説明

圧縮装置

【課題】複数の機器を単一のファンによって冷却しながら、ファンの消費電力が少ない圧縮装置を提供する。
【解決手段】複数の温度検出器8,9,12,13のそれぞれについて、上限温度と、吸込調整弁5が開放されている場合に適用される第1ゲインと、吸込調整弁5が閉鎖されている場合に適用される第2ゲインとが予め設定され、複数の温度検出器8,9,12,13のそれぞれについて、検出値と上限温度との差分を算出し、差分の中で最も小さい値と、差分が最も小さい温度検出器について設定された第1ゲインまたは第2ゲインとに基づいてファン15の回転数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体を圧縮するために用いる圧縮装置であって、圧縮機およびアフタークーラ等の付帯機器をパッケージ(筐体)の内部に収容してなり、各機器の冷却のためのファンを備える圧縮装置が広く使用されている。そのような圧縮装置では、単一のファンによって、圧縮機だけでなく、インタークーラやアフタークーラも冷却するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3773443号公報
【特許文献2】特許第4418321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単一のファンによって複数の機器を冷却する圧縮装置では、最悪の条件においても、全ての機器を十分に冷却できるように、容量の大きいファンが設けられる場合が多い。また、全ての機器を十分に冷却しようとして、その容量の大きいファンを最大容量で運転すると、消費動力も大きくなるという問題がある。さらに、大容量のファンを運転することによって、騒音も大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点に鑑みて、本発明は、複数の機器を単一のファンによって冷却しながら、ファンの消費電力が少ない圧縮装置を提供することを課題とする。
【発明の効果】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明による圧縮装置は、圧縮機と、前記圧縮機にガスを供給する吸込流路に設けた吸込調整弁と、異なる位置に設けた複数の温度検出器と、圧縮されたガスの吐出圧力を検出する圧力検出器と、回転数を変更可能なファンと、前記圧力検出器の検出値に応じて前記吸込調整弁を開閉する弁制御手段と、前記複数の温度検出器の検出値に基づいて前記ファンの回転数を決定するファン制御手段とを有し、前記ファン制御手段は、前記複数の温度検出器のそれぞれについて、上限温度と、前記吸込調整弁が開放されている場合に適用される第1ゲインと、前記吸込調整弁が閉鎖されている場合に適用される第2ゲインとが予め設定され、前記複数の温度検出器のそれぞれについて、検出値と前記上限温度との差分を算出し、前記差分の中で最も小さい値と、前記差分が最も小さい前記温度検出器について設定された前記第1ゲインまたは前記第2ゲインとに基づいて前記ファンの回転数を決定するものとする。
【0007】
この構成によれば、最も冷却が要求される部分に合わせてファンの回転数を調節するので、ファンの冷却能力が最適化され、消費電力も最低限に抑制できる。
【0008】
また、本発明の圧縮装置において、前記第1ゲインおよび前記第2ゲインは、それぞれ、複数の定数を含んでもよい。
【0009】
この構成によれば、例えばPID制御など、複雑な関数を用いたフィードバック制御を行うことができる。
【0010】
前記圧縮機を複数有し、前記圧縮機が直列に接続されており、前記温度検出器の少なくとも1つは、前記圧縮機の間の流路にも設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、2段圧縮機の冷却能力を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態である圧縮装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の1つの実施形態である圧縮装置を示す。本実施形態の圧縮装置は、圧縮空気を製造するものであり、直列に接続された第1圧縮機1および第2圧縮機2を有する。
【0014】
第1圧縮機1に空気を供給するための吸込流路3には、吸込フィルタ4と吸込調整弁5とが設けられている。第1圧縮機1と第2圧縮機2とを接続する中間流路6には、インタークーラ7と、インタークーラ7の上流において第1圧縮機1が吐出した空気の温度を検出する第1温度検出器8と、インタークーラ7の下流において第2圧縮機2に供給される空気の温度を検出する第2温度検出器9とが設けられている。第2圧縮機2から圧縮空気を需要先に供給するための吐出流路10には、アフタークーラ11と、アフタークーラ11の上流において第2圧縮機が吐出した空気の温度を検出する第3温度検出器12と、アフタークーラ11の下流において需要先に通じる流路に吐出される空気の温度を検出する第4温度検出器13と、アフタークーラ1の下流において吐出される空気の圧力を検出する吐出圧力検出器14とが設けられている。すなわち、異なる位置に、複数の温度検出器(第1乃至第4温度検出器8,9,12,13)が設けられている。
【0015】
本実施形態の圧縮装置は、さらに、上記の構成要素、特に、第1圧縮機1、第2圧縮機2、インタークーラ7およびアフタークーラ10を冷却するためのファン15を有する。ファン15を駆動するモータ16は、インバータ17によって回転数が設定されるようになっている。
【0016】
また、本実施形態の圧縮装置は、吐出圧力検出器14の検出値Pdに基づいて、吸込調整弁5を開閉する弁制御装置18(弁制御手段)と、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13の検出値とおよび弁制御装置18の出力信号が入力され、インバータ17の周波数、つまり、ファン15の回転数を設定するファン制御装置19(ファン制御手段)とを有する。
【0017】
弁制御装置18には、上限圧力PdHおよび下限圧力PdLが設定されており、吐出圧力検出器14の検出値Pdが上限圧力PdH以上になると吸込調整弁5を閉鎖し、吐出圧力検出器14の検出値Pdが下限圧力PdL以下になると吸込調整弁5を開放する。
【0018】
ファン制御装置19は、例えば表1に示すように、内蔵するメモリに、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13の検出値(T1,T2,T3,T4)に関するそれぞれの上限温度(T1h,T2h,T3h,T4h)と、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13の検出値(T1,T2,T3,T4)をファン15の回転数の制御にフィードバックする際に使用するゲイン(定数)を記憶している。ゲインは、吸込調整弁5が開放されているときに適用する第1ゲイン(G1,G2,G3,G4)と、吸込調整弁5が閉鎖されているときに適用する第2ゲイン(g1,g2,g3,g4)との2つが、それぞれの温度検出器8,9,12,13について記憶されている。尚、ここでは「上限温度」と呼称しているが、この「上限温度」は、後述するフィードバックにおける、いわゆる「目標値」と換言できる。そのため、実際には、各部位の温度がこの「上限温度」を短期的には超える場合もありうる。
【0019】
【表1】

【0020】
ファン制御装置19は、所定のサイクルタイム毎に、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13のそれぞれについて、検出値(T1,T2,T3,T4)を確認し、上限温度と検出値との差分(T1h−T1,T2h−T2,T3h−T3,T4h−T4)を算出する。そして、前記サイクルタイムを単位として現在の時間をnとすると、ファン制御装置19は、上述の複数の差分の中で、最も値が小さいものをその時点における代表差分ΔTr(n)と設定し、差分が最も小さかった温度検出器について、設定されているゲインをその時点における代表ゲインGr(n)と設定する。例えば、第2温度検出器9の差分が最も小さかった場合、代表ゲインGr(n)は、時間nにおいて吸込調整弁5が開放されていたのであればG2、吸込調整弁5が閉鎖されていたのであればg2である。
【0021】
時間nにおけるインバータ17の設定周波数をX(n)とすると、ファン制御装置19は、時間nにおける代表差分ΔTr(n)に代表ゲインGr(n)を乗じた値を時間nにおける設定周波数をX(n)から差し引いた値を、時間n+1における設定周波数X(n+1)とする。
X(n+1)=X(n)−Gr(n)・ΔTr(n)
【0022】
このように、本実施形態では、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13の中で、上限温度に最も近いもの、つまり、最も余裕のないものだけを制御入力として負のフィードバックを行うことによって、ファン15の回転数を比例制御する。これにより、第1乃至第4温度検出器8,9,12,13の検出値のいずれもができるだけ上限温度を超えた状態とならないようにしながら、ファン15の回転数をできるだけ低い回転数に抑えて、消費動力および騒音を小さくする。
【0023】
尚、表1において、第3および第4温度検出器12,13の第2ゲインは「0」であるが、これは、吸込調整弁5を閉鎖した場合には、第1圧縮機1の負荷が大きくなり、中間流路6の温度が高くなるため、第3および第4温度検出器12,13の差分(T3h−T3,T4h−T4)が、第1または第2温度検出器8,9の差分(T1h−T1,T2h−T2)よりも小さくなることがないので、フィードバックの定数を設定する必要がないからである。
【0024】
また、ファン制御装置19は、代表差分ΔTr(n)を制御入力として、ファン15の回転数をPID制御してもよい。その場合、第1ゲインおよび第2ゲインは、表2に示すように、それぞれ、比例定数、積分定数、微分定数の3つの定数を含む。例えば、第1温度検出器8に関する第1ゲインの比例定数はG1、積分定数はG1i、微分定数はG1dである。
【0025】
【表2】

【0026】
また、本実施形態では、中間流路6および吐出流路10における空気の温度を検出して制御入力としているが、第1圧縮機1、第2圧縮機2、インタークーラ7およびアフタークーラ11、モータ等の温度、または装置内の発熱し易い他の部分の温度を検出して、制御入力としてもよい。例えば、油冷式圧縮機用の油冷却器における油温度等を検出して、制御入力としてもよい。
【0027】
また、本発明は、圧縮空気を製造する圧縮装置だけでなく、空気以外のガスを圧縮する圧縮装置にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1…第1圧縮機
2…第2圧縮機
3…吸込流路
5…吸込調整弁
6…中間流路
7…インタークーラ
8…第1温度検出器
9…第2温度検出器
10…吐出流路
11…アフタークーラ
12…第3温度検出器
13…第4温度検出器
14…吐出圧力検出器
15…ファン
16…モータ
17…インバータ
18…弁制御装置(弁制御手段)
19…コントローラ(ファン制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
前記圧縮機にガスを供給する吸込流路に設けた吸込調整弁と、
異なる位置に設けた複数の温度検出器と、
圧縮されたガスの吐出圧力を検出する圧力検出器と、
回転数を変更可能なファンと、
前記圧力検出器の検出値に応じて前記吸込調整弁を開閉する弁制御手段と、
前記複数の温度検出器の検出値に基づいて前記ファンの回転数を決定するファン制御手段とを有し、
前記ファン制御手段は、
前記複数の温度検出器のそれぞれについて、上限温度と、前記吸込調整弁が開放されている場合に適用される第1ゲインと、前記吸込調整弁が閉鎖されている場合に適用される第2ゲインとが予め設定され、
前記複数の温度検出器のそれぞれについて、検出値と前記上限温度との差分を算出し、
前記差分の中で最も小さい値と、前記差分が最も小さい前記温度検出器について設定された前記第1ゲインまたは前記第2ゲインとに基づいて前記ファンの回転数を決定することを特徴とする圧縮装置。
【請求項2】
前記第1ゲインおよび前記第2ゲインは、それぞれ、複数の定数を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記圧縮機を複数有し、前記圧縮機が直列に接続されており、
前記温度検出器の少なくとも1つは、前記圧縮機の間の流路に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮装置。

【図1】
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