説明

圧力容器用ライナおよびその製造方法

【課題】 長さ方向の力に対する耐圧強度が増大した圧力容器用ライナを提供する。
【解決手段】 圧力容器用ライナ1は、両端が開口した筒状部6および筒状部6内に設けられかつ筒状部6内を両端が開口した複数の空間8に仕切る補強壁7とを有する第1ライナ構成部材4と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部9および筒状部9内に設けられかつ筒状部9内を一端が開口した複数の空間12に仕切る補強壁11とを有する第2ライナ構成部材5とよりなる。第1ライナ構成部材4の補強壁7と第2ライナ構成部材5の補強壁11とを連結ピン14により機械的に連結する。両ライナ構成部材4、5の各空間8、12の開口端部内に跨るように補強部材23を嵌め入れる。補強部材23によって、連結部材14による両ライナ構成部材4、5どうしの連結の解除を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車産業、住宅産業、軍事産業、航空宇宙産業、医療産業等において、発電のための燃料となる水素ガスや天然ガスを貯蔵する圧力容器、または酸素ガスを貯蔵する圧力容器に用いられる圧力容器用ライナおよびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、大気汚染対策として、排気ガスのクリーンな天然ガス自動車や、燃料電池自動車の開発が進められている。これらの自動車は、燃料となる天然ガスや水素ガスを高圧で充填した圧力容器を搭載しているが、航続距離を延ばすために、充填されるガスのさらなる高圧化が求められている。
【0004】
従来、このような高圧圧力容器用ライナとして、筒状の胴と胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなり、両端が開口した円筒状体からなりかつ胴を構成するアルミニウム押出形材製の第1ライナ構成部材と、略椀状でかつ第1ライナ構成部材の両端部に溶接されて鏡板を構成する2つのアルミニウムダイキャスト製第2ライナ構成部材とにより形成され、第1ライナ構成部材の内面に、横断面放射状の複数の補強壁が一体に形成され、第2ライナ構成部材の内面における第1ライナ構成部材の補強壁と対応する位置に補強壁が一体に形成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この圧力容器用ライナは、補強繊維を両第2ライナ構成部材にかかるようにして第1ライナ構成部材の長さ方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるヘリカル巻補強層と、補強繊維を第1ライナ構成部材の周りに周方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるフープ巻補強層とが設けられて、高圧圧力容器として用いられるようになっている。
【0006】
特許文献1記載の圧力容器用ライナによれば、補強壁の働きにより、径方向の力に対する耐圧強度は十分である。しかしながら、長さ方向に大きな力が作用した場合、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との溶接部に応力が集中し、この部分で破損するおそれがある。このような破損を防止するためには、高圧圧力容器における上記ヘリカル巻補強層の厚みを大きくする必要があり、その結果高圧圧力容器の重量が大きくなるという問題がある。
【特許文献1】特開平9−42595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、長さ方向の力に対する耐圧強度が増大した圧力容器用ライナおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の態様からなる。
【0009】
1)筒状の胴と胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなる圧力容器用ライナにおいて、第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の少なくとも一端部に接合された第2ライナ構成部材とを備えており、第1ライナ構成部材が、少なくとも一端が開口した筒状部と、筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁とを有しており、第2ライナ構成部材が、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部と、第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁とを有しており、第1ライナ構成部材の筒状部の開口端部と第2ライナ構成部材の筒状部の開口端部とが当接状態で接合され、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが連結部材により機械的に連結され、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と、第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように補強部材が嵌め入れられており、補強部材によって、連結部材による両ライナ構成部材どうしの連結の解除が防止されている圧力容器用ライナ。
【0010】
2)胴を構成する第1ライナ構成部材と、両鏡板を構成する2つの第2ライナ構成部材とよりなり、第1ライナ構成部材の筒状部の両端が開口しており、筒状部内が補強壁により両端が開口した複数の空間に仕切られている上記1)記載の圧力容器用ライナ。
【0011】
3)胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、他方の鏡板を構成する1つの第2ライナ構成部材とよりなり、第1ライナ構成部材の筒状部の一端が開口するとともに他端が閉鎖されており、筒状部内が補強壁により一端が開口した複数の空間に仕切られている上記1)記載の圧力容器用ライナ。
【0012】
4)第1ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第2ライナ構成部材側に突出した突出壁が一体に形成されるとともに、厚さ方向の他側部分に切り欠きが形成され、第2ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第1ライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きが形成されるとともに、厚さ方向の他側部分に第1ライナ構成部材の切り欠き内に嵌る突出壁が一体に形成され、第1ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されるとともに、第2ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されることにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に連結部材挿入穴が形成され、連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0013】
5)第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の補強壁の端面における厚さ方向の中間部分に他方のライナ構成部材側に突出した突出壁が一体に形成されるとともに、他方のライナ構成部材の補強壁の端面に突出壁が嵌る凹溝が形成され、他方のライナ構成部材の補強壁の端面における凹溝の両側部分に一方のライナ構成部材側に突出した突出壁がそれぞれ一体に形成され、一方のライナ構成部材の補強壁の端面における突出壁の両側部分に他方のライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きがそれぞれ形成され、一方のライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されるとともに、他方のライナ構成部材のいずれか一方の突出壁の一側面および凹溝の一側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されることにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に連結部材挿入穴が形成され、連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0014】
6)第1および第2ライナ構成部材の補強壁の端面に、それぞれ端面の長さ方向に伸びる内部拡大溝が互いに対向するように形成されることにより、連結部材挿入穴が形成され、各内部拡大溝内に嵌め入れられる部分を有する連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0015】
7)第1ライナ構成部材、第2ライナ構成部材および連結部材の外端部がそれぞれアルミニウムで形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部とが摩擦攪拌接合されている上記4)〜6)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0016】
8)連結部材の外端部を除いた部分がアルミニウムよりも高強度の材料からなる上記7)記載の圧力容器用ライナ。
【0017】
9)補強部材が、第1ライナ構成部材の筒状部内周面および第2ライナ構成部材の筒状部内周面に密着する部分と、当該密着部分に連なりかつ補強部材が嵌め入れられる空間を形成するすべての補強壁のうちの少なくとも1つの補強壁に密着する部分とを有している上記1)〜8)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0018】
10)補強部材がアルミニウムで形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部と、補強部材とが摩擦攪拌接合されている上記7)〜9)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0019】
11)補強部材がアルミニウムよりも高強度の材料で形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部とのみが摩擦攪拌接合されている上記7)〜9)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0020】
12)補強部材が、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部との摩擦攪拌接合の際の加重に耐えて両ライナ構成部材の筒状部の変形を防止する上記7)〜11)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0021】
13)上記1)〜12)のうちのいずれかに記載された圧力容器用ライナの外周面が繊維強化樹脂層で覆われている圧力容器。
【0022】
14)繊維強化樹脂層が、補強繊維を両鏡板にかかるようにして胴の長さ方向に巻き付けてなるヘリカル巻繊維層および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層と、これらの繊維層に含浸させて硬化させた樹脂とよりなる上記13)記載の圧力容器。
【0023】
15)燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【0024】
16)上記15)記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【0025】
17)上記15)記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【0026】
18)天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【0027】
19)上記18)記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【0028】
20)上記18)記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【0029】
21)酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【0030】
22)上記4)記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、第1ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第2ライナ構成部材側に突出した突出壁を一体に形成するとともに、厚さ方向の他側部分に切り欠きを形成し、第2ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第1ライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きを形成するとともに、厚さ方向の他側部分に第1ライナ構成部材の切り欠き内に嵌る突出壁を一体に形成し、第1ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成するとともに、第2ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成することにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に第1の連結部材挿入穴を形成し、さらに両ライナ構成部材の端部どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から第1連結部材挿入穴に至る第2の連結部材挿入穴を形成すること、第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の各空間の開口端部内に、補強部材を一部が一方のライナ構成部材から突出するように嵌め入れた後、補強部材の突出部を他方のライナ構成部材の各空間の開口端部内に嵌め入れるとともに、第1ライナ構成部材の突出壁を第2ライナ構成部材の切り欠き内に、第2ライナ構成部材の突出壁を第1ライナ構成部材の切り欠き内にそれぞれ嵌め入れて第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせ、その後両ライナ構成部材の第1および第2連結部材挿入穴に跨って連結部材を挿入すること、両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。
【0031】
23)上記5)記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の補強壁の端面における厚さ方向の中間部分に他方のライナ構成部材側に突出した突出壁を一体に形成するとともに、他方のライナ構成部材の補強壁の端面に突出壁が嵌る凹溝を形成し、他方のライナ構成部材の補強壁の端面における凹溝の両側部分に一方のライナ構成部材側に突出した突出壁をそれぞれ一体に形成するとともに、一方のライナ構成部材の補強壁の端面における突出壁の両側部分に他方のライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きをそれぞれ形成し、一方のライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成するとともに、他方のライナ構成部材のいずれか一方の突出壁の一側面および凹溝の一側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成することにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に第1の連結部材挿入穴を形成し、さらに両ライナ構成部材の端部どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から第1連結部材挿入穴に至る第2の連結部材挿入穴を形成すること、第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の各空間の開口端部内に、補強部材を一部が一方のライナ構成部材から突出するように嵌め入れた後、補強部材の突出部を他方のライナ構成部材の各空間の開口端部内に嵌め入れるとともに、一方のライナ構成部材の突出壁を他方のライナ構成部材の凹溝に、他方のライナ構成部材の突出壁を一方のライナ構成部材の切り欠きにそれぞれ嵌め入れて、第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせ、その後両ライナ構成部材の第1および第2連結部材挿入穴に跨ってピン状連結部材を挿入すること、両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。
【0032】
24)上記6)記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、第1および第2ライナ構成部材の筒状部の端面、ならびに両ライナ構成部材の補強壁の端面に、それぞれ筒状部の外周面から補強壁に至る内部拡大溝を互いに対向するように形成することにより、両ライナ構成部材どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から補強壁に至る連結部材挿入穴を形成すること、第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせた後、両ライナ構成部材の連結部材挿入穴に連結部材を挿入すること、両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。
【発明の効果】
【0033】
上記1)〜3)の圧力容器ライナによれば、第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材の補強壁どうしが連結部材により連結されているので、長さ方向に大きな力が作用した場合にも、両ライナ構成部材の接合部に応力が集中することが防止され、その結果接合部での破損が防止されることになり、長さ方向の力に対する耐圧強度が増大する。したがって、高圧圧力容器に使用する場合、ヘリカル巻補強層の厚さを小さくするか、あるいはヘリカル巻補強層をなくすことができ、高圧圧力容器の軽量化を図ることができる。しかも、生産性が向上し、生産コストが低減される。
【0034】
上記4)〜6)の圧力容器ライナによれば、比較的簡単な構成で、第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材の補強壁どうしを連結部材により連結することができる。
上記7)の圧力容器用ライナによれば、長さ方向の力に対する耐圧強度が一層確実に増大する。
【0035】
上記8)の圧力容器ライナによれば、長さ方向の力に対する耐圧強度が一層確実に増大する。
【0036】
上記9)〜11)の圧力容器ライナによれば、長さ方向に大きな力が加わった場合にも連結部材の脱落が防止されるので、長さ方向の力に対する耐圧強度が一層確実に増大する。
【0037】
上記12)の圧力容器ライナによれば、摩擦攪拌接合の際の第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部の変形を防止することができる。
【0038】
上記22)の圧力容器ライナの製造方法によれば、上記4)の圧力容器ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0039】
上記23)の圧力容器ライナの製造方法によれば、上記5)の圧力容器ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0040】
上記24)の圧力容器ライナの製造方法によれば、上記6)の圧力容器ライナを比較的簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
実施形態1
この実施形態は図1〜図7に示すものである。
【0043】
図1はこの実施形態の圧力容器用ライナを示し、図2および図3は圧力容器用ライナを利用した高圧水素ガス用圧力容器を示す。また、図4〜図7は圧力容器用ライナの製造方法を示す。
【0044】
図1および図2において、圧力容器用ライナ(1)は、胴(2)と胴(2)の両端開口を閉鎖する鏡板(3)とよりなり、両端が開口したアルミニウム製ポートホール押出管からなりかつ胴(2)を構成する第1ライナ構成部材(4)と、第1ライナ構成部材(4)の両端部に接合されて両鏡板(3)を構成する2つのアルミニウム製第2ライナ構成部材(5)とを備えている。
【0045】
第1ライナ構成部材(4)は、両端が開口した円筒状部(6)と、円筒状部(6)内にその全長にわたって一体に形成された複数、ここでは4つの補強壁(7)とよりなり、すべての補強壁(7)は、円筒状部(6)の内周面から中心線に向かって内方に伸びかつ中心線上で相互に一体化されている。なお、ここでは、すべての補強壁(7)は円筒状部(6)の中心線の周りに等角度間隔で形成されている。しかしながら、この実施形態1においては、補強壁(7)の数および隣り合う補強壁(7)間の上記中心線周りの間隔はこれに限定されるものではない。円筒状部(6)内は、補強壁(7)により両端が開口した補強壁(7)と同数の空間(8)に仕切られている。
【0046】
各第2ライナ構成部材(5)は、鍛造または切削により形成されたものであり、一端が開口するとともに他端が閉鎖された円筒状部(9)と、第1ライナ構成部材(4)の補強壁(7)と対応するように円筒状部(9)内にその全長にわたって一体に形成された複数、ここでは4つの補強壁(11)とよりなり、すべての補強壁(11)は、円筒状部(9)の内周面から中心線に向かって内方に伸びかつ中心線上で相互に一体化されている。なお、補強壁(11)は円筒状部(9)の他端閉鎖部とも一体化されている。円筒状部(9)内は、補強壁(11)により一端が開口するとともに他端が閉鎖された補強壁(11)と同数の空間(12)に仕切られている。一方の第2ライナ構成部材(6)の閉鎖部には口金取付部(13)が一体に形成されている。口金取付部(13)には、その外端から貫通穴(13a)が形成されている。また、補強壁(11)における口金取付部(13)側の端部も、貫通穴(13a)を形成するのと同時に切除されており、これにより圧力容器用ライナ(1)内が外部に通じている。
【0047】
第1ライナ構成部材(4)および第2ライナ構成部材(5)は、それぞれ、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。これらのライナ構成部材(4)(5)は同じ材料で形成されていてもよいし、あるいは3つのうち少なくとも2つが異なる材料で形成されていてもよい。
【0048】
第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)と、第2ライナ構成部材(5)の各補強壁(11)とは、連結部材、ここではアルミニウム製連結ピン(14)により次のようにして機械的に連結されている。図3に示すように、第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)の端面(7a)における厚さ方向の片側部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ第2ライナ構成部材(5)側に突出した突出壁(15)が一体に形成されるとともに、同じく厚さ方向の他側部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ突出壁(15)と同一長さの切り欠き(16)が形成されている。第2ライナ構成部材(5)の補強壁(11)の端面(11a)における厚さ方向の片側部分に、端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)の突出壁(15)が嵌る切り欠き(17)が形成されるとともに、同じく厚さ方向の他側部分に、端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)の切り欠き(16)内に嵌る突出壁(18)が一体に形成されている。第1および第2ライナ構成部材(4)(5)における突出壁(15)(18)の切り欠き(16)(17)側を向いた面(15a)(18a)およびこの面と面一になった切り欠き(16)(17)の側面(16a)(17a)に跨るように、それぞれ長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(19)(20)が形成されており、これらの溝(19)(20)により両ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)どうしの間に第1のピン挿入穴(22)が形成されている。そして、アルミニウム製の連結ピン(14)がピン挿入穴(22)に挿入されており、連結ピン(14)により両ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)どうしが機械的に連結されている。
【0049】
なお、連結ピン(14)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。連結ピン(14)は、両ライナ構成部材(4)(5)と同じ材料で形成されていてもよいし、あるいは異なる材料で形成されていてもよい。
【0050】
第1ライナ構成部材(4)の各空間(8)の両端部内と、第2ライナ構成部材(5)の各空間(12)の開口側端部内とに跨るように補強部材(23)が嵌め入れられている。各補強部材(23)は、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)内周面に密着する円弧状部分(23a)と、隣り合う2つの補強壁(7)(11)に密着する2つの直線状部分(23b)とが一体化されて全体として略扇形のリング状に形成されたものである。補強部材(23)は、アルミニウムや、アルミニウムよりも強度の大きい銅系合金、鉄系合金などにより形成される。
【0051】
圧力容器用ライナ(1)においては、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の端部どうしが全周にわたって摩擦攪拌接合されるとともに、連結ピン(14)の外端部が、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の端部に摩擦攪拌接合されている。接合部のビードを(21)で示す。
【0052】
図2に示すように、圧力容器用ライナ(1)は、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(24)で覆われ、高圧圧力容器(25)として用いられる。繊維強化樹脂層(24)は、特許文献1記載の圧力容器用ライナと同様に、補強繊維を両第2ライナ構成部材(5)にかかるようにして第1ライナ構成部材(4)の長さ方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるヘリカル巻補強層と、補強繊維を第1ライナ構成部材(4)の周りに周方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるフープ巻補強層とよりなる。なお、フープ巻補強層は必ずしも必要としない。
【0053】
以下、図4〜図7を参照して、圧力容器用ライナ(1)の製造方法について説明する。
【0054】
ポートホール押出法により、両端が開口した円筒状部(6)および補強壁(7)を有する第1ライナ構成部材(4)を形成する。また、鍛造または切削により、一端が開口するとともに他端が閉鎖された円筒状部(9)および補強壁(11)を有する第2ライナ構成部材(5)を形成する。口金取付部(13)を有する第2ライナ構成部材(5)には、口金取付部(13)の外端面から貫通穴(13a)を形成するとともに、補強壁(11)の口金取付部(13)側端部を切除する。さらに、適当な加工法により連結ピン(14)および補強部材(23)を形成する。
【0055】
ついで、図4および図5に示すように、第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)の両端面(7a)における厚さ方向の片側部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ第2ライナ構成部材(5)側に突出した突出壁(15)を一体に形成するとともに、同じく厚さ方向の他側部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ突出壁(15)と同一長さの切り欠き(16)を形成する。また、第1ライナ構成部材(4)における突出壁(15)の切り欠き(16)側を向いた面(15a)およびこの面と面一になった切り欠き(16)の側面(16a)に跨るように、それぞれ長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(19)を形成する。さらに、第1ライナ構成部材(4)における円筒状部(6)の端面(6a)および各補強壁(7)の端面(7a)に、一端が円筒状部(6)外周面に開口するとともに他端が溝(19)に連なる横断面半円形の溝(26)を形成する。
【0056】
第2ライナ構成部材(5)の補強壁(11)の端面(11a)における厚さ方向の片側部分に、端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)の突出壁(15)が嵌る切り欠き(17)を形成するとともに、同じく厚さ方向の他側部分に、端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)の切り欠き(16)内に嵌る突出壁(18)を一体に形成する。また、第2ライナ構成部材(5)における突出壁(18)の切り欠き(17)側を向いた面(18a)およびこの面と面一になった切り欠き(17)の側面(17a)に跨るように、それぞれ長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(20)を形成する。さらに、第2ライナ構成部材(5)における円筒状部(9)の端面(9a)および各補強壁(11)の端面(11a)に、一端が円筒状部(9)外周面に開口するとともに他端が溝(20)に連なる横断面半円形の溝(27)を形成する。
【0057】
ついで、第1ライナ構成部材(4)および第2ライナ構成部材(5)のうちいずれか一方、ここでは第2ライナ構成部材(5)の各空間(12)の開口端部内に、補強部材(23)を、一部が第2ライナ構成部材(5)から突出するように嵌め入れた後(図6参照)、補強部材(23)の突出部を第1ライナ構成部材(4)の各空間(8)の開口端部内に嵌め入れるとともに、第1ライナ構成部材(4)の突出壁(15)を第2ライナ構成部材(5)の切り欠き(17)内に、第2ライナ構成部材(5)の突出壁(18)を第1ライナ構成部材(4)の切り欠き(16)内にそれぞれ嵌め入れて両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の端面(6a)(9a)どうしおよび補強壁(7)(11)の端面(7a)(11a)どうしを突き合わせる。このとき、両ライナ構成部材(4)(5)の溝(19)(20)により第1のピン挿入穴(22)が形成されるとともに、溝(26)(27)により、一端が円筒状部(6)(9)外周から第1のピン挿入穴(22)に至る第2のピン挿入穴(28)が形成される(図7参照)。その後、連結ピン(14)を、外側から両ピン挿入穴(22)(28)に跨るように挿入する。
【0058】
ついで、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)どうしを摩擦攪拌接合するとともに、連結ピン(14)の外端部を円筒状部(6)(9)に摩擦攪拌接合する。
【0059】
まず、先端部にテーパ部を介して小径部(31a)が同軸上に一体に形成された円柱状回転子(31)と、回転子(31)の小径部(31a)の端面に小径部(31a)と同軸上に一体に形成されかつ小径部(31a)よりも小径であるピン状プローブ(32)とを備えている摩擦攪拌接合用工具(30)を用意する(図6および図7参照)。回転子(31)およびプローブ(32)は、両ライナ構成部材(4)(5)よりも硬質でかつ接合時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱性を有する材料で形成されている。
【0060】
ついで、図6および図7に示すように、摩擦攪拌接合用工具(30)を回転させながら、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)どうしの突き合わせ部における周方向の1個所、ここでは連結ピン(14)が存在する部分の外側からプローブ(32)を埋入するとともに、工具(30)における回転子(31)の小径部(31a)とプローブ(32)との間の肩部(31b)を、両円筒状部(6)(9)の外周面に押し付ける。肩部(31b)の両円筒状部(6)(9)外周面への押し付けにより、接合開始時および接合途中に生じることのある軟化部の肉の飛散を防止して良好な接合状態を得ることができるとともに、両円筒状部(6)(9)と肩部(31b)との摺動によって摩擦熱をさらに発生させてプローブ(32)と両円筒状部(6)(9)との接触部ならびにその近傍の軟化を促進することができ、しかも接合部の表面へのバリ等の凹凸の発生を防止することができる。
【0061】
ついで、両ライナ構成部材(4)(5)と摩擦攪拌接合用工具(30)とを相対的に移動させることによって、プローブ(32)を上記突き合わせ部の周方向に移動させる。すると、プローブ(32)の回転により発生する摩擦熱と、両円筒状部(6)(9)と肩部(31b)との摺動により発生する摩擦熱とによって、上記突き合わせ部の近傍において両円筒状部(6)(9)の母材となる金属は軟化するとともに、この軟化部がプローブ(32)の回転力を受けて攪拌混合され、さらにこの軟化部がプローブ(32)通過溝を埋めるように塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化するという現象が、プローブ(32)の移動に伴って繰り返されることにより、両円筒状部(6)(9)どうしが接合されていく。そして、プローブ(32)が上記突き合わせ部の全周にわたって移動して埋入位置に戻ったときに両円筒状部(6)(9)どうしが全周にわたって接合される。このとき、ビード(21)が形成される。また、連結ピン(14)が存在する部分においては、連結ピン(14)の母材となる金属が軟化するとともに、この軟化部がプローブ(32)の回転力を受けて両円筒状部(6)(9)の母材となる金属と攪拌混合され、その後冷却固化して両円筒状部(6)(9)に接合される。
【0062】
ついで、プローブ(32)が埋入位置に戻った後、あるいは埋入位置を通過した後に、両円筒状部(6)(9)の突き合わせ部に配置した当て部材(図示略)までプローブ(32)を移動させ、ここでプローブ(32)を引き抜く。また、他方の第2ライナ構成部材(5)も、上記と同様にして第1ライナ構成部材(4)に摩擦攪拌接合する。こうして、圧力容器用ライナ(1)が製造される。なお、連結ピン(14)の外端部と両円筒状部(6)(9)との摩擦攪拌接合により、第2ピン挿入穴(28)の外側部分は消失する。
【0063】
ここで、補強部材(23)がアルミニウムで形成されている場合には、補強部材(23)が両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)に摩擦攪拌接合されるように、埋入したプローブ(32)の先端の位置を決める。一方、補強部材(23)が銅系合金や鉄系合金で形成されている場合には、補強部材(23)が両ライナ構成部材(4)(5)の両円筒状部(6)(9)に摩擦攪拌接合されないように、埋入したプローブ(32)の先端の位置を決める。
【0064】
図8は補強部材の変形例を示す。
【0065】
図8において、補強部材(35)は、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の内周面に密着する円弧状部分(35a)と、1つの空間(8)(12)を形成する隣り合う2つの補強壁(7)(11)のうちのいずれか一方に密着する1つの直線状部分(35b)とが一体化されて全体として略V字状に形成されたものである。補強部材(35)は、アルミニウムや、アルミニウムよりも強度の大きい銅系合金、鉄系合金などにより形成される。
【0066】
実施形態2
この実施形態は図9および図10に示すものである。
【0067】
この実施形態の場合、図9に示すように、第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)の端面(7a)における厚さ方向の中央部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ第2ライナ構成部材(5)側に突出した突出壁(40)が一体に形成されるとともに、第2ライナ構成部材(5)の各補強壁(11)の端面(11a)に、突出壁(40)が嵌る凹溝(41)が形成されている。また、第2ライナ構成部材(5)の各補強壁(11)の端面(11a)における凹溝(41)の両側部分に、それぞれ端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)側に突出した突出壁(42)が一体に形成されるとともに、第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)の端面(7a)における突出壁(40)の両側部分に、それぞれ第2ライナ構成部材(5)の突出壁(42)が嵌る切り欠き(43)が形成されている。ここで、突出壁(40)(42)、凹溝(41)および切り欠き(43)の長さは等しくなっている。第1ライナ構成部材(4)における突出壁(40)の一側面(40a)およびこの面と面一になった一方の切り欠き(43)の側面(43a)に跨るように、長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(44)が形成されるとともに、第2ライナ構成部材(5)の一方の突出壁(42)の一側面(42a)およびこの面と面一になった凹溝(41)の一側面(41a)に跨るように、長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(45)が形成されており、これらの溝(44)(45)により両ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)どうしの間に第1のピン挿入穴(46)が形成されている。そして、アルミニウム製の連結ピン(14)がピン挿入穴(46)に挿入されており、連結ピン(14)により両ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)どうしが機械的に連結されている。
【0068】
実施形態2の圧力容器用ライナの製造方法は次の通りである。
【0069】
まず、第1ライナ構成部材(4)および2つの第2ライナ構成部材(5)を、実施形態1の場合と同様にして形成する。
【0070】
ついで、図10に示すように、第1ライナ構成部材(4)の各補強壁(7)の端面(7a)における厚さ方向の中央部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ第2ライナ構成部材(5)側に突出した突出壁(40)を一体に形成するとともに、端面(7a)における突出壁(40)の両側部分に、端面(7a)の長さ方向に伸びかつ突出壁(40)と同一長さの切り欠き(43)を形成する。また、第1ライナ構成部材(4)における突出壁(40)の一側面(40a)およびこの面と面一になった一方の切り欠き(43)の側面(43a)に跨るように、長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(44)を形成する。さらに、第1ライナ構成部材(4)における円筒状部(6)の端面(6a)および各補強壁(7)の端面(7a)に、一端が円筒状部(6)外周面に開口するとともに他端が溝(44)に連なる横断面半円形の溝(26)を形成する。
【0071】
第2ライナ構成部材(5)の各補強壁(11)の端面(11a)に、突出壁(40)が嵌る凹溝(41)を形成するとともに、端面(11a)における凹溝(41)の両側部分に、それぞれ端面(11a)の長さ方向に伸びかつ第1ライナ構成部材(4)側に突出した突出壁(42)を一体に形成する。また、第2ライナ構成部材(5)の一方の突出壁(42)の一側面(42a)およびこの面と面一になった凹溝(41)の一側面(41a)に跨るように、長さ方向に伸びかつ両端が開口した横断面半円形の溝(45)を形成する。さらに、第2ライナ構成部材(5)における円筒状部(9)の端面(9a)および各補強壁(11)の端面(11a)に、一端が円筒状部(9)外周面に開口するとともに他端が溝(20)に連なる横断面半円形の溝(27)を形成する。
【0072】
ついで、第1ライナ構成部材(4)および第2ライナ構成部材(5)のうちいずれか一方の各空間(8)または(12)の開口端部内に、補強部材(23)を、一部が一方のライナ構成部材(4)または(5)から突出するように嵌め入れた後、補強部材(23)の突出部を他方のライナ構成部材(5)または(4)の各空間(12)または(8)の開口端部内に嵌め入れるとともに、第1ライナ構成部材(4)の突出壁(40)を第2ライナ構成部材(5)の凹溝(41)内に、第2ライナ構成部材(5)の突出壁(42)を第1ライナ構成部材(4)の切り欠き(43)内にそれぞれ嵌め入れて両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の端面(6a)(9a)どうしおよび補強壁(7)(11)の端面(7a)(11a)どうしを突き合わせる。このとき、両ライナ構成部材(4)(5)の溝(44)(45)により第1のピン挿入穴(22)が形成されるとともに、溝(26)(27)により、一端が円筒状部(6)(9)外周から第1のピン挿入穴(46)に至る第2のピン挿入穴(28)が形成される。その後、連結ピン(14)を、外側から両ピン挿入穴(46)(28)に跨るように挿入する。
【0073】
ついで、上記実施形態1の場合と同様にして、第1ライナ構成部材(4)の円筒状部(6)の両端部と2つの第2ライナ構成部材(5)の円筒状部(9)の端部とを摩擦攪拌接合するとともに、連結ピン(14)の外端部を両円筒状部(6)(9)に摩擦攪拌接合する。
【0074】
上記実施形態1および2において、連結ピン(14)は全体がアルミニウム製であるが、これに限定されるものではなく、外端部のみをアルミニウム製としておけばよい。すなわち、2以上の構成部材により連結部材を構成し、外端部に位置する構成部材をアルミニウム製とすればよい。この場合、他の構成部材は、ステンレス鋼やその他の鉄系合金、銅系合金などのアルミニウムよりも強度の大きい金属により形成することが好ましい。
【0075】
実施形態3
この実施形態は図11および図12に示すものである。
【0076】
この実施形態の場合、図11に示すように、第1および第2ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)の端面(7a)(11a)に、それぞれ端面(7a)(11a)の長さ方向に伸びる至る横断面略T字状の内部拡大溝(50)(51)が互いに対向するように形成されており、これらの内部拡大溝(50)(51)により両ライナ構成部材(4)(5)どうしの間に連結部材挿入穴(52)が形成されている。そして、横断面略H字状のアルミニウム製連結部材(53)が連結部材挿入穴(52)に挿入されており、連結部材(53)により両ライナ構成部材(4)(5)の補強壁(7)(11)どうしが機械的に連結されている。
【0077】
実施形態3の圧力容器用ライナの製造方法は次の通りである。
【0078】
まず、第1ライナ構成部材(4)および2つの第2ライナ構成部材(5)を、実施形態1の場合と同様にして形成する。
【0079】
ついで、図12に示すように、第1ライナ構成部材(4)の円筒状部(6)の両端面(6a)および各補強壁(7)の両端面(7a)に、一端が円筒状部(6)の外周面に開口するとともに、他端が各補強壁(7)における円筒状部(6)の中心線側端部に位置する内部拡大溝(50)を形成する。また、各第2ライナ構成部材(5)の円筒状部(9)の端面(9a)および各補強壁(11)の端面(11a)に、一端が円筒状部(9)の外周面に開口するとともに、他端が各補強壁(11)における円筒状部(9)の中心線側端部に位置する内部拡大溝(51)を形成する。
【0080】
ついで、第1ライナ構成部材(4)および第2ライナ構成部材(5)のうちいずれか一方、ここでは第2ライナ構成部材(5)の各空間(12)の開口端部内に、補強部材(23)を、一部が第2ライナ構成部材(5)から突出するように嵌め入れた後、補強部材(23)の突出部を第1ライナ構成部材(4)の各空間(8)の開口端部内に嵌め入れることにより、両ライナ構成部材(4)(5)の円筒状部(6)(9)の端面(6a)(9a)どうしおよび各補強壁(7)(11)の端面(7a)(11a)どうしを突き合わせる。このとき、両ライナ構成部材(4)(5)の内部拡大溝(50)(51)により連結部材挿入穴(52)が形成される。その後、連結部材(53)を、外側から連結部材挿入穴(52)に挿入する。
【0081】
ついで、上記実施形態1の場合と同様にして、第1ライナ構成部材(4)の円筒状部(6)の両端部と2つの第2ライナ構成部材(5)の円筒状部(9)の端部とを摩擦攪拌接合するとともに、連結部材(53)の外端部を両円筒状部(6)(9)に摩擦攪拌接合する。なお、連結部材(53)の外端部と両円筒状部(6)(9)との摩擦攪拌接合により、内部拡大溝(50)(51)および連結部材挿入穴(52)の外端部は消失する。
【0082】
上記実施形態3において、連結部材(53)は全体がアルミニウム製であるが、これに限定されるものではなく、外端部のみをアルミニウム製としておけばよい。すなわち、図12に符号(55)で示すように、2以上の構成部材(56)(57)により連結部材(55)を構成し、外端部に位置する構成部材(56)をアルミニウム製とすればよい。この場合、他の構成部材(57)は、ステンレス鋼やその他の鉄系合金、銅系合金などのアルミニウムよりも強度の大きい金属により形成することが好ましい。
【0083】
上記実施形態2および3の圧力容器用ライナは、実施形態1の圧力容器用ライナと同様に、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(24)で覆われ、高圧圧力容器として用いられる。繊維強化樹脂層(24)は、特許文献1記載の圧力容器用ライナと同様に、補強繊維を両第2ライナ構成部材(5)にかかるようにして第1ライナ構成部材(4)の長さ方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるヘリカル巻補強層と、補強繊維を第1ライナ構成部材(4)(5)の周りに周方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるフープ巻補強層とよりなる。なお、フープ巻補強層は必ずしも必要としない。
【0084】
実施形態1〜3においては、圧力容器用ライナは、1つの第1ライナ構成部材(4)と、2つの第2ライナ構成部材(5)とにより形成されているが、これに限定されるものではなく、一方の鏡板は胴と一体に形成されていてもよい。すなわち、第1ライナ構成部材(4)として、一端が開口するとともに他端が閉鎖された有底円筒状部を有しておりかつ胴と一方の鏡板を構成するものを用いてもよい。この場合、第1ライナ構成部材(4)の開口端部に他方の鏡板を構成するいずれかの第2ライナ構成部材(5)を接合する。第2ライナ構成部材(5)として口金取付部の無いものを用いる場合には、第1ライナ構成部材(4)の鏡板に口金取付部を一体に形成しておく。有底筒状の第1ライナ構成部材(4)は、たとえば鍛造によりつくられる。さらに、第1ライナ構成部材(4)を、その長さ方向に分断された複数のライナ構成部材により構成しておいてもよい。
【0085】
実施形態4
この実施形態は図13に示すものである。
【0086】
この実施形態の場合、図13に示すように、両アルミニウム製ライナ構成部材(60)(61)の筒状部(62)(63)の横断面形状はだ円形である。ここで、だ円形という語には、数学的に定義されるものだけではなく、円を偏平状につぶしたような形状、たとえば2つの半円形部分が直線部分によって連結されているような長円形を含むものとする。そして、上記だ円の長径上に位置する長補強壁(64)(65)と、筒状部(62)(63)から長補強壁(64)(65)に向かって伸びた複数の短補強壁(66)(67)とが、筒状部(62)(63)内にその全長にわたって一体に形成されており、これらの補強壁(64)〜(67)により筒状部(62)(63)内が複数の空間に仕切られている。
【0087】
第1ライナ構成部材(60)の各空間の両端部内と、第2ライナ構成部材(61)の各空間)の開口側端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材(68)(69)としては、各空間の横断面形状に合致した形状のリング状のものが用いられている。
【0088】
なお、この実施形態においても、第1ライナ構成部材(60)はポートホール押出法により形成され、第2ライナ構成部材(61)は鍛造により形成されている。
【0089】
なお、両ライナ構成部材(60)(61)の補強壁(64)〜(67)どうしの連結は、上記実施形態1〜3のうちのいずれかの態様で行われる。また、圧力容器用ライナの製造方法も上記実施形態1〜3のうちのいずれかの方法と同じである。
【0090】
実施形態4において、補強部材としては図14および図15に示すものを用いることも可能である。
【0091】
図14においては、横断面における両端部の空間に嵌め入れられ、かつ両ライナ構成部材(60)(61)の筒状部(62)(63)に密着する部分および長補強壁(64)(65)に密着する部分からなる略V字状の第1補強部材(70)と、他の空間に嵌め入れられかつ両ライナ構成部材(60)(61)の筒状部(62)(63)に密着する部分および2つの短補強壁(66)(67)に密着する部分からなる略U字状の第2補強部材(71)とが用いられている。
【0092】
図15においては、横断面における両端部の空間に嵌め入れられ、かつ両ライナ構成部材(60)(61)の筒状部(62)(63)に密着する部分および1つの短補強壁(66)(67)に密着する部分からなる略V字状の第1補強部材(75)と、他の空間に嵌め入れられかつ両ライナ構成部材(60)(61)の筒状部(62)(63)に密着する部分、長補強壁(64)(65)に密着する部分および1つの短補強壁(66)(67)に密着する部分からなる略コ字状の第2補強部材(76)とが用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施形態1の圧力容器用ライナを示す斜視図である。
【図2】図1の圧力容器用ライナを用いた高圧圧力容器の縦断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図1の圧力容器用ライナを製造する方法を示し、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材をと組み合わせる前の状態の部分拡大斜視図である。
【図5】図1の圧力容器用ライナを製造する方法を示し、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材をと組み合わせる前の状態の両ライナ構成部材の部分拡大斜視図である。
【図6】図1の圧力容器用ライナを製造する方法を示す分解斜視図である。
【図7】図1の圧力容器用ライナを製造する方法を示す部分拡大断面図である。
【図8】図1の圧力容器用ライナにおける補強部材の変形例を示す図4相当の図である。
【図9】この発明の実施形態2の圧力容器用ライナを示す図3相当の断面図である。
【図10】図9の圧力容器用ライナを製造する方法を示す図5相当の斜視図である。
【図11】この発明の実施形態3の圧力容器用ライナを示す図3相当の断面図である。
【図12】図11の圧力容器用ライナを製造する方法を示す図4相当の斜視図である。
【図13】この発明の実施形態4の圧力容器用ライナを示す横断面図である。
【図14】図13の圧力容器用ライナにおける補強部材の変形例を示す横断面図である。
【図15】図13の圧力容器用ライナにおける補強部材の他の変形例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0094】
(1):圧力容器用ライナ
(2):胴
(3):鏡板
(4):第1ライナ構成部材
(5):第2ライナ構成部材
(6):円筒状部
(6a):端面
(7):補強壁
(7a):端面
(8):空間
(9):円筒状部
(9a):端面
(11):補強壁
(11a):端面
(12):空間
(14):連結ピン(連結部材)
(15):突出壁
(15a):側面
(16):切り欠き
(16a):側面
(17):切り欠き
(17a):側面
(18):突出壁
(18a):側面
(19)(20):溝
(22):第1のピン挿入穴
(23)(35):補強部材
(24):繊維強化樹脂層
(25):高圧圧力容器
(26)(27):溝
(28):第2のピン挿入穴
(30):摩擦攪拌接合用工具
(32):プローブ
(40):突出壁
(40a):側面
(41):凹溝
(41a):側面
(42):突出壁
(42a):側面
(43):切り欠き
(43a):側面
(44)(45):溝
(46):第1のピン挿入穴
(50)(51):内部拡大溝
(52):連結部材挿入穴
(53)(55):連結部材
(60)(61):ライナ構成部材
(62)(63):筒状部
(64)(65)(66)(67):補強壁
(68)(69)(70)(71)(75)(76):補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴と胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなる圧力容器用ライナにおいて、
第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の少なくとも一端部に接合された第2ライナ構成部材とを備えており、
第1ライナ構成部材が、少なくとも一端が開口した筒状部と、筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁とを有しており、
第2ライナ構成部材が、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部と、第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁とを有しており、
第1ライナ構成部材の筒状部の開口端部と第2ライナ構成部材の筒状部の開口端部とが当接状態で接合され、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが連結部材により機械的に連結され、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と、第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように補強部材が嵌め入れられており、補強部材によって、連結部材による両ライナ構成部材どうしの連結の解除が防止されている圧力容器用ライナ。
【請求項2】
胴を構成する第1ライナ構成部材と、両鏡板を構成する2つの第2ライナ構成部材とよりなり、第1ライナ構成部材の筒状部の両端が開口しており、筒状部内が補強壁により両端が開口した複数の空間に仕切られている請求項1記載の圧力容器用ライナ。
【請求項3】
胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、他方の鏡板を構成する1つの第2ライナ構成部材とよりなり、第1ライナ構成部材の筒状部の一端が開口するとともに他端が閉鎖されており、筒状部内が補強壁により一端が開口した複数の空間に仕切られている請求項1記載の圧力容器用ライナ。
【請求項4】
第1ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第2ライナ構成部材側に突出した突出壁が一体に形成されるとともに、厚さ方向の他側部分に切り欠きが形成され、第2ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第1ライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きが形成されるとともに、厚さ方向の他側部分に第1ライナ構成部材の切り欠き内に嵌る突出壁が一体に形成され、第1ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されるとともに、第2ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されることにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に連結部材挿入穴が形成され、連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項5】
第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の補強壁の端面における厚さ方向の中間部分に他方のライナ構成部材側に突出した突出壁が一体に形成されるとともに、他方のライナ構成部材の補強壁の端面に突出壁が嵌る凹溝が形成され、他方のライナ構成部材の補強壁の端面における凹溝の両側部分に一方のライナ構成部材側に突出した突出壁がそれぞれ一体に形成され、一方のライナ構成部材の補強壁の端面における突出壁の両側部分に他方のライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きがそれぞれ形成され、一方のライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されるとともに、他方のライナ構成部材のいずれか一方の突出壁の一側面および凹溝の一側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝が形成されることにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に連結部材挿入穴が形成され、連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項6】
第1および第2ライナ構成部材の補強壁の端面に、それぞれ端面の長さ方向に伸びる内部拡大溝が互いに対向するように形成されることにより、連結部材挿入穴が形成され、各内部拡大溝内に嵌め入れられる部分を有する連結部材が連結部材挿入穴に挿入されることにより、第1ライナ構成部材の補強壁と第2ライナ構成部材の補強壁とが機械的に連結されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項7】
第1ライナ構成部材、第2ライナ構成部材および連結部材の外端部がそれぞれアルミニウムで形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部とが摩擦攪拌接合されている請求項4〜6のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項8】
連結部材の外端部を除いた部分がアルミニウムよりも高強度の材料からなる請求項7記載の圧力容器用ライナ。
【請求項9】
補強部材が、第1ライナ構成部材の筒状部内周面および第2ライナ構成部材の筒状部内周面に密着する部分と、当該密着部分に連なりかつ補強部材が嵌め入れられる空間を形成するすべての補強壁のうちの少なくとも1つの補強壁に密着する部分とを有している請求項1〜8のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項10】
補強部材がアルミニウムで形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部と、補強部材とが摩擦攪拌接合されている請求項7〜9のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項11】
補強部材がアルミニウムよりも高強度の材料で形成され、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部とのみが摩擦攪拌接合されている請求項7〜9のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項12】
補強部材が、第1ライナ構成部材の筒状部と、第2ライナ構成部材の筒状部と、連結部材の外端部との摩擦攪拌接合の際の加重に耐えて両ライナ構成部材の筒状部の変形を防止する請求項7〜11のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれかに記載された圧力容器用ライナの外周面が繊維強化樹脂層で覆われている圧力容器。
【請求項14】
繊維強化樹脂層が、補強繊維を両鏡板にかかるようにして胴の長さ方向に巻き付けてなるヘリカル巻繊維層および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層と、これらの繊維層に含浸させて硬化させた樹脂とよりなる請求項13記載の圧力容器。
【請求項15】
燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【請求項16】
請求項15記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【請求項17】
請求項15記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【請求項18】
天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【請求項19】
請求項18記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【請求項20】
請求項18記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【請求項21】
酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【請求項22】
請求項4記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、
少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、
第1ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第2ライナ構成部材側に突出した突出壁を一体に形成するとともに、厚さ方向の他側部分に切り欠きを形成し、第2ライナ構成部材の補強壁の端面における厚さ方向の片側部分に第1ライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きを形成するとともに、厚さ方向の他側部分に第1ライナ構成部材の切り欠き内に嵌る突出壁を一体に形成し、第1ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成するとともに、第2ライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成することにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に第1の連結部材挿入穴を形成し、さらに両ライナ構成部材の端部どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から第1連結部材挿入穴に至る第2の連結部材挿入穴を形成すること、
第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の各空間の開口端部内に、補強部材を一部が一方のライナ構成部材から突出するように嵌め入れた後、補強部材の突出部を他方のライナ構成部材の各空間の開口端部内に嵌め入れるとともに、第1ライナ構成部材の突出壁を第2ライナ構成部材の切り欠き内に、第2ライナ構成部材の突出壁を第1ライナ構成部材の切り欠き内にそれぞれ嵌め入れて第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせ、その後両ライナ構成部材の第1および第2連結部材挿入穴に跨って連結部材を挿入すること、
両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。
【請求項23】
請求項5記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、
少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、
第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の補強壁の端面における厚さ方向の中間部分に他方のライナ構成部材側に突出した突出壁を一体に形成するとともに、他方のライナ構成部材の補強壁の端面に突出壁が嵌る凹溝を形成し、他方のライナ構成部材の補強壁の端面における凹溝の両側部分に一方のライナ構成部材側に突出した突出壁をそれぞれ一体に形成するとともに、一方のライナ構成部材の補強壁の端面における突出壁の両側部分に他方のライナ構成部材の突出壁が嵌る切り欠きをそれぞれ形成し、一方のライナ構成部材の突出壁の一側面および切り欠きの側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成するとともに、他方のライナ構成部材のいずれか一方の突出壁の一側面および凹溝の一側面に跨るようにその長さ方向に伸びる溝を形成することにより、両ライナ構成部材の補強壁どうしの間に第1の連結部材挿入穴を形成し、さらに両ライナ構成部材の端部どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から第1連結部材挿入穴に至る第2の連結部材挿入穴を形成すること、
第1および第2ライナ構成部材のうちいずれか一方の各空間の開口端部内に、補強部材を一部が一方のライナ構成部材から突出するように嵌め入れた後、補強部材の突出部を他方のライナ構成部材の各空間の開口端部内に嵌め入れるとともに、一方のライナ構成部材の突出壁を他方のライナ構成部材の凹溝に、他方のライナ構成部材の突出壁を一方のライナ構成部材の切り欠きにそれぞれ嵌め入れて、第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせ、その後両ライナ構成部材の第1および第2連結部材挿入穴に跨ってピン状連結部材を挿入すること、
両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。
【請求項24】
請求項6記載の圧力容器用ライナを製造する方法であって、
少なくとも一端が開口した筒状部、および筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を少なくとも一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第1ライナ構成部材と、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状部、および第1ライナ構成部材の補強壁と対応するように筒状部内にその全長にわたって設けられ、かつ筒状部内を一端が開口した複数の空間に仕切る補強壁を有するアルミニウム製の第2ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の各空間の開口端部内と第2ライナ構成部材の各空間の開口端部内とに跨るように嵌め入れられる補強部材と、外端部がアルミニウムからなる連結部材とを用意すること、
第1および第2ライナ構成部材の筒状部の端面、ならびに両ライナ構成部材の補強壁の端面に、それぞれ筒状部の外周面から補強壁に至る内部拡大溝を互いに対向するように形成することにより、両ライナ構成部材どうしの間に、両ライナ構成部材の筒状部の外周面から補強壁に至る連結部材挿入穴を形成すること、
第1ライナ構成部材の筒状部の開口側端面と第2ライナ構成部材の筒状部の開口側端面とを突き合わせた後、両ライナ構成部材の連結部材挿入穴に連結部材を挿入すること、
両ライナ構成部材の筒状部どうしの突き合わせ部分に、両者に跨るように外側から摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、両ライナ構成部材とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを両ライナ構成部材の筒状部の全周にわたって移動させ、両ライナ構成部材の筒状部どうし、および両ライナ構成部材と連結部材とをそれぞれ摩擦攪拌接合することを含む圧力容器用ライナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−22830(P2006−22830A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198881(P2004−198881)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】