説明

圧力タンク

【課題】高圧に耐えることができ、かつ開閉作業およびメンテナンスが容易な圧力タンクを提供すること。
【解決手段】投入口および排出口を有するタンク本体と、投入口を封じる蓋部と、排出口を封じ、または開放する取出部と、投入口と蓋部との間に、その全周にわたって配置される第1弾性部材と、排出口と取出部との間に、その全周にわたって配置される第2弾性部材とを有し、投入口および蓋部の接合面のいずれか一方に、第1弾性部材を収容する第1凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、第1弾性部材に当接する面が傾斜面であり、かつ第1凹部に嵌入可能な第1凸部が全周にわたって形成され、かつ、排出口および取出部の接合面のいずれか一方に、第2弾性部材を収容する第2凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、第2弾性部材に当接する面が傾斜面であり、かつ第2凹部に嵌入可能な第2凸部が全周にわたって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理の分野において、高温高圧の加熱蒸気によって有機廃棄物を分解処理する技術が知られている。この技術によれば、プラスチック、ビニール、発泡スチロール、生ごみなど、あらゆる有機処理物を、高温高圧の加熱蒸気によって分解させることができる。そのため、生ごみなどの一般的な廃棄物はもちろんのこと、各種産業廃棄物や医療廃棄物なども安全に処理することが可能である。また、蒸気で分解をするため、ダイオキシンが発生せず、処理後に生成される生成品は燃料等として資源化できる。例えば、特許文献1には、廃棄物を還元雰囲気で加熱蒸気または高湿熱風により直接加熱し、滅菌処理では被処理物温度を120℃以上150℃以下に所定時間保持し湿熱滅菌させることにより、ダイオキシン類の有害物質や臭気の発生を防止し、安定かつ効率的に処理する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高温高圧加熱蒸気による分解処理には、一般的に、圧力タンクを備えた加圧器が用いられるが、現在のところ、例えば3.0N/mm2といった高圧に耐えるには、廃棄物の投入口や取出口もその都度厳重に密閉する必要があり、開閉の度に手間が掛かる問題が生じていた。また、密閉が不充分である場合には、最悪の場合タンクの破裂等の重大な問題を引き起こす虞もある。さらに、バルブ部分が劣化した場合には、バルブそのものを取り外してバルブメーカーにおいて修理をしなければならず、メンテナンスが容易でなかった。
【0004】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高圧に耐えることができ、かつ開閉作業およびメンテナンスが容易な圧力タンクを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の圧力タンクは、投入口および排出口を有するタンク本体と、前記投入口を封じる蓋部と、前記排出口を封じ、または開放する取出部と、前記投入口と前記蓋部との間に、その全周にわたって配置される第1弾性部材と、前記排出口と前記取出部との間に、その全周にわたって配置される第2弾性部材とを有し、前記投入口および前記蓋部の接合面のいずれか一方に、前記第1弾性部材を収容する第1凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、前記第1弾性部材に当接する面が傾斜面でありかつ前記第1凹部に嵌入可能な第1凸部が全周にわたって形成され、前記排出口および前記取出部の接合面のいずれか一方に、前記第2弾性部材を収容する第2凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、前記第2弾性部材に当接する面が傾斜面であり、かつ前記第2凹部に嵌入可能な第2凸部が全周にわたって形成されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の圧力タンクが、前記投入口と前記蓋部とに挿通された第1ノックピン、および前記排出口と前記取出部とに挿通された第2ノックピンのいずれか一方または双方を備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高圧に耐えることができ、かつ開閉作業およびメンテナンスが容易な圧力タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の圧力タンクの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の圧力タンクの投入部の部分断面図である。
【図3】投入部の鏡板と胴板との合わせ部分を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のA部を拡大した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の圧力タンクについて、添付の図面を用いて具体的に説明する。なお、本発明の圧力タンクは、投入口および排出口を有するタンク本体と、投入口を封じる蓋部と、排出口を封じ、または開放する取出部と、投入口と蓋部との間に、その全周にわたって配置される第1弾性部材と、排出口と取出部との間に、その全周にわたって配置される第2弾性部材とを有し、投入口および蓋部の接合面のいずれか一方に、第1弾性部材を収容する第1凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、第1弾性部材に当接する面が傾斜面でありかつ第1凹部に嵌入可能な第1凸部が全周にわたって形成され、排出口および取出部の接合面のいずれか一方に、第2弾性部材を収容する第2凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、第2弾性部材に当接する面が傾斜面であり、かつ第2凹部に嵌入可能な第2凸部が全周にわたって形成されていることを特徴とする。したがって、この要件を具備するものであれば、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1に、本発明の第1実施形態を示す。図1に示す圧力タンク10は、カプセル型のタンク本体12と、タンク本体12のほぼ全体を覆うジャケット14と、タンク本体12を土台16に据え付けるための支持部材18,18と、タンク本体12へ処理対象物を投入する投入部20と、タンク本体12の蒸気入口22,24と、蒸気排出口26と、タンク本体12の下部に設けられたドレン出口28,28と、タンク本体12の端部下方に設けられ、処理によって生成された物質を排出する排出口30および排出された物質を取り出す取出部31とを備えている。
【0011】
また、圧力タンク10は、タンク本体12を軸方向に貫くシャフト32と、シャフト32の両軸端を回転可能に支持するベアリング34,34と、シャフト32の一端に取り付けられた減速機36と、モーター38とを備えている。シャフト32のタンク本体12の内部部分には、図示しない撹拌羽根が取り付けられており、モーター38の動力でシャフト32が回転することで、タンク本体12の内部の処理対象物が粉砕および撹拌される。
【0012】
図2は、図1の圧力タンク10の投入部20の部分断面図である。投入部20は、タンク本体12に接続された投入口である円筒状の胴板50と、胴板50を封じる蓋部である鏡板52と、胴板50とタンク本体12とを接続するためのフランジ54とを備える。
【0013】
鏡板52は、胴板50の径に合致する円形の開口部を持つドーム状の板であり、開口部の外周に上部リング56が一体的に取り付けられている。一方、胴板50の開口部の外周には、上部リング56に対応する下部リング58が一体的に取り付けられている。外輪60は、上部リング56および下部リング58の外径とほぼ等しい内径を有する円弧形状の部材である。上部リング56と下部リング58とが当接した状態で、外輪60をそれらの外周に嵌合させてボルト止めすることで、上部リング56および下部リング58を固定することができ、それにより、鏡板52と胴板50とを密閉状態にすることができる。外輪60は、環状のものを2分割したものであってもよいし、3分割以上にしたものであってもよい。あるいは、所定の長さのものを要所に取り付けるようにしてもよい。
【0014】
なお、実際には、後述するように、上部リング56と下部リング58とが固定されたときに、上部リング56に取り付けられた凸リング66の凸部67と、下部リング58に取り付けられた凹リング68の凹部69に収容されたガスケット70とが、凸部67のテーパ面で密着することにより、鏡板52と胴板50とを密閉状態とすることができ、かつ、3.0N/mm2といった高圧においても密閉状態を保つことができる。
【0015】
上部リング56と下部リング58の接合部分には、少なくとも一か所に、ノックピン62が挿入されていることが好ましい。上部リング56、下部リング58、および外輪60の間には、組み立てに必要な隙間が設けられており、締め付け時の力に誤差が生じうるが、ノックピン62を取り付けることにより、各部品のずれを最小限に抑えることができる。
【0016】
鏡板52には、リンク機構を介してハンドル64が取り付けられている。外輪60を外した状態でハンドル64を上下に動かすことで、蓋部である鏡板52を、投入口である胴板50に対して上下させて、投入口を開閉することができる。
【0017】
図3は、投入部20の鏡板52と胴板50との合わせ部分、すなわち上部リング56と下部リング58との当接部分を拡大して示す断面図である。図3は、図2において切り欠いて示した部分の鉛直線に対する線対称図となっている。図4は、図3のAで示した部分をさらに拡大し、かつ、本発明の特徴的な部分である凸リング66の凸部67の形状を誇張して示した説明図である。
【0018】
図3および図4に示すように、上部リング56の下部リング58に当接する面には、当接面に対して突起した凸部67を持つ凸リング66が取り付けられている。また、下部リング58の凸リング66に対向する部分には、凸部67に対応する位置に凸部67が嵌入可能な凹部69を持つ凹リング68が取り付けられている。凸リング66の凸部67および凹リング68の凹部69は、それぞれリングの全周にわたって設けられている。
【0019】
凹リング68の凹部には、弾性部材である、環状のガスケット70が収容されている。したがって、上部リング56と下部リング58とが互いに押し付けられて固定されると、凸リング66の凸部67がガスケット70に押しつけられる。このとき、凸リング66の凸部67以外の面と凹リング68の凹部69以外の面との間には、わずかに(例えば2mm程度の)隙間が開くように設計されている。また、上部リング56と下部リング58との間にも同様の隙間が開くように設計されている。
【0020】
凸リング66の凸部67は、ガスケット70に当接する面がテーパ形状となっている。図4に示すように、凸部67の突出量は、図中左側、すなわち内径側のほうが大きく、図中右側、すなわち外径側の方がわずかに小さくなっている。このように、ガスケット70を凹部69に埋め込み、凸部67のガスケット70に対する当たり面をテーパ形状としたことにより、上部リング56と下部リング58とが固定されたときに、鏡板52と胴板50とを密閉状態とすることができ、かつ、3.0N/mm2といった高圧においても密閉状態を保つことができる。
【0021】
ガスケット70は、長期の使用により劣化し、耐圧力が低下することも考えられるが、その場合は、鏡板52の開放時にガスケット70を交換すればよく、メンテナンスが極めて容易である。
【0022】
凸部67のテーパの程度は、圧力タンク10の規模や要求される能力(圧力)によって適宜設定すればよい。例えば、本実施形態では、投入部の内径585.6mm、最大耐圧力3.0N/mm2の圧力タンク10において、ガスケット70の内径620mm、幅15mmのとき、凸部67の最大突出量は4mm、最小突出量は3.6mm、すなわち、テーパによる高低差は0.4mmとしている。
【0023】
図示例では、凸部67には、外周側から内周側に向かって突出量が大きくなるようにテーパを付けている。このように、外周側から内周側に向かって突出量を大きくすることで、より大きな圧力に耐えることができる。しかし、逆に、内周側から外周側に向かって突出量が大きくなるようなテーパをつけた場合でも、同様に高い圧力に耐えることができる。
【0024】
本実施形態では、胴板50側に凹部69およびガスケット70を設け、鏡板52側に凸部67を設けているが、どちらに凹部69を設けどちらに凸部67を設けるかは、圧力タンク10の形状や設置状況に応じて決定すればよい。
【0025】
排出口30と取出部31との接合部も、上述した投入部20の胴板50と鏡板52との接合部と同様の構成を有している。すなわち、一方に凸部を設け、他方に凹部を設け、ガスケットを凹部に埋め込む形態とし、凸部のガスケットに当接する面をテーパ面としている。このように、投入部20および排出部(排出口30および取出口31)の両方で、上記構成を採用することにより、極めて高い圧力に耐え得る圧力タンク10を提供することができる。また、排出口30と取出部31との接合部にも、投入部20と同様のノックピンを設け、取り付け時の誤差を最小限に抑えるのが好ましい。
【0026】
以上、本発明の圧力タンクについて詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 圧力タンク
12 タンク本体
14 ジャケット
16 土台
18 支持部材
20 投入部
22、24 蒸気入口
26 蒸気排出口
28 ドレン出口
30 排出口
31 取出部
32 シャフト
34 ベアリング
36 減速機
38 モーター
50 胴板
52 鏡板
54 フランジ
56 上部リング
58 下部リング
60 外輪
62 ノックピン
64 ハンドル
66 凸リング
67 凸部
68 凹リング
69 凹部
70 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口および排出口を有するタンク本体と、
前記投入口を封じる蓋部と、
前記排出口を封じ、または開放する取出部と、
前記投入口と前記蓋部との間に、その全周にわたって配置される第1弾性部材と、
前記排出口と前記取出部との間に、その全周にわたって配置される第2弾性部材とを有し、
前記投入口および前記蓋部の接合面のいずれか一方に、前記第1弾性部材を収容する第1凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、前記第1弾性部材に当接する面が傾斜面でありかつ前記第1凹部に嵌入可能な第1凸部が全周にわたって形成され、
前記排出口および前記取出部の接合面のいずれか一方に、前記第2弾性部材を収容する第2凹部が全周にわたって形成され、他の一方に、前記第2弾性部材に当接する面が傾斜面であり、かつ前記第2凹部に嵌入可能な第2凸部が全周にわたって形成されていることを特徴とする圧力タンク。
【請求項2】
さらに、前記投入口と前記蓋部とに挿通された第1ノックピン、および、前記排出口と前記取出部とに挿通された第2ノックピンのいずれか一方または双方を備える請求項1に記載の圧力タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−152689(P2012−152689A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13184(P2011−13184)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(511022214)市原化工機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】