説明

圧縮成形のための成形材料の重力射出および関連する方法

成形装置は、底部プラテン、底部プラテンにより保持された底部型部分、および底部プラテン及び底部型部分の上に存在する頂部プラテンを含む。頂部プラテンは、それを通じて延在する、成形材料を受け入れるスロットを含む。成形材料は、底部型部分に重力により堆積される。頂部型部分は頂部プラテンにより保持され、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションの間で可動である。アクチュエーターは、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションの間で頂部型部分を動かすために頂部型部分に結合される。 成形材料ロードポジションは、成形材料が、底部型部分の中に重力により堆積されるように頂部型部分が底部型部分上に存在しない時に対応している。成形品形成ポジションは、頂部型部分が、成形品を成形するための底部型部分上に存在する時に対応している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月21日に出願された米国の仮出願番号60/939,155の利益を要求し、ここに参照により全体の内容が組み込まれる。
【0002】
本発明は、成形の分野に関連し、特に、圧縮成形に関する。
【背景技術】
【0003】
圧縮成形では、予熱された熱可塑性の材料のかたまりまたは平板は、熱可塑性の材料を所望の部品または形状に圧縮する2つの適合する型の間で圧縮される。型が閉じられ、型に熱可塑性の材料が接触するように圧力が適用され、熱と圧力は、熱可塑性の材料が硬化するまで維持される。このプロセスは、部分的硬化段階において熱硬化性の合成樹脂を粒状、パテ状の塊あるいはプリフォームの形態で使用する。
【0004】
圧縮成形は、複合材である高強度ガラス繊維強化材を成形するのに適当な大容量、高圧力の方法である。進んだ熱可塑性複合材は、一定方向のテープ、織布、無作為に配置されたファイバーマット、または切り刻まれた糸を用いて圧縮成形され得る。圧縮成形の有利な点は、大きくてかなり複雑な部品を成形するその能力である。圧縮成形は、より少ないニット線、および、射出成形より劣化の少ないファイバー長さを生み出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6900547号明細書
【特許文献2】米国特許6126433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮成形の不利な点は、2000〜3000トンの圧力、および、高圧の型を提供することができる高い能力プレスを購入するために高い資本投下が必要であることである。これは、実際には、大量の生産量においてのみ効率的である。少量のより小さな部品は、いくらかのコストを節約するために、既存のプレスのアルミニウム型を使用して製造できる。このプロセスの他の不利な点は、粘性の問題に起因した低い繊維区分である。
【0007】
特許文献1に開示されている圧縮成形の代替においては、圧縮成形プロセスに熱可塑性材料の重力射出が使用される。具体的には、固定された上型に向けて下型が移動すると、熱可塑性材料は、下型上に重力により引き寄せられる。特許文献1は、参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0008】
特許文献2においては、押出機ユニットにおいて成形材料が可塑化されて、射出ユニットにより圧縮型ユニットに導入される。押出機および1つ以上の射出ユニットは、座標テーブルに配置された独立なユニットである。押出機と射出ユニットは、1つ以上の射出ユニットが押出機ユニットに解放可能に結合され、そして、押出機ユニットから切り離されて、1つ以上の圧縮成形ユニットに向けて動かされるように互いから分離していてもよい。射出ユニットが押出機から切り離されので、射出ユニットのかなり下の質量だけが、型の中に熱可塑性材料を配置させるために動かされる必要がある。
【0009】
圧縮成形への様々な代案を考慮してさえ、このプロセスを改善するためのニーズが未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、前述の背景を考慮して、成形品を成形するための圧縮成形を簡素化することが、本発明の目的である。
【0011】
これおよび他の本発明に係る目的、利点、および特徴は、底部プラテン、および底部プラテンにより運ばれる底部型部分を備える成形装置により与えられる。頂部プラテンは、底部プラテンおよび底部型部分上にあり、成形材料を受け入れるための当該頂部プラテンを通じて延在する少なくとも一のスロットを有する。成形材料は、底部型部分に重力により堆積されうる。
【0012】
頂部型部分は頂部プラテンにより保持され、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で可動でありうる。アクチュエーターは、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で頂部型部分を動かすための頂部型部分に結合できる。成形材料ロードポジションは、成形材料が、底部型部分の中に重力により堆積されるように頂部型部分が底部型部分上に存在したい時と対応している。成形品形成ポジションは、頂部型部分が、成形品を成形するための底部型部分上にある時に対応している。
【0013】
成形材料を重力により堆積させることは、頂部型部分が底部型部分から間隔をおいて配置される間、底部型部分に成形材料40を広げることを可能にするので、これは、成形される成形品の完成のために必要な圧力の量を重大に減少させる。その結果、頂部および底部型部分14,24の複雑さ、およびコストは、重大に減少する。
【0014】
成形装置は、底部プラテンと底部型部分を、成形品を成形するための頂部型部分に押すためのプレスをさらに含むことができる。代わりに、プレスは、頂部プラテンおよび頂部型部分を、成形品を成形するための底部型部分に押すことができる。頂部型部分が成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションにある時には、底部型部分は固定されていてもよい。
【0015】
頂部プラテンの少なくとも一のスロットは、複数のスロットを含んでいてもよい。複数のスロットの少なくとも一のスロットは、他のスロットから仕切られている。複数のスロットは、種々のサイズを持つことができる。
【0016】
本発明の別の観点は、上記したような成形装置を使って成形品を成形する方法を対象とする。この方法は、頂部型部分を成形材料ロードポジションに移動させることを含み、成形材料ロードポジションは、頂部型部分が底モールド部分上に存在しない時に対応している。成形材料は、成形材料が底部型部分に重力により堆積されるように、頂部プラテンを通って延在している少なくとも一のスロットのの中へ射出されうる。頂部型部分は、成形材料ロードポジションから成形品形成ポジションに移動され、成形品形成ポジションは、頂部型部分が底部型部分上に存在する時に対応している。この方法は、成形品を成形するために底および頂部型部分を一緒に押すことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】成形材料が底部型部分に重力により蓄積されるように、頂部型部分が成形材料のロードポジションにある本発明に係る成形装置のブロック図である。
【図2】成形品が成形されるように、頂部型部分が成形品形成ポジションにある、図1に示した成形装置のブロック図である。
【図3】それを通じて延在している複数のスロットを持つ本発明に係る頂部プラテンの側面図である。
【図4】本発明に係る、成形品を成形する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明は、ここで、本発明の好適な実施形態が示された添付図面を参照してより十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの種々の形態で具体化され、ここに記述された実施形態に限定されるように解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示物が詳細で完全で、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。全体を通じて同様の符号は同様の要素を参照する。
【0019】
最初に、図1と図2を参照すると、成形品を成形するための成形装置10は、底部プラテン12、および底部プラテンにより保持された底部型部分14を含む。頂部プラテン22は、底部プラテン12及び底部型部分14上にある。 頂部プラテン22は、成形材料40を受け入れるための当該頂部プラテン22を通じて延在する少なくとも一のスロット30を含む。成形材料40は、重力により底部型部分14に蓄積される。
【0020】
成形材料40は、当業者には容易に理解されるように、熱可塑性材料または熱硬化性の材料を含むことができる。成形材料は、ポリマーまたはエラストマーに基づくことができる。ポリマーはまた繊維強化されていてもよい。
【0021】
頂部型部分24は、頂部プラテン22により保持され、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で可動である。アクチュエーター50は、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で、頂部型部分を移動、または往復させるための頂部モールド部分24に結合される。成形材料ロードポジションは、成形材料40が、底部型部分14の中に重力により堆積するように、頂部モールド部分24が底部型部分14上にない時に対応している。成形品形成ポジションは、頂部型部分24が、成形品を成形するための底部型部分14上にある時に対応している。
【0022】
成形材料40を重力により堆積させることは、頂部型部分24が底部型部分14から間隔をおいて配置される間、底部型部分14に成形材料40を広げることを可能にするので、これは、成形される成形品の完成のために必要な圧力の量を重大に減少させる。その結果、頂部および底部型部分14,24の複雑さ、およびコストは、重大に減少する。
【0023】
頂部型部分24の動きは、アクチュエーター50により与えられる。頂部型部分24は、頂部プラテン22を通って延在している少なくとも一のスロット18のクリアランスを許容するように動かされる。アクチュエーター50は、コントローラ52から提供される制御信号に応答する。例えば、アクチュエーター50の操作は、ピストンに基づくことができる。代わりに、空気力または水力が、頂部型部分24の動きをコントロールするために用いられる。
【0024】
射出装置60は、成形材料40を頂部プラテン22の少なくとも一のスロット18へ注入する。成形材料40が適切な量が注入されると、過剰な成形材料40を吸引するために、吸引装置が使用される。底部型部分14への頂部プラテン22からの成形材料40の堆積は、重力に基づく。頂部型部分24が成形材料ロードポジションまたは成形品形成ポジションにある時には、底部型部分14は固定されている。
【0025】
成形材料40が、底部型部分14に重力により堆積された後に、頂部型部分24がアクチュエーター44により動かされ、底部型部分と整列される。頂部および底部型部分14,24は、成形品を成形するために、その時一緒に圧縮される。
【0026】
成形装置10は、底部プラテン12と底部型部分とを成形品を成形するための頂部型部分24に向けて押すための底部プラテン12に隣接したプレス70さらに含む。代わりに、プレスは、頂部プラテンおよび頂部型部分24を成形品を成形するための底部型部分に向けて押すための頂部プラテン22に隣接していてもよい。
【0027】
成形装置10の別の特徴は、頂部プラテン12の少なくとも一のスロット18は、図3に示すように、複数のスロット18(1)と18(2)とを含むように構成されることである。スロットは仕切られていてもよい。スロットを仕切ることによって、このことは、成形材料40の底部型部分14への選択された配置を有利に許容する。選択された配置は、底部型部分14で成形材料40の厚さが変化するのを有利に許容する。
【0028】
さらに、成形材料40がファイバーを含む必要がある場合には、スロット18(1)と18(2)はお互いに違った寸法にされ得る。種々の寸法のスロットは、大きい寸法のファイバーのファイバー破断を減少させるのに使用される。参照は、熱可塑性の樹脂マトリックスに埋め込まれた繊維材料を含む席系された熱可塑性の材料を開示している米国特第7,208,219に向けられる。熱可塑性の合成樹脂との繊維材料の長さと特徴は'219特許において詳述されており、それはここに、参照によりその全体が組み入れられる。
【0029】
本発明の別の観点は、上記した成形装置を使って成形品を成形する方法を対象としている。ここで、図4を参照すると、開始(ブロック90)から、本方法は、ブロック92において頂部型部分24を成形材料ロードポジションに移動させることを含み、成形材料ロードポジションは、頂部型部分24が底部型部分14上に存在しない時に対応している。成形材料40は、頂部プラテン22を通って延在している少なくとも一のスロット18に射出され、ブロック94において、成形材料は底部型部分14に重力により堆積される。頂部型部分24は、ブロック96において、成形材料ロードポジションから成形品形成ポジションに動かされて、成形品形成ポジションは、頂部型部分24が底モールド部分14上にある時に対応している。底部および頂部モールド部分14、24は、成形品を成形するためのブロック98で一緒に圧縮される。本方法はブロック100で終了する。
【0030】
本発明の多くの変形例および他の実施形態は前述の説明および参照図面において示された教示の利点を有することが当業者に理解される。従って、本発明が、開示された具体的な実施形態に限定されるわけではなく、変形例と実施形態がすぐに、当業者により容易に理解されるように含まれることを意図していることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部プラテンと、
前記底部プラテンにより保持された底部型部分と、
前記底部プラテンおよび底部型部分上に存在し、前記底部型部分に重力により堆積される成形材料を受け入れるためのそれを通じて延在する少なくとも一のスロットを有する頂部プラテンと、
前記頂部プラテンにより保持され、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で移動可能な頂部型部分と、
前記頂部モールド部分に結合され、前記成形材料ロードポジションと前記成形品形成ポジションとの間で移動させるためのアクチュエーターと、を含み、
前記成形材料ロードポジションは、成形材料が前記底部型部分の中に重力により堆積されるように、前記頂部型部分が前記底部型部分上に存在しない時に対応し、前記成形品形成ポジションは、成形品を成形するために、前記頂部型部分が底部型部分上に存在する時に対応している、成形装置。
【請求項2】
前記成形品を成形するための、前記底部プラテン及び前記底部型部分を前記頂部型部分に向けて押すためのプレスをさらに含んでいる請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記成形品を成形するための、前記頂部プラテンおよび頂部型部分を前記底部型部分に向けて押すためのプレスをさらに含んでいる請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
前記底型部分は、前記頂部型部分が前記成形材料ロードポジションと前記成形品形成ポジションにある時に、固定されている請求項1に記載の成形装置。
【請求項5】
前記アクチュエーターは、ピストンを備える請求項1に記載の成形装置。
【請求項6】
前記頂部プラテンの少なくとも一のスロットは、複数のスロットを含む請求項1に記載の成形装置。
【請求項7】
前記複数のスロットの少なくとも一のスロットは、他のスロットから仕切られている請求項6に記載の成形装置。
【請求項8】
前記複数のスロットは、種々のサイズを持っている、請求項6に記載の成形装置。
【請求項9】
前記成形材料は、熱可塑性の材料を含む請求項1に記載の成形装置。
【請求項10】
前記成形材料は、熱硬化性の材料を含む請求項1に記載の成形装置。
【請求項11】
前記成形材料は、ポリマーを含む請求項1に記載の成形装置。
【請求項12】
前記ポリマーは、ファイバーを含む請求項11に記載の成形装置。
【請求項13】
底部プラテンと、前記底部プラテンにより保持された底部型部分と、前記底部プラテンおよび底部型部分上に存在し、前記底部型部分に重力により堆積される成形材料を受け入れるためのそれを通じて延在する少なくとも一のスロットを有する頂部プラテンと、前記頂部プラテンにより保持され、成形材料ロードポジションと成形品形成ポジションとの間で移動可能な頂部型部分と、を備える成形装置を使って成形品を成形する方法であって、
前記頂部型部分を、前記頂部型部分が前記底部型部分上にない時に対応する前記成形材料ロードポジションに移動させるステップと、
前記成形材料が重力により前記底部型部分に堆積するように、前記成形材料を、前記頂部プラテンを通じて延在する少なくとも一のスロットに射出するステップと、
前記頂部型部分が前記底部型部分上に存在している時に対応する前記成形材料ロードポジションから、前記頂部型部分を前記成形品形成ポジションに移動させるステップと、
前記成形品を成形するために、前記底および頂部型部分を一緒に押すステップと、を備える方法。
【請求項14】
前記押すステップは、前記成形品を成形するために、前記底部プラテンと前記底部型部分を、前記頂部モールド部分に向けて押すことを含む、請求項13に記載の方法装置。
【請求項15】
前記押すステップは、前記成形品を成形するために、前記頂部プラテンおよび前記頂部型部分を、前記底部型部分に向けて押すことを含む、請求項13に記載の方法装置。
【請求項16】
前記頂部型部分が前記成形材料ロードポジションと前記成形品形成ポジションにある時に、前記底部型部分が固定されている請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記頂部プラテンの少なくとも一のスロットは、複数のスロットを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のスロットの少なくとも一のスロットは、他のスロットから仕切られている請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のスロットは、種々のサイズを持っている請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記成形材料は、熱可塑性の材料を含む請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記成形材料は、熱硬化性の材料を含む請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記成形材料は、ポリマーを含む請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーは、ファイバーを含む請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−527818(P2010−527818A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509516(P2010−509516)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064335
【国際公開番号】WO2008/144719
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509321929)
【Fターム(参考)】