説明

圧電アクチュエータの駆動方法、圧電アクチュエータの駆動装置、電子機器、圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム及び記憶媒体

【課題】 圧電アクチュエータの消費電流を低減でき、システムダウンを回避できる圧電アクチュエータの駆動方法の提供。
【課題手段】 圧電素子91へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子91の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には圧電素子91へ供給する駆動信号の周波数を所定周波数分シフトしたり、初期値に戻して周波数スイープを継続する。圧電素子に供給する駆動信号の周波数をスイープさせる際に、共振周波数部分を外すことができる。このため、圧電素子は、消費電流が最も高くなる共振周波数部分を除いて駆動されるので、消費電流の極端な増加を防止でき、過大な消費電流が流れることによるシステムダウンを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータの駆動方法、圧電アクチュエータの駆動装置、電子機器、圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率や、応答性に優れている。このため、近年、圧電素子の圧電効果を利用した各種の圧電アクチュエータが開発されている。この圧電アクチュエータは、圧電ブザー、プリンタのインクジェットヘッド、超音波モータ、電子時計、携帯機器等の各種電子機器の分野に応用されている。
【0003】
ところで、圧電アクチュエータは、周囲の温度や負荷等の影響で共振周波数が変動するため、圧電アクチュエータを駆動可能な駆動信号の周波数も、周囲温度や負荷等に応じて変動する。
そのため、変動する駆動信号の周波数範囲を含む広い範囲で駆動信号の周波数をスイープ(変化)させ、確実にモータを駆動させる方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1では、電圧制御発振器に三角波またはのこぎり波のスイープ電圧を出力し、電圧制御発振器の発振周波数をfLからfHまでの範囲で常時変化させ、圧電振動子を駆動可能な周波数を必ず与えることができるようにして、圧電振動子(圧電アクチュエータ)の確実な駆動を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特公平5−16272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1は、共振周波数での駆動を含む。圧電素子のインピーダンスは、共振点付近で急減に低下し、共振点で最も低くなる。このため、圧電素子を共振周波数で駆動すると圧電素子(圧電アクチュエータ)の消費電流が極端に大きくなり、場合によっては電源電圧が急激に低下してシステムがダウンするおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、圧電アクチュエータの消費電流を低減でき、システムダウンを回避できる圧電アクチュエータの駆動方法、圧電アクチュエータの駆動装置、この圧電アクチュエータを備えた電子機器、圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム、この制御プログラムを記憶した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電アクチュエータの駆動方法は、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動方法であって、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続することを特徴とする。
【0009】
本発明では、消費電流をモニタし、この消費電流が設定された基準値以上となった場合に、駆動信号の周波数を所定周波数分、例えば、数kHz分シフトしているので、圧電素子に供給する駆動信号の周波数をスイープ(変化)させる際に、共振周波数部分を外すことができる。このため、圧電素子は、消費電流が最も高くなる共振周波数部分を除いて駆動されるので、消費電流の極端な増加を防止できる。また、消費電流の増加を防止できるので、過大な消費電流が流れることによるシステムダウンを回避できる。
【0010】
第2の発明の圧電アクチュエータの駆動方法は、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動方法であって、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続することを特徴とする。
【0011】
本発明では、消費電流をモニタし、この消費電流が設定された基準値以上となった場合に、駆動信号の周波数を初期値、例えば、所定の周波数範囲の最大値から最小値まで周波数をスイープさせている場合には、最大値に戻しているので、圧電素子に供給する駆動信号の周波数をスイープ(変化)させる際に、共振周波数部分を外すことができる。このため、圧電素子は、消費電流が最も高くなる共振周波数部分を除いて駆動されるので、消費電流の極端な増加を防止できる。また、消費電流の増加を防止できるので、過大な消費電流が流れることによるシステムダウンを回避できる。
【0012】
さらに、各発明においては、駆動信号の周波数を所定範囲でスイープ(変化)させているので、この周波数範囲内で駆動する圧電素子であれば確実に駆動することができる。
また、駆動信号を所定周波数範囲で常時スイープさせているので、周囲温度、外乱、負荷の変動などで圧電素子の駆動周波数がばらついても、そのバラツキに無調整で対応できる。このため、駆動装置に、周囲温度、外乱、負荷の変動などを検出する検出回路や、その検出データに基づいて駆動信号の周波数を調整する調整回路を設ける必要が無く、駆動装置の構成も簡易化できる。
【0013】
本発明の圧電アクチュエータの駆動方法においては、前記基準値は複数段階に切替可能に構成されていることが好ましい。なお、駆動信号の周波数を所定周波数分シフトする場合には、選択された基準値に応じてシフト量を設定しておくことが好ましい。
基準値を複数段階に切替可能に構成すれば、基準値を切り替えることで、圧電アクチュエータの駆動速度制御および消費電流の制限制御を実行できる。すなわち、消費電流の基準値が小さくなると、その基準値に達した際の駆動信号の周波数は共振周波数から離れ、その分、共振周波数やその近傍の周波数など、圧電素子の振動変位量が大きな部分での駆動が少なくなる。このため、基準値を小さくすれば、圧電アクチュエータの駆動速度および消費電流が低減され、基準値を大きくすれば、圧電アクチュエータの駆動速度および消費電流を増大でき、基準値を切り替えることで、駆動速度および消費電流を制御できる。
【0014】
本発明の圧電アクチュエータの駆動方法においては、前記振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、この検出信号に基づいて前記振動体が振動して前記駆動対象が駆動している駆動状態または前記駆動対象が駆動していない非駆動状態を検出し、前記駆動対象が駆動状態である場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を、前記駆動対象が非駆動状態である場合の速度に比べて、低速に設定することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を短くでき、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を向上できる。また、非駆動状態の時間を短くできるので、負荷などの変動があっても、所定時間(例えば1分間)における駆動時間のばらつきを低減でき、振動体で駆動される被駆動体(駆動対象)の駆動速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も実現できる。
また、駆動信号の周波数のスイープ速度の調整を、駆動対象の駆動状態または非駆動状態で切り替えることができるので、調整処理が簡単になり、速度調整を行う制御回路等の構成も簡易にできる。
なお、駆動信号の周波数スイープ速度は、少なくとも駆動対象が非駆動状態の場合に比べて駆動状態の場合に低速にすればよく、駆動状態における速度は、1段階でもよいし、複数段階に変更可能としてもよい。駆動状態において、駆動信号の周波数のスイープ速度を複数段階に変更可能とすれば、圧電素子が効率良く駆動している状態ほど周波数スイープ速度を低速にすることで、より効率的な制御を行うことができる。
【0016】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置は、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置であって、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせる周波数制御手段を備え、前記周波数制御手段は、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続することを特徴とする。
【0017】
本発明では、周波数制御手段によって、消費電流をモニタし、この消費電流が設定された基準値以上となった場合に、駆動信号の周波数を所定周波数分、例えば、数kHz分シフトしているので、圧電素子に供給する駆動信号の周波数をスイープ(変化)させる際に、共振周波数部分を外すことができる。このため、圧電素子は、消費電流が最も高くなる共振周波数部分を除いて駆動されるので、消費電流の極端な増加を防止できる。また、消費電流の増加を防止できるので、過大な消費電流が流れることによるシステムダウンを回避できる。
【0018】
また、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置は、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置であって、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせる周波数制御手段を備え、前記周波数制御手段は、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続することを特徴とする。
【0019】
本発明では、消費電流をモニタし、この消費電流が設定された基準値以上となった場合に、駆動信号の周波数を初期値、例えば、所定の周波数範囲の最大値から最小値まで周波数をスイープさせている場合には、最大値に戻しているので、圧電素子に供給する駆動信号の周波数をスイープ(変化)させる際に、共振周波数部分を外すことができる。このため、圧電素子は、消費電流が最も高くなる共振周波数部分を除いて駆動されるので、消費電流の極端な増加を防止できる。また、消費電流の増加を防止できるので、過大な消費電流が流れることによるシステムダウンを回避できる。
【0020】
さらに、各発明においては、駆動信号の周波数を所定範囲でスイープ(変化)させているので、この周波数範囲内で駆動する圧電素子であれば確実に駆動することができる。
また、駆動信号を所定周波数範囲で常時スイープさせているので、周囲温度、外乱、負荷の変動などで圧電素子の駆動周波数がばらついても、そのバラツキに無調整で対応できる。このため、駆動装置に、周囲温度、外乱、負荷の変動などを検出する検出回路や、その検出データに基づいて駆動信号の周波数を調整する調整回路を設ける必要が無く、駆動装置の構成も簡易化できる。
【0021】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置においては、前記周波数制御手段は、前記基準値を複数段階に切替可能に構成されていることが好ましい。
基準値を複数段階に切替可能に構成すれば、基準値を切り替えることで、圧電アクチュエータの駆動速度制御および消費電流の制限制御を実行できる。
【0022】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置においては、前記周波数制御手段は、振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、この検出信号に基づいて前記振動体が振動して前記駆動対象が駆動している駆動状態または前記駆動対象が駆動していない非駆動状態を検出し、前記駆動対象が駆動状態である場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を、前記駆動対象が非駆動状態である場合の速度に比べて、低速に設定することが好ましい。
このような構成によれば、駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を短くでき、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を向上できる。また、非駆動状態の時間を短くできるので、負荷などの変動があっても、所定時間(例えば1分間)における駆動時間のばらつきを低減でき、振動体で駆動される被駆動体の駆動速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も実現できる。
【0023】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置においては、前記周波数制御手段は、前記消費電流が基準値以上であるかを検出するための電流検出用基準電圧を出力する定電圧回路と、前記消費電流値を電圧値に変換し、この電圧値を前記電流検出用基準電圧と比較して比較結果信号を出力する電流検出回路と、前記比較結果信号に基づいて出力電圧を調整する電圧調整回路と、電圧調整回路から出力される電圧によって出力信号の周波数を可変可能な可変周波数発振器とを備えて構成されることが好ましい。
【0024】
この構成の発明では、定電圧回路から出力される電流検出用基準電圧と、圧電素子の消費電流値に基づく電圧値とを比較することで、消費電流が基準値以上であるか、つまり共振点に近づいているか否かを検出でき、比較結果信号として出力できる。そして、比較結果信号に基づいて、電圧調整回路から出力される電圧値を制御することで駆動信号の周波数を所定周波数分シフトしたり、初期値に戻すことができるので、駆動信号の周波数制御を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0025】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置においては、前記電圧調整回路は、クロック信号を出力するクロック回路と、アップダウンカウンタと、このアップダウンカウンタのカウンタ値に基づいて出力電圧の電圧値を設定するデジタル/アナログ変換器と、前記クロック信号に基づいて前記アップダウンカウンタのカウンタ値を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記比較結果信号に基づいてアップダウンカウンタのカウンタ値を変更することが好ましい。
【0026】
この構成の発明によれば、制御回路によって、アップダウンカウンタのカウンタ値を制御すれば、駆動信号の周波数を制御できるので、周波数のスイープ制御、シフト制御、周波数を初期値に戻すリセット制御などの各制御を容易に実行できる。
【0027】
本発明の電子機器は、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体及びこの振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部を有する圧電アクチュエータと、この圧電アクチュエータの駆動装置とを備えることを特徴とする。
この構成の発明では、消費電流を抑えることができ、システムダウンも防止できる圧電アクチュエータを備えているので、特に腕時計などの小型で携帯に適した電子機器を提供することができる。
【0028】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムは、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムであって、前記駆動装置に組み込まれたコンピュータを、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続する周波数制御手段として機能させることを特徴とする。
【0029】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムは、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムであって、前記駆動装置に組み込まれたコンピュータを、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続する周波数制御手段として機能させることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の記憶媒体は、前記各プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であることを特徴とする。
【0031】
これらの発明によれば、駆動装置に組み込まれたコンピュータを前記各手段として機能させることで、前述と同様に、圧電アクチュエータの消費電流を低減でき、システムダウンを防止できる。そして、各手段をコンピュータで構成すれば、プログラムを変更するだけで、容易に条件を変更できるため、駆動対象等に応じた適切な制御を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、電子機器の実施形態として、圧電アクチュエータによって駆動される日付表示機構を備えた電子時計を例示する。
【0033】
[1.全体構成]
図1は、本実施形態にかかる電子時計1の日付表示機構90を示す平面図である。この図1において、日付表示機構90の主要部は、圧電アクチュエータ91と、この圧電アクチュエータ91によって回転駆動される駆動対象(被駆動体)としてのロータ92と、ロータ92の回転を減速しつつ伝達する減速輪列と、減速輪列を介して伝達される駆動力により回転する日車93とから大略構成されている。減速輪列は、日回し中間車94と日回し車95とを備えている。これらの圧電アクチュエータ91、ロータ92、日回し中間車94、および日回し車95は、底板9Aに支持されている。
【0034】
日付表示機構90の上方には、円盤状の文字板(図示せず)が設けられており、この文字板の外周部の一部には日付を表示するための窓部が設けられ、窓部から日車93の日付を覗けるようになっている。また、底板9Aの下方(裏側)には、ステッピングモータに接続されて指針を駆動する運針輪列(図示せず)や、電源としての二次電池9B等が設けられている。二次電池9Bは、ステッピングモータや圧電アクチュエータ91、印加装置(図示せず)の各回路に電力を供給する。なお、二次電池9Bに、ソーラ(太陽光)発電や回転錘の回転を利用した発電を行う発電機が接続され、この発電機によって発電した電力が二次電池9Bに充電される構造であってもよい。また、電源は、発電機で充電される二次電池9Bに限らず、一般的な一次電池(例えば、リチウムイオン電池)でもよい。
【0035】
日回し中間車94は、大径部941と小径部942とから構成されている。小径部942は、大径部941よりも若干小径の円筒形であり、その外周面には、略正方形状の切欠部943が形成されている。この小径部942は、大径部941に対し、同心をなすように固着されている。大径部941には、ロータ92の上部の歯車921が噛合している。したがって、大径部941と小径部942とからなる日回し中間車94は、ロータ92の回転に連動して回転する。
日回し中間車94の側方の底板9Aには、板バネ944が設けられており、この板バネ944の基端部が底板9Aに固定され、先端部が略V字状に折り曲げられて形成されている。板バネ944の先端部は、日回し中間車94の切欠部943に出入可能に設けられている。板バネ944に近接した位置には、接触子945が配置されており、この接触子945は、日回し中間車94が回転し、板バネ944の先端部が切欠部943に入り込んだときに、板バネ944と接触するようになっている。そして、板バネ944には、所定の電圧が印加されており、接触子945に接触すると、その電圧が接触子945にも印加される。従って、接触子945の電圧を検出することによって、日送り状態を検出でき、日車93の1日分の回転量が検出できる。
なお、日車93の回転量は、板バネ944や接触子945を用いたものに限らず、ロータ92や日回し中間車94の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクタ、フォトインタラプタ、MRセンサ等の各種の回転エンコーダ等が利用できる。
【0036】
日車93は、リング状の形状をしており、その内周面に内歯車931が形成されている。日回し車95は、五歯の歯車を有しており、日車93の内歯車931に噛合している。また、日回し車95の中心には、シャフト951が設けられており、このシャフト951は、底板9Aに形成された貫通孔9Cに遊挿されている。貫通孔9Cは、日車93の周回方向に沿って長く形成されている。そして、日回し車95およびシャフト951は、底板9Aに固定された板バネ952によって図1の右上方向に付勢されている。この板バネ952の付勢作用によって日車93の揺動も防止される。
【0037】
図2には、圧電アクチュエータ91およびロータ92の拡大図が示されている。この図2に示されるように、圧電アクチュエータ91は、略矩形板状の補強板911と、補強板911の両面に接着された圧電素子912とを備えている。
補強板911の長手方向略中央には、両側に突出する腕部913が形成されており、これらの腕部913の一方がビスなどによって底板9Aに固定されている。なお、他方の腕部913は、底板9Aには固定されず、フリーの状態となっており、圧電アクチュエータ91が振動する場合に振動のバランスをとる錘となっている。
補強板911の対角線上両端には、補強板911の長手方向に沿って突出する略半円形の凸部914がそれぞれ形成されている。これらの凸部914のうち一方は、ロータ92の側面に当接されている。
【0038】
圧電素子912は、略矩形板状に形成され、補強板911両面の略矩形状部分に接着されている。圧電素子912の両面には、めっき層によって電極が形成されている。圧電素子912の表面には、溝でめっき層が絶縁されることにより略矩形状の検出電極912Bが形成されている。この検出電極912Bは、圧電素子912の長手方向中央よりもロータ92側で、かつ、圧電素子912の短手方向中央よりも凸部914側に形成されている。検出電極912B以外の部分は駆動電極912Aとなっている。ここで、検出電極912Bの面積は、駆動電極912Aの面積の30分の1以上7分の1以下に設定されており、より望ましくは15分の1以上10分の1以下に設定されている。
【0039】
このような圧電アクチュエータ91の駆動電極912Aに所定周波数の電圧を印加すると、圧電素子912が長手方向に沿って伸縮する縦一次振動モードの振動を励振する。このとき、圧電アクチュエータ91の対角線上両端には凸部914が設けられているので、圧電アクチュエータ91は全体として長手方向中心線に対して重量がアンバランスとなる。このアンバランスにより、圧電アクチュエータ91は長手方向に略直交する方向に屈曲する屈曲二次振動モードの振動を励振する。したがって、圧電アクチュエータ91は、これらの縦一次振動モードおよび屈曲二次振動モードを組み合わせた振動を励振し、凸部914は、略楕円軌道を描いて振動する。このとき、圧電アクチュエータ91が片側の腕部913のみで固定されていること、および凸部914が対角線上端部に設けられてロータ92からの反力を受けることなどにより、縦一次振動モードの振動の節と、屈曲二次振動モードの振動の節とは、圧電素子912の中央からずれた位置となる。つまり、検出電極912Bは、圧電アクチュエータ91において、縦一次振動モードの振動の節を含み、かつ屈曲二次振動モードの振動の節を含んだ位置に形成されている。従って、本実施形態では、補強板911、圧電素子912により振動体が構成され、凸部914により当接部が構成されている。
【0040】
駆動電極912A、検出電極912B、および補強板911は、それぞれリード線などにより図示しない駆動装置(印加装置)に接続されている。駆動装置の具体的構成は後述する。
ロータ92には、板ばね922が取り付けられており、ロータ92が圧電アクチュエータ91側に付勢されている。これにより凸部914とロータ92側面との間に適切な摩擦力が発生し、圧電アクチュエータ91の駆動力の伝達効率が良好となる。
【0041】
このような時計1では、駆動装置が圧電アクチュエータ91への駆動信号を制御することにより、所定の周波数の駆動信号が印加されると、圧電アクチュエータ91は、縦一次振動モードと屈曲二次振動モードとを組み合わせた振動を励振する。凸部914は、これらの振動モードを組み合わせた略楕円軌道を描いて振動し、その振動軌道の一部でロータ92を押圧することによりロータ92を回転駆動する。
ロータ92の回転運動は、日回し中間車94に伝達され、切欠部943に日回し車95の歯が係合すると、日回し中間車94によって日回し車95が回転し、日車93を回転させる。この回転により日車93が表示する日付が変更される。
【0042】
[2.圧電アクチュエータの駆動装置及び駆動方法]
次に、圧電アクチュエータ91の駆動装置50の構成を図3に基づいて説明する。
図3において、駆動装置50は、圧電アクチュエータ91の圧電素子912に対して駆動信号を出力する駆動回路55と、電流検出用基準電圧を出力する定電圧回路53と、圧電アクチュエータ91(圧電素子912)の消費電流を検出して電圧値に変換すると共に、この電圧値を定電圧回路53から出力される電流検出用基準電圧と比較して比較結果信号を出力する電流検出回路58と、電流検出回路58からの比較結果信号に基づいて出力電圧を調整する電圧調整回路54と、この電圧調整回路54で出力された電圧に対応して駆動回路55に出力する信号の周波数を調整する可変周波数発振器(VCO)56と、を備えている。そして、駆動回路55は、可変周波数発振器56から入力される信号の周波数に応じた駆動信号を圧電素子912に対して出力している。
【0043】
ここで、本実施形態では、駆動回路55、可変周波数発振器56及び電圧調整回路54を備えて圧電アクチュエータ91に供給する駆動信号の周波数を制御する駆動制御部が構成される。そして、この駆動制御部と、定電圧回路53と、電流検出回路58とを備えて周波数制御手段が構成される。
なお、電流検出回路58は、消費電流に基づく電圧値が電流検出用基準電圧以上である場合、つまり消費電流値が基準値以上である場合にはHレベルの比較結果信号を出力し、消費電流値が基準値未満である場合にはLレベルの比較結果信号を出力するように設定されている。
また、圧電素子912つまりは圧電アクチュエータ91の消費電流は、駆動回路55から出力される駆動信号の電流によって検出すればよい。
【0044】
電圧調整回路54は、出力する電圧を所定範囲内で増減させるとともに、電流検出回路58からの比較結果信号に基づいてその電圧値を一定幅シフトするように構成されている。この電圧調整回路54の構成の一例を図4に示す。
電圧調整回路54は、可変周波数発振器56に出力する電圧を調整する電圧調整部541と、複数の周波数のクロック信号(基準信号)を出力可能な基準信号発振器としてのクロック回路542と、このクロック回路542で出力されるクロック信号に対応して電圧調整部541へ信号を出力する制御回路543とを備える。
【0045】
電圧調整部541は、アップダウンカウンタ(UDカウンタ)544と、このUDカウンタ544から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)545とを備えている。
制御回路543は、UDカウンタ544のカウンタ値を予め設定された範囲内で増減するように制御する。この増減パターンは、予め設定しておいてもよいし、圧電素子912の駆動状態などに応じて予め登録された複数のパターンから選択してもよい。なお、増減パターンとしては、前記UDカウンタ544の最大値から最小値までカウンタ値を順次ダウンし、最小値に達したら再度最大値に戻すダウンパターンと、前記UDカウンタ544の最小値から最大値までカウンタ値を順次アップし、最大値に達したら再度最小値に戻すアップパターンと、前記UDカウンタ544の最大値から最小値までカウンタ値をダウンし、最小値に達したら最大値までカウンタ値をアップし、最大値に達したら最小値までカウンタ値をダウンする往復パターンとが適宜設定される。
【0046】
さらに、制御回路543は、電流検出回路58から入力される比較結果信号がLレベルからHレベルに切り替わった際に、前記UDカウンタ544の計数(カウンタ値)を所定数シフトするように構成されている。例えば、制御回路543は、通常は、クロック回路542から出力されるクロック信号のうち、所定のクロック信号(例えば、100kHz)を利用してUDカウンタ544のカウンタ値を変化しているが、比較結果信号がLレベルからHレベルに切り替わった際には、より速いクロック信号(例えば、1MHz)をXパルス分だけUDカウンタ544に入力し、カウンタ値をXだけシフトし、その後、所定のクロック信号の入力に戻す処理を行う。これにより、UDカウンタ544のカウンタ値は、通常は、所定のクロック信号の入力によって変化するが、比較結果信号がLレベルからHレベルに切り替わった際のみ速クロック信号が所定パルス数入力され、カウンタ値がXだけシフトする。
なお、カウンタ値をシフトする方法としては、加算器(スイープアップ時)または減算器(スイープダウン時)を用いて、カウンタ値をセットもしくはリセットしてシフトする方法を用いてもよい。
【0047】
UDカウンタ544は、10ビットあるいは12ビット程度のカウンタが利用でき、UDカウンタ544のダウン入力あるいはアップ入力に制御回路543からパルス信号を入力することで、その信号を計数してカウンタ値を変更するものである。なお、UDカウンタ544のビット数はスイープする周波数幅に応じて選択すればよい。すなわち、分解能(カウンタ値が1変化した際の周波数の変化量)を0.01〜0.25kHz程度にし、スイープ周波数幅を50〜100kHz程度にした場合には、10〜12ビット程度のカウンタを用いる必要があるが、スイープ周波数幅がより小さければ、よりビット数の小さなカウンタ、例えば8〜9ビットのカウンタを利用することもできる。
D/A変換器545は、内部にUDカウンタ544のカウンタ値に応じた周波数制御電圧値が設定されている。そして、このD/A変換器545は、UDカウンタ544から出力されるカウンタ値を入力すると、このカウンタ値に応じた周波数制御電圧値に相当する周波数制御電圧を可変周波数発振器56に出力する。
可変周波数発振器56は、D/A変換器545から出力される電圧に応じた周波数信号を駆動回路55に出力し、駆動回路55は入力された信号の周波数に応じた周波数の駆動信号を圧電素子912に出力する。このため、UDカウンタ544のカウンタ値によって駆動信号の周波数が設定され、かつ、UDカウンタ544のカウンタ値の変化速度つまりは制御回路543が利用するクロック信号の周波数によって駆動信号の周波数のスイープ速度が設定されることになる。
【0048】
従って、電圧調整回路54は、可変周波数発振器56、駆動回路55を介して圧電素子912に供給する駆動信号の周波数をスイープ(増減)させる周波数スイープ(増減)制御機能と、電流検出回路58から出力された比較結果信号に基づいて前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトするスイープ周波数シフト制御機能とを備えている。従って、本実施形態では、周波数制御手段のうち、主に電圧調整回路54により、駆動信号の周波数の増減を制御する周波数増減制御手段および駆動信号の周波数シフトを制御するスイープ周波数シフト制御手段が構成される。
【0049】
次に、駆動装置50を用いた圧電アクチュエータの駆動方法について、図5〜7のフローチャートに基づいて説明する。
図5に示すように、駆動装置50の電源を投入あるいは駆動開始を指示すると、駆動装置50は、圧電素子912に出力する駆動信号の周波数スイープを開始する(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
なお、本実施形態では、周波数スイープの方向、駆動開始時の駆動信号周波数、速度などは、電圧調整回路54に予め設定されている。例えば、スイープ方向はDOWN(駆動信号の周波数をダウンさせる方向)、駆動開始時の駆動信号周波数はfmax、スイープ速度は予め設定された速度(例えば1kHz/sec)とされている。従って、駆動信号の周波数は、周波数範囲のMAX値から前記スイープ速度に応じて周波数が順次減少することになる。また、スイープ周波数シフト処理の回数を判断するための変数CNは初期値「0」に設定されている。
【0050】
この駆動信号の周波数制御は、具体的には、次のようにして行われる。すなわち、制御回路543は、UDカウンタ544のカウンタ値を駆動信号周波数fmaxに対応する値に設定し、その後、クロック回路542からのクロック信号に基づいて、UDカウンタ544のダウン入力にパルス信号を入力してUDカウンタ544のカウンタ値をダウンさせる。
D/A変換器545からはUDカウンタ544のカウント値に応じた電圧が出力されるので、UDカウンタ544のカウンタ値が減少すれば、D/A変換器545から出力される電圧も順次減少する。
そして、その電圧値に対応した周波数の信号が可変周波数発振器56から出力され、この周波数に応じた駆動信号が駆動回路55から出力されて圧電素子912が駆動(励振)される(S2)。
【0051】
圧電素子912が駆動されると、電流検出回路58および電圧調整回路54は圧電素子912の消費電流に基づくスイープ周波数シフト処理を実行する(S3)。
スイープ周波数シフト処理(S3)では、図6に示すように、電流検出回路58が、圧電素子912の消費電流をモニタし(S31)、その消費電流値を基準値と比較する(S32)。なお、この比較処理は、実際には、消費電流を電圧値に変換し、定電圧回路53から出力される電流検出用基準電圧と比較して行われる。
【0052】
S32において、電流検出回路58は、消費電流値が基準値以上であれば、Hレベルの比較結果信号を出力する(S33)。一方、電流検出回路58は、消費電流値が基準値未満であれば、Lレベルの比較結果信号を出力する(S34)。
電圧調整回路54は、Hレベルの比較結果信号を受信すると、シフト処理回数を示す変数CNが「0」であるか否かを判断する(S35)。比較結果信号がLレベルからHレベルに切り替わった際には、CN=0であるため、S35では「Yes」と判断される。
S35で「Yes」と判断されると、スイープ周波数を所定幅シフトする処理が実施され、シフト処理回数を示す変数CNが「1」とされる(S36)。
【0053】
S36でシフト処理が実行されると、スイープ処理が継続される(S37)。
すなわち、比較結果信号がLレベルからHレベルに切り替わると、電圧調整回路54の制御回路543は、クロック回路542からの速クロック信号を所定パルス分だけUDカウンタ544に入力し、UDカウンタ544のカウンタ値を所定数シフトする。すると、D/A変換器545から出力される電圧値も所定電圧シフトし、可変周波数発振器56から出力される信号の周波数も所定周波数シフトする(S36)。
そして、制御回路543は、UDカウンタ544のカウンタ値をシフトした後は、通常のクロック信号の入力に戻すため、駆動信号の周波数のスイープ処理が継続される(S37)。なお、シフト処理(S36)は1スイープ処理中で1回行えばよいため、比較結果信号がHレベルであっても、CN=1になっていると、S35で「NO」と判断され、シフト処理を行わずにスイープ処理が続行される(S37)。
一方、電圧調整回路54は、S34でLレベルの比較結果信号を受信すると、スイープ処理をそのまま続行する(S37)。
【0054】
スイープ周波数シフト処理S3が終了すると、図5に示すように、駆動信号周波数初期化処理S4が実行される。
駆動信号周波数初期化処理S4では、図7に示すように、電圧調整回路54の制御回路543がスイープ方向の設定を確認する(S41)。スイープ方向がDOWN方向であれば、制御回路543は駆動周波数が所定の周波数範囲内の最小値(fmin)であるか否かを判断する(S42)。具体的には、駆動信号の周波数は、UDカウンタ544のカウンタ値に対応しているので、制御回路543は、UDカウンタ544のカウンタ値を確認して駆動周波数が最小値であるか否かを判断する。
そして、スイープ方向がDOWNであり、かつ、駆動周波数が最小値であれば、制御回路543は駆動周波数を最大値(fmax)に変更する(S43)。具体的には、制御回路543はUDカウンタ544のカウンタ値を、駆動周波数の最大値に対応するカウンタ値に変更する。また、変数CNを「0」に戻す。
一方、S42において、駆動周波数が最小値となっていなければ、周波数の初期化処理を行わずに駆動信号周波数初期化処理S4を終了する。
【0055】
なお、本実施形態では、スイープ方向がDOWN方向に設定されていたが、仮にUP方向に設定されていた場合には、S41において「No」となるため、制御回路543は駆動周波数が所定の周波数範囲内の最大値(fmax)であるか否かを判断する(S44)。具体的には、制御回路543は、UDカウンタ544のカウンタ値を確認して駆動周波数が最大値であるか否かを判断する。
そして、スイープ方向がUPであり、かつ、駆動周波数が最大値であれば、制御回路543は駆動周波数を最小値(fmin)に変更し、かつCN=0とする(S45)。具体的には、制御回路543はUDカウンタ544のカウンタ値を、駆動周波数の最小値に対応するカウンタ値に変更する。
また、S44において、駆動周波数が最大値となっていなければ、周波数の初期化処理を行わずに駆動信号周波数初期化処理S4を終了する。
【0056】
駆動信号周波数初期化処理S4が終了すると、図5に示すように、電源切断または駆動停止が指示されたか否かを判断する(S5)。S5で「No」と判断されれば、S2〜S4の処理を繰り返す。一方、S5で「Yes」と判断されれば、駆動制御を終了する。
【0057】
このような制御を行った場合の駆動信号の周波数と、被駆動体の回転数N(rps)、圧電素子912の消費電流I(mA)、インピーダンスimp(Ω)との関係を図8に示す。
駆動信号の周波数はfmaxからfminにDOWN方向にスイープされている。駆動信号の周波数をスイープすることで、圧電素子912の駆動周波数範囲が周囲温度や被駆動体の負荷等に応じて変動しても、圧電素子912を確実に励振(駆動)できる。
圧電素子912のインピーダンスimpは、図8に示すように、縦振動の共振点となる周波数において最も低くなる。従って、消費電流は、インピーダンスが低くなる前記縦振動の共振点において最も高くなる。
前述のように、DOWN方向にスイープしている際に、消費電流が基準値(電流検出比較レベル)に達すると、S36で所定周波数分シフトし、前記共振点が飛ばされる。すなわち、消費電流が基準値に達した周波数f1から共振周波数を飛ばして周波数f2までシフトされる。
その後、周波数スイープが継続し、周波数がfminに達すると、fmaxに戻って再度スイープ処理が続行される。
なお、このシフト量(=f1−f2)は予め設定しておけばよく、通常は数kHz程度にすればよい。
【0058】
[4.実施形態の効果]
従って、本実施形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態の圧電アクチュエータの駆動装置50は、圧電素子912を駆動する駆動信号を、所定周波数範囲内でスイープさせているので、この周波数範囲内で駆動する圧電素子912であれば確実に駆動させることができる。このため、圧電素子912を用いた超音波モータであれば、被駆動体を確実に回転させることができる。
【0059】
(2)また、駆動信号を所定周波数範囲で常時スイープさせているので、周囲温度、外乱、負荷の変動などで圧電素子912の駆動周波数がばらついても、そのバラツキに無調整で対応できる。このため、駆動装置50に、周囲温度、外乱、負荷の変動などを検出する検出回路や、その検出データに基づいて駆動信号の周波数を調整する調整回路を設ける必要が無く、駆動装置50の構成も簡易化できる。
【0060】
(3)さらに、圧電素子912の消費電流を基準値と比較して圧電素子912の駆動状態を検出し、消費電流が基準値以上、つまりインピーダンスが最も低くなるつまり消費電流がピークとなる共振点に、前記駆動信号の周波数が近づいている場合には、駆動信号の周波数を所定周波数分だけシフトしている。
このため、例えば、fmaxからfminまで周波数をスイープさせる1回のスイープ処理時間において、消費電流が増大する共振点部分を除いて駆動できるので、消費電流を低減できる。このため、消費電流が急激に増加してシステムダウンが発生することを防止できる。
【0061】
(4)回転数Nは、図8に示すように、共振点の手前が最も高いが、消費電流が基準値となった時点でも比較的高い。そして、1回のスイープ処理におけるトータル回転数は、図8に示す回転数Nの積算値であるため、前記スイープ周波数シフト部分を除いても十分な回転数が得られる。このため、本実施形態では、消費電流を抑えつつ、高効率回転を実現できる。
【0062】
(5)さらに、本実施形態では、消費電流を抑えることができるので、発熱も抑えることができる。このため、発熱による回路の劣化や共振周波数変動なども抑えることができる。
【0063】
(6)本実施形態では、電流検出回路58において、消費電流を基準値と比較し、電圧調整回路54では、その比較結果信号に基づいて駆動信号の周波数シフトを行うか否かのみを制御すればよいので、駆動装置50の回路構成を簡易にでき、制御処理も容易に実行できる。
【0064】
(7)電圧調整回路54を、クロック回路542、制御回路543、UDカウンタ544、D/A変換器545を備えて構成しているので、周波数シフト処理は、UDカウンタ544のカウンタ値を制御回路543で変更するだけで制御できるので、シフト量も容易に調整できる。
また、電圧調整部541はUDカウンタ544を備えた構成としたので、外付け部品が不要とされ、スイープ周波数のシフト量を容易に可変することができるので、IC化が有利となる。
【0065】
(8)電子時計を、圧電素子912を有する振動体及びこの振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される凸部20を有する圧電アクチュエータ91と、前述の構成の駆動装置50と、圧電アクチュエータ91によって駆動される日付表示機構90と、を備えて構成したので、消費電力が少なく、安定した駆動制御を短時間で達成できる電子時計を提供することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、圧電アクチュエータの駆動装置50の構成や、電圧調整回路54の構成は、図3,4に示す第1実施形態と同一である。
一方、図9,10に示すように、圧電アクチュエータの駆動方法の一部は、前記第1実施形態と相違する。
すなわち、図9に示すように、駆動装置50の電源を投入あるいは駆動開始を指示した後は、前記第1実施形態と同じく、駆動信号の周波数スイープ開始処理S1、圧電素子励振処理S2が実施される。
一方、第2実施形態では、圧電素子励振処理S2の処理後は、スイープ周波数シフト処理S3ではなく、スイープ周波数初期化処理S6が行われる。また、S6の後は、第1実施形態と同じ駆動信号周波数初期化処理S4、電源切断又は駆動停止判断処理S5が行われる。
【0067】
スイープ周波数初期化処理S6は、図10に示すように、第1実施形態のスイープ周波数シフト処理S3と同じ消費電流モニタ処理S31、消費電流値と基準値との比較処理S32を行う。そして、S32で「Yes」と判断され、S33でHレベルの比較結果信号が出力されると、S38で図9のS1に戻り、スイープ周波数が初期化つまり最大周波数fmaxに設定される。
一方、S32で「No」と判断され、S34でLレベルの比較結果信号が出力されると、スイープ処理が継続される(S37)。
【0068】
このような制御を行った場合の駆動信号の周波数と、被駆動体の回転数N(rps)、圧電素子912の消費電流I(mA)、インピーダンスimp(Ω)との関係を図11に示す。
駆動信号の周波数はfmaxからfminにDOWN方向にスイープされ、消費電流が基準値(駆動周波数f1)に達すると、S38で初期化処理S1に戻され、駆動信号も初期周波数(fmax)に戻される。以下、周波数スイープが続行されるので、駆動信号の周波数はfmaxからf1まで減少され、f1に達するとfmaxに戻って再度スイープ処理が続行される。
【0069】
このような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
なお、第2実施形態の駆動信号のスイープ周波数範囲はfmaxからf1であるのに対し、第1実施形態のスイープ周波数範囲はfmaxからf1の範囲と、周波数f2からfminの範囲であるため、1回のスイープ処理時に被駆動体が回転する回転量は第1実施形態のほうが大きいメリットがある。但し、第2実施形態では、周波数範囲が狭い分、1回のスイープ処理にかかる時間も短くできるので、所定時間あたりのスイープ回数を第1実施形態に比べて増加することができ、その分、所定時間あたりに被駆動体が回転する回転量を第1実施形態と同程度にすることもできる。
【0070】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、消費電流が1種類の基準値以上であるか否かのみで制御していたが、複数の基準値を設定し、使用する基準値をその都度選択してもよい。例えば、図12に示すように、3種類の基準値(電流検出比較レベル)1〜3を設定し、これらの基準値1〜3から選択した基準値でスイープ周波数シフト処理S3やスイープ周波数初期化処理S6を制御してもよい。
このように複数の基準値を設定して選択可能としておけば、被駆動体の速度制御や電流制限処理を行うことができる。
【0071】
なお、第1実施形態においては、図12に示すように、選択された基準値1〜3に応じてシフト量を設定しておけばよい。
すなわち、消費電流の基準値が小さくなると、その基準値に達した際の駆動信号の周波数は共振周波数から離れることになる。従って、第1実施形態のように、駆動周波数をシフトして共振周波数部分を飛ばす場合には、そのシフト量を基準値に応じて設定しておけばよい。
【0072】
そして、消費電流の基準値を複数段階で選択可能にしておけば、基準値を小さくすると、その分、駆動周波数が共振周波数から離れた状態で前記基準値に達するため、圧電素子912を駆動する周波数範囲が狭くなり、その分、圧電素子912の駆動量が少なくなる。従って、消費電流の基準値を複数段階で選択することで、1回のスイープ動作における圧電素子912の駆動量も複数段階に変化し、被駆動体の所定時間あたりの駆動量つまり駆動速度を制御することができる。
また、消費電流の基準値およびシフト量を複数段階で選択可能にしてシフトする駆動周波数範囲を変化させれば、その分、消費電流も変化するため、電源電力などに応じて消費電流を制限する必要がある場合には、前記消費電流の基準値を小さくすればよい。すなわち、消費電流の基準値を所定値に設定することで、消費電流をある値以下に制限することができ、電源電圧の低下時に消費電流が増大することでシステムダウンが発生することも防止できる。
【0073】
また、前記各実施形態において、圧電素子912の振動状態(駆動状態)を表す検出信号の振幅に基づいてスイープ速度を変更してもよい。すなわち、圧電素子912の電極912Bから出力される検出信号の振幅は、圧電素子912が駆動すると大きくなる。従って、検出信号の振幅を所定の基準値と比較し、基準値以上であれば圧電素子912が振動して駆動対象が駆動していることが検出できる。
そして、駆動対象が駆動している際には、駆動していない場合に比べてスイープ速度を低速にすれば、例えば、fmaxからfminまで周波数をスイープさせる1回のスイープ処理時間において、駆動対象を駆動している時間を長くでき、非駆動状態の時間を短くできる。
従って、駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を短くできるので、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を高くできる。また、非駆動状態の時間を短くできるので、負荷などの変動があっても、例えば1分間などの所定時間における駆動時間のばらつきを低減でき、圧電素子912で回転駆動される被駆動体の回転速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も可能にできる。
【0074】
なお、検出信号に基づいてスイープ速度を可変する場合には、図13に示すように、前記実施形態の構成に加えて、圧電素子912からの検出信号の振幅検出用基準電圧を出力する定電圧回路52と、前記検出信号を前記基準電圧と比較し、基準電圧以上であればHレベルの信号を出力し、基準電圧未満であればLレベルの信号を出力する振幅検出回路57とを設ければよい。
そして、電圧調整回路54は、図14に示すように、電流検出回路58からの信号に基づいてスイープ周波数シフト処理S3やスイープ周波数初期化処理S6を行うとともに、振幅検出回路57からの信号に基づいてスイープ速度を切り替えて制御するように構成すればよい。
なお、スイープ速度を切り替える振幅検出用基準電圧は、被駆動体が確実に駆動する値に設定してもよいが、駆動信号の周波数が、被駆動体が駆動する周波数域の近傍にあり、あと少しで駆動を開始するような値に設定してもよい。このようにすれば、被駆動体が駆動する周波数域では、必ず低速度スイープに制御できる。
【0075】
第1実施形態において、駆動信号の周波数のスイープパターンは、前記実施形態のように、所定の最大周波数fmaxから最小周波数fminにスイープし、最小周波数fminに達したら、最大周波数fmaxに戻って再度最小周波数fminに向かってスイープするダウンパターンに限らず、常に最小周波数fminから最大周波数fmaxに向かってスイープするアップパターンや、最小値に達したら最大値まで周波数をアップし、最大値に達したら最小値まで周波数をダウンする往復パターンを採用してもよい。
また、これらのスイープパターンを、圧電素子912の駆動状態に基づいて選択するように構成してもよい。
【0076】
第2実施形態では、所定の最大周波数fmaxから駆動周波数をスイープし、消費電流が基準値以上になったら、最大周波数fmaxに戻していたが、所定の最小周波数fminから駆動周波数を増大させるようにスイープし、消費電流が基準値以上になったら、最小周波数fminに戻して初期化するようにしてもよい。
【0077】
駆動装置50としては、前記UDカウンタ544を有する電圧調整回路54を用いたものに限らず、異なる時定数を有する複数のループフィルタを用いた電圧調整回路を有するものなどでもよく、要するに、駆動回路55から圧電素子912に出力される駆動信号の周波数をスイープ可能であり、かつその駆動周波数を所定量シフトしたり、初期状態に戻すことができるものであればよい。
また、電流検出回路58は、圧電素子912の消費電流を検出して基準値と比較できるものであれば具体的な構成を問うものではない。
【0078】
さらに、本発明では、制御部内の各手段等は、各種論理素子等のハードウェアで構成されたものや、CPU(中央処理装置)、メモリ(記憶装置)等を備えたコンピュータを時計や携帯機器内に設け、このコンピュータに所定のプログラムやデータ(各記憶部に記憶されたデータ)を組み込んで各手段を実現させるように構成したものでもよい。
ここで、前記プログラムやデータは、時計や携帯機器内に組み込まれたRAMやROM等のメモリに予め記憶しておけばよい。また、例えば、時計や携帯機器内のメモリに所定の制御プログラムやデータをインターネット等の通信手段や、CD−ROM、メモリカード等の記録媒体を介してインストールしてもよい。そして、メモリに記憶されたプログラムでCPU等を動作させて、各手段を実現させればよい。なお、時計や携帯機器に所定のプログラム等をインストールするには、その時計や携帯機器にメモリカードやCD−ROM等を直接差し込んで行ってもよいし、これらの記憶媒体を読み取る機器を外付けで時計や携帯機器に接続してもよい。さらには、LANケーブル、電話線等を時計や携帯機器に接続して通信によってプログラム等を供給しインストールしてもよいし、無線によってプログラムを供給してインストールしてもよい。
【0079】
このような記録媒体やインターネット等の通信手段で提供される制御プログラム等を時計や携帯機器に組み込めば、プログラムの変更のみで前記各発明の機能を実現できるため、工場出荷時あるいは利用者が希望する制御プログラムを選択して組み込むこともできる。この場合、プログラムの変更のみで制御形式の異なる各種の時計や携帯機器を製造できるため、部品の共通化等が図れ、バリエーション展開時の製造コストを大幅に低減できる。
【0080】
また、本発明は、前記実施形態の電子時計に適用されるものに限らない。すなわち、本発明の圧電アクチュエータの駆動方法や、駆動装置を採用した電子機器としては、腕時計、置時計、柱時計等の電子時計に限らず、各種の電子機器に本発明が適用可能であり、特に小型化が要求される携帯用の電子機器に好適である。ここで、各種の電子機器としては、時計機能を備えた電話、携帯電話、非接触ICカード、パソコン、携帯情報端末(PDA)、カメラ等が例示できる。また、時計機能を備えないカメラ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ機能付き携帯電話等の電子機器にも適用可能である。これらカメラ機能を備えた電子機器に適用する場合には、レンズの合焦機構や、ズーム機構、絞り調整機構等の駆動に本発明の駆動手段を用いることができる。さらに、計測機器のメータ指針の駆動機構や、可動玩具の駆動機構、自動車等のインパネ(instrumental panel)のメータ指針の駆動機構、圧電ブザー、プリンタのインクジェットヘッド、超音波モータ等に本発明の駆動手段を用いてもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、圧電アクチュエータを電子時計1の日付表示機構の駆動に用いていたが、これに限らず、電子時計1の時刻表示針(指針)の駆動に用いてもよい。このようにすれば、通常、指針を駆動するステッピングモータを圧電アクチュエータに置き換えることで、電子時計1の一層の薄型化が実現できるとともに、圧電アクチュエータがステッピングモータよりも磁性の影響を受けにくいことから、電子時計の高耐磁化をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る電子時計における日付表示機構の主要部の構成を示す平面図である。
【図2】前記電子時計で用いられる圧電アクチュエータを示す平面図である。
【図3】圧電アクチュエータの駆動装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】電圧調整回路の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態において圧電アクチュエータを駆動する方法を説明するフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートにおけるスイープ周波数シフト処理方法を説明するフローチャートである。
【図7】図5のフローチャートにおける駆動信号周波数初期化処理方法を説明するフローチャートである。
【図8】本実施形態における駆動信号の周波数と被駆動体の回転数との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態において圧電アクチュエータを駆動する方法を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおけるスイープ周波数初期化処理方法を説明するフローチャートである。
【図11】第2実施形態における駆動信号の周波数と被駆動体の回転数との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の変形例における駆動信号の周波数と被駆動体の回転数との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の他の変形例における圧電アクチュエータの駆動装置の内部構成を示すブロック図である。
【図14】図13の変形例における駆動信号の周波数と被駆動体の回転数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1…電子時計、50…駆動装置、52,53…定電圧回路、54…電圧調整回路、55…駆動回路、56…可変周波数発振器、57…振幅検出回路、58…電流検出回路、90…日付表示機構、91…圧電アクチュエータ、92…ロータ、93…日車、541…電圧調整部、542…クロック回路、543…制御回路、544…UDカウンタ、545…D/A変換器、911…補強板、912…圧電素子、912A…駆動電極、912B…検出電極、914…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動方法であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、
前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動方法であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、
前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記基準値は複数段階に切替可能に構成されていることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、この検出信号に基づいて前記振動体が振動して前記駆動対象が駆動している駆動状態または前記駆動対象が駆動していない非駆動状態を検出し、
前記駆動対象が駆動状態である場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を、前記駆動対象が非駆動状態である場合の速度に比べて、低速に設定することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。
【請求項5】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせる周波数制御手段を備え、
前記周波数制御手段は、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項6】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせる周波数制御手段を備え、
前記周波数制御手段は、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記周波数制御手段は、前記基準値を複数段階に切替可能に構成されていることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記周波数制御手段は、振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、この検出信号に基づいて前記振動体が振動して前記駆動対象が駆動している駆動状態または駆動対象が駆動していない非駆動状態を検出し、前記駆動対象が駆動状態である場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を、前記駆動対象が非駆動状態である場合の速度に比べて、低速に設定することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記周波数制御手段は、前記消費電流が基準値以上であるかを検出するための電流検出用基準電圧を出力する定電圧回路と、前記消費電流値を電圧値に変換し、この電圧値を前記電流検出用基準電圧と比較して比較結果信号を出力する電流検出回路と、前記比較結果信号に基づいて出力電圧を調整する電圧調整回路と、電圧調整回路から出力される電圧によって出力信号の周波数を可変可能な可変周波数発振器とを備えて構成されることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記電圧調整回路は、クロック信号を出力するクロック回路と、アップダウンカウンタと、このアップダウンカウンタのカウンタ値に基づいて出力電圧の電圧値を設定するデジタル/アナログ変換器と、前記クロック信号に基づいて前記アップダウンカウンタのカウンタ値を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較結果信号に基づいてアップダウンカウンタのカウンタ値を変更することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項11】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体及びこの振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部を有する圧電アクチュエータと、請求項5から請求項10のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置と、を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムであって、
前記駆動装置に組み込まれたコンピュータを、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を所定周波数分シフトして周波数スイープを継続する周波数制御手段として機能させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム。
【請求項13】
所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムであって、
前記駆動装置に組み込まれたコンピュータを、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子の消費電流を検出し、この消費電流が基準値以上となった場合には、前記駆動信号の周波数を初期値に戻して周波数スイープを継続する周波数制御手段として機能させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−33907(P2006−33907A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204713(P2004−204713)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】