説明

圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】積層型圧電部材の両端面に電極膜を形成して個別外部電極と共通外部電極とすると、圧電部材の活性部が不活性部で拘束されて変位量が低減する。
【解決手段】圧電部材12の両端面及び底面には電極層33が形成され、両端面のうちの各圧電柱12Aの個別外部電極23を形成する端面側の不活性部31の部分には、圧電柱並び方向に沿ってスリット溝34が形成され、電極層33は駆動柱12Aに対応する領域を含む個別外部電極23と、不活性部32に対応する部分とに分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば、液滴を吐出する複数の並列されたノズルに個別に対応する複数の圧力発生室の壁面の一部を形成する振動板部材を圧電素子によって変位させ、各圧力発生室の容積を変化させて液滴を吐出させる圧電アクチュエータを使用するものがある。
【0004】
従来の圧電アクチュエータとして、圧電層と内部電極を交互に積層した複数の圧電柱が溝を介して形成され、複数の圧電柱を架橋する不活性部を有する圧電部材を備え、圧電部材の圧電柱並び方向と直交する方向の両端面には、内部電極が交互に引き出されて接続される外部電極を形成するための電極層が形成され、この電極層は圧電部材の両端面及びベース部材と接合する底面に跨って形成され、圧電部材の底面と個別外部電極を形成する端面との間を斜めに切断して(いわゆるC面取りをして)、電極層を個別外部電極を形成する部分とそれ以外の部分とに分割し、圧電部材の両端部には内部電極で両端面の電極層を相互に接続して、個別外部電極と同じ面に共通外部電極を外部に取出す取り出し用共通外部電極を設けたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように、圧電部材の両端面に電極層を形成する場合、不活性部によって活性部(内部電極間に圧電層が配置される部分)が拘束されている面積が多くなり、圧電部材の変位量が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、積層型圧電部材の変位量を増大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る圧電アクチュエータは、
圧電層と内部電極を交互に積層した複数の圧電柱が溝を介して形成され、前記複数の圧電柱を架橋する不活性部を有する圧電部材を備え、
前記圧電部材の圧電柱並び方向と直交する方向の両端面には、前記内部電極が交互に引き出されて接続される外部電極を形成するための電極層が形成され、
前記圧電部材の両端面のうち、各圧電柱の個別外部電極を形成する端面側の前記不活性部の部分には、前記圧電柱並び方向に沿ってスリット溝が形成され、
前記スリット溝で前記個別外部電極を形成する側の端面の前記電極層が分割されている
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、共通外部電極の取り出しを容易にしつつ積層型圧電部材の変位量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視説明図である。
【図2】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図である。
【図3】同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)に沿う一例の断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの側断面説明図である。
【図5】同じく要部斜視説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの分解斜視説明図である。
【図7】同じく正面説明図である。
【図8】図7のA−A線に沿う断面説明図である。
【図9】図7のB−B線に沿う断面説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータの分解斜視説明図である。
【図11】同じく正面説明図である。
【図12】図11のC−C線に沿う断面説明図である。
【図13】図11のD−D線に沿う断面説明図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る圧電アクチュエータの正面説明図である。
【図15】図14のE−E線に沿う断面説明図である。
【図16】図14のF−F線に沿う断面説明図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る圧電アクチュエータの正面説明図である。
【図18】図17のG−G線に沿う断面説明図である。
【図19】図17のH−H線に沿う断面説明図である。
【図20】本発明の第6実施形態に係る圧電アクチュエータの分解斜視説明図である。
【図21】同アクチュエータの正面説明図である。
【図22】図21のI−I線に沿う断面説明図である。
【図23】図21J−J線に沿う断面説明図である。
【図24】本発明の第7実施形態に係る圧電アクチュエータの正面説明図である。
【図25】図24のK−K線に沿う断面説明図である。
【図26】図24のL−L線に沿う断面説明図である。
【図27】本発明に係る画像形成装置の一例を示す機構部の側面説明図である。
【図28】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図、図3は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)に沿う断面説明図である。
【0012】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板で形成した流路板(流路基板、液室基板などとも称される。)1と、この流路板1の下面に接合した振動板を形成する振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有している。
【0013】
これらによって、液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル4がそれぞれ通路5を介して連って通じる個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6に連なって通じる液体導入部8を形成している。
【0014】
そして、後述するフレーム部材17に形成した共通液室10から振動板部材2に形成した供給口9を介して液体導入部8、流体抵抗部7を介して液室6に液体を供給する。
【0015】
流路板1は、2つの第1流路板1Aと第2流路板1Bとを接着して構成している。この流路板1(1A、1B)は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、加圧液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。
【0016】
振動板部材2は、第1層2Aと第2層2Bとで形成されて、第1層2Aで薄肉部を形成し、第1層2A及び第2層2Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材2は、各液室6に対応してその壁面を形成する第1層2Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、この振動領域2aの中に、面外側(液室6と反対面側)に第1層2A及び第2層2Bの厚肉部で形成された島状凸部2bが設けられ、この島状凸部2bに振動領域2aを変形させる圧力発生手段(アクチュエータ手段、駆動手段)としての電気機械変換素子を含む本発明に係る圧電アクチュエータである圧電アクチュエータ100を配置している。
【0017】
この圧電アクチュエータ100は、ベース部材13上に接着剤接合した複数(ここでは2つとする)の積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによる溝加工で1つの圧電部材12に対して所要数の圧電柱12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0018】
なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動柱12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動柱12Bとして区別している。そして、駆動柱12Aの上端面(接合面)を振動板部材2の島状凸部2bに接合している。
【0019】
ここで、圧電部材12は、圧電層21と内部電極22A、22Bとを交互に積層したものであり、内部電極22A、22Bをそれぞれ端面、即ち圧電部材12の振動板部材2に略垂直な側面(積層方向に沿う面)に引き出して、この側面に形成された端面電極(外部電極)23、24に接続し、端面電極(外部電極)23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。
【0020】
また、圧電部材12には駆動柱12Aに駆動信号を与えるための配線部材であるフレキシブル配線部材としてのFPC15が接続されている。FPC15は、駆動柱12Aに駆動波形(駆動信号)を与えるドライバIC(駆動回路)が実装されている。FPC15の後端部は、装置本体の図示しない制御基板(制御部)に接続されている。
【0021】
ノズル板3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板3には各液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0022】
さらに、これらの圧電部材12、ベース部材13及びFPC15などで構成される圧電アクチュエータ100の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。
【0023】
そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部から記録液を供給するための供給口を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0024】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば押し打ち方式で駆動する場合には、図示しない制御部から記録する画像に応じて駆動柱12Aに20〜50Vの駆動パルス電圧を選択的に印加することによって、パルス電圧が印加された駆動柱12Aが変位して振動板部材2の振動領域2aをノズル板3方向に変形させ、液室6の容積(体積)変化によって液室6内のインクを加圧することで、ノズル板3のノズル4から液滴が吐出される。そして、液滴の吐出に伴って液室6内の圧力が低下し、このときの液流れの慣性によって液室6内には若干の負圧が発生する。
【0025】
この状態の下において、圧電柱12Aへの電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板部材2が元の位置に戻って液室6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填され、次の駆動パルスの印加に応じて液滴がノズル4から吐出される。
【0026】
なお、液体吐出ヘッドは、上記の押し打ち以外にも、引き打ち方式(振動板部材2を引いた状態から開放して復元力で加圧する方式)、引き−押し打ち方式(振動板部材2を中間位置で保持しておき、この位置から引いた後、押出す方式)などの方式で駆動することもできる。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータについて図4及び図5を参照して説明する。図4は同アクチュエータの側断面説明図、図5は同じく要部斜視説明図である。
【0028】
まず、圧電部材12は、前述したように、圧電層21と内部電極22A、22Bを交互に積層した活性部31に、複数の圧電柱(駆動柱12A,非駆動柱12B)が溝30を介して形成されている。そして、圧電部材12の最も下側(ベース部材13側)の内部電極22よりも下方部分、即ち活性部31の下側部分は、内部電極22が設けられないで圧電層21のみで形成され、各駆動柱12A及び非駆動柱12Bを架橋する架橋部となる不活性部32としている。なお、圧電部材12の圧電柱並び方向の両端部は幅広の非駆動柱12Baとしている。
【0029】
そして、圧電部材12の圧電柱並び方向と直交する方向の両端面及びベース部材13と接合する底面には、内部電極22A、22Bが交互に引き出されて接続される外部電極23、24を形成するための電極層33が形成されている。なお、外部電極23は各駆動柱12Aを駆動するための個別外部電極となり、外部電極24は各駆動柱12Aに共通の共通外部電極となる。
【0030】
また、電極層33は、溝30を加工する前に、両端面及び底面の全面に形成するので、非駆動柱12Bの端面にも形成される。さらに、圧電部材12の両端部の幅広の非駆動柱12Baの部分では、図6に示すように、内部電極22A、22Bはいずれも両端面の電極層33にそれぞれ接続されている。
【0031】
ここで、圧電部材12の両端面のうち、各圧電柱12Aの個別外部電極23を形成する端面側の不活性部32の部分には、活性部31との境界部分に、圧電柱並び方向に沿ってスリット溝34が形成されている。このスリット溝34で個別外部電極23を形成する側の端面の電極層33は、駆動柱12Aに対応する領域を含む(「含む」とは、一部が不活性部32に対応していてもよいという意味である。)部分と、不活性部32に対応する部分とに分割される。そして、電極層33の駆動柱12Aに対応する領域を含む部分は個別外部電極23となる。
【0032】
この圧電部材12には、個別外部電極23及び共通外部電極24にそれぞれ図示しない配線部材、例えばFPC15に設けられた個別配線電極及び共通配線電極が接続されることで、駆動信号が与えられる。
【0033】
このとき、例えば、図5に矢印で示すように、配線部材(FPC15)の個別配線電極からは各駆動柱12Aの個別外部電極23に接続され、一方、配線部材の共通配線電極はから幅広の非駆動柱12Baの個別外部電極側端面に設けられた取り出し用共通外部電極を通じて共通外部電極24に接続されて、両外部電極間に電圧が印加される。
【0034】
このように、本実施形態では、圧電部材12の不活性部31に、活性部32との境界部分で、圧電柱並び方向にスリット溝34を形成しているので、活性部31が不活性部32に拘束されている面積が減るため、変位し易くなる。そして、個別外部電極23側端面の電極層33を、水平方向のスリット溝34によって分断しているので、より多くの外部電極(共通電極側)面積を確保することができ、外部電極の膜厚をより薄くすることが可能になる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータについて図6ないし図9を参照して説明する。図6は同アクチュエータの分解斜視説明図、図7は同じく正面説明図、図8は図7のA−A線に沿う断面説明図、図9は図7のB−B線に沿う断面説明図である。
【0036】
本実施形態では、圧電部材12に配線部材としてのFPC15が接続されている。FPC15には、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Baに対応して共通配線電極41が形成され、各駆動柱12Aに対応して個別配線電極42が形成されている。個別配線電極42の後端部はドライバIC50に接続される。
【0037】
一方、圧電部材12の個別外部電極23と同じ端面側において、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Baの電極層33を取り出し用共通外部電極25としている。
【0038】
ここでは、取り出し用共通外部電極25は、スリット溝34で分断された電極層33の上側領域である取り出し用共通外部電極25Aと、下側領域である取り出し用共通外部電極25Bとで構成される。上側の取り出し用共通外部電極25Aは内部電極22を通じて反対の端面の共通外部電極24と接続されている。下側の取り出し用共通外部電極25Bは、圧電部材12の底面側の電極層33を介して反対の端面の共通外部電極24と接続されている。
【0039】
そして、FPC15の共通配線電極41は、取り出し用共通外部電極25A、25Bに半田51にて接合されて接続されている。また、個別配線電極42は、各駆動柱12Aの個別外部電極23に同じく半田51にて接合されて接続されている。
【0040】
このように構成することで、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Baの内部電極22で両端面の共通外部電極24と取り出し用共通外部電極25Aとを接続することで共通電極を取出す構成に比べて、共通電極ラインの大容量化(多くの電流を流せるようにすること)を図れる。
【0041】
次に、本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータについて図10ないし図13を参照して説明する。図10は同アクチュエータの分解斜視説明図、図11は同じく正面説明図、図12は図11のC−C線に沿う断面説明図、図13は図11のD−D線に沿う断面説明図である。
【0042】
本実施形態では、配線部材としてのFPC15には、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Baを除く非駆動柱12Bに対応して共通配線電極41が形成され、各駆動柱12Aに対応して個別配線電極42が形成されている。個別配線電極42の後端部はドライバIC50に接続される。
【0043】
一方、圧電部材12の個別外部電極23と同じ端面側において、スリット溝34で分断された電極層33の下側領域を取り出し用共通外部電極25として使用する。前述したように、この取り出し用共通外部電極25は、圧電部材12の底面側の電極層33を介して反対の端面の共通外部電極24と接続されている。
【0044】
そして、FPC15の各共通配線電極41は、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Baを除く非駆動柱12Bのそれぞれに半田51にて接合されて接続されている。また、個別配線電極42は、各駆動柱12Aの個別外部電極23に同じく半田51にて接合されて接続されている。
【0045】
このように構成することで、各駆動柱12A間で共通電極の抵抗値を均一にすることができる。また、圧電部材12の外部電極を形成する電極層33に大容量の電流が流れる部位を無くすることができ、電極層33の成膜量を削減することができる。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態に係る圧電アクチュエータについて図14ないし図16を参照して説明する。図14は同アクチュエータの正面説明図、図15は図14のE−E線に沿う断面説明図、図16は図14のF−F線に沿う断面説明図である。
【0047】
本実施形態では、前記第3実施形態と同様な配線構成において、配線部材としてのFPC15は、共通配線電極41を形成する第1層15Aと個別配線電極42を形成する第2層15Bとの二層構造としている。
【0048】
ここで、共通配線電極41を形成する第1層15Aは、圧電部材12の端面に直接対向する層とし、個別配線電極42を形成する第2層15Bと圧電部材12の端面との間に、第1層15Aの共通配線電極41を形成する部分以外の例えばポリイミド樹脂などの層が介在する構成とする。
【0049】
この場合、個別配線電極42は個別外部電極23と接続する部分及びドライバIC50と接続される部分では第1層15を貫通している。
【0050】
このように構成することにより、個別配線電極42が取り出し用共通外部電極25に接触することが防止される。つまり、個別外部電極23側の端面の電極層33はスリット溝34で分断された下側の領域全体が取り出し用共通外部電極25となるので、個別配線電極42が駆動柱12Aの部分で取り出し用共通外部電極25に対向していると、保護膜などを形成してもショートするおそれがある。そこで、個別配線電極42と取り出し用共通外部電極25の駆動柱12Aの部分との間に第1層15Aを介在させることでショートを防止している。
【0051】
次に、本発明の第5実施形態に係る圧電アクチュエータについて図17ないし図19を参照して説明する。図17は同アクチュエータの正面説明図、図18は図17のG−G線に沿う断面説明図、図19は図17のH−H線に沿う断面説明図である。
【0052】
本実施形態では、配線部材としてのFPC15は前記第4実施形態と同様に二層構造とし、共通配線電極41は、各非駆動柱12Bに接続する共通配線電極部41Aと、各共通配線電極部41Aを相互に接続する架橋配線電極部41Bと、ドライバIC50の実装領域を避けて架橋配線電極部41Bの両端部に通じる共通配線電極部41Cとによって構成している。
【0053】
このように構成することで、ドライバIC50の実装領域を避けて共通電極配線を這い回すことができる。これにより、前記第4実施形態のように共通配線電極がドライバIC50の実装領域を通る場合に比べてIC設計が容易になる。
【0054】
次に、本発明の第6実施形態に係る圧電アクチュエータについて図20ないし図23を参照して説明する。図20は同アクチュエータの分解斜視説明図、図21は同アクチュエータの正面説明図、図22は図21のI−I線に沿う断面説明図、図23は図21のJ−J線に沿う断面説明図である。
【0055】
本実施形態は、配線部材を、前記第5実施形態の二層構造に代えて、共通配線電極41を形成した第1FPC151と、個別配線電極42を形成し、ドライバIC50を実装した第2FPC152との2枚構成とし、これらの第1、第2FPC151、152は張り合わせている。なお、第1FPC151にはドライバIC50と干渉を避けるための穴ないし切欠部が設けられている。
【0056】
そして、第1FPC151はスリット溝34よりも下側で接続し、第2FPC152はスリット溝34より上側で接続されている。
【0057】
このように構成しても、前記第5実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
次に、本発明の第7実施形態に係る圧電アクチュエータについて図24ないし図26を参照して説明する。図24は同アクチュエータの正面説明図、図25は図24のK−K線に沿う断面説明図、図26は図25のL−L線に沿う断面説明図である。
【0059】
本実施形態では、圧電部材12のスリット溝34より下側のすべての領域を取り出し用共通外部電極25として使用している。したがって、配線部材としてのFPC15には、圧電部材12の両端部の非駆動柱12Ba及び駆動柱12Aに対応する部分を含めてスリット溝34より下側の取り出し用共通外部電極25に接続する共通配線電極部41Dが形成されている。
【0060】
このように構成することで、共通外部電極24は最短距離で取り出し用共通外部電極25と接続されることになり、電極層33の膜厚が同じとすれば、前記第3実施形態よりも抵抗値を低くすることができる。
【0061】
なお、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化することでヘッド一体型液体カートリッジ(カートリッジ一体型ヘッド)を得ることができる。
【0062】
次に、本発明に係る画像形成装置の一例について図27及び図28を参照して説明する。なお、図27は同装置の機構部の側面説明図、図28は同機構部の要部平面説明図である。
【0063】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0064】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0065】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッド234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したもので、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の液体吐出ヘッドを備えることもできる。
【0066】
また、キャリッジ233には、記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a、235b(区別しないときは「サブタンク235」という。)を搭載している。このサブタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0067】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0068】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0069】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0070】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0071】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0072】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0073】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0074】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0075】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0076】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0077】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、信頼性が向上し、高画質画像を形成することができる。
【0078】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0079】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0080】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0081】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0082】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 流路板(流路基板)
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
6 液室
10 共通液室
12 圧電部材
12A 駆動柱
12B 非駆動柱
13 ベース部材
15 FPC(フレキシブル配線基板)
23 個別外部電極
24 共通外部電極
25 取り出し用共通外部電極
31 活性部
32 不活性部
33 電極膜
34 スリット溝
41 共通配線電極
42 個別配線電極
50 ドライバIC
151 第1FPC
152 第2FPC
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電層と内部電極を交互に積層した複数の圧電柱が溝を介して形成され、前記複数の圧電柱を架橋する不活性部を有する圧電部材を備え、
前記圧電部材の圧電柱並び方向と直交する方向の両端面には、前記内部電極が交互に引き出されて接続される外部電極を形成するための電極層が形成され、
前記圧電部材の両端面のうち、各圧電柱の個別外部電極を形成する端面側の前記不活性部の部分には、前記圧電柱並び方向に沿ってスリット溝が形成され、
前記スリット溝で前記個別外部電極を形成する側の端面の前記電極層が分割されている
ことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記スリット溝で分割された前記電極層のうち、前記圧電柱の部分は前記個別外部電極となり、前記不活性部の部分は反対側の端面の共通外部電極と接続され、外部に共通電極を取り出すための取り出し用共通外部電極となっていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記圧電部材の前記複数の圧電柱は、交互に、駆動信号を与える駆動柱と、前記駆動信号を与えない非駆動柱であり、
前記圧電部材には前記駆動柱を駆動するための信号を与える配線部材が接続され、
前記配線部材は、各駆動柱に対応する個別配線電極と、各駆動柱に共通の共通配線電極とを有し、
前記共通配線電極は、前記取り出し用共通外部電極の前記非駆動柱に対応する部分に接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記配線部材は、前記個別配線電極と前記共通配線電極とが異なる層に形成された2層構造であることを特徴とする請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記配線部材は、複数の前記共通配線電極を相互に接続する架橋配線電極を有していることを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記配線部材は、前記個別配線電極が形成された第1配線部材と、前記共通配線電極が形成された第2配線部材とからなることを特徴とする請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記圧電部材の前記複数の圧電柱は、交互に、駆動信号を与える駆動柱と、前記駆動信号を与えない非駆動柱であり、
前記圧電部材には前記駆動柱を駆動するための信号を与える配線部材が接続され、
前記配線部材は、各駆動柱に対応する個別配線電極と、各駆動柱に共通の共通配線電極とを有し、
前記共通配線電極は、前記取り出し用共通外部電極に接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電アクチュエータを備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−65663(P2013−65663A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202925(P2011−202925)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】