説明

圧力式炊飯器

【課題】小型化を図った圧力式炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋(図示せず)内と外気とを連通又は遮断する圧力弁29と、プランジャー34の駆動により前記圧力弁29を強制的に開放及び閉塞させる圧力弁開放機構30と、非炊飯物を加熱する加熱手段(図示せず)及び前記圧力弁開放機構30を制御する制御手段(図示せず)とを備え、一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程中に前記鍋内を大気圧以上に加圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記プランジャー34の駆動方向と、前記圧力弁29を開放するスライダー部材43の駆動方向が同一で、かつ、圧力の開放時に、両者とも、前記鍋の開口を塞ぐ蓋体(図示せず)の後方方向へ駆動する方向で、また、ほぼ並行に配置したもので、圧力加圧中の蓋体の前方の傾きの影響を受けず、圧力の開放をスムースに行うことができ、蓋体の全長を抑え、コンパクトな圧力式炊飯器が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋内を加圧状態にして炊飯を行うことにより、美味しい御飯を炊き上げるようにした圧力式炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器は、今や一般家庭において必需品の一つとなっており、様々なタイプの炊飯器が開発されている。この電気炊飯器は、鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯する常圧式と、大気圧以上の圧力に昇圧して炊飯する圧力式とに大別されており、近年は後者の圧力式炊飯器が広く普及し始めて来ている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炊飯の過程で加圧と減圧を繰り返し行う方式、つまり加圧時に高温を与えて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜ熱をむらなく通す、いわゆる「おどり炊き」方式の圧力式炊飯器が開示されている。
【0004】
この炊飯方式は、加圧時には、例えば1.2気圧、105℃で炊飯し、減圧時には急激に1気圧まで減圧することを、被炊飯物に応じて数回乃至十数回繰り返すものである。そうすると、米の場合には、加圧時には熱と水分が米の芯まで浸透して甘みと粘りを引き出し、減圧時には突沸が発生して、米が鍋の底からかき混ぜられることになるので、米の吸水が促進され米が芯からα化するとともに、撹拌により鍋の中心部まで均一に加熱され、ふっくらしたご飯が炊けるとされている。
【0005】
このように、従来の圧力式炊飯器では、被炊飯物を入れる鍋に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧された状態から急激に減圧されると、一気に沸騰して激しい熱対流を引き起こすこととなり、この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができ、かつ沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され、各粒の芯からα化されるとされている。
【0006】
この種の圧力式炊飯器としては、蓋体に設けられ、鍋と外気とを連通する蒸気通路内に位置するように、蒸気通路を閉塞する圧力弁を配設し、鍋内を大気圧より高い圧力に加圧できるようにしたものがある。
【0007】
この種の圧力式炊飯器では、炊飯中または、炊飯工程中に圧力の有無を切り替えるために、圧力弁の開閉を行う圧力弁開放機構が設けられており、様々な工夫がなされているが、この圧力弁開放機構は、容易に弁の開閉を行うために、一般的に電磁弁(ソレノイド)が使われており、炊飯の制御に合わせて、きめ細かな圧力制御を可能としている。
【0008】
また、特許文献2に記載されたような従来の圧力式炊飯器では、圧力弁開放機構が蓋体の前方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−275834号公報
【特許文献2】特開2005−040396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の圧力式炊飯器では、ソレノイドの駆動方向と、圧力弁を開放するスライダーの駆動方向が逆向きになっており、また、弁開放時の弁開放方向が蓋体の前方を向いているため、圧力炊飯中には、蓋体は、本体後方のヒンジ部にて軸支されているため、内部圧力により、蓋体が上向きに押し上げられたとき、蓋体の前方が上向きに傾く構造であり、圧力の開放に対して、蓋の傾きにより、ソレノイドの開放方向とは逆向きの加重抵抗がかかり、スムースな開放ができない、という課題があった。
【0011】
このため、ソレノイドの開放方向は、蓋体の後方を向いていることが好ましく、圧力の開放については、安全面においても抵抗なく、スムースに行われることが望まれる。
【0012】
また、特許文献2に記載されたような従来の圧力式炊飯器では、圧力弁開放機構の配置が蓋体の前方にあるため、蓋の全長が大きくなり、その結果、圧力式炊飯器の全長も大きくなる課題があった。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決し、圧力弁開放機構をスムースに駆動させて安全性を確保すると同時に、蓋体を小さくすることができ、デザイン的にもコンパクトな圧力式炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の圧力式炊飯器は、開口を有し有底の鍋と、前記鍋が収容されると共に前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段が設けられた炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、プランジャーの駆動により前記圧力弁を強制的に開放及び閉塞させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御する制御手段とを備え、一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程中に前記鍋内を大気圧以上に加圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記プランジャーの駆動方向と、前記圧力弁を開放するスライダー部材の駆動方向が同一で、かつ、圧力の開放時に、両者とも前記蓋体の後方方向へ駆動する方向であり、また、ほぼ並行に配置したもので、プランジャーの駆動方向と、スライダー部材の駆動方向が同一方向にすると同時に、プランジャーの開放方向を蓋体の後方を向けることにより、圧力加圧中の蓋体の前方の傾きの影響を受けず、圧力の開放をスムースに行うことができる。また、両者をほぼ並行に配置することにより、蓋体の全長を抑えて、コンパクトな圧力式炊飯器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧力式炊飯器は、圧力加圧中の蓋体の前方の傾きの影響を受けず、圧力の開放をスムースに行うことができる。また、プランジャーとスライダー部材をほぼ並行に配置することにより、蓋体の全長を抑えて、コンパクトな圧力式炊飯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる圧力式炊飯器の外観斜視図
【図2】同圧力式炊飯器の蓋体の外蓋を外した時のその内部状態を示す平面図
【図3】同圧力式炊飯器の蓋体の一部を外した時のその内部状態を示す側面図
【図4】同蓋体の一部を外した時の内部状態を示す斜視図
【図5】図4に示す蓋体の内部の一部拡大図
【図6】同圧力式炊飯器の圧力弁と圧力弁開放機構が作動していない状態における蓋体内部平面図
【図7】図6の蓋体の内部の一部拡大図
【図8】同圧力式炊飯器の圧力弁と圧力弁開放機構が作動している状態における蓋体内部平面図
【図9】図8に示す蓋体の内部の一部拡大図
【図10】同圧力弁を示す説明図
【図11】同圧力式炊飯器の圧力弁開放機構の構成を示す分解斜視図
【図12】同圧力式炊飯器の蓋体の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、開口を有し有底の鍋と、前記鍋が収容されると共に前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段が設けられた炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、プランジャーの駆動により前記圧力弁を強制的に開放及び閉塞させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御する制御手段とを備え、一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程中に前記鍋内を大気圧以上に加圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記プランジャーの駆動方向と、前記圧力弁を開放するスライダー部材の駆動方向が同一で、かつ、圧力の開放時に、両者とも前記蓋体の後方方向へ駆動する方向であり、また、ほぼ並行に配置したもので、プランジャーの駆動方向と、スライダー部材の駆動方向が同一方向にすると同時に、プランジャーの開放方向を蓋体の後方を向けることにより、圧力加圧中の蓋体の前方の傾きの影響を受けず、圧力の開放をスムースに行うことができる。また、両者をほぼ並行に配置することにより、蓋体の全長を抑えて、コンパクトな圧力式炊飯器を提供することができる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明のプランジャーの駆動と、スライダー部材の駆動は、リンク機構により連結されているもので、プランジャーの駆動方向とスライダー部材の駆動方向を変えることなく、スムースに弁開閉を行うことができる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1の発明のプランジャーの駆動と、スライダー部材の駆動は、複数のリンク機構により連結されているもので、リンク機構を増やす、または伸ばす縮めることによりコンパクトにできることや隣接して配置できない場合でも、リンク機構を介して配置することで圧力弁開放機構のプランジャーの位置を自由に配置出来る。
【0020】
第4の発明は、特に、第2又は第3の発明のプランジャーの駆動する量と、スライダー部材の駆動する量が、リンク機構により同じ駆動量になるようにしたもので、圧力弁開放機構のプランジャーの開放力をそのまま、スライダー部材へ伝えて、確実に弁開閉を行うことができる。
【0021】
第5の発明は、特に、第2又は第3の発明のプランジャーの駆動する量と、スライダー部材の駆動する量を、リンク機構により調整できるようにしたもので、例えば、リンク機構の遊合突起位置を変えるなどして、プランジャーの駆動する量と、圧力弁を開放するスライダー部材の駆動量を変えることができ、前記プランジャーの駆動量に依存されることなく、スライダー部材の駆動量の調整が出来る。
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。但し、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこの圧力式炊飯器に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施の形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における圧力式炊飯器について、図1〜図11を用いて説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態にかかる圧力式炊飯器の外観斜視図、図2は、同圧力式炊飯器の蓋体の外蓋を外した時のその内部状態を示す平面図、図3は、同圧力式炊飯器の蓋体の一部を外した時のその内部状態を示す側面図、図4は、同蓋体の一部を外した時の内部状態を示す斜視図、図5は、図4に示す蓋体の内部の一部拡大図、図6は、同圧力式炊飯器の圧力弁と圧力弁開放機構が作動していない状態における蓋体内部平面図、図7は、図6の蓋体の内部の一部拡大図、図8は、同圧力式炊飯器の圧力弁と圧力弁開放機構が作動している状態における蓋体内部平面図、図9は、図8に示す蓋体の内部の一部拡大図、図10は、同圧力弁を示す説明図、図11は、同圧力式炊飯器の圧力弁開放機構の構成を示す分解斜視図、図12は、同圧力式炊飯器の蓋体の要部拡大断面図である。
【0025】
図1〜12において、本実施の形態における圧力式炊飯器1(以下、「炊飯器1」という)は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋(図示せず)と、この鍋を着脱自在に収容する開口(図示せず)、鍋内の被炊飯物(図示せず)を加熱する誘導加熱コイル等からなる加熱手段(図示せず)並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段(図示せず)を有する炊飯器本体2と、鍋及び炊飯器本体2の開口を塞ぐ蓋体3とを備えている。
【0026】
蓋体3には、蓋体3を、炊飯器本体2にロックし及びロックを解除する蓋体ロック機構70と、蓋体3内に設けられた鍋と外気とを連通する蒸気通路(図示せず)と、蒸気通路を連通又は遮断して鍋内の圧力を実質的に一定とするように開閉機構を有する圧力弁29(図10参照)と、圧力弁29に付設され、圧力弁29を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構30が設けられ、制御手段の指示によって鍋内を大気圧より高い圧力に加圧して炊飯することができる。
【0027】
図示を省略した制御手段は、加熱手段の加熱量を制御するとともに、鍋内の圧力を略一定とするように鍋と外気とを連通又は遮断する圧力弁29と、圧力弁29を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構30とを制御することによって、鍋内の圧力の制御を行なう。すなわち、制御手段は、被炊飯物の沸騰中に、圧力弁開放機構30により、圧力弁29を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにしている。なお、制御手段による制御は、制御手段に記憶されたプログラムを実行することで行われる。
【0028】
炊飯器本体2は、その内部に鍋を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース(図示せず)と、この内ケースを覆う外ケース(図示せず)とを有し、内ケース内に鍋が着脱自在に収容されるようになっている。内ケースの上端部には、外周へ突出したフランジ部(図示せず)が形成されている。鍋には、その上端開口部(図示せず)に外方に張り出すフランジ(図示せず)が形成されており、このフランジが内ケースのフランジ部に掛るように載置される。
【0029】
また、内ケースのフランジ部の対向する側面側には、一部分を切り欠いた切り欠き部(図示せず)が形成されており、鍋のフランジの一部がこの切り欠き部からはみ出し、鍋を内ケース内から取出しやすくなっている。内ケースの底部付近の外周囲には、誘導加熱コイル(図示せず)が配設されている。また、内ケースには、上方開口部(図示せず)と誘導加熱コイルとの間に側面ヒータ(図示せず)が配設されている。
【0030】
炊飯器本体2には、加熱手段である誘導加熱コイル、側面ヒータ及び蓋ヒータ(図示せず)等へ電力の供給・制御を行う制御基板(図示せず)が底面の吸気孔(図示せず)に近接した箇所に配設されている。電源制御基板(図示せず)には、特に、図示しないが、炊飯の各工程を制御するマイコンや、半導体素子からなるインバータ、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特に、インバータは、作動時に発熱するので、同じく図示しないが、ヒートシンク、或いは冷却ファンによって冷却される。また、炊飯器本体2の底部の中央部には、鍋の底面に接触するようにして温度検出センサ(図示せず)が設けられている。
【0031】
炊飯器本体2の底部には、左右に、空気を吸気する吸気孔(図示せず)及び吸気された空気を排出する排気孔(図示せず)が形成され、吸気孔及び排気孔は、底部に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリット(図示せず)で形成されている。冷却ファン(図示せず)が吸気孔に近接した位置に配設されていて、モータ(図示せず)により作動され、吸気孔から吸気した空気でインバータを冷却するようになっている。
【0032】
炊飯器本体2の上部前面には、前蓋7が設けられており、その前蓋7の上面は、操作プレート23となっている。この操作プレート23には、炊飯ボタン、選択及び時刻調整ボタン、切りボタン、保温ボタン、予約ボタン及びファンクションボタン等の操作釦23a及び表示パネル24が装着されており、表示パネル24には、制御・選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0033】
蓋体3は、枠体9の上側に、外蓋8及び下側に蓋カバー11をそれぞれ取り付け、蓋カバー11を介して、枠体9に内蓋10(図10参照)が着脱自在に装着される構成を有し、炊飯器本体2の内ケースの上方開口部を覆うように取り付けられている。蓋体3は、枠体9が、ヒンジ部材15と枢支ピン16とを用いて、炊飯器本体2に軸支されており、蓋体3が、炊飯器本体2の内ケースの上方開口部を開閉できるようになっている。
【0034】
また枠体9と内蓋10の間には、蓋カバー11に覆われて蓋ヒータが配設されるとともに、蓋温度センサ(図示省略)が設けられている。内蓋10のほぼ中央部には、鍋の圧力や温度の検知用のセンサ(図示せず)が取り付けられるとともに、炊飯器本体2内の蒸気圧を制御し圧力を調整して吹きこぼれを防ぐ圧力弁29や、圧力弁29の故障などで鍋が異常に加圧されたときに開放され、鍋の圧力を逃がす安全弁(図示省略)が装着されている。
【0035】
外蓋8には、吹きこぼれるおねばを一時貯留するおねば貯留タンク27が着脱自在に装着されている。おねば貯留タンク27の内部は、蒸気とおねばとを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気口27aを、蒸気のみが通過できるようになっている。おねばは、立上げ加熱工程、沸騰維持工程で、おねば貯留タンク27に溜まり、蒸らし工程で鍋内の圧力が低下すると、負圧弁(図示せず)から鍋内に戻される。
【0036】
内蓋10の外周囲には、鍋のフランジと内蓋10とをシールする鍋パッキン13(図10)が外枠14(図10)に支持されて装着されている。炊飯器本体2内に、鍋を収容して蓋体3で炊飯器本体2の開口を覆うと、鍋パッキン13が、鍋の開口縁部に圧接して鍋が閉鎖される。また、内蓋10の鍋側には、おねば貯留タンク27(図1参照)に溜められたおねばを、鍋内に拡散して供給するための、おねば拡散部(図示せず)が取り付けられている。
【0037】
蓋体3の内蓋10は、ステンレス鋼材やアルミニウム材あるいは両者からなるクラッド材で形成されたものである。内蓋10は、金属板を周縁部と内部との間に段差が形成されるように円盤状にプレス成型して形成され、周縁部にはゴム製の鍋パッキン13を介して硬質のプラスチック製の外枠14が取り付けられている。外枠14には、内蓋10を装着するための係止部(図示せず)が設けてある。鍋パッキン13は、鍋のフランジと密着し、鍋をシールすることにより圧力を保持する。鍋パッキン13は、耐久性、耐熱性に優れているシリコンゴムで形成するのが好ましい。
【0038】
また、内蓋10内には、鍋と外気とを連通する蒸気通路28と、蒸気通路28を連通又は遮断して、鍋内の圧力を実質的に一定にする動作を可能にした圧力弁29が設けられている(図10参照)。なお、図2は、蓋体3から外蓋8を外して、内蓋10の方を見た平面図であり、格子状に組まれているのは枠体9である。内蓋10のほぼ中央付近に圧力弁29が設けられており、この圧力弁29が、蓋カバー11の中央付近の孔から外蓋8内に突出している。
【0039】
この圧力弁29は、図10に示すように、弁孔29aを有する弁座29bと、この弁座29bの上に載置され、自重により弁孔29aを塞ぐ開閉機構である金属製のボール29cと、このボール29cを覆うカバー29eとからなる。この圧力弁29は、鍋内の圧力とボール29cの自重とのバランスによってボール29cが弁孔29a上に移動したり離れたりすることにより、さらには、後述する外蓋8の内部に取り付けられた圧力弁開放機構30のソレノイド32の作動に連動した作動部材(図示せず)により、強制的にボール29cを移動させることにより、弁孔29aの開閉が行われるようになっている。なお、圧力弁29の作動部材が突き当たる部分には、シールパッキン17が施され蒸気が漏れないようになされている。
【0040】
炊飯器本体2には、蓋体3を開閉可能に結合するヒンジ部材15の反対側にある前蓋7付近の内ケース上端部に係止部材12a(図12)が設けられており、この係止部材12aに形成された2つの係止爪12bと、蓋体3に形成された係止部72とが係合される蓋体ロック機構70を備えており、蓋体3を閉鎖位置に係止することができる。係止部72は押し釦76を介して、外蓋8に設けた蓋体3のロック解除釦75と連動されて、蓋体3の開閉を行うようになっている。
【0041】
本実施の形態における炊飯器1においては、図1〜図11に示すように、圧力弁開放機構30が設けられ、加圧時には、ソレノイド32を作動させ、リンク機構38により、スライダー部材43を引き込み、圧力弁29が閉じて、圧力炊飯を可能にしている。また、圧力を解除する場合には、ソレノイド32を解除して、圧力弁29を開放して、圧力を抜く構造になっている。
【0042】
本実施の形態における圧力弁開放機構30は、電気的又は機械的手段によって移動が可能なプランジャー、例えばソレノイド32の可動鉄芯であるプランジャー34と、圧力弁29にプランジャー34の移動を伝動するため、プランジャー34と圧力弁29間に設けたリンク機構38を有し、リンク機構38により伝動されたプランジャー34の移動によって作動されるスライダー部材43が設けられている。スライダー部材43には、圧力弁29を押動する作動軸44と、開放抑制ロック部材60を押動するロック部材押圧部45とが形成されている。
【0043】
以下、炊飯器1のリンク機構38を備えた圧力弁開放機構30の構成について説明する。図2に示したように、蓋体3の外蓋8を外すと、図2を正面から見て右手部分に圧力弁開放機構30があり、その左側にはリンク機構38で連結されたスライダー部材43が配置されている。また、蓋体3の略中央部には、圧力弁29が格納された圧力弁格納部31が備えられている。
【0044】
図4及び図4の一部拡大図である図5に示すように、圧力弁開放機構30は、ソレノイドカバー33に格納されたソレノイド32と、ソレノイド32の励磁により移動可能なプランジャー34と、プランジャー34の移動に追従する移動部材36と、一端がソレノイド32の固定部材に枢支されており、かつ移動部材36に連結されているリンクバーA39aと、リンクバーB39bと、リンクバーB39bと連結されたスライダー部材43で構成されている。
【0045】
すなわち、ソレノイド32の可動をリンクバーA39aと、リンクバーB39bにより、スライダー部材43に伝達して、圧力弁29の開閉をできるようになっている。
【0046】
リンク機構38は、リンクバーA39aとリンクバーB39bで形成され、リンクバーA39aは、略中央部に移動部材に遊びをもって嵌め合される貫通孔46が設けられている。また、リンクバーA39aとリンクバーB39bとの遊合には、リンクバーA39aに遊合突起49をもって嵌め合される、リンクバーB39bの貫通孔である遊合孔42に遊合される。いわゆる遊びを設けて形成されている。
【0047】
図6に示すように、プランジャー34が励磁されソレノイド32内に引き込まれている状態では、圧力弁開放機構30が作動していないので、スライダー部材43の作動軸44が圧力弁29のボール29cから離れており、ボール29cは、弁孔29aを塞いでいる。そのため、炊飯器1内の圧力は加圧されることになり、圧力弁29の働くまで大気圧よりも高い気圧に上昇する状態である。
【0048】
この時点で、加圧状態から急激な減圧をすることにより爆発的な撹拌作用を起こして炊飯を行うために、制御手段の指示によって頻繁な加圧、減圧を繰り返す場合には、ソレノイド32の解磁と励磁が繰り返され、スライダー部材43が頻繁に移動と復帰を行う。
【0049】
すなわち、制御手段の指示によって圧力弁開放機構30におけるソレノイド32の励磁が解かれると、プランジャー34は、復帰バネ34aによって手前に押し出される。このプランジャー34の動きに合わせ移動部材36が移動され、移動部材36に形成された遊合突起37に連結されたリンクバーA39aが動き、さらに、それに連結されたリンクバーB39bが摺動して、スライダー部材43を押し出し、圧力弁29のボール29cが弁孔29aから押し退けられて、鍋内の圧力を急激に減圧することになる。
【0050】
その後、ソレノイド32はすぐに励磁されるので、圧力弁開放機構30は、元の位置に復元し、スライダー部材43は、圧力弁29側の位置から反対側の蓋体ロック機構70がある側へ移動させられる。このような動作が所定回数繰り返される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る圧力式炊飯器は、圧力加圧中の蓋体の前方の傾きの影響を受けず、圧力の開放をスムースに行うことができ、また、プランジャーとスライダー部材をほぼ並行に配置することにより、蓋体の全長を抑えて、コンパクトにできるので、家庭用、業務用の各種圧力式炊飯器に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 圧力式炊飯器(炊飯器)
2 炊飯器本体
3 蓋体
7 前蓋
8 外蓋
9 枠体
10 内蓋
11 蓋カバー
12a 係止部材
13 鍋パッキン
14 外枠
15 ヒンジ部材
16 枢支ピン
17 シールパッキン
23 操作プレート
24 表示パネル
27 おねば貯留タンク
27a 蒸気口
28 蒸気通路
29 圧力弁
29a 弁孔
29b 弁座
29c ボール
29e カバー
30 圧力弁開放機構
31 圧力弁格納部
32 ソレノイド
33 ソレノイドカバー
34 プランジャー
34a 復帰バネ
36 移動部材
37、49 遊合突起
38 リンク機構
39a リンクバーA
39b リンクバーB
42 遊合孔
43 スライダー部材
44 作動軸
45 ロック部材押圧部
60 開放抑制ロック部材
70 蓋体ロック機構
72 係止部
75 ロック解除釦
76 押し釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し有底の鍋と、前記鍋が収容されると共に前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段が設けられた炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁と、プランジャーの駆動により前記圧力弁を強制的に開放及び閉塞させる圧力弁開放機構と、前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御する制御手段とを備え、一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程中に前記鍋内を大気圧以上に加圧して炊飯する圧力式炊飯器において、前記プランジャーの駆動方向と、前記圧力弁を開放するスライダー部材の駆動方向が同一で、かつ、圧力の開放時に、両者とも前記蓋体の後方方向へ駆動する方向であり、また、ほぼ並行に配置したことを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
プランジャーの駆動と、スライダー部材の駆動は、リンク機構により連結されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
プランジャーの駆動と、スライダー部材の駆動は、複数のリンク機構により連結されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項4】
プランジャーの駆動する量と、スライダー部材の駆動する量が、リンク機構により同じ駆動量になることを特徴とする請求項2又は3に記載の圧力式炊飯器。
【請求項5】
プランジャーの駆動する量と、スライダー部材の駆動する量を、リンク機構により調整できるようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の圧力式炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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