説明

圧電アクチュエータ

【課題】本発明は、小型かつ低消費電力で、高感度の傾動駆動を実現できる圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】第1の方向に延在し、駆動対象物30を前記第1の方向の両側から支持する1対の中心梁40、40aと、
前記第1の方向と略直交する第2の方向に平行に延在する複数の梁57、57a、58の、隣接する端部同士が両端で交互に連結されたジグザグ状の梁群を含んで構成されるとともに、各梁が圧電素子20を備え、該圧電素子の伸縮変形により前記第2の方向の傾き角度の蓄積が可能な1対の蛇行型梁50、50aと、
前記駆動対象物、前記中心梁及び前記蛇行型梁を取り囲む固定枠120と、を有する圧電アクチュエータであって、
前記1対の蛇行型梁は、一端が前記固定枠に連結され、他端が前記固定枠との連結位置から遠い方の前記中心梁の端部に連結されるとともに、前記駆動対象物及び前記中心梁を両側から囲むように配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータに関し、特に、駆動対象物を傾動駆動する圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射された光を反射するミラー部と、ミラー部をトーションバーを介して駆動する1対の第2の圧電アクチュエータと、第2の圧電アクチュエータを支持する可動枠と、可動枠を駆動する1対の圧電アクチュエータと、この圧電アクチュエータを支持する台座とを備えた光偏光器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の光偏光器において、第2の圧電アクチュエータは、ミラー部とミラー部の両端から外側に伸びた1対のトーションバーとを挟んで対向するように配置され、第2の圧電アクチュエータの一端は1対のトーションバーに連結され、他端は可動枠の内側に連結されて支持される。圧電アクチュエータは、1対のトーションバーと異なる方向にミラー部及び可動枠を挟んで対向するように1対配置され、各圧電アクチュエータの一端が可動枠の外側に連結され、他端は台座に支持される構成を有している。
【0004】
ここで、圧電アクチュエータは、支持体及び支持体上に形成された圧電体を有し、圧電駆動により屈曲変形を行う複数の圧電カンチレバーを含むと共に、複数の圧電カンチレバーの圧電体にそれぞれ駆動電圧を印加するための複数の電極を独立に備え、複数の圧電カンチレバーは各々の屈曲変形を累積するように端部が連結形成され、駆動電圧の印加により各圧電カンチレバーが独立に屈曲変形され、回動可能に構成されている。同様に、第2の圧電アクチュエータも、圧電駆動により屈曲変形を行う1つの圧電カンチレバーを含み、回動可能に構成されている。
【0005】
そして、ミラー部は、1対の第2の圧電アクチュエータにより第1の軸周りで駆動されると共に、1対の圧電アクチュエータにより第1の軸周りと異なる第2の軸周りで可動枠を介して駆動される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−40240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、第2の圧電アクチュエータの外側に、可動枠を介して圧電アクチュエータが連結されているため、圧電アクチュエータにより駆動される第2の軸周りでのミラー部の駆動は、傾角感度が低くなるという場合がある。例えば、特許文献1に開示されている特性曲線では、レーザ光の反射角は30〔V〕の印加電圧で20〔deg〕しか傾かず、ミラー傾角としては10〔deg〕である。しかしながら、レーザ光を、例えば、50〔cm〕の距離でA3サイズの大画面にXGA(eXtended Graphic Array)で高速描画を行うためには、印加電圧30〔V〕以下で36〔deg〕の反射角が必要とされ、ミラー傾角としては、18〔deg〕が必要である。よって、特許文献1に記載の光偏光器では、大画面・高速描画の要求を満たすことができない場合がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の構成で、十分な傾角感度を得ようとすると、圧電アクチュエータに多数の圧電カンチレバーを備える必要があり、圧電アクチュエータが大型化するという場合がある。また、圧電カンチレバーを増加させることにより、消費電力が増加してしまうという場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、小型かつ低消費電力で、高感度の傾動駆動を実現できる圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る圧電アクチュエータは、第1の方向に延在し、駆動対象物(30)に連結されて該駆動対象物(30)を前記第1の方向の両側から支持する1対の中心梁(40、40a)と、
前記第1の方向と略直交する第2の方向に平行に延在する複数の梁(57、57a、58)の、隣接する端部同士が両端で交互に連結されたジグザグ状の梁群を含んで構成されるとともに、各梁(57、57a、58)が圧電素子(20)を備え、該圧電素子(20)の伸縮変形により前記第2の方向の傾き角度の蓄積が可能な1対の蛇行型梁(50、50a)と、
前記駆動対象物(30)、前記中心梁(40、40a)及び前記蛇行型梁(50、50a)を取り囲む固定枠(120)と、を有する圧電アクチュエータであって、
前記1対の蛇行型梁(50、50a)は、一端が前記固定枠(120)に連結され、他端が前記固定枠(120)との連結位置から遠い方の前記中心梁(40、40a)の端部に連結されるとともに、前記駆動対象物(30)及び前記中心梁(40、40a)を両側から囲むように対称に配置されたことを特徴とする。
【0011】
これにより、駆動対象物及びこれを支持している中心梁の両側まで駆動能力を有する蛇行型梁を設けることができ、少ないスペースに多くの駆動源を設置し、小型で高効率のアクチュエータとすることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、前記固定枠(120)は、略四角形の開口を有する枠形状であって、
前記開口内の前記駆動対象物(30)及び前記中心梁(40、40a)と前記固定端との間は、前記1対の蛇行型梁(50、50a)が敷き詰められて配置されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、固定枠内のスペースの大半を駆動源として用いることができ、省スペースで高効率のアクチュエータとすることができる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記1対の中心梁(40)は、前記第1の方向に、前記固定枠(120)と前記第2の方向に延在する梁(57、57a、58)の1本の幅よりも接近した位置まで延在し、
前記1対の蛇行型梁(50)は、前記中心梁(40)及び前記駆動対象物(30)に仕切られるように、前記中心梁(40)及び前記駆動対象物(30)の両側に配置されたことを特徴とする。
【0015】
これにより、簡素な構成でありながら、駆動源を効率良く配置することができ、省スペースかつ高効率のアクチュエータとすることができる。
【0016】
第4の発明は、第2の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記1対の中心梁(40a)は、前記第1の方向に、前記固定枠(120)と前記第2の方向に延在する梁(57、57a、58)の1本の幅より大きい間隔を有して延在し、
前記1対の蛇行型梁(50a)は、前記中心梁(40a)及び前記駆動対象物(30)に前記第2の方向に仕切られるように配置された1対の内梁群(53、54)と、
該内梁群(53、54)の外側の梁(57a)に連結され、前記第1の方向の両側から前記中心梁(40a)及び前記駆動対象物(30)を挟むように配置された1対の外梁群(55、56)と、を含むことを特徴とする。
【0017】
これにより、中心梁と駆動対象物の存在する領域では、中心梁と駆動対象物に仕切られるように蛇行型の梁を敷き詰め、中心梁と駆動対象物の存在しない領域では、中心梁の外側から挟み込むように蛇行型の梁を長く延在させて敷き詰めることができ、領域に応じた高効率の形状とすることができる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記外梁群(55、56)の前記内梁群(53、54)と連結される位置は、前記外梁群(55、56)の内側の梁(58)の端部以外の部分であって、前記1対の外梁群(55、56)の内側の梁(58)の端部同士は、前記内梁群(53、54)を前記第1の方向の両側から挟むように配置された横梁(100)で連結されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、1対の外梁群の傾動を整合させ、第2の方向に駆動対象を傾動駆動しているときに、内梁群に発生する不要な第1の方向に発生してしまう不要な傾角を低減させることができる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記内梁群(53、54)及び前記外梁群(55、56)による前記第2の方向への傾動駆動時に、前記内梁群(53、54)に前記第1の方向への傾きが生じる場合に、前記外梁群(55、56)が前記内梁群(53、54)に生じる前記第1の方向の傾きを相殺するように、前記固定枠(120)に連結されたことを特徴とする。
【0021】
これにより、内梁群に生じる不要な方向への傾角を、外梁群と固定枠との連結位置により低減させることができ、部品数を増加させることなく、構成の調整により容易かつ効果的に不要傾角を低減できる。
【0022】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記蛇行型梁(50、50a)は、非共振により前記駆動対象物(30)を前記第2の方向に傾動駆動することを特徴とする。
【0023】
これにより、非共振モードを用いて、低周波数で駆動対象物を駆動することができ、低速駆動に適切に対応することができる。
【0024】
第8の発明は、第1〜7のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記中心梁(40,40a)は、前記駆動対象物(30)を前記第1の方向に傾動可能な圧電素子(20)を備えることを特徴とする。
【0025】
これにより、2軸駆動により種々のアクチュエータに応用することができ、例えば、駆動対象をミラーとすることにより、マイクロプロジェクタやマイクロスキャナ等への応用も可能となる。
【0026】
第9の発明は、第8の発明に係る圧電アクチュエータにおいて、
前記中心梁(40、40a)は、共振により前記駆動対象物(30)を前記第1の方向に傾動駆動することを特徴とする。
【0027】
これにより、第1の方向には、高速な傾動駆動が可能となり、高速駆動を要求される種々のアクチュエータへの応用が可能となる。
【0028】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、圧電アクチュエータの小型化を図りつつ、傾角感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る圧電アクチュエータの断面構造の一例を示した図である。
【図2】実施例1に係る梁構造15の駆動方法の説明図である。図2(A)は、梁構造15と圧電素子20の部分を示した側面図の一例である。図2(B)は、圧電素子20が収縮変形した状態の一例を示した図である。図2(C)は、圧電素子20が伸長変形した状態の一例を示した図である。
【図3】実施例1に係る圧電アクチュエータの駆動状態の一例を示した図である。
【図4】実施例1に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した図である。図4(A)は、圧電アクチュエータの表面斜視図の一例である。図4(B)は、圧電アクチュエータの裏面斜視図の一例である。図4(C)は、圧電アクチュエータの表面の平面図の一例である。
【図5】駆動対象物30を、手前側に傾動させた状態を示した斜視図である。
【図6】実施例1に係る圧電アクチュエータに生じ得る第1の方向の傾角の説明図である。図6(A)は、図5の状態の圧電アクチュエータの上面図の一例である。図6(B)は、図6(A)の矢視Bの方向から見た圧電アクチュエータの側面図の一例である。
【図7】実施例1の変形例に係る圧電アクチュエータの一例を示した図である。図7(A)は、変形例に係る圧電アクチュエータの上面図の一例である。図7(B)は、図6(B)に対応する矢視Bの方向から見た変形例に係る圧電アクチュエータの側面図の一例である。
【図8】実施例1に係る圧電アクチュエータを2軸駆動の圧電アクチュエータに適用した例を示した図である。
【図9】本発明の実施例2に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した図である。図9(A)は、圧電アクチュエータの表面斜視図の一例である。図9(B)は、圧電アクチュエータの裏面斜視図の一例である。図9(C)は、圧電アクチュエータの表面を示した上面図の一例である。
【図10】実施例2に係る圧電アクチュエータの駆動状態の一例を示した図である。図10(A)は、圧電アクチュエータの駆動状態の一例を示した斜視図である。図10(B)は、圧電アクチュエータの駆動状態の一例を示した上面図である。
【図11】実施例2の圧電アクチュエータの外梁群55、56のみを駆動させた場合の斜視図の一例である。
【図12】実施例2の圧電アクチュエータの内梁群53、54のみを駆動させた場合の斜視図の一例である。
【図13】実施例2の圧電アクチュエータのミラー傾角感度を示した図である。
【図14】参考例として横梁100を設けない圧電アクチュエータの例を示した図である。図14(A)は、横梁100を除去した圧電アクチュエータの構成を示した上面図である。図14(B)は、横梁100を設けない圧電アクチュエータの駆動例を示す斜視図である。
【図15】実施例2に係る圧電アクチュエータと横梁100を有しない圧電アクチュエータのミラー傾角感度と不要傾角を示した図である。
【図16】実施例2に係る圧電アクチュエータと横梁100を有しない圧電アクチュエータの比較側面図である。図16(A)は、実施例2の圧電アクチュエータの側面図の例である。図16(B)は、横梁100を有しない圧電アクチュエータの側面図の例である。
【図17】連結部90と連結部80aとの配置関係について示した図である。図17(A)は、モデルAの圧電アクチュエータの配置構成を示した図である。図17(B)は、モデルBの圧電アクチュエータの配置構成を示した図である。図17(C)は、モデルCの圧電アクチュエータの配置構成を示した図である。図17(D)は、モデルDの圧電アクチュエータの配置構成を示した図である。
【図18】図17に示した各配置構成のパターンの外梁群55、56と、内梁群53、54と、全体の蛇行型梁50aにおける不要傾角を示した図である。
【図19】実施例2に係る圧電アクチュエータを2軸駆動用として構成した場合を示した図である。図19(A)は、2軸圧電アクチュエータの表面斜視図の一例である。図19(B)は、2軸圧電アクチュエータの駆動時の表面斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明の実施例1に係る圧電アクチュエータの断面構造の一例を示した図である。図1において、実施例1に係る圧電アクチュエータは、半導体ウェハ10と、圧電素子20とを備える。半導体ウェハ10は、種々の半導体ウェハ10が用いられてよいが、例えば、SIO(Silicon on Insulator)基板が用いられてもよい。図1においては、半導体ウェハ10が示されているが、シリコン基板11の上に、SiO12と、Si活性層13と、SiO14が積層され、Si活性層14がSiO12、14で挟まれたSOI基板が示されている。図1において、例えば、半導体ウェハ10が全体として350〔μm〕程度の厚さであったときに、SiO12、14は0.5〔μm〕程度、Si活性層13は30〔μm〕程度の厚さであってもよい。つまり、この場合、SiO12、Si活性層14及びSiO14は、合計で31〔μm〕しかなく、Siウェハ10の1/10以下の厚さである。SiO12、Si活性層14及びSiO14は、全体で梁構造15を構成する。なお、半導体ウェハ10の全体の厚さは、用途に応じて種々の厚さとすることができ、例えば、300〜500〔μm〕程度の厚さであってもよい。
【0033】
圧電素子20は、加えられた電圧を力に変換する圧電効果を利用した受動素子である。圧電素子20は、半導体ウェハ10の梁構造15の表面に装着されて設けられてよい。圧電素子20は、圧電体21と、上部電極22と、下部電極23とを備える。圧電素子20は、上部電極22及び下部電極23に電圧が印加されることにより、圧電体21が伸縮変形し、梁構造15を変形させる。圧電素子20は、種々の圧電体21を適用してよいが、例えば、PZT薄膜(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられてもよい。圧電素子20は、例えば、2〔μm〕程度の厚さで形成されてもよい。
【0034】
このような加工は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により加工が行われてよく、微細な圧電アクチュエータを作製することができる。
【0035】
図2は、実施例1に係る梁構造15の駆動方法について説明するための図である。図2(A)は、シリコンから構成される梁構造15と圧電素子20の部分を模式的に示した側面図の一例である。図2(A)に示すように、シリコンから構成される梁構造15の上に、圧電素子20が薄膜状に被覆されている。
【0036】
図2(B)は、圧電素子20が収縮変形した状態の一例を示した図である。図2(B)に示すように、圧電素子20が収縮すると、梁構造15は、下に凸の上方に反るような形状となる。
【0037】
図2(C)は、圧電素子20が伸長変形した状態の一例を示した図である。図2(C)に示すように、圧電素子20が伸長すると、梁構造15は、上に凸の下方に反るような形状となる。
【0038】
図2(B)(C)に示すように、圧電素子20は、印加する電圧の極性又は位相により、上に反ったり下に沿ったりする。本実施例に係る圧電アクチュエータでは、このような圧電素子20の性質を利用して、圧電素子20を駆動源として、駆動対象を駆動する。
【0039】
図3は、実施例1に係る圧電アクチュエータによる梁構造15の駆動状態の一例を示した図である。図3において、複数の梁構造15が、略平行に配置され、隣接する端部同士の1対が連結部16により連結され、全体としてジグザグ状の蛇行型の梁構造15を有している。また、梁構造15の直線部分には、圧電素子20の薄膜が成膜されている。このような構成の蛇行型の梁構造15において、隣接する梁構造15に印加される電圧の極性又は位相が交互に変化するようにすると、図3に示すように、梁構造15の反りによる伸縮変形が蓄積してゆき、全体として、大きな傾きの変位を生み出す。このように、梁構造15をジグザグ状に形成し、駆動源である圧電素子20に隣接する梁構造15同士の極性が逆になるような電圧を印加することにより、角度変化を各梁構造15毎に蓄積し、全体として大きな傾動駆動を行うことができる。本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、このような角度変位の蓄積による傾動駆動を利用する。
【0040】
図4は、実施例1に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した図である。図4(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの表面斜視図の一例であり、図4(B)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの裏面斜視図の一例である。
【0041】
図4(A)に示すように、実施例1に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30が中心に配置され、表面側に梁構造15及び圧電素子20が配置された構成となっている。また、シリコン基板11の厚い部分は、圧電アクチュエータの外側の枠を形成する。
【0042】
図4(B)に示すように、実施例1に係る圧電アクチュエータは、裏面には、圧電素子20は設けられず、外側の枠がシリコン基板11の厚い領域、中央の広い領域が梁構造15を含む半導体ウェハ10の薄い領域で形成される。このように、実施例1に係る圧電アクチュエータは、表面が平面状で、裏面に段差がある立体形状となる。
【0043】
図4(C)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの表面の平面図の一例である。図4(C)において、本実施例に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30と、中心梁40と、蛇行型梁50と、連結部60、70、80と、固定枠120とを備える。蛇行型梁50は、略平行に延在する複数の梁57を含んでいる。
【0044】
駆動対象物30は、本実施例に係る圧電アクチュエータの駆動目的となる対象物であり、種々の駆動対象物30が適用され得る。本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、駆動対象物30が、ミラーである例を挙げて説明する。ミラーを駆動対象物30とする圧電アクチュエータは、マイクロプロジェクタやマイクロスキャナ等に利用することができる。
【0045】
駆動対象物30は、ミラー31と、可動枠32とを備える。ミラー31は、駆動対象そのものであり、ミラー31にレーザ光を照射し、ミラー31が反射光を水平方向に高速で走査させるとともに、鉛直方向に低速で走査することにより、画面全体を反射光で走査することが可能となる。本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、鉛直方向の反射光の低速走査の駆動を、コンパクトかる低消費電力で行う。可動枠32は、ミラー31を支持する変形可能な支持枠である。本実施例に係る圧電アクチュエータは、ミラー31を直接的に支持して駆動することも可能であるが、図4の例においては、可動枠32を介してミラー31を駆動している。しかしながら、本実施例に係る圧電アクチュエータが傾動させるのは、可動枠32も含めた駆動対象物30であるので、ミラー31と可動枠32を区別することなく、駆動対象物30と考えてよい。
【0046】
また、駆動対象物30の可動枠32及びミラー31を設置するための支持台は、図1において説明したように、梁構造15と同じように、半導体ウェハ10の表面のSiO12、14で挟まれたSi活性層13が存在する薄い部分で構成されてよい。
【0047】
中心梁40は、駆動対象物30を、第1の方向において両側から対をなして支持する手段であり、駆動対象物30に連結されている。第1の方向は、図4においては、横方向(X方向)となっている。また、1対の中心梁40は、第1の方向に一直線上に延在しており、駆動対象物30に対して、対称な配置となっている。また、中心梁40は、図1において説明した半導体ウェハ10の薄くなった表面領域の梁構造15の部分で構成されてよい。これにより、中心梁40は、弾性を有することができる。
【0048】
中心梁40は、駆動対象物30を支持するとともに、蛇行型梁50から駆動対称物30へ傾動運動の駆動力を伝達する役割を果たす。蛇行型梁50から生成される駆動力は、図4中の縦方向(Y方向)に駆動対象物30を傾動させる力であるので、中心梁30は、縦方向への傾動力を駆動対象物30に伝達し、駆動対象物30を傾動させる。
【0049】
中心梁40は、蛇行型梁50と、連結部60により連結される。これにより、蛇行型梁50により生じる縦方向(第2の方向)への傾動駆動力を、駆動対象物30に伝達することができる。連結部60も、中心梁40が対をなして設けられるのに対応して、右側の連結部61と左側の連結部62とが対をなして設けられる。
【0050】
中心梁40と蛇行型梁50との連結部60は、中心梁40の最も外側に、対をなして、点対称に設けられてよい。このような配置構成により、蛇行型梁50の蛇行型梁50の蓄積角度を、限られたスペース内で最大限とすることができる。なお、この点の詳細については後述する。また、中心梁40は、固定枠120付近まで第1の方向に延在してよく、第2の方向に延在する梁57の幅よりも狭い間隔しか無い位置まで固定枠12に接近して延在してよい。
【0051】
蛇行型梁50は、駆動対象物30を第2の方向(図4(C)においては縦方向)に傾動させる傾動駆動力を発生させる駆動手段である。蛇行型梁50は、平行に第2の方向に延在する複数の梁57を有し、各梁57の隣接する1対の端部同士が、両端部で交互に連結部70により連結されて、全体としてジグザグ状の形状を有する。蛇行型梁50の表面には、図1において説明した圧電素子20が装着されて設けられ、各梁57が駆動源を備えている。連結部70には、圧電素子20は設けられずに、梁構造15の半導体ウェハ10が露出している。
【0052】
蛇行型梁50の駆動源である圧電素子20は、隣接する梁57同士で、電圧印加極性が反対となるように設けられる。これにより、蛇行型梁50が、図2及び図3において説明したような、傾き角度の蓄積が可能な駆動動作を、全体として行うことができる。
【0053】
蛇行型梁50は、第1梁群51と、第2梁群52の1対の梁群51、52を有する。これにより、駆動対象物30の両側に設けられた1対の中心梁40に対して、第1梁群51及び第2梁群52から各々個別に傾動力を付与することができる。また、第1梁群51と第2梁群52は、中心梁40に同じ大きさの傾動力を付与するために、中心梁40及び駆動対象物30に関して対称の構造を有する。かかる構成において、例えば、中心梁40と第1梁群51との連結部61に連結された梁57が、上方に反る駆動動作を行い、中心梁40と第2梁群52との連結部62に接続された梁57が、下方に反る駆動動作を行えば、中心梁40は手前側に傾動し、駆動対象物30は、手前側に傾動する動作を行う。同様に、中心梁40と第1梁群51との連結部61に連結された梁57が、下方に反る駆動動作を行い、中心梁40と第2梁群52との連結部62に接続された梁57が、上方に反る駆動動作を行えば、中心梁40は奥側に傾動し、駆動対象物30は、奥側に傾動する動作を行う。このように、中心梁40に連結された蛇行型梁50の1対の梁57に、逆方向に反る動作を行わせれば、駆動対称物30を第2の方向の所望の向きに傾動させることができる。
【0054】
蛇行型梁50の一端は、上述のように、中心梁40の連結部60に連結されるが、他端は、固定枠120に連結部80で連結される。連結部80も、第1梁群51に対応した連結部81と、第2梁群52に対応した連結部82とが、対をなして設けられる。
【0055】
固定枠120と蛇行型梁50との連結部80は、中心梁40と蛇行型梁50との連結部60との距離が遠くなるように設けられる。つまり、第1梁群51と中心梁40との連結部61は、第1梁群51の右端に配置されているのに対して、第1梁群51と固定枠120との連結部81は、第1梁群51の左端に配置されている。同様に、第2梁群52と中心梁40との連結部62は、第2梁群52の左端に配置されているのに対して、第2梁群52と固定枠120との連結部82は、第2梁群52の右端に配置されている。このように、蛇行型梁50と中心梁40との連結点60が、蛇行型梁50と固定枠80との連結点80と反対側の離れた位置になるように配置することにより、固定枠80と中心梁40との間に配置可能な蛇行梁50の各梁57の数を多くすることができ、スペース効率を高めることができる。つまり、駆動源である圧電素子20の伸縮量は、印加電圧により定まっているので、より大きく駆動対象物30を駆動させたい場合には、圧電素子20を備えた複数の梁57をどれだけ多く、又は長く配置するかが重要になる。この点、本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、駆動対象物30の傾動方向と直角に延在する中心梁40の傾動方向(縦方向)の両側に、傾動駆動源を備える1対の蛇行型梁50を配置し、各蛇行型梁50と固定枠120との連結部80が、各蛇行型梁50と中心梁40との連結部60と遠くなるように配置することにより、省スペースでありながら、傾角感度の高い傾動駆動を実現することができる。
【0056】
また、蛇行型梁50の梁57を限られたスペース内に多く配置する観点から、実施例1に係る圧電アクチュエータにおいては、中心梁40を長くとり、中心梁40が、固定枠120付近まで延在して設けられた構成とすることが好ましい。
【0057】
図5は、駆動対象物30を、手前側に傾動させた状態を示した斜視図である。第1梁群51及び第2梁群52の双方に、隣り合う梁57に極性又は位相の異なる電圧を印加することで、梁57の長さと本数に応じた傾角が発生している。そして、中心梁40とともに、駆動対象物30を、中心梁40の延在方向(第1の方向)を軸として傾動させている。図5においては、第1梁群51が上昇し、第2梁群52が下降する傾動動作を行い、駆動対象物30を手前側に傾動させている。図5に示すように、傾角は、梁57が長く、本数が多い程大きく蓄積されてゆくので、四角形の枠状の固定枠120の開口の中に、蛇行型梁50の第1梁群51及び第2梁群52を敷き詰めるように配置した本実施例に係る圧電アクチュエータは、省スペースで高い傾角感度を有する。
【0058】
図6は、実施例1に係る圧電アクチュエータに生じ得る第1の方向の傾角を説明するための図である。図6(A)は、図5の状態における実施例1に係る圧電アクチュエータの上面図の一例であり、図6(B)は、図6(A)の矢視Bの方向から見た実施例1に係る圧電アクチュエータの側面図の一例である。
【0059】
図6(A)において、圧電アクチュエータは、図5で説明したように、第1梁群51が上昇し、第2梁群52が下降して、駆動対象物30が、中心梁40の延在方向である第1の方向を軸として、第2の方向の手前側に傾動している状態である。しかし、上面図である図6(A)においては、その傾動変化は表現されていない。
【0060】
図6(B)において、図6(A)における矢視B方向から圧電アクチュエータを視認した状態が示されているが、本来の目的の第1の方向を軸とする第2の方向における傾動のみではなく、第2の方向を軸とする第1の方向における傾動が生じていることが示されている。つまり、図6(B)において、手前側が下降して傾動しているだけでなく、右端が下降して傾動しており、本来の目的とは異なる第1の方向にも傾きを生じてしまっている。このような傾動は、本来の駆動目的とは異なる不要な方向に生じる傾動である。よって、不要な傾動により生じる傾角を、以後、不要傾角と呼ぶこととする。
【0061】
このように、実施例1に係る圧電アクチュエータにおいては、このような若干の不要傾角を伴う場合がある。そこで、このような不要傾角を補正する方法について、以下説明する。
【0062】
図7は、実施例1の変形例に係る圧電アクチュエータの一例を示した図である。図7(A)は、実施例1の変形例に係る圧電アクチュエータの上面図の一例であり、図7(B)は、図6(B)に対応する矢視Bの方向から見た実施例1の変形例に係る圧電アクチュエータの側面図の一例である。
【0063】
図7(A)において、実施例1の変形例に係る圧電アクチュエータは、中央梁40と蛇行型梁50の連結部60に連結された梁57の圧電素子20を延長させた不要傾角補正パターン59を有している。これにより、中央梁40の端部にも圧電素子20による非共振駆動力が加わるようにし、不要傾角をキャンセルするようにしている。つまり、図6(B)において、右端が下降し、左端が上昇する不要傾角が生じていたが、不要傾角補正パターン59により、中央梁40の右端に上昇方向の駆動力が加えられ、左端に下降方向の駆動力が加えられるので、図6(B)で示されていた不要傾角を補正し、不要傾角をキャンセルすることができる。
【0064】
なお、図6及び図7には、1つの例しか挙げられていないが、印加電圧の極性又は位相を逆にすることにより、逆方向の傾動及び補正が可能となることは、言うまでもない。
【0065】
図8は、実施例1に係る圧電アクチュエータを、2軸駆動の圧電アクチュエータに適用した例を示した図である。今まで、蛇行型梁50による1軸駆動の非共振駆動による圧電アクチュエータの例について説明してきたが、実施例1に係る圧電アクチュエータは、2軸駆動の圧電アクチュエータに容易に適用することができる。
【0066】
図8において、1対の中心梁40に、1対の圧電素子20が装着されて設けられた例が示されている。この場合、中心梁40を共振駆動させることにより、駆動源が1対の圧電素子20のみであっても、例えば、30〔kHz〕といった高速で駆動対象物30を駆動することができる。これにより、例えば、圧電アクチュエータがマイクロプロジェクタに適用され、駆動対象物30がミラーである場合には、ミラーを水平方向には共振駆動により中心梁40で高速に走査させ、鉛直方向には、非共振駆動により蛇行型梁50で低速に走査させることにより、小型で高効率の2軸駆動の圧電アクチュエータを実現することができる。
【0067】
このように、実施例1に係る圧電アクチュエータによれば、小型でスペース効率の高い圧電アクチュエータを、1軸駆動又は2軸駆動で実現することができ、必要に応じて、発生する不要傾角を補正し、高精度の傾動駆動を行うことができる。
【実施例2】
【0068】
図9は、本発明の実施例2に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した図である。図9(A)は、実施例2に係る圧電アクチュエータの表面斜視図の一例であり、図9(B)は、実施例2に係る圧電アクチュエータの裏面斜視図の一例である。なお、実施例2に係る圧電アクチュエータにおいて、実施例1に係る圧電アクチュエータと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略又は簡略化するものとする。また、実施例1において、図1乃至図3を用いて説明した断面構成及び圧電素子20を用いた駆動原理は、実施例2にも同様に適用されるものとする。
【0069】
図9(A)において、実施例2に係る圧電アクチュエータは、中央に駆動対象物30を備え、その周囲に圧電素子20が敷き詰められた平面構成となっている点は、実施例1に係る圧電アクチュエータと同様である。駆動対象物30及び圧電素子20は、図1において説明した梁構造15の領域が用いられ、外側の固定枠には、図1において説明したシリコン基板11の厚い領域が用いられる。図9(A)において、中心梁40aの長さが短くなった点が、実施例1に係る圧電アクチュエータと異なっているが、この点の詳細については、後述する。
【0070】
図9(B)において、外側の固定枠のみが厚いシリコン基板11の部分であり、他の部分は、梁構造15と同様に薄く形成され、中央が凹状の段差のある形状となっている点は、実施例1に係る圧電アクチュエータと同様である。
【0071】
図9(C)は、実施例2に係る圧電アクチュエータの表面を示した上面図の一例である。図9(C)において、実施例2に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30と、中心梁40aと、蛇行型梁50aと、連結部60a、70a、80a、90、110と、横梁100と、固定枠120とを備える。実施例2に係る圧電アクチュエータの構成要素としては、連結部90、110と、横梁100が追加された点が、実施例1に係る圧電アクチュエータと異なっている。
【0072】
駆動対象物30は、実施例1と同様に、ミラー等の種々の駆動対象物30が適用されてよい。実施例2においても、ミラー31を駆動対象物30とした例を挙げて説明し、可動枠32を備えてもよい点も、実施例1と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
中心梁40aは、駆動対象物30を両側から挟むように支持するとともに、駆動対象物30を傾動させる駆動力を伝達する手段であり、この点は、実施例1に係る中心梁40と同様であるので、その説明を省略する。実施例2における中心梁40aは、その長さが実施例1における中心梁40よりも短く、固定枠120付近まで延在せず、実施例1に係る中心梁40の略1/3程度の長さとなっている点が、実施例1とは異なっている。
【0074】
蛇行型梁50aは、1対の第1梁群51aと第2梁群52aとを含む。第1梁群51aは、駆動対象物30を右側と上側(奥側)から囲んでおり、第2梁群52aは、駆動対象物30を左側と下側(手前側)から囲んでいる。第1梁群51aは、内梁群53及び外梁群55を含み、第2梁群52aは、内梁群54及び外梁群56を含む。
【0075】
実施例2に係る圧電アクチュエータにおいて、1対の蛇行型梁50aが、中心梁40a及び駆動対象物30を両側から取り囲んでいる点は、実施例1の蛇行型梁50と同様であるが、第1梁群51a及び第2梁群52aが、形状の異なる内梁群53、54と、外梁群55、56を各々含んでいる点で、実施例1の蛇行型梁50と異なっている。内梁群53、54は、駆動対象物30及び中心梁40aに2分されるように配置された、長さの短い第2の方向(縦方向)に延在する平行な複数の梁57aを含んでいる。外梁群55、56は、第2の方向に分割されることなく、長く延在する平行な複数の梁58を含んでいる。また、第1梁群51aの内梁群53と外梁群55とは、連結部91で連結され、外梁群55と固定枠120とは、連結部81aで接続されている。同様に、第2梁群52aの内梁群54と外梁群56とは、連結部92で連結され、外梁群56と固定枠120とは、連結部82aで連結されている。連結部91、92は、外梁群55、56の内側の梁58の端部ではなく、中間点に設けられており、内梁群53、54の外側の梁57aの端部と連結されている。そして、外枠群55と外枠群56の内側端部同士は、1対の横梁100により各々接続されている。1対の横梁100は、各々第1の方向に平行に延在し、外梁群55と外梁群56の奥側の端部同士と、外梁群55と外梁群56の手前側の端部同士を、連結部110において各々連結している。
【0076】
次に、かかる構成を有する実施例2に係る圧電アクチュエータの、技術的意義について、実施例1に係る圧電アクチュエータとの比較も含めて説明する。
【0077】
実施例1に係る中心梁40は、固定枠120付近まで延在しているため、蛇行型梁50の全体の横幅を長くとることができる。しかしながら、実施例1に係る圧電アクチュエータは、第1梁群51の出力端である連結部61と、第2梁群52の出力端である連結部62とが、中心梁40を介して接続されているため、中心梁40が、両者の出力を均衡させるように作用してしまい、第1梁群51及び第2梁群52で生成される駆動力を最大限活用していないという点がある。つまり、例えば、第1梁群51が上昇傾動で、第2梁群52が下降傾動の場合を考えると、第1梁群51の上昇が蓄積され、最も梁57が上昇するのは、本来的には、連結点61である。同様に、第2梁群52の下降が蓄積され、最も梁57が下降するのは、本来的には連結点62である。しかしながら、連結点61と連結点62は、中心梁40で接続されているため、互いの変位を抑制するように作用し、本来的な第1梁群51で得られる傾動変位及び第2梁群で得られる傾動変位よりも小さくなってしまう。つまり、実施例1に係る中心梁40及び蛇行型梁50の構成は、省スペースという点では非常に優れているが、より大きな傾角感度を得るという点においては、改善の余地を残している。
【0078】
そこで、実施例2においては、同一スペースにおける傾角感度を更に高めるため、中心梁40aを、実施例1に係る中心梁40よりも短くし、中心梁40aの第1の方向の両側には、長く延在する梁58を配置し、傾角感度を更に向上させる構成としている。つまり、中心梁40a及び駆動対象物30の存在する中央領域は、実施例1に係る圧電アクチュエータと同様に、中心梁40a及び駆動対象物30を、第2の方向(縦方向)の両側から、1対の内梁群53、54が取り囲むような構成となっている。一方、中心梁40a及び駆動対象物30が存在しない両側の領域は、中心梁40a及び駆動対象物30を第1の方向(横方向)の両側から、1対の外梁群55、56が取り囲むように配置されている。そして、外梁群55、56の各梁58の長さは、中心梁40a及び駆動対象物30の制約が無いので、固定枠120が有する四角形の開口の縦方向の長さを総て用いて、内梁群53、54の梁57aよりも長く2倍以上の長さに構成されている。
【0079】
ここで、外梁群55、56は、内梁群53、54に使用されている梁57aの全体の長さと同じ全体の長さの梁58を使用した場合に、内梁群53、54よりも傾角感度を向上させることができる。つまり、外梁群55、56は、固定枠120に連結された連結部81a、82aを出発点として、駆動対象物30の存在する中央方向に向けて、各梁58において傾角を蓄積してゆくことができる。また、外梁群55、56の最終的な出力端は、外梁群55、56と内梁群53、54との連結点91、92であり、特に中心梁40aからの抑制は受けない構成となっている。
【0080】
一方、内梁群53、54は、上述のように、中心梁40aからの抑制を受けるため、外梁群55、56よりも単位長さ当たりの梁57aの傾角感度は低いものの、中心梁40a及び駆動対象物30の縦方向の両側に隙間無く内梁群53、54を敷き詰めることができるため、外梁群55、56で生成した傾角感度を更に増加させることができる。つまり、実施例2に係る圧電アクチュエータにおいては、蛇行型梁50aを、内梁群53、54と外梁群55、56の二重構造とすることで、印加電圧に対する傾角感度を更に向上させることができる。
【0081】
ここで、1対の中心梁40aは、固定枠120との間隔が、第2の方向に延在する外梁群55、56の梁58の1本の幅より大きくなるように延在すれば、図9(C)に示したような、内梁群53、54の外側に更に外梁群55、56を設けることができる構成とすることができる。
【0082】
図10は、実施例2に係る圧電アクチュエータを駆動させた状態の一例を示した図である。図10(A)は、実施例2に係る圧電アクチュエータを駆動させた状態の一例を示した斜視図であり、図10(B)は、実施例2に係る圧電アクチュエータを駆動させた状態の一例を示した上面図である。
【0083】
図10(A)において、第1梁群51a及び第2梁群52aの外梁群55、56と内梁群53、54が協働し、駆動対象物30が手前側に傾動した状態が示されている。外梁群55、56の傾動変位は、内梁群53、54の傾動変位よりも大きく、外梁群55、56を設けることにより、傾角感度を向上させることができることが示されている。
【0084】
図10(B)においては、図10(A)の駆動状態における上面図が示されている。上面図では、傾動による形状の変化は認識できないが、図10(B)においては、変移度合いを模様の違いで示しており、模様の境界線は、地図の等高線と同様に考えることができる。図10(B)において、変位度合いを示す模様の境界線となっている等高線が、駆動対称物30の存在する中央付近において、実施例1の図6(A)に示された等高線よりも水平になり、不要傾角の少ない傾動駆動をしていることが示されている。
【0085】
図11は、実施例2に係る圧電アクチュエータの外梁群55、56のみを駆動させ、内梁群53、54を駆動させなかった場合の斜視図の一例である。図11において、外梁群55、56のみが傾動駆動させた場合には、傾斜を示す等高線が水平となり、不要傾角が殆ど生じない状態であることが分かる。
【0086】
図12は、実施例2に係る圧電アクチュエータの内梁群53、54のみを駆動させ、外梁群55、56を駆動させなかった場合の斜視図の一例である。図12において、内梁群53、54のみを駆動させると、傾斜を示す等高線に偏りが生じ、不要傾角が生じ易い状態となるが、手前側への傾動は行われており、内梁群53、54による駆動も、駆動対象物30の傾動駆動に寄与していることが分かる。
【0087】
図13は、図10乃至図12に示した実施例2に係る圧電アクチュエータの駆動状態に応じた単位電圧におけるミラー傾角感度を示した図である。図13において、図10のように、内梁群53、54及び外梁群55、56の総ての梁57a、58を駆動させた場合には、0.8〔deg/V〕の傾角感度が得られる。一方、図11で示したような外梁群55、56のみ駆動させた場合には、0.63〔deg/V〕の傾角感度が得られ、図12で示したような内梁群53、54のみを駆動させた場合には、0.17〔deg/V〕の傾角感度が得られた。
【0088】
図13より、外梁駆動は、内梁駆動よりも傾角感度への寄与が3倍以上あって大きく、外梁群55、56を設けることにより、傾角感度を大きく向上させることができることが分かる。一方、内梁駆動も、外梁駆動より大きさは小さいものの、傾角感度の向上に寄与しており、外梁群55、56に加えて、内梁群53、54を設けることが、傾角感度の向上に効果的であることが示されている。
【0089】
従来技術においては、ミラー31の傾動軸と同じ延在方向にのみ、梁を設けている状態であったので、実施例2に係る圧電アクチュエータの外梁駆動を行った状態にほぼ等しいと考えられる。よって、本実施例に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30の傾動軸方向の両側のみならず、傾動軸と直角な方向の両側にも内梁群53、54を配置して傾角感度を高めているので、省スペースで高効率の傾角感度を達成できる構成であると言える。
【0090】
図9に戻り、横梁100の意義について説明する。図9(C)において、外梁群55、56の第1の方向について内側の両端同士を連結する横梁100が設けられているが、横梁100は、駆動時の不要傾角を抑制するのに効果がある。実施例2に係る圧電アクチュエータにおいては、内梁群53、54の外側端部は、実施例1に係る圧電アクチュエータと異なり、固定枠120ではなく、可動状態にある外梁群55、56に連結点91、92で連結されている。このように、実施例2に係る圧電アクチュエータにおいては、内梁群53、54が、固定枠120ではなく、可動状態の外梁群55、56に連結されているため、不要傾角が生じ易い状態にある。
【0091】
そこで、図9(C)に示すように、可動状態の外梁群55、56の内側の梁58の両端同士を連結して内梁群53、54の基準点が固定状態に近くなるようにし、不要傾角を低減させることができる。
【0092】
図14は、参考比較例として、横梁100を設けない場合の圧電アクチュエータの一例を示した図である。図14(A)は、実施例2に係る圧電アクチュエータから、横梁100を除去した状態の圧電アクチュエータの構成を示した上面図である。横梁100が除去されたことより、外梁群55、56は、一端が固定枠120と連結部81a、82aされ、他端が内梁群53、54の連結部91、92とのみ連結された状態となる。
【0093】
図14(B)は、横梁100を設けない圧電アクチュエータを駆動した場合の一例を示す斜視図である。図14(B)を、横梁100を有する実施例2に係る圧電アクチュエータの駆動時の斜視図である図10(A)と比較すると、傾き角を示す等高線の偏りが大きくなり、不要傾角が増加した状態が示されている。
【0094】
図15は、横梁100を有する実施例2に係る圧電アクチュエータと、横梁100を有しない比較例の圧電アクチュエータのミラー傾角感度と不要傾角を示した図である。図15において、横梁100を有する場合と有しない場合を比較すると、ミラー傾角感度については、横梁100を有する場合の0.80〔deg/V〕に比較して、横梁100が無い方が1.12〔deg/V〕と大きなミラー傾角感度を示している。
【0095】
しかしながら、不要傾角を比較すると、横梁100を有する場合は、0.12〔deg〕であるのに対して、横梁100を有しない場合は、2.09〔deg〕と10倍以上大きくなってしまっている。よって、横梁100を有する場合と有しない場合のミラー傾角感度の差は、0.32〔deg/V〕しか無いが、不要傾角については、1.92〔deg〕となり、その差が大きい。よって、若干傾角感度を低下させたとしても、横梁100を設けた方が、全体として高性能な圧電アクチュエータを実現することができることが分かる。
【0096】
図16は、横梁100を有する実施例2に係る圧電アクチュエータと、横梁100を有しない比較例に係る圧電アクチュエータの比較側面図の一例である。図16(A)は、本実施例に係る横梁100を備えた圧電アクチュエータの側面図の一例であり、図16(B)は、横梁100を有しない比較例に係る圧電アクチュエータの側面図の一例である。
【0097】
図16(A)においては、図10(B)の状態における側面図が示されており、不要傾角は生じていない。一方、図16(B)においては、図14(B)の状態における側面図が示されており、右端が下降する不要傾角が生じている。
【0098】
このように、横梁100を設けることにより、不要傾角の少ない圧電アクチュエータを実現することができる。
【0099】
図17は、内梁群53、54と外梁群55、56の連結部90と、外梁群55、56と固定枠120の連結部80aとの配置関係について示した図である。図17に示す配置構成のパターンを適切に設定することにより、不要傾角を低減させることができるので、図17及び図18を用いて、その内容について説明する。
【0100】
図17(A)は、モデルAの圧電アクチュエータの連結部81a、82a、91、92の配置構成を示した図である。図17(A)において、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと、中心の駆動対象物20に関して点対称の関係にあるとともに、総ての連結部81a、91、92、82aが、略同一対角線上にある配置構成の圧電アクチュエータが示されている。
【0101】
図17(B)は、モデルBの圧電アクチュエータの連結部81a、82a、91、92の配置構成を示した図である。図17(B)において、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと対称の関係に無く、連結部81a及び連結部82aが第2の方向について奥側に配置された構成の圧電アクチュエータが示されている。
【0102】
図17(C)は、モデルCの圧電アクチュエータの連結部81a、82a、91、92の配置構成を示した図である。図17(C)において、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと対称の関係に無く、連結部81a及び連結部82aが第2の方向について手前側に配置された構成の圧電アクチュエータが示されている。
【0103】
図17(D)は、モデルDの圧電アクチュエータの連結部81a、82a、91、92の配置構成を示した図である。図17(D)において、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと、中心の駆動対象物20に関して点対称の関係にあるとともに、連結部81a、82a同士と連結部91、92同士を結ぶ直線が、タスキ掛けで交わる配置構成の圧電アクチュエータが示されている。
【0104】
図18は、図17に示した各配置構成のパターンの外梁群55、56と、内梁群53、54と、全体の蛇行型梁50aにおける不要傾角を示した図である。
【0105】
図18において、1V当たりの不要傾角〔deg/V〕について着目すると、外梁群55、56と内梁群53、54とで正負の符号が逆になっているのは、図17(A)のモデルAの場合のみである。つまり、総てのモデルについて、内梁群53、54の不要傾角は、−0.14又は−0.13〔deg/V〕と負の値なっている。一方、外梁群55、56の不要傾角は、モデルB、C、Dが−0.02又は−0.072〔deg/V〕と負の値となっているのに対し、モデルAのみが0.008〔deg/V〕と正の値となっている。全体の蛇行型梁50aの1V当たりの不要傾角は、内梁群53、54と外梁群55、56の1V当たりの不要傾角を加算したものであり、モデルAは、内梁群53、54と外梁群55、56の不要傾角が異符号で相殺するが、他のモデルB〜Dは、同符号で不要傾角を増大させる結果となっている。よって、全体の蛇行型梁50aとしての不要傾角は、モデルAが−0.006で最小であり、他のモデルB〜Dは、−0.014又は−0.020と負の向きに大きくなっている。従って、図17(A)に示したモデルAのみが、外梁群55、56と内梁群53、54の不要傾角同士が打ち消し合う構造になっている。
【0106】
図18において、ミラー18deg時の不要傾角〔deg〕及びA3描画時のずれ量の項目についても同様の結果が示されている。つまり、モデルB〜Dは、外梁群55、56と内梁群53、54の不要傾角及びずれ量がともに負の値で、全体の蛇行型梁50aの不要傾角及びずれ量は負の値の絶対値を増大させている。これに対し、モデルAは、外梁群55、56の不要傾角及びずれ量が正の値をとり、内梁群53、54の不要傾角及びずれ量が負の値をとり、全体の蛇行型梁50aの不要傾角及びずれ量を相殺して、負の値の絶対値を減少させている。このように、モデルAのように、外梁群55、56と内梁群53、54の不要傾角の符号、つまり傾動方向が逆となるように、内梁群53、54と外梁群55、56との連結部91、92及び外梁群55、56と固定枠120との連結部81a、82aを配置構成することにより、圧電アクチュエータの蛇行型梁50aの不要傾角及びずれ量を低減させることができる。
【0107】
なお、図17及び図18において、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと対称の関係に無い図17(B)のモデルB及び図17(C)のモデルCは、上述の図18の不要傾角及びずれ量の3項目の全梁、外梁及び内梁について、ほぼ同様の中間の値を示している。一方、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと、中心の駆動対象物20に関して点対称の関係にある図17(A)のモデルA及び図17(D)のモデルDは、不要傾角及びずれ量の3項目について、モデルAが最小でモデルDが最大の値を示している。また、モデルA〜Dについて、内梁及び外梁の項目を個々に比較すると、全体で内梁の不要傾角及びずれ量の値の差は小さく、外梁の項目の差が大きくなっている。
【0108】
このことから、内梁群53と外梁群55との連結部91及び外梁群55と固定枠120との連結部81aが、内梁群54と外梁群56との連結部92及び外梁群56と固定枠120との連結部82aと、中心の駆動対象物20に関して点対称の関係にあると、外梁群55、56は、内梁群53、54の不要傾角及びずれ量を相殺するか大きく増大させる動作をすることが分かる。
【0109】
よって、実施例2に係る圧電アクチュエータの不要傾角を低減させるためには、1つの蛇行型梁50aを構成する固定枠120と外梁群55、56との連結部90及び外梁群55、56と内梁群53、54との連結部80aの配置関係が、他方の対をなしている蛇行型梁50aを構成する固定枠120と外梁群55、56との連結部90及び外梁群55、56と内梁群53、54との連結部80aと駆動対象物30に関して点対称をなすように配置し、かつ1対の蛇行型梁50a全体で外梁群55、56と内梁群53、54の不要傾角の向きが相殺するような配置構成とすればよい。
【0110】
本実施例においては、そのような不要傾角を相殺する配置構成は、モデルDのような、1対の連結部80a同士を結んだ直線と、1対の連結部90同士を結んだ直線がタスキ掛けで交わる異なる方向の対角線上に乗る配置ではなく、モデルAの1対の連結部80a同士を結んだ直線と1対の連結部90同士を結んだ直線が同方向の対角線に乗る配置である。このように、1対の蛇行型梁50aの連結部80a、90同士が、中心の駆動対象物30について点対称となるように配置し、かつ外梁群55、56と内梁群53、54同士の不要傾角の傾動の向きが相殺するように配置することにより、スペース効率が高く、不要傾角も少ない高精度の圧電アクチュエータとすることができる。
【0111】
また、図18において、モデルA〜Dについて、1V当たりのミラー傾角〔deg/V〕の項目について着目して比較すると、モデルB、Cが0.86〔deg/V〕で最も高く、次いでモデルDが0.83〔deg/V〕で高く、モデルAが0.80〔deg/V〕が最も低くなっている。しかしながら、その差は0.06又は0.03〔deg/V〕で小さいので、単位印加電圧当たりの傾角感度が若干低下しても、不要傾角を低減する構成とした方が、全体として高性能な圧電アクチュエータとして構成することができる。
【0112】
同様に、図18において、ミラー18deg傾角に必要な電圧〔V〕の項目について、モデルA〜Dを比較すると、モデルB、Cが21.0〔V〕で最も低く、次いでモデルDが21.7〔V〕で低く、モデルAが22.5〔V〕で最も高い値となっており、モデルB〜Dの方が、モデルAよりも低消費電力型で高効率であることが分かる。しかし、この項目についても、電圧差は1.5又は0.8〔V〕と大きくなく、また本実施例に係る圧電アクチュエータは、十分に傾角感度が向上した構成であるので、低消費電力の低減よりも不要傾角の低減の要請の方が高い場合には、モデルAを採用する方が好ましい。
【0113】
このように、本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、1対の蛇行型梁50aの連結部80a、90の配置構成を、外梁群55、56と内梁群53、54の不要傾角が相殺する配置構成とすることにより、不要傾角の少ない高精度な圧電アクチュエータとすることができる。また、横梁100を設けることにより、相乗的に不要傾角を低減させることができる。
【0114】
図19は、実施例2に係る圧電アクチュエータを、2軸駆動用の圧電アクチュエータとして構成した場合を示した図である。図19(A)は、実施例2に係る2軸圧電アクチュエータの表面斜視図の一例であり、図19(B)は、実施例2に係る2軸圧電アクチュエータの駆動時の表面斜視図の一例である。
【0115】
図19(A)において、第1の方向に延在する1対の中心梁40aの表面に、駆動源である圧電素子20が被覆されている。これにより、本実施例に係る2軸圧電アクチュエータは、駆動対象物30を、第2の方向を軸として、第1の方向にも傾動駆動させることが可能となる。この場合、圧電素子20は、1対しか存在しないので、十分な傾角感度を得るため、共振駆動させることが好ましい。例えば、中心梁40aを用いて、駆動対称物30を、共振駆動により第2の方向を軸として30〔kHz〕で傾動駆動するとともに、蛇行型梁50aを用いて、第2の方向と直角な第1の方向を軸として、非共振駆動により60〔Hz〕で傾動駆動するようにしてもよい。
【0116】
図19(B)において、1対の中心梁40aの共振駆動により、駆動対象物30が第2の方向を軸とする傾動運動している状態が示されている。具体的には、駆動対象物30の右側が上昇し、左側が下降した傾動状態が示されている。中心梁40aによる第2の方向を軸とする第1の方向の傾動駆動は、共振駆動を用いるので、駆動対象物30を高速に傾動駆動することが可能である。例えば、本実施例に係る2軸圧電アクチュエータを、マイクロプロジェクタやマイクロスキャナに用いた場合には、中心梁40aを共振駆動させて駆動対象物30のミラー31でレーザ光の反射光を水平方向に高速走査させ、蛇行型梁50aを非共振駆動させて鉛直方向に反射光を低速走査させることにより、ミラー31を2軸駆動することができる。
【0117】
このように、実施例2に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30を支持する中心梁40aを、2つ目の軸方向の傾動駆動源とすることにより、2軸駆動用のアクチュエータに容易に適用することができる。
【0118】
以上説明したように、本実施例に係る圧電アクチュエータによれば、傾角感度を向上させることができ、低価格化を図ることができる。つまり、不要傾角を構造的に減少させつつ、印加電圧に対する傾角感度の高い圧電アクチュエータを得ることができる。具体的には、実施例2に係る圧電アクチュエータにより、従来技術と同じ態様である外梁群55、56のみの駆動に対し、内梁群53、54を設けたことにより、27〔%〕の傾角感度の向上が可能となった。27〔%〕の傾角感度の向上により、駆動電圧を従来の約78〔%〕に下げることが可能となる。つまり、消費電力は、駆動電圧の2乗に比例するため、消費電力を従来の約62〔%〕に抑えることが可能になる。
【0119】
また、駆動電圧を従来と同等に保つと、小型化が可能となる。素子面積が78〔%〕程度になるため、1枚の半導体ウェハ10から素子に利用できる数が増加し、小型化と低価格化を実現できる。
【0120】
更に、実施例2に係る圧電アクチュエータは、スペース効率の高いアクチュエータを実現できる。特に、2軸用の圧電アクチュエータとして用いる場合には、非共振駆動用の圧電素子パターンを伴う蛇行型梁50aと、共振駆動用の圧電素子パターンを伴う中心梁40aを、固定枠120の開口部内に隙間無く、無駄なく敷き詰めるように配置することがで、高いスペース効率を実現することができる。
【0121】
また、実施例2に係る圧電アクチュエータは、外梁群55、56を設けて傾角感度を高める構成を採用した際に、横梁100を設け、不要傾角を抑制している。更に、外梁群55、56と内梁群53、54とに発生する不要傾角を、構造的に打ち消す配置とし、傾角感度を高めつつ不要傾角を抑制する構成としている。
【0122】
なお、本実施例に係る圧電アクチュエータは、10×10×0.5〔mm〕以下の小型に構成することができる。また、本実施例に係る圧電アクチュエータをプロジェクションミラー用アクチュエータとして利用した場合には、50〔cm〕の距離で、A3サイズの大画面にXGA(1024×768ピクセルの解像度)で高速描画を行うことができる。この場合、例えば、非共振駆動の1軸は60〔Hz〕で18〔deg〕傾動させ、共振駆動のもう1軸は、30〔kHz〕で24〔deg〕傾動させることができる。圧電素子20には、0−25〔V〕の電圧を印加し、非共振駆動側の第1の方向の軸周りに、ミラー31を0−18〔deg〕傾けることができる。このように、本実施例に係る圧電アクチュエータによれば、小型で高性能なミラー用アクチュエータを実現することができる。
【0123】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。特に、本実施例においては、不要傾角の補正は、実施例1及び実施例2の双方とも、機械的構成を用いて補正を行ったが、演算時のソフトウェアにおいて補正処理を行うようにしてもよい。この場合、不要傾角の補正は、総てソフトウェアで行ってもよいし、一部、本実施例において説明した構成を採用するようにしてもよい。この場合においても、本実施例に係る圧電アクチュエータは、スペース効率が高い、高感度で小型の圧電アクチュエータとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、駆動対象物を傾動駆動する圧電アクチュエータ全般に利用することができ、特に、半導体ウェハを利用したミラー用アクチュエータ等の小型のアクチュエータに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
10 半導体ウェハ
11 シリコン基板
12、14 SiO
15 Si活性層
20 圧電素子
21 圧電体
22 上部電極
23 下部電極
30 駆動対象物
31 ミラー
32 可動枠
40、40a 中心梁
50、50a 蛇行型梁
51、51a 第1梁群
52、52a 第2梁群
53、54 内梁群
55、56 外梁群
57、57a、58 梁
59 不要傾角補正パターン
60〜62、70〜72、80〜82、80a〜82a、90〜92、110 連結部
100 横梁
120 固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在し、駆動対象物に連結されて該駆動対象物を前記第1の方向の両側から支持する1対の中心梁と、
前記第1の方向と略直交する第2の方向に平行に延在する複数の梁の、隣接する端部同士が両端で交互に連結されたジグザグ状の梁群を含んで構成されるとともに、各梁が圧電素子を備え、該圧電素子の伸縮変形により前記第2の方向の傾き角度の蓄積が可能な1対の蛇行型梁と、
前記駆動対象物、前記中心梁及び前記蛇行型梁を取り囲む固定枠と、を有する圧電アクチュエータであって、
前記1対の蛇行型梁は、一端が前記固定枠に連結され、他端が前記固定枠との連結位置から遠い方の前記中心梁の端部に連結されるとともに、前記駆動対象物及び前記中心梁を両側から囲むように対称に配置されたことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記固定枠は、略四角形の開口を有する枠形状であって、
前記開口内の前記駆動対象物及び前記中心梁と前記固定端との間は、前記1対の蛇行型梁が敷き詰められて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記1対の中心梁は、前記第1の方向に、前記固定枠と前記第2の方向に延在する梁の1本の幅よりも接近した位置まで延在し、
前記1対の蛇行型梁は、前記中心梁及び前記駆動対象物に仕切られるように、前記中心梁及び前記駆動対象物の両側に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記1対の中心梁は、前記第1の方向に、前記固定枠と前記第2の方向に延在する梁の1本の幅より大きい間隔を有して延在し、
前記1対の蛇行型梁は、前記中心梁及び前記駆動対象物に前記第2の方向に仕切られるように配置された1対の内梁群と、
該内梁群の外側の梁に連結され、前記第1の方向の両側から前記中心梁及び前記駆動対象物を挟むように配置された1対の外梁群と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記外梁群の前記内梁群と連結される位置は、前記外梁群の内側の梁の端部以外の部分であって、前記1対の外梁群の内側の梁の端部同士は、前記内梁群を前記第1の方向の両側から挟むように配置された横梁で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記内梁群及び前記外梁群による前記第2の方向への傾動駆動時に、前記内梁群に前記第1の方向への傾きが生じる場合に、前記外梁群が前記内梁群に生じる前記第1の方向の傾きを相殺するように、前記固定枠に連結されたことを特徴とする請求項5に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記蛇行型梁は、非共振により前記駆動対象物を前記第2の方向に傾動駆動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記中心梁は、前記駆動対象物を前記第1の方向に傾動可能な圧電素子を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記中心梁は、共振により前記駆動対象物を前記第1の方向に傾動駆動することを特徴とする請求項8に記載の圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−263736(P2010−263736A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114275(P2009−114275)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】