説明

圧延機廻り用洗浄剤組成物

【課題】金属粉を多く含むスカム状汚れが多量に付着・堆積した機械廻り(特に油脂を含む圧延油を使用する圧延機廻り)の洗浄作業において、優れた洗浄効果を発揮するとともに、火災の危険性が低く、洗浄作業を容易であり、作業環境の改善を効率的に行なう達成できる圧延機廻り用洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)引火点が40〜100℃である石油系溶剤を30〜68.5重量%、(b)非イオン性アミン系界面活性剤を0.5〜5重量%、(c)非イオン性界面活性剤(但し、前記成分(b)を除く)を5〜10重量%、(d)陰イオン性界面活性剤を5〜10重量%、(e)防錆剤を1〜5重量%、(f)水を20〜58.5重量%、を含有し、成分(b)と成分(c)の重量比(成分(c)/成分(b))が2〜8であり、かつ、pHが8〜10である圧延機廻り用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機廻り用洗浄剤組成物に関する。本発明の洗浄剤組成物は、圧延、切削・研削加工を行う機械廻りに付着・堆積した金属粉を多く含むスカム状汚れの洗浄作業において用いられる。
【背景技術】
【0002】
圧延、切削・研削加工を行う工場では、火災の危険性軽減や作業環境の改善のため、工場の床や金属粉を多く含むスカム状汚れが付着・堆積した圧延機等機械廻りの汚れを除去する洗浄作業が定期的に実施されている。これらの洗浄作業には従来からケロシン等の炭化水素系溶剤やエマルション型洗浄剤やアルカリ性洗浄剤が用いられてきた。エマルション型洗浄剤は、ケロシン等の炭化水素系溶剤を界面活性剤で水に乳化分散させたものであり、アルカリ性洗浄剤は、界面活性剤とアルカリビルダーを主成分としたpH10以上のものである。しかし、ケロシン等の炭化水素系溶剤は引火点が低く、火災の危険性が高い等の問題点があり、アルカリ性洗浄剤は洗浄作業に保護具の着用が必要である等の作業性の問題点があり、またエマルション型洗浄剤は洗浄性能が十分でない等の問題点があった。
【0003】
このような課題を満足させるために、各種の工業用水溶性洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1、2)。特許文献1では、HLBの異なるポリオキシエチレンアルキルアミンを併用し、かつ金属イオン封鎖剤、水を所定の割合で含有し、有機溶剤は含有しない工業用水溶性洗浄剤組成物が提案されている。また、特許文献2では、引火点が100℃以上の有機溶剤、水を、乳化剤の存在下で混合した不燃性エマルション洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−013799号公報
【特許文献2】特開昭60−067600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1、2の工業用水溶性洗浄剤組成物は、引火性に伴う危険性、作業性等に関する問題点が解消されているが、洗浄性能に関しては、工場の床等の洗浄性能には優れるものの金属粉を多く含むスカム状汚れが多量に付着・堆積した機械廻りの洗浄効果は十分に満足するものではなかった。そのため、前記工業用水溶性洗浄剤組成物を用いたとしても、別途、ケロシン等の炭化水素系溶剤による洗浄を併用して行う必要であった。
【0006】
本発明は、金属粉を多く含むスカム状汚れが多量に付着・堆積した機械廻り(特に油脂を含む圧延油を使用する圧延機廻り)の洗浄作業において、優れた洗浄効果を発揮するとともに、火災の危険性が低く、洗浄作業が容易であり、作業環境の改善を効率的に行なうことができる、圧延機廻り用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、前記圧延機廻り用洗浄剤組成物を用いた圧延機廻りの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
(a)引火点が40〜100℃である石油系溶剤を30〜68.5重量%、
(b)非イオン性アミン系界面活性剤を0.5〜5重量%、
(c)非イオン性界面活性剤(但し、前記成分(b)を除く)を5〜10重量%、
(d)陰イオン性界面活性剤を5〜10重量%、
(e)防錆剤を1〜5重量%、および、
(f)水、20〜58.5重量%、
を含有し、成分(b)と成分(c)の重量比(成分(c)/成分(b))が2〜8であり、かつ、pHが8〜10である圧延機廻り用洗浄剤組成物、に関する。
【0008】
また本発明は、被洗浄物である圧延機廻りの汚れを、前記圧延機廻り用洗浄剤組成物により洗浄する工程を有する、圧延機廻りの洗浄方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は、引火点を検出しないため火災の危険性が低く、かつ圧延油等と混ざっても圧延油の性状(圧延油エマルションの粒子径等)に影響を与えないため、洗浄効率よく、圧延機廻りの汚れを、洗浄除去することができる。また、本発明の洗浄剤組成物によれば、金属粉、油分、金属石けん、水を多く含むスカム状汚れが多量に付着・堆積した機械廻り、特に油脂を含む圧延油を使用する圧延機廻りの洗浄作業において、優れた洗浄効果を発揮するとともに、洗浄作業を容易に行うことができ、作業環境の改善を効率的に達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の圧延機廻り用洗浄剤組成物は、成分(a)乃至成分(f)を所定量で含有し、かつ、成分(b)と成分(c)の所定の重量比率で含有する。
【0011】
成分(a)としては、引火点が40〜100℃である石油系溶剤が用いられる。成分(a)はスカム状汚れの溶解剤として作用するものであり、1種を単独で用いてもよく、前記汚れに応じて2種以上を組み合わせた混合物として用いることもできる。石油系溶剤の引火点は、火災危険性、圧延機汚れに対する洗浄性の点から、50〜100℃が好ましく、さらには60〜90℃であるのが好ましい。前記石油系溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素および芳香族炭化水素等の各種溶剤があげられる。成分(a)に係わる石油系溶剤の具体例としては、灯油、軽油が挙げられる。
【0012】
成分(a)の含有割合は、洗浄剤組成物の全量に対して30〜68.5重量%であり、40〜67重量%が好ましく、50〜65重量%がより好ましい。成分(a)の含有割合を前記範囲に調整することは、火災危険性、圧延機汚れの洗浄性の点から好ましい。
【0013】
成分(b)としては、非イオン性アミン系界面活性剤が用いられる。成分(b)は主として、スカム状汚れに存在する金属粉の分散剤として作用するものであり、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、後述する成分(c)に係る、他の非イオン性界面活性剤と併用することで圧延機汚れの洗浄性を向上させる。また、成分(b)である非イオン性アミン系界面活性剤のHLBは、金属粉の分散性の観点から、8〜16が好ましく、10〜15がより好ましい。
【0014】
非イオン性アミン系界面活性剤は、N原子に結合する3つの置換基として、少なくとも1つの直鎖、分岐鎖若しくは環状鎖のアルキル基またはアルケニル基と、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有するものである。アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、6〜20が好ましく、前記炭化水素基の炭素数の総数(炭化水素基が一つの場合はその炭化水素基の炭素数、炭化水素基が二つの場合は和)は、6〜40が好ましく、さらには10〜36であるのが好ましい。
【0015】
前記ポリオキシアルキレン基に係る、アルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基を例示できる。ポリオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基により形成されていてもよいが、2種以上のオキシアルキレン基のブロック体であってもよく、ランダム体でもよい。ポリオキシアルキレン基としては、洗浄性の観点からポリオキシエチレン基であることが好ましい。また、ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は、洗浄性の観点から5〜20が好ましく、6〜15がより好ましく、さらには7〜12がより好ましい。
【0016】
前記非イオン性アミン系界面活性剤としては、N原子に結合する3つの置換基として、少なくとも1つのアルキル基および/またはアルケニル基と、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する、下記の一般式(1):
【化1】


〔式中、Xは−H、−Rまたは−(AO)−Hを、R,Rはアルキル基および/またはアルケニル基、Aはアルキレン基、n,mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す〕で表されるポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)アミンが好ましい。前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)アミンの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンN−シクロヘキシルアミン、ポリオキシエチレンココナッツアミン等が挙げられる。一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)アミンのなかでも、スカム状汚れの洗浄性の観点からポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンココナッツアミンが好ましい。特に、スカム状汚れの洗浄性の観点からポリオキシアルキレンアルキルアミンであるポリオキシエチレンラウリルアミンが好ましい。
【0017】
成分(b)の含有割合は、洗浄剤組成物の全量に対して0.5〜5重量%であり、乳化性と分散性のバランスの点から、1〜4重量%が好ましく、1〜3重量%がより好ましい。
【0018】
成分(c)としては、成分(b)に係る非イオン性アミン系界面活性剤を除く、非イオン性界面活性剤が用いられる。成分(c)は水可溶化剤および圧延機汚れに対する乳化剤として作用するものであり、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、成分(c)のHLBは、水可溶化性や圧延機汚れの洗浄性および洗浄剤組成物を圧延油等の加工油に接触させた場合の加工油エマルションの性状安定性の観点から、6〜18が好ましく、10〜14がより好ましい。
【0019】
成分(c)に係る、非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン重合物等が挙げられる。
【0020】
成分(c)のなかでも、圧延機汚れの洗浄性の観点からポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)エーテルが好ましい。前記アルキル(および/またはアルケニル)基としては、例えば、炭素数8〜22、好ましくは10〜20、より好ましくは12〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル基および/またはアルケニル基が挙げられる。ポリオキシアルキレン基に係る、アルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基を例示できる。ポリオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基により形成されていてもよいが、2種以上のオキシアルキレン基のブロック体であってもよく、ランダム体でもよい。ポリオキシアルキレン基としては、洗浄性の観点からポリオキシエチレン基であることが好ましい。また、ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は、洗浄性の観点から2〜18が好ましく、6〜10がより好ましい。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキル(またはアルケニル)エーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルがあげられる。
【0022】
成分(c)の含有割合は、洗浄剤組成物の全量に対して5〜10重量%であり、水可溶化性や圧延機汚れの洗浄性および加工油エマルションの性状安定性の観点から6〜10重量%が好ましく、7〜10重量%がより好ましい。
【0023】
また、成分(b)と成分(c)は、重量比(成分(c)/成分(b))が2〜8、好ましくは2〜6、更に好ましくは3〜5の重量比率になるように用いられ。前記成分(b)と成分(c)を前記重量比率で併用することにより、スカム状汚れに係る、圧延機汚れの洗浄性を向上させることができる。
【0024】
成分(d)である陰イオン性界面活性剤は、水可溶化剤として作用するものであり、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(d)に係る陰イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩等が挙げられる。成分(d)は水可溶化性の観点からアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
【0025】
なお、塩としては、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩及び/又はアミン塩があげられるが、水可溶化性の観点から、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が好ましい。アミン塩としては、アルカノールアミン、1級アミン、2級アミン、および3級アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種との塩が挙げられる。例えば、アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。アルキル基の炭素数は8〜20が好ましく、10〜18がより好ましい。また、アルキル基は直鎖または分岐鎖のいずれでもよいが直鎖が好ましい。
【0026】
成分(d)の含有割合は、洗浄剤組成物の全量に対して5〜10重量%であり、水可溶化性の観点から6〜10重量%が好ましく、7〜10重量%がより好ましい。
【0027】
前記成分(e)である防錆剤は、鉄防錆性の観点から用いられる。成分(e)は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(e)の具体例としては、例えば、アミン系防錆剤、カルボン酸系防錆剤、エステル系防錆剤が挙げられる。アミン系防錆剤としては、アミン又はアミン塩が挙げられる。アミンとしては、アルカノールアミンが挙げられ、具体的にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンが挙げられる。アミン塩としては、前記アミンとカルボキシル基を有する化合物との塩が挙げられ、前記カルボキシル基を有する化合物としては、芳香族カルボン酸の中では、パラニトロ安息香酸、パラメチル安息香酸が挙げられ、脂肪族カルボン酸の中では、オレイン酸、ラウリン酸等の炭素数12〜18の脂肪族カルボン酸及びヘキサデセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸等の炭素数12〜18アルケニル基を有するアルケニルコハク酸が挙げられる。鉄防錆性の観点から、脂肪族カルボン酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。カルボン酸系防錆剤としては、前記アミン塩に用いられた芳香族カルボン酸及び、炭素数12〜18アルケニル基を有するアルケニルコハク酸が挙げられる。エステル系防錆剤としては、ソルビタンモノオレート等のエステル化物が挙げられる。なお、アルカノールアミン塩等の塩化合物は、洗浄剤組成物の調製にあたって、塩化合物を配合して用いることができる他、洗浄剤組成物を調製する際に前記カルボン酸とアルカノールアミン等をそれぞれ配合して、洗浄剤組成物の調製とともに塩を形成することもできる。
【0028】
成分(e)の含有割合は、洗浄剤組成物の全量に対して1〜5重量%であり、防錆性と洗浄剤組成物を接触させた時の加工油エマルションの性状安定性の観点から1.5〜4重量%が好ましく、2〜3重量%がより好ましい。
【0029】
成分(f)である水としては、イオン交換水、純水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。成分(f)の含有割合は、洗浄剤組成物に引火点を持たせないために洗浄剤組成物の全量に対して20〜58.5重量%であり、20〜40重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましい。
【0030】
成分(a)と成分(f)については、スカム状汚れの洗浄性と組成物に引火点を持たせないために、重量比(成分(a)/成分(f))は1〜3.3が好ましく、2.5〜3.2がより好ましい。
【0031】
本発明の圧延機廻り用洗浄剤組成物は、成分(a)乃至成分(f)を前記所定量で含有し、かつ、成分(b)と成分(c)を所定の重量比率で含有し、さらに、pHが8〜10に調整される。当該洗浄剤組成物のpHを範囲に制御することは、洗浄性と防錆性と作業性の点で好ましい。前記洗浄剤組成物のpHは、洗浄性の観点からは8.5〜10が好ましく、作業性の観点からは8〜9.5が好ましく、8〜9がより好ましい。
【0032】
本発明の圧延機廻り用洗浄剤組成物には、前記成分の他に必要に応じて公知の添加剤、例えば、酸化防止剤や防腐防黴剤等を添加することもできる。例えば、2,4−ジtert−ブチル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミン等の酸化防止剤、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オール、2−ヒドロキシメチルアミノエタノール等の防腐防黴剤を用いることができる。これら添加剤の割合は、洗浄剤組成物の全量に対して3重量%以下とするのが好ましい。
【0033】
本発明の圧延機廻り用洗浄剤組成物により、圧延機廻りの汚れを効率よく洗浄除去することができる。本発明の圧延機廻り用洗浄剤組成物を使用するに際しては、前記被洗浄物に対して、原液を直接塗布することもできるが、成分(f):水で希釈して用いることもできる。水により希釈して用いる場合にも、希釈液が、成分(a)乃至成分(f)の各成分の割合を満足するように、希釈液は調整される。汚れの洗浄除去は、被洗浄物に対して、洗浄剤組成物を塗布して暫く静置した後、モップ等で拭取るか水スプレーなどにより洗い流すことにより行うことが好ましい。
【実施例】
【0034】
実施例1〜10及び比較例1〜6
表1に示す各成分を、25℃において、マグネチックスターラー(長さ40mm撹拌子,回転数500rpm)により、10〜30分間混合して洗浄剤組成物1リットルを調製した。得られた各洗浄剤組成物について、下記に示す、(1)pHの測定、(2)引火点の測定、(3)洗浄性、(4)乳化安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0035】
(1)pHの測定
各洗浄剤組成物を、25℃で撹拌(長さ20mm撹拌子,回転数60rpm)しながら、東亜電波工業社製のpH計(HM−30)を用いて、pHを測定した。
【0036】
(2)引火点の測定
各洗浄剤組成物を、JIS法(JIS K2265)により引火点を測定した。表1中、引火点の欄の「−」は、引火点が検出されないことを示す。
【0037】
(3)洗浄性<試験例1(洗浄試験)>
下記洗浄条件により、汚れを塗布した試験片を洗浄液に浸漬して、下記に示す汚れ除去率により圧延機汚れの洗浄性を評価した。各洗浄液について3回試験を行った。その平均値を表1に示す。汚れ除去率が高い値を示せば圧延機汚れの洗浄性は良好である。
≪洗浄条件≫
試験片:SPCC−D材(50mm幅×100mm長×0.5mm厚)
汚れ種:圧延機廻り堆積スカム(金属分=30重量%、油分=20重量%、金属石鹸=10重量%、水分=40重量%。汚れ種は実際の圧延機廻りの汚れを回収し、試験に用いた。この割合は、回収した汚れを分析したものである。)
塗布量:1000g/m(均一塗布後,3日間常温乾燥)
洗浄液:洗浄剤組成物の原液
浸漬条件:25℃,静置(撹拌なし)、30分間
評価方法:汚れを塗布する前の試験片の重量(T)、試験片の洗浄前の重量(W1)、洗浄後の重量(W2)を測定し、下記式から汚れ除去率(%)を算出した。汚れ除去率(%)={(W1−W2)/(W1−T)}×100
【0038】
(4)乳化安定性<試験例2(乳化性試験)>
下記にて調製した圧延油エマルションに、洗浄液(洗浄剤組成物の原液)を、圧延油エマルションに対する割合が0.1重量%になるように混合した。洗浄液を混合する前と後の圧延油エマルションの体積平均粒子径を下記のコールターカウンターにて測定し、その前後の粒子径の変化量(粒子径の差)から乳化安定性を評価した。粒子径の変化量が小さい値を示せば乳化安定性は良好である。
≪圧延油エマルションの調製≫
市販のエステル系鋼板用冷間圧延油を、濃度4重量%になるように純水で希釈して、液温60℃の条件で、M型ホモミキサー(プライミクス社製)により、9000rpmで30分間撹拌して、体積平均粒子径が10μmである圧延油エマルション粒子の分散液を1リットル調製した。圧延油エマルションと洗浄液の混合物の体積平均粒子径と、圧延油エマルション中の圧延油エマルション粒子の体積平均粒子径の差の絶対値を表1に示す。
≪粒子径測定条件≫
測定器:コールターカウンターマルチサイザー(BECKMAN COULTER社製)
測定温度:25℃
アパーチャー径:100μm
測定液条件:圧延油エマルションまたは圧延油エマルションと洗浄液との混合物を約30μlをとり、血液希釈液(試薬,和光純薬工業社製)で100mlに希釈したものを用いた。
【0039】
【表1】

【0040】
なお、前記表1中の成分(a)に係る溶剤、成分(b)に係る非イオン性アミン系界面活性剤(油溶性分散剤)、成分(c)に係る非イオン性界面活性剤、成分(d)に係る陰イオン性界面活性剤、成分(e)に係る防錆剤、その他の添加剤は次のものを意味する。なお、成分(f)に係る水は、イオン交換水を用いた。なお、EOは、オキシエチレン基を示す。
溶剤A…ケロシン(引火点:44℃)(和光純薬工業社製,試薬)
溶剤B…混合炭化水素(引火点:64℃)(丸善石油化学社製,スワゾール1500)
溶剤C…混合炭化水素(引火点:82℃)(丸善石油化学社製,スワゾール1800)
油溶性分散剤A…ポリオキシエチレンラウリルアミン(EO平均付加モル数=7,HLB=12.1)(青木油脂工業社製,BLAUNON L−207)
油溶性分散剤B…ポリオキシエチレンラウリルアミン(EO平均付加モル数=10,HLB=13.6)(青木油脂工業社製,BLAUNON L−210)
油溶性分散剤C…ポリオキシエチレンココナッツアミン(EO平均付加モル数=12,HLB=14.0)(SINO−JAPAN CHEMICAL社製、SINOPOL 412)
非イオン性界面活性剤A…ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO平均付加モル数=8,HLB=10.0)(花王社製,エマルゲン 408)
非イオン性界面活性剤B…ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO平均付加モル数=7,HLB=12.1)(花王社製、エマルゲン 707)
非イオン性界面活性剤C…ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数=9,HLB=13.6)(花王社製,エマルゲン 109P)
陰イオン性界面活性剤A…ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩(固形分=70重量%)(花王社製,ネオペレックス C−70)
陰イオン系界面活性剤B…ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(固形分=65重量%)(花王社製,ネオペレックス G−65)
防錆剤A…オレイン酸トリエタノールアミン塩
防錆剤B…トリエタノールアミン
防錆剤C…ヘキサデセニルコハク酸(花王社製,L−ASA)
*:防錆剤Aと防錆剤Bは、オレイン酸(花王社製,ルナック O−P)と、トリエタノールアミン(和光純薬工業社製,試薬)とを1:1で、洗浄剤組成物中のオレイン酸トリエタノールアミン塩とトリエタノールアミンの総量が2重量%(オレイン酸トリエタノールアミン塩1.53重量%とトリエタノールアミン0.47重量%)となるようにして混合した。 添加剤A…酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)(エーピーアイコーポレーション社製,ヨシノックスBHT)
添加剤B…水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製,試薬)
添加剤C…エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製、試薬)
【0041】
HLBの値は、Griffin法の基準による。
【0042】
表1の結果から、本発明の洗浄剤組成物は、引火点が検出されず火災の危険性が低く、かつ、汚れ除去率が高く、また、粒子径の変化量が小さく、金属粉を多く含むスカム状汚れが付着・堆積した機械廻りの洗浄作業において、優れた洗浄性を満足していることが認められる。一方、比較例の洗浄剤組成物は本発明の洗浄剤組成物の各成分、含有量又は特定比率を満足できていないため、引火点を検出したり、汚れ除去率が低かったり、粒子径の変化量が大きかったりして、危険性の低さと洗浄性を満足するものはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)引火点が40〜100℃である石油系溶剤を30〜68.5重量%、
(b)非イオン性アミン系界面活性剤を0.5〜5重量%、
(c)非イオン性界面活性剤(但し、前記成分(b)を除く)を5〜10重量%、
(d)陰イオン性界面活性剤を5〜10重量%、
(e)防錆剤を1〜5重量%、および、
(f)水を20〜58.5重量%、
を含有し、成分(b)と成分(c)の重量比(成分(c)/成分(b))が2〜8であり、かつ、pHが8〜10である圧延機廻り用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(a)と成分(f)の重量比(成分(a)/成分(f))が1〜3.3である請求項1記載の圧延機廻り用洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(b)が下記の一般式(1):
【化1】


〔式中、Xは−H、−Rまたは−(AO)−Hを、R,Rはアルキル基および/またはアルケニル基を、Aはアルキレン基を、n、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す〕で表される請求項1または2記載の圧延機廻り用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記成分(c)がポリオキシアルキレンアルキル(および/またはアルケニル)エーテルである請求項1〜3のいずれかに記載の圧延機廻り用洗浄剤組成物。
【請求項5】
被洗浄物である圧延機廻りの汚れを、請求項1〜4のいずれかに記載の圧延機廻り用洗浄剤組成物による洗浄する工程を有する、圧延機廻りの洗浄方法。

【公開番号】特開2011−132302(P2011−132302A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290912(P2009−290912)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】