圧力炊飯釜
【課題】 多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯を可能にする圧力炊飯釜を提供することを課題とする。
【解決手段】 炊飯釜本体の第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;炊飯釜本体の第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある圧力炊飯釜を提供することによって解決する。
【解決手段】 炊飯釜本体の第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;炊飯釜本体の第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある圧力炊飯釜を提供することによって解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力炊飯釜に関し、詳細には、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用炊飯システムに用いられる圧力炊飯釜に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯を加圧状態で炊飯するための炊飯器は多数提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらはいずれも家庭用の炊飯器であって、加熱装置を備えた炊飯器本体の内側に内釜を配置し、その内釜内に米、水等を投入し、ヒンジ等の手段で炊飯器本体に開閉自在に取り付けられた外蓋と、その外蓋に装着された圧力調節弁付きの内蓋とで、内釜の上部開口を閉止して加熱することにより、内釜内を加圧状態に維持して炊飯を行うようにしたものである。
【0003】
これに対し、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいては、米、水、具材、調味液等の炊飯資材の炊飯釜内への投入や、炊き上がった米飯の炊飯釜からの取り出しなどは機械によって自動的に行われ、その都度、炊飯釜の蓋の脱着も自動的に行われるので、蓋は、常に取り外し自在な状態で炊飯釜に装着されている。このため、炊飯釜内を加圧状態に維持するために蓋を炊飯釜に半固定的に取り付けることは、業務用の炊飯システムで使用される炊飯釜においては困難であり、本発明者らが知る限りにおいて、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯を可能にする圧力炊飯釜は未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−70638号公報
【特許文献2】特開2007−236508号公報
【特許文献3】特開2008−55089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の現状に鑑み、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯を可能にする圧力炊飯釜を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々試行錯誤を重ねた結果、炊飯釜の構造に改良を加え、第一の蓋と第二の蓋とを、共に着脱自在に装着できる構造にするとともに、内側にある第一の蓋には開口面積が大きい孔を、外側にある第二の蓋にはそれと同じかそれよりも開口面積が小さい孔を設け、炊飯によって発生する高温の水蒸気を上記第一の蓋と第二の蓋との間に滞留させることにより、着脱自在の蓋を使用しながら、加圧状態での炊飯が可能であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、上記の課題を、本体側壁の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部と、第一平坦部の上面から立ち上がる第一側壁と、第一側壁の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部と、第二平坦部の上面から立ち上がる第二側壁とを有する炊飯釜本体と;外周端の下面を第一平坦部と当接させて第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;外周端の下面を第二平坦部と当接させて第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある圧力炊飯釜を提供することによって解決するものである。
【0008】
本発明の圧力炊飯釜は、上記のとおりに構成されており、炊飯に伴って発生した高温の水蒸気は、まず、第一貫通孔を通過して、第一蓋と第二蓋との間の第二空間内に浸入するが、第二貫通孔はその数が第一貫通孔よりも少なく、かつ、その開口面積は第一貫通孔と同じか第一貫通孔よりも小さいので、第一貫通孔を通過して第二空間内に浸入した水蒸気のうちの一部だけが第二貫通孔を通過して外部へ散逸し、大部分は第二空間内に滞留することになる。その結果、第二空間は水蒸気が滞留する蓄圧室として機能し、第一蓋を介して第一空間内の炊飯資材に圧力を掛け、加圧状態での炊飯が行われることになる。また、第二空間に滞留する水蒸気は高温であるので、第二空間は保温室としても機能し、第一空間内の炊飯資材は、バーナ等の加熱手段によって加熱される下面や側面だけでなく、上面からも加熱され、高温でムラのない炊飯が実現されることになる。
【0009】
なお、本発明の圧力炊飯釜においては、第一貫通孔の開口面積S1と第二貫通孔の開口面積S2とはS1≧S2の関係にあれば良いが、より好ましくはS1>S2の関係にあるのが良い。S1>S2である場合には、第二空間に滞留する水蒸気の量が増し、第一蓋を介して第一空間により高い圧力を加えることが可能になる。
【0010】
また、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第一貫通孔と第二貫通孔とは、第一蓋を第一平坦部に支持させ、第二蓋を第二平坦部に支持させたとき、第一貫通孔と第二貫通孔とが同一鉛直線上に位置しないように設けられている。第一貫通孔と第二貫通孔とをこのように配置する場合には、第一貫通孔を通過した水蒸気は、そのまま第二貫通孔を通り抜けることがなく、第二空間内の全域に広がるので、第一蓋の上面に均一な圧力を加えることが可能になる。
【0011】
さらに、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第二貫通孔には、第二空間内の圧力と外部の圧力との差が一定値以上になると開き、一定値未満になると閉じる圧力調節弁が設けられている。このように第二貫通孔に圧力調節弁を設ける場合には、第二空間を介して第一蓋上部に加わる圧力は一定値に維持されるので、安定した加圧状態での加圧炊飯が可能となる。
【0012】
また、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第一蓋が、中心部と外周端との間に両側よりも低い谷部が存在する垂直断面形状を有しており、その谷部の上面が、第一平坦部と当接する外周端の下面よりも低い位置にある。第一蓋がこのような垂直断面形状を有している場合には、第一蓋の上面と第二蓋の下面との間に形成される第二空間の容積を大きくとることが可能となり、第二空間の蓄圧能力及び保温能力を高め、より高圧高温での炊飯が実現できる。
【0013】
さらに、本発明の圧力炊飯釜においては、第一蓋及び第二蓋が、その中央部に、着脱時の被吸着部となる上面が平坦な凸領域を有しているのが望ましい。第一蓋及び第二蓋がこのような凸領域を有している場合には、例えば、電磁吸着装置や真空吸着装置などの吸着装置の吸着面をこの凸領域に接触させて、第一蓋及び第二蓋を容易に脱着することが可能である。
【0014】
なお、本発明の圧力炊飯釜を加熱する加熱方式には、炊飯が実行される限り、特段の制限はない。ブンゼンバーナや表面燃焼バーナなどの気体燃料を燃焼させるガスバーナ方式でも良く、誘導加熱方式であっても良い。また、本発明の圧力炊飯釜の水平断面形状にも特段の制限はなく、円形、長方形、楕円形等、種々の形状とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯が可能となり、これまで以上に美味しい米飯を大量に提供することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧力炊飯釜の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1の圧力炊飯釜の炊飯釜本体の平面図である。
【図3】図1の圧力炊飯釜の第一蓋の平面図である。
【図4】図1の圧力炊飯釜の第二蓋の平面図である。
【図5】図1の圧力炊飯釜の炊飯時の状態を示す縦断面図である。
【図6】第二蓋の他の例を示す平面図である。
【図7】図6のX−X’断面図(圧力調節弁が閉状態)である。
【図8】図6のX−X’断面図(圧力調節弁が開状態)である。
【図9】炊飯釜本体の他の一例を示す平面図である。
【図10】本発明の圧力炊飯釜の他の一例を示す縦断面図である。
【図11】図10の圧力炊飯釜の炊飯釜本体の平面図である。
【図12】図10の圧力炊飯釜の第一蓋の平面図である。
【図13】図10の圧力炊飯釜の第二蓋の平面図である。
【図14】図10の圧力炊飯釜の炊飯時の状態を示す縦断面図である。
【図15】本発明の圧力炊飯釜のさらに他の一例を示す縦断面図である。
【図16】図15の圧力炊飯釜の平面図である。
【図17】図16の部分拡大図である。
【図18】本発明の圧力炊飯釜を用いる業務用炊飯システムの一例を示す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0018】
図1は、本発明の圧力炊飯釜の一例を示す縦断面図である。図1において、1は本発明の圧力炊飯釜、2は炊飯釜本体、3は第一蓋、4は第二蓋である。炊飯釜本体2は、本体側壁5の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部6と、第一平坦部6の上面から立ち上がる第一側壁7と、第一側壁7の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部8と、第二平坦部8の上面から立ち上がる第二側壁9とを有しており、さらに、本例においては、炊飯釜本体2には、第一鍔10と第二鍔11とが設けられている。第一鍔10は、例えば、圧力炊飯釜1を炊飯システムの炊飯機にセットするときに、その下面を炊飯機の上面と当接させて、圧力炊飯釜1を所定の高さに支持するときに利用されるものである。また、第二鍔11は、例えば、炊飯釜搬送台車の把持爪を側方から第二鍔11の下に差し込んで、圧力炊飯釜1を支持搬送するときに利用されるものである。
【0019】
12は、第一蓋3の中央部に設けられている凸領域であり、凸領域12は、その上面が平坦であり、例えば、磁気吸着装置や真空吸着装置等の吸着装置を用いて第一蓋3を炊飯釜本体2から着脱する時に、吸着装置の吸着部が当接して吸着される被吸着部として機能する。13は傾斜部、14は谷領域、15は外周端であり、谷領域14の上面は、外周端15の下面よりも低い位置にある。16、16は、谷領域14に設けられた第一貫通孔である。第一貫通孔16、16は、図に示すとおり、第一蓋3の周辺部に設けられ、第一蓋3を上下に貫通している。第一蓋3は、その外周端15の下面を第一平坦部6の上面と当接させて、第一平坦部6上に支持され、炊飯釜本体2の内側との間に後述する第一空間を形成する。
【0020】
17は、第二蓋4の中央部に設けられている凸領域であり、凸領域17は、凸領域12と同様に、その上面が平坦であり、例えば、磁気吸着装置や真空吸着装置等の吸着装置を用いて第二蓋4を炊飯釜本体2から着脱する時に、吸着装置の吸着部が当接して吸着される被吸着部として機能する。18は傾斜部、19は外周端であり、20、20は、傾斜部18に設けられた第二貫通孔であり、第二貫通孔20、20は、図に示すとおり、凸領域17に近接した位置に設けられており、第二蓋4を上下に貫通している。第二蓋3は、その外周端19の下面を第二平坦部8の上面と当接させて、第二平坦部8上に支持され、後述するとおり、第一蓋3の上面との間に炊飯釜本体2の本体側壁5の内側で囲まれた第二空間を形成する。
【0021】
図2は、図1に示した炊飯釜本体2の平面図である。図に示すとおり、本例における炊飯釜本体2の平面形状は円形である。
【0022】
図3は、図1に示した第一蓋3の平面図である。図に示すとおり、本例においては、第一貫通孔16、16・・・は、谷領域14内に、90度間隔で4個設けられている。
【0023】
図4は、図1に示した第二蓋4の平面図である。図に示すとおり、本例においては、第二貫通孔20、20は、傾斜部18の凸領域17に近接した位置に180度間隔で2個設けられている。
【0024】
図3及び図4から明らかなとおり、第一貫通孔16、16・・・の一つ一つの開口面積S1は、第二貫通孔20、20の一つ一つの開口面積S2よりも大きく、第一貫通孔16、16・・・の個数N1は第二貫通孔20、20の個数N2よりも多い。すなわち、本例においては、S1>S2、N1>N2の関係にある。第一貫通孔16、16・・・の開口面積S1は、第二貫通孔20、20の開口面積S2よりも大きいか、等しければ良く、具体的な開口面積に特段の制限はないが、例えば、7kgの米を炊飯する直径70cmの炊飯釜の場合、第一貫通孔16、16・・・の開口面積S1は5〜20cm2程度、好ましくは8〜15cm2程度が良く、第二貫通孔20、20の開口面積S2は、それよりも小さな、2〜15cm2程度、好ましくは5〜10cm2程度とするのが良い。
【0025】
なお、第一貫通孔16、16・・・の個々の開口面積は、必ずしも揃っていることが不可欠ではなく、ある範囲の中に収まって入れは、多少の違いがあっても良いが、第一空間αから第二空間βへの水蒸気の移動は、炊飯ムラを発生させないという観点からは、平面的に見て均一である方が望ましく、したがって、第一貫通孔16、16・・・の個々の開口面積も揃っているのが望ましい。また、第一貫通孔16、16・・・の開口の形には特に制限はなく、円形に限られず、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、六角形等、どのような形であっても構わない。
【0026】
第二貫通孔20、20についても同様で、第二貫通孔20、20の個々の開口面積は、必ずしも揃っていることが不可欠ではなく、ある範囲の中に収まって入れは、多少の違いがあっても良いが、余りに異なると、第二空間β内での圧力分布が均一でなくなり、第一蓋3を介して第一空間αに係る圧力にも場所的な違いが生じるので、炊飯ムラを発生させないという観点からは、第二貫通孔20、20の個々の開口面積は揃っているのが望ましい。また、第二貫通孔20、20の開口の形には特に制限はなく、円形に限られず、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、六角形等、どのような形であっても構わない。
【0027】
さらに、本例において、第一貫通孔16、16・・・の個数は4個であるが、第一貫通孔16、16・・・個数は、第二貫通孔20、20の個数よりも多ければ良く、4個に限られるものではない。例えば3個又は2個、或いは、5個又は6個以上であっても良い。但し、炊飯に伴い発生した水蒸気が均等に第一空間から第二空間に抜けるように、第一貫通孔16、16・・・は、第一蓋3の円周方向に等間隔で配置されるのが好ましい。同様に、第二貫通孔20、20の個数も、第一貫通孔16、16・・・の個数よりも少なければ良く、2個に限られない。例えば1個であっても良く、3個以上であっても良い。
【0028】
さらに、本例においては、第一貫通孔16、16・・・は第一蓋3の外周端15に近い谷領域に設けられ、第二貫通孔20、20は第二蓋4の中央の凸領域17に近い位置に設けられているが、逆に、第一貫通孔16、16・・・を第一蓋3の中央の凸領域12に近い位置に設け、第二貫通孔20、20を第二蓋4の傾斜部18の外周端19に近い位置に設けるようにしても良い。但し、いずれの場合であっても、第一貫通孔16、16・・・と第二貫通孔20、20とは、第一蓋3及び第二蓋4を、それぞれ、第一平坦部6及び第二平坦部8に支持させたとき、同一鉛直線上に位置しないように設けるのが望ましい。
【0029】
図5は、図1の圧力炊飯釜1の炊飯時の状態を示す縦断面図であり、第一蓋3及び第二蓋4は、炊飯釜本体2内に取り付けられた状態にある。このような蓋の取り付けは、図示しない適宜の磁気吸引装置を用いて、第一蓋3の凸領域12又は第二蓋4の凸領域17を吸着し、第一蓋3の外周端及び第二蓋4の外周端の下面が、それぞれ、第一平坦部6又は第二平坦部8の上面と当接するような位置まで移動させ、その位置で吸着を解除することによって容易に行うことができる。逆に、図5に示す状態から第一蓋3及び第二蓋4を取り外すには、図示しない適宜の磁気吸引装置を用いて、第一蓋3の凸領域12又は第二蓋4の凸領域17を吸着して、第一蓋3及び第二蓋4を図5に示す位置から持ち上げて、適宜の場所まで移動させることによって、容易に行うことができる。
【0030】
図5において、Aは米、水、調味液、具材等の炊飯資材を示し、αは、第一蓋3と炊飯釜本体2の内側との間に形成される第一空間、βは、第二蓋4の下面と第一蓋の上面との間で、炊飯釜本体2の本体側壁5の内側で囲まれた第二空間である。
【0031】
この状態で、図示しない加熱装置によって炊飯釜本体2を加熱して炊飯を行うと、炊飯に伴い第一空間α内に発生した高温の水蒸気は、図中矢印で示すように、第一貫通孔16、16・・・を通過して第二空間β内へと浸入する。このとき、第一貫通孔16、16・・・と第二貫通孔20、20とが同一鉛直線上にないので、第一貫通孔16、16・・・から第二空間β内に浸入した水蒸気は、そのまま第二貫通孔20、20から外部へと散逸することはできず、第二空間β内に充満する。第二空間β内に充満した水蒸気の一部は、第二貫通孔20、20から外部へと散逸するが、第二貫通孔20、20の開口面積は第一貫通孔16、16・・・の開口面積よりも小さく、かつ、第二貫通孔20、20の個数は第一貫通孔16、16・・・よりも少ないので、第一貫通孔16、16・・・から第二空間β内へと浸入した水蒸気の大部分は第二空間β内に滞留し、第一蓋3に圧力を加えることになる。すなわち、第二空間βは蓄圧室として機能し、これにより、加圧状態での炊飯が実現される。
【0032】
また、第一蓋3には、その上面が外周端15の下面よりも下に位置する谷領域14が設けられているので、谷領域14が下方に凹んでいる分だけ第二空間βの容積が増し、第二空間βは蓄圧室としてより有効に機能することになる。
【0033】
さらには、第二空間β内に滞留する水蒸気は高温状態にあるので、第二空間βは、蓄熱室としても機能し、炊飯資材Aが収容され炊飯されている第一空間αを、第一蓋3を介して、その上面から保温乃至は加熱することになる。したがって、第一空間αは、炊飯機の加熱装置による下面及び側面からの加熱に加えて、上面からも加熱を受けることになり、より均一でムラのない炊飯が実行される。
【0034】
図6は、第二蓋4の他の例を示す平面図である。本例の第二蓋4においては、第二貫通孔20、20には、圧力調節弁として機能する板バネ21、21が、取付具22、22を用いて取り付けられている点が、図4に示した第二蓋4と異なっている。
【0035】
図7は、図6のX−X’断面図である。図に示すとおり、第二蓋4の下方に位置する第二空間βの圧力βpと、第二蓋4の上方に位置する外部空間γの圧力γpとの差、すなわち、(βp−γp)が一定値以下である場合には、板バネ21は真っ直ぐな状態にあり、第二貫通孔20を閉止している。つまり、板バネ21からなる圧力調節弁は「閉」状態にあることになる。
【0036】
図8は、同じく図6のX−X’断面図であるが、第二空間βの圧力βpと外部空間γの圧力γpとの差、すなわち、(βp−γp)が一定値を超え、その圧力差が板バネ21をその弾性に抗して湾曲させて、第二貫通孔20が開となった状態を示している。この状態では、第二空間β内の水蒸気は、図中矢印で示すように、第二貫通孔20を通過して外部へと散逸する。つまり、板バネ21からなる圧力調節弁は「開」状態にあることになる。
【0037】
このように、第二貫通孔20に圧力調節弁が設けられている場合には、第二空間β内の圧力βpと外部空間γの圧力γpとの差が一定値を超えて初めて第二貫通孔20が開となるので、第二空間β内を、第二貫通孔20を単に開放状態のままとする場合よりも高い圧力に保つことができ、第二空間βの蓄圧室としての機能を高めることができる。また、圧力βpとγpとの差が一定値を超えると、第二貫通孔20が開となり、水蒸気が外部へと散逸するようになるので、第二空間β内の圧力は一定値に維持され、安定した加圧炊飯が可能となる。さらには、何らかの原因で、第二空間β内の圧力が急激に高まった場合でも、直ちに板バネ21が湾曲して、第二貫通孔20を開とし、水蒸気を外部に逃がすことができるので、板バネ21からなる圧力調節弁は安全弁としても機能する。
【0038】
なお、圧力調節弁は、板バネ21に限られず、βpとγpとの差が一定値以上になったら第二貫通孔20を「開」とし、一定値未満であれば「閉」とする機能を有するものであれば、どのような機構のものであっても良い。く、板バネ21に限られない以外のもので構成しても良いことは勿論である。例えば、特許文献3に開示されているような、自重で開口部を閉止するボール状の弁体であっても良いし、コイルバネで弁体を開口部に付勢する構造のものであっても良い。但し、図7〜図8に示したような板バネ21を用い圧力調節弁の方が、構造が簡単で、嵩張らないので、便利である。
【0039】
図9は、炊飯釜本体2の他の例を示す平面図である。本例の炊飯釜本体2は、第一鍔10が、その平面形状が円形ではなく、正方形である点で、図2に示した炊飯釜本体2と異なっている。本例の炊飯釜本体2は、例えば、第一鍔10の対向する両側辺の下面にチェーンコンベアを当接させて、炊飯釜本体2を搬送することができる。第一鍔10の対向する両側辺の長さは、それら辺と平行な方向における炊飯釜本体2の本体側壁5の部分の直径よりも長く、かつ、前後に延在しているので、両側辺の下面にチェーンコンベアを当接させることにより、炊飯釜本体2、さらには、第一蓋3及び第二蓋4を備えた圧力炊飯釜1を、安定した状態で、かつ、確実に搬送することができる。
【0040】
このように、第一鍔10の下面にチェーンコンベアを当接させて、圧力炊飯釜1を搬送する場合には、圧力炊飯釜1をローラーコンベア上に載置して搬送する場合に比べて、圧力炊飯釜1の底面をローラーと接触させずに搬送することができる。したがって、例えば、圧力炊飯釜1の底面に、溶射等によって鉄や磁性ステンレスなどの誘導加熱によって発熱する材料の被膜が形成されている場合でも、ローラーとの接触によって被膜が剥がれたり、消耗したりすることがないので、本発明の圧力炊飯釜1を誘導加熱用の圧力炊飯釜として用いることが可能となるという利点が得られる。
【0041】
図10〜図13は本発明の圧力炊飯釜1の他の一例を示す図であり、図10は縦断面図、図11は炊飯釜本体の平面図、図12は第一蓋の平面図、図13は第二蓋の平面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。図10〜図13に示す例は、炊飯釜本体2の水平断面形状が長方形である点で、図1〜図4に示した圧力炊飯釜1と異なっている。
【0042】
図14は、図10〜図13に示した圧力炊飯釜1の炊飯時の状態を示す縦断面図である。本例においても、炊飯に伴い発生した高温の水蒸気は、第一貫通孔16、16を通過して、第二空間βに浸入し、一部は第二貫通孔20、20から外部に散逸するものの、大部分は第二空間β内に滞留し、第一蓋3を介して第一空間αを加圧するので、加圧炊飯が実行される。また、この場合にも、第一蓋3には谷領域14が形成されているので、谷領域14が凹んでいる分だけ第二空間βの容積が増し、蓄圧室としての機能がより高められている。さらには、第二空間β内に滞留する水蒸気は高温であるので、炊飯資材Aを収容する第一空間αは、加熱手段により下方又は側方からの加熱だけでなく、上方からも加熱され、より一層均一でムラのない炊飯が実現される。
【0043】
図15は本発明の圧力炊飯釜1のさらに他の一例を示す縦断面図、図16はその平面図である。本例においては、炊飯釜本体2に第一鍔10及び第二鍔11に代えて、炊飯釜本体2の側方及び前後に取っ手23、23・・・が設けられている点、及び、第二貫通孔20、20に圧力調節弁として板バネ21、21が取り付けられている点が、図10〜図14に示した圧力炊飯釜1と異なっている。
【0044】
図17は、図16の部分拡大図である。図17に示すとおり、第二貫通孔20、20を塞ぐ位置に板バネ21、21が取付具22、22で取り付けられている。この板バネ21、21の機能は、先に、図6〜図8を基に説明したのと同じである。
【0045】
以上のとおり、本発明の圧力炊飯釜1は、炊飯釜本体2の部分の水平断面形状については何ら制限がなく、円形であっても、長方形であっても良く、さらには、正方形であっても良い。また、炊飯釜の上部側壁に二重又は一重の鍔を備えたものであっても良く、鍔の代わりに取っ手を備えているものであっても良い。また、本発明の圧力炊飯釜1を炊飯機にセットしたときの加熱手段にも制限はなく、ブンゼン式或いは表面燃焼式などのガスバーナであっても良いし、誘導加熱であっても良い。
【0046】
図18は、本発明の圧力炊飯釜を用いる業務用炊飯システムの一例を示す概念図である。図18に示すとおり、炊飯システム100は、多数の本発明の圧力炊飯釜1が搬送ラインに沿って搬送されながら炊飯に必要な各種の工程を経て、炊飯釜ごとに米飯が炊き上げられる炊飯システムである。図18において、101は洗米・給水部、102は蓋着装置、103はリフタ、104は立体浸漬部、105は蓋取り装置、106は調味液供給装置、107は炊飯・蒸らし部である。
【0047】
立体浸漬部104を出た圧力炊飯釜1は、蓋取り装置105によって、第二蓋4及び第一蓋3がこの順で取り外され、調味液供給装置106によって適宜の調味液が炊飯釜本体2内に投入された後、次の蓋着装置102において、平行するラインを搬送されてきた第一蓋3及び第二蓋4が、この順で、再び、炊飯釜本体2に装着される。
【0048】
炊飯・蒸らし部107の上段には複数の炊飯機108が配置されており、搬送されてきた未炊飯の圧力炊飯釜1は、搬送台車109によって適宜の空いている炊飯機108にセットされ、加圧炊飯が行われる。
【0049】
炊飯が終了した圧力炊飯釜1は、再び搬送台車109で炊飯・蒸らし部107の奥側にあるリフタ103へと搬送され、複数の炊飯機108の下段を時間を掛けて通過しながら蒸らしが行われる。蒸らしが終了した圧力炊飯釜1は、炊飯・蒸らし部107の入口側にあるリフタ103から、再び搬送ラインへと戻される。
【0050】
炊飯・蒸らし部107を出た圧力炊飯釜1は、蓋取り装置105で再び第二蓋4及び第一蓋3がこの順で取られ、取られた第二蓋4及び第一蓋3は、蓋洗浄装置110を経て、最初の蓋着装置102へと送られる。一方、蓋が取られた炊飯釜本体2は、方向切り換え装置111へと進み、そこで米飯取り出し装置112によって反転され、炊き上がった米飯が炊飯釜から取り出される。取り出された米飯は、米飯撹拌装置113で撹拌され、撹拌後、搬送装置114へと送り出される。115は計量装置であり、撹拌済みの米飯を予め定められた量ずつ計量し、後続する搬送装置114へと送り出し、送り出された米飯は、パレタイザ116で所定量ずつ容器に収容され、積み上げられる。一方、米飯取り出し装置112によって米飯が取り出され空になった炊飯釜本体2は、方向切り換え装置111でその進行方向を90度切り換えられ、炊飯釜洗浄装置117へと搬送され、そこで洗浄されて次の炊飯のために洗米、給水部101へと送られる。
【0051】
本発明の圧力炊飯釜1は、圧力炊飯が可能であるにもかかわらず、第一蓋3及び第二蓋4を、機械によって容易に着脱することができるので、例えば、図18に示すような業務用の炊飯システム100に使用することが可能であり、大量の米飯を効率良く圧力炊飯することを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したとおり、本発明の圧力炊飯釜によれば、業務用の炊飯システムにおいて、加圧炊飯が容易に実現できるので、炊き上がる米飯の味質の向上を図ることができ、日々大量の米飯を炊飯する関連産業界において多大の利用可能性を備えている。
【符号の説明】
【0053】
1 圧力炊飯釜
2 炊飯釜本体
3 第一蓋
4 第二蓋
5 本体側壁
6 第一平坦部
7 第一側壁
8 第二平坦部
9 第二側壁
10 第一鍔
11 第二鍔
12、17 凸領域
13、18 傾斜部
14 谷領域
15、19 外周端
16 第一貫通孔
20 第二貫通孔
21 板バネ
22 取付具
23 取っ手
α 第一空間
β 第二空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力炊飯釜に関し、詳細には、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用炊飯システムに用いられる圧力炊飯釜に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯を加圧状態で炊飯するための炊飯器は多数提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらはいずれも家庭用の炊飯器であって、加熱装置を備えた炊飯器本体の内側に内釜を配置し、その内釜内に米、水等を投入し、ヒンジ等の手段で炊飯器本体に開閉自在に取り付けられた外蓋と、その外蓋に装着された圧力調節弁付きの内蓋とで、内釜の上部開口を閉止して加熱することにより、内釜内を加圧状態に維持して炊飯を行うようにしたものである。
【0003】
これに対し、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいては、米、水、具材、調味液等の炊飯資材の炊飯釜内への投入や、炊き上がった米飯の炊飯釜からの取り出しなどは機械によって自動的に行われ、その都度、炊飯釜の蓋の脱着も自動的に行われるので、蓋は、常に取り外し自在な状態で炊飯釜に装着されている。このため、炊飯釜内を加圧状態に維持するために蓋を炊飯釜に半固定的に取り付けることは、業務用の炊飯システムで使用される炊飯釜においては困難であり、本発明者らが知る限りにおいて、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯を可能にする圧力炊飯釜は未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−70638号公報
【特許文献2】特開2007−236508号公報
【特許文献3】特開2008−55089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の現状に鑑み、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯を可能にする圧力炊飯釜を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々試行錯誤を重ねた結果、炊飯釜の構造に改良を加え、第一の蓋と第二の蓋とを、共に着脱自在に装着できる構造にするとともに、内側にある第一の蓋には開口面積が大きい孔を、外側にある第二の蓋にはそれと同じかそれよりも開口面積が小さい孔を設け、炊飯によって発生する高温の水蒸気を上記第一の蓋と第二の蓋との間に滞留させることにより、着脱自在の蓋を使用しながら、加圧状態での炊飯が可能であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、上記の課題を、本体側壁の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部と、第一平坦部の上面から立ち上がる第一側壁と、第一側壁の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部と、第二平坦部の上面から立ち上がる第二側壁とを有する炊飯釜本体と;外周端の下面を第一平坦部と当接させて第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;外周端の下面を第二平坦部と当接させて第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある圧力炊飯釜を提供することによって解決するものである。
【0008】
本発明の圧力炊飯釜は、上記のとおりに構成されており、炊飯に伴って発生した高温の水蒸気は、まず、第一貫通孔を通過して、第一蓋と第二蓋との間の第二空間内に浸入するが、第二貫通孔はその数が第一貫通孔よりも少なく、かつ、その開口面積は第一貫通孔と同じか第一貫通孔よりも小さいので、第一貫通孔を通過して第二空間内に浸入した水蒸気のうちの一部だけが第二貫通孔を通過して外部へ散逸し、大部分は第二空間内に滞留することになる。その結果、第二空間は水蒸気が滞留する蓄圧室として機能し、第一蓋を介して第一空間内の炊飯資材に圧力を掛け、加圧状態での炊飯が行われることになる。また、第二空間に滞留する水蒸気は高温であるので、第二空間は保温室としても機能し、第一空間内の炊飯資材は、バーナ等の加熱手段によって加熱される下面や側面だけでなく、上面からも加熱され、高温でムラのない炊飯が実現されることになる。
【0009】
なお、本発明の圧力炊飯釜においては、第一貫通孔の開口面積S1と第二貫通孔の開口面積S2とはS1≧S2の関係にあれば良いが、より好ましくはS1>S2の関係にあるのが良い。S1>S2である場合には、第二空間に滞留する水蒸気の量が増し、第一蓋を介して第一空間により高い圧力を加えることが可能になる。
【0010】
また、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第一貫通孔と第二貫通孔とは、第一蓋を第一平坦部に支持させ、第二蓋を第二平坦部に支持させたとき、第一貫通孔と第二貫通孔とが同一鉛直線上に位置しないように設けられている。第一貫通孔と第二貫通孔とをこのように配置する場合には、第一貫通孔を通過した水蒸気は、そのまま第二貫通孔を通り抜けることがなく、第二空間内の全域に広がるので、第一蓋の上面に均一な圧力を加えることが可能になる。
【0011】
さらに、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第二貫通孔には、第二空間内の圧力と外部の圧力との差が一定値以上になると開き、一定値未満になると閉じる圧力調節弁が設けられている。このように第二貫通孔に圧力調節弁を設ける場合には、第二空間を介して第一蓋上部に加わる圧力は一定値に維持されるので、安定した加圧状態での加圧炊飯が可能となる。
【0012】
また、本発明の圧力炊飯釜の好ましい一態様においては、第一蓋が、中心部と外周端との間に両側よりも低い谷部が存在する垂直断面形状を有しており、その谷部の上面が、第一平坦部と当接する外周端の下面よりも低い位置にある。第一蓋がこのような垂直断面形状を有している場合には、第一蓋の上面と第二蓋の下面との間に形成される第二空間の容積を大きくとることが可能となり、第二空間の蓄圧能力及び保温能力を高め、より高圧高温での炊飯が実現できる。
【0013】
さらに、本発明の圧力炊飯釜においては、第一蓋及び第二蓋が、その中央部に、着脱時の被吸着部となる上面が平坦な凸領域を有しているのが望ましい。第一蓋及び第二蓋がこのような凸領域を有している場合には、例えば、電磁吸着装置や真空吸着装置などの吸着装置の吸着面をこの凸領域に接触させて、第一蓋及び第二蓋を容易に脱着することが可能である。
【0014】
なお、本発明の圧力炊飯釜を加熱する加熱方式には、炊飯が実行される限り、特段の制限はない。ブンゼンバーナや表面燃焼バーナなどの気体燃料を燃焼させるガスバーナ方式でも良く、誘導加熱方式であっても良い。また、本発明の圧力炊飯釜の水平断面形状にも特段の制限はなく、円形、長方形、楕円形等、種々の形状とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って搬送し、炊飯釜ごとに炊飯を行う業務用の炊飯システムにおいて、加圧状態での炊飯が可能となり、これまで以上に美味しい米飯を大量に提供することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧力炊飯釜の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1の圧力炊飯釜の炊飯釜本体の平面図である。
【図3】図1の圧力炊飯釜の第一蓋の平面図である。
【図4】図1の圧力炊飯釜の第二蓋の平面図である。
【図5】図1の圧力炊飯釜の炊飯時の状態を示す縦断面図である。
【図6】第二蓋の他の例を示す平面図である。
【図7】図6のX−X’断面図(圧力調節弁が閉状態)である。
【図8】図6のX−X’断面図(圧力調節弁が開状態)である。
【図9】炊飯釜本体の他の一例を示す平面図である。
【図10】本発明の圧力炊飯釜の他の一例を示す縦断面図である。
【図11】図10の圧力炊飯釜の炊飯釜本体の平面図である。
【図12】図10の圧力炊飯釜の第一蓋の平面図である。
【図13】図10の圧力炊飯釜の第二蓋の平面図である。
【図14】図10の圧力炊飯釜の炊飯時の状態を示す縦断面図である。
【図15】本発明の圧力炊飯釜のさらに他の一例を示す縦断面図である。
【図16】図15の圧力炊飯釜の平面図である。
【図17】図16の部分拡大図である。
【図18】本発明の圧力炊飯釜を用いる業務用炊飯システムの一例を示す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0018】
図1は、本発明の圧力炊飯釜の一例を示す縦断面図である。図1において、1は本発明の圧力炊飯釜、2は炊飯釜本体、3は第一蓋、4は第二蓋である。炊飯釜本体2は、本体側壁5の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部6と、第一平坦部6の上面から立ち上がる第一側壁7と、第一側壁7の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部8と、第二平坦部8の上面から立ち上がる第二側壁9とを有しており、さらに、本例においては、炊飯釜本体2には、第一鍔10と第二鍔11とが設けられている。第一鍔10は、例えば、圧力炊飯釜1を炊飯システムの炊飯機にセットするときに、その下面を炊飯機の上面と当接させて、圧力炊飯釜1を所定の高さに支持するときに利用されるものである。また、第二鍔11は、例えば、炊飯釜搬送台車の把持爪を側方から第二鍔11の下に差し込んで、圧力炊飯釜1を支持搬送するときに利用されるものである。
【0019】
12は、第一蓋3の中央部に設けられている凸領域であり、凸領域12は、その上面が平坦であり、例えば、磁気吸着装置や真空吸着装置等の吸着装置を用いて第一蓋3を炊飯釜本体2から着脱する時に、吸着装置の吸着部が当接して吸着される被吸着部として機能する。13は傾斜部、14は谷領域、15は外周端であり、谷領域14の上面は、外周端15の下面よりも低い位置にある。16、16は、谷領域14に設けられた第一貫通孔である。第一貫通孔16、16は、図に示すとおり、第一蓋3の周辺部に設けられ、第一蓋3を上下に貫通している。第一蓋3は、その外周端15の下面を第一平坦部6の上面と当接させて、第一平坦部6上に支持され、炊飯釜本体2の内側との間に後述する第一空間を形成する。
【0020】
17は、第二蓋4の中央部に設けられている凸領域であり、凸領域17は、凸領域12と同様に、その上面が平坦であり、例えば、磁気吸着装置や真空吸着装置等の吸着装置を用いて第二蓋4を炊飯釜本体2から着脱する時に、吸着装置の吸着部が当接して吸着される被吸着部として機能する。18は傾斜部、19は外周端であり、20、20は、傾斜部18に設けられた第二貫通孔であり、第二貫通孔20、20は、図に示すとおり、凸領域17に近接した位置に設けられており、第二蓋4を上下に貫通している。第二蓋3は、その外周端19の下面を第二平坦部8の上面と当接させて、第二平坦部8上に支持され、後述するとおり、第一蓋3の上面との間に炊飯釜本体2の本体側壁5の内側で囲まれた第二空間を形成する。
【0021】
図2は、図1に示した炊飯釜本体2の平面図である。図に示すとおり、本例における炊飯釜本体2の平面形状は円形である。
【0022】
図3は、図1に示した第一蓋3の平面図である。図に示すとおり、本例においては、第一貫通孔16、16・・・は、谷領域14内に、90度間隔で4個設けられている。
【0023】
図4は、図1に示した第二蓋4の平面図である。図に示すとおり、本例においては、第二貫通孔20、20は、傾斜部18の凸領域17に近接した位置に180度間隔で2個設けられている。
【0024】
図3及び図4から明らかなとおり、第一貫通孔16、16・・・の一つ一つの開口面積S1は、第二貫通孔20、20の一つ一つの開口面積S2よりも大きく、第一貫通孔16、16・・・の個数N1は第二貫通孔20、20の個数N2よりも多い。すなわち、本例においては、S1>S2、N1>N2の関係にある。第一貫通孔16、16・・・の開口面積S1は、第二貫通孔20、20の開口面積S2よりも大きいか、等しければ良く、具体的な開口面積に特段の制限はないが、例えば、7kgの米を炊飯する直径70cmの炊飯釜の場合、第一貫通孔16、16・・・の開口面積S1は5〜20cm2程度、好ましくは8〜15cm2程度が良く、第二貫通孔20、20の開口面積S2は、それよりも小さな、2〜15cm2程度、好ましくは5〜10cm2程度とするのが良い。
【0025】
なお、第一貫通孔16、16・・・の個々の開口面積は、必ずしも揃っていることが不可欠ではなく、ある範囲の中に収まって入れは、多少の違いがあっても良いが、第一空間αから第二空間βへの水蒸気の移動は、炊飯ムラを発生させないという観点からは、平面的に見て均一である方が望ましく、したがって、第一貫通孔16、16・・・の個々の開口面積も揃っているのが望ましい。また、第一貫通孔16、16・・・の開口の形には特に制限はなく、円形に限られず、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、六角形等、どのような形であっても構わない。
【0026】
第二貫通孔20、20についても同様で、第二貫通孔20、20の個々の開口面積は、必ずしも揃っていることが不可欠ではなく、ある範囲の中に収まって入れは、多少の違いがあっても良いが、余りに異なると、第二空間β内での圧力分布が均一でなくなり、第一蓋3を介して第一空間αに係る圧力にも場所的な違いが生じるので、炊飯ムラを発生させないという観点からは、第二貫通孔20、20の個々の開口面積は揃っているのが望ましい。また、第二貫通孔20、20の開口の形には特に制限はなく、円形に限られず、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、六角形等、どのような形であっても構わない。
【0027】
さらに、本例において、第一貫通孔16、16・・・の個数は4個であるが、第一貫通孔16、16・・・個数は、第二貫通孔20、20の個数よりも多ければ良く、4個に限られるものではない。例えば3個又は2個、或いは、5個又は6個以上であっても良い。但し、炊飯に伴い発生した水蒸気が均等に第一空間から第二空間に抜けるように、第一貫通孔16、16・・・は、第一蓋3の円周方向に等間隔で配置されるのが好ましい。同様に、第二貫通孔20、20の個数も、第一貫通孔16、16・・・の個数よりも少なければ良く、2個に限られない。例えば1個であっても良く、3個以上であっても良い。
【0028】
さらに、本例においては、第一貫通孔16、16・・・は第一蓋3の外周端15に近い谷領域に設けられ、第二貫通孔20、20は第二蓋4の中央の凸領域17に近い位置に設けられているが、逆に、第一貫通孔16、16・・・を第一蓋3の中央の凸領域12に近い位置に設け、第二貫通孔20、20を第二蓋4の傾斜部18の外周端19に近い位置に設けるようにしても良い。但し、いずれの場合であっても、第一貫通孔16、16・・・と第二貫通孔20、20とは、第一蓋3及び第二蓋4を、それぞれ、第一平坦部6及び第二平坦部8に支持させたとき、同一鉛直線上に位置しないように設けるのが望ましい。
【0029】
図5は、図1の圧力炊飯釜1の炊飯時の状態を示す縦断面図であり、第一蓋3及び第二蓋4は、炊飯釜本体2内に取り付けられた状態にある。このような蓋の取り付けは、図示しない適宜の磁気吸引装置を用いて、第一蓋3の凸領域12又は第二蓋4の凸領域17を吸着し、第一蓋3の外周端及び第二蓋4の外周端の下面が、それぞれ、第一平坦部6又は第二平坦部8の上面と当接するような位置まで移動させ、その位置で吸着を解除することによって容易に行うことができる。逆に、図5に示す状態から第一蓋3及び第二蓋4を取り外すには、図示しない適宜の磁気吸引装置を用いて、第一蓋3の凸領域12又は第二蓋4の凸領域17を吸着して、第一蓋3及び第二蓋4を図5に示す位置から持ち上げて、適宜の場所まで移動させることによって、容易に行うことができる。
【0030】
図5において、Aは米、水、調味液、具材等の炊飯資材を示し、αは、第一蓋3と炊飯釜本体2の内側との間に形成される第一空間、βは、第二蓋4の下面と第一蓋の上面との間で、炊飯釜本体2の本体側壁5の内側で囲まれた第二空間である。
【0031】
この状態で、図示しない加熱装置によって炊飯釜本体2を加熱して炊飯を行うと、炊飯に伴い第一空間α内に発生した高温の水蒸気は、図中矢印で示すように、第一貫通孔16、16・・・を通過して第二空間β内へと浸入する。このとき、第一貫通孔16、16・・・と第二貫通孔20、20とが同一鉛直線上にないので、第一貫通孔16、16・・・から第二空間β内に浸入した水蒸気は、そのまま第二貫通孔20、20から外部へと散逸することはできず、第二空間β内に充満する。第二空間β内に充満した水蒸気の一部は、第二貫通孔20、20から外部へと散逸するが、第二貫通孔20、20の開口面積は第一貫通孔16、16・・・の開口面積よりも小さく、かつ、第二貫通孔20、20の個数は第一貫通孔16、16・・・よりも少ないので、第一貫通孔16、16・・・から第二空間β内へと浸入した水蒸気の大部分は第二空間β内に滞留し、第一蓋3に圧力を加えることになる。すなわち、第二空間βは蓄圧室として機能し、これにより、加圧状態での炊飯が実現される。
【0032】
また、第一蓋3には、その上面が外周端15の下面よりも下に位置する谷領域14が設けられているので、谷領域14が下方に凹んでいる分だけ第二空間βの容積が増し、第二空間βは蓄圧室としてより有効に機能することになる。
【0033】
さらには、第二空間β内に滞留する水蒸気は高温状態にあるので、第二空間βは、蓄熱室としても機能し、炊飯資材Aが収容され炊飯されている第一空間αを、第一蓋3を介して、その上面から保温乃至は加熱することになる。したがって、第一空間αは、炊飯機の加熱装置による下面及び側面からの加熱に加えて、上面からも加熱を受けることになり、より均一でムラのない炊飯が実行される。
【0034】
図6は、第二蓋4の他の例を示す平面図である。本例の第二蓋4においては、第二貫通孔20、20には、圧力調節弁として機能する板バネ21、21が、取付具22、22を用いて取り付けられている点が、図4に示した第二蓋4と異なっている。
【0035】
図7は、図6のX−X’断面図である。図に示すとおり、第二蓋4の下方に位置する第二空間βの圧力βpと、第二蓋4の上方に位置する外部空間γの圧力γpとの差、すなわち、(βp−γp)が一定値以下である場合には、板バネ21は真っ直ぐな状態にあり、第二貫通孔20を閉止している。つまり、板バネ21からなる圧力調節弁は「閉」状態にあることになる。
【0036】
図8は、同じく図6のX−X’断面図であるが、第二空間βの圧力βpと外部空間γの圧力γpとの差、すなわち、(βp−γp)が一定値を超え、その圧力差が板バネ21をその弾性に抗して湾曲させて、第二貫通孔20が開となった状態を示している。この状態では、第二空間β内の水蒸気は、図中矢印で示すように、第二貫通孔20を通過して外部へと散逸する。つまり、板バネ21からなる圧力調節弁は「開」状態にあることになる。
【0037】
このように、第二貫通孔20に圧力調節弁が設けられている場合には、第二空間β内の圧力βpと外部空間γの圧力γpとの差が一定値を超えて初めて第二貫通孔20が開となるので、第二空間β内を、第二貫通孔20を単に開放状態のままとする場合よりも高い圧力に保つことができ、第二空間βの蓄圧室としての機能を高めることができる。また、圧力βpとγpとの差が一定値を超えると、第二貫通孔20が開となり、水蒸気が外部へと散逸するようになるので、第二空間β内の圧力は一定値に維持され、安定した加圧炊飯が可能となる。さらには、何らかの原因で、第二空間β内の圧力が急激に高まった場合でも、直ちに板バネ21が湾曲して、第二貫通孔20を開とし、水蒸気を外部に逃がすことができるので、板バネ21からなる圧力調節弁は安全弁としても機能する。
【0038】
なお、圧力調節弁は、板バネ21に限られず、βpとγpとの差が一定値以上になったら第二貫通孔20を「開」とし、一定値未満であれば「閉」とする機能を有するものであれば、どのような機構のものであっても良い。く、板バネ21に限られない以外のもので構成しても良いことは勿論である。例えば、特許文献3に開示されているような、自重で開口部を閉止するボール状の弁体であっても良いし、コイルバネで弁体を開口部に付勢する構造のものであっても良い。但し、図7〜図8に示したような板バネ21を用い圧力調節弁の方が、構造が簡単で、嵩張らないので、便利である。
【0039】
図9は、炊飯釜本体2の他の例を示す平面図である。本例の炊飯釜本体2は、第一鍔10が、その平面形状が円形ではなく、正方形である点で、図2に示した炊飯釜本体2と異なっている。本例の炊飯釜本体2は、例えば、第一鍔10の対向する両側辺の下面にチェーンコンベアを当接させて、炊飯釜本体2を搬送することができる。第一鍔10の対向する両側辺の長さは、それら辺と平行な方向における炊飯釜本体2の本体側壁5の部分の直径よりも長く、かつ、前後に延在しているので、両側辺の下面にチェーンコンベアを当接させることにより、炊飯釜本体2、さらには、第一蓋3及び第二蓋4を備えた圧力炊飯釜1を、安定した状態で、かつ、確実に搬送することができる。
【0040】
このように、第一鍔10の下面にチェーンコンベアを当接させて、圧力炊飯釜1を搬送する場合には、圧力炊飯釜1をローラーコンベア上に載置して搬送する場合に比べて、圧力炊飯釜1の底面をローラーと接触させずに搬送することができる。したがって、例えば、圧力炊飯釜1の底面に、溶射等によって鉄や磁性ステンレスなどの誘導加熱によって発熱する材料の被膜が形成されている場合でも、ローラーとの接触によって被膜が剥がれたり、消耗したりすることがないので、本発明の圧力炊飯釜1を誘導加熱用の圧力炊飯釜として用いることが可能となるという利点が得られる。
【0041】
図10〜図13は本発明の圧力炊飯釜1の他の一例を示す図であり、図10は縦断面図、図11は炊飯釜本体の平面図、図12は第一蓋の平面図、図13は第二蓋の平面図である。これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。図10〜図13に示す例は、炊飯釜本体2の水平断面形状が長方形である点で、図1〜図4に示した圧力炊飯釜1と異なっている。
【0042】
図14は、図10〜図13に示した圧力炊飯釜1の炊飯時の状態を示す縦断面図である。本例においても、炊飯に伴い発生した高温の水蒸気は、第一貫通孔16、16を通過して、第二空間βに浸入し、一部は第二貫通孔20、20から外部に散逸するものの、大部分は第二空間β内に滞留し、第一蓋3を介して第一空間αを加圧するので、加圧炊飯が実行される。また、この場合にも、第一蓋3には谷領域14が形成されているので、谷領域14が凹んでいる分だけ第二空間βの容積が増し、蓄圧室としての機能がより高められている。さらには、第二空間β内に滞留する水蒸気は高温であるので、炊飯資材Aを収容する第一空間αは、加熱手段により下方又は側方からの加熱だけでなく、上方からも加熱され、より一層均一でムラのない炊飯が実現される。
【0043】
図15は本発明の圧力炊飯釜1のさらに他の一例を示す縦断面図、図16はその平面図である。本例においては、炊飯釜本体2に第一鍔10及び第二鍔11に代えて、炊飯釜本体2の側方及び前後に取っ手23、23・・・が設けられている点、及び、第二貫通孔20、20に圧力調節弁として板バネ21、21が取り付けられている点が、図10〜図14に示した圧力炊飯釜1と異なっている。
【0044】
図17は、図16の部分拡大図である。図17に示すとおり、第二貫通孔20、20を塞ぐ位置に板バネ21、21が取付具22、22で取り付けられている。この板バネ21、21の機能は、先に、図6〜図8を基に説明したのと同じである。
【0045】
以上のとおり、本発明の圧力炊飯釜1は、炊飯釜本体2の部分の水平断面形状については何ら制限がなく、円形であっても、長方形であっても良く、さらには、正方形であっても良い。また、炊飯釜の上部側壁に二重又は一重の鍔を備えたものであっても良く、鍔の代わりに取っ手を備えているものであっても良い。また、本発明の圧力炊飯釜1を炊飯機にセットしたときの加熱手段にも制限はなく、ブンゼン式或いは表面燃焼式などのガスバーナであっても良いし、誘導加熱であっても良い。
【0046】
図18は、本発明の圧力炊飯釜を用いる業務用炊飯システムの一例を示す概念図である。図18に示すとおり、炊飯システム100は、多数の本発明の圧力炊飯釜1が搬送ラインに沿って搬送されながら炊飯に必要な各種の工程を経て、炊飯釜ごとに米飯が炊き上げられる炊飯システムである。図18において、101は洗米・給水部、102は蓋着装置、103はリフタ、104は立体浸漬部、105は蓋取り装置、106は調味液供給装置、107は炊飯・蒸らし部である。
【0047】
立体浸漬部104を出た圧力炊飯釜1は、蓋取り装置105によって、第二蓋4及び第一蓋3がこの順で取り外され、調味液供給装置106によって適宜の調味液が炊飯釜本体2内に投入された後、次の蓋着装置102において、平行するラインを搬送されてきた第一蓋3及び第二蓋4が、この順で、再び、炊飯釜本体2に装着される。
【0048】
炊飯・蒸らし部107の上段には複数の炊飯機108が配置されており、搬送されてきた未炊飯の圧力炊飯釜1は、搬送台車109によって適宜の空いている炊飯機108にセットされ、加圧炊飯が行われる。
【0049】
炊飯が終了した圧力炊飯釜1は、再び搬送台車109で炊飯・蒸らし部107の奥側にあるリフタ103へと搬送され、複数の炊飯機108の下段を時間を掛けて通過しながら蒸らしが行われる。蒸らしが終了した圧力炊飯釜1は、炊飯・蒸らし部107の入口側にあるリフタ103から、再び搬送ラインへと戻される。
【0050】
炊飯・蒸らし部107を出た圧力炊飯釜1は、蓋取り装置105で再び第二蓋4及び第一蓋3がこの順で取られ、取られた第二蓋4及び第一蓋3は、蓋洗浄装置110を経て、最初の蓋着装置102へと送られる。一方、蓋が取られた炊飯釜本体2は、方向切り換え装置111へと進み、そこで米飯取り出し装置112によって反転され、炊き上がった米飯が炊飯釜から取り出される。取り出された米飯は、米飯撹拌装置113で撹拌され、撹拌後、搬送装置114へと送り出される。115は計量装置であり、撹拌済みの米飯を予め定められた量ずつ計量し、後続する搬送装置114へと送り出し、送り出された米飯は、パレタイザ116で所定量ずつ容器に収容され、積み上げられる。一方、米飯取り出し装置112によって米飯が取り出され空になった炊飯釜本体2は、方向切り換え装置111でその進行方向を90度切り換えられ、炊飯釜洗浄装置117へと搬送され、そこで洗浄されて次の炊飯のために洗米、給水部101へと送られる。
【0051】
本発明の圧力炊飯釜1は、圧力炊飯が可能であるにもかかわらず、第一蓋3及び第二蓋4を、機械によって容易に着脱することができるので、例えば、図18に示すような業務用の炊飯システム100に使用することが可能であり、大量の米飯を効率良く圧力炊飯することを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したとおり、本発明の圧力炊飯釜によれば、業務用の炊飯システムにおいて、加圧炊飯が容易に実現できるので、炊き上がる米飯の味質の向上を図ることができ、日々大量の米飯を炊飯する関連産業界において多大の利用可能性を備えている。
【符号の説明】
【0053】
1 圧力炊飯釜
2 炊飯釜本体
3 第一蓋
4 第二蓋
5 本体側壁
6 第一平坦部
7 第一側壁
8 第二平坦部
9 第二側壁
10 第一鍔
11 第二鍔
12、17 凸領域
13、18 傾斜部
14 谷領域
15、19 外周端
16 第一貫通孔
20 第二貫通孔
21 板バネ
22 取付具
23 取っ手
α 第一空間
β 第二空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体側壁の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部と、第一平坦部の上面から立ち上がる第一側壁と、第一側壁の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部と、第二平坦部の上面から立ち上がる第二側壁とを有する炊飯釜本体と;外周端の下面を第一平坦部と当接させて第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;外周端の下面を第二平坦部と当接させて第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある、圧力炊飯釜。
【請求項2】
第一蓋を第一平坦部に支持させ、第二蓋を第二平坦部に支持させたとき、第一貫通孔と第二貫通孔とが同一鉛直線上に位置しないように設けられている請求項1記載の圧力炊飯釜。
【請求項3】
第二貫通孔に、第二空間内の圧力と外部の圧力との差が一定値以上になると開き、一定値未満になると閉じる圧力調節弁が設けられている請求項1又は2記載の圧力炊飯釜。
【請求項4】
第一蓋が、中心部と外周端との間に、その両者よりも低い谷領域を有しており、その谷領域の上面が、第一蓋の第一平坦部と当接する外周端の下面よりも低い位置にある請求項1〜3のいずれかに記載の圧力炊飯釜。
【請求項5】
第一蓋及び第二蓋が、その中央部に、着脱時の被吸着部となる上面が平坦な凸領域を有している請求項1〜4のいずれかに記載の圧力炊飯釜。
【請求項1】
本体側壁の上端部から外側に向かって伸びる第一平坦部と、第一平坦部の上面から立ち上がる第一側壁と、第一側壁の上端部から外側に向かって伸びる第二平坦部と、第二平坦部の上面から立ち上がる第二側壁とを有する炊飯釜本体と;外周端の下面を第一平坦部と当接させて第一平坦部に支持され、炊飯釜本体の内側との間に第一空間を形成する第一蓋であって、第一蓋を上下に貫通する1又は複数の第一貫通孔を備えた第一蓋と;外周端の下面を第二平坦部と当接させて第二平坦部に支持され、第一蓋の上面との間に炊飯釜本体の本体側壁の内側で囲まれた第二空間を形成する第二蓋であって、第二蓋を上下に貫通する1又は複数の第二貫通孔を備えた第二蓋とを有し、第一貫通孔の開口面積S1と、第二貫通孔の開口面積S2とが、S1≧S2の関係にあり、第一貫通孔の個数N1と第二貫通孔の個数N2とが、N1>N2の関係にある、圧力炊飯釜。
【請求項2】
第一蓋を第一平坦部に支持させ、第二蓋を第二平坦部に支持させたとき、第一貫通孔と第二貫通孔とが同一鉛直線上に位置しないように設けられている請求項1記載の圧力炊飯釜。
【請求項3】
第二貫通孔に、第二空間内の圧力と外部の圧力との差が一定値以上になると開き、一定値未満になると閉じる圧力調節弁が設けられている請求項1又は2記載の圧力炊飯釜。
【請求項4】
第一蓋が、中心部と外周端との間に、その両者よりも低い谷領域を有しており、その谷領域の上面が、第一蓋の第一平坦部と当接する外周端の下面よりも低い位置にある請求項1〜3のいずれかに記載の圧力炊飯釜。
【請求項5】
第一蓋及び第二蓋が、その中央部に、着脱時の被吸着部となる上面が平坦な凸領域を有している請求項1〜4のいずれかに記載の圧力炊飯釜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−130834(P2011−130834A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291015(P2009−291015)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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