説明

圧着葉書用紙の製造方法

【課題】カーテン塗布装置による圧着葉書用紙の製造方法において、均一な品質の製品を長時間安定に製造することを可能とする。
【解決手段】連続走行するウエッブにカーテンヘッドより落下する、通常の状態では粘着性も接着性も示さず加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着剤及び微粒子充填剤を主成分とする接着層用組成物からなる、カーテン膜を衝突させて塗布を行う、カーテン塗布装置による圧書葉書用紙の製造方法において、該接着層用組成物がアルキルセルロース化合物とアクリルアミド類モノマー(a)とアニオン性ビニルモノマー類(b)を反応して得られるアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂を含有することを特徴とする圧着葉書用紙の製造方法。及び該接着層用組成物が、HLB、11〜18の、一般式(1)で表されるアセチレングリコール誘導体を含有することを特徴とする請求項1記載の圧着葉書用紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着層の剥離強度の安定性及びバランスに優れた圧着葉書用紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、郵便法の改正に伴い、必要情報を記録した用紙を二つ折り(以下、4面タイプという)、又は4面タイプよりも情報を多く記録できる三つ折り(以下、6面タイプという)にした親展性をもつ圧着葉書用紙が実用化されている。このような親展性をもつ圧着葉書用紙は通常の状態では粘着性も接着性も示さず、加圧時に接着性を示し、且つ紙支持体の片面又は両面に圧着後に剥離可能な感圧接着剤を主成分とする接着層を設け、接着面同士を対向させて圧着した葉書用紙である。
【0003】
通常、親展性の圧着葉書用紙は、定形事項(内容説明、注意事項及び依頼事項等)を印刷した後、宛名面に住所や氏名を、接着面に必要とされる親展通信内容(暗証番号、会員番号、請求金額及び預金残高等)を、プリンターで印字し、外部から見えないように親展内容を内側に4面又は6面タイプとし、ドライシーラーで圧着して親展葉書とされる。受取人がこのような親展葉書の圧着部を剥離すれば、親展内容を見ることができる。一旦、親展葉書の圧着部を剥離すると、圧着部に接着性がないため、剥離された親展葉書は剥離前の状態に戻らない、即ち、再接着されない。このように、従来から用いられてきた通常の官製葉書と異なり、圧着葉書は情報の守秘性に優れている。又、剥離するという行為がギミック性(ダイレクトメール等で中身を見たくなる心理的効果のあること)に富んでいるために、圧着葉書の使用量は増加している。
【0004】
このような圧着葉書用紙に要求される品質としては、適正な剥離強度、優れた色インキ着肉性、優れた耐刷性、ミシン目加工による適切な折り適性、優れた接着層の耐ブロッキング性及びレーザープリンター印字時における接着層のプレヒート板への耐転移性等が挙げられる。これらの品質を得るには圧着葉書用紙の接着層の主成分である感圧接着剤と微粒子充填剤の選択が非常に重要となる。従来から感圧接着剤としては、主として天然ゴムにメタクリル酸メチル及びスチレン等の不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム誘導体が用いられている。その理由は、それらの天然ゴム誘導体が高度の自着力を持つため、互いに接触している状態でシートに圧力が加えられると、接着性は発現するがタック性も低い状態に維持されるからである。しかも、天然ゴムをグラフト化するモノマーが不飽和モノマーであると、分子の極性がより一層増大し、親水性物質に対するアンカーリング力がより一層増大する。
【0005】
圧着葉書用紙の接着層の主成分が天然ゴム該誘導体のみであると、印刷及び印字に対する適性が不足したり、ブロッキングが発生しやすくなる。そのため、通常、非晶質合成シリカ及び澱粉粒子で代表される微粒子充填剤が天然ゴム誘導体とともに接着層用組成物の主成分とされる。尚、経済性や安全性の理由から、通常、接着層用組成物は水性塗布方式で紙支持体上にに設けられる。水性塗布方式の中でも液性の異なる種々の水性塗布液でも塗り目方コントロールが容易であるため、エナナイフコーターが用いられることが多い。微粒子充填剤としては、接着面のブロッキング防止及びプレヒート板へ転写防止に効果が大であるために、比較的粒子径の大きな非晶質合成シリカや澱粉粒子等が用いられることが多い。尚、エアーナイフコーターでは、多量のエアーにより過剰の塗工液が掻き落とされて、計量により所望の塗布液量にコントロールされる。掻き落とされた塗工液は回収され、循環再使用される。このエアーナイフコーターでは、エアーにより粒子径の大きな微粒子充填剤が選択的に掻き落とされる現象、いわゆる分級作用が生じる。そのため、紙支持体に設けられた接着層には粒子径の大きな微粒子充填剤が少なくなり、接着層は相対的に感圧接着剤の比率が高くなる。接着層の感圧接着剤の比率が相対的に高くなるため、接着面にブロッキングが発生したり、プレヒート板へ接着層が転写したり、圧着後の剥離強度が強すぎる等の問題が発生する。
【0006】
水性塗布方式には、エアナイフ塗布方式以外にブレードコーター、バーコーター及びロールコーター等の塗工方式があるが、何れの方式もエアーナイフコーターよりも分級作用が顕著となる。その結果、塗工面にストリーク、バー又はロール状パターンを発生させることとなる。塗工液の循環再使用が関係して分級作用が顕著に発生するため、接着層の組成物の比率が大きく変化し、接着層の水性塗布液の粘度も大きく変化する。それらが原因して長時間塗布を継続すると、塗り目方を一定の範囲にコントロールすることが不可能となる。塗り目方が一定の範囲におさまらず大きく変動するため、剥離強度を一定の範囲に管理できない。親展性をもつ圧着葉書用紙、即ち、親展葉書においては、定形事項(内容説明、注意事項及び依頼事項等)を印刷した後、宛名面に住所や氏名を、接着面に個人の親展内容(暗証番号、会員番号、請求金額及び預金残高等)をプリンターで印字して、親展内容が外部から見えないように印字した接着面同士を内側にして、4面タイプ又は6面タイプにしてドライシーラーで圧着して作られる。このため、最初に、圧着葉書用紙の剥離強度が適性となるようにドライシーラー圧を設定した後に、圧着して数十万〜数百万枚の圧着葉書用紙を作製する。このように作製された圧着葉書用紙の剥離強度が一定の範囲におさまらないと、大きな問題が発生する。即ち、剥離強度が強すぎる場合には、受取人が剥離できず、親展内容を見ることができない。反対に、剥離強度が弱すぎる場合には、郵送中に自然剥離が起こり、親展内容が漏洩してしまう。
【0007】
塗工液の循環再使用が関係して分級作用が顕著に発生するのを防止するための製造方法としてカーテン塗布装置による製造方法が提案されている。この製造方法では、連続走行する紙支持体にカーテンヘッドにより落下するカーテン膜を衝突させて塗布を行う。この製造方法でエアーナイフコータ等に使用する塗布液を適用して良好なカーテン膜を形成することは不可能である。即ち、エアーナイフコータ等に使用する塗布液を適用した場合、塗布が長時間継続されると、カーテン膜に孔があき、カーテン膜が割れる現象(以下、「カーテン割れ現象」という)が起こる。このカーテン膜割れ現象が発生するため、長時間の塗布工程において均一な塗工面が得られず、均一な品質の製品を長時間安定に製造することが不可能となる。
【0008】
カーテン割れ現象を防止するための製造方法が、種々提案されている。それらの提案を以下に示す。
提案1:剥離可能な感圧接着剤と微粒子充填剤を主成分とする接着層用組成物に界面活性剤(アニオン系又はノニオン系)を含有させて、静的表面張力を40mN/m以下にする(特許文献1,2参照)。
提案2:塗工液を脱泡処理又は消泡処理して接着層の真比重を90%以上に調製する(特許文献3参照)。
それらの提案によると、塗工液の真比重の低下や界面活性剤による静的表面張力の低下には効果的がある。しかし、泡が立ちやすく、高シェアー時に適正な粘度を得ることができない。そのため、均一な品質の製品を長時間安定に製造することが不可能となる。
【特許文献1】特開2002−265900号公報
【特許文献2】特開2002−363893号公報
【特許文献3】特開2004−121934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カーテン塗布装置による圧書葉書用紙の製造方法において、均一な品質の製品を長時間安定に製造することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
連続走行する紙支持体にカーテンヘッドより落下する、感圧接着剤及び微粒子充填剤を主成分とする接着層用組成物からなる、カーテン膜を衝突させて塗布を行う、カーテン塗布装置による圧書葉書用紙の製造方法において、該接着層用組成物がアルキルセルロース化合物と、アクリルアミド類モノマー(a)とアニオン性ビニルモノマー類(b)を反応して得られる下記高分子一般式で表されるアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物を含有することを特徴とする圧着葉書用紙の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
但し、高分子一般式中、q、tはそれぞれ独立して正の整数を表す。pは1以上の整数を表す。但し、qとtの和にpを乗じた数値は10以上である。R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して、水素原子、1個以上のカルボキシ基又はスルホ基で置換されていてもよいアルキル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。但し、R4、R5、R6、R7で示される置換基の中に少なくとも1つのカルボキシ基又はスルホ基が含まれる。
【0013】
より好ましくは、該接着層用組成物が、HLB、11〜18の、一般式(1)で表されるアセチレングリコール誘導体を含有することを特徴とする圧着葉書用紙の製造方法。
【0014】
【化2】

【0015】
但し、一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。m及びnは正の整数を表す。
【発明の効果】
【0016】
カーテン塗布装置による圧書葉書用紙の製造方法において、均一な品質の製品を長時間安定に製造することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法に用いるカーテン膜は、感圧接着剤及び微粒子充填剤を主成分とする接着層用組成物からなる。接着層用組成物には更にアルキルセルロース化合物及びアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物を含有する。まず、アルキルセルロース化合物及びアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物から説明する。
【0018】
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ノルマルブチルセルロース及びイソブチルセルロースを例示できる。アルキルセルロース化合物はセルロース分子中の水酸基の一部がアルキルエーテル化され、且つ、アルキルエーテル化された箇所と別の箇所がアルキルエーテル化以外のエーテル化をされても良い。尚、水酸基のアルキルエーテル化度は、アルキルセルロース化合物の水溶性を左右する。そのため、アルキルセルロース化合物のアルキルエーテル化度は1.2〜2.2、特に1.4〜2.0が好ましい。更にアルキルセルロース化合物のセルロース分子中の水酸基の一部がアルキルエーテル化され、且つ、アルキルエーテル化された箇所と別の箇所がアルキルエーテル化以外のエーテル化、例えばベンジル化やフェニル化などをされる場合には、アルキルエーテル化以外のエーテル度は0.3以下が好ましい。
【0019】
更に、カーテン割れ現象の発生の防止により顕著な効果を得るため及びアルキルセルロース化合物の溶解性を更に一層良好にするため、アルキルセルロース化合物の2%水溶液の粘度は300mPa・s以上で、アルキルセルロース化合物の1%水溶液の粘度は6000mPa・s以下が好ましい。又、カーテン割れ現象の発生の防止に顕著な効果を得るため及び塗工された接着層面の圧着後における耐水性を良好なものとするために、アルキルセルロース化合物は感圧接着剤100質量部に対して3〜20質量部、更には5〜15質量部、特に7〜10質量部が好ましい。ここで粘度とは、20℃におけるB型粘度計60rpmの測定値である。
【0020】
本発明に用いるアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物中の(a)成分であるアクリルアミド類モノマーとしては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドが好ましく、又N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドの何れか1種以上をアクリルアミド、メタクリルアミドと混合して使用することができる。
【0021】
また、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物中の(b)成分であるアニオン性ビニルモノマー類としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、3−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、4−ヘキセン−1,1,6,6−テトラカルボン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、α−フェニルビニルホスホン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはイタコン酸、アクリル酸及びそれらの塩類であり、特にイタコン酸及びそれらの塩類が好ましい。
【0022】
アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物は感圧接着剤100質量部に対して0.05〜1質量部、更には0.1〜0.3質量部、特に0.15〜0.2質量部が好ましい。0.05質量部未満ではカーテン割れ現象が見られ、1質量部を越えると塗工された接着層面の耐刷性が低下する。
【0023】
本発明においては、接着層用組成物に上記一般式(1)で表されるアセチレングリコール誘導体を含有させるとより好ましい。2種以上のアセチレングリコール誘導体を含有させてもよい。カーテン割れ現象の発生の防止により顕著な効果を得るため及び塗工された接着層面の色インキ印刷時の耐刷性をより良好にするため、そのHLBが11〜18であるものが更に好ましい。以下に例示する。尚、HLBは構造式1で11、構造式2で13、構造式3で18及び構造式4で15である。
【0024】
【化3】

【0025】
カーテン割れ現象の発生の防止により顕著な効果を得るため及び塗工された接着層面の
耐刷性をより良好にするため、構造式1乃至4等のアセチレングリコール誘導体を含有させる場合は、感圧接着剤100質量部に対して1〜20質量部、更には3〜15質量部、特に5〜10質量部が好ましい。
【0026】
次に感圧接着剤等の説明に移る。本発明に用いる感圧接着剤を含有する圧書葉書用紙は、通常の状態では粘着性も接着性も示さず加圧により剥離可能な接着性を示すものである。
【0027】
本発明に使用する感圧接着剤の具体例としては、例えば天然ゴム、変性天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂及び熱可塑性エラストマー等が挙げられ、それらがエマルジョンの形態で単独又は2種以上混合されて用いられる。それらの中で、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合した天然ゴムエマルジョンが好ましい。但し、本発明の製造方法は感圧接着剤の種類によらず好ましく適用される。
【0028】
微粒子充填剤としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、酸性白土、活性白土、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、尿素ホルマリン樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリスチレン樹脂等を例示でき、それらを単独で用いるか2種以上併用できる。但し、本発明の製造方法は微粒子充填剤の種類によらず好ましく適用される。
【0029】
微粒子充填剤の結着剤としては、結着能及び皮膜形成能を有する公知の天然高分子物質、天然高分子変性物質(半合成物質)及び合成物質が用いられる。天然高分子物質としては、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ及びコーンスターチ等の澱粉類、デキストリン、キサンタンガム及びレバン等のホモ多糖類、デキストリン、カードラン及びザンタンガム等の微生物粘物質であるヘテロ糖類並びにゼラチン、カゼイン、膠及びコラーゲン等の蛋白質が例示される。
【0030】
半合成物質としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース等の繊維素誘導体並びにカルボキシメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム及びヒドロキシエチルグアーガム等の変性ガム並びに白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリディシュガム、酵素デキストリン、シャーディンガーデキストリン、可溶化澱粉、ジアルデヒド澱粉、変性α化澱粉、無変性α化澱粉、リン酸澱粉、脂肪酸澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等の加工澱粉が挙げられる。
【0031】
合成物質としては、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部分ケン化物及びポリ(メタ)アクリルアマイド等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体の親水性高分子並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレンブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリル酸メチルブタジエン共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体等のラテックス類が例示される。それらは単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0032】
更に、接着層用組成物には、帯電防止剤、蛍光増白剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤又は着色染料を混合することもできる。
【0033】
本発明に用いる接着層用組成物(以下、接着層用塗工液とも呼ぶ。)の質量固形分濃度は特に限定されない。しかし、連続走行する紙支持体にカーテンヘッドより落下するカーテン膜を衝突させて塗布するカーテン塗布装置において、カーテン膜形成上、ある一定以上の粘性があることが望ましい。具体的には、B型粘度では50mPa・s以上、特に150〜400mPa・sが好ましく、1000rpm時の高シェアー粘度は25mPa・s以上、特に30〜80mPa・sが好ましい。
【0034】
接着層用塗工液を紙支持体の片面又は両面に塗布し接着層を設け、圧着葉書用紙を得る。その紙支持体は酸性紙、中性紙又はアルカリ性紙で、木材パルプ及び内填用白色顔料を主成分として構成され、長網抄紙機、円網抄紙機及びツインワイヤー抄紙機等の抄紙機で抄造される。木材パルプとしてはLBKP及びNBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP及びCGP等の機械パルプ並びにDIP等の故紙再生パルプ等が例示できる。これらのパルプは抄紙適性、塗工適性及び印刷適性等を維持するために叩解機で叩解度が、通常、150〜500ml、CSF(カナディアン・スタンダード・フリーネス:JIS P−8121に規定)に調整される。又、内填用白色顔料は不透明性及び印刷適性を維持するために用いられる。内添用白色顔料としてはタルク、焼成カオリン、炭酸カルシウム及び二酸化チタン等が挙げられる。これらの内添用白色顔料をパルプ100質量部に対して5〜30質量部、特に10〜20質量部混合するのが好ましい。更にそれらにサイズ剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤又は紙力増強剤等を添加できる。
【0035】
本発明に使用するカーテン塗布装置としては、エクストルージョンホッパー型カーテン塗工装置及びスライドホッパー型カーテン塗工装置等が挙げられ、特に限定されないが、後述の実施例ではエクストルージョンホッパー型カーテン塗布装置を使用する。
【0036】
次に、後述の実施例で用いられているエクストルージョンホッパー型カーテン塗布装置について説明する。調製された接着層用塗工液は塗工液タンクから定量ポンプによって給液ヘッドへ送られる。ここで、送液量は最終製品の塗工量と比例関係にあるため、給液ヘッドへの送液量は精度よくコントロールされる必要がある。送液ポンプとしては可変型無脈流定流量ポンプを使用する。給液ヘッドは内部にマニホールドを有し、下方に高精度のスリットを有している。供給された塗工液がマニホールド内に満たされることにより、塗工液供給の際の動圧がなくなる。動的平衡状態に達すると、マニホールド内に満たされることにより、塗工液の流量とスリットから流出する流量は完全に一致してマニホールド内の液面高さが一定に保たれるため、重力によってスリットより流出する塗工液が巾方向に均一に流出し、カーテン膜を形成する。
【0037】
この際、カーテン膜の液膜としての安定性を高めるため、カーテンの両端をあたかも支持するようにガイド棒が設けられる。スリットの巾は0.1〜1.0mm、更に0.2〜0.6mm、特に0.2〜0.4mmが好ましい。塗工液の落下するカーテン膜は連続走行している紙支持体と衝突し、紙支持体に塗工される。尚、紙支持体の巾を越えて流下する塗工液は受液槽に回収され、塗工液タンクに送られる。紙支持体の巾を越えてカーテン膜を形成する理由は、カーテン膜の両端部において通常、発生する塗膜の厚塗りを防止するためである。尚、通常、落下カーテン膜と紙支持体との衝突部(以下、「塗工部」という)の上流側には遮風板が設けられ、紙支持体に同伴される空気流を遮断して落下カーテン膜が乱されることなく確実に紙支持体に到達するように配慮されている。
【0038】
又、通常、紙支持体の搬送方向も塗工部の直前でローラーにより方向転換されていて、これにより、塗工部に対する同伴空気流の影響が最小限になるように配慮されている。更に、通常、紙支持体の走行速度は200〜1000m/分、落下するカーテンの液流量は1分間に6〜18リットル/mである。
【0039】
以下、実施例と比較例により、本発明の顕著な効果を示す。尚、以下において部はすべて質量部であり、%はすべて質量%である。
【実施例1】
【0040】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
調液水415部を撹拌下、非晶質合成シリカ粉末(トクヤマ製:ファインシールX37B)50部、非晶質合成シリカ粉末(トクヤマ製:ファインシールX12)50部、メタクリル酸メチルを25%グラフト重合した50%変性天然ゴムエマルジョン200部(質量固形分100部)、10%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製:NM−14)水溶液150部(質量固形分15部)、50%スチレンブタジエン共重合体ラテックス20部(質量固形分10部)、2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)、20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度4000mPa・s、アクリルアミド6部:アクリル酸3部:プロピレン−2−スルホン酸ナトリウム1部を使用して合成し、分子量測定や組成分析より、高分子一般式に含まれる組成である事を確認。)10部(質量固形分2.0部)を徐々に添加・混合し希釈水で20%固形分濃度に調整して接着層用塗工液を得た。この塗工液のB型粘度は210mPa・sである。なお、これを用いたカーテン塗工による圧着葉書用紙の製造については他の実施例や比較例による製造と合わせて後で述べる。
【実施例2】
【0041】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例1の20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂を20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度3100mPa・s、アクリルアミド6部:イタコン酸3.5部:プロピレン−2−スルホン酸ナトリウム0.5部を使用して合成。分子量測定や組成分析より、高分子一般式に含まれる組成である事を確認。)に同量置き換えた以外は実施例1と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は215mPa・sである。
【実施例3】
【0042】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例1の20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂を20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度4700mPa・s、アクリルアミド4.5部、イタコン酸4.5部:プロピレン−2−スルホン酸ナトリウム0.5部:メチレンビスアクリルアミド0.5部を使用して合成。分子量測定や組成分析より、高分子一般式に含まれる組成である事を確認。)に同量置き換えた以外は実施例1と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は220mPa・sである。
【実施例4】
【0043】
実施例1の20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂を20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度3800mPa・s、アクリルアミド5部:プロピレン−2−スルホン酸ナトリウム5部を使用して合成。分子量測定や組成分析より、高分子一般式に含まれる組成である事を確認。)に同量置き換えた以外は実施例1と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は212mPa・sである。
【実施例5】
【0044】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)を1%メチルセルロース水溶液(B型粘度6000mPa・s)500部(質量固形分5部)に置き換えた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は265mPa・sである。
【実施例6】
【0045】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)を1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液(B型粘度5000mPa・s)500部(質量固形分5部)に置き換えた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は250mPa・sである。
【実施例7】
【0046】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)を1%ヒドロキシエチルメチルセルロース水溶液(B型粘度6000mPa・s)500部(質量固形分5部)に置き換えた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は297mPa・sである。
【実施例8】
【0047】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の接着層用塗工液(B型粘度215mPa・s)に構造式1のアセチレングリコール誘導体50%水溶液10部(質量固形分5部)を添加した以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は210mPa・sである。
【実施例9】
【0048】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の接着層用塗工液(B型粘度215mPa・s)に構造式2のアセチレングリコール誘導体50%水溶液10部(質量固形分5部)を添加した以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は210mPa・sである。
【実施例10】
【0049】
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の接着層用塗工液(B型粘度215mPa・s)に構造式3のアセチレングリコール誘導体50%水溶液10部(質量固形分5部)を添加した以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は215mPa・sである。
【0050】
(比較例1)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例1の2%メチルセルロース水溶液を除いた以外は実施例1と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は30mPa・sである。
【0051】
(比較例2)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の2%メチルセルロース水溶液を除いた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は30mPa・sである。
【0052】
(比較例3)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度3100mPa・s)を除いた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は120mPa・sである。
【0053】
(比較例4)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例2の2%メチルセルロース水溶液と20%アニオン性ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(B型粘度3100mPa・s)を除いた以外は実施例2と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は35mPa・sである。
【0054】
(比較例5)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例6の2%メチルセルロース水溶液を除いた以外は実施例6と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液のB型粘度は30mPa・sである。
【0055】
(比較例6)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例6の2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)を2%ヒドロキシエチルセルロース水溶液(B型粘度6000mPa・s)500部(質量固形分10部)に置き換えた以外は実施例6と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液の塗抹直前のB型粘度は215mPa・sであるが、10時間後のB型粘度は58mPa・sに低下した。
【0056】
(比較例7)
〔圧着葉書用紙用塗工液の作製〕
実施例6の2%メチルセルロース水溶液(B型粘度300mPa・s)500部(質量固形分10部)を2%カルボキシメチルセルロース水溶液(B型粘度6000mPa・s)500部(質量固形分10部)に置き換えた以外は実施例6と同様の方法で該接着層用塗工液を得た。該塗工液の塗抹直前のB型粘度は235mPa・sであるが、10時間後のB型粘度は79mPa・sに低下した。
【0057】
実施例1〜10、比較例1〜7で得た該接着層用塗工液をカーテン塗工し、2面タイプ圧着葉書用紙を得た。下記方法により測定・評価した。
【0058】
測定・評価方法
《粘度》
B型粘度:B型粘度計(TOKIMEC製BM型)60rpm1分値の粘度を示す。
【0059】
《カーテン割れ現象の有無(個数)》
エクストルージョンホッパー型カーテン塗工装置(スリット巾0.3mm)を使用し、塗工液流量は1分間に10リットル/m巾、塗工速度400m/分で10時間運転した時のカーテン割れ現象の有無を観察して、カーテン割れの個数を示す。
【0060】
《2面タイプ圧着葉書用紙の作製》
138g/m2の上質紙にエクストルージョンホッパー型カーテン塗工装置(スリット巾0.3mm)を使用し、塗工開始時の塗工液流量を1分間に10リットル/m巾(乾燥質量固形分塗工量が5.0g/m2)、塗工速度400m/分に設定後、10時間塗工・乾燥して接着層を設けた後、ソフトカレンダーでベック式平滑度が15〜20秒となるように処理して2面タイプ圧着葉書用紙を得た。
【0061】
《乾燥重量固形分塗工量》
蛍光X線分析装置(理学電気工業製)により、塗工開始直後及び塗工10時間後の塗工量を求めた。
【0062】
《剥離強度》
23℃50%RHの室内で接着層面を内側にしてV状に巾102mm×長さ152.4mmの大きさとなるように折合わせ、ドライシーラー(PRESSLE multi 6852T)の加圧目盛り18に設定して圧着し、次いで該圧着葉書用紙を巾25mm×150mmの大きさに切り、2時間放置後、圧着部を引張速度300mm/分のテンシロン万能引張試験器(熊谷理器工業製)によりT字剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0063】
以上の測定・評価結果を纏めて表1、表2に示した。又、表2に総合評価を示した。
◎印:カーテン割れは全く起きず、塗工量は一定であり剥離強度も安定で優れている。
○印:カーテン割れは僅かに起こるが、塗工量は一定であり剥離強度も安定で優れている。
△印:塗工はできるが、剥離強度の安定性に欠け、実用的ではない。
×印:塗工できない。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行する紙支持体にカーテンヘッドより落下する、感圧接着剤及び微粒子充填剤を主成分とする接着層用組成物からなる、カーテン膜を衝突させて塗布を行う、カーテン塗布装置による圧書葉書用紙の製造方法において、該接着層用組成物がアルキルセルロース化合物と、アクリルアミド類モノマー(a)とアニオン性ビニルモノマー類(b)を反応して得られる下記高分子一般式で表されるアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂組成物を含有することを特徴とする圧着葉書用紙の製造方法。
【化1】

(高分子一般式中、q、tはそれぞれ独立して正の整数を表す。pは1以上の整数を表す。但し、qとtの和にpを乗じた数値は10以上である。R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して、水素原子、1個以上のカルボキシ基又はスルホ基で置換されていてもよいアルキル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。但し、R4、R5、R6、R7で示される置換基の中に少なくとも1つのカルボキシ基又はスルホ基が含まれる。)
【請求項2】
接着層用組成物が、HLB、11〜18の、一般式(1)で表されるアセチレングリコール誘導体を含有することを特徴とする請求項1記載の圧着葉書用紙の製造方法。
【化2】

[但し、一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。m及びnは正の整数を表す。]

【公開番号】特開2006−274480(P2006−274480A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94422(P2005−94422)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】