説明

圧力制限弁によるブレーキ圧力の制御装置および方法

【課題】圧力設定の精度が本質的に改善され、これにより希望の目標圧力をより正確に達成可能な方法および装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ圧力を所定のしきい値に制限し、且つこのために電子装置(2)により弁特性曲線(10)に従って操作される圧力制限弁(7)による、油圧ブレーキ装置のブレーキ圧力(p)の制御装置は、ブレーキ圧力(p)を評価するための評価アルゴリズムを備えた評価ユニット(4)と、ブレーキ回路内のブレーキ圧力(pmess)を測定するためのセンサ装置(11)と、測定圧力(pmess)および評価圧力(pest)から差圧(Δp)を決定するためのユニット(5)と、弁特性曲線(10)を差圧(Δp)の関数として補正する制御ユニット(3)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置、特に油圧ブレーキ装置のブレーキ圧力の制御装置および対応の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最新の車両は、通常、特定の走行状況において、車両を安定化させるために、またはドライバを他の方法で支援するために、自動的に走行運転に係合する種々のドライバ支援装置を含んでいる。これには、特に、例えばESPのような走行動特性制御装置が挙げられるが、例えばACC(車間距離制御)のようないわゆるドライバ・アシスト装置、並びに例えばAPB(自動駐車ブレーキ)またはヒルホールド機能(HHC)のような多価機能もまた挙げられる。これらの装置は通常油圧ポンプを操作し、油圧ポンプは車輪に希望の目標ブレーキ圧力を形成する。この場合、油圧ポンプの操作は一般に時間制御される。ここで、操作期間はソフトウェア内に記憶されているモデルにより定義される。
【0003】
ブレーキ装置の全装置内の公差に基づき、特に圧力形成の第1の過程の間に、ポンプの運転時間長さのみを介して希望の目標圧力を正確に形成することは、条件に応じてのみ可能である。したがって、実際に達成可能なブレーキ圧力は、目標圧力から比較的大きな偏差を有することがある。そのために、既知のブレーキ装置は、ブレーキ回路内に作用している圧力を所定の値に制限するために使用される圧力制限弁を含む。油圧ポンプにより発生されるブレーキ圧力が弁に設定されているしきい値に到達したとき、弁に過電流が流れ、これにより圧力が制限される。この場合、圧力しきい値は弁電流を介して制御される。
【0004】
しかしながら、圧力制限弁を備えた装置においては、弁の設定もまた誤差が生じやすいことが問題である。したがって、設定された圧力しきい値は目標圧力から偏差を有していることがある。既知の装置においては、このような目標圧力からの偏差は上位の車両制御装置により排除される。しかしながら、この制御過程は、部分ブレーキ範囲内の減速度においてはドライバが感知可能な応答(例えば、減速度の変動、騒音)を発生させることがあり、これにより制御の快適性が損なわれることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力設定の精度が本質的に改善され、これにより希望の目標圧力をより正確に達成可能な方法および装置を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明により請求項に記載の特徴によって解決される。本発明のその他の形態が従属請求項に記載されている。
本発明の本質的な観点は、ブレーキ回路内のブレーキ圧力を制御することにあり、この場合、圧力制限弁が制御の操作要素を形成している。これは、希望の目標圧力が本質的により正確に達成可能であるという重要な利点を有している。
【0007】
本発明による制御装置は制御ユニットを含み、制御ユニットに制御差が供給され、制御ユニットはそれに対応して圧力制限弁を再調整する。しかしながら、制御差は、通常のように目標圧力psollおよび実際圧力pmessから形成されるのではなく、評価圧力pestおよび実際圧力pmessから形成されることが好ましい。ブレーキ圧力を評価するために、評価ユニットが対応の評価アルゴリズムを備えていることが好ましい。評価ユニットは、ポンプの運転時間、ポンプの回転速度、流体温度、および場合によりその他のパラメータを考慮してブレーキ圧力を計算することが好ましい。
【0008】
実際圧力は適切なセンサ装置により測定される。このために、動特性がそれほど高くないときの目標圧力設定においては、回路圧力センサ並びに車輪圧力センサが使用されてもよい。ここで、「車輪圧力センサ」とは、ブレーキ回路の弁の後方車輪側に配置されている圧力センサと理解されるべきである。これにより、車輪に作用している実際圧力が正確に測定可能である。これに対して、「回路圧力センサ」は、ブレーキ回路の弁の手前に配置されている。
【0009】
制御ユニットは弁電流を目標圧力に対して示した弁特性曲線(p/I(ブレーキ圧力/弁電流)特性曲線)を含むことが好ましい。弁特性曲線は数値で記憶されていてもよいことは明らかである。制御ユニットは、それが弁特性曲線を修正し、これにより、制御偏差が0に等しくなるまで圧力制限弁の圧力しきい値を変化させるように形成されていることが好ましい。弁特性曲線の補正は、それが存在する制御装置内において比較的簡単に実行可能であるという利点を有している。
【0010】
特定の実施形態により、制御ユニットは補正係数を計算し、この補正係数により弁特性曲線が補正される。この場合、補正係数は制御偏差の関数である。補正された特性曲線は次に以後の制御過程に対して継続して使用され且つステップごとにさらに補正される。この方法は特に簡単に実行可能である。
【0011】
圧力制御の終了後に、弁特性曲線が再び元の値にリセットされることが好ましい。
評価ユニットは装置の条件に応じて不正確になることがある。したがって、本発明により、評価アルゴリズムそれ自身もまた補正されることが好ましい。補正は測定された実際圧力に基づいて行われることが好ましく、測定された実際圧力は評価ユニットに供給され且つその値が評価値で上書きされるべきである。選択的に、補正のために、評価ユニットに差圧が供給されてもよい。補正の範囲内において、評価アルゴリズムの少なくとも1つのパラメータが変化されることが好ましい。
【0012】
多くの妨害影響は通常一時的に弁操作に影響を与えるにすぎないので、一般に、補正係数を装置内に記憶する必要はない。代替態様として、補正係数は装置内に永久的に記憶されていても、また複数の制御サイクルの過程内において適応されてもよい。したがって、制御装置は、弁に固有のいくつかの妨害因子を「学習する」ことが可能であり、これにより、のちの制御サイクルに対する制御精度が改善されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、油圧ブレーキ装置内のブレーキ圧力pを制御するための制御回路の概略制御構成図を示す。装置は、例えば、自動ブレーキ操作により走行運転に制御/操作係合することが可能なACCのような車両装置1を含む。車両装置1が作動化されたとき、それは目標圧力値psollを発生し、目標圧力値psollは圧力操作部2に出力される。車両装置1および圧力操作部2はここではソフトウェア・モジュールとして形成され、ソフトウェア・モジュールは1つの制御装置内または異なる制御装置内に記憶されていてもよい。
【0014】
圧力操作部2は弁特性曲線10(p/I特性曲線)を備えた制御ユニット3を含み、弁特性曲線10は、目標圧力psollを対応の弁電流Isollに変換する。弁電流Isollは、ブレーキ圧力を所定のしきい値に制限するために使用される圧力制限弁(USV)7に対する制御変数を形成する。ブレーキ圧力pの高さは弁電流Isollにより決定される。
【0015】
装置は、さらに、ブレーキ圧力を形成するための油圧ポンプ12を含む。油圧ポンプ12は、要求に応じて制御ユニットにより作動化され、且つ一般に車輪ブレーキ圧力が圧力制限弁7において設定されたしきい値に到達し且つ弁に過電流が流れるまで運転される。これにより、車輪ブレーキ圧力は所定のしきい値に制限される。
【0016】
車両装置1により要求された目標圧力psollをできるだけ正確に設定するために、ここでブレーキ圧力が制御される。このために、制御ユニット3に、測定ブレーキ圧力pmessおよび評価ブレーキ圧力pestからの制御差Δpが供給される。
【0017】
実際に作用しているブレーキ圧力は車輪圧力センサ11により測定される。ブレーキ圧力pを評価するために、さらに評価ユニット4が設けられ、評価ユニット4は、圧力操作部2内にアルゴリズムとして記憶されている。減算接続点5において、測定圧力pmessおよび評価圧力pestから圧力差Δpが形成される。圧力差(制御偏差)Δpは制御ユニット3に戻し結合される。制御ユニットは、この実施例においては、それが弁特性曲線10を制御偏差Δpの関数として補正するように形成されている。
【0018】
制御ユニットは、例えば補正係数を計算することが可能であり、補正係数により弁特性曲線10が補正される。次に、ブレーキ8に対応する修正ブレーキ・トルクMが作用し、修正ブレーキ・トルクMは車両9の希望の減速度aistを形成する。
【0019】
評価ユニット4は、ブレーキ圧力を、種々の変数、特にポンプの運転時間、ポンプの回転速度、流体温度等から評価するように形成されている。付属の評価アルゴリズムは数学モデルとして圧力操作部2内に記憶されている。
【0020】
評価ユニット4の出力変数は、上記のように、制御偏差Δpを決定するために使用される。しかしながら、評価変数pestは、制御ユニット3にも供給され且つ特に油圧ポンプ12に対する遮断基準を形成する。油圧ポンプ12は、評価圧力pestが所定のしきい値に到達したときに遮断される。
【0021】
圧力制御の終了後に、弁特性曲線は再び元の値にリセットされることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、油圧ブレーキ装置内のブレーキ圧力を制御するための制御回路の概略制御構成図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ圧力を所定のしきい値に制限し、且つこのために電子装置(2)により弁特性曲線(10)に従って操作される圧力制限弁(7)による、ブレーキ装置、特に油圧ブレーキ装置のブレーキ圧力(p)の制御装置において、
ブレーキ圧力(p)を評価するための評価アルゴリズムを備えた評価ユニット(4)と、
ブレーキ回路内のブレーキ圧力(pmess)を測定するためのセンサ装置(11)と、
測定圧力(pmess)および評価圧力(pest)から差圧(Δp)を決定するためのユニット(5)と、
弁特性曲線(10)を差圧(Δp)の関数として補正する制御ユニット(3)と、
を含む、圧力制限弁によるブレーキ圧力の制御装置。
【請求項2】
制御ユニット(3)が補正係数を計算し、この補正係数により弁特性曲線(10)が補正されることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】
前記センサ装置が、車輪圧力センサ(11)を含むことを特徴とする請求項1または2の装置。
【請求項4】
測定ブレーキ圧力(pmess)または差圧(Δp)が評価ユニット(4)に供給され、且つ前記評価アルゴリズムが差圧(Δp)に基づいて補正されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの装置。
【請求項5】
弁特性曲線(10)がp/I特性曲線であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの装置。
【請求項6】
ブレーキ圧力を所定のしきい値に制限し、且つこのために電子装置(2)により弁特性曲線(10)に従って操作される圧力制限弁(7)による、ブレーキ装置、特に油圧ブレーキ装置内のブレーキ圧力(p)の制御方法において、
評価ユニット(4)によりブレーキ圧力(p)を評価するステップと、
センサ装置(11)によりブレーキ圧力(pmess)を測定するステップと、
測定ブレーキ圧力(pmess)および評価ブレーキ圧力(pest)から差圧(Δp)を計算するステップと、
弁特性曲線(10)を差圧(Δp)の関数として補正するステップと、
を含む、圧力制限弁によるブレーキ圧力の制御方法。
【請求項7】
評価ユニット(4)の評価アルゴリズムが測定ブレーキ圧力(pmess)または差圧(Δp)により補正されることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】
ブレーキ圧力(p)が車輪圧力センサにより測定されることを特徴とする請求項6または7の方法。
【請求項9】
制御ユニット(3)が差圧(Δp)の関数として補正係数を計算し、この補正係数により弁特性曲線(10)が補正されることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかの方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−534253(P2009−534253A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507100(P2009−507100)
【出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054306
【国際公開番号】WO2007/125130
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】