説明

圧接ジョイントコネクタ及びワイヤハーネス

【課題】分岐数が異なる分岐回路を、部品の種類や点数を増加することなく低コストで形成可能とする。
【解決手段】ハウジング2に収容される圧接端子を、隣接する一対の電線9,9を圧接可能な受け刃6が並設された二連端子とし、その二連端子5を、電線方向へ所定間隔をおいて電線との直交方向へ二列で複数個並列に、且つ両列間で二連端子5同士が電線1本分ずれて対向するように千鳥状に配置した。よって、複数の電線9を、ハウジング2への挿通方向で対向する任意の一対の二連端子5,5間に夫々布線して圧接し、圧接した任意の電線を二連端子5,5間で切断することで、複数の分岐回路が形成可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を略平行に挿通させ、内部に収容した圧接端子に電線を圧接して分岐回路を形成するための圧接ジョイントコネクタと、その圧接ジョイントコネクタを用いて分岐回路を形成するワイヤハーネスとに関する。
【背景技術】
【0002】
圧接ジョイントコネクタは、例えば特許文献1に示すように、両端に電線の挿入口を複数並設したハウジング内に、電線の圧接端子を複数収容して形成される。この圧接端子には、隣接する一対の電線を圧接する2つの刃部が電線との直交方向で連設されており、この圧接端子を一対、電線との直交方向で電線1本分位置をずらせて配置している。この圧接ジョイントコネクタを用いてワイヤハーネスに分岐回路を作成する場合は、3本の電線をハウジング内へ平行に挿通させて各圧接端子に2本の電線を圧接した状態で、圧接端子間の電線を切断することで、分岐数が3つの分岐回路が2組得られることになる。
【0003】
【特許文献1】特許第3541540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧接ジョイントコネクタにおいては、分岐数が異なる分岐回路を作成する場合、連設される刃部の数が異なる圧接端子を新たに作成して配置する必要があるため、部品の種類や点数が増加し、コストアップに繋がる。また、種類の増加によって部品管理の工数も増加し、部品管理に係る手間が煩雑化する。
【0005】
そこで、本発明は、分岐数が異なる分岐回路を、部品の種類や点数を増加することなく低コストで形成可能な圧接ジョイントコネクタと、その圧接ジョイントコネクタを用いたワイヤハーネスとを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、圧接ジョイントコネクタであって、圧接端子を、隣接する一対の電線を圧接可能な2つの受け刃が並設された二連端子とし、その二連端子を、電線方向へ所定間隔をおいて電線との直交方向へ二列で複数個並列に、且つ両列間で二連端子同士が電線1本分ずれて対向するように千鳥状に配置したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、柔軟な使用が可能となってコスト面でもより有利となる圧接ジョイントコネクタを得るために、ハウジングを、電線との直交方向へ並列配置される二連端子の列ごとに二分割したものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の目的に加えて、二連端子と電線との接続不良を効果的に防止するために、二連端子に、圧接した電線をかしめ固定するかしめ部を設けたものである。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、ワイヤハーネスであって、請求項1乃至3の何れかに記載の圧接ジョイントコネクタに、任意の数の複数の電線を、ハウジングへの挿通方向で対向する任意の一対の二連端子間に夫々布線して圧接し、圧接した任意の電線を二連端子間で切断することで、中間に複数の分岐回路を形成してなる構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び4に記載の発明によれば、分岐数が異なる分岐回路を、部品の種類や点数を増加することなく低コストで形成可能となる。また、使用する圧接端子が二連端子の一種類で済むので部品管理工数が増えることもない。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ハウジングを二分割したことで、分岐数が少ない場合では1個でも使用可能となり、車両の分岐数や分岐回路数に応じた柔軟な使用が可能となって部品点数の削減に繋がり、コスト面でより有利となる。また、ワイヤハーネスに沿わせて固定する場合はワイヤハーネスの曲線部に合わせて無理なく固定することができ、その他の場合でもコネクタの向きを変えたりねじったりすることで配置場所に合わせて設置できる、といった柔軟な対応が可能となり、設置がより容易に行える。さらに、コネクタ間での電線の切断も比較的広い空間で容易に行える。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、かしめ部の採用により、各電線の絶縁被覆が圧接端子に保持されて、ワイヤハーネスの運搬時や布線時に圧接部に外力が加わることがなく、接続不良のおそれがなくなる。特に、電線の径にかかわりなくかしめ固定できるため、汎用性も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
《形態1》
図1は、本発明の圧接ジョイントコネクタの一例を示す分解斜視図で、圧接ジョイントコネクタ1は、複数の略平行な収容溝3,3・・を長手方向に凹設した平面矩形状のハウジング2と、そのハウジング2への組み付け状態でハウジング2の上面を閉塞するカバー4とを備えている。5は、ハウジング2の収容溝3に配置される圧接端子で、この圧接端子5は、収容溝3方向でU字状の受け刃6,6を夫々前後に一対形成した金具を、収容溝3との直交方向に隣接する同士で連結した二連端子となっている(以下この圧接端子を「二連端子」という)。各二連端子5における収容溝3の端部側には、電線9の絶縁被覆をかしめ固定するかしめ部として、一対のインシュレーションバレル7,7が立設されている。
【0010】
また、ここでの二連端子5は、ハウジング2の長手方向の前後両端において、収容溝3と直交する短手方向へ二列となるように3個ずつ並列配置されると共に、両列間の二連端子5が収容溝3の1本分ずれて対向するように千鳥状に配置されている。各収容溝3の中央部底面には、ハウジング2の下方から電線9の両側に治具を挿入して電線9の交差布線を防ぐための透孔8,8・・が夫々穿設されている。
【0011】
以上の如く構成された圧接ジョイントコネクタ1に対して、ここでは7本の電線9,9・・が収容されている。すなわち、千鳥状配置によって前後の片側のみに二連端子5が収容される短手方向両端の収容溝3を含めた7つの収容溝3に、電線圧接装置の単一の圧接刃によって各電線9を夫々個別に圧接してインシュレーションバレル7,7でかしめるか、多連の圧接刃によって複数の電線9を夫々同時に圧接してインシュレーションバレル7,7でかしめるかすることで収容可能となる。
【0012】
こうして7本の電線9が圧接された状態で、所定の電線9の中間部を切断具で切断することで、種々の分岐回路を形成することができる。図2は、7本の電線を圧接ジョイントコネクタ1に収容して分岐回路を形成したワイヤハーネス10の概略図で、ここではL1〜L7で区別した7本の電線のうち、L4とL6との中間部を切断している。11,11・・は各電線L1〜L7の端部に接続したコネクタである。これにより、電線L1〜L4(左)による7本の分岐一つと、電線L4(右)〜L6(左)による4本の分岐一つと、電線L6(右)〜L7による3本の分岐一つとが得られる。12,12は二連端子5がないスルー回路となる。
【0013】
このように、上記形態1の圧接ジョイントコネクタ1及びそれを用いたワイヤハーネス10によれば、圧接端子を、隣接する一対の電線9,9を圧接可能な2つの受け刃6が並設された二連端子5とし、その二連端子5を、電線方向へ所定間隔をおいて電線との直交方向へ二列で複数個並列に、且つ両列間で二連端子5同士が電線1本分ずれて対向するように千鳥状に配置したことで、分岐数が異なる分岐回路を、部品の種類や点数を増加することなく低コストで形成可能となる。また、使用する圧接端子が二連端子5の一種類で済むので部品管理工数が増えることもない。
【0014】
図3(A)〜(F)は、上記形態1の圧接ジョイントコネクタに他の分岐回路を形成した実施例を示す概略図で、×印は切断を、右側の数字が分岐数を夫々示す。例えば同図(A)では、電線L2,3及びL5,6の中間部を切断することで、3,2,4,2,3の各分岐数が得られることを示している。また、同図(D)では、電線L2,3の中間部を切断して電線L5を当該位置の収容溝3に布線しないことで、3,2,3,4の各分岐数が得られることを示している。
このように、上記形態1では、各収容溝3において、1.電線を布線する、2.電線を布線して切断する、3.電線を布線しない、のうちの何れかを選択することで、3=2187通りの分岐形態が形成可能となる。よって、分岐回路の設計性が飛躍的に高まる。
【0015】
そして、ここでは二連端子5にインシュレーションバレル7を設けているため、各電線9の絶縁被覆が二連端子5に保持されて、ワイヤハーネス10の運搬時や布線時に圧接部に外力が加わることがなく、接続不良のおそれがなくなる。特に、電線の径にかかわりなくかしめ固定できるため、汎用性も得られる。
【0016】
《形態2》
次に、本発明の他の形態を説明する。なお、形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
図4に示す圧接ジョイントコネクタ20は、左側で電線との直交方向に並列配置される3つの二連端子5を収容する第1コネクタ21と、右側で電線との直交方向に並列配置される3つの二連端子5を収容する第2コネクタ22とに二分割されている。但しここでは、同一部品を互いに対向させて用いることで部品種類の合理化を図っている。第1、第2コネクタ21,22に用いられる二連端子5は、受け刃6の形態は図1と同じであるが、インシュレーションバレル7は長手方向の前後両端に夫々設けられている。
【0017】
図5は、この圧接ジョイントコネクタ20を用いたワイヤハーネス10aの概略図であるが、ここでも、第1、第2コネクタ21,22間で互いに直線状に位置を合わせた7つの収容溝3に対して二連端子5を千鳥状となるように配置して、各収容溝3において、1.電線を布線する、2.電線を布線して切断する、3.電線を布線しない、のうちの何れかを選択することで、2187通りの分岐形態が形成可能となる。電線の切断は、第1、第2コネクタ21,22の間の空間で行えばよいが、切断端部は、図4に示すように、対向する切断端部同士の接触によるショート等を防止するために各コネクタ内に収まるように短く切断している。
【0018】
このように、上記形態2の圧接ジョイントコネクタ20及びそれを用いたワイヤハーネス10aにおいても、分岐数が異なる分岐回路を、部品の種類や点数を増加することなく低コストで形成可能となり、部品管理工数が増えることもないという形態1と同様の効果が得られる。
特にここでは、圧接ジョイントコネクタ20を、電線9との直交方向へ並列配置される二連端子5の列ごとに二分割したことで、分岐数が少ない場合では1個でも使用可能となり、車両の分岐数や分岐回路数に応じた柔軟な使用が可能となって部品点数の削減に繋がり、コスト面でより有利となる。また、ワイヤハーネスに沿わせて固定する場合はワイヤハーネスの曲線部に合わせて無理なく固定することができ、その他の場合でもコネクタの向きを変えたりねじったりすることで配置場所に合わせて設置できる、といった柔軟な対応が可能となる。さらに、第1、第2コネクタ21,22間での電線の切断も比較的広い空間で容易に行える。
【0019】
なお、第1、第2コネクタ21,22は形態2のように同形状とするものに限らず、分岐数によっては形状を変えるようにしてもよい。例えば図6に示す圧接ジョイントコネクタ20aは、第2コネクタ22を二連端子5が2個のみ収容できるものとして、電線L2〜L5を圧接し、電線L4の中間部を切断することで、7本の分岐1つと5本の分岐1つを得るものである。このように分割した一方又は双方のコネクタを最小限必要な形態とすることで、圧接ジョイントコネクタ全体のコンパクト化や低コスト化が期待できる。
【0020】
また、形態1,2に共通した変更例として、圧接ジョイントコネクタに設ける収容溝の数は上記形態に限らず増減可能で、二連端子も、用いる電線の数や必要な分岐回路に応じて適宜増減可能である。受け刃の数や形状も変更して差し支えない。
さらに、インシュレーションバレルも、数を増やしたり、左右の爪を千鳥状に配置したり等の設計変更が可能で、省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】形態1の圧接ジョイントコネクタの分解斜視図である。
【図2】形態1の圧接ジョイントコネクタを用いたワイヤハーネスの概略図である。
【図3】(A)〜(F)は夫々分岐回路の実施例を示す概略図である。
【図4】形態2の圧接ジョイントコネクタの斜視図である。
【図5】形態2の圧接ジョイントコネクタを用いたワイヤハーネスの概略図である。
【図6】変更例の圧接ジョイントコネクタを用いたワイヤハーネスの概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1,20a・・圧接ジョイントコネクタ、2・・ハウジング、3・・収容溝、4・・カバー、5・・圧接端子(二連端子)、6・・受け刃、7・・インシュレーションバレル、8・・透孔、9・・電線、10,10a・・ワイヤハーネス、21・・第1コネクタ、22・・第2コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に複数の電線を略平行に挿通させ、内部に収容した圧接端子に前記電線を圧接して分岐回路を形成する圧接ジョイントコネクタであって、
前記圧接端子を、隣接する一対の電線を圧接可能な2つの受け刃が並設された二連端子とし、その二連端子を、前記電線方向へ所定間隔をおいて前記電線との直交方向へ二列で複数個並列に、且つ両列間で前記二連端子同士が電線1本分ずれて対向するように千鳥状に配置したことを特徴とする圧接ジョイントコネクタ。
【請求項2】
ハウジングを、電線との直交方向へ並列配置される二連端子の列ごとに二分割した請求項1に記載の圧接ジョイントコネクタ。
【請求項3】
二連端子に、圧接した電線をかしめ固定するかしめ部を設けた請求項1又は2に記載の圧接ジョイントコネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の圧接ジョイントコネクタに、任意の数の複数の電線を、ハウジングへの挿通方向で対向する任意の一対の二連端子間に夫々布線して圧接し、圧接した任意の電線を前記二連端子間で切断することで、中間に複数の分岐回路を形成してなるワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−59996(P2008−59996A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238018(P2006−238018)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】