説明

圧延材のオンライン加速冷却装置及びオンライン加速冷却方法

【課題】熱間圧延された圧延材の上下面での冷却状態を全長に亘って略同一とすることで、圧延材の形状を全長に亘り均一とする。
【解決手段】冷却装置2へ搬入される前の段階で圧延材Wの前方へ厚み及び幅が同一のダミー部材15を供給し、この圧延材Wのトップ部を疑似的に前方へ延長させた状態で冷却装置2を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延されて搬送ラインを搬送されつつある圧延材を、冷却水によってオンラインで冷却するためのオンライン加速冷却装置及びオンライン加速冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延後の圧延材をオンラインで冷却する方法として、スリットジェット冷却装置を採用した加速冷却方法が知られている(例えば、特許文献1)。
この種の冷却装置は、搬送ラインを走行する圧延材に対し、その上面へ向けて冷却水を吹き付ける上部スリットジェットノズルと、その下流方向に所定間隔をおいて設けられた上部水切りロールとを有し、さらに、圧延材の下面へ向けて冷却水を吹き付ける下部スリットジェットノズルとその下流方向に所定間隔をおいて設けられた下部水切りロールとを備えたものである。
【0003】
上部スリットジェットノズルから圧延材の上面へ吹き付けられる冷却水は、一旦、圧延材上面を流れて下流へと向かい、上部水切りロールによって圧延材上面側で堰き止められるようになって撹拌流を生じつつ圧延材の幅方向両側からこぼれ落ちるようになる。また同様に、下部スリットジェットノズルから圧延材の下面へ吹き付けられる冷却水についても一旦は圧延材下面に沿った流れとなり、下部水切りロールによって圧延材下面側で堰き止められるようになり、ここで撹拌流を生じつつ圧延材から離れ、落流するようになる。
詳しくは、特許文献1に記載された技術は、圧延材を、前記上部スリットジエットノズル及び下部スリットジェットノズルを備える前段冷却部と、前記スリットジエット冷却以外の上下面冷却とした後段冷却部とを通過させて、通板方向前端から後端に向けて順次冷却するようにしており、圧延材を通板させるに際し、前段冷却部における上下水量比(上下面のスリットジェットノズルから噴出されるジェット水の水量比)を所定の一定値に設定し、当該一定値の下で一方向通板を行うものであった。
【0004】
また、制御冷却において、圧延材の冷却される領域が、冷却装置の冷却ゾーンに入る直前に前記領域の上下面の温度を測定し、この測定結果の上下面温度差に基づき、当該冷却ゾーンの上下水量比を変更して、反りや曲がりなどの形状不良を防止する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭62−289316号公報
【特許文献2】特開2003−293030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された設備において、前段冷却部の上下水量比を一定にして冷却する方法では、圧延材の上下面の冷却状態に偏差が生じ、冷却後の圧延材の通板方向全長にわたって、均一な形状(平坦度)を得ることが困難であるという問題があった。
一方、特許文献2に記載の技術は、各冷却ゾーン入側で圧延材の上下面温度を測定し、該上下面温度の差に基づいて当該冷却ゾーンの上下水量比を修正するものであるから、フィードフォアード制御となり、その制御は高速処理が必要となるなど複雑なものになるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、熱間圧延された圧延材の上下面での冷却状態を全長に亘って略同一とすることで、圧延材の形状を全長に亘り均一とすることが可能である圧延材のオンライン加速冷却装置及びオンライン加速冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、熱間圧延された圧延材を搬送ライン上で走行させつつ冷却水によって冷却する冷却装置を備えた圧延材のオンライン加速冷却装置において、圧延材表面での冷却水の流れ状態を所定のものにすべく、圧延材の先端部にダミー部材を連結した上で当該圧延材を冷却装置内に導入する冷却水整流手段を有することを特徴とする。
なお、冷却装置は、圧延材の上面へ向けて冷却水を吹き付ける上部スリットジェットノズルとその下流方向に所定間隔をおいて設けられた上部水切りロールとを有すると共に、圧延材の下面へ向けて冷却水を吹き付ける下部スリットジェットノズルとその下流方向に所定間隔をおいて設けられた下部水切りロールとを備えるようにすればよい。
【0008】
このように冷却水整流手段により、冷却装置へ搬入前の圧延材の前方へダミー部材を供給させることで圧延材の先端部を擬似的に前方へ延長させた形にすると、冷却装置内ではまず、このダミー部材に対して冷却水が供給され、このダミー部材に引き続いて圧延材が冷却水の供給を受ける形となる。そのため、圧延材自体は、その先端部(トップ部)であろうと中間部(ミドル部)であろうと、その上下面に関して、冷却水の分布状態は所定のものとなり、必要とする冷却能が確保されるようになる。従って、熱間圧延された圧延材が反り返ったりすることなく、その形状を全長に亘り均一とすることが可能となる。
【0009】
なお、前記冷却水整流手段は、当該ダミー部材を冷却装置の上流側で搬送ラインへ供給すると共に、冷却装置の下流側で排出させるダミー取扱装置を有するようにするとよい。
前記ダミー取扱装置は、搬送ラインに側方からダミー部材を供給する挿入装置と、搬送ラインから側方へダミー部材を取り出す排出装置と、この排出装置から挿入装置へダミー部材を返送する返送装置とを有するものとさせるのが好適である。
このような構成にすれば、搬送ラインと別ラインとの間でダミー部材を一方向的に循環走行させる運用方式となり、その動きに無駄がない。そのため、装置としての稼働効率に優れたものとなる。
【0010】
また、ダミー取扱装置はこれとは異なる構成とすることも可能である。前記ダミー取扱装置は、冷却装置の下流側で搬送ラインに対して側方からダミー部材の供給及び排出を行う出し入れ装置と、前記搬送ラインを制御して、当該出し入れ装置により搬送ライン上に供給されたダミー部材を冷却装置の上流側へ逆送りする搬送制御装置とを有るようにするとよい。
これによれば、冷却装置の下流側(搬送ラインに対してダミー部材の供給、排出を行う位置)から冷却装置を通り抜けた上流側へ向けてダミー板を逆送りでき、圧延材の先端部に当接させることができるようになる。
【0011】
また、冷却水整流手段としては、上記した各種のダミー取扱装置を採用しない構成とすることも可能である。
つまり、前記冷却水整流手段は、冷却装置の下流側に設けられ且つ搬送ラインに沿って移動自在となっているダミー部材を備えた誘引装置を有しており、該誘引装置は、前記ダミー部材を冷却装置内を上流側へ向けて通過させ且つ冷却装置に搬入前の圧延材の前部へ待機させ、圧延材が冷却装置内を走行するときに圧延材の先端部に当接状態で先導させると共に、その状態でダミー部材を下流側へ向けて移動可能とするとよい。
【0012】
好ましくは、前記ダミー部材は、圧延材の上面に面一となる上面延長部材と圧延材の下面に面一となる下面延長部材とを有しており、前記上面延長部材は冷却装置の下流側において上方へ移動して待避可能であると共に、下面延長部材は冷却装置の下流側において下方へ移動し待避可能とするとよい。上面延長部材及び下面延長部材の両者が揃って、上方もしくは下方の一方側に待避するような構成であってもよい。
こうすることで、搬送ラインに並設する返送装置や、搬送ラインに対してダミー部材の供給及び排出を行う出し入れ装置等を設ける必要がなくなり、搬送ライン側方のスペースを有効活用することができるようになる。
【0013】
なお、前記ダミー部材は、圧延材と同一の厚み及び幅を有すると共に、圧延材先端部の冷却水の流れ状態が圧延材中途部と同一となるような長さを備えたダミー板であるとよい。
一方、本発明に係る圧延材のオンライン加速冷却方法は、熱間圧延後に搬送ラインを搬送中の圧延材に対し、冷却水による冷却を行う直前にこの圧延材の前方へ厚み及び幅が同一のダミー部材を供給して圧延材の先端部を疑似的に前方へ延長させた状態にさせ、この状態のままダミー部材及び圧延材を冷却水で冷却させ、冷却後にダミー部材を取り除くようなものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る圧延材のオンライン加速冷却装置及びオンライン加速冷却方法によれば、熱間圧延された圧延材の上下面での冷却状態を全長に亘って略同一とすることで、圧延材の形状を全長に亘り均一とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2は、本発明に係るオンライン加速冷却装置1の第1実施形態を示している。このオンライン加速冷却装置1は、冷却装置2と冷却整流手段3とを有している。
冷却装置2は、熱間圧延後に搬送ライン5を搬送される圧延材Wに対し、走行状態にさせたまま冷却水によって冷却するものである。本第1実施形態においてこの冷却装置2にはスリットジェット冷却装置を適用している。そのためこの冷却装置2は、圧延材Wの上面へ向けて冷却水を吹き付ける上部スリットジェットノズル6と、圧延材Wの下面へ向けて冷却水を吹き付ける下部スリットジェットノズル7とを有している。これら上下のスリットジェットノズル6,7は、圧延材Wを挟んで上下で対向している。
【0016】
上部スリットジェットノズル6の下流側には、これと所定間隔をおいて上部水切りロール10Aが設けられている。なお、上部スリットジェットノズル6のすぐ上流側にも補助的に上部水切りロール10Bが設けられている。
なお、搬送ライン5は互いに所定間隔をおいてテーブルロール11が並設されたものとなっているが、このうち冷却装置2内では、テーブルロール11の並設間隔が所定に離された区間があり、この区間の両側のテーブルロール11は上記した上部水切りロール10A,10Bと上下対向する位置付けとされている。このように、上部水切りロール10A,10Bと上下対向する2本のテーブルロール11は、下部水切りロール(11A,11B)としての作用を兼備している。
【0017】
上部スリットジェットノズル6とその下流側の上部水切りロール10Aとの間には、圧延材Wの上面とほぼ一定間隔となるようにして上部誘導板12が設けられている。また同様に、下部スリットジェットノズル7とその下流側の下部水切りロール11Aとの間には、圧延材Wの下面とほぼ一定間隔となるようにして下部誘導板13が設けられている。
これらのことから、上部スリットジェットノズル6から圧延材Wの上面へ吹き付けられる冷却水は、一旦、圧延材上面を流れて下流へと向かい、下流側の上部水切りロール10Aによって圧延材上面側で堰き止められるようになり、ここで撹拌流を生じつつ圧延材Wの幅方向両側からこぼれ落ちるようになる。
【0018】
ここで上部誘導板12は、上部水切りロール10Aで堰き止められ撹拌流を起こす冷却水のうち、余剰の分を圧延材Wの上面から切り離して、結果、圧延材Wの上面に接触する冷却水量を所定に規制する作用を奏する。
また同じように、下部スリットジェットノズル7から圧延材Wの下面へ吹き付けられる冷却水についても一旦は圧延材下面に沿った流れとなり、下流側の下部水切りロール11Aによって圧延材下面側で堰き止められるようになり、ここで撹拌流を生じつつ圧延材Wから離れ、落流するようになる。
【0019】
ここで下部誘導板13は、圧延材下面に沿った冷却水流れをある程度、保水状態とさせる(圧延材下面からすぐに落水するのを防止する)と共に、下部水切りロール11Aで堰き止められ撹拌流を起こす冷却水のうち、余剰の分を圧延材Wの下面から切り離して、結果、圧延材Wの下面に接触する冷却水量を所定に規制する作用を奏する。
これらのことから、圧延材Wの上下面間で冷却水の接触状態は略等しくなり、圧延材Wの上面と下面とが均一に冷却される。
冷却水整流手段3は、冷却装置2へ搬入される前の段階で圧延材Wの前方へ厚み及び幅が同一のダミー部材15を供給させるものである。本第1実施形態においてダミー部材15はダミー板としてある。このダミー板は、冷却水との接触状態を所定に保持させる長さに形成されている。すなわち、上記した冷却装置2の場合であれば、上部スリットジェットノズル6から少なくとも下流側の上部水切りロール10Aへ届くだけの長さに形成されている。
【0020】
このようなダミー部材15(ダミー板)を使用する冷却水整流手段3は、次のようなダミー取扱装置14を有したものとなっている。このダミー取扱装置14は、冷却装置2の上流位置ではダミー部材15を搬送ライン5へ供給し、また冷却装置2の下流位置では搬送ライン5からダミー部材15を排出するように動作する。
本第1実施形態で採用したダミー取扱装置14は、ダミー部材15の供給動作に専用される挿入装置17と、ダミー部材15の排出動作に専用される排出装置18とに分かれたものとなっている。従って、挿入装置17は冷却装置2の上流側(入り口部側)に配置され、排出装置18は冷却装置2の下流側(出口部側)に配置されている。またこのように挿入装置17と排出装置18とが分かれているため、このダミー取扱装置14として、排出装置18から挿入装置17へダミー部材15を移送する返送装置19を有したものとなっている。
【0021】
挿入装置17と排出装置18とは、搬送ライン5に対してダミー部材15を搬送する動作方向が相対逆となっているだけで、基本的な構造などは同じものである。それは例えば、搬送ライン5を構成しているテーブルロール11の並設間を利用して、この搬送ライン5の搬送方向に直交させてエンドレスチェーンを架設し、巻掛け駆動が可能なコンベア構造としておく。勿論、これら挿入装置17や排出装置18にはその他のコンベア構造を採用することもできるし、また両装置は同じ構造にしなければならないというものでもない。
【0022】
返送装置19についても特に限定されるものではなく、搬送ライン5の隣でこれと並行しつつ、その搬送方向を逆にしたものであって、且つ排出装置18からのダミー部材15の引き取りと挿入装置17に対する送り渡しができるものであれば、ローラコロコンベア、チェーンコンベア、ベルトコンベアなど、適宜コンベア装置を採用することができる。
ダミー部材15は、厚みや幅、長さなどが異なる鋼板を種々、準備しておけばよい。ただ、熱間圧延される圧延材Wにおいてその厚さは一定せず多種あるため、図3に示すように厚さ可変のダミー部材15を採用するのが好適となる。
【0023】
この図3に示すダミー部材15は、上面形成板23と下面形成板24とを有し、これら両形成板23,24がクロスリンク25によって連結された構造になっている。クロスリンク25は回転自在な不動支点25aとスライド支点25bとを有して、スライド支点25b側をボールねじ機構26などによって移動させることができるようになっている。
このような厚さ可変のダミー部材15を使用する場合、上記した返送装置19には、その搬送途中に、ダミー部材15の厚さを圧延材Wの厚さに一致させる作業をするための厚さ調節ステーション27を、搬送系統を分離させた状態で設けておくと好適である。
【0024】
次に、上記第1実施形態のオンライン加速冷却装置1における稼働状況に基づいて、本発明に係るオンライン加速冷却方法を説明する。
熱間圧延された後、搬送ライン5によって冷却装置2の上流側へ搬送された圧延材Wは、冷却装置2の入り口付近で一旦停止される。このとき、又は予め、冷却水整流手段3はダミー取扱装置14の挿入装置17を作動させて冷却装置2の上流位置へダミー部材15を供給させる。そのため搬送ライン5のその後の駆動で圧延材Wが冷却装置2へ搬入されるとき、この圧延材Wはそのトップ部でダミー部材15を後押しする状態になり、引き続きその状態のまま冷却装置2内へ向けて走行してゆくかたちとなる。
【0025】
圧延材Wのトップ部にダミー部材15が後押しされた状態では、圧延材Wのトップ部が疑似的に前方へ延長されるようになっている。そのため冷却装置2内ではまず、圧延材Wの前部にあるダミー部材15に対して冷却水が供給され、このダミー部材15に引き続いて圧延材Wが冷却水の供給を受けるかたちとなる。
そのため、圧延材W自体は、そのトップ部であろうとミドル部であろうと、その上下面に関して、冷却水の分布状態は所定のものとなり、必要とする冷却能が確保されるようになる。従って、熱間圧延された圧延材が反り返ったりすることなく、その形状を全長に亘り均一とすることが可能となる。
【0026】
このように冷却された圧延材Wが冷却装置2から搬出されると、冷却水整流手段3は、ダミー取扱装置14の排出装置18を作動させて冷却装置2の下流位置からダミー部材15を取り出し、搬送ライン5上から排出する。そしてこの排出装置18は取り出したダミー部材15を返送装置19へ送り渡し、次の挿入装置17の作動に備えるようになる。
ダミー部材15が排出された後、搬送ライン5の駆動により冷却後の圧延材Wは下流工程へ向けて搬送される。
図4は、本発明に係るオンライン加速冷却装置1の第2実施形態を示している。この第2実施形態のオンライン加速冷却装置1が、上記第1実施形態と最も異なっているところは、冷却水整流手段3のダミー取扱装置14が、挿入装置17及び排出装置18に代わって出し入れ装置30を有した構成になっている点にある。また本第2実施形態のダミー取扱装置3では、搬送制御装置31を有している。
【0027】
出し入れ装置30は、冷却装置2の下流位置(出口付近)に設置されたものであって、第1実施形態で説明した挿入装置17によるダミー部材15の供給動作と、排出装置18によるダミー部材15の排出動作との両方を行うようになっている。すなわち、搬送ライン5に対してダミー部材15を搬送する動作方向を、往復両方向が可能なものとして必要に応じて切り替え可能になったもので、その構造(コンベア構造)自体は挿入装置17や排出装置18と略同じである。
ここにおいて出し入れ装置30は、挿入装置17と排出装置18との2台分を1台分に省略したかたちとなり、また返送装置19も不要になるので、装置構成が極めてシンプルでコンパクトとなり、設備コストを抑えることができるという利点に繋がっている。
【0028】
搬送制御装置31は、搬送ライン5に対し、出し入れ装置30が設置されている冷却装置2の下流位置から冷却装置2を通り抜けた上流位置(入り口部を出た付近)までの区間について、その搬送方向を正逆切り替え制御するところである。この搬送制御装置31による搬送方向の正逆切り替え制御を可能にするため、搬送ライン5は、上記該当区間が独立して個別に駆動できるようになっている。
このような第2実施形態のオンライン加速冷却装置1では、熱間圧延された圧延材Wが搬送ライン5によって冷却装置2の上流側へ搬送されるまでに、冷却水整流手段3の出し入れ装置30が予め作動し、搬送ライン5における冷却装置2の下流位置に対してダミー部材15を供給するものとし、また続いて搬送制御装置31が作動して搬送ライン5を逆送りして、ダミー部材15を冷却装置2の入り口付近で待機させる。
【0029】
そして、このダミー部材15の待機位置まで圧延材Wが達したとき、搬送制御装置31は今度は搬送ライン5を正送りして、圧延材Wのトップ部でダミー部材15を後押しする状態とさせながら冷却装置2内を通過させる。この間の作用効果は第1実施形態で説明したものと同じである。
圧延材Wのトップ部が冷却装置2の出口側へと抜け出ると、出し入れ装置30が今度は搬送ライン5における冷却装置2の下流位置からダミー部材15を取り込む(排出する)ように動作する。そのため、搬送ライン5を搬送される圧延材Wにとってこのダミー部材15が邪魔となることはなく、以後、冷却後の圧延材Wは搬送ライン5上を下流側工程へと搬送される。
【0030】
図5は、本発明に係るオンライン加速冷却装置1の第3実施形態を示している。この第3実施形態のオンライン加速冷却装置1も、上記第2実施形態と略同様であり、冷却水整流手段3のダミー取扱装置14が出し入れ装置30と搬送制御装置31とを有している。
なお、この第3実施形態が第2実施形態と異なるところは、出し入れ装置30がコンベア構造を有したものではなく、例えばC型フック等をはじめとする各種のハンドリング装置によって搬送ライン5とこれに隣接配置したダミー用テーブル35との間でダミー部材15を吊り上げ、移送させるようにしている点にある。
【0031】
なお、出し入れ装置30は、上方軌道などに沿って冷却装置2の入り口部側へと移動可能な構成として、冷却装置2の上流位置でダミー部材15を搬送ライン5へ直接供給できるようにしてもよく、この場合には、搬送制御装置31は不要にできる。
図6及び図7は、本発明に係るオンライン加速冷却装置1の第4実施形態を示している。この第4実施形態のオンライン加速冷却装置1では、これまで説明してきた第1乃至第3実施形態と異なり、冷却水整流手段3としてダミー取扱装置14を有していない。その代わりに、この第4実施形態の冷却水整流手段3では誘引装置40を有している。そして、この誘引装置40はそれ自体がダミー部材15を有している。
【0032】
誘引装置40は冷却装置2の下流位置に設置されている。そしてこの誘引装置40は、自らが有するダミー部材15を、冷却装置2の下流位置から搬送ライン5に沿って当該冷却装置15の内部へと進入させ、更にその上流部(入り口側)へ通り抜け出るように移動させたり、その後、元位置へ復帰移動させたりする(要するに冷却装置2を挟んでその下流部と上流部との間で行ったり来たりさせる)移動機構41を有している。
ダミー部材15を冷却装置2の上流側から下流側へ移動させるときの移動速度は、搬送ライン5によって圧延材Wが搬送されるときの搬送速度に等しくなるように設定されている。
【0033】
ダミー部材15を搬送ライン5に沿って移動させるための移動機構41としては、例えば多段式の伸縮機構や蛇腹による伸縮機構、リンク機構などの他、エア等の流体を供給したり排出したりして風船状の袋を伸縮させる機構、或いはリニアシリンダー等によるダミー部材15の自走機構などを採用することができる。
ダミー部材15は、圧延材Wの上面レベルに面一となる上面延長部材43と、圧延材Wの下面レベルに面一となる下面延長部材44とを有している。これら上下の延長部材43,44は上下に分離されている。しかし、移動機構41による移動は同時、同速、同方向において行われ、一体的な動きとなっている。
【0034】
そして図7(C)に示すように、冷却装置2の下流位置では、上面延長部材43は上方へ向けて待避可能とされ、また下面延長部材44は下方へ向けて待避可能になっている。これらの待避動作は、例えばボールねじ機構や流体圧シリンダ、ソレノイド等によって行われるようになっている。
なお、前記上面延長部材43及び下面延長部材44の両者が揃って、上方もしくは下方の一方側に待避するような構成であってもよい。
このような第4実施形態のオンライン加速冷却装置1では、熱間圧延された圧延材Wが搬送ライン5によって冷却装置2の上流側へ搬送されるまでに、冷却水整流手段3の誘引装置40が予め作動し、冷却装置2の上流位置(入り口部の外)に対してダミー部材15(上下の延長部材43,44)を移動機構41によって伸び出させ、待機させている。
【0035】
そしてこの誘引装置40は、ダミー部材15の待機位置まで圧延材Wが達したとき、圧延材Wのトップ部にダミー部材15が当接する状態を維持させながら、圧延材Wが冷却装置2内を走行する速度に合わせてダミー部材15を下流側へ向けて縮退移動させ、これによってダミー部材15で圧延材Wを先導させ、冷却装置2内を通過させる。この間の作用効果は第1実施形態で説明したものと同じである。
圧延材Wのトップ部が冷却装置2の出口側へと抜け出ると、ダミー部材15は上下の延長部材43,44として上下方向に相反する待避動作を行う。そのため、搬送ライン5を搬送される圧延材Wにとってこのダミー部材15が邪魔となることはなく、以後、冷却後の圧延材Wは搬送ライン5上を下流側工程へと搬送される。
【0036】
ところで、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態を示した平面図である。
【図2】冷却装置の内部構造例を示した側断面図である。
【図3】ダミー部材をダミー板とする場合の一例を示した側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示した平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示した平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示した平面図である。
【図7】第4実施形態の動作状況を説明した側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 オンライン加速冷却装置
2 冷却装置
3 冷却水整流手段
5 搬送ライン
6 上部スリットジェットノズル
7 下部スリットジェットノズル
10A 上部水切りロール
11A 下部水切りロール
14 ダミー取扱装置
15 ダミー部材
17 挿入装置
18 排出装置
19 返送装置
30 出し入れ装置
31 搬送制御装置
40 誘引装置
43 上面延長部材
44 下面延長部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延された圧延材(W)を搬送ライン(5)上で走行させつつ冷却水によって冷却する冷却装置(2)を備えた圧延材のオンライン加速冷却装置において、
圧延材(W)表面での冷却水の流れ状態を所定のものにすべく、圧延材(W)の先端部にダミー部材(15)を連結した上で当該圧延材(W)を冷却装置(2)内に導入する冷却水整流手段(3)を有することを特徴とする圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項2】
前記冷却水整流手段(3)は、当該ダミー部材(15)を冷却装置(2)の上流側で搬送ライン(5)へ供給すると共に、冷却装置(2)の下流側で排出させるダミー取扱装置(14)を有することを特徴とする請求項1に記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項3】
前記ダミー取扱装置(14)は、搬送ライン(5)に側方からダミー部材(15)を供給する挿入装置(17)と、搬送ライン(5)から側方へダミー部材(15)を取り出す排出装置(18)と、この排出装置(18)から挿入装置(17)へダミー部材(15)を返送する返送装置(19)とを有していることを特徴とする請求項2に記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項4】
前記ダミー取扱装置(14)は、冷却装置(2)の下流側で搬送ライン(5)に対して側方からダミー部材(15)の供給及び排出を行う出し入れ装置(30)と、前記搬送ライン(5)を制御して、当該出し入れ装置(30)により搬送ライン(5)上に供給されたダミー部材(15)を冷却装置(2)の上流側へ逆送りする搬送制御装置(31)とを有していることを特徴とする請求項2に記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項5】
前記冷却水整流手段(3)は、冷却装置(2)の下流側に設けられ且つ搬送ライン(5)に沿って移動自在となっているダミー部材(15)を備えた誘引装置(40)を有しており、該誘引装置(40)は、前記ダミー部材(15)を冷却装置(2)内を上流側へ向けて通過させ且つ冷却装置(2)に搬入前の圧延材(W)の前部へ待機させ、圧延材(W)が冷却装置(2)内を走行するときに圧延材(W)の先端部に当接状態で先導させると共に、その状態でダミー部材(15)を下流側へ向けて移動可能とすることを特徴とする請求項1に記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項6】
前記ダミー部材(15)は、圧延材(W)の上面に面一となる上面延長部材(43)と圧延材(W)の下面に面一となる下面延長部材(44)とを有しており、
前記上面延長部材(43)は冷却装置(2)の下流側において上方へ移動して待避可能であると共に、下面延長部材(44)は冷却装置(2)の下流側において下方へ移動し待避可能となっていることを特徴とする請求項5に記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項7】
前記ダミー部材(15)は、圧延材(W)と同一の厚み及び幅を有すると共に、圧延材(W)先端部の冷却水の流れ状態が圧延材(W)中途部と同一となるような長さを備えたダミー板であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項8】
前記冷却装置(2)は、圧延材(W)の上面へ向けて冷却水を吹き付ける上部スリットジェットノズル(6)とその下流方向に所定間隔をおいて設けられた上部水切りロール(10A)とを有すると共に、圧延材(W)の下面へ向けて冷却水を吹き付ける下部スリットジェットノズル(7)とその下流方向に所定間隔をおいて設けられた下部水切りロール(11A)とを備えていていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の圧延材のオンライン加速冷却装置。
【請求項9】
熱間圧延後に搬送ライン(5)を搬送中の圧延材(W)に対し、冷却水による冷却を行う直前にこの圧延材(W)の前方へ厚み及び幅が同一のダミー部材(15)を供給して圧延材(W)の先端部を疑似的に前方へ延長させた状態にさせ、この状態のままダミー部材(15)及び圧延材(W)を冷却水で冷却させ、冷却後にダミー部材(15)を取り除くことを特徴とする圧延材のオンライン加速冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−68794(P2006−68794A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257550(P2004−257550)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】