縮小し、前記測定媒体の圧力に応じて変位可能とされているオリフィス部材(26)が備えられていることを特徴とする圧力センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64664(P2013−64664A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203970(P2011−203970)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】