説明

圧電振動板及びそれを利用した電子機器

【課題】
発音体用の圧電振動板を薄型化するとともに、電極の引き出しの信頼性向上,製造工程の簡略化,材料の削減を図る。
【解決手段】
圧電層20A,20Bの両主面には、電極層22A〜22C,24A〜24Cが形成される。同一主面上で隣接する電極層同士,圧電層を挟んで対向する電極層同士には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される。2層目の電極層22Bと24Bが対向する縁部には、互いの領域に達する突出形状30,32が形成され、圧電層20A,20Bには、分割線38から外れた位置にスルーホールが形成される。電極層22A〜22Cは、スルーホール26A,26B,突出形状30により接続され、同電位となって振動板12側から引き出されるため、全体が薄型化する。また、いずれかの電極層と重なる位置でスルーホール接続することにより、導電接続の信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器に関し、更に具体的には、圧電振動板及び電子機器の薄型化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電発音体(圧電振動板)は、簡易な電気音響変換手段として広く利用されており、特に近年は、携帯電話や携帯情報端末などの分野でスピーカ等として多用されている。圧電発音体は、図11に一例を示すように、圧電素子504,510を、振動板502の表裏両面に貼り合わせた構成となっている。圧電素子504は、圧電体506の表裏両面に、電極層508A及び508Bを形成した構造となっており、金属などによって構成された振動板502の表面に、導電性接着剤等で接着される。他方の圧電素子510についても同様であり、圧電体506の表裏両面に、電極層508C及び508Dを形成した構造となっている。
【0003】
前記電極層508A及び508Dは、それぞれリード線512A及び512Bなどの導電手段を介して外部に引き出され、他の電極層508B及び508Cは振動板502と同電位となっており、前記振動板502からリード線512Cを介して外部に引き出される。このような電極引き出し構造と類似の構造が、例えば、以下の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−47092公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような背景技術では、電極を外部に引き出すために、リード線512A〜512C及び半田514A〜514Cが必要になる。このうち、リード線512Aと512Bの半田接続部は、圧電素子504,510の表面の電極508A、508D上に設けられるため、圧電発音体500自体の厚みを増大させる要因となる。例えば、振動板502の厚みを30μm,圧電素子504及び510の厚みをそれぞれ60μm,リード線512A及び512Bの接続部の半田514A及び514Bの高さをそれぞれ160μmとすると、圧電発音体500全体の厚みが470μmになる。このうち、電極の引き出しに要するリード線512A、512Bの半田接続部の厚みの合計は、320μmとなり、圧電発音体500全体の厚みの70%近くを占めることになってしまう。また、前記背景技術では、上下面からのリード線512A及び512Bによる引き出しは、リード線512A及び512Bが振動板502に密着していない為、長時間の激しい圧電駆動に対して、信頼性が十分ではない可能性がある。従って、電極引き出し構造を改良することにより、不要な厚みを省くことができれば、圧電発音体やそれを利用する電子機器の薄型化をより促進するために好都合である。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、電極構造の改良により発音体用の圧電振動板を薄型化し、電子機器に対する実装の自由度の向上及び電子機器自体の薄型化を図ることである。他の目的は、電極の引き出しの信頼性を向上させることである。他の目的は、引き出し構造の改良により、製造工程を簡略化するとともに、材料の削減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、少なくとも一層の圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、前記電極層は、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、該圧電層を挟む両主面側でほぼ同位置となるように、互いに離間して分割配置されるとともに、前記圧電層の主面上の一つの電極層と、該電極層と同一主面上で隣接する他の電極層に圧電層を挟んで対向する電極層とを、前記主面上の電極層のいずれかと重なる位置で、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続手段,を備えたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記複数の接続手段のうち少なくとも一つが、スルーホールを有することを特徴とする。他の形態は、前記圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の引き出し電極を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする。更に他の形態は、前記電極層が、前記圧電層の主面の中心を通らない分割線を境として、複数に分割されていること,あるいは、前記圧電層の同一主面上の複数の電極層が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に分割配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の電子機器は、請求項1〜5のいずれかに記載の圧電振動板を利用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも一層の圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記電極層は、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、該圧電層を挟む両主面側でほぼ同位置となるように、互いに離間して分割配置される。そして、前記圧電層の主面上の一つの電極層と、該電極層と同一主面上で隣接する他の電極層に圧電層を挟んで対向する電極層とを、前記主面上の電極層のいずれかと重なる位置で、該圧電層の厚み方向に接続することとした。このため、電極層の引き出しを、全て前記振動板から行うことができ、全体の薄型化を図るとともに、信頼性を向上させることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
最初に、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の構成を示す分解斜視図である。図2(A)は、本実施例の全体を示す外観斜視図,図2(B)は、前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図3は、比較例の構成を示す分解斜視図である。これらの図に示すように、圧電振動板10は、略円形の振動板12の一方の主面に、略円形の圧電素子18を貼り合わせたユニモルフ構造となっている。
【0012】
前記振動板12は、絶縁性であって屈曲に優れた材料、例えば、例えばPET(PolyEthylene Terephtalate)などの絶縁フィルムからなる絶縁板13の一方の主面に、例えば、導電性Agペーストを用いて、それぞれ一対のプリント導体パターン14及び16を設けた構成となっている。なお、前記導電性Agペーストは一例であり、スパッタリング法などにより薄膜導電体層を設けるようにしてもよい。前記絶縁板13には、前記一対のプリント導体パターン14及び16の間隙を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部13Aが設けられている。また、前記プリント導体パターン14及び16は、前記突出部13Aの表面上に形成された引き出し部14A及び16Aとそれぞれ接続されている。
【0013】
前記圧電素子18は、PZTなどの圧電セラミックスによって形成された圧電層20A及び20Bと、電極層22A〜22C及び24A〜24Cを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。電極層22A〜22C,24A〜24Cとしては、例えば、AgやAg/Pd合金などの焼付け型の導電層などが利用される。まず、略円形の圧電層20Aの一方の主面(図1では上面)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層22A及び24Aが、圧電層20Aの主面をほぼ2等分した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。2層目の圧電層20Bの両面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層22B及び24Bと、電極層22C及び24Cが形成されている。これら電極層22B,24B,22C,24Cも、圧電層20Bのほぼ中心を通る分割線38を境として、ほぼ半月状となっている。また、前記電極層22A,22B,22Cに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層24A,24B,24Cに印加される信号電圧の極性が同じになるように配置されている。すなわち、圧電層を挟んで対向する電極層に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように配置される。
【0014】
また、前記圧電層20Aには、スルーホール26A及び28Aが設けられ、圧電層20Bには、スルーホール26B及び28Bが形成される。一方、2層目の電極層22Bと24Bが対向する縁部には、前記分割線38を越えて互いの領域に達する突出形状30及び32が形成されている。なお、前記スルーホール26A,28A,26B,28Bは、図1に示すように、分割線38からずれた位置となるように形成されている。そして、前記電極層22A〜22Cは、図1及び図2(B)に示すように、スルーホール26A,26B,突出形状30によって厚み方向にほぼ直線的に電気的に接続されており、全て共通電位となっている。また、電極層24A〜24Cは、スルーホール28A,28B,突出形状32によって、厚み方向にほぼ直線的に接続されており、全て共通電位となっている。そして、前記電極層22Cが、振動板12の主面上に設けられた一方のプリント導体パターン14に接触し、電極層24Cが他方のプリント導体パターン16に接触するように、図示しない導電性接着剤などにより貼り合わせられる。
【0015】
このような圧電振動板10では、引き出し電極となるプリント導体パターン14及び16の引き出し部14A及び16Bから、図示しないリード線などによって電極が引き出され、電源(図示せず)に接続される。そして、例えば、一方のプリント導体パターン14はプラス,他方のプリント導体パターン16はマイナスという具合に信号電圧を印加することにより、圧電振動板10を駆動することができる。すなわち、圧電素子18の表面から電極を引き出すのではなく、該圧電素子18が貼り合わせられた振動板12の表面から電極を引き出すことが可能になるため、上述した背景技術と比較して、圧電振動板10自体を大幅に薄型化することができる。
【0016】
ここで、図3に示す比較例との違いについて説明する。比較例の圧電素子40は、圧電層42A,42Bと、電極層44A〜44C及び46A〜46Cを積層したもので、各電極層には、圧電層42A及び42Bに設けたスルーホール48A,48B,50A,50Bを介して電気的に接続するための突出形状52〜62が形成されている。また、この比較例では、前記スルーホール48A,48B,50A,50Bが、前記電極層を同一主面上で分割する分割線64上に設けられている。前記各電極層としては、Agなどの金属が用いられるが、前記分割線64上には、実質的に電極(金属)がほとんど存在しないため、強度が低くなる。従って、このように金属が存在しない部分でスルーホール接続を行うと信頼性が低くなるおそれがある。しかしながら、本実施例の圧電素子18のように、スルーホールを分割線38から外れた位置に設け、電極層のいずれかと重なる位置で導電接続を行うことにより、強度が増し、信頼性の向上を図ることができる。
【0017】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)圧電層20A及び20Bの主面を2分割した各々の領域に互いに離間して配置される一対の電極層を前記圧電層の両主面に備えた圧電素子18を、振動板12の一方の主面に貼り合わせ、前記圧電層の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を挟んで対向する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、同一極性の信号電圧が印加される電極層22A〜22Cを、スルーホール26A,26B及び突出形状30によって厚み方向に接続し、電極層24A〜24Cを、スルーホール28A,28B及び突出形状32によって厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを全て振動板12から行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
(2)前記スルーホール接続を、分割線38から外れた位置,すなわち、いずれかの電極層と重なる位置で行うこととしたので、強度が増し、導電接続の信頼性の向上を図ることができる。
(3)前記振動板12に、前記各電極層にほぼ等しい面積のプリント導体パターン14及び16を設け、前記電極層と接着することとしたので、圧電駆動時の導電接続及び引き出しの信頼性を高めることができる。
【実施例2】
【0018】
次に、図4を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。図4は、本実施例の分解斜視図である。前記実施例1は、2層の圧電層を有する圧電素子を振動板の主面に設けた例であったが、本実施例は、3層の圧電層を有する圧電素子を用いた例である。図4に示すように、本実施例の圧電振動板70は、振動板12の一方の主面に、圧電素子72を貼り合わせたユニモルフ構造であって、全体が略円形に形成されている。前記振動板12は、前記実施例1と同様に、絶縁板13の表面に引き出し電極として、一対のプリント導体パターン14及び16が形成されている。
【0019】
圧電素子72は、圧電層20A〜20Cと、電極層22A〜22D及び24A〜24Dを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。圧電層20A〜20Cや、電極層22A〜22D,24A〜24Dとしては、例えば、上述した実施例1と同様の材料が用いられる。まず、略円形の圧電層20Aの一方の主面(図4では上面)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層22A及び24Aが、圧電層20Aの主面をほぼ2等分した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。2層目の圧電層20Bの表面(図4では上面)には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層22Bと24Bが形成されている。また、前記電極層22Bと24Bが対向する縁部には、分割線38を越えて互いの領域に達する突出形状30,32が形成されている。
【0020】
3層目の圧電層20Cの表面についても同様に、一対の電極層22C及び24Cが形成される。これら電極層22C及び24Cの対向する縁部にも、中心付近に、それぞれ互いの領域に達する突出形状34及び36が設けられている。さらに、該圧電層20Cの裏面には、同じく一対の電極層22D及び24Dが形成される。一方、前記圧電層20A〜20Cには、スルーホール26A〜26C,28A〜28Cが、分割線38から外れた適宜位置に形成されている。
【0021】
以上のような圧電素子72では、電極層22A〜22Dは、スルーホール26A,26B,突出形状30,34,スルーホール28Cによって、圧電素子72の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層24A〜24Dは、スルーホール28A,28B、突出形状32,36,スルーホール26Cによって、厚み方向にほぼ直線的に接続される。なお、スルーホール接続は、前記実施例1と同様に、分割線38から外れた位置,すなわち、いずれかの電極層に重なる位置で行われる。そして、前記電極層22Dが一方のプリント導体パターン16に接触し、電極層24Dが、他方のプリント導体パターン14に接触するように貼り合わせられ、該プリント導体パターン14及び16から電極が引き出されて、図示しない電源に接続される。このように、本実施例によれば、圧電層の積層数を増やしても、上述した実施例1と同様に、薄型化,製造工程の簡略化や材料の削減効果,導電接続や電極引き出しの信頼性の向上などの効果が得られる。
【実施例3】
【0022】
次に、図5及び図6を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図5は、本実施例の分解斜視図,図6は、本実施例の全体を示す外観斜視図である。上述した実施例1及び2は、いずれも圧電振動板の全体形状を略円形としたものであるが、本実施例は、略長方形としたものである。図5及び図6に示すように、圧電振動板100は、振動板102の一方の主面に圧電素子110を貼り合わせたユニモルフ構造となっている。前記振動板102は、上述した実施例と同様に、絶縁板104の表面に引き出し電極用の一対のプリント導体パターン106と108が形成されている。これらプリント導体パターン106,108は、突出した引き出し部106A及び108Aを備えている。また、圧電素子110は、圧電層112A及び112Bと、電極層114A〜114C及び116A〜116Cを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。圧電層112A及び112Bと、電極層114A〜114C及び116A〜116Cとしては、例えば、上述した実施例1と同様の材料が用いられる。
【0023】
前記圧電素子110は、圧電層112A及び112Bと、電極層114A〜114C及び116A〜116Cの形状が略長方形であるほかは、基本的な構造は前記実施例1と同様である。すなわち、圧電層112A及び112Bには、主面の中心を通ってほぼ2分割する分割線126から外れた適宜位置に、スルーホール118A,118B,120A,120Bが形成されており、2層目の電極層114B及び116Bの対向する縁部には、分割線126を越えて互いの領域に達する突出形状122及び124が形成されている。そして同一極性の信号電圧が印加される電極層114A〜114Cは、スルーホール118A,118B,突出形状122によって導電接続され、前記電極層114Cが振動板104の一方のプリント導体パターン106に貼り合わせられる。また、電極層116A〜116Cも、スルーホール120A,120B,突出形状124によって導電接続され、前記電極層116Cが他方のプリント導体パターン108に貼り合わせられる。そして、前記プリント導体パターン106,108の引き出し部106A及び108Bに、例えば、リード線を半田で接続することにより、圧電振動板100に対する信号電圧の印加が可能となる。本実施例の基本的作用・効果は、上述した実施例1と同様である。
【実施例4】
【0024】
次に、図7及び図8を参照して、本発明の実施例4を説明する。上述した実施例1〜3はいずれも、圧電層の主面の中心を通って該主面をほぼ2等分する分割線を境として、一対の電極層を離間して配置することしたが、本実施例は、電極層の分割線が、圧電層の主面の中心を通らないようにしたものである。図7は、本実施例の構造を示す分解斜視図,図8(A)は本実施例の圧電素子の外観を示す斜視図である。図8(B)〜(D)は、本実施例の変形例を示す図である。
【0025】
図7に示すように、圧電振動板150は、振動板152の一方の主面に圧電素子160を貼り合わせたユニモルフ構造となっており、全体が略円形となっている。前記振動板152は、絶縁板154の表面に引き出し電極用の一対のプリント導体パターン156と158が形成されている。前記プリント導体パターン156は、図示の例では、円の一部を除いた形状となっており、他方のプリント導体パターン158は、円の一部の形状となっている。すなわち、振動板152の主面の略中心を通らない分割線176を境にして、プリント導体パターン156及び158が分割形成されている。また、これらプリント導体パターン156及び158は、前記圧電素子160よりも径が大きくなるように形成されている。
【0026】
一方、圧電素子160は、圧電層162A及び162Bと、電極層164A〜164C及び166A〜166Cを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。圧電層162A及び162Bと、電極層164A〜164C及び166A〜166Cとしては、例えば、上述した実施例1と同様の材料が用いられる。圧電素子は、前記分割線176が、圧電層の主面の中心を通らないこと以外は、基本的な構造は前記実施例1と同様である。すなわち、圧電層162A及び162Bには、前記分割線176から外れた適宜位置に、スルーホール168A,168B,170A,170Bが形成されており、2層目の電極層164B及び166Bの対向する縁部には、分割線176を越えて互いの領域に達する突出形状172及び174が形成されている。
【0027】
そして同一極性の信号電圧が印加される電極層164A〜164Cは、スルーホール168A,168B,突出形状172によって導電接続され、前記電極層164Cが振動板152の一方のプリント導体パターン156に貼り合わせられる。また、電極層166A〜166Cも、スルーホール170A,170B,突出形状174によって導電接続され、前記電極層166Cが他方のプリント導体パターン158に貼り合わせられる。そして、前記プリント導体パターン156,158の縁部に、例えば、リード線182及び184を、半田178及び180で接続することにより、圧電振動板150に対する信号電圧の印加が可能となる。本実施例によれば、上述した実施例1の効果に加え、分割線176が圧電層の中心を通らないようにすることで、電極層が存在しない強度の弱い部分を、変位量が大きい中心からずらし、圧電振動板150の駆動時や、落下衝撃時などに圧電体に発生する応力を低減できるという効果がある。例えば、本実施例では、上述した実施例1に示す中央分割の場合より、2割程度発生応力が低くすることができる。
【0028】
次に、図8(B)〜(D)を参照して、本発明の変形例を説明する。図8(B)に示す圧電素子200では、圧電層202の中心を通らない曲線状の分割線208を境にして、電極層204及び206が分割配置されており、前記分割線208から外れた位置で、複数の電極層が厚み方向に導電接続されている。図8(C)に示す圧電素子220では、圧電層222の中心を通らない波線状の分割線228を境にして、電極層224及び226が分割配置されており、前記分割線228から外れた位置で、複数の電極層が厚み方向に導電接続されている。また、図8(D)に示す圧電素子240では、圧電層242の中心を通らない屈折した分割線248を境にして、電極層244及び246が分割配置されている。いずれの場合であっても、前記図7に示した圧電振動板150と同様の効果が得られる。もちろん、図8に示した電極層の形状は一例であり、圧電層の中心を通らない直線や曲線を組み合わせて電極層を分割するようにしてもよい。
【実施例5】
【0029】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施例5を説明する。図9は、本実施例の分解斜視図である。図10は、本実施例と前記実施例1の圧電素子を振動板に接着する様子を示すである。前記実施例1〜4では、圧電層の主面を直線ないし曲線で複数に分割した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置することとしたが、本実施例5では、圧電層の主面を略同心円状に複数に分割(図示の例では2分割)した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置する構成となっている。図9に示すように、圧電振動板300は、振動板302の一方の主面に圧電素子320を貼り合わせたユニモルフ構造となっており、全体が略円形となっている。
【0030】
まず、振動板302について説明すると、上述した実施例と同様に、絶縁板304の表面に引き出し電極用の一対のプリント導体パターン306と310が同心円状に形成されている。また、前記絶縁板304の縁の一部には、該絶縁板304の中心を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部304Aが設けられている。前記プリント導体パターン306,310は、前記突出部304Aの表面上に設けられた引き出し部306A及び310Aにそれぞれ接続されている。これらプリント導体パターン306及び310は、絶縁板304の主面を、径方向に内周側と外周側とに2分割する円を境にして、それぞれの領域に互いに離間するように配置されている。内周側のプリント導体パターン310は、外周側のプリント導体パターン306の周方向の一部に設けられたスリット308を介して、前記突出部304A上の引き出し部310Aに接続されている。前記引き出し部310Aには、前記圧電素子320の外周側の電極層324Cと対向する部分に、電極間の短絡発生を防止するための絶縁層312が設けられている。また、前記対向部分に、接着剤を塗布することにより、絶縁板304と圧電素子320との変位伝達をより確実にするとともに、非接着部分同士の衝突による不要な音の発生を防止するようにしてもよい。
【0031】
一方、圧電素子320は、圧電層322A及び322Bと、電極層324A〜324C及び326A〜326Cを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。略円形の圧電層322Aの一方の主面(図示の例では上面側)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層324A及び326Aが、主面を同心円状に二つに分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層324A及び326Aは、前記圧電層322Aを径方向で二つに分割する円を境にして、外周側と内周側に配置されている。2層目の電極層324B及び326Bと、3層目の電極層324C及び326Cについても同様である。これら電極層は、圧電層を挟む両側で内外反転の関係にある。すなわち、電極層324A〜324Cに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層326A〜326Cに印加される信号電圧の極性が同じになるというように配置されている。また、2層目の電極層324B及び326Bの適宜位置に、互いの領域に達する突出形状332及び334が形成されているほか、圧電層322A及び322Bには、スルーホール328A,330A,328B,330Bが適宜位置に形成されている。
【0032】
そして同一極性の信号電圧が印加される電極層324A〜324Cは、スルーホール330A,330B,突出形状332によって導電接続され、前記電極層324Cが振動板302の一方のプリント導体パターン306に貼り合わせられる。また、電極層326A〜326Cも、スルーホール328A,328B,突出形状334によって導電接続され、前記電極層326Cが他方のプリント導体パターン310に貼り合わせられる。そして、前記プリント導体パターン306,310の引き出し部306A,310Aに、例えば、図示しないリード線を半田で接続することにより、圧電振動板300に対する信号電圧の印加が可能となる。
【0033】
本実施例と前記実施例1を比較すると、実施例1では、図10(B)に示すように、圧電素子18を振動板12に接着する際に、振動板12と圧電素子18の電極形状を一致させるという手間がかかる。これに対して、本実施例のように、電極形状を同心円状とすることで、図10(A)に示すように、圧電素子320の接着の際に、電極形状の位置ずれを考慮しなくてもよくなる。すなわち、圧電素子320が、図に矢印で示す方向に回転しても、互いの外周縁の位置さえ合っていれば、何ら問題なく振動板側との接続が可能となる。このように、本実施例によれば、上述した実施例1の効果に加え、製造工程の一層の簡略化を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。
(2)圧電層と電極層の積層数も任意であり、必要に応じて適宜増減してよい。
(3)前記実施例では、圧電振動板の全体形状を略長方形ないし略円形としたが、同様の効果を奏するものであれば、形状は適宜変更可能である。
(4)前記実施例で示した電極引き出し構造も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。例えば、前記実施例では、振動板として、絶縁板上にプリント導体パターンを形成したものを利用することとしたが、振動板自体を、導電性を有する可撓性薄板によって形成し、圧電素子の電極層とほぼ同位置で分割して絶縁を図るような構成としてもよい。
(5)上述した実施例では、振動板の一方の主面に圧電素子を設けたユニモルフ構造としたが、両主面に圧電素子を設けたバイモルフ構造としても同様の効果が得られる。
(6)上述した実施例では、圧電素子の主面を2分割した各々の領域に電極層を設けることとしたが、これも一例であり、同様の効果を奏するように適宜分割数を変更してよい。
(7)本発明の圧電振動板の好適な応用例としては、携帯電話,携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器のスピーカが挙げられるが、他の公知の各種の電子機器に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、少なくとも一層の圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記電極層は、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、該圧電層を挟む両主面側でほぼ同位置となるように、互いに離間して分割配置する。そして、前記圧電層の主面上の一つの電極層と、該電極層と同一主面上で隣接する他の電極層に圧電層を挟んで対向する電極層とを、前記圧電層の主面上の電極層のいずれかと重なる位置で、該圧電層の厚み方向に導電接続することとしたので、薄型化が要求される発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1の構造を示す分解斜視図である。
【図2】前記実施例1を示す図であり、(A)は外観を示す斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図3】前記実施例1の比較例の構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施例2の構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例3の構造を示す分解斜視図である。
【図6】前記実施例3の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例4の構造を示す分解斜視図である。
【図8】前記実施例4とその変形例の外観を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例5の構造を示す分解斜視図である。
【図10】前記実施例1及び5の圧電素子と振動板の接着の様子を示す図である。
【図11】背景技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10:圧電振動板
12:振動板
13:絶縁板
13A:突出部
14,16:プリント導体パターン
14A,16A:引き出し部
18:圧電素子
20A〜20C:圧電層
22A〜22D,24A〜24D:電極層
26A〜26C,28A〜28C:スルーホール
30,32,34,36:突出形状
38:分割線
40:圧電素子
42A,42B:圧電層
44A〜44C,46A〜46C:電極層
48A,48B,50A,50B:スルーホール
52,54,56,58,60,62:突出形状
64:分割線
70:圧電振動板
72:圧電素子
100:圧電振動板
102:振動板
104:絶縁板
106,108:プリント導体パターン
106A,108A:引き出し部
110:圧電素子
112A,112B:圧電層
114A〜114C,116A〜116C:電極層
118A,118B,120A,120B:スルーホール
122,124:突出形状
126:分割線
150:圧電振動板
152:振動板
154:絶縁板
156,158:プリント導体パターン
160:圧電素子
162A,162B:圧電層
164A〜164C,166A〜166C:電極層
168A,168B,170A,170B:スルーホール
172,174:突出形状
176:分割線
178,180:半田
182,184:リード線
200,220,240:圧電素子
202,222,242:圧電層
204,206,224,226,244,246:電極層
208,228,248:分割線
300:圧電振動板
302:振動板
304:絶縁板
304A:突出部
306,310:プリント導体パターン
306A,310A:引き出し部
308:スリット
312:絶縁層
320:圧電素子
322A,322B:圧電層
324A〜324C,326A〜326C:電極層
328A,328B,330A,330B:スルーホール
332,334:突出形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、
前記電極層は、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、該圧電層を挟む両主面側でほぼ同位置となるように、互いに離間して分割配置されるとともに、
前記圧電層の主面上の一つの電極層と、該電極層と同一主面上で隣接する他の電極層に圧電層を挟んで対向する電極層とを、前記主面上の電極層のいずれかと重なる位置で、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続手段,
を備えたことを特徴とする圧電振動板。
【請求項2】
前記複数の接続手段のうち少なくとも一つが、スルーホールを有することを特徴とする請求項1記載の圧電振動板。
【請求項3】
前記圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の引き出し電極を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の圧電振動板。
【請求項4】
前記電極層が、前記圧電層の主面の中心を通らない分割線を境として、複数に分割されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項5】
前記圧電層の同一主面上の複数の電極層が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に分割配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の圧電振動板を利用したことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−287314(P2006−287314A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100867(P2005−100867)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】