説明

圧電センサおよび電子弦楽器

【課題】外部ノイズの影響を受けにくく、かつ、信号を感度よく検出する圧電センサおよび電子弦楽器を提供すること。
【解決手段】加圧されることにより電位を生ずる、第1の面2aと第1の面2aに対して表裏の関係にある第2の面2bを有する第1の高分子圧電体2と、第1の高分子圧電体2の外縁部分OTを避けて第2の面2b側に配置されたシグナル電極12と、第1の面2aのシグナル電極12に対応する部分を覆って配置された第1のグランド電極22とを備え、面荷重を負荷すると第1の高分子圧電体2のシグナル電極12が配置された部分INに生ずる応力が、シグナル電極12が配置されていない外縁部分OTに生ずる応力より大きくなる圧電センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電センサおよび電子弦楽器に関し、特に感度の高い圧電センサおよび該圧電センサを備える電子弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に圧電センサで弦の振動を電気信号に変換するアコースティックギター等の電子弦楽器用の圧電センサでは、弦を支えるコマ部に圧電センサを設置し、各弦の振動を均一に検出できるよう、圧電センサは長板状に形成される。そこで、製造時における加工のし易さ等から、高分子圧電体が好適に用いられる。しかし、高分子圧電体ではインピーダンスが高く、外部ノイズを拾い易い。そのために、シールドテープで覆っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−160265号公報(図1、2および段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シールドテープで覆うと、圧電センサに伝達される弦の振動が減衰し、正しく圧電センサに伝えられない恐れがある。また、電子弦楽器用の圧電センサでは、小さな弦の振動も感度よく圧電センサにて検出することが重要である。そこで本発明は、外部ノイズの影響を受けにくく、かつ、信号を感度よく検出する圧電センサおよび電子弦楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様としての圧電センサは、例えば図1に示すように、加圧されることにより電位を生ずる、第1の面2aと第1の面2aに対して表裏の関係にある第2の面2bを有する第1の高分子圧電体2と;第1の高分子圧電体2の外縁部分OTを避けて第2の面2b側に配置されたシグナル電極12と;第1の面2aのシグナル電極12に対応する部分を覆って配置された第1のグランド電極22とを備え;面荷重を負荷すると、第1の高分子圧電体2のシグナル電極12が配置された部分INに生ずる応力が、シグナル電極12が配置されていない外縁部分OTに生ずる応力より大きくなる。
【0006】
このように構成すると、第1の高分子圧電体のシグナル電極が配置された部分に生ずる応力が、シグナル電極が配置されていない外縁部分に生ずる応力より大きくなるので、シグナル電極が配置された部分の高分子圧電体に生ずる電位が大きくなり、シグナル電極で第1の高分子圧電体に生ずる電位を感度よく検出することができる。また、シグナル電極が外縁部分を避けて配置されるので、外部ノイズの影響を低減できる。
【0007】
また、本発明の第2の態様としての圧電センサは、第1の態様としての圧電センサにおいて、第1の高分子圧電体2が、ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムである。
このように構成すると、第1の高分子圧電体がポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムであるので、柔軟性に優れ、また、工業的に生産しやすい。
【0008】
また、本発明の第3の態様としての圧電センサでは、例えば図4に示すように、第2の態様としての圧電センサ110において、第1の高分子圧電体2が、細長形状であり;ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの延伸方向が、細長形状の長手方向Xと直交する。
このように構成すると、細長形状の第1の高分子圧電体において、長手方向の曲げにより生ずる電位を小さくできる。
【0009】
また、本発明の第4の態様としての圧電センサは、例えば図1に示すように、第1ないし第3のいずれかの態様としての圧電センサ100において、第1のグランド電極22の第1の高分子圧電体2に配設された面と異なる面に段差30を設け、第1の高分子圧電体2のシグナル電極12が配置された部分に生ずる応力を大きくする。
このように構成すると、第1のグランド電極の第1の高分子圧電体に配設された面と異なる面に段差が設けられるので、段差側から押されることにより、シグナル電極が配置された部分に生ずる応力が大きくなる。
【0010】
また、本発明の第5の態様としての圧電センサは、例えば図1に示すように、第1ないし第3のいずれかの態様としての圧電センサ100において、第2の面2bとシグナル電極12とに接着する絶縁性の接着層6と;接着層6の第2の面2bと接着する面と異なる面に接着し、第1の高分子圧電体2と極性が逆向きの第2の高分子圧電体4と;第2の高分子圧電体4の接着層6と接着する面と異なる面にシグナル電極12に対応する部分を覆って配置された第2のグランド電極24とを備える。
このように構成すると、絶縁性の接着層を挟んで第1の高分子圧電体と極性が逆向きの第2の高分子圧電体を備えるので、圧電センサからの電気出力が大きくなる。
【0011】
また、本発明の第6の態様としての圧電センサは、例えば図1に示すように、第5の態様としての圧電センサ100において、第1のグランド電極22の第1の高分子圧電体2側の面と異なる面および第2のグランド電極24の第2の高分子圧電体4側の面と異なる面の少なくとも一の面に段差30を設け、第1の高分子圧電体2および第2の高分子圧電体4のシグナル電極12が配置された部分INに生ずる応力をシグナル電極12が配置されていない外縁部分OTに生ずる応力より大きくする。
このように構成すると、一の面に段差を設けることで、容易に2層の高分子圧電体においてシグナル電極が配設された部分に生ずる応力が大きくなる。
【0012】
また、本発明の第7の態様としての圧電センサは、例えば図2(b)に示すように、第5の態様としての圧電センサ104において、接着層6は、シグナル電極14より縦弾性係数が小さな材料で形成され;シグナル電極14は、第1の高分子圧電体2および第2の高分子圧電体4のシグナル電極14が配置された部分INに生ずる応力が、シグナル電極14が配置されていない外縁部分OTに生ずる応力より大きくなるように厚く形成される。
このように構成すると、シグナル電極を厚く形成することで、容易に2層の高分子圧電体においてシグナル電極が配置された部分に生ずる応力が大きくなる。
【0013】
また、本発明の第8の態様としての圧電センサは、例えば図6(a)および(b)に示すように、第5ないし第7のいずれかの態様としての圧電センサ120において、第1の高分子圧電体2および第2の高分子圧電体4並びに接着層6が延長された延長部72を備え、延長部72の一部分には、第1のグランド電極22と第2のグランド電極24とが延長し、延長部72の第1のグランド電極22と第2のグランド電極24とが延長した部分とは、第1の面2aに垂直な方向から見て異なる部分にシグナル電極12が延長する。
このように構成すると、グランド電極とシグナル電極が延長部に延長し、互いに異なる部分に延長するので、端子を取り出し易い。
【0014】
また、本発明の第9の態様としての圧電センサは、例えば図6(b)に示すように、第8の態様としての圧電センサ120において、延長部72の第1のグランド電極22と第2のグランド電極24とが延長した部分を貫通して延長部72に固定されるグランドカシメ端子60と;延長部72のシグナル電極12が延長した部分を貫通して延長部72に固定されるシグナルカシメ端子50と;グランドカシメ端子60と導通する導電性フィルム28と;導電性フィルム28の一の面に配設された絶縁性フィルム8とを備え;導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とで、延長部72を巻き囲む。
このように構成すると、導電性フィルムと絶縁性フィルムとでグランドカシメ端子とシグナルカシメ端子が固定された延長部を巻き囲むので、端子部分がシールドされ、外部ノイズの影響を低減できる。
【0015】
また、本発明の第10の態様としての圧電センサは、例えば図6(a)に示すように、第9の態様としての圧電センサ120において、導電性フィルム28が第1のグランド電極22あるいは第2のグランド電極24と一体に形成され;絶縁性フィルム8が第1の高分子圧電体2あるいは第2の高分子圧電体4と一体に形成される。
このように構成すると、端子部分を絶縁するための導電性フィルムと絶縁性フィルムとをグランド電極と高分子圧電体と一体に成形できるので、製造しやすい。
【0016】
また、本発明の第11の態様としての電子弦楽器は、例えば図7に示すように、振動する弦210と;弦210の振動を検知する第1ないし第10のいずれかの態様としての圧電センサ120とを備える。
このように構成すると、上記の圧電センサを備えるので、感度よく検出することができ、また、外部ノイズの影響を低減できる電子弦楽器となる。
【0017】
また、本発明の第12の態様としての電子弦楽器は、例えば図7に示すように、第11の態様としての電子弦楽器200において、弦210を支えるコマ220を備え;圧電センサ120がコマ220により面荷重を負荷される。
このように構成すると、弦を支えるコマにより面荷重を負荷される圧電センサで信号を検知するので、確実に精度高く、信号を検知できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧電センサが、加圧されることにより電位を生ずる第1の面と第1の面に対して表裏の関係にある第2の面を有する第1の高分子圧電体と、第1の高分子圧電体の外縁部分を避けて第2の面側に配置されたシグナル電極と、第1の面のシグナル電極に対応する部分を覆って配置された第1のグランド電極とを備え、面荷重を負荷すると第1の高分子圧電体のシグナル電極が配置された部分に生ずる応力がシグナル電極が配置されていない外縁部分に生ずる応力より大きくなるので、シグナル電極が配置された部分の第1の高分子圧電体に生ずる電位が大きくなり、信号を感度よく検出することができ、また、シグナル電極が外縁部分を避けて配置されるので、シグナル電極で外部ノイズを低減できる。よって、外部ノイズの影響を受けにくく、かつ、信号を感度よく検出する圧電センサを提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、電子弦楽器が、振動する弦と、弦の振動を検知する上記の圧電センサとを備えるので、外部ノイズの影響を受けにくく、かつ、信号を感度よく検出する電子弦楽器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態としての圧電センサ100について説明する。図1は、圧電センサ100の構成を説明する、長手方向に直交する面での断面図である。圧電センサ100は、第1の面2aと第2の面2bとを有する第1の高分子圧電体としての板状の高分子圧電体2と、第2の高分子圧電体としての板状の高分子圧電体4と、2層の高分子圧電体2・4の間に挟まれて高分子圧電体2・4を接着する接着層6とを備える。接着層6で接着された2層の高分子圧電体2・4を挟むように第1のグランド電極としてのグランド電極22と第2のグランド電極としてのグランド電極24との2層のグランド電極22・24が形成される。また、2層の高分子圧電体2・4の内の第1の高分子圧電体2のグランド電極22と接する第1の面2aと表裏の関係にある第2の面2bの側、すなわち、接着層6の側にシグナル電極12が形成される。シグナル電極12は、圧電センサ100では、第2の面2b側として接着層6の内部で第1の高分子圧電体2に接する位置に形成されているが、2層の高分子圧電体2・4の間すなわち接着層6内に形成されればよい。ただし、荷重が作用する信号検出面に近い位置に配置した方が、信号の立ち上がりや微小信号の検出において、好適である。圧電センサ100では、図1に示す上側の面が信号検出面となるので、シグナル電極12は第1の高分子圧電体2の側に配設されている。なお、シグナル電極12は1層しか形成されていないが、第1の高分子圧電体2に接するシグナル電極と第2の高分子圧電体4に接するシグナル電極との2層が形成されてもよい。シグナル電極12とグランド電極22・24との間に、絶縁体である高分子圧電体2・4を挟むので、シグナル電極12とグランド電極22・24との間は、蓄電できるコンデンサのように構成される。
【0022】
高分子圧電体2・4は、フッ化ビニリデン系高分子、シアン化ビニリデン系共重合体等、特に限定されず、周知の高分子圧電体を用いて形成することができる。高分子圧電体は、セラミックス材料を用いた圧電体より、電圧出力係数が大きいので与えられた負荷に対して生ずる電位が大きく、また、柔軟性に富み加工し易い。また、共振することがなく、共振によるひずみを生じないという利点がある。さらに軽量であり、薄く成形することができる。中でも、フッ化ビニリデン系高分子の一種であるポリフッ化ビニリデンPVDF一軸延伸フィルムおよびフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体は好適に用いられる。ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムは、一軸延伸することにより圧電性を顕著に示す結晶が得られ、特に大面積化が可能で、薄く成形でき、工業的生産に適している。ただし、延伸方向への引張応力によっても電位を生ずる特性を有する。また、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体では、フッ化ビニリデンを主成分とし、すなわち50%以上含有する、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体を、延伸することなく、キュリー温度と融点との間で熱処理することにより圧電性を顕著に示す結晶が得られる。
【0023】
高分子圧電体2・4は、極性を逆にして配設される。すなわち、板厚方向に荷重を負荷した場合に、正(プラス)に帯電する側を接着層6側に、負(マイナス)に帯電する側をグランド電極22、24側に配設する。第1の高分子圧電体2では、第1の面2a側に負に帯電する側を、第2の面2b側に正に帯電する側を配設し、第2の高分子圧電体4では、第1の高分子圧電体2と表裏を逆に配設する。このように、高分子圧電体2・4の極性を逆にして配設することにより、単層の高分子圧電体に対し、加算される蓄電量を有することとなり、ほぼ2倍の大きな電気出力を生ずることになる。なお、実施の形態によっては、負(マイナス)に帯電する側を接着層6側に配設してもよい。
【0024】
シグナル電極12は、圧電センサ100の外縁部分OTを避けた中央部INに配置される。ここで、外縁部分OTとは、圧電センサ100の外部ノイズの影響を受ける範囲であり、圧電センサ100の厚さによっても異なるが、典型的には各高分子圧電体2・4の厚さと同じ幅を有する。例えば圧電センサ100の厚さが0.3mmで高分子圧電体2・4の厚さがそれぞれ0.1mmの場合、端部から0.1mmの範囲であり、端部からの距離を大きくすれば外部ノイズの影響をより取り除くことができる。このようにシグナル電極12を外縁部分OTを避けて配置することにより、外部ノイズは、薄い圧電センサ100を経路として厚さに比し深く入り込まなければシグナル電極12に到達しないので、外部ノイズの減衰が大きくなる。よって、圧電センサ100の幅方向(図1の横方向)からシグナル電極12への外部ノイズの影響を実質的に取り除くことができる。なおここでは、シグナル電極12が、外部ノイズの影響を受ける範囲である外縁部分OTだけを除いた範囲に配置されるものとして説明しているが、シグナル電極12は、外縁部分OTを避けつつより狭い範囲の中央部INに配置されてもよい。
【0025】
グランド電極22・24は、典型的には圧電センサ100の幅、すなわち、高分子圧電体2・4の幅と同じ幅を有して配設される。グランド電極22・24は、絶縁性を有する高分子圧電体2・4を挟むことになり、シールドとしての機能を有する。そこで、グランド電極22・24をシグナル電極12より幅広く覆うように配設することにより、圧電センサ100の厚さ方向(図1の縦方向)からシグナル電極12への外部ノイズの影響を実質的に取り除くことができる。圧電センサ100では、グランド電極22・24が高分子圧電体2・4の幅と同じ幅を有して配設されているが、グランド電極22・24が配設される範囲は、少なくともシグナル電極12に対応する部分を覆う範囲であれば、ほぼ外部ノイズの影響を取り除くことができ、さらに、広くすればより確実に外部ノイズの影響を取り除くことができるので好ましい。ここで「シグナル電極12に対応する部分」とは、シグナル電極12が配置された部分を、圧電センサ100の板厚方向あるいは高分子圧電体2の板厚方向(図1の上下方向)に投影したとき、所定の面上(ここではグランド電極22の外側の面上)にできる投影像の部分を指す。
【0026】
一のグランド電極22の第1の高分子圧電体2に配設された面と異なる面に突起物30が設けられ、段差が形成されている。段差は、周囲より盛り上がっている盛り上がり段差である。すなわち、グランド電極22が高分子圧電体2と接する面(以降、「内側の面」ともいう。)と反対側の面(以降、「外側の面」ともいう。)に突起物30が設けられて、外側の面の一部が凸に形成されている。突起物30は、薄い板が挿入されてもよいし、周知の印刷技術によりグランド電極22の外側の面上に印刷により形成されてもよい。突起物30は、典型的にはシグナル電極12に対応する部分に設置されるが、前述の投影像の部分と一部でも重なっていれば、必ずしもシグナル電極12に対応する部分の全てに設置されなくてもよい。ただし、製造上の位置ずれを吸収するため、突起物30をシグナル電極12より少し大きめとすると、圧電センサ100の感度のバラツキを防ぐことができるので好ましい。なお、突起物30として、薄い板を挿入したりせずに、後述の保護層42をシグナル電極12に対応する部分だけ厚く形成してもよい。特に、保護層42が硬く、典型的には高分子圧電体2・4より硬くて変形しにくいときには、保護層42を厚く形成してもよい。保護層42を厚く形成することにより突起物30を形成すると、製作が容易となる。しかし、薄い板を挿入したり、印刷により、形成すると、突起物30を硬い材料で形成できるので、突起物30の作用が確実に得られて好適である。
【0027】
段差の高さは、圧電センサ100の寸法・形状、用途等によっても異なるが、5μm以上、好ましくは30μm以上とする。5μm以下の段差では、製造時のバラつきにより、段差の効果が得られなくなる可能性がある。30μm以上の段差があれば、より確実に段差のある部分で荷重を受けるようになる。なお、段差が大きすぎると段差の部分が破損し易くなったり、高分子圧電体に特有の屈曲性が失われたりするので、あるいは、製作上の理由により、段差の高さは0.5〜1mm以下とするのが好適である。突起物30は、例えば銀などの金属あるいはカーボンなどを含有する導電性ペーストを印刷後に固化することにより形成される。金属を含有する導電性ペーストとすると、導電性が高くなる。カーボンを含有する導電性ペーストとすると、酸化等の劣化をすることがなく、また、価格的にも安価となる。また、突起物30は、金属箔あるいはカーボン箔なども用いてもよい。金属箔を用いるとと、加工が容易で、かつ、靭性が高いので破損しにくい。また、カーボン箔を用いると、硬度が高く、かつ、軽量である。
【0028】
グランド電極22および突起物30を覆って、保護層42が形成される。保護層42は、グランド電極22や突起物30を外部から保護するための層で、例えばポリイミドなどで形成される。また、グランド電極24を覆って、保護層42と同様の保護層46が形成される。保護層46に重ねてさらに弾性層としてのゴム層44が形成される。ゴム層44は、圧電センサ100を載置したときに、下部からの振動を減衰するためにゴムや軟質プラスチックなどで形成された層である。圧電センサ100の厚さは、例えば、保護層42・46間で250μm〜300μmで、ゴム層44の厚さは500μm程度である。
【0029】
続いて、圧電センサ100の作用について説明する。圧電センサ100をゴム層44を下にして平面(不図示)上に載置する。圧電センサ100の上部(保護層42側)に、圧電センサ100に面荷重を負荷する荷重作用体(不図示)を当接する。荷重作用体は突起物30すなわち段差より広い平面を有し、該平面から面荷重が圧電センサ100に作用する。なお、面荷重とは、段差等によりそこに大きな荷重が作用するような剛性を有する面から圧電センサ100に負荷される分布荷重で、典型的には圧電センサ100に対し実質的に剛である平面からの分布荷重である。荷重作用体の振動等の変位などにより、荷重作用体から圧電センサ100に面荷重が作用する。荷重作用体から圧電センサ100に作用する面荷重は、突起物30による段差に大きく作用し、その周縁部に作用する荷重は小さくなる。したがって、高分子圧電体2・4において、段差が設けられた部分、すなわち、シグナル電極12が配置された部分INに生ずる応力は、その周囲に生ずる応力より大きくなる。そこで、シグナル電極12が配置された部分INにて高い電位を生ずる。よって、シグナル電極12に高い電圧が発生し、感度の高い圧電センサ100となる。
【0030】
また、シグナル電極12は、高分子圧電体2・4で絶縁され、高分子圧電体2・4を挟んでグランド電極22・24で板厚方向(上下方向)を覆われている。グランド電極22・24は接地されるので、グランド電極22・24がシールド作用を有し、外部ノイズの影響を低減する。さらに、シグナル電極12は、圧電センサ100の外縁部分OTを避けた中央部INに配置されるので、圧電センサ100の幅方向(図1の横方向)からシグナル電極12への外部ノイズの影響が低減される。したがって、外部ノイズの影響を受けにくい圧電センサ100となる。
【0031】
図2に圧電センサ100の変形例を示す。図2は、圧電センサ100の変形例を説明する断面図で、(a)は突起物30をグランド電極22と高分子圧電体2との間に設けた例、(b)は突起物を設けずに、シグナル電極14を厚く形成した例、(c)は二つの突起物30・32を設けて圧電センサ106の両面に段差を形成した例を示す。
【0032】
図2(a)に示す圧電センサ102では、突起物30をグランド電極22の内側の面に設けて、段差を形成している。突起物30をグランド電極22の内側の面に設けて段差を形成しても、圧電センサ100で説明した作用・効果を得ることができる。なお、突起物30とグランド電極22との間に別の層が挿入されてもよい。
【0033】
図2(b)に示す圧電センサ104では、突起物で段差を形成せず、シグナル電極14を厚く形成している。シグナル電極14は、典型的には銅などの金属で形成され、シグナル電極14の周囲の接着層6は例えば高分子圧電体2としてのポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムと相溶性のよいウレタン系樹脂で形成される。一般的に金属の縦弾性係数は樹脂の縦弾性係数より大きい。そのため、厚いシグナル電極14が配置された部分INでは、シグナル電極14が配置されていない外縁部OTより板厚方向(図2(b)の上下方向)の剛性が高くなる。よって、圧電センサ104に荷重作用体(不図示)から面荷重が作用すると、シグナル電極14が配置され剛性が高い部分INの高分子圧電体2・4に生ずる応力は、その周囲の外縁部分OTにて生ずる応力より大きくなる。シグナル電極14は、例えば、保護層42・46間の厚さの5分の1以上の厚さ、好ましくは4分の1以上の厚さとする。そこで、シグナル電極14が配置された部分INにて高い電位を生ずる。よって、シグナル電極14に高い電圧が印加され、感度の高い圧電センサ104となる。
【0034】
図2(c)に示す圧電センサ106では、ゴム層44(図2(a)、(b)参照)を形成せず、第2の高分子圧電体4側のグランド電極24にも突起物32を設けて段差を形成する。例えば、極めて高感度が要求される用途に用いる場合には、圧電センサ106のように段差を両面に形成することにより、高分子圧電体2・4のシグナル電極12が配置された部分INに生ずる応力は、その周囲の外縁部分OTに生ずる応力よりさらに大きくなり易い。また、盛り上がり段差が大きくなるので、面荷重を作用する荷重作用体(不図示)が傾斜しても、面加重が安定して盛り上がり段差に、すなわち、所定の位置の高分子圧電体2・4に作用し、好適である。
【0035】
また、図3を参照して、更なる変形例として、面状に分布する圧力を検出する圧電センサ130について説明する。図3は、アレイ化した圧電センサを説明する図で、(a)は圧電センサ130の断面図、(b)は段差である突起物38の平面図、(c)はシグナル電極132の形状を示す端面図である。圧電センサ130では、第1の高分子圧電体としての1層の高分子圧電体136の第2の面側に接着層6が形成され、接着層6に外縁部分を避けてシグナル電極132が配置される。高分子圧電体136の第1の面側には第1のグランド電極としてのグランド電極134が、シグナル電極132に対応する部分を覆って配置される。高分子圧電体136、シグナル電極132、接着層6、およびグランド電極134をサンドウィッチ状に挟んで、2層の絶縁層135が配置される。高分子圧電体136の第1の面側(グランド電極134側)の絶縁層135には、更に突起物38が載置され、第2の面側(シグナル電極132側)の絶縁層135には、更に、シールド電極138と保護層46とが形成される。シールド電極138は、シグナル電極132への外部ノイズの影響を軽減するための電極であり、使用の条件によっては形成されていなくてもよい。
【0036】
図3(a)あるいは(c)に示すように、複数の矩形のシグナル電極132が各々の間隔を開けて、すなわち、間に隙間が形成されて配列される。なおシグナル電極132は矩形でなく、円形、楕円型等任意である。各シグナル電極132から導電線133が外部端子(不図示)と接続する。このように書くシグナル電極132をそれぞれ別個に外部端子と接続すると、各シグナル電極132が配置された位置毎に圧力を検出することが可能となる。
【0037】
また、突起物38は、樹脂または金属を用いて、シグナル電極132に対応する部分は凸部38aとして膨らんで形成され、シグナル電極132の間の隙間に対応する部分は凹部38bとして薄く形成される。このようにシグナル電極132の間の隙間に対応する部分は凹部38bとして薄く形成することにより、シグナル電極132に対応する部分にだけ突起物が形成され、当該部分の応力が大きくなるのと同様の作用を有しつつ、1つの突起物38として形成されるので、取扱いが容易である。
【0038】
次に、図4を参照して、これまで説明した圧電センサ100の具体的な形状について説明する。図4は、圧電センサ110・112の外形と段差(突起物)34・36の形状を説明する平面図で、(a)は段差34が連続的に形成された例、(b)は段差36が断続的に形成された例を示す。なお、図4では、保護層を省略して図示している。
【0039】
図4(a)に示す圧電センサ110は、細長形状を有している。すなわち、矢印X方向(図4の横方向)に長く、矢印Y方向(図4の縦方向)に短い。細長形状とは、典型的には長辺の長さが短辺の長さの2.5倍以上であるような形状をいう。圧電センサ110では、高分子圧電体2としてポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムを用いる。そして、ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの延伸方向を長手方向Xと直交させる。すなわち、延伸方向は短手方向Yとなる。このように、ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの延伸方向を短手方向Yとすることにより、延伸方向への引張応力によっても電位を生ずるというポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの特性の影響を受けにくい。すなわち、長手方向の曲げ変形の結果生ずる引張応力によっては電位を生じないので、好適である。なお、圧電センサ110では、長手方向Xの一端(図4(a)では左端)に、外部への電圧の取出し口を設置する延長部70が形成されており、ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの延伸方向は、取出し口が形成される向きに対して直交方向とする。
【0040】
圧電センサ110では、長手方向Xに延びる段差34が形成されている。段差34が長手方向Xに長く形成されることにより、圧電センサ34のほぼ全長にわたって高感度に信号を検知する圧電センサ110となる。ただし、幅方向、すなわち短手方向Yには、段差34は、外縁部を避けて配置され、また長手方向Xでも先端(図4の右端)を避けて配置される。後述のように、外縁部を避けて配置されるシグナル電極16(図5(a)参照)に対応する部分に配置するためである。
【0041】
図4(b)に示すように、圧電センサ112では、段差36を断続的に配置してもよい。段差36を断続的に配置することにより、段差36が形成された部分での高分子圧電体2・4(図1参照)に生ずる応力がより大きくなり、高い電位が生じ、感度が良好になる。すなわち、荷重作用体(不図示)が連続的ではない場合には、荷重作用体の形状に合わせて段差36を形成するのがよい。
【0042】
図5は、図4に示した圧電センサ110・112のシグナル電極の形状を説明する端面図で、(a)は図4(a)に示す圧電センサ110のシグナル電極16の形状を、(b)は図4(b)に示す圧電センサ112のシグナル電極18の形状を示す。図5では、シグナル電極16・18が配置された高分子圧電体4上の端面を示す。
【0043】
圧電センサ110では、圧電センサ110のほぼ全長にわたりシグナル電極16が形成されている。ただし、幅方向、すなわち短手方向Yでは外縁部を避けて中心部分に、また、長手方向Xでも先端(図5の右端)を避けて配置される。このように外縁部を避けてシグナル電極16を配置することにより、前述の通りに、外部ノイズの影響を低減する。なお、グランド電極22・24(図1参照)は、少なくともシグナル電極16に対応する部分を覆い、典型的には高分子圧電体2・4を紙面に垂直な方向で全面的に挟むように配設される。なお、圧電センサ110では、図4(a)および図5(a)に示すように、第1の高分子圧電体2および第2の高分子圧電体4が延長された延長部70が形成される。延長部70には、図示しないが接着層6(図1参照)も延長される。そして、図5(a)に示すように、シグナル電極16は、延長部70に延長する。また、図5(a)に破線で示すように、グランド電極22・24も延長する。
【0044】
延長部70においては、シグナル電極16と、グランド電極22・24とは、第1の高分子圧電体2の第1の面2a(図1参照)に垂直な方向から見て異なる位置に配置される。なお、圧電センサ110では、第1の高分子圧電体2、第2の高分子圧電体4、接着層6(図1参照)、グランド電極22・24(図1参照)は平行な層構造をなすので、第1の面2aに垂直な方向は、圧電センサ110の板厚方向(図4(a)および図5(a)では、紙面に垂直方向)となる。このように、シグナル電極16とグランド電極22・24とを異なる部分に配置することにより、端子を取り出しやすい。端子の構造については、図6の説明にて詳述する。
【0045】
圧電センサ112では、図5(b)に示すように、シグナル電極18を断続的に配置し、間を導電線19で接続してもよい。前述のように荷重作用体(不図示)が連続的ではない場合には荷重作用体の形状に合わせた段差36(図4(b)参照)を形成し、荷重作用体が連続的な場合には適切な間隔を持って断続的とした段差36を形成してもよい。段差36を断続的とすると、段差36に対応する部分の高分子圧電体2・4に生ずる応力が大きくなり、高い電位が生ずる。この電位を、段差36に対応する位置に配置されたシグナル電極18で検知することで、感度が良好になる。また、荷重作用体が圧電センサ112の長手方向に傾いて荷重を作用させた場合に、シグナル電極18が断続的に長手方向に短く配置されると、それぞれのシグナル電極18で個別に電位を検知するので、連続して配置されたシグナル電極16(図5(a)参照)に比べて、感度よく検知することができる。段差36に対応する位置にシグナル電極18を配置し、その間を導電線19で接続すると、結果として、導電線19が配置された部分は段差36に対し凹部となる。よって、圧電センサ112が面加重を受けても、当該部分に生ずる応力は小さくなる。そのため、導電線19での不要な信号の混入が軽減されることになる。なお、圧電センサ112において、グランド電極22・24(図1参照)も、シグナル電極18に対応する部分にだけ形成してもよいが、圧電センサ112の長手方向Xに連続的に形成するのが好ましい。グランド電極22・24を長手方向Xに連続的に形成すると、圧電センサ112の板厚方向のシールドをより高く維持することができ、外部ノイズの影響を受けにくい。圧電センサ112でも、圧電センサ110と同様の延長部70が形成され、シグナル電極18は導電線19で接続される。このように導電線19で接続されても、シグナル電極18を延長するという。
【0046】
次に、図6を参照して、シグナル電極12およびグランド電極22・24と一体に成形されたシールド端子80を備える圧電センサ120について説明する。図6は、シールド端子80を備える圧電センサ120について説明する図で、(a)は導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とを平らに延ばした状態の平面図、(b)は導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とで延長部72を巻き囲んだ状態のシールド端子80の断面図である。
【0047】
圧電センサ120は、例えば図1に示す圧電センサ100のような構成の圧電センサであり、図6(a)には第1の高分子圧電体2と、第1の高分子圧電体2の下に配設されたシグナル電極12と、第1の高分子圧電体2の上に重ねて配設されたグランド電極22と、グランド電極22の上に重ねて配設された保護層42とを示すが、図1の断面図に示すような接着層6、第2の高分子圧電体4、グランド電極24、保護層46、突起物30等も形成されている。図6(a)では、グランド電極22が、第1の高分子圧電体2よりも小さな面積に配置されているように示しているが、第1の高分子圧電体2の全面を覆うように配置してもよい。なお、グランド電極22を第1の高分子圧電体2よりも、すなわち、保護層42よりも小さく配置すると、グランド電極22が端面からの湿気の混入の影響を受けずに済み、電極の変色を防止することができる。そして、図4(a)および図5(a)に示す延長部70のように、延長部72が形成されている。
【0048】
圧電センサ120では、延長部72から端子を取出す方向、すなわち長手方向Xに直交する方向Yに導電性フィルム28と導電性フィルム28の上に重ねて配設された絶縁性フィルム8を張り出す。導電性フィルム28をグランド電極22と一体とし、絶縁性フィルム8を第1の高分子圧電体2と一体とする。導電性フィルム28をグランド電極24と一体とし、絶縁性フィルム8を第2の高分子圧電体4と一体としてもよい。グランド電極22は導電性の膜状フィルムであり、高分子圧電体2は絶縁性の板状フィルムであるので、一体に成形することが可能である。導電性フィルム28をグランド電極22と一体とし、絶縁性フィルム8を第1の高分子圧電体2と一体とすることで、製造が容易となり、また、部品数が少なくなる。なお、導電性フィルム28は、絶縁性フィルム8上に導電材料を用いたスクリーン印刷製法で製造するのが簡易で好適であるが、絶縁性フィルム8上に銅等の導電性金属を蒸着、スパッタリングなどの周知の製膜法により製膜して導電性フィルム28を形成してもよい。このように製造すると、高分子圧電体2およびグランド電極22と一体として広い膜を製造するのに効率がよい。
【0049】
延長部72では、シグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60が、圧電センサ120の長手方向Xに取出し口を形成するように装着される。図6(b)に示すように、シグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60は、延長部72を板厚方向(図6(b)の上下方向)に貫通する。シグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60は、例えば割りピンのように延長部72を貫通するそれぞれ2本の針54および針64と頭52および頭62を有し、針54・64が延長部72を貫通した後にその針先端56・66が折り曲げられ、延長部72に固定される。なお、頭52・62に該当する部分が細長い板状に形成され、圧電センサ120の長手方向Xに延長部72を超えて延伸し、取出し口を形成する。そして、第1の面2a(図1参照)に垂直な方向から見て、すなわち、圧電センサ120の板厚方向(図6(a)の紙面に垂直な方向)から見て、シグナルカシメ端子50は、シグナル電極12が延長した部分に対応する部分に配置され、グランドカシメ端子60は、グランド電極22・24が延長した部分に対応する部分に配置される。したがって、シグナルカシメ端子50はシグナル電極12と導通し、グランドカシメ端子60はグランド電極22・24と導通する。また、グランドカシメ端子60はグランド電極22・24と導通するので、導電性フィルム28にも導通する。
【0050】
シールド端子80では、シグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60を導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とで巻き囲む。すなわち、延長部72から端子を取出す方向に直交する方向Yに張り出した導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とを重ねて、シグナルカシメ端子50とグランドカシメ端子60とを板状の長い方向Xで囲むように、折り曲げる。その際に、絶縁性フィルム8が内側になるようにする。シグナルカシメ端子50とグランドカシメ端子60とを長い方向Xで囲むことにより、端子50・60がシールドされる。すなわち、グランドに接続されるグランド電極22と導通する導電性フィルム28で囲むことにより、端子50・60の周囲の電位を固定する。また、絶縁性フィルム8が内側になるようにすることにより、端子50・60と導電性フィルム28との間隔を確保する。
【0051】
導電性フィルム28と絶縁性フィルム8とは、少なくとも、シグナルカシメ端子50とグランドカシメ端子60との板状の長い周囲を覆うように巻き囲む。圧電センサ120では、シグナル電極12は、グランド電極22・24で挟まれ、また外縁部を避けて配置されるので、外部ノイズの影響を受けにくい。そこで、取出し口として露出したシグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60とを覆いシールドすることで、端子を含めた圧電センサについて外部ノイズの影響を低減できる。このように、延長部72に装着されたシグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60とを巻き囲むことを、延長部72を巻き囲むともいう。
【0052】
圧電センサ120は、シールド端子80を備えることにより、外部ノイズの影響を受けにくい圧電センサとなる。また、シールド端子80では、導電性フィルム28が、グランド電極22と導通することにより、確実にグランドに接続された導電性フィルム28で端子50・60を覆うことができ、電位を固定できる。さらに、導電性フィルム28をグランド電極22と一体に、絶縁性フィルム8を第1の高分子圧電体22と一体に成形することで、製造が容易となり、また、部品数を減らすことができ、作業効率を向上できる。
【0053】
次に、図7を参照して、これまで説明した圧電センサ120の具体的な使用例としての電子弦楽器について説明する。図7は、圧電センサ120を用いた電子弦楽器200を説明する図で、(a)は電子弦楽器200の斜視図、(b)は電子弦楽器200のコマ220と圧電センサ120との関係を示す分解拡大図である。電子弦楽器200は、電子ギターとして説明するが、電子バイオリン、電子チェロ、その他の電子弦楽器でもよい。また、いわゆるサイレント楽器といわれる大きな音を発生せず、例えばヘッドホーンで演奏を聞く電子弦楽器でもよい。
【0054】
電子弦楽器200では、弦210がヘッド230の糸巻き232とブリッジ240との間に張られている。弦210は、ヘッド230側で、ネック250のナット234に支持され、またブリッジ240側で、コマ220に支持され、その間が主として音を出すために振動する領域となる。もちろん、ネック250で指で押えられて、振動する領域は変化するが、コマ220は音を出すために振動する弦210を常に支持する。コマ220は、細長い略三角柱形状を有し、一の側面は平面に形成され、他の2側面は凸の湾曲を有している。コマ220は、平面の側面をボディ260上に面して載置される。
【0055】
そこで、コマ220とボディ260との間に圧電センサ120を挿入する。圧電センサ120が、コマ220がボディ260に面する面と同一形状を有することで、圧電センサ120を挿入してもコマ220は安定してボディ260上に載置され、弦210を支持する。特に圧電センサ120が、高分子圧電体2・4(図1参照)として高分子フィルムを用い、薄く形成すると、圧電センサ120を挿入しやすい。圧電センサ120のシグナルカシメ端子50およびグランドカシメ端子60にはシールド線140を接続する。シールド線140は、外部ノイズの影響を受けにくいシールドされたシールド線を用いるのが好適である。シールド線140は、電子弦楽器200の音を再現するアンプ、スピーカ等の音響装置(不図示)や記録装置(不図示)に接続される。
【0056】
電子弦楽器200を演奏すると、弦210が振動し、弦210の振動はコマ220に伝達される。コマ220に伝達された振動を圧電センサ120で検出し、電圧としてシールド線140を介して、音響装置(不図示)や記録装置(不図示)に電気信号を発信する。電子弦楽器200は、圧電センサ120を備え、感度よく、かつ、外部ノイズの影響を低減して振動を検出するので、好適である。特に、小さな振動も感度よく検出し、また、広領域でのノイズを嫌う電子弦楽器200の用途に、圧電センサ120は好適に用いられる。さらに、圧電センサ120では、振動を検出する面に突起物30による盛り上がり段差が形成されているので、コマ220が傾きを生じても、振動の圧電センサ120への伝達が変わり、圧電センサ120からの出力が低下したり、波形が乱れて音色が変化したりすることが防止される。
【実施例1】
【0057】
本発明に係る圧電センサの感度を確認するため、圧電センサの段差(突起物)の厚さを変化させ、衝撃力を与えて、出力電圧を測定した。
【0058】
図8は、実測で用いた装置を説明する図で、(a)は段差330付き圧電センサ300および測定装置とを示すブロック図であり、(b)は圧電センサ、圧電センサに荷重を負荷する加圧コマ、錘等を表す(a)のb−b位置に対応する断面図である。使用した圧電センサ300は、幅2.8mm×長さ70mm×厚さ0.3mm(段差330およびゴム層334を除く)で、幅1.3mm×長さ70mmのシグナル電極と、シグナル電極と同じ幅1.3mm×長さ70mmの段差330を有する。圧電センサ300は、グランド電極、PVDF一軸延伸フィルム、接着層、PVDF一軸延伸フィルム、グランド電極の層構造をなし、シグナル電極は接着層に埋め込まれている。圧電センサ300の出力電圧は、シールド線410を介して接続した入力インピーダンス1MΩのオシロスコープ400にて測定した。
【0059】
圧電センサ300は、平板の台上に厚さ0.5mmで圧電センサ300と同じ幅2.8mm×長さ70mmを有するゴム層334の上に載置し、圧電センサ300の段差330の上から、圧電センサ300と同じ幅2.8mm×長さ70mmを有する金属製の加圧コマ360で約40Nの静荷重を載荷し、加圧コマ360、圧電センサ300、ゴム層334および平板の密着を保証した。その状態で、2gの重さの錘370を高さ100mmから加圧コマ360上に落下させたときの圧電センサにより生ずる電圧を測定した。
【0060】
段差330の厚さを、0μm(段差なし)、10μm、20μm、30μmと変化させ、各厚さで5回の測定を行い、その平均値を各厚さにおける検出値とした。
【0061】
図9に測定結果を示す。図9は、段差の厚さを変化させたときの検出電圧をまとめて示す図である。図9にも示すように、各厚さにおける検出電圧は、段差なし(0μm)で12.7V、10μmで14.5V、20μmで15.0V、30μmで16.6Vとなり、段差330を形成した方が圧電センサ300の出力電圧が高くなること、すなわち、感度がよくなることが確認された。また、段差330の高さを10μm、20μm、30μmと高くすることで、感度がよくなることが示された。
【0062】
以上の説明では、高分子圧電体とグランド電極とを2層配設される例で圧電センサを説明したが、高分子圧電体とグランド電極とは1層だけ配設されてもよく、あるいは、3層以上配設されてもよい。また、圧電センサを電子弦楽器に使用するものとしたが、本発明に係る圧電センサは、他の用途に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態としての圧電センサの構成を説明する、長手方向に直交する面での断面図である。
【図2】圧電センサの変形例を説明する断面図で、(a)は突起物をグランド電極と高分子圧電体との間に設けた例、(b)は突起物を設けずに、シグナル電極を厚く形成した例、(c)は二つの突起物を設けて圧電センサの両面に段差を形成した例を示す。
【図3】アレイ化した圧電センサを説明する図で、(a)は圧電センサの断面図、(b)は段差である突起物の平面図、(c)はシグナル電極の形状を示す端面図である。
【図4】圧電センサの外形と段差の形状を説明する平面図で、(a)は段差が連続的に形成された例、(b)は段差が断続的に形成された例を示す。
【図5】図4に示した圧電センサのシグナル電極の形状を説明する端面図で、(a)は図4(a)に示す圧電センサのシグナル電極の形状を、(b)は図4(b)に示す圧電センサのシグナル電極の形状を示す。
【図6】シールド端子を備える圧電センサについて説明する図で、(a)は導電性フィルムと絶縁性フィルムとを平らに延ばした状態の平面図、(b)は導電性フィルムと絶縁性フィルムとで延長部を巻き囲んだ状態のシールド端子の断面図である。
【図7】圧電センサを用いた電子弦楽器を説明する図で、(a)は電子弦楽器の斜視図、(b)は電子弦楽器のコマと圧電センサとの関係を示す分解拡大図である。
【図8】実測で用いた装置を説明する図で、(a)は段差付き圧電センサおよび測定装置とを示すブロック図であり、(b)は圧電センサ、圧電センサに荷重を負荷する加圧コマ、錘等を表す(a)のb−b位置に対応する断面図である。
【図9】段差の厚さを変化させたときの検出電圧をまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0064】
2 第1の高分子圧電体
4 第2の高分子圧電体
2a 第1の面
2b 第2の面
6 接着層
8 絶縁性フィルム
12、14、16、18 シグナル電極
19 導電線
22、24 グランド電極
28 導電性フィルム
30、32、34、36、38 突起物(段差)
42、46 保護層
44 ゴム層
50 シグナルカシメ端子
52、62 頭
54、64 針
56、66 針先端
60 グランドカシメ端子
70、72 延長部
80 シールド端子
100、102、104、106、110、112、120、130 圧電センサ
132 シグナル電極
133 導電線
134 グランド電極
135 絶縁層
136 高分子圧電体
138 シールド電極
140 シールド線
200 電子弦楽器
210 弦
220 コマ
230 ヘッド
232 糸巻き
234 ナット
240 ブリッジ
250 ネック
260 ボディ
300 圧電センサ
330 段差(突起物)
344 ゴム層
360 加圧コマ
370 錘
400 オシロスコープ
410 シールド線
IN シグナル電極が配置された部分(中央部分)
OT 外縁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されることにより電位を生ずる、第1の面と前記第1の面に対して表裏の関係にある第2の面を有する第1の高分子圧電体と;
前記第1の高分子圧電体の外縁部分を避けて前記第2の面側に配置されたシグナル電極と;
前記第1の面の前記シグナル電極に対応する部分を覆って配置された第1のグランド電極とを備え;
面荷重を負荷すると、前記第1の高分子圧電体の前記シグナル電極が配置された部分に生ずる応力が、前記シグナル電極が配置されていない外縁部分に生ずる応力より大きくなる;
圧電センサ。
【請求項2】
前記第1の高分子圧電体が、ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムである;
請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項3】
前記第1の高分子圧電体が、細長形状であり;
前記ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムの延伸方向が、細長形状の長手方向と直交する;
請求項2に記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記第1のグランド電極の前記第1の高分子圧電体に配設された面と異なる面に段差を設け、前記第1の高分子圧電体の前記シグナル電極が配置された部分に生ずる応力を大きくする;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧電センサ。
【請求項5】
前記第2の面と前記シグナル電極とに接着する絶縁性の接着層と;
前記接着層の前記第2の面と接着する面と異なる面に接着し、前記第1の高分子圧電体と極性が逆向きの第2の高分子圧電体と;
前記第2の高分子圧電体の前記接着層と接着する面と異なる面に前記シグナル電極に対応する部分を覆って配置された第2のグランド電極とを備える;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧電センサ。
【請求項6】
前記第1のグランド電極の前記第1の高分子圧電体側の面と異なる面および前記第2のグランド電極の前記第2の高分子圧電体側の面と異なる面の少なくとも一の面に段差を設け、前記第1の高分子圧電体および前記第2の高分子圧電体の前記シグナル電極が配置された部分に生ずる応力を前記シグナル電極が配置されていない外縁部分に生ずる応力より大きくする;
請求項5に記載の圧電センサ。
【請求項7】
前記接着層は、前記シグナル電極より縦弾性係数が小さな材料で形成され;
前記シグナル電極は、前記第1の高分子圧電体および前記第2の高分子圧電体の前記シグナル電極が配置された部分に生ずる応力が、前記シグナル電極が配置されていない外縁部分に生ずる応力より大きくなるように厚く形成された;
請求項5に記載の圧電センサ。
【請求項8】
前記第1の高分子圧電体および前記第2の高分子圧電体並びに前記接着層が延長された延長部を備え、
前記延長部の一部分には、前記第1のグランド電極と前記第2のグランド電極とが延長し、
前記延長部の前記第1のグランド電極と前記第2のグランド電極とが延長した部分とは、前記第1の面に垂直な方向から見て異なる部分に前記シグナル電極が延長する;
請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の圧電センサ。
【請求項9】
前記延長部の前記第1のグランド電極と前記第2のグランド電極とが延長した部分を貫通して前記延長部に固定されるグランドカシメ端子と;
前記延長部の前記シグナル電極が延長した部分を貫通して前記延長部に固定されるシグナルカシメ端子と;
前記グランドカシメ端子と導通する導電性フィルムと;
前記導電性フィルムの一の面に配設された絶縁性フィルムとを備え;
前記導電性フィルムと前記絶縁性フィルムとで、前記延長部を巻き囲む;
請求項8に記載の圧電センサ。
【請求項10】
前記導電性フィルムが前記第1のグランド電極あるいは前記第2のグランド電極と一体に形成され;
前記絶縁性フィルムが前記第1の高分子圧電体あるいは前記第2の高分子圧電体と一体に形成される;
請求項9に記載の圧電センサ。
【請求項11】
振動する弦と;
前記弦の振動を検知する請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の圧電センサとを備える;
電子弦楽器。
【請求項12】
前記弦を支えるコマを備え;
前記圧電センサが前記コマにより面荷重を負荷される;
請求項11に記載の電子弦楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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