圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機
【課題】硬質材及び薄板材圧延のため、より小径の作業ロールを使用可能とし、高い生産性や高い製品品質の帯板を得ることができる圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機を提供する。
【解決手段】帯板1を圧延する上下1対の作業ロール2と、この上下1対の作業ロール2を支持する各々上下1対の中間ロール3と、この上下1対の中間ロール3を支持する各々上下1対の補強ロール4から成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機や中間ロールの無い4段式の圧延機において、前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、小径で超硬合金やセラミックス等の高い縦弾性係数の材質を使用した。
【解決手段】帯板1を圧延する上下1対の作業ロール2と、この上下1対の作業ロール2を支持する各々上下1対の中間ロール3と、この上下1対の中間ロール3を支持する各々上下1対の補強ロール4から成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機や中間ロールの無い4段式の圧延機において、前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、小径で超硬合金やセラミックス等の高い縦弾性係数の材質を使用した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ロールの小径化が図れる圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の所謂中間ロール駆動の6段式の圧延機(以下6段ミルと称す)において、作業ロール径の最小値は、当該作業ロールの圧延可能な板幅内,外にサポート(支持)ロールが無い場合、中間ロール駆動の接線力に耐える作業ロールたわみ剛性値により決まる。例えば、非特許文献1によると、4幅材(4feet)、中間ロール駆動でφ180〜φ380となっている。
【0003】
ここで作業ロール駆動の場合、前記接線力は働かないが、圧延機入、出側の差張力が働く。従って、駆動系の許容強度の範囲において、作業ロール径の最小値は、前記差張力に耐える作業ロールたわみ剛性値により決まり、少なくとも前記と同等の作業ロール径が可能となる。また、作業ロール駆動の場合、4段式の圧延機(以下4段ミルと称す)においても、この観点において少なくとも前記と同等の作業ロール径が可能となる。
【0004】
また、6段ミルとしては、従来、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有するものもあり、さらには、作業ロールの圧延可能な板幅外に支持ベアリングを設け、この支持ベアリングを介して作業ロールに水平曲げを加えるものが特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−50109号公報
【特許文献2】特開昭60−238021号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「産業機械」1991年5月号(56〜60頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近の需要に対応するため、より硬いステンレス鋼等の特殊鋼を、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有しない6段ミルや4段ミルで圧延しようとすると、前述した作業ロール径では、大き過ぎ、荷重が高く、必要な圧下量がとれないという問題や光沢不良等の問題があった。
【0008】
一方、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有する6段ミルや4段ミルは、サポートロール部のスペースが少なく、十分な強度及び剛性確保が難しく、また、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを支持するサポートベアリングが有るため、材料によってはそのサポートベアリングのマークがサポートロール及び作業ロールを介して板に転写・発生するという問題があった。
【0009】
また、作業ロールの圧延可能な板幅外に支持ベアリングを設けた圧延機は、いずれも上下同位相の支持ベアリングのため、サイズの大きなベアリングが使用できず、大きな水平力が生じる高荷重、高トルクの硬質材の圧延には採用することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑み提案されたもので、その目的は、硬質材圧延のためより小径の作業ロールを使用可能とし、高い生産性や高い製品品質の帯板を得ることができる圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明に係る圧延機は、
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の中間ロールと更にこの上下1対の中間ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【0012】
また、金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない4段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【0013】
また、前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0であることを特徴とする。尚、作業ロールが複合材ロールの場合は、この縦弾性係数は、等価縦弾性係数を使用すると好適である。
【0014】
上記の課題を解決するための本発明に係るタンデム圧延機は、
複数の圧延機スタンドを並べたタンデム圧延機において、前記何れか一つの圧延機を少なくとも1スタンド設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、作業ロールに高い縦弾性係数の材質を使用したことにより、作業ロールのたわみ剛性を確保してその高剛性分だけ、作業ロール径を小径にすることができ、エッジドロップ低減,表面光沢向上や最小圧延可能板厚みの低減が可能となると共に硬質材用の高荷重、高トルクの圧延機にも適用可能となる。特に、冷間圧延に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1を示す6段ミルの正断面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】複合ロールの説明図である。
【図4】入出側差張力の説明図である。
【図5】作業ロールのたわみ説明図である。
【図6】実施例1と従来の作業ロール最小径上限Dmaxの比較を示すグラフである。
【図7】同じく作業ロール最小径下限Dminの比較を示すグラフである。
【図8A】実施例1の応用例を示す作業ロールオフセットの説明図である。
【図8B】同じく作業ロールにかかる荷重の説明図である。
【図9A】実施例1の別の応用例を示す中間ロールオフセットの説明図である。
【図9B】同じく作業ロールにかかる荷重の説明図である。
【図10】実施例1のさらに別の応用例を示す6段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【図11】本発明の実施例2を示す4段ミルの正断面図である。
【図12】図11のXII-XII線断面図である。
【図13】実施例2の応用例を示す4段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【図14】本発明のタンデム圧延機への適用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1を示す6段ミルの正断面図、図2は図1のII-II線断面図、図3は複合ロールの説明図、図4は入出側差張力の説明図、図5は作業ロールのたわみ説明図、図6は実施例1と従来の作業ロール最小径上限Dmaxの比較を示すグラフ、図7は同じく作業ロール最小径下限Dminの比較を示すグラフ、図8Aは実施例1の応用例を示す作業ロールオフセットの説明図、図8Bは同じく作業ロールにかかる荷重の説明図、図9Aは実施例1の別の応用例を示す中間ロールオフセットの説明図、図9Bは同じく作業ロールにかかる荷重の説明図、図10は実施例1のさらに別の応用例を示す6段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
である。
【0019】
図1及び図2に示すように、被圧延材である帯板1は、上下1対の作業ロール2にて圧延される。この上下1対の作業ロール2は、各々上下1対の中間ロール3に接触支持され、この上下1対の中間ロール3は、各々上下1対の補強ロール4に接触支持される。
【0020】
上記上方の補強ロール4は、図示されていないベアリングを介して軸受箱17a,17cに支持され、この軸受箱17a,17cは、ウォームジャッキ又はテーパウエッジ及び段付ロッカープレート等のパスライン調整装置5a,5bを介してハウジング7(7a,7b)に支持されている。ここで、このパスライン調整装置5a,5bの内部にロードセルを内蔵させ圧延荷重を計測させても良い。
【0021】
上記下方の補強ロール4は、図示されていないベアリングを介して軸受箱17b,17dに支持され、この軸受箱17b,17dは、油圧シリンダー6(6a,6b)を介してハウジング7a,7bに支持されている。
【0022】
ここで、上下1対の作業ロール2は、高い縦弾性係数の材質を使用する。この高い縦弾性係数の材質としては、タングステンカーバイド(縦弾性係数;53,000kg/mm2)等の超硬合金やセラミックス(縦弾性係数;31,000kg/mm2)等がある。尚、従来材としては特殊鍛鋼(縦弾性係数;21,000kg/mm2)等が使用されていた。
【0023】
そして、前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0に設定されると好適である。
【0024】
また、図3に示すように、上下1対の作業ロール2として、ロール表層材2Aに高縦弾性材を使用し、ロール内層材2Bに従来材を使用したロール複合材を使用しても良い。この場合の縦弾性係数は、以下に示される等価縦弾性係数を使用する。
【0025】
即ち、ロール表層材2Aの外径をd2,縦弾性係数をE2とし、ロール内層材2Bの外径をd1,縦弾性係数をE1とすると、等価縦弾性係数Eeは、次の(1)式で表される。
Ee=(d14+(d24−d14)×E2/E1)/d24 (1)式
【0026】
更に、この上下1対の作業ロール2のロールネック部には、図示されていないベアリングを介して軸受箱13a〜13dが取り付けられている。これらの軸受箱13a〜13dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダー14a〜14dが備え付けられている。これにて作業ロール2にロールベンディングを付与する。
【0027】
ここで、圧延荷重は、油圧シリンダー6a,6bにて付与され、圧延トルクは図示されていないスピンドルより作業ロール2に伝達される。上下1対の中間ロール3は、前記帯板1の板幅中心に対して上下点対称のロール胴端部位置にロール径が減少するロール肩3aをそれぞれ有している。
【0028】
また、上下1対の中間ロール3は、図示されていないベアリングを介して軸受箱15a〜15dに支持されている。上下1対の中間ロール3は、駆動側軸受箱15c,15dを介して図示されていないシフト装置にて、軸方向に移動可能となっている。更に、これらの軸受箱15a〜15dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダー16a〜16dが備え付けられている。これにて中間ロール3にロールベンディングを付与する。
【0029】
ここで、図4及び図5を用いて圧延機入,出側の差張力による作業ロールのたわみについて説明する。
【0030】
まず、図4に示されるように、圧延機の入側張力をTb、出側張力をTfとすると、これらの差である差張力が、作業ロール2に加わる。この作業ロールの軸受けは、操作側と駆動側各1個であるため図5に示す単純支持の支持条件となる。この場合の作業ロールの水平たわみδsは、次の(2)式で表される。ここで、単位長さ当たりの差張力をF、支持間隔をL、従来の作業ロール2の直径をDc、従来の作業ロール径の断面2次モーメントをIc、従来の作業ロールの材質(特殊鍛鋼)の縦弾性係数(21,000kg/mm2)をEcとする。
δs=5×F×L4/(384×Ec×Ic) (2)式
ここで、Ic=π×Dc4/64
F=(Tf−Tb)/L/2
【0031】
ここで、上下1対の作業ロール2に、高い縦弾性係数の材質を使用する。この場合の作業ロール2の水平方向のたわみδrは、次の(3)式で表される。実施例の作業ロール2の直径をDr、実施例の作業ロール径の断面2次モーメントをIr、実施例の作業ロールの材質の縦弾性係数をErとする。
δr=5×F×L4/(384×Er×Ir) (3)式
ここで,Ir=π×Dr4/64
ここで,δr=δsとすると、Drは下記の(4)式で表される。
Dr=Dc/K(1/4) (4)式
【0032】
一方、作業ロールの最小ロール径は、同様に最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記の(5)式で表される。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4) (5)式
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
本実施例の板幅毎の最小径上限Dmax1を図6に示す。ただし、作業ロール材質は、超硬合金の場合としてK=2.5とした。
最小径下限Dmin1= D4min × B/K(1/4) (6)式
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
本実施例の板幅毎の最小径下限Dmin1を図7に示す。ただし、作業ロール材質は、超硬合金の場合としてK=2.5とした。
【0033】
このようにして、本実施例では、作業ロール2の圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段ミルにおいて、高縦弾性材の超硬合金やセラミックス材質の作業ロール2を使用するので、作業ロールのたわみ剛性を確保してその高剛性分だけ、作業ロール径を小径にでき、硬質材圧延において高い生産性や高い製品品質の帯板1を得ることができる。
【0034】
また、図8A,図8Bに示されるように、高縦弾性材の作業ロール2を水平方向の圧延方向入側に、入出側差張力(Tf−Tb)/2の大きさに応じ可変にオフセットさせても良い(図8A中のオフセット量α参照)。これにより、入出側差張力(Tf−Tb)/2は圧延荷重Qのオフセット水平方向分力Faにより減ぜられ、作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力は減ぜられる。図8B中Fbはオフセット垂直方向分力を示す。
【0035】
その結果、作業ロール2のたわみをより小さくできるメリットがある。
作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力;Fwは、次の(7)式で示される。
Fw=(Tf−Tb)/2−Q×α/((Dw+DI)/2) (7)式
ここで、作業ロール径はDw、中間ロール径はDIとする。
【0036】
また、図9A,図9Bに示されるように、中間ロール3を水平方向の圧延方向出側に、入出側差張力(Tf−Tb)/2の大きさに応じ可変にオフセットさせても良い(図9A中のオフセット量β参照)。これにより、入出側差張力(Tf−Tb)/2は圧延荷重Qのオフセット水平方向分力Faにより減ぜられ、高縦弾性材の作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力は減ぜられる。図9B中Fbはオフセット垂直方向分力を示す。
【0037】
その結果、作業ロール2のたわみをより小さくできるメリットがある。
作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力;Fwは、次の(8)式で示される。
Fw=(Tf−Tb)/2−Q×β/((Dw+DI)/2) (8)式
ここで、作業ロール径はDw、中間ロール径はDIとする。
【0038】
また、本実施例では、上下1対の作業ロール2は、軸方向にシフトする構造を示していないが、以下のように作業ロール2は、軸方向にシフト可能な構造としても良い。尚、作業ロールのシフト構造は、例えば特許文献2に示される構造がある。
【0039】
図10に示すように、上下1対の作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有している。また、上下1対の作業ロール2のロールネック部には、図示されていない軸受が操作側と駆動側に取り付けられている。上下1対の作業ロール2は、この図示されていない駆動側軸受を介して、図示されていないシフトシリンダーにより、軸方向に移動可能となっている。
【0040】
次に、先細り状のロール肩2aを持つ作業ロール2のシフトによるエッジドロップ低減方法について以下説明するが、先ず、作業ロール2は、上下点対称の方向に先細り状のロール肩2aが設けられ、このロール肩位置と板端までの距離をδw,δdとする。また、圧延機出側で操作側及び駆動側の板端部付近の1点又は複数の点の板厚みを測定する図示されていない板厚み計を設ける。
【0041】
そして、上記操作側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みより薄ければ、上作業ロール2をロール軸狭幅方向にシフトさせる。即ち、δwを大きくする方向に上作業ロール2をシフトさせるのである。また、逆に測定された板端部付近の板厚みが所定の板厚みより厚ければ、上作業ロール2をロール軸広幅方向にシフトさせる。即ち、δwを小さくする方向に上作業ロール2をシフトさせるのである。
【0042】
また、上記駆動側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みと異なる場合、同様に所定の板厚みとなるよう下作業ロール2をシフトさせる。元々高縦弾性材の作業ロール2の適用により作業ロール径を小径にすることができるため、その分圧延荷重を下げることができ、結果歩留り低下の原因となるエッジドロップと呼ばれる板端部の急激な減厚を低減可能である。
【0043】
この小径作業ロールと作業ロールシフトの併用により、先細り状のロール肩2aの最小化やシフト位置δw,dの最小化が可能となり、これらの値に敏感な割れ易い電磁鋼板等の脆性材料の圧延に特に好適である。尚、本図は、図1のミルを代表として記載しているが、図8の作業ロール可変オフセットミルや図9の中間ロール可変オフセットミルでも良い。
【0044】
また、本実施例では、上下1対の中間ロール3は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称のロール胴端部位置にロール径が減少するロール肩3aをそれぞれ有している例を示したが、上下1対の中間ロール3は、非特許文献1に示されるような帯板1の板幅中心に対して上下点対称のS字カーブロールクラウンを設け、軸方向にシフトさせる構造としても良い。この場合、ロール肩3aを持つ6段ミルよりも形状制御能力は劣るが、4段ミルよりも形状制御能力は優る。また、このミルに前述した図10に示される作業ロールシフトを適用しても良い。
【実施例2】
【0045】
図11は本発明の実施例2を示す4段ミルの正断面図、図12は図11のXII-XII線断面図、図13は実施例2の応用例を示す4段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【0046】
本実施例の圧延機は、図11,図12に示すように、4段圧延機であり、実施例1である6段圧延機から上下1対の中間ロール3及び同軸受箱15a〜15d、ベンディングシリンダー16a〜16d一式を取り除いた構成となる。この場合、板形状制御能力は大きく低下するが構造がより簡易なものになる。
【0047】
また、本実施例では、上下1対の作業ロール2は、軸方向にシフトする構造を示していないが、図13のように、作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有し、軸方向にシフト可能な構造としても良い。これによると、より簡易な構造でエッジドロップ低減が可能となる。
【0048】
また、前記応用例では、上下1対の作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有し、軸方向にシフト可能な構造の例を示したが、上下1対の作業ロール2は、非特許文献1に示されるような帯板1の板幅中心に対して上下点対称のS字カーブロールクラウンを設け、軸方向にシフトさせる構造としても良い。この場合、図13に示した4段ミルよりも形状制御能力は優る。
【0049】
また、本発明の小径作業ロール圧延機をタンデム圧延機に適用する場合、図14に示されるように、NO.1スタンドに適用すると、高縦弾性材の小径作業ロールにより、強圧下が可能となる。また、最終スタンド、本図ではNO.4スタンドに適用すると、高縦弾性材の小径作業ロールにより、より薄い板が圧延可能となる。無論全スタンドについて本発明の小径作業ロール圧延機を適用しても良い。これにより、より薄くて硬い材料が圧延可能となる。尚、本図では、本発明の小径作業ロール圧延機として、6段ミルを代表として表示したが、4段ミルでも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 帯板
2 作業ロール
3 中間ロール
4 補強ロール
5a,5b パスライン調整装置
6a,6b 油圧シリンダー
7a,7b ハウジング
13a〜13d 作業ロール軸受箱
15a〜15d 中間ロール軸受箱
17a〜17d 補強ロール軸受箱
14a〜14d 作業ロールベンディングシリンダー
16a〜16d 中間ロールベンディングシリンダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ロールの小径化が図れる圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の所謂中間ロール駆動の6段式の圧延機(以下6段ミルと称す)において、作業ロール径の最小値は、当該作業ロールの圧延可能な板幅内,外にサポート(支持)ロールが無い場合、中間ロール駆動の接線力に耐える作業ロールたわみ剛性値により決まる。例えば、非特許文献1によると、4幅材(4feet)、中間ロール駆動でφ180〜φ380となっている。
【0003】
ここで作業ロール駆動の場合、前記接線力は働かないが、圧延機入、出側の差張力が働く。従って、駆動系の許容強度の範囲において、作業ロール径の最小値は、前記差張力に耐える作業ロールたわみ剛性値により決まり、少なくとも前記と同等の作業ロール径が可能となる。また、作業ロール駆動の場合、4段式の圧延機(以下4段ミルと称す)においても、この観点において少なくとも前記と同等の作業ロール径が可能となる。
【0004】
また、6段ミルとしては、従来、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有するものもあり、さらには、作業ロールの圧延可能な板幅外に支持ベアリングを設け、この支持ベアリングを介して作業ロールに水平曲げを加えるものが特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−50109号公報
【特許文献2】特開昭60−238021号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「産業機械」1991年5月号(56〜60頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近の需要に対応するため、より硬いステンレス鋼等の特殊鋼を、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有しない6段ミルや4段ミルで圧延しようとすると、前述した作業ロール径では、大き過ぎ、荷重が高く、必要な圧下量がとれないという問題や光沢不良等の問題があった。
【0008】
一方、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを有する6段ミルや4段ミルは、サポートロール部のスペースが少なく、十分な強度及び剛性確保が難しく、また、作業ロールの圧延可能な板幅内にサポートロールを支持するサポートベアリングが有るため、材料によってはそのサポートベアリングのマークがサポートロール及び作業ロールを介して板に転写・発生するという問題があった。
【0009】
また、作業ロールの圧延可能な板幅外に支持ベアリングを設けた圧延機は、いずれも上下同位相の支持ベアリングのため、サイズの大きなベアリングが使用できず、大きな水平力が生じる高荷重、高トルクの硬質材の圧延には採用することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑み提案されたもので、その目的は、硬質材圧延のためより小径の作業ロールを使用可能とし、高い生産性や高い製品品質の帯板を得ることができる圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明に係る圧延機は、
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の中間ロールと更にこの上下1対の中間ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【0012】
また、金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない4段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【0013】
また、前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0であることを特徴とする。尚、作業ロールが複合材ロールの場合は、この縦弾性係数は、等価縦弾性係数を使用すると好適である。
【0014】
上記の課題を解決するための本発明に係るタンデム圧延機は、
複数の圧延機スタンドを並べたタンデム圧延機において、前記何れか一つの圧延機を少なくとも1スタンド設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、作業ロールに高い縦弾性係数の材質を使用したことにより、作業ロールのたわみ剛性を確保してその高剛性分だけ、作業ロール径を小径にすることができ、エッジドロップ低減,表面光沢向上や最小圧延可能板厚みの低減が可能となると共に硬質材用の高荷重、高トルクの圧延機にも適用可能となる。特に、冷間圧延に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1を示す6段ミルの正断面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】複合ロールの説明図である。
【図4】入出側差張力の説明図である。
【図5】作業ロールのたわみ説明図である。
【図6】実施例1と従来の作業ロール最小径上限Dmaxの比較を示すグラフである。
【図7】同じく作業ロール最小径下限Dminの比較を示すグラフである。
【図8A】実施例1の応用例を示す作業ロールオフセットの説明図である。
【図8B】同じく作業ロールにかかる荷重の説明図である。
【図9A】実施例1の別の応用例を示す中間ロールオフセットの説明図である。
【図9B】同じく作業ロールにかかる荷重の説明図である。
【図10】実施例1のさらに別の応用例を示す6段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【図11】本発明の実施例2を示す4段ミルの正断面図である。
【図12】図11のXII-XII線断面図である。
【図13】実施例2の応用例を示す4段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【図14】本発明のタンデム圧延機への適用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧延機及びそれを備えたタンデム圧延機を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1を示す6段ミルの正断面図、図2は図1のII-II線断面図、図3は複合ロールの説明図、図4は入出側差張力の説明図、図5は作業ロールのたわみ説明図、図6は実施例1と従来の作業ロール最小径上限Dmaxの比較を示すグラフ、図7は同じく作業ロール最小径下限Dminの比較を示すグラフ、図8Aは実施例1の応用例を示す作業ロールオフセットの説明図、図8Bは同じく作業ロールにかかる荷重の説明図、図9Aは実施例1の別の応用例を示す中間ロールオフセットの説明図、図9Bは同じく作業ロールにかかる荷重の説明図、図10は実施例1のさらに別の応用例を示す6段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
である。
【0019】
図1及び図2に示すように、被圧延材である帯板1は、上下1対の作業ロール2にて圧延される。この上下1対の作業ロール2は、各々上下1対の中間ロール3に接触支持され、この上下1対の中間ロール3は、各々上下1対の補強ロール4に接触支持される。
【0020】
上記上方の補強ロール4は、図示されていないベアリングを介して軸受箱17a,17cに支持され、この軸受箱17a,17cは、ウォームジャッキ又はテーパウエッジ及び段付ロッカープレート等のパスライン調整装置5a,5bを介してハウジング7(7a,7b)に支持されている。ここで、このパスライン調整装置5a,5bの内部にロードセルを内蔵させ圧延荷重を計測させても良い。
【0021】
上記下方の補強ロール4は、図示されていないベアリングを介して軸受箱17b,17dに支持され、この軸受箱17b,17dは、油圧シリンダー6(6a,6b)を介してハウジング7a,7bに支持されている。
【0022】
ここで、上下1対の作業ロール2は、高い縦弾性係数の材質を使用する。この高い縦弾性係数の材質としては、タングステンカーバイド(縦弾性係数;53,000kg/mm2)等の超硬合金やセラミックス(縦弾性係数;31,000kg/mm2)等がある。尚、従来材としては特殊鍛鋼(縦弾性係数;21,000kg/mm2)等が使用されていた。
【0023】
そして、前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0に設定されると好適である。
【0024】
また、図3に示すように、上下1対の作業ロール2として、ロール表層材2Aに高縦弾性材を使用し、ロール内層材2Bに従来材を使用したロール複合材を使用しても良い。この場合の縦弾性係数は、以下に示される等価縦弾性係数を使用する。
【0025】
即ち、ロール表層材2Aの外径をd2,縦弾性係数をE2とし、ロール内層材2Bの外径をd1,縦弾性係数をE1とすると、等価縦弾性係数Eeは、次の(1)式で表される。
Ee=(d14+(d24−d14)×E2/E1)/d24 (1)式
【0026】
更に、この上下1対の作業ロール2のロールネック部には、図示されていないベアリングを介して軸受箱13a〜13dが取り付けられている。これらの軸受箱13a〜13dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダー14a〜14dが備え付けられている。これにて作業ロール2にロールベンディングを付与する。
【0027】
ここで、圧延荷重は、油圧シリンダー6a,6bにて付与され、圧延トルクは図示されていないスピンドルより作業ロール2に伝達される。上下1対の中間ロール3は、前記帯板1の板幅中心に対して上下点対称のロール胴端部位置にロール径が減少するロール肩3aをそれぞれ有している。
【0028】
また、上下1対の中間ロール3は、図示されていないベアリングを介して軸受箱15a〜15dに支持されている。上下1対の中間ロール3は、駆動側軸受箱15c,15dを介して図示されていないシフト装置にて、軸方向に移動可能となっている。更に、これらの軸受箱15a〜15dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダー16a〜16dが備え付けられている。これにて中間ロール3にロールベンディングを付与する。
【0029】
ここで、図4及び図5を用いて圧延機入,出側の差張力による作業ロールのたわみについて説明する。
【0030】
まず、図4に示されるように、圧延機の入側張力をTb、出側張力をTfとすると、これらの差である差張力が、作業ロール2に加わる。この作業ロールの軸受けは、操作側と駆動側各1個であるため図5に示す単純支持の支持条件となる。この場合の作業ロールの水平たわみδsは、次の(2)式で表される。ここで、単位長さ当たりの差張力をF、支持間隔をL、従来の作業ロール2の直径をDc、従来の作業ロール径の断面2次モーメントをIc、従来の作業ロールの材質(特殊鍛鋼)の縦弾性係数(21,000kg/mm2)をEcとする。
δs=5×F×L4/(384×Ec×Ic) (2)式
ここで、Ic=π×Dc4/64
F=(Tf−Tb)/L/2
【0031】
ここで、上下1対の作業ロール2に、高い縦弾性係数の材質を使用する。この場合の作業ロール2の水平方向のたわみδrは、次の(3)式で表される。実施例の作業ロール2の直径をDr、実施例の作業ロール径の断面2次モーメントをIr、実施例の作業ロールの材質の縦弾性係数をErとする。
δr=5×F×L4/(384×Er×Ir) (3)式
ここで,Ir=π×Dr4/64
ここで,δr=δsとすると、Drは下記の(4)式で表される。
Dr=Dc/K(1/4) (4)式
【0032】
一方、作業ロールの最小ロール径は、同様に最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記の(5)式で表される。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4) (5)式
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
本実施例の板幅毎の最小径上限Dmax1を図6に示す。ただし、作業ロール材質は、超硬合金の場合としてK=2.5とした。
最小径下限Dmin1= D4min × B/K(1/4) (6)式
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
本実施例の板幅毎の最小径下限Dmin1を図7に示す。ただし、作業ロール材質は、超硬合金の場合としてK=2.5とした。
【0033】
このようにして、本実施例では、作業ロール2の圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段ミルにおいて、高縦弾性材の超硬合金やセラミックス材質の作業ロール2を使用するので、作業ロールのたわみ剛性を確保してその高剛性分だけ、作業ロール径を小径にでき、硬質材圧延において高い生産性や高い製品品質の帯板1を得ることができる。
【0034】
また、図8A,図8Bに示されるように、高縦弾性材の作業ロール2を水平方向の圧延方向入側に、入出側差張力(Tf−Tb)/2の大きさに応じ可変にオフセットさせても良い(図8A中のオフセット量α参照)。これにより、入出側差張力(Tf−Tb)/2は圧延荷重Qのオフセット水平方向分力Faにより減ぜられ、作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力は減ぜられる。図8B中Fbはオフセット垂直方向分力を示す。
【0035】
その結果、作業ロール2のたわみをより小さくできるメリットがある。
作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力;Fwは、次の(7)式で示される。
Fw=(Tf−Tb)/2−Q×α/((Dw+DI)/2) (7)式
ここで、作業ロール径はDw、中間ロール径はDIとする。
【0036】
また、図9A,図9Bに示されるように、中間ロール3を水平方向の圧延方向出側に、入出側差張力(Tf−Tb)/2の大きさに応じ可変にオフセットさせても良い(図9A中のオフセット量β参照)。これにより、入出側差張力(Tf−Tb)/2は圧延荷重Qのオフセット水平方向分力Faにより減ぜられ、高縦弾性材の作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力は減ぜられる。図9B中Fbはオフセット垂直方向分力を示す。
【0037】
その結果、作業ロール2のたわみをより小さくできるメリットがある。
作業ロール2にかかる水平方向のトータルの力;Fwは、次の(8)式で示される。
Fw=(Tf−Tb)/2−Q×β/((Dw+DI)/2) (8)式
ここで、作業ロール径はDw、中間ロール径はDIとする。
【0038】
また、本実施例では、上下1対の作業ロール2は、軸方向にシフトする構造を示していないが、以下のように作業ロール2は、軸方向にシフト可能な構造としても良い。尚、作業ロールのシフト構造は、例えば特許文献2に示される構造がある。
【0039】
図10に示すように、上下1対の作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有している。また、上下1対の作業ロール2のロールネック部には、図示されていない軸受が操作側と駆動側に取り付けられている。上下1対の作業ロール2は、この図示されていない駆動側軸受を介して、図示されていないシフトシリンダーにより、軸方向に移動可能となっている。
【0040】
次に、先細り状のロール肩2aを持つ作業ロール2のシフトによるエッジドロップ低減方法について以下説明するが、先ず、作業ロール2は、上下点対称の方向に先細り状のロール肩2aが設けられ、このロール肩位置と板端までの距離をδw,δdとする。また、圧延機出側で操作側及び駆動側の板端部付近の1点又は複数の点の板厚みを測定する図示されていない板厚み計を設ける。
【0041】
そして、上記操作側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みより薄ければ、上作業ロール2をロール軸狭幅方向にシフトさせる。即ち、δwを大きくする方向に上作業ロール2をシフトさせるのである。また、逆に測定された板端部付近の板厚みが所定の板厚みより厚ければ、上作業ロール2をロール軸広幅方向にシフトさせる。即ち、δwを小さくする方向に上作業ロール2をシフトさせるのである。
【0042】
また、上記駆動側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みと異なる場合、同様に所定の板厚みとなるよう下作業ロール2をシフトさせる。元々高縦弾性材の作業ロール2の適用により作業ロール径を小径にすることができるため、その分圧延荷重を下げることができ、結果歩留り低下の原因となるエッジドロップと呼ばれる板端部の急激な減厚を低減可能である。
【0043】
この小径作業ロールと作業ロールシフトの併用により、先細り状のロール肩2aの最小化やシフト位置δw,dの最小化が可能となり、これらの値に敏感な割れ易い電磁鋼板等の脆性材料の圧延に特に好適である。尚、本図は、図1のミルを代表として記載しているが、図8の作業ロール可変オフセットミルや図9の中間ロール可変オフセットミルでも良い。
【0044】
また、本実施例では、上下1対の中間ロール3は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称のロール胴端部位置にロール径が減少するロール肩3aをそれぞれ有している例を示したが、上下1対の中間ロール3は、非特許文献1に示されるような帯板1の板幅中心に対して上下点対称のS字カーブロールクラウンを設け、軸方向にシフトさせる構造としても良い。この場合、ロール肩3aを持つ6段ミルよりも形状制御能力は劣るが、4段ミルよりも形状制御能力は優る。また、このミルに前述した図10に示される作業ロールシフトを適用しても良い。
【実施例2】
【0045】
図11は本発明の実施例2を示す4段ミルの正断面図、図12は図11のXII-XII線断面図、図13は実施例2の応用例を示す4段ミルの作業ロールシフトの説明図である。
【0046】
本実施例の圧延機は、図11,図12に示すように、4段圧延機であり、実施例1である6段圧延機から上下1対の中間ロール3及び同軸受箱15a〜15d、ベンディングシリンダー16a〜16d一式を取り除いた構成となる。この場合、板形状制御能力は大きく低下するが構造がより簡易なものになる。
【0047】
また、本実施例では、上下1対の作業ロール2は、軸方向にシフトする構造を示していないが、図13のように、作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有し、軸方向にシフト可能な構造としても良い。これによると、より簡易な構造でエッジドロップ低減が可能となる。
【0048】
また、前記応用例では、上下1対の作業ロール2は、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2aをそれぞれ有し、軸方向にシフト可能な構造の例を示したが、上下1対の作業ロール2は、非特許文献1に示されるような帯板1の板幅中心に対して上下点対称のS字カーブロールクラウンを設け、軸方向にシフトさせる構造としても良い。この場合、図13に示した4段ミルよりも形状制御能力は優る。
【0049】
また、本発明の小径作業ロール圧延機をタンデム圧延機に適用する場合、図14に示されるように、NO.1スタンドに適用すると、高縦弾性材の小径作業ロールにより、強圧下が可能となる。また、最終スタンド、本図ではNO.4スタンドに適用すると、高縦弾性材の小径作業ロールにより、より薄い板が圧延可能となる。無論全スタンドについて本発明の小径作業ロール圧延機を適用しても良い。これにより、より薄くて硬い材料が圧延可能となる。尚、本図では、本発明の小径作業ロール圧延機として、6段ミルを代表として表示したが、4段ミルでも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 帯板
2 作業ロール
3 中間ロール
4 補強ロール
5a,5b パスライン調整装置
6a,6b 油圧シリンダー
7a,7b ハウジング
13a〜13d 作業ロール軸受箱
15a〜15d 中間ロール軸受箱
17a〜17d 補強ロール軸受箱
14a〜14d 作業ロールベンディングシリンダー
16a〜16d 中間ロールベンディングシリンダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の中間ロールと更にこの上下1対の中間ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする圧延機。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【請求項2】
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない4段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする圧延機。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【請求項3】
前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延機。
【請求項4】
複数の圧延機スタンドを並べたタンデム圧延機において、前記請求項1,2又は3に記載の圧延機を少なくとも1スタンド設けたことを特徴とするタンデム圧延機。
【請求項1】
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の中間ロールと更にこの上下1対の中間ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない6段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする圧延機。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【請求項2】
金属帯板を圧延する上下1対の作業ロールとその作業ロールを支持する上下1対の補強ロールから成り、前記作業ロールの圧延可能な板幅内,外に支持ロールを有しない4段式の圧延機において、
前記作業ロールが駆動されると共に、同作業ロールは、高い縦弾性係数の材質を使用し、その作業ロールの最小ロール径は、最小径上限Dmax1と最小径下限Dmin1間にあり、これらは下記式で表されることを特徴とする圧延機。
最小径上限Dmax1=D4max×B/K(1/4)
ここで、D4max ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径上限:φ380
B ; 板幅(mm)/1,300mm
K ; 高縦弾性材の従来材との比
(高縦弾性材の縦弾性係数/従来材の縦弾性係数(21,000kg/mm2))
最小径下限Dmin1= D4min×B/K(1/4)
ここで、D4min ; 従来板幅1,300mmの作業ロール最小径下限:φ180
【請求項3】
前記高縦弾性材の従来材との比(縦弾性係数比K)がK=1.2〜3.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延機。
【請求項4】
複数の圧延機スタンドを並べたタンデム圧延機において、前記請求項1,2又は3に記載の圧延機を少なくとも1スタンド設けたことを特徴とするタンデム圧延機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−25253(P2011−25253A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170815(P2009−170815)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】
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